説明

テープ付きファスナ

【目的】テープ付きファスナの雌雄部材を耐熱性を有する素材で製造する。
【構成】合成樹脂製の雄部材(6)の複数個を所定間隔で生地テープ(18)に成形固定した雄側テープと、合成樹脂製の雌部材(4)の複数個を前記雄部材と同一間隔で生地テープ(30)に成形固定した雌側テープとからなる。前記雌雄部材(4,6)を形成する合成樹脂を66ナイロンとする。好ましくは、前記生地テープ(18,30)に取付孔を開けることなく雄部材(6)、雌部材(4)とを成形固定すると共に、前記雄部材(6)の係合突起(20)を、生地テープ(18)から直接起立させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性を有する合成樹脂製のテープ付きファスナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来公知のテープ付きファスナは、合成樹脂製の雄部材の複数個を所定間隔で生地テープに成形固定した雄側テープと、合成樹脂製の雌部材の複数個を前記雄部材と同一間隔で生地テープに成形固定した雌側テープとからなり、前記生地テープに雄部材、雌部材とを成形固定したものである。
【0003】
本出願人はこのテープ付きファスナに対してさらにさまざまな改良を加えて、その都度出願してきた(下記特許文献1−17参照)。例えば、複数の金型孔を貫通孔付近に設けたもの(特許文献1参照)や前記雄部材の係合突起を、ベースを介することなく、生地テープから直接起立させたもの(特許文献2参照)などである。
【0004】
上記特許文献1−15の発明のファスナにおいて具体的に紹介されている雌雄部材の合成樹脂は、例えば「熱可塑性樹脂、例えばポリアセタール溶融樹脂」により成形されている。特許文献16では、合成樹脂として「ポリエステルエラストマー」(例えば「ハイトレル」(登録商標))を使用している。上記従来技術を具体化した市販製品においても同様である。
【特許文献1】特開昭62−155805号
【特許文献2】特開2001−149117
【特許文献3】実開昭63−161512号
【特許文献4】特開平10−33210号
【特許文献5】特開平10−33211号
【特許文献6】特開平11−9309号
【特許文献7】特開2000−83710
【特許文献8】特開2000−270906
【特許文献9】特開2001−8711
【特許文献10】特開2001−61515
【特許文献11】特開2001−78807
【特許文献12】特開2002−318
【特許文献13】特開2002−125719
【特許文献14】特開2002−125720
【特許文献15】特開2002−238620
【特許文献16】特開2004−337416
【特許文献17】特開2002−337417
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの素材は通常の使用や洗濯においては全く問題ないものであり、市場で好評を博している。しかし、ある特殊な用途に関して、改良の余地があることが分かった。それは、病院等の大規模施設においてこのファスナ付きテープをシーツ開閉部材として使用する場合である。使用自体はもちろん何の問題もないのであるが、洗濯過程において若干問題が発生している。というのは、そのような施設では、シーツを外部業者に委託して定期的に洗濯している。委託先のあるリネンサプライ・総合寝具リース会社では、洗濯工程は次のようにして行われる。
(1)大規模施設から大量に回収した大量のシーツ等を直径約2mのドラム式洗濯機に投入する。
(2)洗濯後、圧縮脱水機にかける。圧縮脱水機は、シリンダー直径500mm、単位圧力は45kg/cm2にもなる。
(3)圧縮後、出てくるシーツは煎餅状態である。
(4)煎餅状態の塊をドラム式乾燥機にかける。
(5)乾燥後、アイロン工程で皺を伸ばす。アイロンの加熱温度は約180℃である。
(6)その後、畳み工程で折り畳み、もとの施設に納品する。
【0006】
この一連の洗濯工程を3回も繰り返すと、ファスナが歪むことがあり、そのような状態では、雌雄部材が係合しなくなる。歪みの原因は、圧縮脱水機における圧力であると考えられている。
【0007】
