説明

チューブポンプのチューブ交換時期予知方法

【課題】 圧送すべきスラリー状流体の材質がチューブに及ぼす影響をも加算して、チューブ交換時期を正確に予知する。
【解決手段】 チューブポンプにおいて、
予め、試験駆動により、上記チューブ他端から吐出されるスラリー状流体の吐出圧力を計測しつつ、該計測吐出圧力を、上記チューブが破損するまで、順次積算してチューブ寿命時の吐出圧力積算値を算出しておき、
上記チューブ他端から吐出されるスラリー状流体の吐出圧力を計測しつつ該計測吐出圧力を順次積算し、その現在の計測吐出圧力積算値を、上記チューブ寿命時の吐出圧力積算値と共に表示し、上記現在の計測吐出圧力積算値が上記チューブ寿命時の吐出圧力積算値に近いとき、チューブ交換時期が近づいたことを知る、
チューブポンプのチューブ交換時期予知方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生コンクリート、セメントミルク等のスラリー状流体の圧送に使用されるチューブポンプであって、弾性チューブに加圧用ローラ、加圧用半月板等の加圧体を圧接させつつ回転させることにより弾性チューブ内に脈動を生起させ、該脈動による吐出圧力により上記スラリー状流体をチューブ内で圧送させるタイプのチューブポンプにおける弾性チューブの交換時期予知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のチューブポンプのチューブ交換時期予知方法として、上記チューブに圧接させつつ回転させるチューブ加圧用ローラに着目し、上記チューブ加圧用ローラの始動時からチューブに破損が生じるまで回転させたときの上記加圧用ローラの総回転数、すなわちチューブ寿命時の加圧用ローラの寿命総回転数を予め算出し、ついで上記加圧用ローラの寿命総回転数の総1/7の回転数を、チューブを交換すべき時期に至るチューブ交換用回転数とし、上記加圧用ローラの始動後の回転数が上記チューブ交換用回転数に至った時、チューブの交換を行う方法が下記の特許文献に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−119179
【0004】
しかし、上記の従来方法では、チューブ加圧用ローラを回転させながら、圧送すべきスラリー状流体の材質に応じてチューブ内の吐出圧力が高く又は低く変化する場合があり、吐出圧力が高い場合はチューブに負荷を与えてチューブの寿命を短くし、吐出圧力が低い場合はチューブの寿命を長くすることになるが、このような場合にも、上記の従来方法ではチューブ加圧用ローラの回転数は一定であるから、実際のチューブの疲労とは無関係に、チューブ加圧用ローラの架空の回転数を積算していくことになってしまい、チューブの適正な交換時期を予知するには程遠いものとなっていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明は、チューブ内にスラリー状流体を圧送するとき、スラリー状流体の材質に応じた負荷によりチューブ寿命に種々の影響を及ぼす場合にも、該チューブの寿命を従来より正確に把握し、それによりチューブ交換時期を正確に予知することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題解決の手段として、本願第1発明は、
弾性チューブに加圧体を圧接させつつ回転させて、スラリー状流体を上記チューブ一端から吸入してチューブ他端から吐出するチューブポンプにおいて、
予め、試験駆動により、上記チューブ他端から吐出されるスラリー状流体の吐出圧力を計測しつつ、該計測吐出圧力を、上記チューブが破損するまで、順次積算してチューブ寿命時の吐出圧力積算値を算出しておき、
上記チューブ他端から吐出されるスラリー状流体の吐出圧力を計測しつつ該計測吐出圧力を順次積算し、その現在の計測吐出圧力積算値を、上記チューブ寿命時の吐出圧力積算値と共に表示し、上記現在の計測吐出圧力積算値が上記チューブ寿命時の吐出圧力積算値に近いとき、チューブ交換時期が近づいたことを知る、
チューブポンプのチューブ交換時期予知方法を提案し、
【0007】
本願第2発明は、
