説明

ディスク型記録媒体

【課題】記憶容量に制約を加えることなく、ディスクドライブでの高速回転時における浮き上がりなどを効果的に抑制することのできるようにする。
【解決手段】ディスク型記録媒体を構成する円盤体14の非情報記録面を円周方向に沿って第1乃至第4の領域ar1乃至ar4の4つの領域に等分割する一方、高速回転時に円盤体14に生じる浮き上がりを抑制するもので、円盤体14の回転方向に向けて下り勾配を有する第1乃至第4のスポイラー16乃至22を第1乃至第4の領域ar1乃至ar4のそれぞれに対応させて形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CDやDVDなどの情報の書き込みや読み出しが可能なディスク型記録媒体に関し、特には、ディスクドライブでの高速回転時における浮き上がりを抑制することができるディスク型記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、CDやDVDなどのディスク型記録媒体のディスクドライブには、大別するとマグネットクランプ型とボールクランプ型とがある。
【0003】
マグネットクランプ型のディスクドライブは、図7に示すように、スピンドルモータ102の回転軸104に取り付けられた磁性体からなるターンテーブル106にディスク型記録媒体108を載せ、チャッキングプレート110を介して磁石板112によりターンテーブル106に固定するようにしたものである。このマグネットクランプ型のディスクドライブでは、スピンドルモータ102により高速回転されるディスク型記録媒体108の情報記録面に光ピックアップ114からレーザ光が照射され、情報の書き込みや読み出しが実行される。
【0004】
また、ボールクランプ型のディスクドライブは、図8に示すように、スピンドルモータ116の回転軸118に取り付けられたターンテーブル120にディスク型記録媒体122を載せ、ディスク型記録媒体122の中心孔にボール124を嵌合させることでターンテーブル120に固定するようにしたものである。このボールクランプ型のディスクドライブでは、スピンドルモータ116により高速回転されるディスク型記録媒体122の情報記録面に光ピックアップ126からレーザ光が照射され、情報の書き込みや読み出しが実行される。
【0005】
上記ディスクドライブのうち、マグネットクランプ型のものは、磁石板112の磁力でディスク型記録媒体108をターンテーブル106とチャッキングプレート110の間に強く挟み込むため、ディスク型記録媒体108に生じる振動や共振が少なくターンテーブル106から浮き上がって脱落するようなことは勿論のこと、ディスク型記録媒体108が浮き上がることで光ピックアップ114による書き込みエラーや読み出しエラーなどが生じたりする虞はない。
【0006】
しかし、ボールクランプ型のものは、マグネットクランプ型のチャッキングプレート110に対応する押さえ構造物が存在せず、使用頻度の高いディスク型記録媒体122では中心孔の内縁部分とボール124との摩擦が弱くなることでディスク型記録媒体122をターンテーブル120に保持する力が弱くなってディスク型記録媒体122に振動や共振などが生じ易くなり、ディスク型記録媒体122がターンテーブル120から浮き上がって外部に飛び出したり、浮き上がることで光ピックアップ126による書き込みエラーや読み出しエラーなどが生じたりするなどの虞が生じる。
【0007】
一方、ディスクドライブでの高速回転時にディスク型記録媒体がターンテーブルから浮き上がるのを防止するため、ディスク型記録媒体の下面となる情報記録面のピットのない部分に断面が翼形状の凸部を設けることで負の揚力を発生させるようにしたものが提案されている(特許文献1)。
【0008】
