ディスク駆動装置及びディスク駆動方法
【課題】 可撓性ディスクの回転に伴う面振れを簡便に制御するディスク駆動装置の提供。
【解決手段】 可撓性ディスク10に対して情報の再生及び/又は記録を行うために、ディスクを回転させるディスク駆動装置100であって、ディスクのディスク面に対向して近接し、ディスクの面振れを抑制する安定化部材50と、安定化部材の表面と、回転しているディスクのディスク面とを所定幅毎に近接させる近接部材70と、安定化部材の表面とディスク面との間隙部分の気圧の周辺大気圧に対する差圧を検出する差圧計60と、近接部材により、安定化部材の表面とディスク面とを近接させた際の、差圧計により検出された差圧を基に、安定化部材の表面とディスク面との間隙部分の幅を制御する制御部90とを備えるディスク駆動装置。
【解決手段】 可撓性ディスク10に対して情報の再生及び/又は記録を行うために、ディスクを回転させるディスク駆動装置100であって、ディスクのディスク面に対向して近接し、ディスクの面振れを抑制する安定化部材50と、安定化部材の表面と、回転しているディスクのディスク面とを所定幅毎に近接させる近接部材70と、安定化部材の表面とディスク面との間隙部分の気圧の周辺大気圧に対する差圧を検出する差圧計60と、近接部材により、安定化部材の表面とディスク面とを近接させた際の、差圧計により検出された差圧を基に、安定化部材の表面とディスク面との間隙部分の幅を制御する制御部90とを備えるディスク駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク駆動装置及びディスク駆動方法に関する、詳しくは、可撓性を有するシート状のディスクに対して情報の記録及び再生の少なくとも一方を行うディスク駆動装置及びディスク駆動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報のデジタル化に伴い、光ディスクの大容量化、高密度化、高速記録・再生に対する要求が高まっている。これに対して、低コストで情報の大容量化、高密度記録が可能な光ディスクとして、可撓性を有する厚さ0.1〜0.2mm程度のシート状の光ディスクの開発が進められている。
【0003】
本発明の説明においては、光ディスクを可撓性を有するシート状のディスクの代表例としてディスク駆動装置及びディスク駆動方法の説明をするが、本発明が対象とする記録/再生装置に用いられる可撓性を有するシート状のディスクは、相変化メモリ、光磁気メモリ、ホログラムメモリなどのディスク状の記録ディスクで活用するもの全てを対象にし、特に光ディスクに限定するものではない。
【0004】
可撓性を有するシート状のディスク(光ディスク、又は単にディスクともいう。)をスピンドルモータに固定して回転させ、空気力学的な力を作用させる安定化板(安定化部材の一態様)により、ディスクの高速回転中の面振れを抑制して安定化させ、記録/再生ヘッドの走査によりディスクに情報の記録及び/又は再生を行う記録/再生装置(光ディスク装置)において、安定化板を少なくとも記録ディスクの記録領域を覆う平板状とし、ディスクのディスク面と安定化板とのディスク回転軸方向の相対距離を調整する位置調整手段を備えた記録/再生装置が知られている。
【0005】
例えば、特許文献1に開示されている記録/再生方法では、可撓性ディスクと安定化板との相対距離を調整する位置調整手段を備え、ディスクの回転数に対する前記相対位置の調整パターンを装置内に記憶し、ディスクの回転数に応じて相対位置の調整を行う手法が示されている。
【0006】
また、様々なディスクの基材や記録膜、保護膜の構成に対する前記相対位置の調整パターンも同様に装置内に記憶し、ディスクの構成に応じて相対位置の調整を行う手法が示されている。
【0007】
さらに、ディスク外周部の半径方向チルト角を検出し、チルト角が零近傍となるように前記相対位置を調整することで、調整パターンを記憶することなく、相対位置の調整を行う手法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−107699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
可撓性を有するシート状のディスク(以下では、便宜上、「可撓性ディスク」、「光ディスク」、又は「ディスク」と略述することがある。)に対して、情報の記録あるいは再生を行う光ディスク装置では、可撓性ディスクのディスク面に近接して安定化板を配置することにより、安定化板と可撓性ディスクとの間に可撓性ディスクが回転することによって生じる空気流が影響して可撓性ディスクの面振れを抑制している。この場合、この安定化板が面振れを抑制する効果を発揮するためには、可撓性ディスクと安定化板との距離を所定の範囲内に保つ必要がある。
【0010】
しかしながら、前記可撓性ディスクと安定化板との適切な距離は、ディスク回転数や、ディスクの基材、記録膜、保護膜の構成等の機械特性などによって変化する。このため、安定化板が面振れを抑制する効果を発揮する可撓性ディスクと安定化板との距離を、所定の範囲に自動的に調整するためには、面振れが抑制されているか否かを調べる手段が必要であった。
【0011】
面振れの抑制の有無を調べる手段として、ピックアップレンズのフォーカスエラー信号を利用する方法が知られている。従来のCDやDVDなどの光ディスク装置は、対物レンズの開口数(NA)が小さく、対物レンズとディスク記録面の距離が大きいので両者が接触する危険は少ない。しかし、大容量、高密度化されたBlu-ray Discに代表される光ディスク装置などは、対物レンズのNAが大きく、対物レンズとディスク記録面の距離が小さいため、ディスクの面振れが大きいと両者が接触してピックアップ故障の原因となる。このため、Blu-ray Disc装置に代表される対物レンズのNAが大きい光ディスク装置では、フォーカスエラー信号を用いて面振れが抑制されている状態の有無を調べることは困難である。
【0012】
また、特許文献1に開示されている可撓性ディスクの構成に対する相対位置の調整パターンを装置内に記憶する方法は、あらかじめ構成を記憶している可撓性ディスク以外の可撓性ディスクに対しては、調整パターンが不明のため相対位置の調整が達成できない。また、特許文献1に示されている、ディスク外周部の半径方向チルト角を検出し、チルト角が零近傍となるように前記相対位置を調整する方法では、チルト角検出のための装置が必要となる。一般的に非接触でディスクのチルト角を検出可能な装置は高価なため、ディスク駆動装置の高コスト化を招来するという問題があった。
【0013】
本発明は、上記問題点を踏まえ、可撓性ディスクの情報記録又は再生時に発生するディスクの回転に伴う面振れを、情報記録又は再生可能な状態に簡便に制御するディスク駆動装置又はディスク駆動方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、可撓性を有するシート状のディスクに対して情報の再生及び記録の少なくとも一方を行うために、前記ディスクを回転させるディスク駆動装置であって、前記ディスクのディスク面に対向して近接し、前記ディスクの面振れを抑制する安定化部材と、前記安定化部材の表面と、回転している前記ディスクのディスク面とを所定幅毎に近接させる近接部材と、前記安定化部材の表面と前記ディスク面との間隙部分の気圧の周辺大気圧に対する差圧を検出する差圧計と、前記近接部材により、前記安定化部材の表面と前記ディスク面とを近接させた際の、前記差圧計により検出された差圧を基に、前記安定化部材の表面と前記ディスク面との間隙部分の幅を制御する制御部と、を備えることを特徴とするディスク駆動装置である。
