説明

チョコレート様食品

【課題】
コーチング用途において、ホワイトチョコレート様食品の乳風味や白色、カラーチョコレート様食品の風味や発色、さらにはコーチング対象の食品と組み合わせた際の風味や色合いの発現を阻害しないチョコレート様食品または含水チョコレート様食品、またはそれらをコーチングとして用いた複合食品を提供する事を本発明の目的とする。
【解決手段】
コーチング用途に用いられる無脂カカオ固形分を実質的に含まないチョコレート様食品において、配合するハードバターとして精製処理後のロビボンド比色計のY値が20以下の精製油脂を使用することで、ホワイトチョコレート様食品の乳風味や白色、カラーチョコレート様食品の風味や発色、さらにはコーチング対象の食品と組み合わせた際の風味や色合いの発現を阻害しないチョコレート様食品ならびにその複合食品を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコーチング用のチョコレート様食品若しくは概チョコレート様食品に水性成分を配合してなる含水チョコレート様食品、又は概チョコレート様食品若しくは概含水チョコレート様食品をコーチングしてなる複合食品に関する。
【背景技術】
【0002】
チョコレートに代表されるチョコレート様食品は所謂チョコレート色のスイートチョコレートやミルクチョコレートと、白色のホワイトチョコレートや、カラーチョコレートに大別される。一般的にはカラーチョコレートはホワイトチョコレートをベースに抹茶やイチゴといった色とりどりでチョコレート以外の風味をもった風味材や発色成分を配合したものである。
【0003】
ホワイトチョコレート単独で用いる場合や、カラーチョコレートのベースとして用いる場合には、商品設計上チョコレートらしい濃厚な褐色と強い風味はむしろ邪魔であるため、その原因である無脂カカオ固形分の入った原料は極力使われないのが普通である。ただ、その場合においてもココアバターは口溶けがよいため用いられることが多かった。
しかしながら、ココアバター自体が濃厚な風味を持っており、かつその風味が製菓材料として重要視されていた関係上、ココアバターは精製過程で風味が失われないよう、脱色・脱臭操作が比較的軽度になされていることが多い。
【0004】
そのため、現行のホワイトチョコレートは淡黄色でココアバターの強い風味が残っており、それが所謂ホワイトチョコレートの色や風味として一般には認識されていることが多いのではあるが、できる限り白く、かつ乳風味を発現させたいホワイトチョコレートや、ベースからの色や風味の影響を受けずに、望む風味や色を発現させたいカラーチョコレートにおいては、そのココアバターの濃厚すぎる風味や淡黄色は望ましくなかった。
【0005】
さらに、上記ホワイトチョコレートやカラーチョコレートをナッペやエンロービングといった他の食品の表面に薄く被覆する所謂コーチングと呼ばれる用途に用いる場合においてはコーチング対象の食品の色がうっすらと透けて見えることが多いため、ベースのホワイトチョコレートからの淡黄色が混ざり、色の濁りが顕実化しやすい。
また、コーチング用途はコーチング対象の食品の風味とのバランスが重要であり、例えばコーチングされる側の食品がフルーツであったりした場合、そのみずみずしい味と傾向の異なるココアバター風味はコーチングされた食品トータルで見た場合のバランスを崩し、雑味として働きかねない。
【0006】
ホワイトチョコレートやカラーチョコレートに関する提案は既にいくつかなされている。
ホワイトチョコレートの白色度合いを高める為に二酸化チタンを用いる方法は旧来よりよく用いられていたが、最近では消費者ニーズの健康志向が強く添加剤の使用は極力避けられるようになったこと、また、その無機的な白色は透明度が低く色が濁りやすいといったことから、二酸化チタンの使用は敬遠されるようになっている。
【0007】
また、原料カカオ豆の醗酵をさせない、あるいは僅かにおさえることで白色のカカオニブを製造する方法が提案されている。(特許文献1)
しかしながら、該方法はホワイトチョコレートには本来含まれないカカオマスの原料であるカカオニブを如何に白いものとして得るかが目的であり、風味自体は逆に本来のチョコレートらしい濃厚なものを目指しており、本願の課題は解決し得ない。
【0008】