このような構成のディスク型記録媒体では、ディスクドライブがボールクランプ型のようにディスク型記録媒体が振動や共振などにより浮き上がってターンテーブルから飛び出し易い構成のものであっても、ディスク型記録媒体がターンテーブルから浮き上がって外部に飛び出したり、浮き上がることで書き込みエラーや読み出しエラーなどが生じたりすることを阻止し得ることが期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−99992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、CDやDVDなどのディスク型記録媒体では、規定の記憶容量を確保するためには、その情報記録面が所定の面積を有していることが必要である。しかしながら、上記特許文献1に示された構成では、情報記録面に負の揚力を発生させる凸部を設けるものであるため、大きな負の揚力を得ようとすると情報記録面のピットのある領域にまで凸部を形成しなければならないことになる結果、規定の記憶容量の確保が困難になる場合も生じる。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、記憶容量に制約を生じさせることなく、ディスクドライブでの高速回転時における浮き上がりを効果的に抑制することのできるディスク型記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係るディスク型記録媒体は、円盤体の一面に情報記録面を有するものであって、前記円盤体の他面である非情報記録面に、高速回転時に生じる浮き上がりを抑制するための複数のスポイラーを円周方向に沿って形成したことを特徴としている。
【0013】
この本発明の一態様に係る情報記録媒体によれば、ディスク型記録媒体がディスクドライブにより高速回転されるとき、円盤体の非情報記録面に形成された複数のスポイラーの存在により回転方向とは逆方向の気体(空気)の流れが生じ、風圧で円盤体を下方に押さえ込む力が作用するため、ディスク型記録媒体の高速回転時における浮き上がりを効果的に抑制することができる。また、複数のスポイラーは、円盤体の非情報記録面に構成されるものであるため、記憶容量に制約を生じさせることもない。
【0014】
また、本発明の他の一態様では、上述のディスク型記録媒体において、前記スポイラーは、回転方向に向けて下り勾配を有する突起体を前記非情報記録面上に一体に形成して構成したもので、前記非情報記録面における円周方向に沿って複数に分割した領域のそれぞれに形成したものであることを特徴としている。
【0015】
この本発明の他の一態様のディスク型記録媒体によれば、ディスク型記録媒体がディスクドライブにより高速回転されるとき、円盤体の非情報記録面に形成された回転方向に向けて下り勾配を有する複数のスポイラーの存在により回転方向とは逆方向で複数のスポイラー面に沿った上り勾配の気体(空気)の流れが生じることから、風圧で円盤体を下方に押え込む力が作用するため、ディスク型記録媒体の高速回転時における浮き上がりを効果的に抑制することができる。また、複数のスポイラーは、円盤体の非情報記録面に構成されるものであるため、記憶容量に制約を生じさせることもない。
【0016】
また、本発明の他の一態様では、上述のディスク型記録媒体において、前記スポイラーは、前記円盤体の中央に形成した中心孔の近傍周囲の環状中央領域を除いて形成したものであることを特徴としている。
【0017】
この本発明の他の一態様のディスク型記録媒体によれば、ディスク型記録媒体の高速回転時における浮き上がりを効果的に抑制することができることや記憶容量に制約を生じさせることがないという上述のディスク型記録媒体におけるものと同様の作用効果を奏することに加え、スポイラーの形成されない環状中央領域にマグネットクランプ型のチャッキングプレートを当接させ得るだけの面積を確保しておくことで、マグネットクランプ型のディスクドライブを用いることもできることになる。
【0018】
また、本発明の他の一態様では、上述のディスク型記録媒体において、前記スポイラーは、前記非情報記録面における円周方向に沿って複数に分割した領域の外周部分に形成したものであることを特徴としている。
【0019】
この本発明の他の一態様のディスク型記録媒体によれば、ディスク型記録媒体の高速回転時における浮き上がりを効果的に抑制することができることや記憶容量に制約を生じさせることがないという上述のディスク型記録媒体におけるものと同様の作用効果を奏することに加え、スポイラーが円盤体の非情報記録面の外周部分にしか形成されないことで、マグネットクランプ型のディスクドライブを用いることもできることになる。
【0020】
また、本発明の他の一態様では、上述のディスク型記録媒体において、前記スポイラーは、前記非情報記録面における円周方向に沿って所定の間隔をおいて形成したものであることを特徴としている。
【0021】
