説明

ツール動作を生成するための器具及び方法

本発明は、特にICSIなどの生体細胞材料に対する作業向けにツールの動作を生成するための器具において、器具は、少なくとも1つのアクチュエータ素子と、被動部材と、ツールを配設できかつ被動部材にリンクされている動作区分とを備え、被動部材は弾性変形可能であり、アクチュエータ素子は、アクチュエータ素子による起動が被動部材の長さ変化に対応する距離だけ被動部材を弾性変形させるような形で、被動部材にリンクされており、この長さ変化が動作区分の動作をひき起こす、器具に関する。さらに、ツール動作を生成する方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に軟質の生体細胞材料に対する作業向けのツール動作を生成するための器具及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような器具及び方法は、例えば特に細胞の除核及び核移植のための生物医学的利用分野における用途から公知である。ヒト又は動物の細胞の体外受精(IVF)の分野では、卵細胞(卵母細胞)内に直接単一の精子を注入する体外受精手順であるいわゆる卵細胞質内精子注入法(ICSI)という方法が公知である。マウス又はラットの卵母細胞は100〜120μmの直径を有する。この細胞は比較的大きいために、関与する生物学的構成要素を機械的に処理することができる。ICSI方法は、精確な位置づけのためのマイクロマニピュレータ、圧力を付加するため又は例えばおよそ数マイクロリットルなどの小量を補給するためのマイクロインジュクター、そして小量の流路を誘導するためそして詳細には生細胞と接触させるためのマイクロキャピラリを含む顕微操作装置を用いて顕微鏡下で行われる。卵母細胞は、マイクロインジェクタによって適用される穏やかな吸引と共に保持用キャピラリーによって安定化される。反対側からは、典型的にはわずか数(例えば7)μmの開口部直径を伴う薄い中空ガラス製マイクロキャピラリを用いて、マイクロキャピラリの先端部で単一の精子の尾部を切断することで精子を固定した後にこの精子が収集される。マイクロキャピラリは、卵細胞膜を通して卵母細胞の内側部分(細胞質)まで孔を開ける。次に、精子は卵母細胞内に放出される。ICSI中、卵母細胞にはマイクロキャピラリが貫入していなくてはならない。ここで、卵母細胞の外側保護外皮である透明帯は強度の高いものであることが判明しており、貫通のためには特殊な器具が必要とされる。発生中の胚の孵化を容易にするため外側から透明帯に的確なタイミングで孔を開けるアシストハッチングという生物医学的方法のためにも同様のものが必要とされる。
【0003】
このような器具及び方法は、例えば組織などの軟質細胞材料の剥離からもさらに公知である。このような公知の器具、マイクロディセクターが図面の図1に示されている。このマイクロディセクター1は、細胞組織の剥離、例えば組織学的標本から生物学的構成要素及び構造を摘出するために役立つ。マイクロディセクター1の作業原理に起因して、基部は全体としてU字形構成を有する。「U字形」の上部開口内に、圧電アクチュエータ2が取付けられ、これが右側部品との関係において「U字形」の左側部品を移動させる。「U字形」の左側部品は、旋回可能な支持アーム4を介して基部上に移動可能な形で取付けられていることから、基部3の動作区分5hに取付けられているツール5は、x軸の方向に沿って移動可能である。しかしながら、顕著なU字形状、詳細には支持アーム4の規定長が比較的大きいことから、動作は同様にy方向にも比較的大きい成分を示す。その上、「U字」形状の基部は、y方向に長いそのてこの腕の作用に起因して、x軸を中心とするねじれを特に受けやすい。圧電アクチュエータは通常、最適な直線の形で、例えばx方向だけで膨張及び収縮するわけではない。その代り、これらのアクチュエータはわずかに曲線を描く傾向をもち、この場合これがy及びz方向における追加の動作という形で現われる。このようなより多次元の動作は、時として有用なこともあるにせよ、必ずしも所望されるわけではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、特に軟質の生体細胞材料上での作業向けのツール動作を生成するための改良型の器具及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、請求項1に係る器具と請求項12に係る方法を提供することにより前記目的を達成している。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項の主題となっている。
【0006】
本発明による、特に生体細胞材料に対する作業向けにツールの動作を生成するための器具は、少なくとも1つのアクチュエータ素子と、弾性変形可能である被動部材と、ツールを配設できかつ前記被動部材にリンクされている動作区分とを備え、前記少なくとも1つのアクチュエータ素子は、前記アクチュエータ素子による起動が前記被動部材の長さ変化に対応する距離だけ被動部材を弾性変形させるような形で、前記被動部材にリンクされており、前記長さ変化が動作区分の前記動作をひき起こす。
【0007】
本発明による好ましい実施形態に係る器具及び方法は、好ましくは、生物学的、医学的、生物医学的又は化学的(例えば生化学的)利用分野などでの用途、好ましくは軟質の物質に対し作業を行なうために適応されており、好ましくは軟質でない物質に対する作業向けには適応されていない。軟質物質とは、例えばそれぞれ好ましくは10GPa、5GPa、1GPa、0.1GPa、0.01GPa又は0.001GPa未満のヤング率を有する組織などの生体物質のような物質であると理解される。しかしながら、非軟質物質に関する、詳細には10GPa超のヤング率を有する物質についての好ましい実施形態に係る器具の応用も同様に可能である。好ましい実施形態に係る器具は、好ましくはIVF、ICSI、アシストハッチング、除核、核移植、マイクロサージャリー、パッチクランプ及びその他の生物学的及び医学的分野のために使用され、使用されるように適応され、特にヒト、動物例えばマウス、ラット又はウシ亜科の動物由来の細胞特に卵母細胞について作業するために使用するように適応されているか、又は、それぞれこのような数多くの利用分野のために使用されるように適応されている。器具はさらに好ましくは、細胞材料の剥離、例えばパラフィン切片からの単一の細胞の剥離、組織学的切片からの部域の剥離及び/又は3D細胞培養からの幹細胞集合体の分離を行うために適応されている。しかしながら、この器具及び/又は方法は、特にナノメートル乃至マイクロメートルの範囲内又はその他の範囲内の振幅を伴う動作を必要とする他の利用分野、詳細には非生物医学的利用分野にも、そして一般的には好ましい実施形態に係る器具の利点及び特徴からの利益を受け得る利用分野にも、使用可能である。
【0008】
好ましい実施形態に係る器具の動作区分の動作は、被動部材により実現され、被動部材は少なくとも1つのアクチュエータ素子によって起動され、それ自体被動部材にリンクされた動作区分を起動している。好ましくは、少なくとも1つのアクチュエータ素子による1回の起動作用は、被動部材にもたらされた1回の長さ変更に実質的に等しい距離だけ被動部材を弾性変形させる。好ましくは、少なくとも1つのアクチュエータ素子の起動作用は、被動部材の正味長さ変化を導く。好ましくは、被動部材の第2の長さ変化は、1つの起動作用を実施する少なくとも1つのアクチュエータ素子の最初の長さ変化により実質的にひき起こされる。前記第1の長さ変化及び前記第2の長さ変化は好ましくは実質的に同時に発生する。好ましくは、被動部材の動作と少なくとも1つのアクチュエータ素子の動作の間の位相シフトは実質的に全く存在しない。好ましくは、第2の長さ変化(v−am)の値と第1の長さ変化(v−ae)の値は同じである。この構成は、アクチュエータ素子の作用と被動部材の(再)作用の間に好ましくは直接的な対話が達成され、そのため動作区分の動作をより精密に制御することができるようになり、かつ未定義の回数の振動を伴う振動動作を行うのではなく例えば1、2、3、4、5回以上の明確な変位などの制御された変位回数を伴う動作区分の変位の実現が可能となるという利点を提供する。好ましくは、v_am/v_aeという比率は、それぞれ、v_am/v_ae=1、|v_am/v_ae−1|<0.5又は0.2又は0.1又は0.01という条件のうちの1つを満たす。好ましくは、前記正味長さ変化は、値v_amを有する。
