説明

ディスクの突起検出・平坦度測定回路およびディスクのグライドテスター

【課題】
ディスクの突起検出とトラックあるいはセクタ対応の平均値算出の2系統の信号処理回路を切換えることなしに突起検出と平均値算出ができかつ測定回路の小型化が可能なディスクの突起検出・平坦度測定回路およびディスクのグライドテスターを提供することにある。
【解決手段】
この発明は、突起検出センサからの信号を増幅してA/D変換し、デジタルのBPF(バンドパスフィルタ)を介してデジタル値においてピーク検出処理と平均値算出処理とを並列的に行うもので、検出されたピーク値と検出された平均値に基づいてディスクの合否判定をすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ディスクの突起検出・平坦度測定回路およびディスクグライドテスターに関し、詳しくは、ディスクの突起検出とトラックあるいはセクタ対応の平均値算出の2系統の信号処理回路を切換えることなしに突起検出と平均値算出ができかつ測定回路の小型化が可能なディスクの突起検出・平坦度測定回路の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ等の情報記録媒体として用いられるディスクは、近年益々高記憶密度化が要求され、かつ、小型化されてきている。
情報記録媒体の1つであるハードディスクは、ガラス基板やアルミニューム基板をベースとし、その表面に磁性膜を塗布して製作される。磁性膜は突起などの凹凸がない平滑な平面とすることが必要である。そのために磁気ディスク(以下単にディスクという)の表面は、バーニッシュ工程により研磨して平滑化される。しかしバーニッシュ工程により平滑化しても突起が残留することがあるので、突起検査装置によりディスクを検査し、なお残留した突起があるときはバーニッシュ工程に差し戻して再研磨が行われる。
【0003】
突起検査装置は、薄膜ヘッドのスライダの上部には圧電センサ(ピエゾ素子)を突起検出センサとして搭載されている。ディスクを所定の周速で回転させて一定の浮上量をこのスライダ(このスライダには薄膜ヘッドはあってもなくてもよい)に与え、このスライダがディスク上の突起に衝突したときの振動を突起検出センサにより電気信号に変換して突起検出信号を得ることでディスク上の突起を検査する装置である。特に、このような突起検査とともにディスクの表面のうねりを検査する突起検査装置を出願人はすでに出願済みである(特許文献1)。
なお、突起検出センサとしては、ピエゾ素子に換えて超音波センサが使用されることもある。
ところで、現在では、10,000/(インチ)以上のトラックを持つ超高密度記録のディスクが使用され、磁気ヘッドとディスクの間隔が十数nmから数nmの距離までに接近してきている。そのため最近ではディスク面の平坦度が重要視されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−305286公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
磁気ヘッドとディスクの間隔が十数nmから数nmの距離までに接近してくると、検出する突起の高さも十数nmか、これ以下となる。その上、このような突起高さの検出になると、ディスクの突起ばかりでなく、さらにディスクの回転による面ブレや平坦度が問題となる。
面ブレは、ディスクの表面のうねりや回転中心に対するディスクの偏心などによるバランスの悪化が原因で起こり、特に、最近のガラスディスクのように厚さが0.3mm〜0.5mmなると、回転させたときにディスク表面のうねりにより面ブレが起き易い。
磁気ヘッドとディスクの間隔が前記のような距離になり、ディスクの面ブレ量が多くなりあるいは平坦度が悪くなると、誤書込や誤読出の原因となったり、ヘッドクラッシュの原因となる。そのため、たとえ、問題となるような高さの突起がディスクに存在していなくても、ディスクを不合格としなければならなくなってきている。
このようなことから、特許文献1に示すような突起検査装置の突起検出回路にトラック等の平均値の信号を得る測定回路を加え、ディスクの平坦度の検査が行われている。
平均値の信号を得る測定回路で平坦度に関係する信号が得られるのは、ディスク回転によるエアーの振動を介して圧電センサで100kHz〜500kHz程度の信号が得られ、それがディスク面の凹凸状態を表しているからである。このような信号は、5mm角か、これ以下の大きさスライダの上部に貼り付けた圧電センサで得ることができる。
【0006】
現状の突起検査装置では、ピエゾ素子からの信号のピークを検出する突起検出回路に並列に平均値を検出する平均値算出回路を設けてトラック対応に平均値を算出してそれをA/D変換してデータ処理装置において、トラック対応の平均値が所定の基準値以下の場合に仕様内の平坦度があるとしてディスクの平坦度の検査をしている。
しかし、突起検出回路に並列にこのような平均値算出回路を設けると、A/D変換してデータ処理をする関係から突起検出回路と平均値算出回路との切換回路が必要となり、ディスクの検査効率が低下する問題がある。
【0007】
これに対して突起検出回路と平均値算出回路とにそれぞれA/D変換回路を設けてデータの並列処理をすることも可能であるが、測定精度の関係から16ビットか、それ以上のビット数の大きいD/A変換回路が必要となり、測定回路が大型化する欠点がある。