この問題を解決するため、本発明者らは各種公知の素材を使用して何度も試行錯誤を重ねて本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のテープ付きファスナは、合成樹脂製の雄部材の複数個を所定間隔で生地テープに成形固定した雄側テープと、合成樹脂製の雌部材の複数個を前記雄部材と同一間隔で生地テープに成形固定した雌側テープとからなるものにおいて、前記雌雄部材を形成する合成樹脂を66ナイロン樹脂で成形したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
下記表1は、従来のポリアセタール樹脂で成形したファスナと、本発明により66ナイロンで成形したファスナをホットプレス試験(JIS−L−0850乾燥)で比較したものである。ホットプレスはあて布を置かず、10個一緒に試験した。
【表1】


【0010】
本発明のファスナによれば、合成樹脂として66ナイロン樹脂を使用しているので、圧縮脱水機による処理に十分耐えることができる。極めて実用的価値の高い発明である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
66ナイロンはそれ自体公知の素材であり、各種分野において幅広く用いられている。例えば、東レ66ナイロン樹脂「アラミンCM3001−N」(登録商標)を使用することができる。
【0012】
好ましくは、前記生地テープに取付孔を穿設することなく雄部材、雌部材とを成形固定し、前記雄部材の係合突起を、生地テープから直接起立させる。そのようなファスナは、雄部材にベースが存在しないので、係合突起は従来技術におけるそれよりもやや肉厚としておくことが好ましい。
【0013】
前記雄部材及び雌部材の外観は表から見ても裏から見てもリング状であることが好ましい。しかし、係合と関係のない雄部材の内側輪郭、雌部材の外側輪郭は美的観点から自由にデザインすることができる。
【実施例1】
【0014】
以下、添付の図面に基づき本発明の実施例を説明する。
【0015】
図1は本発明に係るテープ付きファスナ2を接合面側から見た平面図であり、(a)は雌部材4側、(b)は雄部材6側である。それぞれほぼリング状の外観を有する。各部材の反対側は図示していないが、やはりそれぞれリング状の外観を有する。ただし、反対側のリングの幅は、後記する成形上の理由により、やや太くなる。
【0016】
図2は雄部材6の平面図、図3は断面図である。図3に示すように、生地テープ18表面から係合用突起20が起立している。雄部材の係合用突起20は先端部周囲に係合用膨出縁22と樹脂弾性による拡縮変形のための凹部24を有する。
【0017】
係合用突起20にはベースが実質的に存在しない。図面では、生地テープ18との接合面がやや膨らんでいるが、この程度の膨らみはベースと見なさないし、設計次第でほぼ完全にこれをなくすこともできる。ベースが存在しないので、係合用突起20は高さを低くすることができる。その結果、係合部分の大きさを変えることなく、雄部材6を全体として小さくすることができる。
【0018】
この雄部材6を成形するには、ファスナ成形用空間を形成した上下金型(図示せず)間に、溶融66ナイロン樹脂が成形圧力によって通過浸透する粗さの、取付穴のない生地テープ18を配設し、係合突起20内側に位置するくぼみ部分28の生地テープを前記上下金型で挟み込み固定し、その後、66ナイロン樹脂を前記成形空間内に射出する。図3の符号26の小さなくぼみが金型の射出口に相当する。この射出口設定のために裏面側から見たリング幅が係合突起20の幅(即ち、表側から見たリング幅)よりもやや幅広となる。
【0019】
このようにして、生地テープ18両面に形成される雄部材の表面側と裏面側とが生地テープ18を透過する66ナイロン樹脂によって一体化される。本発明では、上記したように係合突起20内側に位置するくぼみ部分28に位置する生地テープが上下金型で挟まれて固定されているので、高い射出圧にむき出しでさらされる生地テープの面積が小さい。そのため、テープが成形時に射出圧により歪んだり、波打つようなことがほとんどない。その結果、テープが66ナイロン樹脂表面から露出して、ファスナの強度を落とし、美観を損なうような事態を避けることができる。
【0020】
図4は雌部材4の平面図であり,図5は断面図である。生地テープ30を鋏んで66ナイロン樹脂により係合用くぼみ32を形成している。雌部材の係合用くぼみ32は、その開口部内側に型抜きを許容する範囲の係合用縁34を形成している。