また、低HLBの蔗糖脂肪酸エステルを必須として、乳固形分/糖類≦0.45以下であるホワイトチョコレート生地と含水食品を混合し、油中水型の水分含量2重量%以上50重量%以下のホワイトチョコレート様食品の製造法が提案されている。(特許文献2)
しかしながら、この発明も特段ホワイトチョコレート自体の色や風味については目的としておらず、本願の課題は解決し得ない。
【0009】
ハードバターの精製処理後のロビボンド比色計のY値が20以下の精製油脂の使用と非油成分がカカオ成分を実質的に含まない所謂ホワイトチョコレート類において風味劣化防止剤を組合せることで光劣化を抑えたチョコレート類が提案されている(特許文献3)。
【特許文献1】特開平07−16059号公報
【特許文献2】特開平06−062743号公報
【特許文献3】特開2006−19730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的はコーチング用途において、ホワイトチョコレート様食品の乳風味や白色、カラーチョコレート様食品の風味や発色、さらにはコーチング対象の食品と組み合わせた際の風味や色合いの発現を阻害しないチョコレート様食品ならびにその複合食品を提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは鋭意研究を行った結果、コーチング用途に用いられる無脂カカオ固形分を実質的に含まないチョコレート様食品において、配合するハードバターとして精製処理後のロビボンド比色計のY値が20以下の精製油脂を使用することで、ホワイトチョコレート様食品の乳風味や白色、カラーチョコレート様食品の風味や発色、さらにはコーチング対象の食品と組み合わせた際の風味や色合いの発現を阻害しないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、(1)としては、コーチング用であって、ロビボンド比色計のY値が20以下の精製ハードバターを用い、且つ、無脂カカオ固形分を実質的に含まず、無脂乳固形分、発色成分および風味材からなる群より選ばれた少なくとも1種以上を含んでなる、チョコレート様食品であり、(2)としては、(1)記載のチョコレート様食品に水性成分を配合してなる含水チョコレート様食品であり、(3)としては、ゲル化剤を配合してなる、(2)記載の含水チョコレート様食品であり、(4)としては、コーチング用である(2)または(3)記載の含水チョコレート様食品であり、(5)としては、(1)記載のチョコレート様食品または(4)記載の含水チョコレート様食品を他の食品にコーチングしてなる複合食品である。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、他の食品にコーチングするに際し、極めて平易な方法にて、ホワイトチョコレート様食品の乳風味や白色、カラーチョコレート様食品の風味や発色、さらにはコーチング対象の食品と組み合わせた際の風味や色合いの発現を阻害しないチョコレート様食品ならびにその複合食品を得ることが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明で言うところのチョコレート様食品とは、油脂が連続相をなす食品であれば特に限定はされないが、一例を挙げると、チョコレート類が該当する。また、ここで言うチョコレート類とは、全国チョコレート業公正取引協議会、チョコレート利用食品公正取引協議会で規定されるチョコレート、準チョコレート、チョコレート利用食品の総称であり、水分量が3重量%以下のものを指す。
【0015】
ただし、本願においては、無脂カカオ固形分を実質的に含まないことが必要であり、さらに、無脂乳固形分、発色成分および風味材からなる群より選ばれた少なくとも1種以上を含んでいる事を特徴としている。そのため概チョコレート様食品とは、ココアバターをはじめとするハードバター、粉乳類、糖類が主成分であるホワイトチョコレート類や、そのホワイトチョコレート類をベースに風味素材及び/又は発色素材を含有してなるカラーチョコレート類がそれにあたる。なお、本願においては無脂カカオ固形分を実質的に含まないホワイトチョコレート類やカラーチョコレート類を淡色チョコレート様食品と称する。
【0016】