【0009】
器具は、好ましくは、動作区分を通って又は動作区分に取付けられている細長いツールの長さを通って走る(被動部材により起動された)動作区分の少なくとも部分的に線形的な動作の方向に対して平行である直線が、アクチュエータ素子を通らない又はアクチュエータ素子の一部分を通らないような形で構成されている。このような構成では、動作区分又は動作区分に取付けられたツールに対して外部から作用する衝撃が、アクチュエータ素子に対し力作用直線に沿って直接作用することはない。むしろ、前記衝撃及びその他の機械的荷重は、少なくとも部分的に又は(ほぼ)完全に、被動部材により吸収される。
【0010】
最も好ましくは、器具は、詳細には器具の外側から動作区分に又は動作区分に取付けられたツールに対して加えられる力が実質的に被動部材に伝達され、さらに被動部材から好ましくはこの被動部材に具備されている接続区分に向かって実質的に伝達され、好ましくは器具を保持するように適応され外部から加えられた力を(ほぼ)完全に又は少なくとも部分的に吸収しているホルダー装置に対して前記接続区分を介して好ましくはさらに伝達可能となるような形で構成されている。したがって、動作区分、被動部材及び接続区分そして潜在的なホルダー装置も、好ましくは直列で接続され、直接的力伝達連鎖を形成している。
【0011】
さらに、少なくとも1つのアクチュエータ素子は好ましくは、動作区分又は動作区分に取付けられているツールに対して詳細には外部から加えられる力が、例えば好ましくは0.001、0.01、0.1又は0.5などの最小限の割合しかアクチュエータ素子に作用しないような形で、被動部材に取付けられる。むしろ、前記力は、好ましくは被動部材にある接続区分に向かって、生として被動部材により伝達されさらに分配され、好ましくは、前記接続区分において器具を保持するために具備され得るホルダー装置までさらに分配可能である。
【0012】
好ましくは、動作区分に対して作用する力は、それぞれ好ましくは0.5、0.25、0.2、0.1、0.5、0.01、0.005、0.001より小さいものであるforce_on_ae/force_on_amの比率でアクチュエータ素子(ae)と被動部材(am)の間で分配される。これは、詳細には、動作区分上に作用する衝撃力に対抗する抵抗性が主として被動部材の抵抗性に基づくものであり、アクチュエータ素子の抵抗性にはさほど基づいていない場合に達成可能である。これを実施するためには、被動部材及び少なくとも1つのアクチュエータ素子の配設が好適であり、これによって、被動部材上では比較的大きい割合でそして1つ又は複数のアクチュエータ素子上では比較的小さい割合での前記力の分配が促進され、これは特に、好ましい実施形態に係る器具の複数の実施形態により実現されている。
【0013】
さらに、被動部材は、変形エネルギーの付加の下で(例えば衝撃力があった場合に)変形するその能力が例えばアクチュエータ素子の対応する能力に比べて比較的低くアクチュエータ素子にとっては比較的高い場合、より大量の抵抗を提供することになる。こうして、被動部材の材料のヤング率(Y_am)は好ましくは比較的高いものであり、1つ又は複数のアクチュエータ素子のヤング率(Y_ae)は好ましくは比較的低いものである。好ましくはY_aeは、Y_amに比べ少なくとも0.9、0.85、0.75、0.5、0.25、0.1又は0.05倍という低いものである。例えば、0.85<Y_ae/Y_am<0.90、0.5<Y_ae/Y_am<0.80又は0.1<Y_ae/Y_am<0.5であることが好ましい。
【0014】
これらの構成は、器具が他の器具よりもさらに堅牢であるという利点を提供し、動作区分は、ガラス基材に対するツールの意図せぬ衝撃、アクチュエータ上の前記構成要素ラインを介して非減衰状態で作用する長期応力又はその他の機械的応力の下で損傷を受けるかもしれない例えば圧電素子などのアクチュエータに対し直線力伝達連鎖の形で直接接続されている。好ましい実施形態に係る器具は、衝撃を緩衝し、より高い構造的安定性と堅牢性を提供し、本発明に係る方法の信頼性をより高いものにする被動部材を利用する。このような構成において、被動部材は、好ましい実施形態に係る器具の「骨格」であることがわかり、これは、好ましくは被動部材(「骨格」)に平行に取付けられて「筋肉」を形成する1つ又は複数のアクチュエータ素子によって移動させられる。
【0015】
さらに、好ましい実施形態に係る器具に従った被動部材に対する1つ又は複数のアクチュエータ素子のリンケージによって、より小型軽量な構成要素の使用が可能になり、システムの合計質量を小さくし、これにより、さらに高速の起動変更及び振動動作の場合にはさらに高い振動数が可能になる。その上、1つ又は複数のアクチュエータ素子を動作区分により近接して配設して、考えられるツール(キャピラリなど)への力の伝達をより効果的にすることができる。詳細には、好ましくは公知のU字形配設を回避することで、器具のより優れたねじり剛性が得られる。このことは、圧電アクチュエータを使用する好適なケースにとっては、きわめて重要である。圧電アクチュエータは通常、例えばx方向だけといった最適な直線の形で膨張や収縮をするわけではない。その代り、これらのアクチュエータはさらにわずかに曲線を描く傾向をもち、被動部材により予防されていない場合、これは、動作区分のx−及び/又はy方向の意図せぬ動作の形で現われる。特に「U字」形状は、y方向のそのてこの腕が長いために、x軸を中心とするねじれを発生させやすい。
【0016】
本発明に係る器具に関して、第2の要素に対する第1の要素のリンケージとは、好ましくは、第1の要素の動作が第2の要素の動作を結果としてもたらす場合、両方の部品の運動学的結合を意味する。リンケージ及び「リンクされる」という用語は、両部品が全ての次元で又は少なくとも1つ又は2つの次元で、例えば両部品を一体として形成すること又は力拘束、形態拘束又は接着ボンドタイプのうちの少なくとも1つによる接続によって、恒久的又は非恒久的に固定されることを意味し得る。第1の部品と第2の部品のリンケージにはさらに、第1の部品が第3の部品又はさらなる部品を介して第2の部品にリンクされている場合が含まれ、その場合、例えば第1の部品は第3の部品にリンクされ、第3の部品は第2の部品にリンクされている。例えば第1の部品はアクチュエータ素子であり得、第2の部品は被動部材であり得、第3の部品は1つ以上の接続手段であり得る。好ましい実施形態に係る器具のためには、構成要素のリンケージが、構成要素間のあそびを回避するようなものであることが好適である。詳細には、器具用として浮動ベアリングの使用は必須ではない。こうして、器具の設計コストは低くなり、生成される動作の精度及び器具の能力が改善される。
【0017】
動作区分は好ましくは、器具の別の部品、例えば被動部材と一体的に構築されている。被動部材は好ましくは中央軸に沿って延在し、動作区分は好ましくは、前記軸が前記動作区分を通って延在するような形で被動部材に配設される。詳細には、動作区分は、好ましくはツールを取付けるために適応された器具の区分である。
【0018】
動作区分は好ましくは、さらなる要素、詳細にはツール、例えばマイクロディセクターの針又はキャピラリーを恒久的に又は取外し可能な形で担持する又は接続又は保持するために適応されており、前記ツールは好ましくは金属、ガラス又はプラスチックで製造されている。
【0019】
