説明

チップスケールデバイスを懸架するための装置及びシステム、並びに関連する方法

チップスケールデバイスの懸架は、懸架フレームと、少なくとも1つの第1テザーとを用いて達成する。チップスケール懸架フレームは、第1の面と、該懸架フレームを貫通する開口とを画定する。少なくとも1つの第1テザーは、第1の面に関して第1の角度にて開口を横切っており、開口の内部に少なくとも部分的にチップスケールデバイスを配置させるのに用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2004年7月13日付けの米国仮出願第60/587,371号に優先権を主張するものであり、参照することで、その全ての開示内容を本書に取り入れることとする。
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
国防総省高等研究計画局(DARPA)番号第NBCHC020050号において規定されるように、米国政府は、本発明に或る特定の権利を有する。
【0002】
本発明は、概して、電子デバイス及びそのための懸架構造に関する。より詳細には、本発明は、例えばチップスケール原子時計のようなチップスケールデバイスを懸架するための装置に関する。
【背景技術】
【0003】
近頃の応用電子機器の多くは、適切に作動するために、超安定周波数基準及び/又は超安定時間基準を必要とする。例えば、一般に全地球測位システム(「GPS」)用途、詳細には故障耐性GPS受信機(gam-resistant GPS receiver)、ワイヤレスネットワーク時間同期用装置、分散ネットワーク通信用装置、及び/又は分散ネットワーク位置測定用装置、並びに複雑な超短波通信及び/又はナビゲーションが必要とされる軍事システム及びプラットホームのホストは全て、そのような基準を必要とする。
【0004】
典型的に、必要な超安定周波数基準及び/又は時間基準をもたらすために、原子時計が用いられる。当業者には容易に理解されるように、原子時計は、その周波数が適切な元素の原子若しくは分子の自然共鳴周波数により制御される、電子的な調時装置である。種々のタイプの原子時計が知られているが、それらに共通する基本原理は、適切な環境下において、原子の一般的な特性を利用して、経時的に非常に安定な周波数において電磁波を吸収し且つ放出することである。
【0005】
主な違いは、用いられる元素、並びにエネルギーレベルが変化する際の検知手段である。当分野で知られている幾つかのタイプの原子時計としては、セシウム原子時計、水素原子時計、及びルビジウム原子時計が挙げられる。セシウム原子時計は、セシウム原子線を利用しており、そこでは、種々のエネルギーレベルのセシウム原子が磁界により分離されている。水素原子時計も似た方式にて機能するが、それらは、原子があまりにも急速に高エネルギー状態を失わないように、特別な物質でできた壁面を有する容器を必要とする。ルビジウム時計は、全ての原子時計の中で最もシンプル且つコンパクトであり、それは、適切なマイクロ波に曝されるとその吸光度が変化するようなルビジウムガスを含むガラスセルを利用している。
【0006】
適切に作動するため、原子時計の温度は厳密に制御する必要がある。好ましくは、原子時計は、原子時計システムを構成する部材間の熱伝導が最小限となるような、実質的に熱孤立状態に維持されるべきである。それによって、その安定な作動が促進される。加えて、時計の機械的安定性を維持するために、変速下における構成部材間の相対的な位置変化が最小限となるように時計の振動を阻止することも重要である。
【0007】
長年にわたって、原子時計の熱的な遮断及び/又は温度の制御に加えて、それの据え付け方に関して幾つかの方法が提案されてきた。幾つかの技術では、断熱性材料でできたブリッジを利用して、時計セルを懸架し、基材から孤立させている。斯かるブリッジは、PYREXのような基材材料自体から製造したり、又は基材上に付着させた窒化ケイ素のような材料を用いて製造される。これらの方法に共通する特徴は、ブリッジが、基材面内にあるか、又は基材面に対して平行であることである。他の技術では、基材から延びた断熱性の柱を用いて時計セルや他の時計部材を支持している。要するに、既知の方法の多くでは、適切に低い熱伝導性及び/又は熱放射性でない材料、及び/又は機械的に堅牢でない材料を利用しており、また、不十分な強度の懸架構造を利用している。最後に、既知の技術は、典型的に、低コストの並列製造に向かない製造法に依存している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、当分野では、改善された機械的安定性及び温度制御性を有する、電子デバイス、例えば原子時計など、を熱的に遮断するための装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、概して、チップスケールデバイスを懸架するための装置、斯かる装置を製造するための方法、並びにチップスケールデバイスを当該装置に接続する方法に関する。本書で用いるとき、「チップスケール」装置又は「チップスケール」デバイスとは、そのサイズが十分に小さく、集積回路やチップに容易に組み込むことのできる装置又はデバイスである。例えば、その最も大きな寸法が25mm未満の装置又はデバイスである。
【0010】
本発明の種々の実施形態では、装置は、チップスケール蒸気セルユニットを安定に懸架し、且つその温度を効果的に制御するよう設計されており、それによって、同様の周波数及び/又は時間基準正確性を有する従来の原子時計よりも著しく電力消費が低く、且つ適切な機械的安定性さえもたらす原子時計システムの製造が可能となる。例えば、或る実施形態では、懸架装置は、およそ10mWの最大温度制御電力を用いて、およそ0℃〜50℃の周囲温度範囲下、およそ80℃の作動温度にて、原子時計をしっかりと固定することができる。しかしながら、本書に記載する装置の種々の実施形態は、チップスケール原子時計を利用する用途に限定されるものではなく、他の低電力チップスケールデバイスを支持するために及び/又はそれらの温度を制御するためにも利用することができる。例えば、当該懸架装置は、水晶共振子、水晶振動子、小型共振器、小型振動器、ジャイロスコープ、加速度計、レーザ、マイクロオーブン、及びマイクロカロリーメータと共に使用するのに適している。
【0011】
一般に、一態様では、本発明は、チップスケールデバイスを懸架する装置に関する。当該装置は、チップスケール懸架フレームと、少なくとも1つの第1テザーとを備える。チップスケール懸架フレームは、第1の面と、該懸架フレームを貫通する開口とを画定する。各第1テザーは、第1の面に関して第1の角度にて前記開口を横切って延びており、前記懸架フレームにより画定された開口内部に少なくとも部分的にチップスケールデバイスを配置するのに利用することができる。
【0012】