この本発明の他の一態様のディスク型記録媒体によれば、ディスク型記録媒体の高速回転時における浮き上がりを効果的に抑制することができることや記憶容量に制約を生じさせることがないという上述のディスク型記録媒体におけるものと同様の作用効果を奏することに加え、スポイラーの径方向の長さをマグネットクランプ型のチャッキングプレートの障害とならない値に設定することで、マグネットクランプ型のディスクドライブを用いることもできることになる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るディスク型記録媒体は、ディスクドライブでの高速回転時に生じる浮き上がりを抑制するための複数のスポイラーを非情報記録面に円周方向に沿って形成したことから、記憶容量に制約を生じさせることなく、高速回転時における浮き上がりを効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るディスク型記録媒体の非情報記録面側の平面図である。
【図2】ディスク型記録媒体を構成する円盤体の第1の領域に形成された第1のスポイラーの構成を示すもので、円盤体の線分A−O部分の拡大縦断面図である。
【図3】ディスク型記録媒体を構成する円盤体の第1のスポイラーが形成された部分の厚みの変化を円周方向に順に示すもので、図3(a)は線分A−O部分における第1のスポイラー部分のみの拡大縦断面図、図3(b)は線分A1−O部分における第1のスポイラー部分のみの拡大縦断面図、図3(c)は線分A2−O部分における第1のスポイラー部分のみの拡大縦断面図、図3(d)は線分B−O部分における第1のスポイラー部分のみの拡大縦断面図を示すものである。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るディスク型記録媒体の非情報記録面側の平面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係るディスク型記録媒体の非情報記録面側の平面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係るディスク型記録媒体のスポイラー部分の拡大縦断面図である。
【図7】マグネットクランプ型のディスクドライブの概略構成を説明するための図である。
【図8】ボールクランプ型のディスクドライブの概略構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るCDやDVDなどの情報の書き込みや読み出しが可能なディスク型記録媒体の非情報記録面側の平面図である。この図において、ディスク型記録媒体10は、中央部に中心孔12を有する樹脂材料やガラス材料などの適宜の材料で構成された円盤体14(例えば、厚み1.2mm、直径120mm)の印刷などが施される非情報記録面を円周方向に沿って第1の領域ar1、第2の領域ar2、第3の領域ar3及び第4の領域ar4の4つの領域に仮想的に等分割し、各領域に対応して第1のスポイラー16、第2のスポイラー18、第3のスポイラー20及び第4のスポイラー22を中心孔12の近傍周囲の環状中央領域caを除く非情報記録面上に形成したものである。なお、第1乃至第4のスポイラー16乃至22の具体的構成については後述する。
【0025】
すなわち、円盤体14に中心孔12の中心Oを通り互いに直交する仮想線A−C及び仮想線B−Dを便宜的に設定して説明すると、線分A−O及び線分B−Oで囲まれる第1の領域ar1に第1のスポイラー16を、線分B−O及び線分C−Oで囲まれる第2の領域ar2に第2のスポイラー18を、線分C−O及び線分D−Oで囲まれる第3の領域ar3に第3のスポイラー20を、線分D−O及び線分A−Oで囲まれる第4の領域ar4に第4のスポイラー22をそれぞれ円盤体14の円周方向に沿って連続して形成したものである。これらスポイラー16、18、20、22は、ディスクドライブによる高速回転時に生じる風圧で円盤体14を上方から下方に押え込むことでディスク型記録媒体10(円盤体14)の高速回転時に生じる振動や共振などにより上方に浮き上がろうとする力を抑制する働きをするものである。
【0026】