一方、無脂カカオ固形分を実質的に含むものはカカオ固形分の色調(所謂チョコレート色)が強く、一例としては原料としてカカオマス、ココアなど、それらカカオ固形分を含むものとしてはスイートチョコレートやミルクチョコレートなどがあたり、本願の請求する範囲には入らない。
ここで言う「実質的に」とは、実際の作業上混入が避けられない場合としても、カカオマスとココアパウダーの総量がチョコレート様食品に対して5重量%以下、望ましくは1重量%以下、更に望ましくは0.5重量%以下、最も望ましくは可能な限り混入を避けて、まったく添加されないことが好ましい。添加量が少ないほどホワイトチョコレートの白色と乳風味が、カラーチョコの鮮やかな発色素材の色の発現と風味素材の風味の発現が発揮され、逆にカカオマスやココアパウダーの添加量が増えるに従い、上記の色や風味が阻害され、5重量%を超えると既存のチョコレート様食品と変わらないものとなる。
【0017】
チョコレート様食品は上記の通り油脂が連続相であり、その油脂はハードバターと呼ばれる。ここでいうところのハードバターとは、ココアバターとココアバターの代用脂を総称するものであり、ココアバター代用脂とは、チョコレートの物性改良や製造コストの節約の目的にて、ココアバターの一部または全部に代えて用いられるもので主としてCBEと称される1,3位飽和、2位不飽和のトリグリセリド型油脂に富むものと、CBRと称されるラウリン系もしくは高エライジン酸タイプのものがある。ココアバター代替脂の油脂原料としては、ナタネ油、大豆油、ヒマワリ油、綿実油、落花生油、米糠油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、カポック油、ゴマ油、月見草油、パーム油、シア脂、サル脂、ヤシ油、パーム核油等の植物性油脂及び乳脂、牛脂、ラード、魚油、鯨油等の動物性油脂を例示することができ、上記油脂類の単独若しくは混合油、又はそれらの硬化、分別、エステル交換等を施した加工油脂を用いることができる。本願においてはCBE、CBR、油脂原料としては特に限定はされない。
【0018】
これらのハードバターはリン酸処理、脱酸、漂白、脱臭などの工程の1つ以上を経て精製されたものを用いることが必要であり、精製後のロビボンド比色計のY値が20以下、望ましく10以下、より望ましくは4以下であることが好ましい。ロビボンド比色計のY値が20を越える場合はそのハードバターを用いて作られたチョコレート様食品の色調に影響が現れ、真っ白のホワイトチョコレートを意図したにも拘らず黄色が強いものとなったり、カラーチョコレートの鮮やかな色がくすんだものとなったりする。またY値が20以上あるということは必然的に精製の度合いが充分ではなく、油脂の持つ風味を生かしたチョコレート様食品の商品設計を意図した場合はともかく、ホワイトチョコレートならば乳風味が、カラーチョコレートならば風味素材の風味がベースの油脂の風味に邪魔をされ、くぐもった、雑味を感じるものとなる。なおロビボンド比色計のY値の測定法としては、「AOCS Official Method Cc13e−92 Color」の方法に準じて行なうものとし、測定条件はガラスセルが5.25インチセルのものを用いて油脂品温35〜40℃の範囲で実施したものを用いる。
【0019】
ロビボンド比色計のY値が低いことで淡色チョコレート様食品の色や風味がハードバターの持つ色や風味に影響を受けにくくする意図があるため、本来その濃厚な風味であることに意味のあるタイプのハードバターを使う必要は必ずしもない。一例として、ココアバターはその風味を活かしたチョコレート様食品の商品設計をする際には、極力その風味が失われないような精製を行うが、本願目的とする淡色チョコレート様食品においては、その風味は必要とされない。ココアバターの精製度を上げロビボンド比色計のY値が20以下にすることは勿論可能ではあるが、ココアバターは比較的高価である為、他の安価で精製度の高いハードバターを用いることも可能である。
【0020】
他の原料としては無脂乳固形分、発色成分および風味材からなる群より選ばれた少なくとも1種以上を含んでいることが必要であり、無脂乳固形分はベースとなるホワイトチョコレートの白を発色させるのに必要であり、また無脂乳固形分自体が含まれるものなら特に限定はされず、一例としては全脂粉乳、脱脂粉乳などの粉乳類があげられる。
【0021】