本発明の本態様の種々の実施形態は、以下の特徴を備える。懸架フレームは、第1フレーム部材と、第2フレーム部材とを備えることができる。第1フレーム部材は、第2フレーム部材上に実質的に平行に配置することができる。また、懸架フレームは、さらに、第1フレーム部材と第2フレーム部材との間に配置されたスペーサを備えることができる。
【0013】
多くの実施形態において、チップスケールデバイスを懸架するための装置は、前記第1の面に関して第2の角度にて前記開口を横切って延びる少なくとも1つの第2テザーをさらに備える。第2の角度は、第1の角度とは異なってもよい。第2の角度及び/又は第1の角度は、約0度〜約90度の範囲、例えば、約0度〜約60度、好ましくは約0度〜約30度、より好ましくは約0度〜約10度とし得る。幾つかの実施形態では、第1及び第2のテザーのベクトル要素は、デカルト座標系の3つの直交方向の全てに延びている。
【0014】
幾つかの実施形態では、少なくとも1つのテザーは、圧縮応力に耐えるよう伸長されている。また、テザーは、チップスケールデバイスを開口内部に配置した際に、チップスケールデバイスと懸架フレームとの相対的な位置変化を阻止することができる。第1及び第2テザーの各々は、第1フレーム部材又は第2フレーム部材に接続されており、それらの開口を横切ることができる。あるいはまた、他の実施形態では、各第1テザーは第1フレーム部材と接続されており、その開口を横切っており、一方、各第2テザーは第2フレーム部材と接続されており、その開口を横切っている。
【0015】
各第1テザーは、高分子から製造したり、高分子を含んだりすることができる。幾つかの実施形態では、高分子は、ポリイミドである。他の実施形態では、各第1テザーは、ポリテトラフルオロエチレン、B型(B−staged)ビスベンゾシクロブテン系高分子、ポリパラキシレン系高分子、γ−ブチロラクトン中で調製されたエポキシ系フォトレジスト、及びシクロペンタノン中で調製されたエポキシ系フォトレジストから成る群から選択される材料から構成される。また、各第1テザーは、例えばコーティングとして、熱放射性の低い材料を含むことができる。少なくとも1つの電気インターコネクタもまた、各第1テザーに接続することができる。
【0016】
幾つかの実施形態では、チップスケールデバイスは、チップスケール原子時計であるか、又はそれを含む。他の実施形態では、チップスケールデバイスは、以下の装置のうちの1つであるか、又はそれを含む:水晶共振子、水晶振動子、小型共振器、小型振動子、ジャイロスコープ、加速度計、レーザ、マイクロオーブン、及びマイクロカロリーメータ。
【0017】
他の態様では、一般に、本発明は、原子時計システムに関する。当該原子時計システムは、懸架装置及びチップスケールデバイスを備える。懸架装置は、それを貫通する開口を有する懸架フレーム、少なくとも1つの第1テザー、及び少なくとも1つの第2テザーを備える。各第1及び第2テザーは、懸架フレームの開口を架橋している。その一部として、チップスケールデバイスは、蒸気セルユニットを備える。チップスケールデバイスは、懸架フレームに画定された開口の内部に、少なくとも1つの第1テザー及び少なくとも1つの第2テザーによって、少なくとも部分的に配置されている。
【0018】
本発明の本態様の種々の実施形態は、以下の特徴を備える。テザーのベクトル要素は、集合的に、デカルト座標系の3つの直交方向の全てに延びている。テザーは、チップスケールデバイスとチップスケール懸架フレームとの相対的な位置変化を阻止するように構成し且つ配置することができる。さらに、少なくとも1つのテザーは、圧縮応力を阻止するように伸長したものとすることができる。チップスケール懸架フレームは、第1フレーム部材と第2フレーム部材とを備えることができる。第1フレーム部材は、第2フレーム部材上に実質的に平行して配置することができる。また、チップスケール懸架フレームはさらに、第1フレーム部材と第2フレーム部材との間に配置されたスペーサを備えることができる。懸架フレームの寸法のうち最も大きい寸法が15mmを超えないことが好ましい。蒸気セルユニットは、光学的電力源(optical power source)又は光検出器デバイスに接続させることができる。
【0019】
幾つかの実施形態では、チップスケールデバイスはさらに、蒸気セルユニットと接続された、温度検知素子、例えば抵抗温度検出器を備える。例えば温度検知素子により発生する正味の磁界が最小限となるように、温度検知素子の第1セグメント内の電流は、温度検知素子の第2セグメント内の反対向きの電流とバランスさせることができる。他の実施形態では、チップスケールデバイスは、蒸気セルユニットに接続された加熱素子を含む。当該加熱素子は、例えば、蒸気セルユニットの周囲に少なくとも部分的に配置することができる。温度検知素子の場合と同様、加熱素子の第1セグメント内の電流は、加熱素子の第2セグメント内の反対向きの電流とバランスさせることができる。重ねて、これは、加熱素子が発生する正味の磁界を最小限とするためであり得る。
【0020】
他の実施形態では、光学的電力源は、蒸気セルユニットの下方の開口内部に少なくとも部分的に配置された、レーザ素子、例えば垂直キャビティ面発光レーザを備える。さらに他の実施形態では、チップスケールデバイスは、光源に接続された、例えばフォトダイオードのような光検出器を備える。
【0021】
さらに他の態様では、概して、本発明は、原子時計システムを製造する方法に関する。当該方法は、第1フレーム部材と、それに結合した複数の第1テザーとを作製すること、並びにチップスケールユニットを複数の第1テザーと接続させることを包含する。第1フレーム部材は、第1の面と、第1フレーム部材を貫通する第1の開口とを画定するよう作製されており、第1フレーム部材と結合した複数の第1テザーは、前記開口を横切るように、当初、前記第1の面内に実質的に配置されている。チップスケールユニットを第1テザーに接続させる際、第1テザーは、第1の面に関して、約0度〜約90度、又は約0度〜約30度の角度にて延在するようにされる。
【0022】
本態様の多くの実施形態では、本発明の方法は、さらに、第2フレーム部材と、それに結合した複数の第2テザーとを作製すること、並びにチップスケールユニットを第2テザーに接続させることを包含する。斯かる実施形態では、第2フレーム部材は、第2の面と、第2フレーム部材を貫通する第2の開口とを画定するよう作製されており、第2フレーム部材に結合した第2テザーは、第2フレーム部材の開口を横切るように、当初、第2の面内に実質的に配置される。チップスケールユニットを第2テザーに接続する際、第2テザーは、第2の面に関して約0度〜約90度、又は約0度〜約30度の角度にて、第2フレーム部材から延びるようにすることができる。特定の実施形態では、チップスケールユニットの第2テザーへの接続は、チップスケールユニットの第1テザーへの接続とほぼ同時に行われる。
【0023】