【0021】
この雌部材の成型方法は雄部材6のそれとほぼ同様であるので、詳細な説明を省略する。図5の符号36の小さなくぼみが樹脂注入口である。使用するテープ生地30も前記テープ生地18と同様である。
【0022】
テープ生地18,30としては、66ナイロンが溶融されることなく溶融樹脂が透過する生地であることが必要で、織物でも編物でもよく、例えば木綿生地、混紡生地等を採用することができる。
【0023】
本発明の雄部材6と雌部材4を係合させた状態の断面を図6に示す。本発明のファスナの使用方法は従来通りである。
【0024】
図7は、本発明の第2実施例に係る雄部材6Aの、接合面側から見た平面図である。雄部材の内側40は係合とは関係ないので、どのような形状としてもよく、例えば図7に示すような星形とすることができる。これは美的観点から自由に選択することができる。符号20aは係合突起である。
【0025】
図8は雌部材4Aの変形例である。雌部材4Aの外側輪郭42は係合と関係ないので、どのような形状としてもよく、例えば図8に示すような花びら形とすることができる。これは美的観点から自由に選択することができる。
【0026】
図8では、さらに係合縁34aを多角形(図面では8角形)としている。この雌部材と円状の係合縁を有する雄部材とを係合させることにより、円状の雌雄係合縁同士の時よりも係合力が強固となる。なお、図示しないが、雄部材の係合縁を多角形とし、雌部材の係合縁を円状とすることもできる。
【0027】
その他、図示しないが、本発明は前記特許文献記載の発明その他一般のテープ付きファスナに応用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係るテープ付きファスナ2を接合面側から見た平面図であり、(a)は雌部材4側、(b)は雄部材6側である。
【図2】本発明の雄部材6の平面図である。
【図3】本発明の雄部材6の断面図である。
【図4】雌部材4の平面図である。
【図5】雌部材4の断面図である。
【図6】本発明の雄部材6と雌部材4を係合させた状態の断面図である。
【図7】本発明の第2実施例に係る雄部材6Aの、接合面側から見た平面図である。
【図8】雌部材4Aの変形例の、接合面側から見た平面図である。
【符号の説明】
【0029】
4 合成樹脂製の雌部材
6 合成樹脂製の雄部材
18 雄側生地テープ
20 雄部材の係合突起
28 係合突起の内側のくぼみ
30 雌側生地テープ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の雄部材(6)の複数個を所定間隔で生地テープ(18)に成形固定した雄側テープと、合成樹脂製の雌部材(4)の複数個を前記雄部材と同一間隔で生地テープ(30)に成形固定した雌側テープとからなるものにおいて、
前記雌雄部材(4,6)を形成する合成樹脂を66ナイロンとしたことを特徴とするテープ付きファスナ。
【請求項2】
前記生地テープ(18,30)に取付孔を開けることなく雄部材(6)、雌部材(4)とを成形固定すると共に、前記雄部材(6)の係合突起(20)を、生地テープ(18)から直接起立させた請求項1記載のテープ付きファスナ。
【請求項3】
前記雄部材(6)の外観が表から見ても裏から見てもリング状である請求項1又は2記載のテープ付きファスナ。
【請求項4】
前記雄部材(6A)の係合突起の内側輪郭(40)が円形以外の形状である請求項1ないし3のいずれかに記載のテープ付きファスナ。
【請求項5】
前記雌部材(4)の外観が表から見ても裏から見てもリング状である請求項1ないし3のいずれかに記載のテープ付きファスナ。
【請求項6】
前記雌部材(4A)の外側輪郭(42)が円形以外の形状である請求項1ないし4のいずれかに記載のテープ付きファスナ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−7238(P2007−7238A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−193498(P2005−193498)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(000114606)モリト株式会社 (198)
【出願人】(390003296)尼崎製罐株式会社 (7)
【Fターム(参考)】