【0015】
好ましい本発明は、前記制御部は、前記安定化部材の表面と前記ディスク面とを近接させた際の、前記間隙部分の幅(C)の微小変化(ΔC)に対する前記差圧(P)の微小変化(ΔP)の割合である局所差圧勾配(Sk=ΔP/ΔC)を基に、前記間隙部分の幅を制御することを特徴とする前記ディスク駆動装置である。
【0016】
好ましい本発明は、前記制御部は、前記間隙部分の幅を、前記局所差圧勾配(Sk)が0以下になったときの前記間隙部分の幅以下に制御することを特徴とする前記ディスク駆動装置である。
【0017】
好ましい本発明は、前記制御部は、前記安定化部材の表面と前記ディスク面とを近接させた際の、前記間隙部分の幅(C)の微小変化に対する前記差圧(P)の微小変化の割合である局所差圧勾配(Sk)と、前記間隙部分の幅(C)の変化全体に対する前記差圧(P)の変化の割合である全体差圧勾配(St)との勾配比(Sk)/(St)、又は前記局所差圧勾配(Sk)と、前記間隙部分の幅の変化領域全体における各部分の局所差圧勾配(Sk)の平均値である平均差圧勾配(Sa)との勾配比(Sk)/(Sa)を基に前記間隙部分の幅を制御することを特徴とする前記ディスク駆動装置である。
【0018】
好ましい本発明は、前記制御部は、前記間隙部分の幅を前記局所差圧勾配(Sk)と前記全体差圧勾配(St)との勾配比(Sk)/(St)、又は前記局所差圧勾配(Sk)と前記平均差圧勾配(Sa)との勾配比(Sk)/(Sa)が0.1以下となったときの前記間隙部分の幅以下に制御することを特徴とする前記ディスク駆動装置である。
である。
【0019】
本発明は、可撓性を有するシート状のディスクに対して情報の再生及び記録の少なくとも一方を行うために前記ディスクを回転させるディスク駆動方法であって、前記ディスクの面振れを抑制する安定化部材と前記ディスクのディスク面とを対向させながら近接させる近接工程と、周辺の大気圧と、前記安定化部材と前記ディスク面との間隙部分の気圧との差圧を検出する差圧検出工程と、検出された前記差圧に基づいて、前記安定化部材と前記ディスク面との間隙の幅を制御する制御工程と、を有することを特徴とするディスク駆動方法である。
【0020】
好ましい本発明は、前記近接工程において、前記安定化部材と回転している前記ディスクの間隙を所定幅ずつ減少させていき、前記制御工程において、差圧測定時における前記差圧の前記間隙の幅の変化に対する変化割合を算出し、前記間隙の幅を前記差圧の変化割合が所定値以下となったときの前記間隙の幅以下に制御することを特徴とする前記ディスク駆動方法である。
【0021】
好ましい本発明は、前記近接工程において、前記安定化部材と回転している前記ディスクの間隙を減少させていき、前記制御工程において、差圧測定時における前記差圧の前記間隙の幅の減少量に対する減少割合が、前記近接工程全体における前記差圧の前記間隙の幅の減少量に対する減少割合に対し、所定値以下となったときの前記間隙の幅以下を、前記ディスクの面振れ抑制領域として前記間隙を制御することを特徴とする前記ディスク駆動方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、可撓性ディスクの情報記録又は再生時に発生しやすい、ディスクの回転に伴う面振れを情報記録又は再生可能な状態に簡便に制御するディスク駆動装置又はディスク駆動方法を提供することができる。
【0023】
例えば、本発明によれば、可撓性ディスクのチルト角を検出する装置を用いずに、ディスクの面振れが情報記録又は再生可能な状態に抑制されている状態と、面振れ量が情報記録又は再生可能な状態以上に増大している状態とを容易に経済的に判別することができる。そして、本発明によれば、ディスクの形状、構成や回転数に依存せず、面振れ量を情報記録又は再生可能な状態に制御し、安定した記録又は再生を実現するディスク駆動装置又はディスク駆動方法を提供することができる。さらに、ディスクの形状、構成や回転数が特定されれば、より厳密に情報記録又は再生可能な状態に面振れ量を制御し、安定した記録又は再生を実現するディスク駆動装置又はディスク駆動方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係るディスク駆動装置を含む光ディスク装置の構成を表す断面模式図である。
【図2】図1に示した光ディスク装置の安定化板の平面図である。
【図3】本発明の実施形態例に係る光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
【図4】外径120mm、厚さ0.1mmの光ディスクを、ディスク駆動装置で回転数7,000rpmで回転させた際の、カウンタのカウント値kに対応するディスクと安定化板の間隙部分の幅(間隙C(mm))と、ディスクの外周付近(中心から59mmの位置)の間隙部分の気圧と装置周辺の大気圧との差圧P(Pa)、差圧Pと間隙Cの局所差圧勾配Sk(Pa/mm)、差圧Pと間隙Cの全体差圧勾配St(Pa/mm)、差圧Pと間隙Cの平均差圧勾配Sa(Pa/mm)、勾配比Sk/St、勾配比Sk/Sa及びディスクの外周部(中心から55mmの位置)の面振れ(μm)の関係を表す表である。
【図5】図4における、ディスクと安定化板との間隙C(mm)と、ディスクの外周付近の間隙部分の気圧と装置周辺の大気圧との差圧P(Pa)、との関係を示すグラフである。
【図6】外径120mm、厚さ0.1mmの光ディスクを、ディスク駆動装置で回転数10,000rpmで回転させた際の、カウンタのカウント値kに対応するディスクと安定化板の間隙部分の幅(間隙C(mm))と、ディスクの外周付近(中心から59mmの位置)の間隙部分の気圧と装置周辺の大気圧との差圧P(Pa)、差圧Pと間隙Cの局所差圧勾配Sk(Pa/mm)、差圧Pと間隙Cの全体差圧勾配St(Pa/mm)、差圧Pと間隙Cの平均差圧勾配Sa(Pa/mm)、勾配比Sk/St、勾配比Sk/Sa及びディスクの外周部(中心から55mmの位置)の面振れ(μm)の関係を表す表である。
【図7】図6における、ディスクと安定化板の間隙C(mm)と、ディスクの外周付近の間隙部分の気圧と装置周辺の大気圧との差圧P(Pa)、との関係を示すグラフである。
【図8】外径120mm、厚さ0.1mmの光ディスクを、ディスク駆動装置で回転数13,000rpmで回転させた際の、カウンタのカウント値kに対応するディスクと安定化板の間隙部分の幅(間隙C(mm))と、ディスクの外周付近(中心から59mmの位置)の間隙部分の気圧と装置周辺の大気圧との差圧P(Pa)、差圧Pと間隙Cの局所差圧勾配Sk(Pa/mm)、差圧Pと間隙Cの全体差圧勾配St(Pa/mm)、差圧Pと間隙Cの平均差圧勾配Sa(Pa/mm)、勾配比Sk/St、勾配比Sk/Sa及びディスクの外周部(中心から55mmの位置)の面振れ(μm)の関係を表す表である。