本態様の他の実施形態では、本発明の方法は、さらに、第1の面が第2の面にほぼ平行となり且つ第1の距離だけ離れるように、第1フレーム部材を第2フレーム部材と隔置することを包含する。斯かる実施形態では、チップスケールユニットは、第1の距離よりも大きい長さを有する。
【0024】
第1フレーム部材と、それに結合した複数の第1テザーとは、面製造技術(planar fabrication technique)を用いて作製することができる。加えて、複数の第1テザーは、圧縮応力を阻止するように伸長させることができる。
【0025】
これらの目的及び他の目的、並びに本書に記載する本発明の効果及び特徴は、以下の説明、添付の図面、並びに特許請求の範囲を参照することにより明らかとなろう。また、本書に記載する種々の実施形態の特徴は、相互に共有することができ、また、種々の組み合わせや並べ換えにて存在させ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図面においては、類似の符号は、概して、異なる図面にわたって同じ部品を表す。また、図面は、必ずしも正確な縮尺関係になく、本発明の原理を説明する際には強調されている。以下の説明においては、図面を参照しつつ、本発明の種々の実施形態を記載する。
【0027】
上述のように、本発明は、例えば原子時計のようなチップスケールデバイスを懸架するための装置、並びに原子時計システムを製造するための方法に関する。本発明の一実施形態によれば、懸架装置は、第1の面を画定する第1フレーム部材(例えば、上部フレーム部材)と、第2の面を画定する第2フレーム部材(例えば、底部フレーム部材)とを有する懸架フレームを備える。第1の面が第2の面に対しほぼ平行となるように、第1フレーム部材は、第2フレーム部材上にほぼ平行に配置することができる。加えて、懸架フレームを貫通する開口を画定することができる。
【0028】
本発明の種々の実施形態によれば、第1フレーム部材、第2フレーム部材の一方、又は第1フレーム部材と第2フレーム部材の両方が、懸架フレームに画定された開口の内部にチップスケールデバイスを少なくとも部分的に配置(例えば、懸架)するための少なくとも1つのテザーを備える。例えば、幾つかの実施形態では、第1フレーム部材は、第1の面に関して第1の角度にて懸架フレームから内側に延在する(即ち、開口を架橋する)1つ又は複数のテザーを備え、また、第2フレーム部材は、第2の面に関して第2の角度にて開口を架橋する1つ又は複数のテザーを備える。ある実施形態では、第1フレーム部材から延びるテザーは、第1の面に関して種々の角度をとることができる。また、第2フレーム部材から延びるテザーは、第2の面に関して種々の角度をとることができる。
【0029】
幾つかの実施形態では、第1及び第2テザーは、それぞれ、第1及び第2の面内に配置される。他の実施形態では、第1及び第2の面にそれぞれ配置された第1及び/又は第2テザーを有するのではなく、第1の面に関して第1の角度にて第1テザーを延在させ且つ/又は第2の面に関して第2の角度にて第2テザーを延在させることによって、振動の阻止、その結果、懸架装置の機械的安定性が改善される。詳細には、これらの実施形態では、チップスケールデバイスが懸架フレームに画定された開口の内部に配置されたなら、例えば周囲の磁界に起因するシステムの変速移動若しくは振動などの外部因子に直面した際に、チップスケールデバイスと懸架フレームとの相対的な位置変化を阻止するようにテザーは配置され且つ構成されている。多くの実施形態では、テザーはまた、それにかかる圧縮応力に耐えるよう設計されている。
【0030】
図1は、本発明の例示的な実施形態による原子時計システム100を表す。原子時計システム100は、チップスケールデバイス106を懸架するための懸架装置104を備える。種々の実施形態では、懸架装置104は、それ自体チップスケールの大きさとし得る懸架フレーム108、少なくとも1つの第1テザー112、及び少なくとも1つの第2テザー116を備える。チップスケール懸架フレーム108の構成要素には、1つ又は複数の第1テザー112を結合させ得るところの第1フレーム部材120と、1つ又は複数の第2テザー116を結合させ得るところの第2フレーム部材124、並びに第1フレーム部材120と第2フレーム部材124とを隔置すべく第1フレーム部材120と第2フレーム部材124との間に配置されたスペーサ128が含まれる。多くの実施形態では、テザーは、後により詳細に説明するように、フレーム部材と一体形成されている。第1フレーム120を貫通する開口132A、第2フレーム部材124を貫通する開口132B、及びスペーサ128を貫通する開口132Cを含む開口132を、矢印136、140の向きに、懸架フレーム108にわたって画定することができる。
【0031】
図2は、原子時計システム100の概略断面図を表す。図示するように、チップスケールデバイス106は、第1テザー112及び第2テザー116によって、開口132の内部に少なくとも部分的に配置することができる。一実施形態では、チップスケールデバイス106は、チップスケール原子時計である。しかしながら、本書に記載する懸架装置104は、例えば、水晶共振子、水晶振動子、小型共振器、小型振動子、ジャイロスコープ、加速度計、レーザ、マイクロオーブン、及びマイクロカロリーメータのような他のチップスケールデバイスを支持するのに用い得ることは理解されたい。即ち、懸架装置104は、原子時計の支持のみに限定されるものではなく、原子時計システム100以外のシステムと関連して用いることもできる。
【0032】
さらに図2を参照すると、チップスケールデバイス106が原子時計であるような実施形態では、デバイス106は、光源148又は光検出器デバイス164と関連する中空蒸気セルユニット144を備えることができる。一実施形態では、蒸気セル144は、第1の端部154に第1エンドキャップ152を、反対の第2の端部158に第2の光透過性エンドキャップ156を、第1及び第2エンドキャップ152、156間に4つの側壁160を備える、直方体ハウジングである。斯かる実施形態では、蒸気セル144は、光源148と一体化されており且つ良好な熱伝導状態にある。例えば、光源148は、図2に示すように、蒸気セルユニット144の下方(即ち、蒸気セルユニット144の第2の光透過性エンドキャップ156の下方)の開口内に配置されたレーザ素子であり得る。特定の一実施形態では、レーザ素子は、垂直キャビティ面発光レーザ(「VCSEL」)である。チップスケールデバイス106はまた、光検出器164として、光源148に関連したフォトダイオード164を備えることができる。加えて、ミラー(図示せず)を、蒸気セルユニット144の第1の端部154の、第1エンドキャップ152の内側表面上に配置することができる。
【0033】