好ましくは、ツールを取外し可能な形で取付けるための取付け用ヘッドが動作区分に対ししっかりと接続されているか又は接続可能であり、こうして、器具詳細には被動部材によって供給される動作は好ましくは完全に、ただし好ましくは少なくとも部分的にツールに伝達されてツールを移動させるようになっている。取付け用ヘッドは、要素例えばツールを取付け用ヘッドに接続するための接続手段を含んでいてよい。この接続手段はネジ山、ラッチ手段、磁石及び/又は類似のものなどを含んでいてよい。取付け用ヘッドは、例えば被動部材又はキャリヤなどの器具の別の部品と一体的に形成され得る。好ましくは、第2の接続手段により第1の取付け用ヘッドと取外し可能な形で接続されるように第2の取付け用ヘッドが具備され、こうして、特定のタイプ例えばキャピラリー又は針の外径に応じたタイプの要素例えばツールを保持するようにそれぞれ適応された異なる第2の取付け用ヘッドの使用が可能となっている。
【0020】
取付け用ヘッドは、流体が取付け用ヘッド内を流れてよい形で、少なくとも1本の流路を形成するように適応され得る。このことは、例えばキャピラリーがツールとして使用される場合に圧力又は低圧を加え、前記圧力変化及び制御された圧力を用いて例えば細胞などの標的材料に作用するために有用であり得る。流路の使用は、マイクロインジェクタと組合せて器具を使用するため、又は流路内の導電性電解質を介して電気接触が行なわれるパッチクランプ利用分野のため、あるいは流路が有用であるその他の利用分野のために好適である。さらに流体が取付け用ヘッド内を流れてよい形で流路を形成するように、任意の第2の取付け用ヘッドを適応させることができる。所要の場合には、前記流路の内部を外部に対し封止するため、詳細には2つの流路部品が接続される接合部位において流路を封止するために、封止手段例えばプラスチック製Oリングが具備される。
【0021】
被動部材は好ましくは、アクチュエータ素子により起動され得る器具の部品であり、かつ動作区分を移動させるアクチュエータとして役立つ器具の部品である。
【0022】
被動部材は好ましくは、好ましくは器具の他の構成要素を担持する基本部品又はその一部分である。例えば、この基部部品は、少なくとも1つのアクチュエータ素子及び/又は1つ又は複数アクチュエータ素子を被動部材に対しその第1及び第2の位置でリンクする任意のリンク手段のキャリヤであり得る。好ましくは、被動部材は、一体的に形成された部品である。しかしながら、好ましくは3つの次元全てにおいて互いに固定されて互いにリンクされている少なくとも2つ以上の部品が被動部材に含まれていることも可能でありかつ好適である。
【0023】
被動部材は好ましくは流体が被動部材内を流れてよいように少なくとも1本の流路を提供している。ここでもまた、このことは例えばツールとしてキャピラリーが使用される場合に圧力又は低圧を加え、前記圧力変化及び制御された圧力を用いて例えば細胞などの標的材料に作用するために有用であり得る。所要の場合には、前記流路の内部を外部に対し封止するため、詳細には接合部位で流路を封止するために、封止手段例えばプラスチック製Oリングが具備される。流路は、気体、液体が充填されるように適応され得、詳細には細胞原形質、培地、水、溶液又は水銀、Fluorinert(登録商標)又はシリコンオイルが充填されるように適応され得る。ただし、流路及び充填済み流路を提供することは好ましい実施形態に係る器具にとって必須ではなく任意である。
【0024】
被動部材は、好ましくは(仮想)軸に沿って延在しかつ好ましくは少なくとも部分的に前記軸との関係において対称に構築されている棒状部品又は管状部品であってよい。好ましくは、被動部材は細長い装置であり、その場合長さはそれぞれ高さ又は奥行より大きく、仮想軸は被動部材内をその長さに対し平行に走っており、さらにアクチュエータ素子は、第2の仮想軸に沿って作用するように配設され、こうして主として前記第2の軸に平行に1つ又は複数アクチュエータ素子の線形動作を生成し、被動部材及び少なくとも1つのアクチュエータ素子は好ましくは、第1の軸と第2の軸が平行又は同軸となるように配設されている。さらに好ましくは、前記第2の軸に平行な前記1つ又は複数アクチュエータ素子の動作の結果としてもたらされる正味の力ベクトルは、被動部材の面積中心又は断面の図心と一致し、前記断面は前記第1の軸に対し好ましくは垂直に取られ、これは好ましくは、被動部材の考えられる全ての断面又は少なくとも大部分にあてはまる。こうして、被動部材が単に細長くなっているだけで実質的に湾曲しておらず、そのためツールの切断又は掘削幅が小さくなるという利点が提供される。好ましくは、被動部材は、流路を形成する中空円筒形状の部品又はチューブであるか又はこれを含む。チューブ又は流路は、圧力によってか又は標的材料(例えば細胞)に対して注入材料例えば精液体積を注入することによって試料例えば細胞の標的軟質材料を機械的に処理するため、又は試料から標準軟質材料の体積を除去するため、例えばキャピラリーなどの適切なツールに圧力又は減圧を適用できるという利点を提供する。前記チューブ又は流路には好ましくは気体例えば空気、液体例えばFluorinert(登録商標)又は水銀である流体が充填されていることが好ましい。
【0025】
被動部材は、例えば少なくとも1つのアクチュエータ素子などのその他の部品を被動部材に接続又はリンクするため好ましくは被動部材と一体的に構築されている第3の接続手段を含む。このような第3の接続手段が好ましくは被動部材にリンクされる位置は、少なくとも1つのアクチュエータ部材が好ましくは被動部材にリンクされる前記第1及び/又は第2の位置である。
【0026】
前記第3の接続手段は、好ましくは被動部材がそれに沿って延在している軸を中心として被動部材において好ましくは円周方向に配設されている少なくとも1つの突起又は少なくとも1つの凹部を含んでいてよい。好ましくはこの第3の接続手段は被動部材の外部表面内に突起、凹部又は段を含み、これは好ましくはそれぞれに、相補的に形成された接続手段の係合のための係合部位を提供する。
【0027】
被動部材は好ましくは第1の位置及び第2の位置を提供し、被動部材は好ましくは前記第1の位置と前記第2の位置の間の距離に沿って延在し、好ましくはこの距離に対して平行に延在し、かつ好ましくは前記第1の位置と前記第2の位置の間の1本の軸を画定する直線距離に対して平行に延在する。前記第1の位置と第2の位置の間で、被動部材は好ましくは、前記距離の増加又は減少が、好ましくはそれを湾曲させることなく又は好ましくはそれを追加で湾曲させることによって、好ましくは前記距離に沿って被動部材の材料を膨張又は収縮させるような形で、好ましくは形成されている。前記第1の位置と前記第2の位置の間の直線距離は、好ましくは被動部材が弾性変形されていない第1の状態においてならびに被動部材が弾性変形されている第2の状態において同様に、好ましくは5〜100mm、好ましくは5〜250mm、好ましくは10〜50mm、好ましくは10〜30mmである。好ましくは、前記距離は、前記距離の長さに沿って被動部材を膨張させるように被動部材の膨張のためだけに用いられる。好ましくは器具の骨格を形成する被動部材に前記弾性変形を直接適用させることで、例えばU字形基部を有する公知の器具と比べて器具の寸法決定をより小さいものに保つことができるという利点が得られる。さらに、器具内に内部膨張距離を提供することにより、作動が器具のサスペンションから一層独立したものとなり、器具をリニヤモーターなどを伴う他のマイクロマニピュレータに接続してよく、こうして器具の利用上の柔軟性をより高めることができるという利点が得られる。
【0028】