【図9】図8における、ディスクと安定化板の間隙C(mm)と、ディスクの外周付近の間隙部分の気圧と装置周辺の大気圧との差圧P(Pa)、との関係を示すグラフである。
【図10】外径120mm、厚さ0.2mmの光ディスクを、ディスク駆動装置で回転数7,000rpmで回転させた際の、カウンタのカウント値kに対応するディスクと安定化板の間隙部分の幅(間隙C(mm))と、ディスクの外周付近(中心から59mmの位置)の間隙部分の気圧と装置周辺の大気圧との差圧P(Pa)、差圧Pと間隙Cの局所差圧勾配Sk(Pa/mm)、差圧Pと間隙Cの全体差圧勾配St(Pa/mm)、差圧Pと間隙Cの平均差圧勾配Sa(Pa/mm)、勾配比Sk/St、勾配比Sk/Sa及びディスクの外周部(中心から55mmの位置)の面振れ(μm)の関係を表す表である。
【図11】図10における、ディスクと安定化板の間隙C(mm)と、ディスクの外周付近の間隙部分の気圧と大気圧との差圧P(Pa)、との関係を示すグラフである。
【図12】外径120mm、厚さ0.2mmの光ディスクを、ディスク駆動装置で回転数10,000rpmで回転させた際の、カウンタのカウント値kに対応するディスクと安定化板の間隙部分の幅(間隙C(mm))と、ディスクの外周付近(中心から59mmの位置)の間隙部分の気圧と装置周辺の大気圧との差圧P(Pa)、差圧Pと間隙Cの局所差圧勾配Sk(Pa/mm)、差圧Pと間隙Cの全体差圧勾配St(Pa/mm)、差圧Pと間隙Cの平均差圧勾配Sa(Pa/mm)、勾配比Sk/St、勾配比Sk/Sa及びディスクの外周部(中心から55mmの位置)の面振れ(μm)の関係を表す表である。
【図13】図12における、ディスクと安定化板の間隙C(mm)と、ディスクの外周付近の間隙部分の気圧と装置周辺の大気圧との差圧P(Pa)、との関係を示すグラフである。
【図14】外径120mm、厚さ0.2mmの光ディスクを、ディスク駆動装置で回転数13,000rpmで回転させた際の、カウンタのカウント値kに対応するディスクと安定化板の間隙部分の幅(間隙C(mm))と、ディスクの外周付近(中心から59mmの位置)の間隙部分の気圧と装置周辺の大気圧との差圧P(Pa)、差圧Pと間隙Cの局所差圧勾配Sk(Pa/mm)、差圧Pと間隙Cの全体差圧勾配St(Pa/mm)、差圧Pと間隙Cの平均差圧勾配Sa(Pa/mm)、勾配比Sk/St、勾配比Sk/Sa及びディスクの外周部(中心から55mmの位置)の面振れ(μm)の関係を表す表である。
【図15】図14における、ディスクと安定化板の間隙C(mm)と、ディスクの外周付近の間隙部分の気圧と装置周辺の大気圧との差圧P(Pa)、との関係を示すグラフである。
【図16】光ディスク装置が上位装置から情報記録要求又は再生要求を受けたときの、光ディスク装置が、可撓性ディスクの面振れを所定の範囲内に抑制した状態で、記録要求又は再生の動作を実行するステップを説明するためのフロー図の一例である。
【図17】光ディスク装置が上位装置から情報記録要求又は再生要求を受けたときの、光ディスク装置が、可撓性ディスクの面振れを所定の範囲内に抑制した状態で、記録要求又は再生の動作を実行するステップを説明するためのフロー図の他の例である。
【図18】光ディスク装置が上位装置から情報記録要求又は再生要求を受けたときの、光ディスク装置が、可撓性ディスクの面振れを所定の範囲内に抑制した状態で、記録要求又は再生の動作を実行するステップを説明するためのフロー図の、さらに他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(ディスク駆動装置)
図1〜3に、本発明のディスク駆動装置の一実施形態を含む光ディスク装置100を示す。図1は、本実施形態例の光ディスク装置の主要部を表す断面図である。図1において、可撓性ディスク(可撓性を有するシート状のディスク、光ディスク、ディスクということもある。)10の外径と内径はそれぞれ120mm(半径60mm)と15mm(半径7.5mm)である。ディスク装着部40は、直径が33mmであり、可撓性ディスク10を装着し、スピンドルモータ30により高速で定速回転させることができる。安定化板(安定化部材の一態様)50は、可撓性ディスク10のディスク面に対向する面が平滑なドーナツ状の円板で、回転している可撓性ディスク10と平行に配置されている。安定化板50の外径と内径は、それぞれ122mm(半径61mm)と35mm(半径17.5mm)である。昇降部(近接部材の一態様)70は、安定化板50を昇降させることができる。特に、昇降部70は、所定量ずつ制御しながら安定化板50を、回転している可撓性ディスク10の表面に対向するように配置して安定化板50と可撓性ディスク10とを徐々に近接させることができる。
【0026】
なお、可撓性ディスク10の表面と安定化板50の可撓性ディスク10との対向面の近接操作は、可撓性ディスク10又は安定化板50のいずれかを移動させることでも、両者を移動させることでも可能である。また、各々の部材等の寸法は、これに限定するものではないが、安定化板50の外径は可撓性ディスク10の外径より少し大きいことが好ましい。
【0027】
安定化板50の外周部付近には、差圧計(差圧センサともいう。)60が設置されている。差圧計60は、可撓性ディスク10と安定化板50との間隙部分80の圧力(気圧)と、この光ディスク装置周辺の大気圧との差圧を検出する差圧センサ(差圧計)である。
【0028】
図2は、上記光ディスク装置の安定化板50の平面図である。差圧計60は、安定化板50の外周付近(本実施形態では中心から59mmの位置)の位置に等間隔に3個設けてある。差圧計60は、安定化板50と可撓性ディスク10との間の空気圧と大気圧との差を測定する装置であり、可撓性ディスク10の面振れ量の増大の影響を顕著に受け易いディスク外周部付近と対向する位置に設けることが好ましい。また、差圧計60は、安定化板50に最低限1つ設ければよいが、複数個設けることにより、可撓性ディスク10の面振れ量の変化をより精密に検知することができる。差圧計60は、回転している可撓性ディスク10の空気流の影響を受けない周辺部分の圧力(大気圧)と、可撓性ディスク10と安定化板50との間隙部分の気圧との差圧を測定できればよく、可撓性ディスク10と安定化板50との間隙部分の気圧そのものを測定する必要はない。このため、本発明における差圧センサ(差圧計)60は簡易な装置が利用できる。差圧センサ(差圧計)60は、例えばダイアフラム差圧計や液柱差圧計を利用したものなどが使用できる。
【0029】
図3は、本実施形態の光ディスク装置(ディスク駆動装置を含んでいる。)100の制御部を中心としたブロック図である。光ディスク装置100は、例えば、画像収録・再生装置や音楽収録・再生装置などの上位装置200との信号授受をするインターフェース92、各種の情報を記憶するメモリ91、光ピックアップ20のレーザ出力を制御するレーザ制御回路21、光ピックアップ20の駆動を制御する駆動制御回路22、昇降部70を介して安定化板50の昇降を制御する昇降制御回路71、差圧センサ60による間隙80における差圧Pの検出動作を制御する測定回路61、スピンドルモータ30の回転を制御するモータードライバ31を備えている。
【0030】
