説明

テトラヒドロフランチオカルボン酸類の製造方法

【課題】テトラヒドロフランカルボン酸類から対応するテトラヒドロフランチオカルボン酸類を製造する場合、危険性が少なく、取扱いが容易な原料を用いてチオ化できるだけでなく、テトラヒドロフランカルボン酸類が光学活性である場合は、その活性が保持できる製造方法を提供する。
【解決手段】本発明によれば、目的のテトラヒドロフランチオカルボン酸に対応するテトラヒドロフランカルボン酸を酸ハライド化し、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の水硫化物および/または硫化物を、水中および/または有機溶媒中で反応させることで、テトラヒドロフランチオカルボン酸を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬中間体および工業薬品として有用なテトラヒドロフランチオカルボン酸類の工業的製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チオカルボン酸類の製造方法としては、対応するカルボン酸類を五硫化リン、または、NaPSと反応させる方法(非特許文献1参照)(以後A法とする)、対応するカルボン酸類を酸ハライド化し、得られた酸ハライド化合物をピリジン存在下で硫化水素と反応させる方法(非特許文献2参照)(以後B法とする)などが知られている。
【非特許文献1】Kekule, A., Ann., 90, 309 (1864)
【非特許文献2】H. Adkins, Q. E.Thompson, J. Am. Chem. Soc., 71, 2242 (1949)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらのチオカルボン酸類を製造する方法において、A法で使用される五硫化リンやNaPSは高価である上に取り扱いが危険で、さらに、反応において分離が困難な五酸化二リンやリン酸が生成し、得られるチオカルボン酸類の純度が低下する、あるいは、煩雑な分離作業が必要であるなどの問題点を有している。また、B法で使用する硫化水素は、危険性が高く、取り扱いが非常に困難である上、収率も低いなどの問題を有している。
【0004】
さらに、いずれの方法においても光学活性カルボン酸類を出発原料として用いた場合には、光学活性を保持したまま光学活性チオカルボン酸類を得ることができるかについては知られていない。したがって、光学活性カルボン酸類から光学活性を保持したまま、高純度・高収率で工業的に光学活性チオカルボン酸類を製造する方法が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明者らは、一般式(1)
【化3】

(式中、R1 は置換基を有していてもよいテトラヒドロフラン環を示す。)
で示される高純度のテトラヒドロフランチオカルボン酸類を、安全性が高く、収率よく工業的に製造する方法を鋭意検討した結果、ハロゲン化剤を用いて目的のテトラヒドロフランチオカルボン酸類に対応するテトラヒドロフランカルボン酸類をテトラヒドロフランカルボン酸ハライドとし、取り扱いが容易で危険性の低い、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の水硫化物および/または硫化物と反応させることにより、高純度のテトラヒドロフランチオカルボン酸類を収率よく工業的に製造できる方法を見出し、上記の課題を達成した。
【0006】
さらに、上記の方法において、出発物質として光学活性テトラヒドロフランカルボン酸類を用いた場合には、光学活性を保持した光学活性テトラヒドロフランチオカルボン酸類を得ることができることも見出した。
【発明の効果】
【0007】
すなわち、本発明は、テトラヒドロフランカルボン酸類を酸ハライド化し、得られたテトラヒドロフランカルボン酸ハライドと、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の水硫化物および/または硫化物と反応させることにより、高純度のテトラヒドロチオカルボン酸類を高収率で得ることができ、さらに、出発物質のテトラヒドロフランカルボン酸類が光学活性テトラヒドロフランカルボン酸類である場合には、本発明の方法で光学活性を保持した光学活性テトラヒドロフランチオカルボン酸類を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明において使用されるテトラヒドロフランカルボン酸類としては、一般式(2)
【化4】

(式中、R1は置換基を有していてもよいテトラヒドロフラン環を示す)
で示されるテトラヒドロフランカルボン酸類であり、例えば、テトラヒドロフラン−2−カルボン酸、テトラヒドロフラン−3−カルボン酸、5−メチル−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸、3−エチル−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸などが用いられる。
【0009】
また、光学活性テトラヒドロフランカルボン酸としては、(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸、(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸、(R)−テトラヒドロフラン−3−カルボン酸、(S)−テトラヒドロフラン−3−カルボン酸などが挙げられる。なお、どのような光学純度のものでも用いることができる。
