説明

ディスククランプ装置

【課題】簡易な構成でディスク状の記録媒体の両面側の圧力差を小さくすることが可能なディスククランプ装置を提供する。
【解決手段】ディスククランプ装置1は、ターンテーブル10と、ディスク2の中心孔2aと係合可能なスライドコーン20と、スライドコーン20に係合したディスク2をターンテーブル10のクランパ側面14aと協働して挟持するクランパ40と、を備え、スライドコーン20に形成された突起24が、ターンテーブル10に形成された孔部11bに挿通されており、モータ3によってディスク2を回転させたときに、ターンテーブル10のモータ3側の空気が、ターンテーブル10に形成された孔部11b及びスライドコーン20に形成された孔部21bを順次介してディスク2とクランパ40との間に構成された空気流路へ流れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク状の記録媒体を回転可能に保持するディスククランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブルーレイ等といったディスク状の記録媒体に関する記録再生装置内には、記録媒体を回転可能に保持するディスククランプ機構が設けられている。記録再生装置の筐体の薄型化に伴い、記録媒体の記録面側よりも非記録面側の隙間が狭くなってきている。記録媒体が高速回転すると、空気がその粘性によって記録媒体表面に連動して回転するので、非記録面側の圧力が低下し、ディスクに対して光ピックアップ機構から離間する方向の力が作用する。このような事態を避けるため、特許文献1には、セルフチャッキング方式の光ディスク装置において、光ディスクを支持する支持部材に空気の流通路を設ける技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−305446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、かかる技術は、セルフチャッキング方式のものであって、スライドコーン方式のディスククランプ装置には、そのまま適用することができない。そのため、スライドコーン方式のディスククランプ装置においても、簡易な構成で記録媒体の両面側の圧力差を小さくする技術が望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、簡易な構成でディスク状の記録媒体の両面側の圧力差を小さくすることが可能なディスククランプ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するために、本発明のディスククランプ装置は、モータの回転軸と同軸に配置されており、前記回転軸と一体に回転可能なターンテーブルと、前記モータ3の回転軸の軸方向に移動可能であり、ディスク状の記録媒体の中心孔と係合可能なスライドコーンと、前記スライドコーンに係合した前記記録媒体を前記ターンテーブルと協働して挟持するクランパと、を備え、前記スライドコーンに形成された突起が、前記ターンテーブルに形成された孔部に挿通されているディスククランプ装置であって、前記スライドコーンには、当該スライドコーンのモータ側面及びクランパ側面を連通する孔部が形成されており、前記クランパが前記記録媒体を押圧した状態において、前記クランパと前記記録媒体との間に空気流路が構成されており、前記モータ3によって前記記録媒体を回転させたときに、前記ターンテーブルの前記モータ側の空気が、前記ターンテーブルに形成された孔部及び前記スライドコーンに形成された孔部を順次介して前記空気流路へ流れることを特徴とする。
【0007】
かかる構成によると、かじり防止のためにターンテーブルに形成された孔部を介して空気が流れるので、簡易な構成でディスク状の記録媒体の両面側の圧力差を小さくすることができる。
【0008】
前記ターンテーブルのモータ側面には、当該ターンテーブルの回転に伴い空気を前記孔部へ案内する複数の空気案内羽根が形成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡易な構成でディスク状の記録媒体の両面側の圧力差を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るディスククランプ装置を示す模式断面図である。