本実施形態の光ディスク装置100においては、回転中の可撓性ディスク10と安定化板50の間隙部分の気圧と大気圧との差圧Pと、可撓性ディスク10のディスク面とこれに対向する安定化板50表面との間隙部分の間隙の幅C(図1における間隙80の幅、間隙Cと略称することもある。)とは、対応関係がある。このため、可撓性ディスク10の面振れを制御するには、間隙Cに替えて上記差圧Pを制御してもよい。
【0031】
(間隙Cと差圧Pと面振れの関係)
図4〜15は、図1〜3に記載した光ディスク装置100を用いて、厚さの異なる光ディスク(可撓性ディスク)10を異なる回転数(それぞれ7,000rpm、10,000rpm、13,000rpm)で回転させながら、光ディスク10と安定化板50を所定幅ずつ近接させたときの間隙Cと、装置周辺の気圧(大気圧)に対する回転中の光ディスク10と安定化板50の間隙80の気圧の差圧(差圧Pと略称する。)と、光ディスク10の面振れ量との関係を測定した測定データとその一部のグラフである。それぞれの図を参照しながら、光ディスク装置100における間隙Cと差圧Pと面振れ量の関係から、それぞれの条件において光ディスク10の面振れ量を光ディスク10に対する記録・再生可能な範囲内に制御する方法について述べる。
【0032】
(実施例1)
図4は、外径120mm(半径60mm)、厚さ0.1mmの光ディスク10を、回転数7,000rpmで回転させたときのディスク10と安定化板50の間隙C(mm)、ディスク10の外周部(中心から59mmの位置)の間隙部分の気圧と装置周辺部の大気圧との差圧P(Pa)、間隙Cの値が所定値(図4におけるカウンタの値がk)のときの間隙Ck(mm)の微小変化ΔCk(mm)に対する差圧Pk(Pa)の微小変化量ΔPk(Pa)を表す局所差圧勾配Sk(=ΔP/ΔC(Pa/mm))、間隙Cが初期値から所定値まで(図4におけるカウンタの値kが0からkまで)変化したときの、間隙Cの変化全体に対応する差圧Pの変化量である全体差圧勾配St(Pa/mm)、間隙Cが初期値から所定値まで(図4におけるカウンタの値kが0からkまで)変化したときの、それぞれのカウンタの値kにおける前記局所差圧勾配Skの平均値である平均差圧勾配Sa(Pa/mm)、局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stの比である勾配比Sk/St、局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saとの比である勾配比Sk/Sa、及びディスク10の外周部(中心から55mmの位置)の面振れ量(μm)を示す表である。
【0033】
間隙Ckにおける局所差圧勾配Skは、光ディスク10を所定回転数で回転させながらディスクと安定化板の間隙Cを初期値から所定量ずつk回狭めていったときに、k番目に設定した間隙Ckにおける間隙Cの局所的な変化量ΔCkと、間隙部分の圧力(気圧)と大気圧との差圧Pkの局所的な変化量ΔPkの比、すなわち、下式(1)で表される。
Sk=ΔPk/ΔCk・・・・・・(1)
【0034】
間隙Ckにおける全体勾配Stは、光ディスク10を所定回転数で回転させながら光ディスク10と安定化板50の間隙Cを初期値から所定量(一定量でなくてもよい。)ずつ狭めていったときに、間隙部分の気圧と大気圧との差圧Pが負の値になる直前の間隙Cの値C0と差圧Pの値P0を基準(C0、P0が初期値に相当する。)にして、所定の間隙Ckに変化したときの差圧Pkの変化量から求めた勾配であり、下式(2)で表される。
St=(P0−Pk)/(C0−Ck)・・・・・(2)
【0035】
なお、可撓性ディスクを高速で回転させながら安定化板をディスク面に近接させてディスクの面振れを抑制する光ディスク駆動装置においては、安定化板がディスク面から十分に離れていれば。安定化板とディスク面との間の間隙部分(間隙C)の気圧は、光ディスク駆動装置周辺の大気圧と変わらない。安定化板とディスク面との間の間隙を次第に狭くしていくと、間隙Cの気圧は一時的に大気圧より若干高くなることもあるが、さらに安定化板とディスク面とを近づけていくと、間隙Cの気圧が装置周辺の大気圧より低くなり、大気圧に対する間隙Cの気圧(差圧P)が負の値(装置周辺の大気圧を0とする。)となる。このような状態では、光ディスクの面振れに対して安定化板が影響を及ぼし、光ディスクの面振れ量が小さくなってくる。本願発明においては、安定化板とディスク面とを近づける際に、間隙Cの差圧Pが負の値に変化する寸前の状態の測定値を基準として、カウンタ値k=0に対応させ、それぞれ間隙C、差圧Pの初期値C0、P0としている。
【0036】
局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saの勾配比Sk/Saは、以下のようにして算出する。平均差圧勾配Saは、光ディスク10を所定回転数で回転させながらディスクと安定化板の間隙Cを所定量ずつ狭めていったときに、間隙部分の気圧と大気圧との差圧Pが負の値になった時点の直前を0回目(カウンタk=0)と数えてk回目まで間隙Cを所定量ずつ狭めていってそれぞれPkを測定し、1番目の局所差圧勾配S1から、k番目の測定点における局所差圧勾配Skまでのk個の局所差圧勾配Siの平均値である。すなわち、平均差圧勾配Saは下式(3)で表される。
【0037】
【数1】
【0038】
従って、局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stとの勾配比は、Sk/Stで表され、局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saとの勾配比は、Sk/Saで表される。
【0039】
図5は、図4における光ディスク10と安定化板50の間隙C(mm)に対する、ディスクの外周部の間隙部分の気圧と大気圧との差圧P(Pa)と、光ディスク10の面振れ量の関係の主要部分を示したグラフである。
【0040】
図4、5から判るように、光ディスク10のディスク面と安定化板50の表面の間隙Cが狭くなると、光ディスク10の外周部の間隙部分の気圧と大気圧との差圧Pは負の値となる。そして、間隙Cをさらに狭めると、光ディスク10の差圧Pはさらに小さくなっていく。図4、5に示す実施例1では、差圧Pは、間隙Cが0.60mm付近から負の値となり、間隙Cが0.40mm付近まで13〜25Pa/mm程度の勾配でほぼ単調に低下していく。間隙Cが0.40mm以下になると、差圧Pは、0.44Pa/mm程度でほとんど低下しなくなる。
【0041】
一方、光ディスク10の面振れ量は、間隙Cが0.40mmを超える領域では、50μmを超えているが、0.40mm付近で急速に低下し、間隙Cが0.40mmで10μm、間隙Cが0.39mmで8μmとなり、その後は間隙Cが小さくなるに連れてゆっくりと低下する。なお、面振れ量は光学的に測定した値である(以下の説明で同じ)。
【0042】
