説明

チロキシンとアルブミンとの結合体を製造する方法

【課題】本発明の課題は、精製度の高いチロキシンとアルブミンとの結合体を製造する方法を提供することにある。
【解決手段】アルブミンと結合するためのカルボキシル基を有するチロキシンにおける上記カルボキシル基を活性エステル化させた後、上記チロキシンとアルブミンとを反応させて、チロキシンとアルブミンとの結合体を調製する工程(a);及び、上記のアルブミンと結合するためのカルボキシル基を有するチロキシンが溶解し、かつアルブミンが沈殿しない酸性の水性混合溶媒を用いて、前記結合体を精製する工程(b)を含む、チロキシンとアルブミンとの結合体を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チロキシンとアルブミンとの結合体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チロキシン(T4)とは、甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンの一種であり、下記の構造式で表される。一般に、チロキシン(T4)は、全身の細胞に作用して細胞の代謝率を上昇させる働きを有する。甲状腺ホルモンとしては、チロキシンのほか、トリヨードチロニン(T3)が知られるが、血中を循環する甲状腺ホルモンのほとんどはチロキシン(T4)である。
【0003】
【化1】

【0004】
チロキシンと牛血清アルブミン(BSA)との結合体(以下、T4−BSA)は、チロキシン抗体を作成するためのポリハプテン等として利用されている。また、T4−BSAはT4の競合アッセイ等において応用される。本発明者らは、T4の競合アッセイ等において、T4−BSAの性能は、T4のBSAへの標識率に依存するものではなく、T4−BSAの精製純度が高いことに依存することを示す結果を得ている。しかしながら、T4−BSAの製造の際に、過剰にT4誘導体を使用するため、未反応のT4誘導体を除去することは、水系の溶媒を用いた透析やゲル濾過等の従来方法では限界がある。
【0005】
これまで、指示薬成分に連結されたハプテンを使用するイムノアッセイにおけるハプテントレーサーの不安定性およびその非特定的結合による分析結果への悪影響を排除する技術として、一方では直接またはスペーサー基を介して指示薬成分に連結するハプテンを含有し、他方では特異的に指示薬成分と結合可能な抗体を含有するハプテントレーサー複合体が知られている(特許文献1参照)。該複合体の製造方法では、指示薬成分に対する抗体を、指示薬成分に連結されたハプテンと水溶液中で混合し、指示薬成分に連結されたハプテンの溶解性を改良するために、該水溶液中にアセトニトリル等の有機溶媒が添加され得る。
【0006】
しかしながら、これまで、T4−BSAの精製するために、アセトニトリル等の有機溶媒を用いる技術は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−233812
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、より精製度の高いチロキシンとアルブミンとの結合体を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、所定の酸性の水性混合溶媒を用いて、チロキシンとアルブミンとの結合体を精製すると、未反応のチロキシン誘導体をより効率的に除去できることを発見した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
【0010】
すなわち、本発明の態様は以下に関する。
(1) アルブミンと結合するためのカルボキシル基を有するチロキシンにおける上記カルボキシル基を活性エステル化させた後、上記チロキシンとアルブミンとを反応させて、チロキシンとアルブミンとの結合体を調製する工程(a);及び、
上記のアルブミンと結合するためのカルボキシル基を有するチロキシンが溶解し、かつアルブミンが沈殿しない酸性の水性混合溶媒を用いて、前記結合体を精製する工程(b)
を含む、チロキシンとアルブミンとの結合体を製造する方法。
(2) 工程(b)において、未反応のアルブミンと結合するためのカルボキシル基を有する未反応のチロキシンを前記水性混合溶媒に溶出させることにより、前記結合体を精製する、(1)に記載の方法。