【図2】ターンテーブルを示す斜視図であり、(a)は上から見た図、(b)は下から見た図である。
【図3】スライドコーンを示す斜視図であり、(a)は上から見た図、(b)は下から見た図である。
【図4】クランパを示す斜視図であり、下から見た図である。
【図5】ターンテーブルを示す下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0012】
図1に示すように、本発明の実施形態に係るディスククランプ装置1は、ディスク状の記録媒体2(以下、ディスク2と称する)の記録再生装置においてディスク2を回転可能に保持する機構であって、ターンテーブル10と、スライドコーン20と、ストッパ30と、クランパ40と、を備える。かかるディスククランプ装置1は、記録再生装置の筐体8内に収容されており、ターンテーブル10及びクランパ40の外周縁よりも径方向外側において、ディスク2の記録面側(図1の下側)の隙間、すなわち、ディスク2とトレイ7との隙間D1よりも非記録面側(図1の上側)の隙間、すなわち、ディスク2と筐体8におけるディスク2の非記録面と対向する面との隙間D2の方が狭い。
【0013】
<ターンテーブル>
ターンテーブル10は、ディスク2が載置された状態でモータ3の回転軸3aと一体に回転する円板状部材であって、図2に示すように、中心部11と、当該中心部11よりも高く形成された外周部12と、複数(本実施形態では8個)の空気案内羽根13と、外周部12のクランパ40と対向する面(クランパ側面)の外周縁に取り付けられた弾性体14と、を備える。かかるターンテーブル10は、中心部11、外周部12及び複数の空気案内羽根13が一体成形されており、外周部12のクランパ側面に接着等によって弾性体14を取り付けることによって製造される。
【0014】
中心部11の中心には、モータ3の回転軸3a及びロータ外枠3b(図1参照)が挿通される孔部11aが形成されており、ターンテーブル10は、ロータ外枠3bを介してモータ3に固定されている。また、中心部11の外周縁には、後記するスライドコーン20の突起24が挿通される複数(本実施形態では4個)の孔部11bが等間隔に形成されている。
【0015】
また、孔部11bの回転方向Rの前方側の側縁には、上側(クランパ側)に向けて凸部11cが立設されている。すなわち、孔部11bの回転方向Rの前方側の側面11b1は、孔部11bの回転方向Rの後方側の側面よりも高い。
【0016】
複数の空気案内羽根13は、中心部11及び外周部12のモータ側面に等間隔に形成されたリブであり、モータ3によるターンテーブル10の回転に伴い、ターンテーブル10の下方にある空気をターンテーブル10の中心側、より詳細には孔部11bへ案内する。複数の空気案内羽根13は、中心側から外周側に向けて渦状に放射する形状を呈しており、空気案内羽根13の渦状は、ターンテーブルの回転方向Rの後方側に凸形状となっている。すなわち、空気案内羽根13の凹面が、回転によって空気を受け、空気をターンテーブル10の中心側へ案内する。本実施形態では、4個の長い空気案内羽根13Aが、孔部11a近傍から孔部11bの横を通って外周部12の外周縁近傍まで延設されており、残り4個の短い空気案内羽根13Bが、中心部11の外周縁近傍から外周部12の外周縁近傍まで延設されている。そして、長短の空気案内羽根13A,13Bが交互に配置されている。
【0017】
弾性体14は、合成樹脂等からなり、平坦な輪形状を呈する部材である。かかる弾性体14のクランパ側面14aは、ディスク2の内周部が載置される載置面である。ディスク2の外周部は、ターンテーブル10の外周部12から露出しており、ディスク2の外周部のモータ3と対向する面、すなわちモータ側面が情報の記録面となっている。
【0018】
<スライドコーン>
スライドコーン20は、ディスク2の中心孔2aの内周縁と係合した状態でモータ3の回転軸3aと一体に回転する部材であって、図3に示すように、中心部21と、当該中心部21よりも高く形成された外周部22と、外周部22の外周縁からモータ3側へ立設された周壁部23と、複数(本実施形態では4個)の突起24と、を備える。
【0019】
中心部21の中心には、後記するストッパ30の円筒部31が挿通される孔部21aが形成されており、中心部21の周縁には、複数(本実施形態では3個)の孔部21bが等間隔に形成されている。
周壁部23の外周面23aは、モータ3側に向かうにつれて拡径するテーパ面を呈している。