なお、間隙Cが0.1mmになるまで安定化板50を光ディスク10に近づけているが、実用上では、光ディスク10の面振れが所定値以下になれば、それ以上安定化板50を可撓性ディスク10に近づけることは、安定化板50と光ディスク10の接触の恐れが増加するので実行する必要はない。このため、光ディスク10の面振れが小さくなり、一旦安定した後は、間隙Cをそれ以上小さくすることは実用上不必要であり、間隙Cが0.15mm以下の領域の面振れ量が3μm以下おける差圧Pは急降下傾向を示すことがある。しかし、一旦面振れ量が20μm、好ましくは10μm以下となれば、面振れ量は増加することはないので、この領域の測定はあまり意味がなく無視できる。この傾向は、後述する実施例2〜6においても同じである。
【0043】
通常、光ディスク10の面振れ量は、20μm以下、好ましくは10μm以下であれば使用可能である。このため、0.1mm厚の光ディスク10を7,000rpmで回転させて使用するこの実施例の光ディスク装置においては、間隙Cが0.40mm以下とすればよい。また、間隙Cの代わりに、差圧Pを−4.4Pa以下に制御すればよいことが判る。光ディスク10の面振れ量を制御するために、間隙Cの代わりに、差圧Pを制御指標とすることで、間隙Cの測定が不用となり、光ディスク装置を簡単なものとすることができる。
【0044】
図4において、間隙Cの減少に伴う光ディスク10の面振れ量(μm)の変化、及び差圧Pk、局所差圧勾配Sk、全体差圧勾配St、局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stの勾配比Sk/St、局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saの勾配比Sk/Saを観察すると、面振れ量が確実に所定値20μm以下とするための制御条件として、差圧Pkを−4.4Pa以下とする方法以外に、以下の制御条件を選択すればよいことが判る。
(1)局所差圧勾配Skが1.0Pa/mm以下、好ましくは0.0Pa/mm以下である。
(2)局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stの勾配比Sk/Stが0.2未満、好ましくは0.1以下、さらに好ましくは0.0以下である。
(3)局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saの勾配比Sk/Saが0.2未満、好ましくは0.1以下、さらに好ましくは0.0以下である。
【0045】
(実施例2)
図6、7は、ディスク10の外周部(中心から59mmの位置)の間隙部分の気圧と大気圧との差圧P(Pa)、差圧Pと間隙Cの局所差圧勾配Sk(Pa/mm)、差圧Pと間隙Cの全体差圧勾配St(Pa/mm)、平均差圧勾配Sa(Pa/mm)、局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stの勾配比Sk/St、局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saとの勾配比Sk/Saの関係、及びディスクの外周部(中心から55mmの位置)の面振れ(μm)を表す表及びグラフである。
【0046】
図6は、実施例1において、光ディスク10を回転数7,000rpmから10,000rpmに変更して回転させた以外は、実施例1と同様にして測定及び算出した光ディスク10と安定化板50の間隙C(mm)、ディスク10の外周部(中心から59mmの位置)の間隙部分の気圧と大気圧との差圧P(Pa)、差圧Pと間隙Cの局所差圧勾配Sk(Pa/mm)、差圧Pと間隙Cの全体差圧勾配St(Pa/mm)、平均差圧勾配Sa(Pa/mm)、局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stの勾配比Sk/St、局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saとの勾配比Sk/Saの関係、及びディスクの外周部(中心から55mmの位置)の面振れ(μm)を表す表である。
【0047】
図7は、図6における光ディスク10と安定化板50の間隙C(mm)に対する、ディスクの外周部の間隙部分の気圧と大気圧との差圧P(Pa)と、光ディスクの面振れ量の関係を示したグラフである。
【0048】
図6、7から判るように、実施例2は、実施例1と同様の傾向を示しており、光ディスク10のディスク面と安定化板50の表面の間隙Cが狭くなると、光ディスク10の外周部の間隙部分の気圧と大気圧との差圧Pは負の値となる。そして、光ディスク10のディスク面と安定化板50の表面の間隙Cをさらに狭めると、差圧Pは小さくなっていく。図6、7に示す実施例では、差圧Pは、間隙Cが0.23mm付近から負の値となり、間隙Cが0.20mm付近までほぼ200〜250Pa/mm程度の勾配で単調に低下していく。間隙Cが0.20〜0.15mmでは、差圧Pの低下傾向は小さくなる。
【0049】
一方、光ディスク10の面振れ量は、間隙Cが0.24mmを超える領域では、50μm以上であるが、間隙Cの減少と共に急速に減少し、間隙Cが0.20mmで14μm、間隙Cが0.19mmで10μmとなり、その後は間隙Cが小さくなるに連れてゆっくりと低下する。
【0050】
光ディスク10の面振れ量は、20μm以下、好ましくは10μm以下であれば使用可能である。このため、0.1mm厚の光ディスク10を10,000rpmで回転させて使用するこの実施例においては、間隙Cを0.20mm以下とすればよい。また、間隙Cの代わりに、差圧Pが−9.3Pa以下となればよいことが判る。
【0051】
図6において、間隙Cの減少に伴う可撓性ディスク10の面振れ量の変化、及び差圧P、局所差圧勾配Sk、全体差圧勾配St、局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stの勾配比Sk/St、局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saの勾配比Sk/Saを観察すると、面振れ量が所定値以下となるための制御条件として、差圧Pkを−9.0Pa以下とする方法以外に、以下の制御条件を選択すればよいことが判る。
(1)局所差圧勾配Skが220Pa/mm未満、好ましくは180Pa/mm以下、さらに好ましくは20Pa/mm以下となる。
(2)局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stの勾配比Sk/Stが1.0未満、好ましくは0.8以下になる。
(3)局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saの勾配比Sk/Sa1.0未満、好ましくは0.8以下になる。
【0052】
(実施例3)
図8は、実施例1において、光ディスク10を回転数7,000rpmから13,000rpmに変更して回転させた以外は、実施例1と同様にして測定及び算出したディスクと安定化板の間隙C(mm)、ディスク10の外周部(中心から59mmの位置)の間隙部分の気圧と大気圧との差圧P(Pa)、差圧Pと間隙Cの局所差圧勾配Sk(Pa/mm)、差圧Pと間隙Cの全体差圧勾配St(Pa/mm)、平均差圧勾配Sa(Pa/mm)、局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stの勾配比Sk/St、局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saとの勾配比Sk/Saの関係、及びディスクの外周部(中心から55mmの位置)の面振れ(μm)を表す表である。