(3) 工程(b)において、工程(a)で得られた反応産物を前記水性混合溶媒中で透析することにより、前記結合体を精製する、(1)又は(2)に記載の方法。
(4) 工程(b)において、ゲル濾過法により前記結合体を精製する、(1)又は(2)に記載の方法。
(5) 前記水性混合溶媒が、水、アセトニトリル及びトリフルオロ酢酸の混合物である、(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6) 工程(a)を、中性又は塩基性の条件下で行う、(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7) (1)〜(6)のいずれかに記載の方法により得られる、チロキシンとアルブミンとの結合体。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法によれば、より純度の高いチロキシンとアルブミンとの結合体を製造することが可能である。本発明により製造した結合体は、ELIZA、競合アッセイ等のアプリケーションにおいて、より高いシグナル感度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例における蛍光粒子法の評価結果を示す図である。
【図2】実施例における蛍光粒子法の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の製造方法は、アルブミンと結合するためのカルボキシル基を有するチロキシンにおける上記カルボキシル基を活性エステル化させた後、上記チロキシンとアルブミンとを反応させて、チロキシンとアルブミンとの結合体を調製する工程(a);及び、上記のアルブミンと結合するためのカルボキシル基を有するチロキシンが溶解し、かつアルブミンが沈殿しない酸性の水性混合溶媒を用いて、前記結合体を精製する工程(b)を含むことを特徴とする。
本発明の酸性の水性混合溶媒において、「アルブミンが沈殿しない」とは、言い換えると、「アルブミンが溶解又は懸濁する」ことを意味する。
【0014】
本発明において、チロキシンとアルブミンとの結合体を調製するために用いることができる、アルブミンと結合するためのカルボキシル基を有するチロキシン(以下、チロキシン誘導体と称することがある)の構造は、アルブミンと結合体を形成し得る限り、特に限定されるものではなく、種々の修飾を受けたチロキシンを含む。例えば、カルボキシル基を予めエステル化したチロキシンのアミノ基に、末端がカルボキシル基となるリンカーを導入して得られる誘導体を用いることができる。リンカー部分は、例えば、−O−、−NH−、−CO−、低級アルキレンから選ばれる基の組合せであってもよい。このようなチロキシン誘導体のカルボキシル基末端を活性エステル化し、アルブミンのアミノ基と結合させることにより、チロキシンとアルブミンとの結合体を調製することができる。チロキシン誘導体のカルボキシル基を活性エステル化するためには、例えば、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、N−ヒドロキシスルホスクシンイミド(Sulfo-NHS)等を用いることができる。
なお、本明細書で言うチロキシンとアルブミンとの結合体とは、好ましくは、チロキシンとアルブミンとが共有結合により結合している結合体である。
【0015】
本発明のアルブミンと結合するためのカルボキシル基を有するチロキシンは、具体的には、下記一般式(1)で表されることが好ましい。
【化2】

[式中、Xは、低級アルキル基、好ましくは、メチル基又はエチル基を表し;Lはリンカーを示す。]
Lが示すリンカーは好ましくは、−O−、−NH−、−CO−、及び低級アルキレン(好ましくは、炭素数1〜4のアルキレン)から選ばれる基の組合せからなる。
上記一般式(1)で表される化合物のカルボキシル基を活性エステル化した後、該化合物とアルブミンとを反応させて、本発明のチロキシンとアルブミンとの結合体を調製することができる。
【0016】
本発明において用いられるアルブミンとしては、卵アルブミン、血清アルブミン、乳アルブミンが挙げられる。好ましくは血清アルブミンが用いられ、牛血清アルブミン(BSA)、ヒト血清アルブミン、モルモット血清アルブミン、マウス血清アルブミン、ブタ血清アルブミン、ウサギ血清アルブミン、ラット血清アルブミン、ヒツジ血清アルブミン等が市販品として入手可能であり、より好ましくは牛血清アルブミン(BSA)が用いられる。
【0017】