幾つかの実施形態では、中空蒸気セルユニット144は、およそ4.6GHzの中心周波数を有する光を吸収し易いセシウム蒸気のような活性媒体を収容している。作動時、セシウム蒸気は、光源148から光を照射される。光源148から照射される光の中心周波数が4.6GHzから変化すると、光は、蒸気セルユニット144を第2の端部158から第1の端部154へと透過し、第1の端部154にあるミラーにより反射され、蒸気セルユニット144の第2の端部158へと戻り、そこで光検出器164によって検出されることになる。しかし、光源148により照射される光の中心周波数が4.6GHzのまま変化しないと、光はセシウム蒸気により容易に吸収され、光検出器164においては光は検出されないことになる。
【0034】
従って、光検出器164が光を検出すると、光源148は、4.6GHzの中心周波数にて光を放射し続けておらず、光検出器164から光源148へと直に若しくは他の電子制御回路(図示せず)を介して間接的に信号を送ることによって、照射される光の中心周波数を調整することができる。しかしながら、光検出器164が何の戻り光も検知しない場合には、光源は、4.6GHzの中心周波数にて光を照射し続けており、原子時計のための安定な周波数基準が実現されている。
【0035】
当業者であれば、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当該原子時計の変更をなし得ることは理解されよう。例えば、セシウム蒸気とは対照的に、ルビジウム蒸気を蒸気セルユニット144内の活性媒体として用いることができる。他の例としては、光検出器164を蒸気セルユニットの第1の端部154に配置し、ミラーを取り除くことができる。他の変更もまた、可能である。
【0036】
光源148の出力波長及び蒸気セルユニット144内部の蒸気の吸光特性の両方が、温度変化により変化し得る。従って、本発明の一実施形態によれば、光源148及び蒸気セルユニット144両方の温度を厳密に制御し調節する。特定の実施形態では、光源148及び蒸気セルユニット144は、実施的に同じ温度に維持される。光源148及び蒸気セルユニット144両方の温度を制御するために、チップスケールデバイス106はさらに、蒸気セルユニット144に接続された加熱素子168と、蒸気セルユニット144に関連する温度検出素子172とを備える。ある実施形態では、第1エンドキャップ152は、熱伝導性の乏しい材料から構成されており、一方、中空蒸気セルユニット144は熱伝導性の高い材料、例えばシリコンから構成される。これらの実施形態では、加熱素子168は、蒸気セルユニット144の周囲、例えば図2に示すように第1エンドキャップ152の外縁部の周囲に少なくとも部分的に配置され、それによって、最も均一に当該領域に熱をもたらすことができるため、より均一な蒸気セルユニット144温度がもたらされる。さらに、斯かる実施形態では、蒸気セルユニット144の平均温度を十分に評価するために、第1エンドキャップ152上に温度検出素子172が配置される。
【0037】
作動時、温度検出素子172は、蒸気セルユニット144の温度を検出し、当該温度を示す信号を電子制御回路(図示せず)へと送る。温度検出素子172から受けた信号に応答して、電子制御回路は、信号を加熱素子168へと送り、そこで発生する熱量を制御することができる。幾つかの実施形態では、温度検出素子172は、温度検出素子172の第1セグメント内の電流が、温度検出素子172の第2セグメント内の反対向きの電流と釣り合うように設計される。斯かる設計によって、蒸気セルユニット144近傍の温度検出素子172によって生じる磁界を最小限とすることができる。同様に、蒸気セルユニット144の近傍の加熱素子168によって生じる磁界を最小限とすべく、他の実施形態では、加熱素子168は、加熱素子168の第1セグメント内の電流が、加熱素子168の第2セグメント内の反対向きの電流と釣り合うように設計することができる。
【0038】
伝導又は対流による熱損失量を最小限とすべく、真空パッケージング(図示せず)を用いて、原子時計システム100を収容することができる。加えて、放射による熱損失量を最小限とすべく、種々の実施形態では、原子時計システム100の表面積は、非常に小さくされている。例えば、本書に記載のように、原子時計システム100は、懸架フレーム104及びチップスケールデバイス106を備えたチップスケールシステムである。さらに、放射による熱損失量を最小限とすべく、蒸気セルユニット144、真空パッケージング、及び/又はテザー112、116を、例えばアルミニウムのような熱放射性の低い物質でコーティングすることができる。
【0039】
原子時計システム100からの熱損失をさらに最小限とすべく、テザー112、116は、断熱材であるように構成することができる。一実施形態では、これは、テザーを長く且つ薄く(即ち、断面積を小さく)製造することによって達成される。また、テザーは、熱伝導性の低い材料から構成することができる。例えば、テザーは、ポリイミドのような高分子から構成することができ、それは、0.2W/m℃未満の熱伝導度を有する。テザーを構成するのに用い得る他の材料としては、例えば、
・適切な添加剤を含むポリイミド様材料(例えば、KAPTON(デラウェア州ウィルミントンのデュポン社から入手可能))
・ポリテトラフルオロエチレン高分子、例えばTEFLON(デュポン社から入手可能)
・B型(B-staged)ビスベンゾシクロブテン系高分子、例えばCYCLOTENE(ミシガン州ミッドランドのダウケミカル社から入手可能)
・ポリパラキシレン系高分子、例えばPARYLENE(インディアナ州インディアナポリスのスペシャルティコーティングシステム社から入手可能)
・γ−ブチロラクトン若しくはシクロペンタノン中で調製されたエポキシ系フォトレジスト、例えばSU−8(マサチューセッツ州ニュートンのマイクロケム社から入手可能)
従って、1つ又は複数の上述の実施形態、例えば上述の実施形態の全ての組み合わせ、を用いることによって、蒸気セルユニット144及び光源148を、最小の電力を用いて、周囲よりも一定の温度に維持することができる。
【0040】
図3は、原子時計システム100の側面図を表す。図3に図示するように、第1フレーム部材120の上部表面176は第1の面180(即ち、上部表面176に実質的に平行な面)を画定し、また、第2フレーム部材124の底部表面184は第2の面188(即ち、底部表面184に実質的に平行な面)を画定する。図3に図示するように、第1フレーム部材120は、第2フレーム部材124上方に実質的に平行に配置されており、それによって、第1の面180は第2の面188に実質的に平行となっている。加えて、第1及び第2の面180、188は、蒸気セルユニットのエンドキャップ152、156の表面に実質的に平行であり、且つ原子時計システム100と一体化された基材(図示せず)の表面に実質的に平行とし得る。
【0041】