【0010】
テトラヒドロフランカルボン酸類を酸ハライド化する際に用いられるハロゲン化剤としては、一般的なハロゲン化剤である三塩化リン、オキシ三塩化リン、五塩化リン、塩化チオニル、スルフリルクロライド、三臭化リン、臭化チオニル、シュウ酸ジクロライド、塩素、臭素、ホスゲンなどが挙げられる。
【0011】
テトラヒドロフランカルボン酸類を酸ハライド化する反応において、テトラヒドロフランカルボン酸類はハロゲン化剤と一括混合しても、ハロゲン化剤に滴下しても、また、ハロゲン化剤をテトラヒドロカルボン酸類に滴下してもよいが、作業性、安全性の観点から、テトラヒドロフランカルボン酸類をハロゲン化剤に滴下することが好ましい。
【0012】
この反応で使用されるハロゲン化剤の量は、テトラヒドロフランカルボン酸類1モルに対して1.0〜10.0モル、好ましくは1.3〜3.0モルである。1.0モルより少ないと未反応のテトラヒドロフランカルボン酸類が多量に残留し、一方、10.0モル以上では、未反応のハロゲン化剤が多量に残留し、処理が困難となるため工業的には不利である。
【0013】
酸ハロゲン化の反応は、おおむね0℃から反応に使用されるハロゲン化剤が還流する程度までの温度範囲で行われる。また、酸ハロゲン化反応の反応時間は、反応させるテトラヒドロフランカルボン酸類の量にもよるが、滴下時間を含めて1〜24時間、好ましくは、3〜15時間である。1時間未満では未反応の光学活性テトラヒドロフランカルボン酸類が残留し、24時間以上反応しても、収量には変化なく、生産性を考えると好ましくない。
【0014】
酸ハロゲン化の反応は無溶媒で行うことも可能であるが、必要に応じてハロゲン化剤と反応しない一般的な有機溶媒を用いることもできる。例えば、ペンタン、へキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ハロゲン含有炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル系溶媒、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒などが用いられる。なお、これらの溶媒は、単独で用いても、また、混合して用いてもよい。
【0015】
酸ハロゲン化反応で得られたテトラヒドロフランカルボン酸類の酸ハライド化合物を含む反応液は、そのまま次反応に用いても、未反応のハロゲン化剤や反応に使用した有機溶媒を留去した残渣を次反応に使用しても、さらにテトラヒドロフランカルボン酸類の酸ハライド化合物を蒸留などで精製したものを次反応に使用してもよい。
【0016】
この反応において、出発物質として光学活性テトラヒドロフランカルボン酸類を用いた場合、得られた酸ハライド化合物は光学活性を維持することができる。
【0017】
本発明におけるテトラヒドロフランカルボン酸ハライドからテトラヒドロフランチオカルボン酸類を得るチオ化反応は、酸ハライド化合物と、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の水硫化物および/または硫化物とを、水溶液および/または有機溶媒中、または水と有機溶剤の混合溶液中で反応させることで進められる。
【0018】
チオ化反応で使用される溶媒としては、水、あるいは、酸ハライド化合物との反応性が低い一般的な有機溶媒、例えば、ペンタン、へキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ハロゲン含有炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジn−プロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル系溶媒、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒等を挙げることができる。これらの有機溶媒は単独で用いてもよく、また、混合して用いてもよい。
【0019】
本発明で用いられる、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の水硫化物および/または硫化物の濃度は、5質量%から飽和状態が好ましく用いられる。5質量%以下で反応を行っても得られる結果には影響はないが、工業的製法を考えたとき不経済であり好ましいとはいえない。
【0020】
アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の水硫化物あるいは硫化物としては、例えば、水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化カルシウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化カルシウムなどが挙げられ、単独で用いても、混合して用いてもよい。その使用量は、酸クロライド化合物1モルに対して1.0〜5.0モルが好ましい。1.0モル以下では未反応の酸クロライド化合物が残留し、5.0モル以上では、中和に要する酸の量が増加し不経済である。
【0021】
本発明におけるチオ化反応の温度は、20〜90℃、好ましくは40〜80℃である。20℃以下では目的とする反応が十分に進まず、未反応の酸クロライド化合物が残留し、一方、90℃以上では、テトラヒドロフランカルボン酸類が副生したり、光学活性テトラヒドロフランカルボン酸類を出発原料として使用した場合には、光学純度が低下するため好ましくない。
【0022】