発色成分としてはカラーチョコレートとして求められる色調を発色させるために、また風味材は同じくカラーチョコレートとして求められる風味を発現させるために必要である。
目標とするチョコレート様食品がホワイトチョコレートの場合、発色成分や風味材は特に必要とはされない。またその配合量は既存のチョコレート様食品におけるホワイトチョコレートやカラーチョコレートの配合を適宜用いることができる。
【0022】
風味材と発色成分はその双方の機能を同時に持つ素材であってもかまわない。
特に限定はされないが風味材と発色成分の機能を同時に持つ素材としては、オレンジやイチゴなどのフリーズドライ品といった果汁粉末や抹茶粉末等、後で説明されるが、チョコレート様食品を含水用途で用いる場合はフルーツペーストといった含水系のものが挙げられ、発色成分単独の機能を有するものとしてはアントシアニン系色素やフラボノイド系色素といった食品用途の色素が、風味材単独の機能を有する風味素材としては、オレンジフレーバーやイチゴフレーバー、抹茶フレーバー、ミルクフレーバーといった食品用途の香料が挙げられる。特に限定はされず、現行の食品に用いられているものを適宜用いることが可能である。また、その添加量についても、現行の食品に用いられている量に準じて適宜適応できるが、従来品よりも、ベースのココアバター由来の色や風味が減じている分、雑味のすくない、濁色のすくない添加効果が得られる。
【0023】
他の食品へのコーチングとは特に限定はされないが、一例として常温は洋生、冷凍下ではアイスコーチング、また、チョコレート様食品自体が含水のものでは艶出し上掛け剤(グラサージュ)と呼称され、艶や発色がよい。
コーチングはコーチング対象食品とあいまった複合食品としての風味や色合いが重要であり、そのため特に薄く被覆する場合は、透明感や発色が特に重要である。
従来のグラサージュではカカオ固形分の入った、所謂チョコレート色のものが殆どであり、白色やカラーのグラサージュは色が黄色・混濁するため用いられることがほとんどなかったが、本願発明のコーチング用チョコレート様食品を用いることで鮮やかな白色・カラーのグラサージュが可能となった。
加えて、本願発明のチョコレート様食品をベースとして用いる以外に製造上の制限がなく、含水化やカラー化は原料メーカではなく最終商品とする直前、すなわち、消費者に販売する一歩手前の製造者が自由に設計・作成する点で汎用性が高い。
【0024】
複合食品としての風味や色合いを期待する場合、コーチングは対象食品が薄く見えるほど効果は大きく、厚さとして5mm以下、望ましくは3mm以下、さらに望ましくは1mm以下であることが好ましい。
【0025】
本願発明におけるチョコレート様食品は上記ハードバターをはじめとする油脂のほかにも糖類や乳成分等の原料、乳化剤や保存料、酸化防止剤といった添加物を配合するが、従来のコーチング用チョコレート様食品素材で用いられているものなら、所望により任意のものを使用できる。
ただし、コーチングで用いる場合は表面積が大きい為、空気や光にさらされることで酸化を受けやすく、酸化防止剤の添加が望ましい。一例としてはアスコルビン酸、クエン酸等が上げられるが、特に風味的な影響や酸化防止の機能の点からトコフェロールや茶抽出物、ルチンの添加が好適に用いられる。
本発明におけるトコフェロールや茶抽出物、ルチンとしては、それ自体既知のものであり、市販品として入手可能である。これらは天然の植物から抽出した精製品でも未精製品でもよく、合成品でも良い。
本発明のチョコレート様食品に用いるトコフェロールの使用量については好ましくは0.001〜1重量%、さらに好ましくは0.005〜0.7重量%、最も好ましくは、0.01〜0.5重量%の範囲で使用するのが、望ましい。トコフェロールの使用量が、少ない場合は、期待される効果は得られにくく、多い場合には風味に影響がでる場合がある。
【0026】
茶抽出物はカテキンが好適に用いられる。カテキンとしては、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートなどが挙げられ、用いられるのは単体でも混合品でも良い。それらカテキン類を多く含むものとして茶抽出物があげられ、茶抽出物はカテキン類のほかにもタンニン類やケンフェロール、クエルセチン、ミリセチン等のフラボノイド類のフェノール性水酸基によるラジカルを捕らえる機能が高く、好適に用いられる。