図2及び3を参照すると、上述のように、種々の実施形態において、チップスケールデバイス106は、懸架フレーム108につなぎ止められている。詳細には、少なくとも1つの第1テザー112が、開口132の内部に少なくとも部分的にチップスケールデバイス106を配置させる。任意選択的に、図示するように、少なくとも1つの第2テザー116もまた、開口132の内部にチップスケールデバイス106を配置させることができる。
【0042】
開口132の内部にチップスケールデバイス106を配置させることに加えて、第1及び第2テザー112、116はまた、例えば、大きな変速(例えば、高い荷重)及び振動に直面する際にチップスケールデバイスに安定性や振動阻止をもたらすように設計されている。上述のように、最小の電力を用いてチップスケールデバイスを周囲よりも一定の温度に維持できるように、テザーは、チップスケールデバイスから過剰の熱量が外部へと伝わらないように、長く且つ薄くなるよう構成されている。加えて、図3を参照すると、機械的安定性並びに振動阻止性をもたらすべく、1つ又は複数のテザー112は、第1の面180に関して第1の角度192にて懸架フレーム108の第1フレーム部材120から内側に延びるように設計されており、また、テザー116は、第2の面188に関して第2の角度196にて懸架フレーム108の第2フレーム部材124から内側に延びるように設計されている。幾つかの実施形態では、角度192は、全てのテザー112に関して同じである。他の実施形態では、角度192は、テザーの少なくとも幾つかにおいては異なっている。例えば、特定の実施形態では、各セット内では角度192が同じであるが、セット間では異なるような、2セットのテザー112が存在する。同様に、幾つかの実施形態では、角度196は、全てのテザー116に関して同じである。他の実施形態では、角度196は、テザー116の少なくとも幾つかにおいて異なっている。例えば、特定の実施形態では、各セット内では角度196が同じであるが、セット間では異なるような、2セットのテザー116が存在する。
【0043】
第1及び第2テザー112、116が第1及び第2の面180、188にないように設計することによって、テザー112、116の堅牢さが増し、テザー112、116は、大きな加速度の存在下における安定性をチップスケールデバイス106にもたらすことができる。より詳細には、第1及び第2の面180、188に対し或る角度192、196にて延びるテザー112、116を用いることによって、原子時計システム100にかかる正味の力がテザー112、116により原子時計システム100の他の構成部材へと、曲げ応力ではなく引っ張り応力として伝わる。
【0044】
特定の一実施形態では、後にさらに説明するように、第1及び/又は第2テザー112、116は、当初、第1及び/又は第2の面180、188内にあるよう構成されており、次いで第1及び/又は第2の面180、188に第1及び/又は第2の角度192、196にて延びるよう曲げられる。そうすることによって、第1及び/又は第2テザー112、116は、圧縮応力を阻止するように自然に伸長される。さらに、そうすることによって、第1及び/又は第2テザー112、116は、チップスケールデバイスと懸架フレーム108との間の相対的な位置変化を阻止するように構成され且つ配置されており、それによって、原子時計システム100の構成部材への物理的ダメージが有利に最小限となる。
【0045】
第1テザー112のセット、第2テザー116のセット、又は第1テザー112及び第2テザー116両方のセットは、テザーの長さ軸(引っ張り力が伝わる向き)は、デカルト座標系の3つの直交方向全てに延びるベクトル要素を有する。斯かる様式では、第1テザー及び/又は第2テザーの組み合わせ配置によって、考え得る全ての方向(即ち、+x、-x、+y、-y、+z、-z、又はそれらの組み合わせ)において、加速力に対する耐性をもたらすことができる。
【0046】
本発明の種々の実施形態では、電気インターコネクタ200(図2参照)を第1及び/又は第2テザー112、116の幾つかに接続させることで、電子制御回路(図示せず)を、光源148、光検出器164、加熱素子168、及び例えば抵抗温度検出器のような温度検出素子172と相互に接続させることができる。このようにして、電子制御回路は、光源に駆動信号を、光検出器に光検出器を応答させるのに必要な電流若しくは他の電気信号を、温度検出素子に温度検出素子を応答させるのに必要な電流若しくは他の電気信号を送ることができる。加えて、電気インターコネクタによって、光検出器164及び温度検出素子172は、電子制御回路に応答信号を送ることが可能となる。
【0047】
幾つかの実施形態では、電気インターコネクタ200は、第1及び/又は第2テザー112、116に直に取り付けられている(即ち、一体化されている)。例えば、電気インターコネクタは、第1及び/又は第2テザー上に直に付着しパターニングすることができる。そうするための方法としては、スパッタリング、蒸着、及び電着、又は当分野で既知の従来型の付着法を挙げることができる。
【0048】
特定の実施形態では、電気インターコネクタ200は、チタンと白金との組み合わせから作製される。より詳細には、まず、第1及び/又は第2テザー112、116上にチタンをベース層(即ち、焼き付き層(sticking layer))として設け、次いでそれに白金層を付加する。白金は変形率(strain yield)が低いため、高い変形率が必要とされる電気インターコネクタの部分、即ち、第1及び/又は第2テザー112、116とチップスケール懸架フレーム108との間の接点208(図3参照)(即ち、電気インターコネクタの第1の屈折ポイント)、並びに第1及び/又は第2テザー112、116と蒸気セルユニット144との間の接点212(図3参照)(即ち、電気インターコネクタの第2の屈折ポイント)には、電気インターコネクタとして白金の代わりに金を用いることができる。しかしながら、金は白金よりも伝熱性であるため、電気インターコネクタにおけるその使用は、伝導による熱損失量を最小限とするために、これら屈折ポイントに限定される。
【0049】
他の態様では、本発明は、原子時計システム100を製造する方法に関する。本発明の本態様によれば、第1フレーム部材120及びそれに結合した複数の第1テザー112、並びに第2フレーム部材124及びそれに結合した複数の第2テザー116は、平面製造技術を用いて製造される。より詳細には、第1フレーム部材及びそれに結合した複数の第1テザーは、第1フレーム部材120の上部表面176により画定される第1の面180に実質的に配置されるように第1テザーを開口132Aに架橋させるべく製造される。同様に、第2フレーム部材124及びそれに結合した複数の第2テザー116は、第2フレーム部材124の底部表面184により画定される第2の面188に実質的に配置されるように第2テザー116を開口132Bに架橋させるべく製造される。
【0050】