被動部材は好ましくはその第1の状態では未変形であり、その第2の状態では変形されており、第3の状態では変形度がより低くなる。第3の状態では、被動部材は好ましくは第2の状態の場合に比べ、少なくとも10∧2、10∧3又は10∧4又はそれ以外の倍数で変形度が低い。第3の状態では、少なくとも1つのアクチュエータ素子は好ましくは、被動部材により弾性機械応力下、好ましくは圧縮下に保たれる。圧縮、好ましくはバイアス圧縮は、器具の作動のいかなる時点においてもアクチュエータ素子が引張応力を受けることがないような形で選択されるのが好ましい。前記圧縮は、例えば、アクチュエータ素子のアイドル状態でアクチュエータ素子を圧縮するカウンタサポートの締付けトルクが500Nmmである場合、1025Nのバイアス力を結果としてもたらし得る。これは、好ましくは前記構成要素を担持する、好ましくは被動部材にアクチュエータ素子を固定するネジ山などを含む接続手段によって達成可能である。このようなバイアス応力のメリットは、アクチュエータ素子と被動部材の間のあそびをその全ての状態において回避できるという点にある。したがって、アクチュエータ素子の力は即座にかつ直接的に被動部材に伝達され得る。アクチュエータ素子が圧電素子を含む場合、バイアス圧縮は詳細には圧電素子の負荷能力の増加を導く。圧電素子の圧力下での作業能力は、張力下での作業能力よりもはるかに高く、時として10〜20倍高い。脆性破壊の危険以外に、不正電圧を伴う引張応力下にある場合に圧電素子を消極する危険性が存在する。恒久的(バイアス)圧縮下で圧電素子を駆動する場合、引張/圧縮の組合せ状態を伴うシステムに比べて機械的負荷能力を増大させることができ、より高い周波数の交流電力を印加することができる。バイアス力を提供することの主要な利点は、動作区分のより高速の前進後退動作を達成できるという点にある。動作区分は、張力負荷の場合に発生し得るアクチュエータ素子(例えば圧電素子)の消極の危険性無く高速の電圧変化によって復帰可能である。
【0029】
被動部材は好ましくは弾性材料で製造されているか又は少なくとも部分的に弾性材料で製造されているか又は弾性材料で製造された区分を含む。さらに、被動部材は好ましくは弾性の異なる複数の区分を含む。前記弾性材料は、好ましくは0.2kN/mm2超、好ましくは100KN/mm2超、好ましくは200kN/mm2超そして好ましくは180〜240kN/mm2のヤング率を有する。好ましくは、前記弾性材料は鋼、セラミック又はガラスであるか又はこれを含む。好ましくは180kN/mm2超のヤング率を有する鋼又はその他の材料は、安定した構造、詳細には安定した被動区分を設計できるという利点を提供する。こうして詳細には、より堅牢でかつ耐久性の高い器具を構築しかつ動作を生成するためのより信頼性の高い方法を提供することが可能となる。一方で、このような材料は、その弾性に起因して、好ましくは例えばアクチュエータ素子としての従来の圧電素子又は、好ましい実施形態に係る器具のために利用可能であり、例えば燃料噴射器用に利用される自動車業界において応用されている強圧電素子などのその他の圧電素子を含むアクチュエータ素子を用いて、圧縮又は膨張されるのに適している。好ましくは、被動部材は導体として使用され、好ましくは器具の電気回路構成要素として使用される。
【0030】
少なくとも1つのアクチュエータ素子の起動により誘発される任意の方向に関連する被動部材の長さ変化は、好ましくは、被動部材の変形した第2の状態及び未変形の第1の状態でそれぞれ測定された場合の前記第1の位置と前記第2の位置の間の直線距離の差に対応する。定義上、長さ変化は、前記方向に関連して膨張した被動部材については正の符号を有し、圧縮被動部材については負の符号を有する。被動部材の長さ変化は、好ましくは0.5〜2.0μm、0.5〜1.0μm、0.1〜0.5μm、0.05〜0.5μm、0.01〜0.5μm、0.01〜1.8μm又はそれ以外を含む一群の長さ変化範囲から取られる。
【0031】
前記振幅は好ましくは、少なくとも1つの圧電素子を伴うアクチュエータ素子を提供し、それぞれ好ましくは200V〜425V、200V〜600V又は100V〜300Vの電圧領域内で前記アクチュエータ素子を駆動することによって実現される。前記アクチュエータ素子にそれぞれの電圧を加えると、(700;1.1032)、(600;0.9456)、(425;0.6698)、(200;0.3152)、(300;0.4728)、(100;0.1576)という参考リスト例(電圧〔V〕、振幅〔μm〕)により例示的に記述される通り、この場合いかなるバイアス圧縮も適用されない一つの振幅を実現することができる。バイアス圧縮下では、振幅は、わずかに小さい、すなわち例えば5.0、1.0又は0.01%未満だけ小さくなると予想することができる。
【0032】
最大長さ変化は、被動区分の長さ又は詳細には前記直線距離、及び利用される少なくとも1つのアクチュエータ素子の強度に左右される。所与の力について、より高いヤング率を有する弾性材料はより低い長さ変化を提供することになる。
【0033】
動作区分は好ましくは、画定された方向における被動要素の長さ変化が結果として、前記長さ変化に対応する(好ましくはこれに等しい)振幅だけ動作区分の動作をもたらすような形で被動区分にリンクされている。例えばウシの卵母細胞に対して行われるICSIのため、詳細には数μm(例えば5〜8)の直径の開口部を有するガラスキャピラリを用いて透明帯を貫通するために、例えば50〜250mmの振幅を用いることができる。好ましくは180kN/mm2より大きいヤング率を有する鋼又はその他の材料が、生体細胞材料又はその他の構造に精確に作用できるようにするような適切な振幅を提供できる。
【0034】
前記弾性材料は、好ましくはおよそ1μm又は10μmの巨視的規模で見た場合に均質であるか、又は、少なくとも均質な区分を有する。さらに前記弾性材料は同質でないか又は少なくとも不均質区分を含むことが好ましい。例えば、この材料は例えば典型的構造変数としてマイクロメートル領域の結晶粒径などの構造、あるいはマイクロメートル又はミリメートルより大きい構造値を伴う構造を有することができる。弾性材料は、任意の圧力の気体が充填された中空区分を有し得る中実材料で製造可能であり、前記中空区分は好ましくは細孔又は開口部などである。
【0035】
例えばx方向に延在する被動部材のx方向に作用する力による任意の湾曲は、x方向での動作区分の位置の変化をひき起こすことができる。しかしながら、好ましい実施形態に係る器具については、x方向でのアクチュエータ部材による起動時の弾性変形に起因する被動部材の長さ変化の効果が好ましくは優勢であり、これにより動作区分はx方向にシフトさせられ、好ましくは湾曲が無視できる程度のものである、ということが好ましい。これは、詳細には、動作区分の所望の線形動作という好ましいケースについて好まれる。ただし、詳細には、2つ以上の方向、例えばx、y及び/又はz方向でも少なくとも部分的に動作を生成するために、被動部材の湾曲がある量まで意図されてもよい。動作区分の線形動作が所望される場合には、アクチュエータ部材による起動の時点で被動部材の湾曲が前記方向で(実質的に)全く発生しないような形で、少なくとも1つのアクチュエータ素子を被動部材にリンクさせることが好ましい。動作区分の線形動作が意図される場合、前記湾曲が好ましくは無視できるほどのものであることが好ましい。無視できるというのは、例えばICSIを実施するための器具の応用という所望の技術的目的を達成するために許容可能であることを意味する。好ましくは、線形動作は、好ましいx方向における最大振幅A_xに対する、その近位の端部で動作区分まで延伸されたツールの動作区分又は遠位端部のy方向(及び/又はz方向)における最大振幅A_y(A_z)の比率Rを提供し、R=A_y/A_x及び/又はR=A_z/A_xはそれぞれ、好ましくは0.5、0.2、0.1、0.05、0.01、0.005、0.001、0.0005、0.0001より小さく、より好ましくは0.00005、0.00001、0.000005、0.000001、0.0000005、0.0000001より小さい。
【0036】
さらに、少なくとも1つのアクチュエータ素子は、アクチュエータ素子による起動の時点での被動部材の湾曲が動作の方向において限定された量で発生するような形で被動部材にリンクされており、好ましくは、前記方向がアクチュエータ部材による起動の時点でのその弾性変形に起因する被動部材の長さ変化の方向であることが好ましい。限定された量とは、被動部材の前記湾曲が所望の線形方向で動作区分をシフトさせる第1の割合が、弾性変形した被動部材の前記方向での長さ変化に起因する第2の割合よりも小さいことを意味する。好ましくは、第1の割合を第2の割合で除した商は、2未満又は1未満であり、それぞれ好ましくは0.5、0.1、0.01又は0.001という値のいずれよりも小さい。