この発明の目的は、このような従来技術の問題点を解決するものであって、ディスクの突起検出とトラックあるいはセクタ対応の平均値算出の2系統の信号処理回路を切換えることなしに突起検出と平均値算出ができかつ測定回路の小型化が可能なディスクの突起検出・平坦度測定回路を提供することにある。
この発明の他の目的は、ディスクの突起検出とトラックあるいはセクタ対応の平均値算出の2系統の信号処理回路を切換えることなしに突起検出と平均値算出ができ、ディスクの検査効率を向上させることができるディスクのグライドテスターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するためのこの発明のディスクの突起検出・平坦度測定回路の特徴は、突起検出センサと、この突起検出センサからの信号を増幅する増幅回路と、この増幅回路で増幅された検出信号をA/D変換するA/D変換回路と、このA/D変換回路からデジタル値の信号を受けてBPF(バンドパスフィルタ)処理をして得られる所定の帯域のデジタル値の信号に基づいてピーク検出処理によりピーク値を検出し、平均値算出処理によりディスクにおけるトラックあるいはセクタ対応の平均値を算出するデータ処理回路とを備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
このようにこの発明は、突起検出センサからの信号を増幅してA/D変換し、デジタルのBPF(バンドパスフィルタ)を介してデジタル値においてピーク検出処理と平均値算出処理とを並列的に行うものであり、これにより検出されたピーク値と検出された平均値に基づいてディスクの合否判定をすることができる。
この発明では、データ処理回路の内部でBPF(バンドパスフィルタ)処理をすることにより外部に設けられるアナログのフィルタ処理回路が不要となりかつ突起検出回路と平均値算出回路との切換回路も不要となる。
その結果、ディスクの突起検出とトラックあるいはセクタ対応の平均値算出の2系統の信号処理回路を切換える切換回路を設けることなしに突起検出と平均値算出ができかつ測定回路の小型化が可能となり、ディスクのグライドテスターの検査効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、この発明のディスクの突起検出・平坦度測定回路を適用した一実施例のディスク検査における突起検出・平坦度測定回路のクブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1において、10は、ディスクの突起検出・平坦度測定回路であって、1は磁気ヘッドであり、1aはこれに搭載された圧電センサ(ピエゾ素子)である。2はアンプ(MP)であり、3はA/D変換回路(A/D)、4はFPGA(フィールド・ブログラマブル・ロジックアレイ)である。なお、9は、回転する被検査のディスクである。
FPGA4は、その内部回路としてBPFデジタルフィルタ論理ブロック41とピーク検出処理ブロック42とトラック対応平均値算出処理ブロック43、そして合否判定処理ブロック44とが書込可能なメモリにプログラム化されて論理回路とともに設けられている。そして、ディスクを回転するスピンドル側に設けられたエンコーダからインデックス信号INDがFPGA4の入力ポートB介してFPGA4に入力されている。
圧電センサ1からの入力信号は、アンプ2により増幅されてA/D3により圧電センサ1の突起検出のアナログ電圧信号がデジタル値に変換されてFPGA4の信号入力ポートAにシリアルに入力される。
【0012】
FPGA4は、圧電センサ1aの突起検出信号のデジタル値をBPFデジタルフィルタ論理ブロック41でフィルタリングしてフィルタリングされた所定の帯域のデータをピーク検出処理ブロック42とトラック対応平均値算出処理ブロック43とに送出する。
BPFデジタルフィルタ論理ブロック41の処理帯域幅は、250kHz〜3MHzの範囲の周波数の1つを中心周波数として±150kHzか、±150kHz以下の周波数帯域幅をもって信号を選択して抽出する。
なお、この場合のフィルタリング処理として突起検出側(ピーク検出処理ブロック42)と平均値算出側(トラック対応平均値算出処理ブロック43)とは中心周波数を分けて2系統の中心周波数としてもよい。このような場合には、突起検出側は、1MHz〜3MHzの範囲から選択する高域とし、平均値検出側は、250kHz〜1MHzの範囲から選択する低域とすることができる。
ピーク検出処理ブロック42は、最大電圧値ホールド回路(ピークホールド回路)を構成していて、インデックス信号INDに応じてトラック1周のうちの最大のピーク電圧値(デジタル値)がここでホールドされてFPGA4のメモリ領域に記憶される。
トラック対応平均値算出処理ブロック43は、インデックス信号INDに対応して圧電センサ1aの突起検出信号の1トラック分の平均値をデジタル処理にて算出して算出された平均値がFPGA4のメモリ領域に記憶される。
なお、メモリ領域には、各トラック対応にピーク電圧値と平均値とがそれぞれ全トラック分記憶される領域が確保されている。
【0013】
全トラック分の記憶合否判定処理ブロック44は、FPGA4のメモリ領域に記憶されたトラックの最大のピーク電圧値について各トラックにおけるピーク電圧値が検出されたタイミングでFPGA4のパラメータ記憶領域にあらかじめ記憶されたピークに対応する所定の閾値(基準値)とを比較する。記憶されたトラックごとにピーク電圧値を順次比較していき所定の閾値を越えているトラックがあるときには、検査対象のディスク9を不合格(NG)と判定してNG信号を出力ポートCから出力する。