チオ化反応の反応時間は、0.5〜5時間、好ましくは1〜3時間である。0.5時間未満では反応が不十分で未反応の酸クロライド化合物が残留し、一方、5時間以上反応しても、収量には変化なく、生産性を考えるとき好ましくない。
【0023】
反応終了後、得られた反応溶液には、テトラヒドロフランチオカルボン酸類はアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属塩として存在している。したがって、テトラヒドロフランチオカルボン酸類として単離するためには、酸を加えて中和後、分取する。さらに、蒸留・再結晶等の一般的な精製を行うこともできる。
【0024】
上記の中和に使用する酸としては、特に限定はなく、塩酸、硫酸、リン酸などの鉱酸を用いることができる。
【0025】
中和後、分取して得られる水層には、テトラヒドロフランチオカルボン酸類が溶存して残っている場合もあるため、さらに水層から有機溶媒によりテトラヒドロフランチオカルボン酸類を抽出することもできる。分液して得られた有機層を、例えば、減圧留去等によって使用した有機溶媒を除去すれば、目的とするテトラヒドロフランチオカルボン酸類を得ることができる。
【0026】
また、中和後の反応液に有機溶媒を加えることで、中和後の反応液から一括してテトラヒドロフランチオカルボン酸類を抽出、分液後、有機層から有機溶媒を留去して、目的とするテトラヒドロフランチオカルボン酸類を得ることもできる。
【0027】
この抽出に使用される有機溶媒としては、一般的な有機溶媒が使用できるが、好ましくは、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、メチルエチルケトン、イソブチルケトン、ブタノール、イソブタノールなどが用いられる。
【0028】
なお、このチオ化の反応においても、出発物質として光学活性テトラヒドロフランカルボン酸類を用いた場合、得られたテトラヒドロフランチオカルボン酸類は、光学活性を維持することができる。
【実施例】
【0029】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0030】
実施例1
塩化チオニル48.6gにテトラヒドロフラン−2−カルボン酸30.0gを室温下、10分間を要して滴下した。滴下終了後、昇温し、液温80℃〜85℃で5時間加熱攪拌した。反応終了後、室温付近まで冷却した。ここで得られた酸クロライド化合物を蒸留せずに、45℃に保った32質量%水硫化ナトリウム水溶液165.4g中に、45℃〜50℃に維持しながら滴下し、さらに、50℃で1時間反応した。1時間後、液温70℃に加温し、さらに、1時間反応させた後、室温付近まで冷却した。得られた反応液を、希塩酸で反応液のpHが2以下になるまで中和し、次いで、中和液からジエチルエーテル100mLで3回抽出した。抽出液を合一後、ジエチルエーテルを留去し、テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸30.5gを化学純度97.3%で得た。テトラヒドロフラン−2−カルボン酸からの収率は、88.9%であった。
【0031】
実施例2
塩化チオニル40.5gに光学純度98.2%e.e.の(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸25.0gを室温で、10分間を要して滴下した。滴下終了後、昇温し、液温80℃〜85℃で5時間加熱攪拌した。反応終了後、室温付近まで冷却した後、蒸留し、(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸の酸クロライド化合物19.5gを得た。次に、酸クロライド化合物を、45℃に保った32質量%水硫化ナトリウム水溶液46.0g中に、45℃〜50℃を維持しながら滴下した後、50℃で1時間反応した。1時間後、70℃に昇温し、さらに、1時間反応させた後、室温付近まで冷却した。得られた反応液を、希塩酸で反応液のpHが2以下になるまで中和し、次いで、中和液からジエチルエーテル50mLで3回抽出した。抽出液を合一後、ジエチルエーテルを留去し、(R)−テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸19.4gを、光学純度96.8%e.e.、化学純度99.2%で得た。(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸からの収率は、66.7%であった。
【0032】
実施例3
塩化チオニル36.2gに5−メチル−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸25.0gを室温で、10分間を要して滴下した。滴下終了後、昇温し、液温80℃〜85℃で5時間加熱攪拌した。反応終了後、室温付近まで冷却した後、蒸留し、5−メチル−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸の酸クロライド化合物17.7gを得た。次に、得られた酸クロライド化合物を、45℃に保った32質量%水硫化ナトリウム水溶液41.0g中に、45℃〜50℃を維持しながら滴下し、50℃で1時間反応させた。1時間後、70℃に昇温し、さらに、1時間反応させた後、室温付近まで冷却した。得られた反応液を、希塩酸で反応液のpHが2以下になるまで中和し、次いで、中和液からトルエン50mLで3回抽出した。抽出液を合一後、トルエンを留去し、5−メチル−テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸19.5gを、化学純度98.9%で得た。5−メチル−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸からの収率は、66.8%であった。
