説明

ディスク・ドライブ及びディスク・アレイ・システム

【課題】ディスク・ドライブにおけるスピンドル・モータのスピン・アップを、ユーザ・ニーズや使用状況に対応してより適切に制御する。
【解決手段】本発明の一実施形態のHDD1は、スピンドル・モータのスピン・アップ制御に特徴を有している。HDDは、電源投入からのスピン・アップ・モードとパワー・セーブ・モードからのスピン・アップの双方のモードが設定可能である。具体的には、スピン・アップにおける最大電流を設定することができる。このようにスピン・アップ・モードを設定することができることで、システムの電源状況に応じた適切なHDDを実装することができる。本形態のHDDは、ディスク・アレイ・システムに特に好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はディスク・ドライブ及びディスク・アレイ・システムに関し、特に、ディスク・ドライブに実装されたスピンドル・モータのスピン・アップに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、データを記憶するストレージ装置は、その用途によって、ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)とハードディスク・ドライブ(HDD)とに棲み分けがされつつある。SSDの最も大きな利点は、そのデータ転送速度が速いことである。一方、記憶容量あたりのコストが高く、書換え可能回数が限られていることから、HDDの方が優れている点も多い。そのため、頻繁なアクセスや大容量が必要なユーザは、HDDを選択してストレージ装置に使用することが予想される。
【0003】
特に、大容量のHDDは、サーバとのしてのニーズが高い。このようなサーバにおいては、耐障害性を優先させて、複数のHDDがRAID化されていることがほとんどである。RAIDシステムに使用されるいくつかのインターフェースの一つに、SATAインターフェースがある。HDDは、SATAインターフェースにより、RAIDコントローラと通信を行う。このSATAインターフェースにおいて、スタッガード・スピン・アップと呼ばれる技術が存在する。
【0004】
スタッガード・スピン・アップは、電源投入からのスピンドル・モータのスピン・アップにおいて、システムの電源に負担をかけないための技術である。具体的には、接続されている複数HDDの電源投入において、RAIDコントローラが順次選択したHDDからスピンドル・モータのスピン・アップを開始する。スピン・アップ・タイミングをHDDの間でずらすことで、システムの起動は遅くなるが、電源投入におけるピーク電力を低減することができる。
【0005】
また、光ディスク・ドライブにおいて、目的に応じてスピンドル・モータの起動方法を変えることが提案されている(特許文献1を参照)。この技術は、例えば、消費電力の削減を目的とする場合、起動時間短縮を目的とする場合、あるいはアクセスを速くすることを目的とする場合など、異なる目的に応じてスピンドル・モータの起動電流値を変化させる。
【特許文献1】特開2002−32952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、HDDがスピンドル・モータをスピン・アップする必要があるのは、HDDの電源投入時のみではない。電子機器への低消費電力への要求の高まりにより、HDDのパワー・セーブ・モードが活用されている。パワー・セーブ・モードは、スタンバイ・モードやスリープ・モードなどと呼ばれている。このようなパワー・セーブ・モードにおいては、消費電力を低減するために、HDDは、スピンドル・モータの回転を停止させる。
【0007】
上記のスタッガード・スピン・アップは、HDDの電源投入におけるスピン・アップを制御するものであり、パワー・セーブ・モードからのスピン・アップを対象するものではない。従って、RAID内の全てあるは多くのHDDがパワー・セーブ・モードにある場合、そのパワー・セーブ・モードからの復帰におけるピーク電力が増大し、システムの電源に大きな負荷を与える。
【0008】
また、高機能のRAIDコントローラであれば、個々のHDDのパワー・セーブ・モードからの復帰タイミングを調整することで、システム電源への負荷を低減することができる。しかし、エントリ・クラスのサーバのように機能を限定したシステムにおいて電源への負荷を低減する要求が存在しており、むしろ、そのようなシステムにおいてはシステム電源に許される能力も限定されたものとなりなすい。
【0009】