【0037】
前記第1又は第2の位置で、少なくとも1つのアクチュエータ素子は好ましくは、被動部材がアクチュエータ素子による起動時点で前記長さ変化を受けるような形で、被動部材にリンクされている。第1の位置は、詳細にはアクチュエータ素子により生成された力を被動部材に伝達するために、アクチュエータ素子により生成された力を伝達する素子、例えばアクチュエータ素子自体などが被動部材と接触するか又は被動部材にリンクされる1つの点又は接触部域又は複数の点又は接触部域を含み得るか又はこれらの点又は部域であり得る。好ましくは、被動部材上には、アクチュエータ素子が被動部材にリンクされる少なくとも1つの第3の位置が提供される。
【0038】
好ましくは、被動部材にリンクされているアクチュエータ素子の起動は、前記第1の位置と前記第2の位置の間の線形距離に沿った被動部材の長さ変化をひき起こす。好ましくは、被動部材は第1の長さ変化だけ、前記第1の位置と前記第2の位置の間で膨張されるように適応されている。さらに好ましくは、被動部材は、第2の長さ変化の長さだけ前記第1の位置と前記第2の位置の間で圧縮されるように適応されている。さらに好ましくは、被動部材は、第1の長さ変化の長さだけ前記第1の位置と前記第2の位置の間で膨張されるように適応されており、同時に第2の長さ変化の長さだけ第3の位置と第4の位置の間で圧縮されるように適応されている。このような適応は、少なくとも1つのアクチュエータ素子の前記位置に対するリンケージのためのカウンタサポート(例えば突起、凹部、開口部、段)を提供するために被動部材を前記位置で構成することによって実現可能である。
【0039】
少なくとも1つのアクチュエータ素子が提供される。好ましくは、多数の、例えば2、3、4、5、6個以上のアクチュエータ素子が提供されている。各々のアクチュエータ素子は好ましくは、少なくとも1つ、好ましくは多数、例えば2、3、4、5、6個又はさらにはるかに多く、例えば数十又は数百個のアクチュエータ部材を含む。好ましくは、少なくとも2つ又は3つのアクチュエータ素子が提供され、これらは、座標系のx、y及びz方向での被動部材の起動を可能にするように、被動部材のまわりに配設されている。
【0040】
アクチュエータ素子又はアクチュエータ部材は、圧電素子例えば圧電セラミック例えば軟質又は硬質セラミック、例えばBaTiO3、PbTiO3、Pb[ZrxTi1−x]03(0<x<1、PZT)、KNbO3、LiNb03、LiTa03、Na2W03、Ba2NaNb505、Pb2KNb5015、PMNなどであり得る。
【0041】
好ましくは、1アクチュエータ素子又はアクチュエータ部材は環状構造、好ましくは対称円環状構造を有し、こうしてそれを円筒形状の被動部材の本体のまわりに配設することができるようになっている。好ましくは、少なくとも1つのアクチュエータ素子及び/又はアクチュエータ部材(例えば圧電ホイル)が合わせて積層されて1つの起動装置を形成する。アクチュエータ素子及び/又はアクチュエータ部材は好ましくは例えばx方向などの少なくとも1つの方向との関係において順次配設される。例えば自動車産業で利用される燃料噴射器用に使用されかつ好ましい実施形態に係る器具のために利用可能である強圧電素子が好ましい(例えばPaTiO3系、Pb〔ZrxTi1−x〕O3(O<x<1、PZT))。数十〜数百の個別に接続された圧電素子、例えば圧電ホイルの積層を含む積層型圧電素子が好ましい。好ましくは、アクチュエータ素子及び/又はアクチュエータ素子が並列接続される。これにより供給電圧を比較的低く、好ましくは600V未満そしてより好ましくは500V未満に保つことができる。さらに、達成される動作振幅は例えば0.5〜1.8μmと大きく、制御用電子機器はさらに実現が容易で安価である。
【0042】
好ましくは、少なくとも1つのアクチュエータ素子は、全てのアクチュエータ素子の等しい起動の結果もたらされる力ベクトルが前記軸を指すような形で被動部材を通る1本の軸のまわりに配設されている。例えば、円筒形状の被動部材のまわりに配設されている円環状圧電素子の場合がそれである。こうして、例えばICSIなどの数多くの利用分野のために所望される1つの明確な方向例えばx方向でのリンクされた動作区分の動作及び被動部材の線形起動という利点が得られる。好ましくは、少なくとも1つのアクチュエータ素子及びアクチュエータ素子を被動部材にリンクする接続手段は、アクチュエータ素子の力が被動部材に対し軸方向に伝達されるような形で配設されている。これはすなわち、全てのアクチュエータ素子の同等な制御下で、それらの正味の力が被動部材の断面の中心に作用しているということを意味している。こうして、被動部材の湾曲が回避されるという任意の利点が得られる。こうして、任意に接続されたツールのたわみは削減され、好ましいことに線形動作のみが達成されることから、断面の幅又は中ぐりの直径が削減されることになる。しかしながら、一部の利用分野については、より高次元の動作を達成するため、少なくとも1つ(例えば2個又は3個)のアクチュエータ素子を異なる形で制御することにより、被動部材の湾曲を許容することが可能でありかつ好ましい。
【0043】
好ましくは、器具は、マイクロマニピュレータ又はサスペンション装置であり得る第2の器具に接続するための接続手段を含む。好ましくは、被動部材には、動作区分の反対側に配設されている被動部材の部品であり得る接続区分が具備されており、こうして1つ又は複数のアクチュエータ素子は動作区分と接続区分の間に、ただし好ましくは被動部材に対し平行に配設されるようになっている。さらに、少なくとも1つのアクチュエータ素子のためのハウジングを提供することが可能でありかつ好ましく、この場合このとき前記接続手段をハウジングに配設することができる。好ましくは、器具上に慣性質量要素が具備され、これは好ましくは少なくとも1つのアクチュエータ素子と、器具を他の器具に接続する前記接続手段との間で力伝達連鎖の形で配設される。前記慣性質量要素は好ましくは鋼又は他の材料で製造されている。この慣性質量要素の役目はこの場合、好ましくは器具の前方部分にある動作区分の推進に有利なようにアクチュエータ素子から結果として得られた力を分配し、好ましくは器具の後方部分を形成している接続手段(又は任意に接続された他の器具、例えばサスペンション装置)の推進を低減させることにある。これは、大きい質量の方が、接続された小さい質量の方よりも加速度が小さく、結果として大きい方の質量(慣性質量要素及び任意の接続されたさらなる器具)の変位と比べて軽い方の質量(動作区分)の変位の方が大きくなるということを意味するニュートンの第3法則「作用反作用の法則」の概念に従うものである。こうして、動作の生成効率が改善され、好ましくは接続されるさらなる器具に対する器具の接続部ならびにさらなる器具に加わる応力は少なくなる。
【0044】
好ましくは、少なくとも1つのアクチュエータ素子による起動を制御する制御装置が器具のために提供される。この制御装置は好ましくは電気回路、詳細にはアクチュエータ素子の供給電力を制御するための電力回路を含む。このような回路は好ましくは絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)を含む。供給電圧生成手段により供給される高電圧は好ましくはIGBTを用いて所望の振幅及び周波数で圧電素子に分配される。制御装置は好ましくはマイクロコントローラ、好ましくはマイクロプロセッサそして好ましくはデータ記憶装置、例えばRAM、ROM又はEEPROMなどを含む。制御装置は好ましくは、既定の動作プログラムを実行するために器具のユーザーがプログラミングできるように適応されており、このプログラムに従って、所望のシーケンス、周波数、パルス数、振幅などで1つの動作が生成されて、器具を用いた作業の再現性を改善する。制御装置は好ましくは、好ましい実施形態に係る器具の外部に配設され、詳細には外部に取付けられ、好ましくはケーブルを介して器具に接続されている。ただし、制御装置を器具にリンク又は取付けることも同様に可能であり、かつ好ましい。
【0045】