そうでないときには、全トラック分の記憶合否判定処理ブロック44は、1トラック分の電圧値の突起検出信号の平均値の判定処理に入る。FPGA4のメモリ領域に記憶されたトラックの平均値について各トラックにおける平均値が検出されたタイミングでFPGA4のパラメータ記憶領域にあらかじめ記憶された平均値に対応する所定の閾値(基準値)とを比較する。
あるトラックにおいて突起検出信号の平均値が所定の閾値を越えているときには、同様にNG(不合格)のNG信号を出力ポートCから出力する。
なお、全トラック分の記憶合否判定処理ブロック44は、パラレル処理(あるいはタスク処理)でピーク電圧値の比較判定と同時に突起検出信号の平均値の判定処理を行うようにプログラムされあるいは回路配置されていてもよい。
【0014】
ここで、平均値において不合格(NG)と判定するときには、リトライ処理をして再判定をしてもよい。この場合、所定回数のリトライにおいてすべて不合格(NG)となったもののみを不合格(NG)とし、リトライ処理で不合格(NG)とならなかったトラックについては合格(GD)として次のトラックの平均値判定処理に移るようにしてもよい。
全トラック分のピーク電圧値と平均値とがともに合格(GD)となっているときにはディスク9は合格とされ、GD信号が出力ポートCから出力される。
なお、以上は、トラックに対応してピーク電圧値と平均値を算出しているが、インデックス信号INDに対応してFPGA4の内部でセクタ信号を生成してセクタ対応にピーク電圧値と平均値を算出してセクタ対応の所定の閾値(基準値)と比較してそれぞれにディスク9の合否を判定するような処理をしてもよい。
【0015】
合格(GD)となったディスクについては、ディスク全体の平均値を算出して、トラック対応に突起検出信号の平均値の差のばらつきを統計的に処理をすることで平坦度のデータを算出して画像表示するデータとして外部へ出力ポートDから出力する。
なお、途中で不合格(NG)となったディスクについても全トラック分の突起検出と平均値算出を行って、画像表示するデータとして外部へ出力ポートDから出力してもよい。
ところで、ここでのディスクの平坦度とは、突起検出センサの検出信号についてトラック対応あるいはセクタ対応に得られる平均値が所定の基準値に対してそれ以下の場合に仕様内の平坦度があるとする平坦度についてのことである。
【産業上の利用可能性】
【0016】
以上説明してきたが、実施例では、BPFデジタルフィルタ論理ブロック41は、その帯域幅が250kHz〜3MHzの周波数のBPFであるが、さらに、500kHz以下、例えば、250kHz±50kHzの帯域を分離するローパスのBPFを別途設けてトラック対応に突起検出信号の平均値を算出するようにすれば、特開2007−305286の技術と同様にうねり状態を測定することができ、これを加えてうねり状態を所定の閾値(基準値)と比較して合否判定をすることが可能である。
実施例では、データ処理回路としてFPGAにおいてBPFデジタルフィルタ処理とピーク検出処理とトラック対応平均値算出処理、そして合否判定処理をしているが、これらの処理は、FPGAに限定されるものではなく、例えば、MPUを有するシステムLSI等のデータ処理装置においてプログラム処理で行われ、各処理ブロックが実現されてもよいことはもちろんである。
【符号の説明】
【0017】
1…磁気ヘッド、1a…圧電センサ(ピエゾ素子)、
2…アンプ、3…A/D変換回路(A/D)、
4…FPGA(フィールド・ブログラマブル・ロジックアレイ)、
10…突起検出・平坦度測定回路、41…BPFデジタルフィルタ論理ブロック、
42…ピーク検出処理ブロック、43…トラック対応平均値算出処理ブロック、
44…合否判定処理ブロック。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
突起検出センサと、この突起検出センサからの信号を増幅する増幅回路と、この増幅回路で増幅された検出信号をA/D変換するA/D変換回路と、このA/D変換回路からデジタル値の信号を受けてバンドパスフィルタ処理をして得られる所定の帯域のデジタル値の信号に基づいてピーク検出処理によりピーク値を検出し、平均値算出処理により前記ディスクにおけるトラックあるいはセクタ対応の平均値を算出するデータ処理回路とを備えるディスクの突起検出・平坦度測定回路。
【請求項2】
データ処理回路は、FPGAで構成され、さらに前記ピーク値と前記平均値とに基づいて前記ディスクの合否判定処理を行う請求項1記載のディスクの突起検出・平坦度測定回路。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のディスクの突起検出・平坦度測定回路を有するディスクのグライドテスター

【図1】
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【公開番号】特開2011−54220(P2011−54220A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199592(P2009−199592)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】