一方、高性能のRAIDにおいては、ピーク電力によらず常に高速の起動を要求されることもある。このように、汎用品としてのHDDは、様々な異なる性格を有するシステムに実装されうる。より速い起動を要求するシステムもあれば、ピーク電力の低減をより強く要求するシステムも存在する。従って、HDDが、実装されるシステムに応じたスピン・アップ制御を行う機能を備えていることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様のディスク・ドライブは、データを記憶するディスクを回転するスピンドル・モータと、電源投入からの前記スピンドル・モータのスピン・アップ・モードの設定データと、パワー・セーブ・モードからの前記スピンドル・モータのスピン・アップ・モードを設定データと、を格納している不揮発性メモリと、前記不揮発性メモリに格納されている設定データに従って、前記電源投入からの前記スピン・アップ及び前記パワー・セーブ・モードからの前記スピン・アップのそれぞれのモードを決定するコントローラと、前記電源投入からの前記スピン・アップ及び前記パワー・セーブ・モードからの前記スピン・アップのそれぞれにおいて、前記コントローラが決定したモードにおいて前記スピンドル・モータをスピン・アップするモータ・ドライバとを有する。これにより、ディスク・ドライブにおけるスピンドル・モータのスピン・アップを、ユーザ・ニーズや使用状況に対応してより適切に制御することができる。
【0011】
前記パワー・セーブ・モードからのスピン・アップ・モードと前記パワー・セーブ・モードからのスピン・アップ・モードのそれぞれにおいて、スピン・アップ最大電流の設定が可能であることが好ましい。これにより、電源の最大電流と起動時間をユーザ・ニーズに応じて適切に設定することができる。
前記パワー・セーブ・モードからのスピン・アップ・モードのそれぞれにおいて、スピン・アップ開始遅延時間の設定が可能であることが好ましい。これにより、複数のディスク・ドライブが存在するシステムにおいて、スピン・アップにおける最大電流を抑制するための処理をドライブ側で行うことができる。
【0012】
前記コントローラは、前記決定された電源投入からのスピン・アップのモードと前記パワー・セーブからのスピン・アップをホストに通知することが好ましい。これにより、ホストが、複数ドライブをより適切に管理することができる。
好ましくは、前記コントローラは、ホストからのコマンドに応答して前記パワー・セーブ・モードから復帰する。これにより、システムの状況に応じてパワー・セーブ・モードを制御することができる。
【0013】
前記ディスク・ドライブは、前記スピンドル・モータが停止している第1パワー・セーブ・モードと前記スピンドル・モータの回転が減少されている第2パワー・セーブ・モードとを有し、前記コントーラは、前記第1パワー・セーブ・モードと前記第2パワー・セーブ・モードのそれぞれについて、設定データに従ってスピン・アップ・モードを決定する。これにより、システムに応じてより適切なパワー・セーブを行うことができる。
前記ディスク・ドライブは、前記スピンドル・モータが停止している第1パワー・セーブ・モードと前記スピンドル・モータの回転が減少されている第2パワー・セーブ・モードとを有し、前記コントローラが設定データに従って決定した一つのスピン・アップ・モードが前記第1パワー・セーブ・モードと前記第2パワー・セーブ・モードに対応づけられる。これにより、設定をよりシンプルなものとすることができる。
【0014】
本発明の他の態様は、複数のディスク・ドライブと、ユーザ・データを分割し、分割したデータのそれぞれを前記複数のディスク・ドライブに格納することを指示するシステム・コントローラとを有するディスク・アレイ・システムである。前記複数のディスク・ドライブのそれぞれは、電源投入からの前記スピンドル・モータのスピン・アップ・モードの設定データと、パワー・セーブ・モードからの前記スピンドル・モータのスピン・アップ・モードを設定データと、を格納している不揮発性メモリと、前記不揮発性メモリに格納されている設定データに従って、前記電源投入からの前記スピン・アップ及び前記パワー・セーブ・モードからの前記スピン・アップのそれぞれのモードを決定するコントローラと、前記電源投入からの前記スピン・アップ及び前記パワー・セーブ・モードからの前記スピン・アップのそれぞれにおいて、前記コントローラが決定したモードにおいて前記スピンドル・モータをスピン・アップするモータ・ドライバとを有する。これにより、複数のドライブが存在するシステムにおいて、ディスク・ドライブにおけるスピンドル・モータのスピン・アップを、ユーザ・ニーズや使用状況に対応してより適切に制御することができる。
【0015】
前記コントローラは、前記複数のディスク・ドライブの電源投入において、それぞれのスピン・アップ・タイミングをずらす。これにより、システム状況に応じて電源投入における電源への負荷を低減する。
前記システム・コントローラは、前記複数のディスク・ドライブを複数のグループに分割してデータの格納を制御し、同一グループのディスク・ドライブにおける前記パワー・セーブ・モードからのスピン・アップ・モードと前記パワー・セーブ・モードからのスピン・アップ・モードのそれぞれのスピン・アップ最大電流の設定が同一である。これにより、格納データをドライブのグループ単位で管理するシステムなどにおいて、適切なスピン・アップを行うことができる。
【0016】
