説明

テープ付きスナップ

【課題】 衣服、カバン等の開口部に用いられる合成樹脂製のテープ付きスナップであって、特に雄部材と雌部材の係合強度を損なうことなく、軽量化を図り、スナップ全体の厚みを薄くしたテープ付きスナップを提供する。
【解決手段】 合成樹脂製の雄部材の複数個を所定間隔で生地テープに成形固定した雄側生地テープと、合成樹脂製の雌部材の複数個を前記雄部材と同一間隔で生地テープに成形固定した雌側生地テープとからなり、前記生地テープに取付孔を穿設することなく前記雄部材及び前記雌部材とを成形固定したテープ付きスナップにおいて、前記雄部材の係合突起は、前記雄側生地テープから直接起立してなり、前記雌部材は、表側中央部においても裏側中央部においても前記雌側生地テープを露呈させるとともに、裏側に露呈する前記雌側生地テープの周縁であって且つ同一面上に雌側ベース部を形成したことを特徴とするテープ付きスナップ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服、カバン等の開口部に用いられる合成樹脂製のテープ付きスナップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、出願人は、雄部材と雌部材の係合強度を損なうことなく、スナップ全体の厚みを薄くしたテープ付きスナップについて出願を行っている(例えば、特許文献1参照)。当該特許文献1に係る発明においては、主に雄部材の係合突起の高さを低くし、それにより全体の厚みを薄くしたものである。しかし、雌部材についての改良はなされておらず、薄手の衣服等にテープ付きスナップを使用する為には、更に全体の厚みを薄くしたものや軽量化したものが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3604983号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明はこのような問題点を解決するものであって、衣服、カバン等の開口部に用いられる合成樹脂製のテープ付きスナップであって、特に雄部材と雌部材の係合強度を損なうことなく、軽量化を図り、スナップ全体の厚みを薄くしたテープ付きスナップを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記問題点を解決するために、本発明の請求項1に記載の発明のテープ付きスナップは、合成樹脂製の雄部材の複数個を所定間隔で生地テープに成形固定した雄側生地テープと、合成樹脂製の雌部材の複数個を前記雄部材と同一間隔で生地テープに成形固定した雌側生地テープとからなり、前記生地テープに取付孔を穿設することなく前記雄部材及び前記雌部材とを成形固定したテープ付きスナップにおいて、前記雄部材の係合突起は、前記雄側生地テープから直接起立してなり、前記雌部材は、表側中央部においても裏側中央部においても前記雌側生地テープを露呈させるとともに、裏側に露呈する前記雌側生地テープの周縁であって且つ同一面上に雌側ベース部を形成したことを特徴とするものである。
【0006】
また、本発明の請求項2に記載の発明のテープ付きスナップは、請求項1に記載のテープ付きスナップにおいて、前記雄側生地テープと平行する面上に雄側ベース部を形成したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に記載のテープ付きスナップでは、露呈する雌側生地テープの周縁であって、当該雌側生地テープと同一面上に雌側ベース部を形成するので、雌部材の厚みを薄くし軽量化を図ることができる。これにより、スナップ全体の厚みを薄くすることができ、衣服に取り付けた際には肌触りの不快感を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例におけるテープ付きスナップを係合面側から見た平面図である。
【図2】本発明の実施例におけるテープ付きスナップを構成する雌部材の(a)平面図、(b)その中央縦拡大断面図である。
【図3】本発明の実施例におけるテープ付きスナップを構成する雄部材の(a)平面図、(b)その中央縦拡大断面図である。
【図4】本発明の実施例におけるテープ付きスナップの雌部材と雄部材を係合させた状態の中央縦拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態におけるテープ付きスナップを図面に基づいて説明する。テープ付きスナップは、雄側生地テープの雄部材を雌側生地テープの雌部材に係合することで、衣服、カバン等の開口部を閉じる際に使用されるものである。テープ付きスナップの係合面側を雄部材、雌部材の夫々の表側とし、表側に対向する側を裏側とする。
【実施例】
【0010】
本発明に係るテープ付きスナップ1は、図1から図4に示すように、雌側生地テープ2と雄側生地テープ4とから構成されている。雌側生地テープ2には雌部材3が成形され、雄側生地テープ4には雄部材5が成形される。
【0011】
雌部材3は図1に示すように、雌側生地テープ2に対して複数個を所定間隔に成形して固定される。同様にして、雄部材5は、雄側生地テープ4に対して複数個を所定間隔に成形して固定される。
【0012】
雌部材3及び雄部材5は、ポリアセタール、66ナイロン等の熱可塑性合成樹脂を用いて、夫々の生地テープに取付孔を穿設することなく射出成形により形成される。
【0013】
雌側生地テープ2及び雄側生地テープ4の生地テープは、溶融樹脂が成形圧力によって通過浸透する生地であることが必要である。当該生地テープは、雌部材3及び雄部材5の成形時に溶融されることがないものであればよい。織物、編物でもよく、木綿生地、混紡生地、メッシュ生地等を採用することができる。
【0014】
図2に示すように、雌部材3は雌側ベース部3aと膨出部3bとから構成される。雌側生地テープ2の表側には膨出部3bが形成され、裏側には雌側ベース部3aが形成される。雌側ベース部3aと膨出部3bは、例えば略同一の外形を有する円盤状に形成される。