図2は、第1の領域ar1に形成された第1のスポイラー16の具体的構成を説明するための図であり、図1の線分A−O部分の拡大縦断面図である。すなわち、第1のスポイラー16は、この図2に示すように、線分A−O側から線分B−O側に向けて(すなわち、回転方向に向けて)下り方向の勾配を有する突起体により形成し、円盤体14の非情報記録面上に一体に形成することにより構成されている。この第1のスポイラー16を形成したことにより、第1の領域ar1の円盤体14の厚みは、次のようになる。
【0027】
すなわち、円盤体14の環状中央領域ca部分では、第1のスポイラー16を形成しない場合の円盤体14の本来の厚みTa(例えば、1.2mm)となり、第1のスポイラー16を形成した部分では、第1のスポイラー16の一端位置となる線分A−O部分で第1のスポイラー16部分の最大厚みTb(例えば、0.3mm)が加算された厚みTm(例えば、1.5mm)となり、第1のスポイラー16の円周方向の他端位置となる線分B−Oに近づくに従い第1のスポイラー16部分の厚みが次第に薄くなることで円盤体14の本来の厚みTa(例えば、1.2mm)に近づいていく。
【0028】
そして、第1のスポイラー16の他端位置となる線分B−O部分では第1のスポイラー16部分の厚みはゼロとなり、円盤体14の本来の厚みTa(例えば、1.2mm)となる。但し、線分B−O部分は、第2の領域ar2の第2のスポイラー18の一端位置でもあるため、この第2のスポイラー18の一端位置としての線分B−O部分の厚みは、線分A−O部分と同様に、円盤体14の本来の厚みTa(例えば、1.2mm)に第2のスポイラー18部分の最大厚みTb(例えば、0.3mm)が加算された厚みTm(例えば、1.5mm)となる。すなわち、線分B−O部分では、円盤体14の厚みは不連続なものとなっている。
【0029】
図3は、図2で説明した回転方向に向けて下り方向の勾配を有する第1のスポイラー16の具体的構成を別の面から説明するための図であり、円盤体14の第1の領域ar1における第1のスポイラー16が形成された部分の厚みの変化を矢印Yで示す回転方向の円周方向に順に示すもので、第1のスポイラー16が形成された部分のみの拡大縦断面図である。
【0030】
すなわち、円盤体14の第1の領域ar1における第1のスポイラー16が形成された部分の厚みは、第1のスポイラー16の一端位置となる線分A−O部分では、図3(a)に示すように、下部の斜線で示す円盤体14の本来の厚みTa(例えば、1.2mm)に上部の白抜きで示す第1のスポイラー16部分の最大厚みTb(例えば、0.3mm)が加算された厚みTm(例えば、1.5mm)となる。
【0031】
また、線分A−Oより回転方向の円周方向に30°進んだ位置である線分A1−O部分では、図3(b)に示すように、下部の円盤体14の本来の厚みTa(例えば、1.2mm)に上部の第1のスポイラー16部分の当該位置における厚みTc(例えば、0.2mm)が加算された厚みTn(例えば、1.4mm)となる。また、線分A−Oより回転方向の円周方向に60°進んだ位置である線分A2−O部分では、図3(c)に示すように、下部の円盤体14の本来の厚みTa(例えば、1.2mm)に上部の第1のスポイラー16部分の当該位置における厚みTd(例えば、0.1mm)が加算された厚みTo(例えば、1.3mm)となる。
【0032】
そして、線分A−Oより回転方向の円周方向に90°進んだ位置である第1のスポイラー16の他端位置となる線分B−O部分では、第1のスポイラー16の厚みがゼロとなるため、図3(d)に示すように、下部の斜線で示す円盤体14の本来の厚みTa(例えば、1.2mm)となる。但し、線分B−O部分は、第2の領域ar2の第2のスポイラー18の一端位置でもあるため、この第2のスポイラー18の一端位置としての線分B−O部分の厚みは、線分A−O部分と同様に、下部の斜線で示す円盤体14の本来の厚みTa(例えば、1.2mm)に上部の白抜きで示す第2のスポイラー18部分の最大厚みTb(例えば、0.3mm)が加算された厚みTm(例えば、1.5mm)となる。言い換えれば、第1のスポイラー16は、径方向の線分A−Oを円周方向に移動させた場合、線分A−O部分の厚みが線分B−O部分に近づくに従って連続的に徐々に薄くなるものである。
【0033】
なお、第2の領域ar2に形成された第2のスポイラー18、第3の領域ar3に形成された第3のスポイラー20及び第4の領域ar4に形成された第4のスポイラー22についても、図2及び図3に示す第1のスポイラー16と同一に構成されたものであるため、詳細な説明は省略する。
【0034】