前記複数のディスク・ドライブは、決定された電源投入からのスピン・アップのモードと前記パワー・セーブからのスピン・アップを前記システム・コントローラに通知し、前記システム・コントローラは、前記複数のディスク・ドライブのスピン・アップ・モードを管理し、前記複数のディスク・ドライブのスピン・アップ・モードに応じて、前記複数のディスク・ドライブのパワー・セーブ・モードからの復帰を制御する。これにより、コントローラが適切にドライブのスピン・アップを管理することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれは、ディスク・ドライブにおけるスピンドル・モータのスピン・アップを、ユーザ・ニーズや使用状況に対応してより適切に制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明を適用可能な実施の形態を説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略及び簡略化がなされている。又、各図面において、同一要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略されている。以下においては、ディスク・ドライブの一例であるハードディスク・ドライブ(HDD)について、本発明の実施形態を説明する。
【0019】
本形態のHDDは、スピンドル・モータのスピン・アップ制御に特徴を有している。HDDは、電源投入からのスピン・アップ・モードとパワー・セーブ・モードからのスピン・アップの双方のモードが設定可能である。このようにスピン・アップ・モードを設定することができることで、システムの電源状況に応じた適切なHDDを実装することができる。本形態のHDDは、ディスク・アレイ・システムに特に好適である。
【0020】
図1は、本形態におけるディスク・アレイ・システムの構成を模式的に示すブロック図である。図1の構成において、ホスト6は、ディスク・アレイ・システムに対してコマンドを発行することにより、データの書き込み/読み出しを行う。ディスク・アレイ・システムは、ホスト・インタフェース回路5、システム・コントローラ3、データ転送回路4、ドライブ・インタフェース回路2、そして複数のHDD1a〜1gを有している。
【0021】
システム・コントローラ3は、ホスト・インタフェース回路5を介して、ホスト6からコマンドを受信し、ディスク・アレイ・システムの各要素を制御することで、HDD1a〜1gへのデータの書き込み及び読み出しを制御する。ライト処理において、ホスト6からデータは、転送回路4及びドライブ・インターフェース回路2を介して、HDD1a〜1gに書き込まれる。また、リード処理においては、HDD1a〜1gから読み出されたユーザ・データは、ドライブ・インターフェース回路2及び転送回路4を介してホスト6に転送される。
【0022】
HDD1a〜1gは、RAID(Redundant Array Inexpensive Disks)構成となるように接続されている。図1の構成においては、HDD1a〜HDD1cが一つのRAIDグループを構成し、HDD1d〜HDD1fが他の一つのRAIDグループを構成し、さらに、HDD1g〜HDD1iが他の一つのRAIDグループを構成している。システム・コントローラ3は、ホスト6から転送されたユーザ・データを複数のデータ・ブロックに分割し(ストライピング)、一つのRAIDグループ内の各HDDに振り分けて格納する。
【0023】
本形態において、各RAIDグループには、プライオリティ・レベルが付されている。具体的には、HDD1a〜HDD1cのRAIDグループはハイ・プライオリティが与えられ、HDD1d〜HDD1fのRAIDグループはミドル・プライオリティが与えられ、HDD1g〜HDD1iのRAIDグループはロー・プライオリティが与えられている。ホスト6から転送されるユーザ・データにプライオリティ・レベルが付され、そのプライオリティ・レベルと合致するRAIDグループに格納される。
【0024】
ユーザ・データをいずれのプライオリティ・レベルのRAIDに格納するかを決定するのは、システム・コントローラ3であってもよいしホスト6であってもよい。図1の構成例においては、一つのRAIDグループに一つのプライオリティ・レベルが割り当てられているが、複数のRAIDグループに一つのプライオリティ・レベルを割り当ててもよい。ユーザ・データは、同一のプライオリティ・レベルのRAIDグループに格納する、あるいは、ユーザ・データのプライオリティ・レベル以上のレベルを有するRAIDグループに格納するようにしてもよい。
【0025】
本形態のRAIDシステムにおいて、HDD1a〜1iは、そのプライオリティ・レベルに応じたスピン・アップ・モードが設定されている。スピン・アップは、HDDのスピンドル・モータ(磁気ディスク)の回転速度を、データ・アクセスのための回転速度まで上げるオペレーションである。好ましい態様において、HDD1a〜1iは、電源投入からのスピン・アップと、パワー・セーブ・モードからのスピン・アップのモードとを、個別に設定することができる。これにより、HDD1a〜1iが実装されているシステムに応じてより適切にスピンドル・モータのスピン・アップを制御することができる。
