説明

チューインガム及びその製造方法

【課題】チューインガムの新しい成型方法、及び新奇な食感を有するチューインガムを提供する。
【解決手段】糖質とガムベースを加熱して糖質を110〜160℃で溶融させた後、前記混合物を65〜95℃まで冷却して、シード剤を添加してチューインガム生地を製造するか、糖質を110〜160℃で加熱溶融した後、65〜95℃まで冷却してシード剤を添加するとともにガムベースを混合することによりチューインガム生地を製造し、該チューインガム生地を成形型に充填し、冷却して固化し、剥離することにより得られるチューインガムの製造方法と、当該製造方法により製造された、キャンディのような歯切れ感のあるチューインガムによって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖質、ガムベース及びシード剤を含むチューインガム生地を成形型に充填して成型したチューインガム及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
チューインガムの成型方法には大きく2つの方法が知られている。すなわち、1)一般に、ガムベースに糖質、香料、酸味料、着色料等を添加、混合したチューインガム生地を圧延ロール(特許文献1)等で成型する方法と、また、2)前記原料を混合したチューインガム生地を粉末もしくは顆粒化したものを打錠により成型する方法とがある(特許文献2)。一方、チューインガムとキャンディを合わせたチューイングキャンディとも呼べるようなものも知られている(特許文献3〜4)。
【0003】
【特許文献1】特開平9-271325号公報
【特許文献2】特表2005-531316号公報
【特許文献3】特開昭47−23569号公報
【特許文献4】特開昭53−24066号公報
【0004】
しかし、前記のチューイングキャンディの製造方法は、キャンディとガムベースを加熱溶融状態にして混合したのち、ある一定温度に冷却して、圧延、成型し、裁断するという従来型の域を出ていない。
以上のように、従来の1)の成型法においては、圧延をし、裁断という2つの工程が含まれ、その工程を単純化することが望まれている。また、最近のような多種多様なチューインガムが出回っている状況では、チューインガムの風味のみならず、食感などに変化や面白さを付加することが望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、チューインガムにおいて、新しい成型方法、及びそれにより新奇な食感を有するチューインガムを提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
然るに本発明は、前記課題を解決するために、鋭意検討した結果、チューインガム生地を成形型に充填し、冷却固化し、剥離することにより下記のようなチューインガムの新規な製造方法とその製造方法により得られる新奇なチューインガムを提供することに成功した。すなわち、本発明は以下に示すものである。
(1)糖質、ガムベース及びシード剤を含むチューインガム生地を成形型に充填して成型し、冷却固化し、剥離することに特徴のあるチューインガムの製造方法。
(2)チューインガム生地が、糖質とガムベースを混合し、110〜160℃で加熱して、糖質を溶融させた後、前記混合物を65〜95℃まで冷却し、シード剤を添加することにより製造されることに特徴のある(1)に記載のチューインガムの製造方法。
(3)チューインガム生地が、糖質を110〜160℃で加熱溶融した後、前記糖質を65〜95℃まで冷却してシード剤を添加するとともにガムベースを混合することにより製造されることに特徴のある(1)に記載のチューインガムの製造方法。
(4)シード剤がチューインガムに含まれる糖質と同一糖質の結晶粉末である(1)乃至(3)の何れかに記載のチューインガムの製造方法。
(5)糖質がキシリトール、エリスリトール、ソルビトール、マルチトールから選択される1種以上の糖質を含むことに特徴のある(1)乃至(4)の何れかに記載のチューインガムの製造方法。
(6)キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、マルチトールから選択される1種以上の糖質の含有量が糖質全重量の80〜100重量%である(5)に記載のチューインガムの製造方法。
(7)(1)〜(6)の何れかに記載の製造方法により得られるチューインガム。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、圧延、裁断といった成型のための工程が必要なくなり、ダイレクトに成型することが可能となる。また、成形型を自由に選択できるため成形可能な形の範囲が広がる。また、本発明により得られるチューインガムは、噛みだしはキャンデーのような歯切れ感があるが、咀嚼するにつれてチューイング性が出てくるため、従来のチューインガムとは異なる食感が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、糖質、ガムベース及びシード剤を含むチューインガム生地の製造方法において、加熱して糖質を一旦溶融させることが必要である。ガムベースを含んだ状態で糖質を溶融してもよいし、糖質のみを予め溶融した後に、該溶融した糖質にガムベースを加えてもよい。溶融温度は110〜160℃が好ましい。ガムベースと糖質を加熱して糖質を溶融させたものは、ガムベースと溶融した糖質が分離した状態となっており、このままではチューインガム生地とはならない。シード剤については後述するが、ガムベースと溶融した糖質が分離しないようにするために、シード剤を添加する。