上記第1発明におけるチューブ寿命時の吐出圧力積算値よりも所要値少い値をチューブ交換用吐出圧力積算値とし、
上記現在の計測吐出圧力積算値を、上記チューブ交換用吐出圧力積算値と共に表示し、上記現在の計測吐出圧力積算値が上記チューブ交換用吐出圧力積算値に一致するとき、チューブ交換時期が到来したことを知る、
チューブポンプのチューブ交換時期予知方法を提案する。
【発明の効果】
【0008】
本願第1発明のチューブポンプのチューブ交換時期予知方法によれば、チューブの破損するまでの寿命を、チューブから吐出されるスラリー状流体の上記破損までの吐出圧力積算値で表示したから、その表示の中には、スラリー状流体の材質が及ぼす吐出圧力も加算することができ、それによりチューブ寿命時の吐出圧力積算値を実際に即した正確な数値で表示することができ、それは同時にチューブ交換時期の到来を正確に予知することができるのである。
【0009】
本願第2発明のチューブポンプのチューブ交換時期予知方法によれば、上記第1発明の効果に加え、チューブ寿命時の吐出圧力積算値よりも所要値少い値のチューブ交換用吐出圧力積算値を表示したから、計測吐出圧力積算値の表示が上記チューブ交換用吐出圧力積算値と等しくなったのを見たらチューブ交換作業を行えばよいこととなり、チューブ交換時を誤認することがなく、安全に作業を行うことができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本願第1発明によるチューブポンプ及びチューブ交換時期予知方式ブロックダイヤグラムの略線図である。
【図2】本願第2発明によるチューブポンプ及びチューブ交換時期予知方式ブロックダイヤグラムの略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本願第1発明において、予め試験駆動により「チューブ寿命時の吐出圧力積算値」を算出する作業においては、本願発明の実施に使用されるチューブポンプと同一構造のチューブポンプ、特にチューブは同じ材質のものを用いること当然である。
【0012】
又、本願第2発明における「チューブ交換用吐出圧力積算値」は、上記「チューブ寿命時の吐出圧力積算値」の算出試験において、チューブ破損に至る前どのくらいの積算値の時をチューブ交換時とみてよいかを確認しながら行うとよい。
【実施例1】
【0013】
図1は本願第1発明の実施例を示し、そのチューブポンプ(1)は、半円弧に回曲された外側支持枠(2)の内周面に、弾性チューブ(3)の中間部を沿接して半円弧状に回曲した状態で、チューブ(3)の両端部を上記外側支持枠(2)からほぼ直線状に延出し、上記外側支持枠(2)の内側において、上記半円弧の中心に支持された回転軸(4)に回転レバー(5)の中間部を固着し、該回転レバー(5)の両端部にチューブ加圧用ローラ(6)、(6)をそれぞれ回転自在に軸支し、これら両ローラ(6)、(6)を、上記回転軸(4)の回転により、上記チューブ(3)の半円弧状回曲部内周部分に交互に圧接させながら回転させることにより、チューブ(3)内腔部の弾性的圧縮と弾性復元を繰返し行って、チューブ(3)内に脈動を生起させ、該脈動によりチューブ(3)一端からチューブ(3)内への吸引圧力を、チューブ(3)他端から外部への吐出圧力をそれぞれ発生させる。
【0014】
スラリー状流体は、上記吸引圧力によりチューブ(3)の一端からチューブ(3)内に吸引され、上記吐出圧力によりチューブ(3)の他端から外部へ圧送される。
【0015】
上記チューブポンプ(1)におけるチューブ交換時期予知方法は次のようである。チューブ(3)他端のスラリー状流体吐出がわに、該流体の吐出圧力を計測するセンサー(7)を設け、該センサー(7)で計測した吐出圧力を積算ユニット(8)に送って順次積算すると共に、その現在の吐出圧力積算値を表示部(9)に表示する。
【0016】
上記計測に先だって、試験駆動を行い、上記チューブ(3)の他端から吐出されるスラリー状流体の吐出圧力を積算し、上記チューブ(3)が破損するまでの吐出圧力積算値(チューブ寿命時の吐出圧力積算値)を算出しておき、この値を入力ユニット(10)に入力し、表示部(11)に表示しておく。