【0026】
また、好ましい態様において、HDD1a〜1gにおけるスピン・アップにおける最大電流(スピン・アップ電流)が、スピンアップ・モードにおいて設定可能な可変数となっている。スピン・アップ電流が大きいほど、スピンドル・モータの回転速度をより早く所定の回転速度まで上げることができる。つまり、ディスク・アクセスまでの待ち時間をより短縮することができる。一方、スピン・アップ電流が大きいとピーク電力が増加し、システム電源への負担が大きくなる。
【0027】
このように、好ましい態様のHDD1a〜1iは、そのプライオリティ・レベルに応じて、電源投入からのスピン・アップに加え、パワー・セーブ・モードからのスピン・アップにおけるスピン・アップ電流を設定することができる。パワー・セーブ・モードにおいて、HDD1a〜1iの電源はONであるが、スピンドル・モータの回転が停止している、あるいは、スピンドル・モータがデータ・アクセスにおける回転速度よりも遅い速度で回転している。このように、電源投入からのスピン・アップとパワー・セーブ・モードからのスピン・アップのそれぞれのスピン・アップ電流を設定可能とすることで、HDD1a〜1gが実装されているシステムに応じてより適切にスピンドル・モータのスピン・アップを制御することができる。
【0028】
図2(a)は、HDD1a〜1iの好ましいスピン・アップ・モード設定の一例を示している。HDD1a〜1iは、二つのパワー・セーブ・モードを有している。第1のパワー・セーブ・モードはスタンバイ・モードであり、そのモードにおいて、HDD1a〜1iはスピンドル・モータの回転を停止する。第2のパワー・セーブ・モードは低速回転モードであり、スピンドル・モータは回転しているが、その回転速度はヘッドが磁気ディスクにアクセスするときの回転速度よりも遅い。第1のパワー・セーブ・モードがより大きな消費電力低減を行うことができるが、スピン・アップを開始してからレディになるまでより時間が必要である。
【0029】
図2(a)の例において、2.0Aと1.5Aの二つのスピン・アップ最大電流がHDD1a〜1gに設定されている。図2(b)に示すように、スピン・アップにおけるVCM電流の大きさは、0Aから急激に最大電流2.0Aあるいは1.5Aまで増加し、その後、所定期間最大電流値に維持される。スピンドル・モータの回転速度が特定の速度に達する、あるいはスピン・アップ開始から特定時間が経過すると、その後は、PID制御に移行しVCM電流の大きさは減少する。
【0030】
図2(a)の例では、ハイ・プライオリティのHDD1a〜HDD1cは、電源投入と第1及び第2のパワー・セーブ・モードからのスピン・アップの、全てのスピン・アップにおいて、2.0Aの最大スピンアップ電流をスピンドル・モータに与える。一方、ロー・プライオリティのHDD1g〜HDD1iは、全てのスピン・アップにおいて、1.5Aの最大スピンアップ電流をスピンドル・モータに与える。ミドル・プライオリティのHDD1d〜HDD1fは、低速回転からのスピン・アップにおいて1.5Aの最大スピンアップ電流をスピンドル・モータに与え、他のスピン・アップにおいて2.0Aの最大スピンアップ電流をスピンドル・モータに与える。
【0031】
プライオリティが高いデータは、それだけ速いアクセスが要求される。そのため、高いプライオリティのデータを格納しているHDDのスピン・アップを早め、低いプライオリティのデータを格納するHDDのスピン・アップ最大電流を小さくすることで、システム全体としてのパフォーマンスと電源負荷の低減を図ることができる。また、低速回転のパワー・セーブ・モードからの復帰では、レディになるまでの時間は停止状態からのスピン・アップよりも短い。そのため、ミドル・プライオリティのHDD1d〜HDD1fは、低速回転からのスピン・アップにおいて1.5Aの最大スピンアップ電流をスピンドル・モータに与えて、パフォーマンスと電源負荷の低減を図る。
【0032】
HDDが複数のパワー・セーブ・モードを有している場合、それぞれのパワー・セーブ・モードについて、個別にスピン・アップ最大電流を設定することで、システムへの適応性を高めることができる。一方、HDDの設定及び制御のシンプリシティの点から、スピン・アップ最大電流の設定を電源投入とパワー・セーブ・モードからの復帰の二つに分類し、複数のパワー・セーブ・モードに対して一つのスピン・アップ最大電流を設定可能とするようにしてもよい。
【0033】
好ましい態様において、スピン・アップ・モードは、設定可能な変数として、スピン・アップ開始の遅延時間を有している。HDD1a〜1iは、電源投入あるいはパワー・セーブ・モードからの復帰処理を開始してから、設定されている遅延時間が経過した後にスピンドル・モータのスピン・アップを開始する。このように、HDD毎にスピン・アップ開始遅延時間を設定可能とすることで、システム・コントローラ3が制御することなく、システム全体のピーク電流低減とパフォーマンス維持とを図ることができる。