【0009】
ガムベースは、例えば、チクル等の天然樹脂、ロジンのグリセリンエステルであるエステルガム、酢酸ビニル、ポリイソブチレンあるいはポリブテンなどの合成ゴム等が挙げられ、通常のチューインガムに使用するものが使用できる。また、ガムベースの配合量はチューインガム生地全体の10〜40重量%が好ましい。糖質としては、グルコースやマンノース等の単糖、スクロース、トレハロースやマルトース等の二糖、ラフィノースやスタキオノース等のオリゴ糖、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、マルチトール、パラチニットなどの糖アルコール、水飴等、通常チューインガムに使用するものを使用できる。また、糖質の配合量はチューインガム生地全体の50〜90重量%が好ましいが、特にキシリトール、エリスリトール、ソルビトール、マルチトールから選択される1種以上の糖質が糖質全重量の80重量%以上であると流動状態を保持しやすく、また型に充填後に固化しやすいので好ましい。また、糖質を溶融するときに水や水飴等を添加して、水分を含んだ状態で加熱すると溶融しやすい。
【0010】
ガムベースと混合後又は単独で加熱して糖質を溶融した後、冷却してシード剤を添加する。このとき冷却温度は65〜95℃が好ましい。本発明のシード剤とは、溶融した糖質を起晶させる増粘促進剤であり、得られるチューインガムに含有される糖質と同一の糖質結晶であるのが好ましい。また、シード剤の添加量の割合は、溶融した糖質に対して4〜30重量%が好ましく、溶融した糖質中に含まれる、シード剤と同一の糖質に対しては5〜40重量%が好ましい。シード剤を添加しないとカムベースと溶融した糖質が分離した状態のままであり、ガムベースと糖質が一体化したチューインガム生地を得ることができない。
【0011】
ガムベースを含まない状態で糖質を溶融した場合は、シード剤とともにガムベースを加えてもよい。また、香料、酸味料、着色料、スクラロースやアセスルファムカリウム等の高甘度甘味料、ライスワックスやカルナバワックス等のワックス、飽和脂肪酸のステアリン酸主体のモノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどの乳化剤や炭酸カルシウムやタルクなどの無機質充填剤等の原料を加えてもよく、添加する場合、糖質の溶融前に加えてもよく、溶融後もしくはシード剤添加後に加えてもよい。熱に弱いものは成形型に充填する直前にチューインガム生地に加えたり、チューインガム生地とは別々に成形型に充填してもよい。
【0012】
チューインガム生地を成形型に充填後、冷却してチューインガム生地を固化させる。成形型としては、樹脂型、金属型、シリコン型、スターチ型等を使用できる。充填したチューインガム生地を固化するための冷却の温度は5〜30℃にするのが好ましい。また、シリコン型、スターチ型等の変形することで内容物の剥離が可能な型以外を使用する場合は、底面に穴が空いており、その穴にピンを差し込んで底面の一部とした構成の成形型を使用すると、剥離するときに穴に差し込んだピンを押すことで、チューインガムが型から押し出されやすくなるため好ましい。2種以上の異なったチューインガム生地を充填して、風味や色、咀嚼感等の異なる2種以上のチューインガム生地が一体となったチューインガムを作ることもできる。また、種々の形状の成形型を使用することにより、半球状、ハート状、葉状、円錐状等の色々な形状のチューインガムを作ることが可能である。また、得られたチューインガムに糖衣を施す等の加工を行ってもよい。
【実施例】
【0013】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0014】
実施例1
ガムベース20重量部、キシリトール60重量部、水飴(糖度75)6重量部、乳化剤0.2重量部を混合し、130℃まで加熱した。これを85℃まで冷却し、香料4重量部、色素0.5重量部、酸味料2重量部を添加混合した。そしてシード剤としてキシリトール結晶粉末8重量部を添加混合すると、結晶が析出しガムベースと糖の溶融液が一体となった、流動性を有するチューインガム生地を得た。このチューインガム生地を縦20mm、横12mm、深さ8mmの金属型に2g充填し、20℃まで冷却した。本金属型は、底面に穴が空いており、その穴にピンを差し込んで底面の一部とした構成であり、ピンを押し出すことでチューインガムを剥離した。得られたチューインガムは、食したときにキャンディのような硬く弾力性のない食感であったが、咀嚼するにつれ弾力性が出て、チューインガム様の食感となった。
【0015】
実施例2
エリスリトール54重量部、マルチトール6重量部、水飴(糖度75)6重量部、乳化剤0.2重量部を混合し、150℃まで加熱した。これを80℃まで冷却し、香料4重量部、色素0.5重量部、酸味料2重量部を添加混合した。そしてガムベース20重量部及びシード剤としてエリスリトール結晶粉末8重量部を添加混合すると、結晶が析出しガムベースと糖の溶融液が一体となった、流動性を有するチューインガム生地を得た。このチューインガム生地を縦20mm、横12mm、深さ8mmのスターチ型に2g充填し、20℃まで冷却した。スターチ型を篩い落とすことでチューインガムを取り出した。このチューインガムに砂糖72重量部、プルラン2重量部と水26重量部からなる糖衣液を用いて、ハード掛けにより糖衣を施した。得られた糖衣チューインガムは、食したときにキャンディのような硬く弾力性のない食感であったが、咀嚼するにつれ弾力性が出て、チューインガム様の食感となった。
【0016】
実施例3