【0020】
複数の突起24は、周壁部23のモータ3側端部からモータ3側へ立設されており、先細りのテーパ形状を呈する。かかる複数の突起24は、それぞれ、前記したターンテーブル10の孔部11bに挿通されている。ここで、孔部11bは、突起24よりも大きく、突起24の周方向の側面(斜面)24aは、孔部11bの側面11b1にスプリング6の付勢力によって摺動可能に付勢されている。スプリング6は、ターンテーブル10の中心部11のクランパ側面とスライドコーン20の外周部22のモータ側面との間に介設されており、スライドコーン20をクランパ40側へ付勢するとともにスライドコーン20を回転方向へ付勢する付勢部材である。前記した複数の突起24は、孔部11bの側面11b1を摺動し、突起24の側面(斜面)24aによりスライドコーン20が中心孔21aを中心としてターンテーブル10に対して回転することによって、スライドコーン20に偏荷重が発生した場合にディスク2の中心孔2aとスライドコーン23aとのかじり発生を防止する。
【0021】
<ストッパ>
ストッパ30は、モータ3の回転軸3aと一体に回転するスライドコーン20の抜け止めの金属製部材であり、円筒部31と、円筒部31のクランパ側端部に形成されたフランジ部32と、を備える。
円筒部31には、モータ3の回転軸3aが圧入されており、また、スライドコーン20が摺動可能に外嵌されている。すなわち、円筒部31の内周面は、モータ3の回転軸3aの外周面と当接し、円筒部31の外周面は、スライドコーン20の孔部21aの内周面と摺動可能に当接している。
【0022】
<クランパ>
クランパ40は、スライドコーン20に係合されたディスク2をターンテーブル10のクランパ側面14aと協働して挟持する部材であって、図4に示すように、中心部41と、当該中心部41よりも低く形成された外周部42と、中心部41の中心からモータ3側へ立設された突起43と、外周部42のモータ側面に形成された複数の凸部44と、を備える。
【0023】
中心部41の上部には、磁力によってクランパ40及びストッパ30を吸引し、ディスク2をターンテーブル12に固定させるマグネット4及びヨーク5が配置されている。すなわち、ディスク2は、マグネット4及びヨーク5の磁力を用いることにより、ターンテーブル12及びクランパ40によって挟持される。
【0024】
複数の凸部44は、下面視で扇状を呈しており、外周部42の外周縁に等間隔に配置されている。
【0025】
クランパ40が上方へ移動している状態において、スライドコーン20は、スプリング6の付勢力によって上方へ移動し、スライドコーン20の中心部21のクランパ側面がストッパ30のフランジ32のモータ側面と当接している。
ディスク2の中心孔2aの内周縁がスライドコーン20の外周面23aに係合された状態でクランパ40が下方へ移動すると、クランパ40の複数の凸部44がディスク2を押圧するので、スライドコーン20は、スプリング6の付勢力に抗して下方へ移動し、ディスク2のモータ側面がターンテーブル10の弾性体14のクランパ側面14aに押圧される。ディスク2が挟持されている状態において、ターンテーブル10の弾性体14がディスク2に当接しているので、ディスク2とターンテーブル14との間の摩擦力が増加し、弾性体14とスライドコーン20を介したスプリング6との軸方向の付勢力によって、ディスク2を好適に挟持することが可能である。
【0026】
また、スプリング6の両端は、ターンテーブル10及びスライドコーン20にそれぞれ固定されているため、スライドコーン20は、ターンテーブル10に対して一方向に回転するように付勢されている。したがって、かかる状態でモータ3の回転軸3aが回転すると、ターンテーブル10、スプリング6、スライドコーン20、ストッパ30、クランパ40及びディスク2がモータ3の回転軸3aと一体に回転し、ディスク2の記録面側(図1の下側)に設けられた図示しない記録再生機構(例えば、光ピックアップ機構等)によるディスク2の記録面(下面)への情報の記録(書き込み)及びディスク2の記録面に記録された情報の再生(読み取り)が可能となる。
【0027】
ここで、図5に示すように、ターンテーブル10が矢印R方向に回転すると、案内羽根13の位置Aでは、静止したターンテーブル10に案内羽根13の周速度vで空気がぶつかるのと同じ状況が発生する。したがって、位置Aにおける空気は、案内羽根13に直交する方向の速度vで中心方向へと流れる。