【0027】
ルチンは、ソバなどに多く含まれる油溶性の酸化防止剤であるが、酵素処理にて水溶性を付与したものもあり、どちらでもかまわない。本発明のチョコレート様食品に用いるルチン使用量については好ましくは0.0001〜0.3重量%、さらに好ましくは、0.001〜0.1重量%、最も好ましくは、0.003〜0.05重量%の範囲で使用するのが好ましい。ルチンの使用量が少ない場合は、期待される効果は得られにくく、多い場合には風味や色調に影響が出る場合がある。
【0028】
また、製造方法についても上記の原料を適宜選択して混合し、通常のロールリファイナー、コンチェによる製法はもちろん、アトライターによる方法などの製造法を採用することもできる。また粒度、粘度、油分等など物性面などについてもチョコレート様食品として使用できるものであれば任意に製造することができる。ただし本願のチョコレート様食品はコーチングがすることに特徴があるため、チョコレート様食品の粘度はコーチングに適した程度に調節する必要はある。
【0029】
チョコレート類に代表される従来のチョコレート様食品においては、クリーム類に代表される水性成分と混合して製造する、所謂「ガナッシュ」や「生チョコレート」と呼ばれる含水チョコレート様食品としての用途があるが、本願発明のチョコレート様食品も従来のものと同様に含水にて用いることができる。
特に含水用途は水性成分と合わせて用いる為、みずみずしい風味発現が要求されるケースが多く、カカオ固形分の所謂チョコレート的な風味を目標とする以外においてはベースとなるチョコレート様食品由来の風味が雑味として発現しがちである。そのような場合は特に本願発明は好適に用いられる。
なお、水性成分とチョコレート様食品を合わせた含水チョコレート様食品は、油相が連続相である油中水型乳化物、油相が連続相でない水中油型乳化物、及びそれらの混在したものがあるが、本願においては水性成分と混合されたものでありさえすれば特に限定はされない。チョコレート様食品としては油相が連続相である必要があるが、概チョコレート様食品を用いてさえいれば、含水チョコレート様食品の状態では油相が連続相でない水中油型乳化物の状態であってもかまわない。後述のゲル化剤を配合する場合は水相が連続相である水中油型乳化物である方がより望ましい。
【0030】
また、用いられる水性成分についても、特に限定はされないが、水そのもの、全粉乳もしくは脱脂粉乳を水に溶解もしくは分散させたもの、天然の生クリームや牛乳、濃縮乳、もしくは従来開発されてきた動植物性油脂等を使用した合成クリーム類等の乳成分を含むといった乳化物などが挙げられる。
配合される水性成分の量についても特に限定はされないものの、含水チョコレート様食品全体に対して水分の量の上限は60重量%以下、好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは40重量%以下であることが望ましい。水性成分が極端に多すぎる場合、相対的にチョコレート様食品が減るため、本願発明の効果である白や発色素材の鮮やかな発色や風味の阻害に対しての効果が得られにくい。下限については特に制限されない。水分が無いと元のチョコレート様食品となるだけだが、含水チョコレート様食品、特に水中油型乳化物としてそのみずみずしい食感や風味、艶や透明感を期待する場合は10重量%以上、好ましくは15重量%であることが望ましい。
【0031】
含水用途は発色、色艶がよいためベースとなるチョコレート様食品由来の淡黄色の影響が発現しやすく、この場合においても本願発明は好適に用いられる。
含水用途においてはゲル化剤を配合してあることが望ましい。ゲル化剤は特に限定はされないが、該ゲル化剤が配合されることでチキソトロピー、すなわち、応力を受ける塗布中はゾル状態で流動性をしめし、応力がなくなる塗布後表面に載った段階ではゲル状態になるものが、塗布時の保形性が向上し、薄く表面の滑らかなコーチングを施しやすく望ましい。さらには、冷却により応力を受けても流動性のない状態になる冷却凝固性のゲル化剤が望ましい。
【0032】
添加により含水チョコレート様食品がチキソトロピーを呈し、冷却凝固性のゲル化剤としては、ゼラチン、カラギーナン、ペクチン、寒天、ジェランガム等から、適宜選択して単独または併用して用いることができる。これらの中でもゼラチンは口の中で急速に溶解し、且つ表面が平滑で艶がよい仕上がりになるので、特に好ましい。