すなわち、第2のスポイラー18は、線分B−O側から線分C−O側に向けて下り方向の勾配を有する突起体により形成し、円盤体14の非情報記録面上に一体に形成することにより構成されたものであり、第3のスポイラー20は、線分C−O側から線分D−O側に向けて下り方向の勾配を有する突起体により形成し、円盤体14の非情報記録面上に一体に形成することにより構成されたものである。また、第4のスポイラー22は、線分D−O側から線分A−O側に向けて下り方向の勾配を有する突起体により形成し、円盤体14の非情報記録面上に一体に形成することにより構成されたものである。
【0035】
このように構成された第1の実施形態に係るディスク型記録媒体10は、円盤体14の非情報記録面に回転方向に向けて下り方向の勾配を有する突起体からなる第1乃至第4のスポイラー16乃至22がそれぞれ同一の構成により形成されているため、ディスク型記録媒体10がディスクドライブにより高速回転されるとき、円盤体14の非情報記録面側に回転方向とは逆方向で第1乃至第4のスポイラー16乃至22面に沿った上り勾配の気体(空気)の流れが生じることから、風圧で円盤体14を上方から下方に押え込む力が作用する。
【0036】
これにより、ディスクドライブによる高速回転時に生じる振動や共振などにより浮き上がろうとする力が抑制され、ディスクドライブがボールクランプ型のようにディスク型記録媒体が振動や共振などにより浮き上がってターンテーブルから飛び出し易い構成のものであっても、ディスク型記録媒体がターンテーブルから浮き上がって外部に飛び出したり、浮き上がることで書き込みエラーや読み出しエラーなどが生じたりすることを阻止することができる。
【0037】
また、第1乃至第4のスポイラー16乃至22は、いずれも円盤体14の非情報記録面に構成され、従来技術のように情報記録面側に構成するというものではないため、記憶容量に制約を生じさせることもない。さらには、第1乃至第4のスポイラー16乃至22は、円盤体14の中心孔12の近傍周囲の環状中央領域caには形成されないため、この環状中央領域caに図7に示すマグネットクランプ型のチャッキングプレート110を当接させ得るだけの径(例えば、直径85mm)を確保しておくことで、マグネットクランプ型のディスクドライブを用いることも可能となる。
【0038】
図4は、本発明の第2の実施形態に係るディスク型記録媒体の非情報記録面側の平面図である。この第2の実施形態に係るディスク型記録媒体10は、図1乃至図3に示す第1の実施形態のものに比べて第1乃至第4のスポイラー16乃至22を円盤体14の外周部分にのみ形成したものである点で相違するものである。このため、同一の構成要素については同一の符号を用いることで詳細な説明を省略する。
【0039】
すなわち、この第2の実施形態に係るディスク型記録媒体10は、円盤体14の非情報記録面における線分A−O及び線分B−Oで囲まれる第1の領域ar1の外周部分に第1のスポイラー16を、線分B−O及び線分C−Oで囲まれる第2の領域ar2の外周部分に第2のスポイラー18を、線分C−O及び線分D−Oで囲まれる第3の領域ar3の外周部分に第3のスポイラー20を、線分D−O及び線分A−Oで囲まれる第4の領域ar4の外周部分に第4のスポイラー22をそれぞれ円盤体14の円周方向に沿って形成したものであり、第1乃至第4のスポイラー16乃至22の径方向の幅を第1の実施形態のものに比べて狭くしたもの(例えば、2mm)である。
【0040】
このため、各スポイラーの機能は第1の実施形態のものに比べて若干落ちるとはいうものの、第1の実施形態のディスク型記録媒体10と同様に、高速回転時に生じる浮き上がろうとする力が抑制され、ディスクドライブがボールクランプ型のようにディスク型記録媒体が振動や共振などにより浮き上がってターンテーブルから飛び出し易い構成のものであっても、ディスク型記録媒体がターンテーブルから浮き上がって外部に飛び出したり、浮き上がることで書き込みエラーや読み出しエラーなどが生じたりすることを阻止することができる。
【0041】
また、第1乃至第4のスポイラー16乃至22は、円盤体14の非情報記録面に構成され、従来技術のように情報記録面側に構成するというものではないため、記憶容量に制約を生じさせることもない。さらには、第1乃至第4のスポイラー16乃至22は、円盤体14の外周部分にのみ形成されるもので、図7に示すマグネットクランプ型のチャッキングプレート110を当接させるための障害とはならないため、マグネットクランプ型のディスクドライブを用いることも可能となる。