【0028】
そして、図1に示すように、ディスククランプ装置1において、ターンテーブル10の下方の空間と、ディスク2及びクランパ40の間の空間とは、ターンテーブル10の孔部11b、ターンテーブル10及びスライドコーン20の間の空間、及び、スライドコーン20の孔部21bを介して連通している。したがって、ディスク2の回転時において、ターンテーブル10の下方の空気は、孔部11b及び孔部21bを介してディスク2及びクランパ40の空気流路へ流れ、ディスク2の外周縁を通ってターンテーブル10の下方の空間へと戻り、筐体8内を循環する。
【0029】
このように、本発明の実施形態に係るディスククランプ装置1は、かじり防止用の孔部11bを空気流路として利用するので、簡易な構成でディスク2両面の圧力差を小さくし、ディスク2の回転姿勢を安定させ、記録(情報の書き込み)及び再生(情報の読み取り)を安定させることができる。
また、モータ3の回転軸(ロータ)3がディスク2側へ吸着されにくくなるので、回転軸3aの上下動を抑え、静粛性を向上させることができる。
また、ディスク2と筐体8におけるディスク2の非記録面と対向する面との間の圧力低下を抑えるので、筐体8が変形してディスク2及びクランパ40と接触することを防ぐことができる。
また、ディスク2と筐体8におけるディスク2の非記録面と対向する面との間の圧力低下を抑えるので、より小さい力でディスク2をターンテーブル10へ押圧することが可能となり、ディスク2の着脱時の動作音を抑えることができる。
また、筐体8内の空気を循環させるので、モータ3を含む記録再生装置全体を効果的に冷却することができる。
また、空気案内羽根13、特に空気案内羽根13Aがターンテーブル10の外周縁近傍から中心近傍にわたって延設されているので、ターンテーブル10の下方にある空気を効率的に孔部11bへ案内することができる。
【0030】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、各部材の形状、寸法等は前記した説明や図示されたものに限定されない。また、スライドコーン及びターンテーブルが一体化されたディスククランプ装置においても、一体化されたスライドコーン及びターンテーブルの中心側に空気流路用の孔部が形成されていれば、本発明と同様の効果を奏することが可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 ディスククランプ装置
2 記録媒体(ディスク)
2a 中心孔
10 ターンテーブル
11b 孔部
14a クランパ側面(載置面)
13(13A,13B) 空気案内羽根
20 スライドコーン
21b 孔部
40 クランパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの回転軸と同軸に配置されており、前記回転軸と一体に回転可能なターンテーブルと、
前記モータの回転軸の軸方向に移動可能であり、ディスク状の記録媒体の中心孔と係合可能なスライドコーンと、
前記スライドコーンに係合した前記記録媒体を前記ターンテーブルと協働して挟持するクランパと、
を備え、
前記スライドコーンに形成された突起が、前記ターンテーブルに形成された孔部に挿通されているディスククランプ装置であって、
前記スライドコーンには、当該スライドコーンのモータ側面及びクランパ側面を連通する孔部が形成されており、
前記クランパが前記記録媒体を押圧した状態において、前記クランパと前記記録媒体との間に空気流路が構成されており、
前記モータによって前記記録媒体を回転させたときに、前記ターンテーブルの前記モータ側の空気が、前記ターンテーブルに形成された孔部及び前記スライドコーンに形成された孔部を順次介して前記空気流路へ流れる
ことを特徴とするディスククランプ装置。
【請求項2】
前記ターンテーブルのモータ側面には、当該ターンテーブルの回転に伴い空気を前記孔部へ案内する複数の空気案内羽根が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のディスククランプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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