【0053】
図9は、図8における光ディスク10と安定化板50の間隙C(mm)と、ディスクの外周部の間隙部分の気圧と大気圧との差圧P(Pa)、との関係を示したグラフである。
【0054】
図8、9から判るように、実施例3は、実施例1とほぼ同様の傾向を示しており、光ディスク10のディスク面と安定化板50の表面の間隙Cが狭くなると、光ディスク10の外周部の間隙部分の気圧と大気圧との差圧Pは負の値となる。そして、光ディスク10のディスク面と安定化板50の表面の間隙Cをさらに狭めると、差圧Pは小さくなっていく。図8、9に示す実施例では、差圧Pは、間隙Cが0.130mm付近から負の値となり、間隙Cが0.125mm付近までほぼ1500〜2500Pa/mm程度の勾配で低下していく。間隙Cが0.125mm以下になると、差圧Pは低下率が減少する。
【0055】
一方、光ディスク10の面振れ量は、間隙Cが0.130mm以上の領域では、30μm以上であるが、間隙Cが0.125mmで10μm、間隙Cが0.120mmで6μmとなり、その後は間隙Cが小さくなるに連れてゆっくりと低下する。
【0056】
光ディスク10の面振れ量は、20μm以下、好ましくは10μm以下であれば使用可能である。このため、0.1mm厚の可撓性ディスク10を13,000rpmで回転させて使用するこの実施例においては、間隙Cを0.125mm以下とすればよい。また、間隙Cの代わりに、差圧Pが−20Pa以下とすればよいことが判る。
【0057】
図8、9において、間隙Cの減少に伴う可撓性ディスク10の面振れ量の変化、及び差圧P、局所差圧勾配Sk、全体差圧勾配St、局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stの勾配比Sk/St、局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saの勾配比Sk/Saを観察すると、面振れ量が所定値以下となるための制御条件として、差圧Pkを−20.0Pa以下とする方法以外に、以下の制御条件を選択すればよいことが判る。
(1)局所差圧勾配Skが2500Pa/mm未満、好ましくは1500Pa/mm以下となる。
(2)局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stの勾配比Sk/Stが0.8以下、好ましくは0.2以下、さらに好ましくは0.1以下となる。
(3)局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saの勾配比Sk/Saが0.8以下、好ましくは0.2以下、さらに好ましくは0.1以下となる。
【0058】
このように、厚さが0.1mmの光ディスク10においては、差圧の正負の符号と、間隙Cに対する差圧の勾配の大きさの変化から、面振れ抑制状態を判別することが可能とである。差圧の符号と差圧の勾配と面振れ状態の定性的な関係を表1に整理する。
【0059】
【表1】
【0060】
(実施例4)
図10は、実施例1において、光ディスク10の厚さを0.1mmから0.2mmに変更した以外は、実施例1と同様にして測定及び算出したディスクと安定化板の間隙C(mm)、ディスク10の外周部(中心から59mmの位置)の間隙部分の気圧と大気圧との差圧P(Pa)、差圧Pと間隙Cの局所差圧勾配Sk(Pa/mm)、差圧Pと間隙Cの全体差圧勾配St(Pa/mm)、平均差圧勾配Sa(Pa/mm)、局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stの勾配比Sk/St、局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saとの勾配比Sk/Saの関係、及びディスクの外周部(中心から55mmの位置)の面振れ(μm)を表す表である。
【0061】
図11は、図10における光ディスク10と安定化板50の間隙C(mm)と、ディスクの外周部の間隙部分の気圧と大気圧との差圧P(Pa)、との関係を示したグラフである。
【0062】
図10、11から判るように、実施例4は、実施例1とほぼ同様の傾向を示しており、光ディスク10のディスク面と安定化板50の表面の間隙Cが狭くなると、光ディスク10の外周部の間隙部分の気圧と大気圧との差圧Pは負の値となる。そして、光ディスク10のディスク面と安定化板50の表面の間隙Cをさらに狭めると、光ディスク10の差圧Pはさらに小さくなっていく。
【0063】
図10、11に示す実施例では、差圧Pは、間隙Cが0.7mm付近から負の値となり、間隙Cが0.45mm付近までほぼ7〜50Pa/mm程度の勾配で低下していく。間隙Cが0.44mm以下になると、差圧Pは、僅かな上昇傾向に転ずる。
【0064】
一方、光ディスク10の面振れ量は、間隙Cが0.46mm以上の領域では、90μmを超えているが、0.45mm付近で急激に低下し、間隙Cが0.45mmで17μm、間隙Cが0.25mmで15μmとなり、その後は間隙Cが小さくなるに連れてゆっくりと低下し、間隙Cが0.15mmで9μmとなる。
【0065】
光ディスク10の面振れ量は、20μm以下、好ましくは10μm以下であれば使用可能である。このため、0.2mm厚の光ディスク10を7,000rpmで回転させて使用するこの実施例の場合は、間隙Cを0.45mm以下、好ましくは0.15mm以下とすればよい。また、間隙Cの代わりに、差圧Pが−8.2Pa以下となればよいことが判る。
【0066】
図10、11において、間隙Cの減少に伴う光ディスク10の面振れ量の変化、及び差圧P、局所差圧勾配Sk、全体差圧勾配St、局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stの勾配比Sk/St、局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saの勾配比Sk/Saを観察すると、面振れが所定値以下となるための制御条件として、差圧Pkを−7.9Pa以下とする方法以外に、以下の制御条件を選択すればよいことが判る。
(1)局所差圧勾配Skが7.0Pa/mm未満、好ましくは0.0Pa/mm以下となる。
(2)局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stの勾配比Sk/Stが0.5未満、好ましくは0.0以下となる。
(3)局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saの勾配比Sk/Saが0.6以下、好ましくは0.0以下となる。
【0067】
(実施例5)
図12は、実施例4において、光ディスク10を回転数7,000rpmから10,000rpmに変更して回転させた以外は、実施例4と同様にして測定及び算出したディスクと安定化板の間隙C(mm)、ディスク10の外周部(中心から59mmの位置)の間隙部分の気圧と大気圧との差圧P(Pa)、差圧Pと間隙Cの局所差圧勾配Sk(Pa/mm)、差圧Pと間隙Cの全体差圧勾配St(Pa/mm)、平均差圧勾配Sa(Pa/mm)、局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stの勾配比Sk/St、局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saとの勾配比Sk/Saの関係、及びディスクの外周部(中心から55mmの位置)の面振れ(μm)を表す表である。