【0034】
図3(a)、(b)は、HDD1a〜1iのスピン・アップ開始遅延時間の設定例を示している。図3(a)の設定例においては、同一プライオリティ・レベルの全てのHDDに対して同一の設定がなされている。また、電源投入からのスピン・アップにおいては、全てのHDD1a〜1iに同一遅延時間が設定される。具体的には、電源投入からのスピン・アップにおいては、全てのHDD1a〜1iに0.0秒の遅延時間が設定されている。スタンバイ・モードからのスピン・アップにおいては、プライオリティ・ハイ、ミドルそしてローのそれぞれのグループのHDDに対して、0.0秒、0.3秒そして0.6秒の遅延時間が設定されている。低速回転のパワー・セーブ・モードからのスピン・アップの設定は、スタンバイ・モードからのスピン・アップと同じである。
【0035】
このように、プライオリティ・レベルに応じてHDD1a〜1iのスピン・アップ開始時間を調整することは、システムの全HDDのパワー・セーブ・モードの制御を同時に行うシステムにおいて特に有用である。システム全体のピーク電流を少なくしながら、プライオリティ・レベルの高いHDDは、より早くレディ状態にすることができる。図3(a)の設定例にも示すように、遅延時間は、スピン・アップを開始のモード(電源投入あるいはいずれかのパワー・セーブ・モード)及びプライオリティに応じて適切な値を選択し、異なるプライオリティ・グループが同一の遅延時間設定を有していてもよい。
【0036】
図3(b)の設定例においては、同一プライオリティ・レベルのグループに属するHDDが、異なる遅延時間の設定を有している。図3(b)は、ミドル・プライオリティ・グループのHDD1d〜HDDfの設定例を示している。この設定例においては、全てのHDD1d〜HDDfに異なる遅延時間が設定されている。このように、同一プライオリティ・グループのHDDに対して異なる遅延時間を設定することで、同一プライオリティ・グループのHDDのパワー・セーブ・モードの制御を同時に行うシステムにおいてシステム全体のピーク電流を少なくすることができる。なお、同一グループの一部のHDDが同一の遅延時間設定を有していてもよい。
【0037】
このように、本形態のHDDは、実装されるシステムに応じたスピン・アップ・モードの設定を行うことができる。以下においては、HDDのスピン・アップ・モードの設定方法及びその設定に従ったHDDのオペレーションについて、具体的に説明する。図4は、HDD1の全体構成を模式的に示すブロック図である。HDD1は、エンクロージャ10の外側に固定された回路基板20を有している。回路基板20上に、リード・ライト・チャネル(RWチャネル)21、モータ・ドライバ・ユニット22、ハードウェアであるハードディスク・コントローラ(HDC)とMPUの集積回路(HDC/MPU)23及びRAM24などの各回路が実装されている。
【0038】
エンクロージャ10内において、スピンドル・モータ(SPM)14は所定の角速度で磁気ディスク11を回転する。磁気ディスク11は、データを記憶するメディアである。HDC/MPU23からの制御データに従って、モータ・ドライバ・ユニット22がSPM14を駆動する。各ヘッド・スライダ12は、磁気ディスク上を浮上するスライダと、スライダに固定され磁気信号と電気信号との間の変換(データの読み書き)を行うヘッド素子部とを備えている。各ヘッド・スライダ12はアクチュエータ16の先端部に固定されている。アクチュエータ16はボイス・コイル・モータ(VCM)15に連結され、回動軸を中心に回動することによって、ヘッド・スライダ12を回転する磁気ディスク11上においてその半径方向に移動する。
【0039】
モータ・ドライバ・ユニット22は、HDC/MPU23からの制御データに従ってVCM15を駆動する。アーム電子回路(AE:Arm Electronics)13は、HDC/MPU23からの制御データに従って複数のヘッド・スライダ12の中から磁気ディスク11にアクセス(リードもしくはライト)するヘッド・スライダ12を選択し、リード/ライト信号の増幅を行う。
【0040】
RWチャネル21は、リード処理において、AE13から供給されたリード信号を一定の振幅となるように増幅し、その後、取得したリード信号からデータを抽出し、デコード処理を行う。デコード処理されたデータは、HDC/MPU23に供給される。また、RWチャネル21は、ライト処理において、HDC/MPU23から供給されたライト・データをコード変調し、さらに、コード変調されたデータをライト信号に変換してAE13に供給する。
【0041】
コントローラの一例であるHDC/MPU23において、MPU23は、磁気ディスク11あるいはEEPROM25からRAM24あるいはHDC内のSRAMにロードされたファーム・ウェアに従って動作する。HDC/MPU23は、リード/ライト処理制御、コマンド実行順序の管理、サーボ信号を使用したヘッド・ポジショニング制御(サーボ制御)、ホスト51との間のインターフェース制御、ディフェクト管理、エラー対応処理など、データ処理に関する必要な処理及びHDD1の全体制御を実行する。