本発明において、チロキシンとアルブミンとの結合体の調製は、特に限定させるものではないが、チロキシン誘導体のカルボキシル基を活性エステル化した後、例えば、過剰量の該チロキシン誘導体と、アルブミンとをリン酸緩衝液中に溶解し、所定の時間インキュベートすることにより行うことができる。チロキシンとアルブミンとの結合体を調整する工程は、中性または塩基性の条件下で行うことが好ましい。反応溶液のpHは、例えば、6.5〜11、好ましくは6.5〜9、より好ましくは6.5〜7.5、最も好ましくは7.0である。得られた反応液は、本発明による精製工程に先立って、遠心分離、濾過等により粗精製することもできる。
【0018】
本発明は、上記により得られたチロキシンとアルブミンとの結合体を含む反応物から、チロキシン誘導体が溶解し、かつアルブミンが沈殿しない酸性の水性混合溶媒を用いて、該結合体を精製することを特徴とする。上記反応物には、未反応のチロキシン誘導体が多量に含まれているため、本発明の精製工程により、これら未反応のチロキシン誘導体をより効率的に除去する。また、アルブミンに疎水結合したチロキシン誘導体も効率的に除去することが可能となる。
【0019】
本発明で用いられる酸性の水性混合溶媒は、水、酸、及び所定の有機溶媒から実質的に構成される。酸としては、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸、酢酸、トリクロロ酢酸等が挙げられ、トリフルオロ酢酸を用いることが好ましい。有機溶媒としては、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール等が挙げられ、アセトニトリルを用いることが好ましい。
【0020】
水、酸、所定の有効溶媒の混合割合は、チロキシン誘導体が溶解し、かつアルブミンが沈殿しない酸性の水性混合溶媒となる限り、特に限定されるものではない。例えば、水と有機溶媒との比率は、30:70〜70:30、好ましくは35:65〜65:30、より好ましくは40:60〜60:40、特に好ましくは45:55〜55:45とすることができる。水性混合溶媒中の酸の濃度は、例えば、0.001〜5重量%、好ましくは、0.01〜2重量%とすることができる。本発明の水性混合溶媒の酸性度(pH)は、pH試験紙で測定した場合に、好ましくは0〜6、より好ましくは0〜4、最も好ましくは1〜3である。水性混合溶媒を酸性にすることにより、アルブミンのコンフォメーションが徐々に変化して、アルブミンに内包されていたチロキシン誘導体が、水性混合溶媒中に溶出される。また、酸性下では、フェノール性水酸基やカルボキシル基を有するチロキシン誘導体は水に溶解しにくくなるが、酸性の水性混合溶媒を用いることでチロキシン誘導体の溶出性を確保することができる。
【0021】
上記の通り調製した酸性の水性混合溶媒を用いて、結合体の精製を行うと、より効率的に未反応のチロキシン誘導体を該水性混合溶媒中に分離することができ、より純度の高い本発明の結合体を得ることができる。精製の具体的な形態としては、酸性の水性混合溶媒を用いて、透析、ゲル濾過等により、未反応のチロキシン誘導体と、本発明の結合体とを分離することができる。透析による場合には、適切な透析膜中に、チロキシン誘導体とアルブミンとの反応産物を添加し、本発明の酸性の水性混合溶媒中に該透析膜を投入して、透析膜中の反応物溶媒を酸性の水性混合溶媒で置換することにより、透析膜中から外側の酸性の水性混合溶媒へ未反応のチロキシン誘導体を溶出させる。本発明において用いられる透析膜の分画分子量は、未反応のチロキシン誘導体と本発明の結合体とを分離できる限り、特に限定されるものではないが、例えば、分画分子量が10,000程度の透析膜を用いることができる。ゲル濾過による場合には、適切なゲル濾過用担体をカラムに充填し、該カラム中を本発明の酸性の水性混合溶媒で置換した後、チロキシン誘導体とアルブミンとの反応産物をゲル濾過カラムに注入し、さらに、本発明の酸性の水性混合溶媒を該ゲル濾過カラムに注入して、未反応のチロキシン誘導体と、本発明の結合体を分離することができる。本発明において使用できるゲル濾過用担体の具体例としては、有機溶媒耐性のある、セファデックス(Sephadex)LH−20(GE社製)を挙げることができる。本発明の精製工程において用いられる水性混合溶媒の好ましい量は、出発材料として用いるBSA500mgに対して、好ましくは500mL〜50L、より好ましくは1L〜30L、最も好ましくは2L〜15Lである。