好ましくは、器具は信号を受信するための手段及び/又は信号を送信するための出力手段を含む。入力手段は、器具をユーザーが制御するためのボタン又は制御パネルを含むことができる。入力手段は同様に、器具を用いた作業を自動化するため例えばワークステーション又はPCなどの別の装置により制御装置を遠隔制御するようにデータインタフェースを含むこともできる。詳細には、ユーザーが自分の足で制御を行なえるように好ましくは前記入力装置の1つとして、フットスイッチを具備してもよい。フットスイッチは、器具又は外部制御装置に接続されてよい。出力手段は、視覚的及び/又は音響的手段、例えばスピーカー又はディスプレイ又はLEDを含んでいてよく、この場合、制御装置は制御装置又は器具の状態についての情報をユーザーに信号送りするように適応されている。出力手段はさらに、例えばワークステーション又はPCなどの別のデータ処理装置に情報を送るためのデータインタフェースを含むことができる。同様に、器具は、自らの状態及びアクチュエータ素子例えば圧電素子の状態についての情報を提供するために制御装置及び/又は入力手段及び/又は出力手段、詳細にはデータインタフェースを含むこともできる。こうして器具の作動及び能力を監視することができるようになる。
【0046】
制御装置は好ましくは少なくとも1つのアクチュエータ素子の起動を制御するように適応されている。好ましくは、制御装置は、少なくとも1つのアクチュエータ素子に一定数の起動作用を行わせるように適応されており、この起動作用はユーザーによって選択され得るか又は自動的に選択され得、前記数は好ましくは1、2、3、4、5以上である。好ましくは、制御装置は全てのアクチュエータ素子に同じ電力を供給するように適応されている。
【0047】
しかしながら、好ましくは制御装置のデータ記憶装置内に記憶されていることが好ましい既定のプログラムにしたがって異なるアクチュエータ素子又はアクチュエータ部材に異なる電力を供給するように制御装置が適応されていることも同様に好ましい。好ましくは、制御装置は動作区分の動作を制御するように適応されている。好ましくは、制御装置は、単一のパルス又は単一の衝撃あるいは既定の又はユーザーが定義できる数のパルスを伴う動作区分の一連の推進力、異なる動作振幅、振動数、遅延時間を伴う振動動作又は動作パターンを生成するように適応される。
【0048】
本発明による、特に生体細胞材料に対する作業向けに器具のツールの動作を生成するための方法であって、前記器具は、少なくとも1つのアクチュエータ素子と、前記少なくとも1つのアクチュエータ素子にリンクされた弾性変形可能である被動部材と、ツールを接続できかつ前記被動部材にリンクされている動作区分とを備えた、方法は、前記被動部材の長さ変化を引き起こすべく、前記少なくとも1つのアクチュエータ素子によって、前記被動部材を例えば膨張又は圧縮又させるなどの弾性変形をさせることで前記被動部材を作動するステップと、前記長さ変化によって前記動作区分の動作を引き起こすステップとを備えている。さらに、本発明に係る方法の好適な構成及び利点は、本発明に係る器具及び好適な実施例の前述した説明から導出することができる。
【0049】
さらに、図面、詳細には好ましい実施形態の器具の記述を参照しながら本発明に係る器具及び方法の以下の実施形態から、本発明のさらなる利点、特徴及び利用分野を導出することができる。以下では、同じ参照番号は実質的に同じ構成要素を記述する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】U字形基部を含む先行技術の器具の側面図を示す。
【図2】本発明に係る方法のいずれかの好ましい構成にしたがって作動させられる、好ましい実施形態に係る器具のいずれかの実施形態を含むいくつかの機能的構成要素を伴う配設のブロック図を示す。
【図3】器具の好ましい実施形態の長さに沿った垂直断面を示す。
【図4】図3の垂直断面の詳細を示す。
【図5】図3及び4の器具のために使用可能な一連の圧電素子であるアクチュエータ素子の配設及び接続の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1は、すでに前述した通りの先行技術の器具を示す。
【0052】
好ましい実施形態に係る器具の実施形態は、例えばICSIを実施する上で必要とされるような、生体細胞の膜又は外皮に穿孔するように適応された器具である「細胞穿孔機」に関する。「穿孔機」という用語は、必ずしも穿孔機に関連し得るツールの回転動作を暗示していないが、回転動作を暗示してもよい。
【0053】
図2は、本発明に係る方法のいずれかの好ましい構成にしたがって作動させられる、好ましい実施形態に係るシステムのいずれかの実施形態を含むいくつかの機能的構成要素を伴う配設のブロック図を示す。細胞穿孔機6は好ましくはシステム全体(6;7;8;9;10;11)のために使用される。細胞穿孔機は、懸吊され、例えばEppendorf Transfer Man NK2(登録商標)などのマイクロマニピュレータ7などの補給動作装置7により保持されている。マニピュレータ7は、例えばNikon Eclipse Ti(登録商標)などの倒立顕微鏡8に取付けられている。
【0054】
細胞穿孔機6は外部制御装置9を介して制御される。この外部制御装置9はコントロールパネルとそれに接続された2つのフットスイッチを含む。あるいは、少なくとも2つのスイッチについてはハンドスイッチを使用してもよい。第1のフットスイッチ(チャネル1)を作動させると、パルスシーケンスの開始がトリガーされ、細胞穿孔機6のツールは卵母細胞の透明帯(帯)を貫通するのに適したパラメータにしたがって線形的に前後に移動させられる。第2のフットスイッチ(チャネル2)は、卵母細胞の卵細胞膜を貫通するのに適切なパルスシーケンスをトリがーする。両方のチャネルのためのパラメータセットは、それぞれ3つの単一パラメータ、すなわちインパルスの時間シーケンスを定義するツールのインパルスの振幅(a)、1シーケンス中のインパルスの数(n)及び周波数(f)又は遅延時間にしたがって決定される。
【0055】
透明帯又は卵細胞膜を貫通するためには、以下のパラメータセットが有用である。
【0056】
透明帯:
a=好ましくは0.20〜0.95μm、好ましくは0.20〜0.67μm、
n=好ましくは1〜70、好ましくは1〜10、
f=好ましくは1〜40Hz、好ましくは1〜10Hz。
【0057】
卵細胞膜:
a=好ましくは0.12〜0.5μm、
n=好ましくは1〜20、好ましくは1〜5、
f=好ましくは1〜40Hz、好ましくは1〜10Hz。
【0058】
パラメータの最適な選択は、貫通すべき細胞のタイプによって左右される。それはさらに、ツールとして用いられるキャピラリー、及びFluorinert(登録商標)FC−77又は水銀であり得るその潜在的充填材料によって左右される。したがって、最適なパラメータは、本明細書中で記述されているパラメータの範囲と異なるものであり得る。好ましくは、器具すなわち細胞穿孔機6はその他のパラメータを許容するように適応されている。例えば、特異的膜の貫通に成功するようインパルスシーケンスを数回開始させることが可能であり得る。
【0059】
細胞穿孔機機能に加えて、本明細書で記述されている細胞穿孔機6の実施形態は同様に第2の機能も提供しており、細胞膜又は組織を剥離するためのマイクロディセクターとして使用可能である。剥離モードがコントロールパネルを介して開始させられる場合、パラメータnは好ましくは選択不可能である。その代り、剥離ツールは好ましくは、スイッチが解除されるまでフットスイッチを操作することにより制御される。f=0〜1000Hzで標準周波数剥離を実施すること又はf=20〜40KHzで高周波数剥離を実施することが可能である。
【0060】