【0042】
本形態において、HDC/MPU23は、特に、設定データに従ったスピン・アップ制御を行う。適系的には、MPUがファームウェアと設定データに従ってスピン・アップ制御を行う。上述のように、モータ・ドライバ・ユニット22がSPM13に電流を供給して駆動する。モータ・ドライバ・ユニット22は、HDC/MPU23から得た制御データに従って、SPM13に電流を供給する。
【0043】
SPM13のスピン・アップ・オペレーションにおいても、それは同様である。HDC/MPU23は、モータ・ドライバ・ユニット22に対して、設定されているスピン・アップ・モードに対応するスピン・アップ・プロファイルを規定するデータを渡す。モータ・ドライバ・ユニット22は、そのプロファイルに従ってSPM13のスピン・アップを行う。
【0044】
HDC/MPU23が渡すスピン・アップ・プロファイルは、スピン・アップにおける最大電流値のほか、SPM13のフィード・バック制御におけるパラメータ、さらに、フィード・バック制御に移行するまでの時間や回転速度などの情報を含む。モータ・ドライバ・ユニット22は、HDC/MPU23からの指示により、スピン・アップを開始する。従って、HDC/MPU23は、設置データの遅延時間に従ったタイミングで、モータ・ドライバ・ユニット22に対してスピン・アップの開始を指示する。
【0045】
図5は、HDD1内に保存されている設定データの一例を示している。電源投入後のスピン・アップ前に磁気ディスク11にアクセスすることはできないため、設定データは、不揮発性メモリであるEEPROM25内に格納されている。HDC/MPU23は、電源投入後にEEPROM25から設定データを取得し、DRAM24もしくはSRAMに格納する。図5に示す設定データ例は、スピン・アップ最大電流値とスピン・アップ開始遅延時間の双方を特定している。
【0046】
HDC/MPU23は、電源投入後のスピン・アップのため、モータ・ドライバ・ユニット22に対して、2.0Aの電流値を含むスピン・アップ・プロファイルデータを渡し、さらに、スピン・アップの開始を指示する。低速回転もパワー・セーブ・モードからのスピン・アップにおいては、モータ・ドライバ・ユニット22に対して1.5Aの電流値を含むスピン・アップ・プロファイル・データを渡し、さらに、スピン・アップの開始を指示する。
【0047】
スタンバイ・モードからのスピン・アップにおいて、HDC/MPU23は、遅延時間の設定データに従って、0.3秒の経過を待って、モータ・ドライバ・ユニット22に対して、2.0Aの電流値を含むスピン・アップ・プロファイル・データを渡し、さらに、スピン・アップの開始を指示する。あるいは、HDC/MPU23は、先にスピン・アップ・プロファイルを渡した後に、遅延時間が経過してからスピン・アップ開始を指示してもよい。
【0048】
HDC/MPU23は、電源が投入されると、HDD1の起動処理を開始する。その起動処理において、上記スピン・アップ処理も行われる。一方、スタンバイ・モードや低回転モードからレディ状態(通常状態)への復帰処理を、HDC/MPU23は、HDD1にとってのホスト装置であるシステム・コントローラ3からのコマンドに応じて開始する。HDC/MPU23は、システム・コントローラ3からコマンドを受信してから、設定されている遅延時間が経過した後に、スピン・アップ開始をモータ・ドライバ・ユニット22に指示する。HDC/MPU23は、レディ状態からパワー・セーブ・モードへの移行も、システム・コントローラ3からのコマンドにより行う。
【0049】
あるいは、HDC/MPU23は、内部制御処理として、パワー・セーブ・モードへの移行及びパワー・セーブ・モードから復帰を行ってもよい。例えば、システム・コントローラ3からのアクセスが規定時間を越えて存在していない場合、HDC/MPU23は、パワー・セーブ・モードに移行する。HDC/MPU23は、システム・コントローラ3からリード/ライトのコマンドを受信すると、パワー・セーブ・モードから復帰する。あるいは、HDC/MPU23が現在のモードをシステム・コントローラ3に予め報告しておくことで、システム・コントローラ3がパワー・セーブ・モードからの復帰をコマンドにより指示してもよい。
【0050】
好ましくは、HDC/MPU23は、システム・コントローラ3からの復帰コマンドによらず、内部処理でパワー・セーブ・モードから復帰する場合、遅延時間の設定にかかわりなく、遅延なくSPM13のスピン・アップを開始する。システム・コントローラ3の管理下にない処理において、システム電源のピーク電流低減のために他のHDDのスピン・アップ・タイミングと同期することが難しいため、通常のスピン・アップによりパフォーマンスの低下を避ける。
【0051】