【0022】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0023】
[実施例]
<チロキシン及び牛血清アルブミンの結合体の調製>
以下、スキーム1に従って、T4誘導体1からT4誘導体2を合成した。
【0024】
【化3】

【0025】
T4誘導体1(米国特許公報第4040907に合成法は記載)270mgをジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、室温で攪拌した。その後、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC;同仁化学社製)285mg、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS;和光純薬社製)174mgを加え、室温で2時間攪拌し、T4誘導体2を合成した。
【0026】
次いで、スキーム2に示す通り、得られたT4誘導体2と、牛血清アルブミン(BSA)との結合体(T4−BSA)を調製した。
【0027】
【化4】

【0028】
BSA500mgを100mLの20mMリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解し、上記で得られたT4誘導体2を含むDMF溶液を該緩衝液中に添加した。その後、室温で終夜静置した。
反応終了後、白色の沈殿物を、遠心分離(3,300g、30 min、4℃)により除去し、上清を回収した。回収した上清を0.22μmのフィルターで濾過し、濾液を、以下に説明の通り、透析による精製に供した。
【0029】
<透析による精製>
上記得られた濾液を透析膜チューブ(品名:SnakeSkin Pleated Dialysis Tubing, 10,000 MWCO, 22 mm×35フィート乾燥直径;プロダクト#:68100;Thermo Scientific社製)に投入した。5Lビーカーに0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)を含有するイオン交換水(HO)及びアセトニトリル(AR)(1:1)の混合溶媒5Lを投入した。テックジャム社製リール式pH試験紙(カタログ番号:商品コードNO:KN3138095)を用いて上記混合溶媒のpHを測定したところ1であった。上記濾液の入った透析膜チューブを該混合溶媒中に投入して、室温でゆっくりと攪拌した。
【0030】
透析後、透析チューブ内の水溶液を回収した。回収した水溶液を、500mLのナス型フラスコへ注いで、液体窒素で凍結し、凍結乾燥を行い、本発明のT4とアルブミンとの結合体として、白色固体約400mgを得た。
【0031】
<T4/BSA値の分析>
BSA一分子当たりに結合しているT4分子の数を、T4/BSA値として測定した。
測定は、MALDI−TOF−MS測定により行った。マトリックスとしてシナピン酸(シグマアルドリッチ社製)を用いた。0.1%TFAを含む水及びアセトニトリル(1:1)の混合液に、シナピン酸を10mg/mLの濃度で溶解してマトリックス溶液を調製した。該マトリックス溶液とT4−BSA水溶液(精製水)とを、1:1(各5μL)で混合し、マイクロチューブ中で十分ピペッテインングした。その後、MSの基盤プレート上に、該混合液を5μL滴下し、室温で自然乾燥させ、MS測定を行った。測定モードは、liner mode、positive modeで行い、分子量60,000〜100,000で測定した。
【0032】
<残存T4量の定量>
上記で得られたT4-BSA試料(凍結乾燥品)中に残存する未反応のT4誘導体を、以下に説明の通り、高速液体クロマトグラフィー法により測定した。以下、測定した値をT4残量(wt%)とする。
【0033】
まず、上記得られた凍結乾燥品を7mg程度採取し、5mLのアセトニトリル及び水(1:1)の混合溶媒に溶解し、0.45μmフィルターで濾過し、カラムへインジェクトした。
測定条件は以下の通りである。
【0034】
(測定条件)
・カラム:東ソー社製 TSKgelODS−100Z(4.6*250mm;ロット番号:P0103)
・ガードカラム:Waters C18
・溶離液A:HO=100(0.1%TFA)
溶離液B:アセトニトリル=100(0.1%TFA)
※TFAは揮発性であるため、溶離液は用時調製した。
・リンス液:アセトニトリル/HO=9/1 vol.