【0017】
一例として、吐出圧力:20.0MPa、チューブ加圧用ローラ回転速度:60回転/分で運転し、約1000時間(6万分)経過後チューブが破損し、破損時のチューブ加圧用ローラ総回転数:360万回転、吐出圧力積算値:7200万MPa・分であった場合、上記表示部(11)に72,000,000MPa・分を表示する。
【0018】
上記センサー(7)による吐出圧力計測、積算ユニット(8)による吐出圧力積算、表示部(9)による積算値表示を経続しながら、表示部(9)の現在の計測吐出圧力積算値を、表示部(11)のチューブ寿命時の吐出圧力積算値(72,000,000MPa・分)と対比させ、「72,000,000MPa・分」に少しづつ近づいていく状況に注意する。
【0019】
ついで、表示部(9)の現在の吐出圧力積算値が72,000,000MPa・分より手前の交換に適した時点に至ったら、チューブポンプ(1)を停止し、チューブ(3)の交換作業を行う。
【実施例2】
【0020】
図2は本願第2発明の実施例を示す。図1では、チューブ寿命時の吐出圧力積算値を表示部(11)に表示し、表示部(9)に表示される現在の計測吐出圧力積算値を、表示部(11)の積算値と対比してチューブ交換時期を予想するものであったが、本例では、チューブ寿命時の吐出圧力積算値よりも所要値少い値のチューブ交換用吐出圧力積算値を入力ユニット(10a)に入力して表示部(11a)に表示し、表示部(9a)に表示される現在の計測吐出圧力積算値を、表示部(11a)のチューブ交換用吐出圧力積算値と対比して、チューブ交換時期を第1発明より正確に予想できるようにし、他の構成は図1と実質的に同一の例である。
【0021】
一例として、チューブ寿命時の吐出圧力積算値が72,000,000MPa・分である場合に、チューブ交換用吐出圧力積算値を72,000,000MPa・分より低い値に設定する。
【符号の説明】
【0022】
1、1a チューブポンプ
3、3a 弾性チューブ
6、6a チューブ加圧用ローラ
7、7a 吐出圧力計測センサー
8、8a 計測吐出圧力積算ユニット
9、9a 計測吐出圧力積算値表示部
10 チューブ寿命時の吐出圧力積算値入力ユニット
11 チューブ寿命時の吐出圧力積算値表示部
10a チューブ交換用吐出圧力積算値入力ユニット
11a チューブ交換用吐出圧力積算値表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性チューブに加圧体を圧接させつつ回転させて、スラリー状流体を上記チューブ一端から吸入してチューブ他端から吐出するチューブポンプにおいて、
予め、試験駆動により、上記チューブ他端から吐出されるスラリー状流体の吐出圧力を計測しつつ、該計測吐出圧力を、上記チューブが破損するまで、順次積算してチューブ寿命時の吐出圧力積算値を算出しておき、
上記チューブ他端から吐出されるスラリー状流体の吐出圧力を計測しつつ該計測吐出圧力を順次積算し、その現在の計測吐出圧力積算値を、上記チューブ寿命時の吐出圧力積算値と共に表示し、上記現在の計測吐出圧力積算値が上記チューブ寿命時の吐出圧力積算値に近いとき、チューブ交換時期が近づいたことを知る、
チューブポンプのチューブ交換時期予知方法。
【請求項2】
上記チューブ寿命時の吐出圧力積算値よりも所要値少い値をチューブ交換用吐出圧力積算値とし、
上記現在の計測吐出圧力積算値を、上記チューブ交換用吐出圧力積算値と共に表示し、上記現在の計測吐出圧力積算値が上記チューブ交換用吐出圧力積算値に一致するとき、チューブ交換時期が到来したことを知る、
請求項1に記載のチューブポンプのチューブ交換時期予知方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−174433(P2011−174433A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39906(P2010−39906)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000177416)三和機材株式会社 (144)