このように、それぞれのHDDが異なるスピン・アップ・モードを設定されている場合、それらを制御するシステム・コントローラ3が、各HDDの設定を知っておくことが好ましい。そのため、好ましい態様において、HDC/MPU23は、システム・コントローラ3に対して、自己のスピン・アップ・モード設定を通知する。この通知は、システム・コントローラ3からのコマンドに応答して、あるいは、電源投入における起動処理において自発的に行うことができる。
【0052】
システム・コントローラ3は、システムに内に接続されているHDD1a〜1iの設定データを取得し、それを管理テーブルに登録する。システム・コントローラ3は、HDD1a〜1iの電力制御(電源投入及びパワー・セーブ・モードからの復帰における電力制御)において、この管理テーブルを参照して、HDD1a〜1iの電源投入及びパワー・セーブ・モードからの復帰指示を行う。
【0053】
HDD1のスピン・アップ・モードの設定の変更は、HDD1をシステムに実装する前あるいはシステムに実装した後に行う。例えば、HDD1の製造工程において、予めスピン・アップ・モード設定を登録する。システム設計者は、適切なスピン・アップ・モード設定のHDDを選択した、システムに実装する。あるいは、システム・コントローラ3はHDD1に対してコマンドにより、スピン・アップ・モードの設定を指示する。これにより、システム状況に応じたスピン・アップ・モードを設定することができる。この場合、システム・コントローラ3は各HDDのスピン・アップ・モードを管理テーブルに登録して、その後の処理で使用する。
【0054】
以上、本発明を好ましい実施形態を例として説明したが、本発明が上記の実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、上記の実施形態の各要素を、本発明の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。例えば、本発明を、磁気ディスクと異なる記憶ディスクを有するディスク・ドライブに適用することができる。本発明は、ディスク・アレイ・システム及びそれに使用するディスク・ドライブに特に好適であるが、外部ストレージとして単独のディスク・ドライブを有するシステム及びそれに使用するディスク・ドライブにも適用することができる。
【0055】
スピン・アップ・モード設定において、最大電流と遅延時間の双方を設定できることが好ましいが、その一方のみを設定できるようにしてもよい。また、遅延時間の設定は、パワー・セーブ・モードのみにおいて行うことがでいるようにしてもよい。そのような場合、例えば、電源投入におけるスピン・アップ開始タイミングを、システム・コントローラの制御により対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本実施形態におけるディスク・アレイ・システムの構成を模式的に示すブロック図である。
【図2】本実施形態において、ディスク・アレイ・システムに接続されているHDDの好ましいスピン・アップ最大電流の設定の一例を示す図である。
【図3】本実施形態において、ディスク・アレイ・システムに接続されているHDDの好ましいスピン・アップ開始遅延時間の設定の一例を示す図である。
【図4】本実施形態に係るHDDの全体構成を模式的に示すブロック図である。
【図5】本実施形態において、HDD内に保存されているスピン・アップ・モードの設定データの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
1 ハード・ディスク・ドライブ、2 ドライブ・インターフェース回路
3 システム・コントローラ、4 データ転送回路、5 ホスト・インターフェース回路
6 ホスト装置、1、1a〜1i ハードディスク・ドライブ、10 エンクロージャ
11 磁気ディスク、12 ヘッド・スライダ
13 アーム・エレクトロニクス(AE)、14 スピンドル・モータ
15 ボイス・コイル・モータ、16 アクチュエータ、20 回路基板
21 リード・ライト・チャネル、22 モータ・ドライバ・ユニット
23 HDC/MPU、24 RAM、25 EEPROM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを記憶するディスクを回転するスピンドル・モータと、
電源投入からの前記スピンドル・モータのスピン・アップ・モードの設定データと、パワー・セーブ・モードからの前記スピンドル・モータのスピン・アップ・モードを設定データと、を格納している不揮発性メモリと、
前記不揮発性メモリに格納されている設定データに従って、前記電源投入からの前記スピン・アップ及び前記パワー・セーブ・モードからの前記スピン・アップのそれぞれのモードを決定するコントローラと、
前記電源投入からの前記スピン・アップ及び前記パワー・セーブ・モードからの前記スピン・アップのそれぞれにおいて、前記コントローラが決定したモードにおいて前記スピンドル・モータをスピン・アップするモータ・ドライバと、