その上、好ましい実施形態に係る器具、詳細には細胞穿孔機6及び/又は制御装置、詳細には制御装置9は、例えば細胞材料などの接着している材料をツールから除去することを目的とする清浄機能を提供するように適応される。清浄機能は好ましくは、コントロールパネルによってか又はフットペダルを「ダブルクリック」することによって開始可能である。清浄方法は、好ましくは2〜10000Hz、10〜2000Hz、100〜2000Hz、800〜1200Hz、950〜1050Hz又はそれとは異なる周波数である清浄周波数で細胞材料を振り落すのに適したインパルスシーケンスを提供する。
【0061】
細胞内への材料の注入(例えばICSI)のために細胞穿孔機6が使用される場合には、器具は、制御装置9及びマイクロマニピュレータ7に対するインタフェースの他に、例えばEppendorf CellTram Oil(登録商標)などのマイクロインジェクタ11に対するインタフェースをも必要とする。マイクロインジェクタ11は、例えば100〜1000μm3又はそれとは異なる最小体積の液体、詳細には細胞穿孔機6によって移動させられる約380μm3の単一のヒト精子が占有する体積をキャピラリーに対して秤量する。キャピラリーの代りにツールとしてマイクロ電極が使用される場合には、このマイクロ電極は適切な制御装置(11)を備えなくてはならない。組織試料10の顕微剥離のために細胞穿孔機6が使用される場合には、マイクロインジェクタ11又はマイクロ電極用コントローラを削除又は接続解除することができる。
【0062】
図3は、細胞穿孔機6である好ましい実施形態に係る器具の一実施形態の長さに沿った垂直断面を示す。この実施形態は、マイクロインジェクタ11と組合せるための細胞穿孔機(ツール動作を生成するための器具)を含んでいる。マイクロキャピラリ101(ツール)は、グリップヘッドとして適応された取付け用ヘッド102により保持されている。考えられる代替的ツールは、被動部材103の動作区分5bに取付けられるマイクロディセクターとして使用するための切断ツール又はマイクロ電極である。マイクロキャピラリ101の流路は、封止手段の助けを借りて、キャピラリチューブ103として適応されている被動部材103の流路にしっかりと接続されている。このキャピラリチューブは接合部105を介してマイクロインジェクタ11に接続されている。細胞穿孔機6を保持するため被動部材すなわちチューブ103の後方部分に接続手段106例えばクランプ装置が具備される。細胞穿孔機の制御は、駆動区分108を制御装置9に接続している電力線107を介して行なわれる。作動中、マイクロインジェクタ11への補給パイプ105、キャピラリチューブ103ならびにマイクロキャピラリ101の一部分にはシリコン油が充填されている。マイクロキャピラリ101の前方部分には通常Fluorinert(登録商標)FC−77又は水銀が充填されている。マイクロインジェクタ11で液体を上下で圧送することによって、パイプ系内の液柱全体を移動させることができ、こうしてマイクロキャピラリ101による液体体積(及び/又は細胞材料)の取込み又は放出を制御することができる。
【0063】
図4は、図3中の細胞穿孔機6の垂直断面の駆動区分108の詳細図を示す。細胞穿孔機の組立て、詳細には駆動区分108の組立てが説明されている。駆動区分108は、キャリヤであるチューブ103上に載っている。第一に、ネジ山付きスリーブ109が、接続手段としても作用する凹部110で停止するまでチューブ上を滑動させられ、アクチュエータ素子からの力が第1の位置でチューブに伝達される。次に、絶縁用/中央スリーブ111が設置される。チューブ103の前方に同心溝が設けられており、これは接続手段として役立ち、第2の位置を画定しており、この位置でアクチュエータ素子からの力がチューブ103に伝達されて、圧電素子による起動の時点でチューブを前記第1の位置と前記第2の位置の間で膨張させる。前記溝の中に2つの円錐形環要素112が設置され、これが細胞穿孔機の前方部分に向かって増大する外径を提供している。すなわちその外部表面は一定の角度で勾配を有する。円錐形環要素112上へと円錐形のディスク113が滑動させられ、このディスクはその内側に同じ角度の勾配を有するが、方向は反対であり、こうして部品112及び113が形態拘束式に互いに接するようになっている。ディスク113に対して圧電環要素114が当接しており、これらの圧電環要素はスリーブ111によりチューブ103に対して電気的に絶縁され心出しされている。ネジ山付きスリーブ109上に、圧電素子114が充分にバイアス圧縮状態になるまで、カウンタサポート115がネジ込まれている。前記圧縮は好ましくは、圧電素子114が器具の作動中つねに圧縮下に、好ましくは少なくとも前記バイアス圧縮下にとどまるような形で選択される。こうして、扶持による圧電素子114の安全な取付けが確保され、こうして意図されないシフトは回避される。したがって、圧電素子114の接着ボンディング又はその他の接続は不要である。さらに、セラミックの破損を導く可能性のある圧電素子の引張応力を回避することができる。カウンタサポート115は電力線107及びアンチキンク116を保持する。
【0064】
細胞穿孔機の駆動機構はハウジング117とカバー118にとり囲まれている。シールリング119、120及び121を介して、結果として得られた内部空間は、環境に対し気密で蒸気が漏れないように封止される。したがって、圧電素子114は粉塵及び湿気に対して保護されている。
【0065】
以下では、細胞穿孔機6の作動原理が、図3〜5を参照して説明されている。電力線107を介して圧電素子114に適切な電圧が適用された場合、圧電素子はx方向に膨張する。しかしながら圧電素子は第1の位置と第2の位置の間、すなわちカウンタサポート115と円錐ディスク113の間に扶持される。これらの部品は、チューブの溝及び凹部110すなわちチューブ自体によってしっかりとチューブの膨張方向との関係においてそれぞれにネジ山付きスリーブ109及び環要素112によって保持されている。原理的には、チューブの膨張の代りに圧縮を利用することもできるが、目下の実施形態についてはあてはまらない。
【0066】
チューブ103のための好ましい材料は鋼である。公知の通り、鋼でさえ弾性変形可能な材料であり、そのヤング率は比較的高いものである(シリコンゴムが0.05kN/mm2であるのに比べて200kN/mm2前後)。このことはすなわち、鋼が他の材料に比べて既定の体積内にはるかに多くのエネルギーを貯えることができるということを意味している。その一方で、鋼などのようなヤング率の高い材料が使用される場合、既定のエネルギーを貯えるのにはるかに小さい圧縮距離しか必要とされない。ここで求められている動作振幅のためには、鋼の膨張を本発明のアクチュエータ素子によって容易に、詳細にはチューブ103を破断させることなく又は鋼を可塑的にかつ不可逆的に変形させることなく行なうことができる。鋼はさらに、チューブ103に高い機械的安定性が得られるという利点も提供する。
【0067】
環状の圧電素子114がチューブ103と同軸に配設されることから、結果として得られる力のベクトルはチューブの断面の中心にあり、チューブの中心軸(x軸)の方向を指す。したがってチューブ103の湾曲が誘発されることは全くなく、チューブの膨張とその後の弾性緩和のみがもたらされる。湾曲が回避されるため、マイクロキャピラリ101の先端部のy方向及びz方向でのたわみは妨げられ、こうして中ぐり直径及び断面幅は小さく保たれる。
【0068】
図5は、図3及び4の器具のために使用可能である一連の圧電素子であるアクチュエータ素子の配設及び接続の一例を示している。電圧下で膨張するように分極されている4つの円環状圧電素子114a、114b、114c及び114dが使用される。素子の面には銀電極が具備されている。電圧は、延在する接触板122、123、124を伴う環状金属シムディスクを介して、電極に印加される。接点122及び123は正に分極され、同軸ケーブルの内部ラインに接続され、接点124は負に分極され、ケーブルの外部ラインに接続されている。圧電素子114の積層の後方端部は、金属性のカウンタサポート115との電気的接触を介して負に分極され、このカウンタサポート115は外部ラインと接触状態にある。積層の前方端部は同様に、円錐形環セグメント112と電気的接触状態にある金属製円錐ディスク113、キャピラリチューブ103、金属製のネジ山付き外皮109及びカウンタサポート115を介して負に分極されている。