面製造技術を用いて、第1フレーム部材120及びそれに結合した複数の第1テザー112、並びに第2フレーム部材124及びそれに結合した複数の第2テザー116を製造することは、後述するように、光によって特徴付けられる(photodefinable)、スピンオン型のポリイミド(spin-on version of polyimide)を用いて達成することができる。図1に示すように、上述の製造技術によって、それを貫通する第1の開口132Aが画定された第1フレーム部材120、及びそれを貫通する第2の開口132Bが画定された第2フレーム部材がもたらされる。本製造技術の特定の実施形態を以下により詳細に説明する。
【0051】
記載のように第1及び第2フレーム部材120、124を製造したら、チップスケールデバイス106を、複数の第1及び第2テザー112、116に結合させる。一実施形態では、再度図1を参照して、まず、チップスケールデバイス106の蒸気セルユニット144をスペーサ128の開口132Cの内部に配置する。次いで、第1及び第2フレーム部材120、124を、スペーサ128の反対側上において、第1の面180が第2の面188と実質的に平行となるように、配向させる。次いで、第1及び第2のフレーム部材を、互いに、矢印136、140の向きに、第1及び第2のフレーム部材がスペーサに接するまで移動させる。次いで、第1及び第2のフレーム部材を、例えば、第1及び第2のフレーム部材をエポキシ接着剤を用いてスペーサに接着することによって、スペーサに取り付けることができる。このようにして、第1フレーム部材120は、第1の距離だけ、第2フレーム部材124から隔置される。
【0052】
一実施形態では、スペーサ128及びチップスケールデバイス106の蒸気セルユニット144は、蒸気セルユニットが、第1フレーム部材120と第2フレーム部材124との間の上述の第1の距離よりも大きい長さ204(図1参照)を有するように選択される。その結果、第1フレーム部材を第2フレーム部材の方向に移動させ且つ各フレーム部材をスペーサに取り付ける過程において、上述のように、蒸気セルユニット144は、複数の第1及び第2テザー112、116をそれぞれ第1及び第2の面180、188から屈折させることができ、それによって、図3に示すように、複数の第1テザーが、第1の面に関して第1の角度192にて第1フレーム部材から内側に延びるように、且つ複数の第2テザーが、第2の面188に関して第2の角度196にて第2フレーム部材から内側に延びるようにすることができる。例えばエポキシ接着材のような接着剤を用いて、第1及び第2テザー112、116をチップスケールデバイス106の蒸気セルユニット144に接着させることができ、また、光源148/光検出器164対を蒸気セルユニットに接続することができる。ポリイミドは高い変形率(典型的に3%)を有し且つ窒化ケイ素又は酸化ケイ素のような他の伝熱性の低い材料と比較して大きく伸びるため、上述のように当初の平面構成から曲げられる必要のある第1及び第2テザー112、116用の材料として特に良い選択肢であることに留意されたい。
【0053】
特定の実施形態では、懸架フレーム108の第1及び第2のフレーム部材120、124は、別個のシリコンウェーハ上に作製される。フレームスペーサ128は、従来の金属処理技術を用いて、アルミニウムから機械を用いて製造される。懸架テザー112、116を形成するパターニングされたポリイミド層は、第2フレーム部材124が光源148の光や収集された光を透過させることができる以外は、同じものである。方法手順は、めっきステップ(metallization step)を除いて、両フレーム部材120、124に関して同一であり、以下に概要を示す:
(1)SiOを用いて、シリコンエッチ裏面のための、厚さ約1μmのエッチストップを成長させる;
(2)懸架テザー用の構造材料として、厚さ5μmの光画定された(photodefined)ポリイミド層をスピンオンする;
(3)ソフトベーク(soft bake)ステップを実行する;
(4)ポリイミドへのパターン化光照射を実行する;
(5)ポリイミド現像ステップを実行して、ポリイミドのパターン化部を溶解させることによってテザーを形成する;
(6)ポリイミドを硬化させてポリイミド高分子を架橋させる;
(7)後続のフォトリソグラフィステップの間、ポリイミドを保護すべく、厚さ0.04μmのチタン層をスパッタする;
(8)めっき(metallization)のためにフォトレジストをスピン/露光/現像する;
(9)(A)第1フレーム部材120のみについて、熱制御懸架のために金属層をスパッタする−Ti(0.03μm)及びPt(0.25μm)
(B)第2フレーム部材124のみについて、光源及び光検出器のための懸架金属層をスパッタする:Ti(0.03μm)、Pt(0.40μm)、Au(0.40μm)、及びTi(0.10μm)
(10)金属パターニングのために溶媒リフトオフを実行する;
(11)めっきのためにフォトレジストをスピン/露光/現像する;
(12)接点金属層をスパッタする−Ti(0.03μm)及びAu(0.5μm)
(13)金属パターニングのために溶媒リフトオフを実行する;
(14)チタン保護層をエッチングする;
(15)Siエッチパターンのためにフォトレジストをスピン/露光/現像する;
(16)ウェーハ(500μm)にわたって、懸架解放のためにSiをエッチングする(DRIE);
(17)熱酸化物エッチストップ層をプラズマエッチングする。
【0054】
次に、蒸気セルユニット144及び懸架構造をエポキシを用いて組み立てる。斯かる目的にとっては、光透過性並びに低いガス放出性のために、EPO−TEK 353NDが適している。まず、蒸気セルユニット144を、第1テザー112を用いて第1フレーム部材120に配置する。より詳細には、第1フレーム部材120を位置調整固定具に下向きにして配置する。次いで、蒸気セルユニット144を、エポキシを手動で付与することによって、フレーム部材120の第1テザー112へと、鏡面を下向きにして配置する。硬化させた後、接着界面の厚さは5μmである。次いで、アルミニウムフレームスペーサ128を、基準マークに合わせて、第1フレーム部材120へと取り付ける。最後に、第2フレーム部材124を、第2フレーム部材124の他の基準マークに合わせる。エポキシを用いて、第2テザー116をセルユニット144に、第2フレーム部材124をフレームスペーサ128に取り付ける。
【0055】
光源148及び/又は光検出器164を、はんだによりセルユニット144に取り付ける。詳細には、まず、およそ0.008インチ〜0.025インチの大きさのはんだ球を、光源148及び/又は光検出器164パッドに付着させる。次いで、はんだ球を、第2テザー116上のパッド位置へと、はんだを再流させることで位置合わせする。同時に、第2フレーム部材124上のパッドへとはんだ球を付着させて、第2フレーム部材124をセラミックリードレスチップキャリア(「LCC」)へと配置させることができる。次いで、LCCを位置合わせし、第2フレーム部材124をLCCへと接続する最終的な再流を実行する。加熱素子168及び温度検出素子172をワイヤ結合によりLCCのコーナーパッドに接続する。最後に、活性化されたゲッターを含有するアルミナリッドを真空下において取り付ける。はんだ粗地をLCCのシールリング上に配置し、デバイスをシールすべく再流させる。真空パッケージを備える場合、物理パッケージの全体寸法は、およそ0.6cmである。