【0068】
図13は、図12における光ディスク10と安定化板50の間隙C(mm)と、ディスクの外周部の間隙部分の気圧と大気圧との差圧P(Pa)、との関係を示したグラフである。
【0069】
図12、13から判るように、実施例5は、実施例4とほぼ同様の傾向を示しており、光ディスク10のディスク面と安定化板50の表面の間隙Cが狭くなると、光ディスク10の外周部の間隙部分の気圧と大気圧との差圧Pは負の値となる。そして、光ディスク10のディスク面と安定化板50の表面の間隙Cをさらに狭めると、光ディスク10の差圧Pは小さくなっていく。しかし、光ディスク10の面振れ量が十分小さくなると差圧Pは若干上昇する傾向にある。図12、13に示す例では、差圧Pは、間隙Cが0.5mm付近から負の値となり、間隙Cが0.33mm付近まで20〜380Pa/mm程度の勾配で低下していく。間隙Cが0.33〜0.20mmにおいては、差圧Pは、少しずつ上昇する傾向にある。
【0070】
一方、光ディスク10の面振れ量は、間隙Cが0.34mm以上の領域では、100μmを超えているが、間隙Cが0.33mmで18μm、その後は間隙Cが小さくなるに連れてゆっくりと低下し、間隙Cが0.25mm以下で10μm以下となる。
【0071】
光ディスク10の面振れ量は、20μm以下、好ましくは10μm以下であれば使用可能である。このため、0.2mm厚の光ディスク10を10,000rpmで回転させて使用するこの実施例においては、間隙Cを0.33mm以下、好ましくは0.25mm以下とすればよい。また、間隙Cの代わりに、差圧Pが−15.7Pa以下となればよいことが判る。
【0072】
図12、13において、間隙Cの減少に伴う可撓性ディスク10の面振れ量の変化、及び差圧P、局所差圧勾配Sk、全体差圧勾配St、局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stの勾配比Sk/St、局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saの勾配比Sk/Saを観察すると、面振れが所定値以下となるための制御条件として、差圧Pkを−13Pa以下とする方法以外に、以下の制御条件を選択すればよいことが判る。
(1)局所差圧勾配Skが20Pa/mm未満、好ましくは−10Pa/mm以下、さらに好ましくは−20Pa/mm以下となる。
(2)局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stの勾配比Sk/Stが0.8未満、好ましくは−0.1以下、さらに好ましくは−0.2以下となる。
(3)局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saの勾配比Sk/Saが0.8以下、好ましくは−0.1以下、さらに好ましくは−0.2以下となる。
【0073】
(実施例6)
図14は、実施例4において、光ディスク10を回転数7,000rpmから13,000rpmに変更して回転させた以外は、実施例4と同様にして測定及び算出したディスクと安定化板の間隙C(mm)、ディスク10の外周部(中心から59mmの位置)の間隙部分の気圧と大気圧との差圧P(Pa)、差圧Pと間隙Cの局所差圧勾配Sk(Pa/mm)、差圧Pと間隙Cの全体差圧勾配St(Pa/mm)、平均差圧勾配Sa(Pa/mm)、局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stの勾配比Sk/St、局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saとの勾配比Sk/Saの関係、及びディスクの外周部(中心から55mmの位置)の面振れ(μm)を表す表である。
【0074】
図15は、図14における光ディスク10と安定化板50の間隙C(mm)と、ディスクの外周部の間隙部分の気圧と大気圧との差圧P(Pa)、との関係を示したグラフである。
【0075】
図14、15から判るように、実施例6は、実施例4とほぼ同様の傾向を示しており、光ディスク10のディスク面と安定化板50の表面の間隙Cが狭くなると、光ディスク10の外周部の間隙部分の気圧と大気圧との差圧Pは負の値となる。そして、光ディスク10のディスク面と安定化板50の表面の間隙Cをさらに狭めると、光ディスク10の差圧Pは小さくなっていく。図14、15に示す実施例では、差圧Pは、間隙Cが0.3mm付近から負の値となり、間隙Cが0.25mm付近まで100〜700Pa/mm程度の勾配で低下していく。間隙Cが0.25〜0.15mmにおいては、差圧Pは、変わらないか若干上昇する傾向にある。
【0076】
一方、光ディスク10の面振れ量は、間隙Cが0.26mm以上の領域では、95μm以上であるが、間隙Cが0.25mmで12μm、0.24mmで10μm、その後は間隙Cが小さくなるに連れてゆっくりと低下する。
【0077】
光ディスク10の面振れ量は、20μm以下、好ましくは10μm以下であれば使用可能である。このため、0.2mm厚の光ディスク10を13,000rpmで回転させて使用するこの実施例においては、間隙Cを0.25mm以下、好ましくは0.24mm以下とすればよい。また、間隙Cの代わりに、差圧Pが−26.2Pa以下となればよいことが判る。
【0078】
図14、15において、間隙Cの減少に伴う光ディスク10の面振れ量の変化、及び差圧P、局所差圧勾配Sk、全体差圧勾配St、局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stの勾配比Sk/St、局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saの勾配比Sk/Saを観察すると、面振れが所定値以下となるための制御条件として、差圧Pkを−24Pa以下とする方法以外に、以下の制御条件を選択すればよいことが判る。
(1)局所差圧勾配Skが103Pa/mm未満、好ましくは0.0Pa/mm以下となる。
(2)局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stの勾配比Sk/Stが1.6未満、好ましくは0.0以下となる。
(3)局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saの勾配比Sk/Saが1.3未満、好ましくは0.0以下となる。
【0079】
このように、ディスク厚0.2mmのディスクにおいても、間隙Cに対する差圧Pの勾配の大きさの変化から、面振れ抑制状態を判別することが可能となる。差圧Pの符号と差圧Pの勾配と面振れ状態の定性的な関係を表2に整理する。
【0080】
【表2】
【0081】
(光ディスクの駆動方法)
上記実施例1〜6の結果を踏まえて、光ディスク10の面振れ状態を抑えるための安定化板50の配置、すなわち光ディスク10と安定化板50の間隙の設定の方法を定量的に考察する。