【0069】
圧電素子114の膨張は、印加される電圧に正比例する。一般に、例えば2μmなどの所望の動作振幅は、4個未満の圧電素子114を用いて達成可能である。ただし、このとき、印加すべき電圧の所要値は増大する。同じタイプ114の2個の圧電素子について、値は1000Vであり、4個の要素については500V、8個の圧電素子114については250Vである。500V超又は500Vよりはるかに高い電圧が作動電力として必要とされる場合には、所要の電子的構成要素のコストは著しく増大する。250Vでは、500Vの電気機器と比べて倹約できるコストは、追加された圧電素子114の個数に起因して上昇するコストと比べれば無視できる程度ものである。したがって、細胞穿孔機6の好ましい作動電圧は300V〜600V、好ましくは500Vである。ただし、記述されている通り、他の値も同様に好ましい。詳細には、論述された2μm未満、詳細には1μm以下の動作振幅でも細胞穿孔機6を充分に作動させることができるということが示されてきた。振幅については、上述の例を参照のこと。
【0070】
圧電素子114は、結晶偏向の主方向に対応する電界強度を有する水晶を含む。こうして、これらの圧電素子を膨張方向に接触させなくてはならない。こうして、平坦な表面、すなわち圧電素子114の面上に接点を提供できるという利点が得られる。そうでなければ、異なるタイプの圧電素子をその円周方向側面を介して接触させなくてはならず、これはよりコストが高くつくが、本発明に係る器具の一部の構成においてはその他の利点を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に生体細胞材料に対する作業向けにツールの動作を生成するための器具において、
前記器具は、
少なくとも1つのアクチュエータ素子と、
弾性変形可能である被動部材と、
ツールを配設できかつ前記被動部材にリンクされている動作区分とを備え、
前記少なくとも1つのアクチュエータ素子は、前記アクチュエータ素子による起動が前記被動部材の長さ変化に対応する距離だけ被動部材を弾性変形させるような形で、前記被動部材にリンクされており、
前記長さ変化が動作区分の前記動作をひき起こす、特に生体細胞材料に対する作業向けにツールの動作を生成するための器具。
【請求項2】
前記被動部材は、第1の位置及び第2の位置を提供し、前記第1の位置と前記第2の位置は、前記第1の位置と前記第2の位置の間の1本の軸を画定する直線距離で分離されており、前記アクチュエータ素子は、少なくとも前記第1の位置と前記第2の位置で前記被動部材にリンクされており、前記アクチュエータ素子による作動中において、前記被動部材は、前記軸の方向における長さ変化を受け、前記軸の方向における長さ変化は、前記第1の位置と前記第2の位置の間の前記被動部材の弾性変形の距離に対応する、請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記被動部材は、弾性材料で製造されているか又は弾性材料で製造された区分を含む、請求項1又は2に記載の器具。
【請求項4】
前記被動部材は、弾性材料で製造されているか又は弾性材料で製造された区分を含み、前記弾性材料は、0.2kN/mm2超、好ましくは100KN/mm2超、好ましくは200kN/mm2超、さらに好ましくは180〜240kN/mm2のヤング率を有し、前記弾性材料は鋼である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の器具。
【請求項5】
前記被動部材は、中央軸に沿って延在し、前記少なくとも1つのアクチュエータ素子による作動中における前記被動部材の長さ変化によって引き起こされる動作が、少なくとも前記中央軸に沿った成分を有し、好ましくは線形であり、前記中央軸に対して平行であるように、前記アクチュエータ素子は、少なくとも第1の位置と第2の位置で前記被動部材にリンクされている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の器具。
【請求項6】
前記少なくとも1つのアクチュエータ素子は、バイアス圧縮下、好ましくは、器具の作動のいかなる時点においてもアクチュエータ素子が引張応力を受けることがないような形で選択されるバイアス圧縮下において配置されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の器具。
【請求項7】
前記被動部材は、中央軸に沿って延在し、前記少なくとも1つのアクチュエータ素子は、前記中央軸に対して対称に配置されている、特に圧電素子である少なくとも1つのアクチュエータ素子を備えている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の器具。
【請求項8】
前記少なくとも1つのアクチュエータ素子は、少なくとも1つの円環状アクチュエータ部材を備えている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の器具。
【請求項9】
前記被動部材は、中央軸に沿って延在し、前記動作区分は、前記中央軸が前記動作区分を通して延在するように前記被動部材に配置されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の器具。
【請求項10】
前記器具は、少なくとも線形軸に沿った成分を有する、前記動作区分の単一の動作を生成するのに適しており、前記単一の動作は、前記距離の増加に基づいた前方への動作の一ステップと、前記距離の減少に基づいた後方への動作の一ステップとを備えている、請求項2〜9のいずれか1項に記載の器具。
【請求項11】
慣性質量要素が具備され、前記慣性質量要素は、前記少なくとも1つのアクチュエータ素子の第1の端部と、前記器具をホルダに接続する接続手段との間で力伝達連鎖の形で配設される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の器具。
【請求項12】
前記被動部材は、流路区分を備え、又は流路であり、又は管状区分を備え、又は管状である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の器具。
【請求項13】
特に生体細胞材料に対する作業向けに器具のツールの動作を生成するための方法であって、
前記器具は、少なくとも1つのアクチュエータ素子と、前記少なくとも1つのアクチュエータ素子にリンクされた弾性変形可能である被動部材と、ツールを接続できかつ前記被動部材にリンクされている動作区分とを備えた、方法において、
前記被動部材の長さ変化を引き起こすべく、前記少なくとも1つのアクチュエータ素子によって、前記被動部材を例えば膨張又は圧縮又させるなどの弾性変形をさせることで前記被動部材を作動するステップと、
前記長さ変化によって前記動作区分の動作を引き起こすステップとを備えている、方法。
【請求項14】
生体細胞に穿孔するための(細胞穿孔機)請求項1〜12のいずれか1項に記載の装置又は請求項13に記載の方法の使用。
【請求項15】
細胞材料を切断するための(マイクロディセクター)請求項1〜12のいずれか1項に記載の装置又は請求項13に記載の方法の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−515463(P2013−515463A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545153(P2012−545153)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【国際出願番号】PCT/EP2010/007843
【国際公開番号】WO2011/076389
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(501186645)エッペンドルフ アクチェンゲゼルシャフト (9)
【Fターム(参考)】