ガムベース20重量部、キシリトール30重量部、エリスリトール30重量部、水3重量部、乳化剤0.2重量部を混合し、150℃まで加熱した。これを75℃まで冷却し、香料4重量部、色素0.5重量部、酸味料2重量部を添加混合した。そしてシード剤としてキシリトール結晶粉末8重量部を添加混合すると、結晶が析出しガムベースと糖の溶融液が一体となった、流動性を有するチューインガム生地を得た。このチューインガム生地を縦20mm、横12mm、深さ8mmの金属型に2g充填し、30℃まで冷却した。本金属型は、底面に穴が空いており、その穴にピンを差し込んで底面の一部とした構成であり、ピンを押し出すことでチューインガムを剥離した。得られたチューインガムは、食したときにキャンディのような硬く弾力性のない食感であったが、咀嚼するにつれ弾力性が出て、チューインガム様の食感となった。
【0017】
実施例4
ガムベース20重量部、ソルビトール60重量部、水飴(糖度75)6重量部、乳化剤0.2重量部を混合し、150℃まで加熱した。これを90℃まで冷却し、香料4重量部、色素0.5重量部、酸味料2重量部を添加混合した。そしてシード剤としてソルビトール結晶粉末5重量部を添加混合すると、結晶が析出しガムベースと糖の溶融液が一体となった、流動性を有するチューインガム生地を得た。このチューインガム生地を縦20mm、横12mm、深さ8mmの金属型に2g充填し、20℃まで冷却した。本金属型は、底面に穴が空いており、その穴にピンを差し込んで底面の一部とした構成であり、ピンを押し出すことでチューインガムを剥離した。得られたチューインガムは、食したときにキャンディのような硬く弾力性のない食感であったが、咀嚼するにつれ弾力性が出て、チューインガム様の食感となった。
【0018】
実施例5
ガムベース20重量部、マルチトール56重量部、水飴(糖度75)10重量部、乳化剤0.2重量部を混合し、155℃まで加熱した。これを90℃まで冷却し、香料4重量部、色素0.5重量部、酸味料2重量部を添加混合した。そしてシード剤としてマルチトール結晶粉末7重量部を添加混合すると、結晶が析出しガムベースと糖の溶融液が一体となった、流動性を有するチューインガム生地を得た。このチューインガム生地を縦20mm、横12mm、深さ8mmの金属型に2g充填し、20℃まで冷却した。本金属型は、底面に穴が空いており、その穴にピンを差し込んで底面の一部とした構成であり、ピンを押し出すことでチューインガムを剥離した。得られたチューインガムは、食したときにキャンディのような硬く弾力性のない食感であったが、咀嚼するにつれ弾力性が出て、チューインガム様の食感となった。
【0019】
比較例1
ガムベース20重量部、キシトール68重量部、水飴(糖度75)6重量部、乳化剤0.2重量部、香料4重量部、色素0.5重量部、酸味料2重量部を混合しチューインガム生地を得た。このチューインガム生地を圧延ロールにて圧延後、縦20mm、横12mmの型でプレスし、裁断し、20℃に冷却して、1粒約2gのチューインガムを得た。得られチューインガムは、はじめから弾力性を有するものであった。
【0020】
比較例2
ガムベース20重量部、キシリトール60重量部、水飴(糖度75)6重量部、乳化剤0.2重量部を混合し、130℃まで加熱した。これを85℃まで冷却し、香料4重量部、色素0.5重量部、酸味料2重量部を添加混合した。得られたチューインガム生地は、糖の溶融液とガムベースが分離した状態のままであり、型に充填できなかった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖質、ガムベース及びシード剤を含むチューインガム生地を成形型に充填して成型し、冷却固化し、剥離することに特徴のあるチューインガムの製造方法。
【請求項2】
チューインガム生地が、糖質とガムベースを混合し、110〜160℃で加熱して、糖質を溶融させた後、前記混合物を65〜95℃まで冷却し、シード剤を添加することにより製造されることに特徴のある請求項1に記載のチューインガムの製造方法。
【請求項3】
チューインガム生地が、糖質を110〜160℃で加熱溶融した後、前記糖質を65〜95℃まで冷却してシード剤を添加するとともにガムベースを混合することにより製造されることに特徴のある請求項1記載のチューインガムの製造方法。
【請求項4】
シード剤がチューインガムに含まれる糖質と同一糖質の結晶粉末である請求1乃至3の何れか一項に記載のチューインガムの製造方法。
【請求項5】
糖質がキシリトール、エリスリトール、ソルビトール、マルチトールから選択される1種以上の糖質であることに特徴のある請求項1乃至4の何れか一項に記載のチューインガムの製造方法。
【請求項6】
キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、マルチトールから選択される1種以上の糖質の含有量が糖質全重量の80〜100重量%である請求項5に記載のチューインガムの製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の製造方法により得られるチューインガム。





















【公開番号】特開2007−143458(P2007−143458A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−341335(P2005−341335)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(000006091)明治製菓株式会社 (180)
【Fターム(参考)】