・タイムプログラム:
【表1】


・流量:1.0mL/min
・カラム温度:40℃
・波長:検出器A 254nm
・感度:AUX 2
・注入量:10μL
・サンプル濃度:T4−BSA(凍結乾燥品)10mgをAR/HO(1/1)の混合溶媒に溶解させた。
【0035】
<蛍光粒子法による評価>
(プレートの作成)
150mM NaClで、上記で得られた精製試料(凍結乾燥品)を50μg/mLに調製した。該溶液100μLを96ウェルプレートの各ウェルに添加し、96ウェルプレートを、室温で、700rpm、1時間、振とうした。反応後、上澄み液を捨て、ブロッキング試薬N102(日油社製)を350μL添加し、96ウェルプレートを、室温で、700rpm、1時間、振とうした。反応終了後、上澄み液を捨て、イムノアッセイスタビライザー(ABI社製)を350μL添加し、96ウェルプレートを、室温で、700rpm、0.5時間、振とうした。その後、上澄み液を捨て、乾燥させた。
【0036】
(蛍光測定評価)
T4抗体標識蛍光粒子1%solid(1%BSA、1×PBS水溶液)を1×PBSで0.0025%に希釈した。この分散液を、上記96ウェルプレートの各ウェルに100μL添加し、96ウェルプレートを、室温で、700rpm、1時間、振とうした。反応終了後、上澄み液を捨て、PBST300μLで4回洗浄し、蛍光プレートリーダーで測定(Ex=660nm、Em=680nm)した。なお、「抗体標識蛍光粒子1%solid」とは、ラテックス粒子の固形分濃度が1wt%(1wt%=1gラテックス粒子/100mL水)を意味する。
【0037】
[比較例]
上記実施例において、透析による精製において表2の精製条件に示す溶媒を用いた以外は、実施例と同様にして結合体を製造した。製造した結合体は、実施例と同様に、上記の各種分析に供試し、評価を行った。
【0038】
[結果]
以下の表2及び表3に、実施例及び比較例において製造した結合体の各ロットについて、各種分析結果を示す。また、表2に示す各ロットについて、蛍光粒子法による評価の結果を図1に示す。なお、表2における蛍光粒子法における相対シグナル値(%)は、ロットAを100%とした相対値である。さらに、表3に示す各ロットについて、T4残量(wt%)と蛍光粒子法における平均シグナル値の相関関係を図2に示す。
【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
上記各種分析結果から、実施例の各ロットのT4残量は比較例の各ロットのT4残量よりも低いことが判る。そして、実施例の各ロットの蛍光粒子法におけるシグナル値は、T4/BSA値に関係なく、より高い値を示した。一方、比較例の各ロットでは、未反応のT4誘導体がより多く残存しており、蛍光粒子法における相対シグナル値は実施例と比較して低いものだった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルブミンと結合するためのカルボキシル基を有するチロキシンにおける上記カルボキシル基を活性エステル化させた後、上記チロキシンとアルブミンとを反応させて、チロキシンとアルブミンとの結合体を調製する工程(a);及び、
上記のアルブミンと結合するためのカルボキシル基を有するチロキシンが溶解し、かつアルブミンが沈殿しない酸性の水性混合溶媒を用いて、前記結合体を精製する工程(b)
を含む、チロキシンとアルブミンとの結合体を製造する方法。
【請求項2】
工程(b)において、アルブミンと結合するためのカルボキシル基を有する未反応のチロキシンを前記水性混合溶媒に溶出させることにより、前記結合体を精製する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(b)において、工程(a)で得られた反応産物を前記水性混合溶媒中で透析することにより、前記結合体を精製する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(b)において、ゲル濾過法により前記結合体を精製する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記水性混合溶媒が、水、アセトニトリル及びトリフルオロ酢酸の混合物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程(a)を、中性又は塩基性の条件下で行う、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法により得られる、チロキシンとアルブミンとの結合体。

【図1】
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【図2】
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