【0056】
本発明の特定の実施形態を説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本書に開示した概念を取り入れた他の実施形態を利用し得ることは当業者には明らかであろう。例えば、薄い高分子膜を用いて、チップスケールデバイス106を、懸架フレーム108の開口132の内部にあるテザー112、116位置に固定することができる。従って、記載した実施形態は、例示的なものであって限定の意はないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態による、原子時計システムの概略分解図
【図2】本発明の他の実施形態による、図1記載の原子時計システムの概略断面図
【図3】本発明のさらに他の実施形態による、図1記載の原子時計システムの概略側面図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップスケールデバイスを懸架するための装置であって、
第1の面と、懸架フレームを貫通する開口とを画定するチップスケール懸架フレーム;及び
前記開口の内部に少なくとも部分的に前記チップスケールデバイスを配置するための少なくとも1つの第1テザーであって、前記第1の面に関して第1の角度にて前記開口を横切って延びる、少なくとも1つの第1テザー
を含んで成る、装置。
【請求項2】
前記開口の内部に少なくとも部分的に前記チップスケールデバイスを配置するための少なくとも1つの第2テザーであって、前記第1の面に関して第2の角度にて前記開口を横切って延びる、少なくとも1つの第2のテザーをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第2の角度が、前記第1の角度とは異なる、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第2の角度及び前記第1の角度の少なくとも一方が、約0度〜約90度の範囲である、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記第2の角度及び前記第1の角度の少なくとも一方が、約0度〜約60度の範囲にある、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記第2の角度及び前記第1の角度の少なくとも一方が、約0度〜約30度の範囲にある、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記第2の角度及び前記第1の角度の少なくとも一方が、約0度〜約10度の範囲にある、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記第1及び第2テザーのベクトル要素が、デカルト座標系の3つの直交方向全てに延びる、請求項2に記載の装置。
【請求項9】
前記テザーの少なくとも1つが、圧縮応力を阻止するように伸長されている、請求項2に記載の装置。
【請求項10】
前記チップスケールデバイスが前記開口の内部に配置される際に、少なくとも1つの第1テザーと少なくとも1つの第2テザーが、前記チップスケールデバイスと前記チップスケール懸架フレームとの間の相対的な位置変化を阻止する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つの第1テザーが、熱放射性の低い材料を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つの第1テザーが、高分子を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つの第1テザーが、ポリイミドを含む、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つの第1テザーが、ポリテトラフルオロエチレン、B型(B-staged)ビスベンゾシクロブテン系高分子、ポリパラキシレン系高分子、γ−ブチロラクトン中で調製されたエポキシ系フォトレジスト、及びシクロペンタノン中で調製されたエポキシ系フォトレジストから成る群から選択される材料を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記少なくとも1つの第1テザーに接続された少なくとも1つの電気インターコネクタをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記少なくとも1つの電気インターコネクタが、前記少なくとも1つの第1テザーによって少なくとも部分的に支持されている、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記チップスケール懸架フレームが、
第1フレーム部材;及び
第2フレーム部材
を含んで成り、前記第1フレーム部材が、前記第2フレーム部材上方に実質的に平行に配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
前記チップスケール懸架フレームが、さらに、前記第1フレーム部材と前記第2フレーム部材との間に配置されたスペーサをさらに含む、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記チップスケールデバイスが、チップスケール原子時計を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
前記チップスケールデバイスが、水晶共振子、水晶振動子、小型共振器、小型振動器、ジャイロスコープ、加速度計、レーザ、マイクロオーブン、及びマイクロカロリーメータから成る群から選択される、請求項1に記載の装置。
【請求項21】
それを貫通する開口を画定する懸架フレーム、及び
前記開口を横切って延びる少なくとも1つの第1テザー及び少なくとも1つの第2テザー
を含む懸架装置と、
前記少なくとも1つの第1テザー及び前記少なくとも1つの第2テザーによって前記開口の内部に少なくとも部分的に配置されているチップスケールデバイスであって、蒸気セルユニットを含むデバイスと、
を含んで成る、原子時計システム。
【請求項22】
前記懸架フレームの最大寸法が、15mmを超えない、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記テザーのベクトル要素が、デカルト座標系の3つの直交方向全てに延びる、請求項21に記載のシステム。