ゲル化剤の含有量としても特に限定はされないが、グラサージュとしての機能を期待するのであれば、含水チョコレート様食品中、0.1〜5重量%、好ましくは0.2〜2重量%、さらに好ましくは0.4〜1.0重量%が好ましく、少なすぎれば無水のコーチング用チョコレート様食品素材と変わらず、また、多すぎれば粘度が上昇しすぎ、薄くコーチングしにくい。
【実施例】
【0033】
以下に本発明の実施例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明の精神は以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、%及び部は、いずれも重量基準を意味する。
【0034】
<実施例1>
・チョコレート様食品の調製
市販のテンパリング型ハードバター(商品名:メラノSS7、不二製油(株)製、ロビボンド比色計 Y値=2.5)33部、全粉乳30部、グラニュー糖37部、大豆レシチン0.4部、トコフェロール(商品名:理研オイルスーパー80、理研ビタミン(株)製、;トコフェロール64%含有)0.1部、ルチン(商品名:αルチンPS、東洋精糖(株)製、;ルチン82%含有)0.01部を定法によりロールリファイナー、コンチェ処理により、ホワイトチョコ様食品を調製した。
ついで、粉ゼラチン(ゼライス株式会社製)0.5部を2.5部の温水にて膨潤溶解し、40℃に温調した牛乳30部に添加し均一に溶解させたのち、さらにグルコース10部を溶解したものを水性成分とした。
上記、淡色チョコレート様食品素材57部を40℃に調温し、これに前出の水性成分43部を少しずつ混合しながらあわせて含水チョコレート様食品を得た。
・上掛け対象食品(ババロア)の調整
卵黄100部をほぐし、グラニュー糖100部を加え、泡立て器で撹拌、さらに牛乳200部を加え、かき混ぜながら弱火でとろみが感じられるまで加熱、アングレーズと称される素材を作製し、ついで粉ゼラチン18部を90部の温水にて膨潤し、洋酒(コアントロー)30部を加えたものをアングレーズに合わせて裏ごしする。
最後に別途用意しチョコレート様食品(上記配合・製造工程にて作製)200部と、フィリング(製品名:ガトーノイエ22、不二製油株式会社製)400部をポマード状になるまで攪拌したものを上記調整したゼラチンとアングレーズの混合物に加え、均一になるように混合し、型に入れて冷却固化した後に抜き出し、上掛け対象食品であるババロアを得た。
【0035】
・上掛け工程
上掛け対象食品(ババロア)にホワイトチョコ様食品素材ならびに含水チョコレート様食品を満遍なくコーチングし、組み合わせ食品を得た。
得られたホワイトチョコレート様食品、含水チョコレート様食品、は白色で極めて外見上特徴のあるものであった。また、ホワイトチョコレート様食品を上掛けした組み合わせ食品は、白色上掛け対象のババロアの白色をにごらせることなく従来無い特徴的な白色の外観をもち、さらに、含水チョコレート様食品を上掛けした組み合わせ食品は、透明感があるためより一層上掛け対象のババロアの白色を際立たせ、これも従来無い特徴的な白色の外観であった。
【0036】
<実施例2>
市販ココアバター(商品名:アストラA、ADM社製)を定法により実施例1と同じ条件で脱ガム、脱酸、脱臭、脱色処理を行い、ロビボンド比色計 Y値=10の精製ココアバターを得た。これを33部、全粉乳30部、グラニュー糖37部、大豆レシチン0.4部、トコフェロール(商品名:理研オイルスーパー80、理研ビタミン(株)製、;トコフェロール64%含有)0.1部、ルチン(商品名:αルチンPS、東洋精糖(株)製、;ルチン82%含有)0.01部を定法によりロールリファイナー、コンチェ処理により、ホワイトチョコレート様食品を調製し、さらに実施例1と同配合、同工程にて含水チョコレート様食品を得た。
【0037】
また、実施例1のホワイトチョコレート様食品を用いて作成した上掛け対象食品(ババロア)に対しても実施例2のホワイトチョコレート様食品および含水チョコレート様食品を上掛けして組み合わせ食品を得た。