を有する、ディスク・ドライブ。
【請求項2】
前記パワー・セーブ・モードからのスピン・アップ・モードと前記パワー・セーブ・モードからのスピン・アップ・モードのそれぞれにおいて、スピン・アップ最大電流の設定が可能である、
請求項1に記載のディスク・ドライブ。
【請求項3】
前記パワー・セーブ・モードからのスピン・アップ・モードのそれぞれにおいて、スピン・アップ開始遅延時間の設定が可能である、
請求項1に記載のディスク・ドライブ。
【請求項4】
前記コントローラは、前記決定された電源投入からのスピン・アップのモードと前記パワー・セーブからのスピン・アップをホストに通知する、
請求項1に記載のディスク・ドライブ。
【請求項5】
前記コントローラは、ホストからのコマンドに応答して前記パワー・セーブ・モードから復帰する、
請求項1に記載のディスク・ドライブ。
【請求項6】
前記ディスク・ドライブは、前記スピンドル・モータが停止している第1パワー・セーブ・モードと前記スピンドル・モータの回転が減少されている第2パワー・セーブ・モードとを有し、
前記コントーラは、前記第1パワー・セーブ・モードと前記第2パワー・セーブ・モードのそれぞれについて、設定データに従ってスピン・アップ・モードを決定する、
請求項1に記載のディスク・ドライブ。
【請求項7】
前記ディスク・ドライブは、前記スピンドル・モータが停止している第1パワー・セーブ・モードと前記スピンドル・モータの回転が減少されている第2パワー・セーブ・モードとを有し、
前記コントローラが設定データに従って決定した一つのスピン・アップ・モードが前記第1パワー・セーブ・モードと前記第2パワー・セーブ・モードに対応づけられる、
請求項1に記載のディスク・ドライブ。
【請求項8】
複数のディスク・ドライブと、
ユーザ・データを分割し、分割したデータのそれぞれを前記複数のディスク・ドライブに格納することを指示するシステム・コントローラと、を有し、
前記複数のディスク・ドライブのそれぞれは、
電源投入からの前記スピンドル・モータのスピン・アップ・モードの設定データと、パワー・セーブ・モードからの前記スピンドル・モータのスピン・アップ・モードを設定データと、を格納している不揮発性メモリと、
前記不揮発性メモリに格納されている設定データに従って、前記電源投入からの前記スピン・アップ及び前記パワー・セーブ・モードからの前記スピン・アップのそれぞれのモードを決定するコントローラと、
前記電源投入からの前記スピン・アップ及び前記パワー・セーブ・モードからの前記スピン・アップのそれぞれにおいて、前記コントローラが決定したモードにおいて前記スピンドル・モータをスピン・アップするモータ・ドライバと、
を有する、ディスク・アレイ・システム。
【請求項9】
前記コントローラは、前記複数のディスク・ドライブの電源投入において、それぞれのスピン・アップ・タイミングをずらす、
請求項8に記載のディスク・アレイ・システム。
【請求項10】
前記複数のディスク・ドライブにおいて、前記パワー・セーブ・モードからのスピン・アップ・モードと前記パワー・セーブ・モードからのスピン・アップ・モードのそれぞれにおいて、スピン・アップ最大電流の設定が可能である、
請求項8に記載のディスク・アレイ・システム。
【請求項11】
前記システム・コントローラは、前記複数のディスク・ドライブを複数のグループに分割してデータの格納を制御し、
同一グループのディスク・ドライブにおける前記パワー・セーブ・モードからのスピン・アップ・モードと前記パワー・セーブ・モードからのスピン・アップ・モードのそれぞれのスピン・アップ最大電流の設定が同一である、
請求項10に記載のディスク・アレイ・システム。
【請求項12】
前記複数のディスク・ドライブにおいて、前記パワー・セーブ・モードからのスピン・アップ・モードからのスピン・アップ・モードにおいて、スピン・アップ開始遅延時間の設定が可能である、
請求項8に記載のディスク・アレイ・システム。
【請求項13】
前記複数のディスク・ドライブは、決定された電源投入からのスピン・アップのモードと前記パワー・セーブからのスピン・アップを前記システム・コントローラに通知し、
前記システム・コントローラは、前記複数のディスク・ドライブのスピン・アップ・モードを管理し、
前記複数のディスク・ドライブのスピン・アップ・モードに応じて、前記複数のディスク・ドライブのパワー・セーブ・モードからの復帰を制御する、
請求項8に記載のディスク・アレイ・システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−146630(P2010−146630A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322245(P2008−322245)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(503116280)ヒタチグローバルストレージテクノロジーズネザーランドビーブイ (1,121)