【0033】
実施例4
塩化チオニル36.2gに5−メチル−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸25.0gを室温で、10分間を要して滴下した。滴下終了後、昇温し、液温80℃〜85℃で5時間加熱攪拌した。反応終了後、室温付近まで冷却した後、蒸留し、5−メチル−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸の酸クロライド化合物17.3gを得た。次に、得られた酸クロライド化合物を、45℃に保った32質量%水硫化ナトリウム水溶液41.0g中に、45℃〜50℃を維持しながら滴下し、50℃で1時間反応させた。1時間後、70℃に昇温し、さらに、1時間反応させた後、室温付近まで冷却した。得られた反応液を、希塩酸で反応液のpHが2以下になるまで中和し、次いで、中和液からジエチルエーテル50mLで3回抽出した。抽出液を合一後、ジエチルエーテルを留去し、5−メチル−テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸19.6gを化学純度99.0%で得た。5−メチル−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸からの収率は、67.1%であった。
【0034】
実施例5
臭化チオニル60.0gに光学純度98.2%e.e.の(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸25.0gを室温で、10分間を要して滴下した。滴下終了後、昇温し、液温90℃〜95℃で5時間加熱攪拌した。反応終了後、室温付近まで冷却した後、蒸留し、(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸の酸ブロマイド化合物26.2gを得た。次に、得られた酸ブロマイド化合物を、45℃に保った32質量%水硫化ナトリウム水溶液41.0g中に、45℃〜50℃を維持しながら滴下し、50℃で1時間反応させた。1時間後、70℃に昇温し、さらに、1時間反応させた後、室温付近まで冷却した。得られた反応液を、希塩酸で反応液のpHが2以下になるまで中和し、次いで、中和液からジエチルエーテル50mLで3回抽出した。抽出液を合一後、ジエチルエーテルを留去し、(S)−テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸19.3gを、光学純度97.0%e.e.、化学純度98.5%で得た。(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸からの収率は、66.5%であった。
【0035】
実施例6
臭化チオニル60.0gに光学純度98.2%e.e.の(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸25.0gを室温で、10分間を要して滴下した。滴下終了後、昇温し、液温90℃〜95℃で5時間加熱攪拌した。反応終了後、室温付近まで冷却した後、蒸留し、(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸の酸ブロマイド化合物26.7gを得た。次に、得られた酸ブロマイド化合物を、45℃に保った32質量%水硫化カリウム水溶液51.8g中に、45℃〜50℃を維持しながら滴下し、50℃で1時間反応させた。1時間後、70℃に昇温し、さらに、1時間反応させた後、室温付近まで冷却した。得られた反応液を、希塩酸で反応液のpHが2以下になるまで中和し、次いで、中和液からジエチルエーテル50mLで3回抽出した。抽出液を合一後、ジエチルエーテルを留去し、(R)−テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸19.4gを、光学純度97.3%e.e.、化学純度98.7%で得た。(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸からの収率は、66.7%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、R1 は置換基を有していてもよいテトラヒドロフラン環を示す。)で表されるテトラヒドロフランチオカルボン酸の製造方法。
【請求項2】
一般式(2)
【化2】

(式中、R1 は置換基を有していてもよいテトラヒドロフラン環を示す。)で表されるテトラヒドロフランチオカルボン酸を酸ハライド化し、このテトラヒドロフランカルボン酸ハライドを、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の水硫化物および/または硫化物と、水中および/または有機溶媒中で反応させることを特徴とする請求項1に記載のテトラヒドロチオカルボン酸の製造方法。
【請求項3】
テトラヒドロフランカルボン酸ハライドが、テトラヒドロフランカルボン酸クロライドおよび/またはテトラヒドロフランカルボン酸ブロマイドであることを特徴とする請求項1および2に記載のテトラヒドロフランチオカルボン酸の製造方法。
【請求項4】
前記テトラヒドロフランチオカルボン酸が光学活性であることを特徴とする請求項1、2、3に記載のテトラヒドロフランチオカルボン酸の製造方法。