【0042】
図5は、本発明の第3の実施形態に係るディスク型記録媒体の非情報記録面側の平面図である。この第3の実施形態に係るディスク型記録媒体10は、図1乃至図3に示す第1の実施形態のものに比べて第1乃至第4のスポイラー16乃至22を円周方向における勾配部分の長さの短い突起体により構成し、円盤体14の円周方向に沿って所定の間隔をおいて形成したものである点で相違するものである。このため、同一の構成要素については同一の符号を用いることで詳細な説明を省略する。
【0043】
すなわち、先の実施形態と同様に便宜的に設定した線分A−O、B−O、C−O、D−Oを用いて説明すると、この第3の実施形態に係るディスク型記録媒体10は、第1のスポイラー16を円盤体14の非情報記録面における線分A−O部分に第1の領域ar1と第4の領域ar4とに跨って形成し、第2のスポイラー18を円盤体14の非情報記録面における線分B−O部分に第1の領域ar1と第2の領域ar2とに跨って形成し、第3のスポイラー20を円盤体14の非情報記録面における線分C−O部分に第2の領域ar2と第3の領域ar3とに跨って形成し、第4のスポイラー22を円盤体14の非情報記録面における線分D−O部分に第3の領域ar3と第4の領域ar4とに跨って形成したもので、それぞれ円周方向の一部(例えば、3mm)にのみ形成したものである。
【0044】
これら円周方向の一部にのみ形成された(すなわち、所定の間隔をおいて形成された)第1乃至第4のスポイラー16乃至22は、第4のスポイラー22を通るE−F線における拡大縦断面図である図6に示すように、第1の実施形態のものと同様に回転方向に向けて下り勾配を有するように形成されたものである。なお、この第3の実施形態における第1乃至第4のスポイラー16乃至22の径方向の幅は第1の実施形態のものと同様である。
【0045】
このため、各スポイラーの機能は第1の実施形態のものに比べて若干落ちるとはいうものの、第1の実施形態のディスク型記録媒体10と同様に、高速回転時に生じる浮き上がろうとする力が抑制され、ディスクドライブがボールクランプ型のようにディスク型記録媒体が振動や共振などにより浮き上がってターンテーブルから飛び出し易い構成のものであっても、ディスク型記録媒体がターンテーブルから浮き上がって外部に飛び出したり、浮き上がることで書き込みエラーや読み出しエラーなどが生じたりすることを阻止することができる。
【0046】
また、第1乃至第4のスポイラー16乃至22は、円盤体14の非情報記録面に構成され、従来技術のように情報記録面側に構成するというものではないため、記憶容量に制約を生じさせることもない。さらには、第1乃至第4のスポイラー16乃至22は、円盤体14の中心孔12の近傍周囲には形成されないため、それらの径方向の長さを図7に示すマグネットクランプ型のチャッキングプレート110の障害とならない値に設定することで、マグネットクランプ型のディスクドライブを用いることも可能となる。
【0047】
なお、本発明に係るディスク型記録媒体10は、上記第1乃至第3の実施形態のものに限定されるものではなく、以下に述べるような種々の変形態様を必要に応じて採用することができる。
【0048】
(1)上記第1及び第2の実施形態では、円盤体14の非情報記録面を4つの領域に等分割し、等分割した各領域に対応して第1乃至第4のスポイラー16乃至22を連続して設けるようにしているが、これに限るものではない。例えば、円盤体14の非情報記録面を2つ又は3つの領域に分割し、各領域に対応してスポイラーを設けるようにしてしてもよいし、5つ以上の領域に分割し、各領域に対応してスポイラーを設けるようにしてもよい。また、円盤体14の非情報記録面を4つ以上の偶数の数の領域に分割し、1つおきの領域に対応してスポイラーを設けるようにしてしてもよい。
【0049】
(2)上記第1及び第2の実施形態では、円盤体14の非情報記録面を4つの領域に等分割し、等分割した各領域に対応して第1乃至第4のスポイラー16乃至22を連続して設けるようにしているが、これに限るものではない。例えば、第1乃至第4のスポイラー16乃至22の各スポイラー間に僅かな所定の間隔を設けるようにすることもできる。
【0050】