【0015】
膨出部3bの略中央部には、雄部材5を係合させる為の嵌合部3cが形成される。嵌合部3cの内周縁には、雄部材5の段部5dと係合する係合縁部3dが形成される。また、嵌合部3cにおける表側の周縁には、雄部材5の挿入を容易とする為のテーパ部3eが形成される。膨出部3bの嵌合部3cからは、雌側生地テープ2が露呈した状態となる。
【0016】
一方、雌側ベース部3aの略中央部においても、雌側生地テープ2が露呈した状態とされる。雌側ベース部3aは、露呈した雌側生地テープ2の周縁であって、当該雌側生地テープ2と同一面上に形成される。雌側ベース部3aの周縁の一部は、合成樹脂の注入口3fとされる。雌側生地テープ2は、露呈する箇所を裏側方向へ湾曲させた状態で配置され、他の箇所を水平方向に配置させた状態で雌部材3と固定される。
【0017】
雌部材3の成形は、上下金型(図示しない)間に、雌側生地テープ2を配設し、嵌合部3cに位置する雌側生地テープ2を上下金型で挟み込み固定する。その後、注入口3fより合成樹脂を射出して、雌側ベース部3aと膨出部3bを一体成形する。
【0018】
このようにして露呈する箇所の生地を挟み込んで固定して成形することで、成形時に雌側生地テープ2が射出圧により歪んだり、波打ったりする虞がなくなる。これにより、雌側生地テープ2が合成樹脂面から露出して、スナップの強度を低減させることなく、外観を良好なものとすることができる。
【0019】
図3に示すように、雄部材5は雄側ベース部5aと係合突起5bとから構成される。雄側生地テープ4の表側には係合突起5bが形成され、裏側には雄ベース部5aが形成される。雄側ベース部5aと係合突起5bは、例えば略同一の外形を有する円盤状に形成される。
【0020】
係合突起5bは、雄側生地テープ4の平面に直交して、雄側生地テープ4から直接起立して形成される。係合突起5bの外周縁には、雌部材3の係合縁部3dと係合する段部5dが形成される。また、係合突起5bにおける表側の周縁端部には、突部5cが形成される。係合突起5bの略中央部には、凹部5eが形成される。凹部5eは、成形時における雄側生地テープ4の歪みを防止する為に配置される金型の挿入跡である。
【0021】
雄側生地テープ4は、雌側生地テープ2と異なり、湾曲箇所を有することなく水平方向に配置されて雄部材5と固定される。雄側ベース部5aは、雄側生地テープ4と平行する面上に形成される。雄側ベース部5aの略中央部は、合成樹脂の注入口5fとされる。注入口5fの位置は、凹部5eと対向する位置とされる。
【0022】
雄部材5の成形は、雌部材3と同様にして上下金型にて成形される。その際、金型の一部を係合突起5bの凹部5eの位置に挿入し、射出成形する。これにより、雄側生地テープ4を歪ませることなく、成形することができる。その他は、雌部材3の成形と同様である。
【0023】
このようにして形成される雌部材3と雄部材5は、図4に示すようにして、係合される。詳細には、雄部材5の突部5cが雌部材3における嵌合部3cの底部側に位置した状態で、係合縁部3dと段部5dにより係合される。当該状態において、雄部材5が雌側生地テープ2と接触しないことから、摩耗による損傷をなくすことができる。
【0024】
以上、説明した本発明に係るテープ付きスナップ1によれば、露呈する雌側生地テープ2の周縁であって、当該雌側生地テープ2と同一面上に雌側ベース部3aを形成したので、雌部材3の厚みを薄くし軽量化を図ることができる。これにより、スナップ全体の厚みを薄くすることができ、衣服に取り付けた際には肌触りの不快感を軽減することができる。また、厚みが薄いことから、テープ付きスナップ1の衣服等への縫製も容易なものとなる。
【0025】
更に、従来の雌部材と比較すると、裏側に露呈する雌側生地テープ2の面積を広くすることができる。すなわち、雄部材5における係合突起5bの外形と同等の範囲にて、雌側生地テープ2を露呈させることができる。これにより、雌部材3と雄部材5との係合強度を損なうことなく、スナップの係合解除時における音を低くすることができる。このことは、生地テープにメッシュ生地を採用した際に顕著なものとなる。
【符号の説明】
【0026】
1 テープ付きスナップ
2 雌側生地テープ
3 雌部材
3a 雌側ベース部
3b 膨出部
3c 嵌合部
3d 係合縁部
3e テーパ部
3f 注入口
4 雄側生地テープ
5 雄部材
5a 雄側ベース部
5b 係合突起
5c 突部
5d 段部
5e 凹部
5f 注入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の雄部材の複数個を所定間隔で生地テープに成形固定した雄側生地テープと、合成樹脂製の雌部材の複数個を前記雄部材と同一間隔で生地テープに成形固定した雌側生地テープとからなり、前記生地テープに取付孔を穿設することなく前記雄部材及び前記雌部材とを成形固定したテープ付きスナップにおいて、
前記雄部材の係合突起は、前記雄側生地テープから直接起立してなり、
前記雌部材は、表側中央部においても裏側中央部においても前記雌側生地テープを露呈させるとともに、裏側に露呈する前記雌側生地テープの周縁であって且つ同一面上に雌側ベース部を形成したことを特徴とするテープ付きスナップ。
【請求項2】
前記雄側生地テープと平行する面上に雄側ベース部を形成した請求項1に記載のテープ付きスナップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−34872(P2012−34872A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178242(P2010−178242)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(390003296)尼崎製罐株式会社 (7)
【出願人】(000114606)モリト株式会社 (198)
【Fターム(参考)】