得られたホワイトチョコレート様食品、含水チョコレート様食品、並びにそれぞれの組み合わせ食品は実施例1に比べるとやや黄色味がかかった白色ではあるものの、従来型のチョコレート様食品では出しえない白さであり、外見上特徴のあるものであった。
【0038】
<比較例1>
市販ココアバター(商品名:アストラA、ADM社製 ロビボンド比色計 Y値=75)を実施例1の精製ココアバターの代わりに処理せずにそのまま使用する以外は実施例1と同配合、同工程にて、従来型のホワイトチョコレート様食品と含水チョコレート様食品を得た。
また、実施例1のホワイトチョコレート様食品を用いて作成した上掛け対象食品(ババロア)に対しても比較例1のホワイトチョコレート様食品および含水チョコレート様食品を上掛けして組み合わせ食品を得た。
このホワイトチョコレート様食品並びに、含水チョコレート様食品はココアバター風味が非常強いものであったが黄色味も極めて強く、従来品としては通常の色調ではあるが、本願発明の目的とする白色の製品を意図した場合にはあまりに色味が強く、望ましいものではなかった。
特に組み合わせ食品、なかでも含水チョコレート様食品を上掛けしたものは、半ば透けて見える折角の白いババロアの色が黄色くくすんだものとなった。
【0039】
<実施例3>
実施例1にイチゴパウダー(商品名:イチゴパウダーC23 佐藤食品工業株式会社)7部
を加える以外は実施例1と同配合、同工程にて、淡色チョコレート様食品と含水チョコレート様食品を得た。
また、実施例1のホワイトチョコレート様食品を用いて作成した上掛け対象食品(ババロア)に対しても実施例3の淡色チョコレート様食品および含水チョコレート様食品を上掛けして組み合わせ食品を得た。
得られたイチゴの風味カラーチョコレート様食品、イチゴの風味含水チョコレート様食品素材、並びに組み合わせ食品は、イチゴの風味が良好に発揮され、またイチゴのピンク色が濁らず、従来型の淡色チョコレート様食品素材では出しえない鮮やかな発色の外見上特徴のあるものであった。
特に組み合わせ食品、なかでも含水チョコレート様食品を上掛けしたものは、半ば透けて見える白いババロアの色をイチゴのピンク色が濁らすことなく発色させることができ、外見上大変特徴のあるものであった。
【0040】
<比較例2>
市販ココアバター(商品名:アストラA、ADM社製 ロビボンド比色計 Y値=75)を実施例3の精製ココアバターの代わり処理せずにそのまま使用する以外は実施例3と同配合、同工程にて、従来型の淡色チョコレート様食品素材、淡色含水チョコレート様食品素材、さらには組み合わせ食品を得た。この淡色チョコレート様食品素材並びに、淡色含水チョコレート様食品素材はココアバター風味が非常強く、目的である新鮮なイチゴの風味を阻害し、また同じくココアバターの黄色味が、目的であるピンク色の色調を濁らせており、従来のカラーチョコレート様食品の範疇を越えるものではなかった。
特に組み合わせ食品、なかでも含水チョコレート様食品を上掛けしたものは、半ば透けて見える白いババロアの色にイチゴのピンク色とココアバターの黄色味がまじりあい濁った色調のものとなった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によって、他の食品にコーチングするに際し、極めて平易な方法にて、ホワイトチョコレート様食品の乳風味や白色、カラーチョコレート様食品の風味や発色、さらにはコーチング対象の食品と組み合わせた際の風味や色合いの発現を阻害しないチョコレート様食品ならびにその複合食品を得ることが可能になった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーチング用であって、ロビボンド比色計のY値が20以下の精製ハードバターを用い、且つ、無脂カカオ固形分を実質的に含まず、無脂乳固形分、発色成分および風味材からなる群より選ばれた少なくとも1種以上を含んでなる、チョコレート様食品。
【請求項2】
請求項1記載のチョコレート様食品に水性成分を配合してなる含水チョコレート様食品。
【請求項3】
ゲル化剤を配合してなる、請求項2記載の含水チョコレート様食品。
【請求項4】
コーチング用である請求項2または請求項3記載の含水チョコレート様食品。
【請求項5】
請求項1記載のチョコレート様食品または請求項4記載の含水チョコレート様食品を他の食品にコーチングしてなる複合食品。