(3)上記第1及び第2の実施形態では、円盤体14の非情報記録面を4つの領域に等分割し、等分割した各領域に対応して第1乃至第4のスポイラー16乃至22を設けるようにしているが、これに限るものではない。例えば、高速回転時に重心のバランスが取れて円滑に回転し得るようになっておれば、非情報記録面を円周方向に不均等に分割し、この分割した各領域に対応して第1乃至第4のスポイラー16乃至22を設けるようにしてもよい。
【0051】
(4)上記第1及び第3の実施形態では、第1乃至第4のスポイラー16乃至22を円盤体14の中心孔12の近傍周囲には設けないようにしているが、これに限るものではない。例えば、図7に示すマグネットクランプ型のディスクドライブを用いる必要がない場合などでは、第1乃至第4のスポイラー16乃至22を円盤体14の中心孔12の近傍位置にまで設けるようにしてもよい。
【0052】
(5)上記第1及び第2の実施形態では、回転方向に向けて下り勾配を有する第1乃至第4のスポイラー16乃至22は、それぞれ円盤体14の外周側も内周側も共に同じ勾配となるように形成されたものであるが、これに限るものではない。例えば、外周側の勾配を内周側よりも大きくするようにしてもよいし、外周側の勾配を内周側よりも小さくするようにしてもよい。
【0053】
(6)上記第1乃至第3の実施形態では、回転方向に向けて下り勾配を有する第1乃至第4のスポイラー16乃至22は、それぞれ円周方向の何れの位置においても同一の傾斜角度となるように設定したものであるが、これに限るものではない。例えば、一端側に近いほど傾斜角度が大きくなるようにし、他端側に近いほど傾斜角度が小さくなるようにしてもよい。要は、スポイラーとしての機能が十分に発揮できるような傾斜を有するように設定されておればよい。
【0054】
(7)上記第3の実施形態では、回転方向に向けて下り勾配を有する第1乃至第4のスポイラー16乃至22の4つのスポイラーを設けたものであるが、これに限るものではない。例えば、2つ又は3つでもよいし、5つ以上であってもよい。また、第1乃至第4のスポイラー16乃至22は、所定の間隔をおいて形成したもので、具体的には等間隔となるように設定されているが、これに限るものではない。例えば、高速回転時に重心のバランスが取れて円滑に回転し得る範囲内であれば、必ずしも等間隔である必要はない。
【符号の説明】
【0055】
10 ディスク型記録媒体
12 中心孔
14 円盤体
16 第1のスポイラー
18 第2のスポイラー
20 第3のスポイラー
22 第4のスポイラー
ac 環状中央領域
ar1 第1の領域
ar2 第2の領域
ar3 第3の領域
ar4 第4の領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤体の一面に情報記録面を有するディスク型記録媒体であって、前記円盤体の他面である非情報記録面に、高速回転時に生じる浮き上がりを抑制するための複数のスポイラーを円周方向に沿って形成したことを特徴とするディスク型記録媒体。
【請求項2】
前記スポイラーは、回転方向に向けて下り勾配を有する突起体を前記非情報記録面上に一体に形成して構成したもので、前記非情報記録面における円周方向に沿って複数に分割した領域のそれぞれに形成したものであることを特徴とする請求項1記載のディスク型記録媒体。
【請求項3】
前記スポイラーは、前記円盤体の中央に形成した中心孔の近傍周囲の環状中央領域を除いて形成したものであることを特徴とする請求項2記載のディスク型記録媒体。
【請求項4】
前記スポイラーは、前記非情報記録面における円周方向に沿って複数に分割した領域の外周部分に形成したものであることを特徴とする請求項2記載のディスク型記録媒体。
【請求項5】
前記スポイラーは、前記非情報記録面における円周方向に沿って所定の間隔をおいて形成したものであることを特徴とする請求項2記載のディスク型記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−43487(P2012−43487A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181664(P2010−181664)
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【出願人】(500524659)シバテック株式会社 (6)
【Fターム(参考)】