説明

テープ巻き絶縁電線の製造方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、接着剤層を持たない高耐熱用ポリイミドテープ巻き絶縁電線の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の高耐熱用絶縁電線は、フッ素樹脂系の接着剤などの付いたカプトン(東レ・デュポン社製)フィルムなどの市販のポリイミドテープを心線外周に巻き付け、焼成したり、心線をポリイミドの前駆体であるポリアミック酸ワニスに直接浸漬した後、加熱・乾燥イミド化することにより製造されているが、前者は接着剤としてフッ素樹脂などを用いることから耐熱性が充分とはいえず、また後者はワニス中に心線を浸漬することからポリイミド層の厚みを任意にコントロールすることが難しかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的とするところは、ポリイミドの本来持っている耐アルカリ性、耐溶剤性、耐熱性、電気特性をそのまま生かした、接着剤層のないポリイミドテープ巻き絶縁電線の製造方法を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、心線外周にポリアミック酸テープを巻き付け加熱・乾燥イミド化することを特徴とするテープ巻き絶縁電線の製造方法である。
【0005】即ち、離型フィルム上にもしくは離型ドラム上にポリアミック酸溶液を塗布し、タックフリー状態になるまで乾燥し、ポリアミック酸フィルムを形成する。その後このフィルムは、離型フィルムごと或はアミック酸フィルムのみを所定の幅にスリットし、ポリアミック酸テープとする。このテープを心線外周に巻き付けた後、充分に加熱・乾燥させることによりイミド化を行う。
【0006】本発明において、ポリアミック酸溶液を乾燥させ、半硬化状態のポリアミック酸フィルムを形成させる条件としては、フィルムがタックフリーになり作業性に問題がなくなる状態にすればよく、80〜200℃、5〜30分が適当である。これより温度が低く時間が短い場合、フィルム中に残る残存溶剤量が多く、被覆厚みのバラツキも大きくなり、所定の厚みにコントロールすることが難しい。またこれより温度が高く時間が長い場合、イミド化が進みすぎ、フィルムの流動性がなくなり、心線との密着性及びフィルム同志の密着性が不充分となる。
【0007】本発明におけるポリアミック酸は、通常ジアミンと酸無水物とを反応させることにより得られる。ジアミンとしては、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルエーテルなどを、酸無水物としては、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物などを使用することができ、それぞれ1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。ポリアミック酸フィルムの状態におけるイミド化率は10〜50%、望むべくは20〜40%が好ましい。
【0008】離型フィルムとして用いることのできる材料としては、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエーテルサルフォン、ポリイミド、ポリエチレン等のプラスチックフィルムがあげられる。
【0009】電線の心線として用いることのできる材料としては、銅、アルミニウム、コンスタンタン、ニッケル等が挙げられる。
【0010】
【作用】本発明は、ポリアミック酸フィルムの易成型性および機械的強度を生かし、心線外周にポリアミック酸テープを巻き付け加熱・乾燥イミド化することを特徴とすることにより、容易に、生産性・収率よく、ポリイミドの本来持っている耐アルカリ性、耐溶剤性、耐熱性、電気特性をそのまま生かした、接着剤層のないポリイミドテープ巻き絶縁電線を得ることができる。
【0011】
【実施例】温度計、撹拌装置、還流コンデンサー及び乾燥窒素ガス吹込み口を備えた4つ口セパラブルフラスコに、精製した無水のパラフェニレンジアミン108gと4,4'-ジアミノジフェニルエーテル200gをとり、これに無水のN-メチル-2-ピロリドン90重量%とトルエン10重量%の混合溶剤を、全仕込原料中の固形分割合が20重量%になるだけの量を加えて溶解した。乾燥窒素ガスは反応の準備段階より生成物取り出しまでの全工程にわたり流しておいた。次いで、精製した無水の3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物294gとピロメリット酸二無水物218gを撹拌しながら少量ずつ添加するが、発熱反応であるため、外部水槽に約15℃の冷水を循環させてこれを冷却した。添加後、内部温度を20℃に設定し、5時間撹拌し、反応を終了してポリアミック酸溶液を得た。
【0012】市販のポリエステルフィルム上に、このポリアミック酸溶液をバーコーターでイミド化後の厚みが50μmになるように塗布し、110℃、15分乾燥を行い、離型フィルムの付いたポリアミック酸フィルムを得た。本フィルムをスリッターを用いて離型フィルムを剥しながら20mm幅にスリットし、ポリアミック酸テープとした。このテープを心線上に3重になるように巻き付けた後、380℃で1時間加熱乾燥・イミド化して、ポリイミドテープ巻き絶縁電線を得た。得られたテープ巻き絶縁電線の特性は、ポリイミド本来の持つ優れた耐熱性(半田耐熱、360℃・1分)、耐薬品性を有していた。
【0013】
【発明の効果】本発明によれば、接着剤層を持たないポリイミド層のみからなるテープ巻き絶縁電線を得ることができ、さらに、通常のテープ巻き絶縁電線の製造装置をそのまま用いた連続工程にも容易に適用できるなど、工業的なテープ巻き絶縁電線の製造方法として好適なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 心線外周にポリアミック酸テープを巻き付け加熱・乾燥イミド化することを特徴とするテープ巻き絶縁電線の製造方法。

【特許番号】特許第3090348号(P3090348)
【登録日】平成12年7月21日(2000.7.21)
【発行日】平成12年9月18日(2000.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−206055
【出願日】平成3年8月17日(1991.8.17)
【公開番号】特開平5−47246
【公開日】平成5年2月26日(1993.2.26)
【審査請求日】平成10年7月7日(1998.7.7)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【参考文献】
【文献】特開 平1−258318(JP,A)
【文献】特開 平1−315428(JP,A)
【文献】特開 平3−159737(JP,A)