【請求項24】
前記蒸気セルユニットが、光源に接続されている、請求項21に記載のシステム。
【請求項25】
前記光源が、レーザ素子を含む、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記レーザ素子が、前記蒸気セルユニット下方の、前記開口の内部に少なくとも部分的に配置されている、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記レーザ素子が、垂直キャビティ面発光レーザである、請求項25に記載のシステム。
【請求項28】
前記チップスケールデバイスが、さらに、前記光源と関連する光検出器を含む、請求項24に記載のシステム。
【請求項29】
前記光検出器が、フォトダイオードを含む、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記テザーが、前記チップスケールデバイスと前記懸架フレームとの間の相対的な位置変化を阻止するように構成され且つ配置されている、請求項21に記載のシステム。
【請求項31】
前記テザーの少なくとも1つが、圧縮応力を阻止するように伸長されている、請求項21に記載のシステム。
【請求項32】
前記チップスケールデバイスが、さらに、前記蒸気セルユニットと関連した少なくとも1つの温度検出素子を含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項33】
前記温度検出素子が、抵抗温度検出器を含む、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記温度検出素子の第1セグメント内の電流が、前記温度検出素子の第2セグメント内の反対向きの電流と釣り合っている、請求項32に記載のシステム。
【請求項35】
前記チップスケールデバイスが、さらに、前記蒸気セルユニットに接続された少なくとも1つの加熱素子を含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項36】
前記少なくとも1つの加熱素子が、前記蒸気セルユニットの周囲に少なくとも部分的に配置される、請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
前記加熱素子の第1セグメント内の電流が、前記加熱素子の第2セグメント内の反対向きの電流と釣り合っている、請求項35に記載のシステム。
【請求項38】
前記懸架フレームが、
第1フレーム部材;及び
第2フレーム部材
を含み、前記第1フレーム部材が、前記第2フレーム部材上方に実質的に平行に配置されている、請求項21に記載のシステム。
【請求項39】
前記懸架フレームが、前記第1フレーム部材と前記第2フレーム部材との間に配置されたスペーサをさらに含む、請求項38に記載のシステム。
【請求項40】
原子時計システムを製造する方法であって、
第1フレーム部材及びそれに結合した複数の第1テザーを製造することであって、前記第1フレーム部材は、第1の面と、前記第1フレーム部材を貫通する第1の開口とを画定しており、前記複数の第1テザーが、前記第1の開口を横切って延びており且つ実質的に前記第1の面内にあり;及び
チップスケールデバイスを前記複数の第1テザーに接続すること
を包含する、方法。
【請求項41】
前記チップスケールを前記複数の第1テザーに接続させた後、前記複数の第1テザーが、前記第1の面に関して第1の角度にて前記第1の開口を横切って延びる、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記第1の角度が、約0度〜約90度の範囲である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記第1の角度が、約0度〜約30度の範囲である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
第2フレーム部材及びそれに結合した複数の第2テザーを製造することであって、前記第2フレーム部材は、第2の面と、前記第2フレーム部材を貫通する第2の開口とを画定しており、前記複数の第2テザーが、前記第2の開口を横切って延びており且つ実質的に前記第2の面内にあり;及び
チップスケールデバイスを前記複数の第2テザーに接続すること
をさらに包含する、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
前記チップスケールを前記複数の第2テザーに接続させた後、前記複数の第2テザーが、前記第2の面に関して第2の角度にて前記第2の開口を横切って延びる、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記第2の角度が、約0度〜約90度の範囲である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記第2の角度が、約0度〜約30度の範囲である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記チップスケールユニットを前記複数の第2テザーに接続させることが、前記チップスケールユニットを前記複数の第2テザーに接続させることと実質的に同時に行われる、請求項44に記載の方法。
【請求項49】
前記第1の面が前記第2の面に実質的に平行であり且つ第1の距離だけ離れるように、前記第1フレーム部材を前記第2フレーム部材と隔置することをさらに包含する、請求項44に記載の方法。
【請求項50】
前記チップスケールユニットが、前記第1の距離よりも大きい長さを有する、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記第1フレーム部材及びそれに結合した前記複数の第1テザーが、面製造技術(planar fabrication technique)を用いて製造される、請求項40に記載の方法。
【請求項52】
前記複数の第1テザーが、圧縮応力を阻止するように伸長されている、請求項40に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−520958(P2008−520958A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521618(P2007−521618)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【国際出願番号】PCT/US2005/024879
【国際公開番号】WO2006/017345
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYREX
【出願人】(591016976)ザ・チャールズ・スターク・ドレイパ・ラボラトリー・インコーポレイテッド (10)