【0082】
厚さが0.1〜0.2mm程度の可撓性ディスクでは、安定化板による高速回転中のディスクの面振れ抑制が必要である。ディスクの面振れ量は、20μm以下、好ましくは10μm以下とすることが求められる。そこで、実施例1〜6の結果を踏まえて、以下の光ディスクの駆動方法を発明した。
【0083】
光ディスクを記録・再生等に必要な所定の回転数で回転させて、面振れが発生した状態において、安定化板を所定量ずつ光ディスクに近づける。安定化板が光ディスクの表面に近づくと、光ディスクと安定化板の間隙Cがある程度狭くなった段階で、この間隙Cの気圧がディスク駆動装置周辺の大気圧より低くなる。この大気圧と間隙Cの気圧との差圧Pが負の値になる付近から、光ディスクは安定化板の影響を受けて面振れが抑制されてくる。そして、間隙Cが所定値以下となると、差圧Pも所定値以下となり、間隙Cの減少量に対する差圧Pの減少量、すなわち間隙Cに対する差圧Pの減少勾配(局所差圧勾配)も急激に低下する。この差圧勾配の急激な減少点が面振れ量が、20μm好ましくは10μm以下となる点である。そこで、間隙Cを減少させながら差圧Pを測定し、この差圧Pを基にして、光ディスクの面振れ量を所望値に制御することができる。以下に、実施例1〜6を基にして、具体的な制御方法の例を示す(図4〜15参照)。
【0084】
(1)それぞれの光ディスク、及びその記録・再生回転数毎に、この条件に対応する光ディスクの面振れ量が20μm、好ましくは10μm以下となるとき差圧Pを測定して記憶しておく。そして、光ディスクによる記録・再生を開始する前に、光ディスクを所定回転数で回転させながら、間隙Cを徐々に減少させ記録・再生条件に対応して記憶しておいた差圧P以下となったときに間隙Cを固定するように制御して記録・再生を始める。
【0085】
(2)光ディスクと安定化板の間隙Cは、間隙Cの変化に対する差圧Pの変化の勾配(局所差圧勾配Sk)が、所定値以下、好ましくは正の値から零又は負の値に変わったときの間隙C以下とすればよい。実施例1〜5において、間隙Cは好適な制御指標として光ディスクの面振れ量を制御することができる。但し、実施例3においては、局所差圧勾配Skの所定値を0とすると間隙Cを狭く制御しすぎている傾向がある。
【0086】
(3)間隙Cを狭めていくに従って、差圧Pが負になってからk回の差圧Pの測定における、測定点毎の平均差圧勾配Saに対する局所差圧勾配Skの勾配比Sk/Saが、0.1以下、好ましくは0.15未満となる間隙Cを選べば、ディスクの面振れ量は20μm以下に制御することができる。ほとんどの場合は、勾配比Sk/Saが0.5以下となれば問題ないが、厚さ0.1mmの光ディスクの場合実施例1に示すように、勾配比Sk/Saが0.154でもディスクの面振れ量が100μm以上となることがある。しかし、厚さ0.2mmの光ディスクの場合であれば、勾配比Sk/Saが0.5以下、好ましくは0.0以下となるように制御すれば十分である。
【0087】
(4)差圧Pが負になってからk回目の測定点における局所差圧勾配Skの値の、差圧Pが負になってからk回目の測定点までの全体差圧勾配Stに対する勾配比Sk/Stを指標として制御することもできる。前記の勾配比Sk/Saと大きくは相違しないが、算出計算が簡単なので、制御における記憶装置や計算装置を簡略にしたり、演算速度を速める効果がある。勾配比Sk/Stが、0.1以下、好ましくは0.15未満となったときの間隙Cを選べば、ディスクの面振れ量は20μm以下に制御することができる。制御のための指標を勾配比Sk/Stとした場合も、厚さ0.1mmの光ディスクの場合実施例1に示すように、勾配比Sk/Stが0.15でもディスクの面振れ量が100μm以上となることがある。しかし、厚さ0.2mmの光ディスクの場合であれば、勾配比Sk/Stが0.5以下、好ましくは0.0以下となるように制御すれば十分である。
【0088】
(可撓性ディスク駆動方法の実施形態)
(実施形態1)差圧Pkを指標とする可撓性ディスク駆動方法
差圧Pkを制御指標として、所定回転数で回転している可撓性ディスク(光ディスク)の面振れを所定値以下に安定させるには、安定化板50を光ディスク10に近づけるに従って、差圧Pと光ディスク10の面振れ量が小さくなることを利用する。但し、差圧Pと光ディスク10の面振れ量の定量的な関係は、光ディスク10の厚さ、記録・再生時の回転数(記録・再生条件)により異なるので、それぞれの記録・再生条件に対応した好適な差圧Pを事前に測定しておく。最初に、所定の光ディスク10を所定の回転数で回転させながら、間隙Cを初期状態(光ディスク10に対して安定化板50の影響がない程度に十分隔離された状態)から徐々に狭めていく。そして、図4に示したように、間隙Cを所定量変化させる毎に、差圧Pと面振れ量を測定する。面振れ量が20μm以下、好ましくは10μm以下となった時点の差圧Pを、この場合の面振れ量制御する臨界値として光ディスク装置の制御部に記憶しておく。
【0089】
光ディスク10に記憶・再生を行う場合は、差圧Pが光ディスク装置の制御部に記憶しておいた差圧となった時点の間隙C以下の間隙の幅で固定するように昇降部70を制御すればよい。例えば、実施例1で示した、0.1mm厚の光ディスク10を7,000rpmで回転させて記録・再生する場合で説明すれば、臨界値としての差圧Pは、−0.4Paとすればよい。
【0090】
この実施形態においては、最初に光ディスク10、及び記録・再生条件に対応して好適な差圧Pを求めておけば、同じ光ディスク10、及び記録・再生条件の基では、間隙Cを狭めながら差圧Pを制御するだけで、光ディスク10を好適な面振れ量に抑制することができる。
【0091】
(実施形態2)局所差圧勾配Skを指標とする可撓性ディスク駆動方法
局所差圧勾配Skを指標として、所定回転数で回転している可撓性ディスク(光ディスク)の面振れを所定値以下に安定させるには、安定化板50を光ディスク10に近づけるに従って光ディスク10の面振れ量が小さくなることを利用する。すなわち、光ディスク10のディスク面と安定化板50の表面の間隙の周辺大気圧との差圧Pを測定しながら、所定回転数で回転している光ディスク10に安定化板50を近づけていき、安定化板50のそれぞれの位置における差圧Pの間隙Cの変化に対する変化量(局所差圧勾配Sk)を算出し、その局所差圧勾配Skが所定値以下となったときを光ディスク10の面振れが所望値(通常は20mm以下)となり、光ディスク10は安定した記録・再生状態に制御される。
【0092】
なお、実施例において説明したように、局所差圧勾配Skの所定値は、光ディスク10の厚さ、回転数などの使用状態により大きく変化するので、それぞれの光ディスク10の種類や使用状態に対応して局所差圧勾配Skを測定して求め、これを利用すれば、光ディスクの種類や回転数毎の緻密な面振れ抑制ができる。本実施形態では、使用した光ディスク装置について全ての光ディスク10とその使用状態に対して適用可能な局所差圧勾配Skにより光ディスク10の面ブレを安定化させる駆動方法を示す。
【0093】
図16は、回転している光ディスク10の安定化板50との間隙Ck(基準の間隙C0から回間隙の幅をk回減少させたときの間隙の幅)の変化量(ΔCk=Ck−1−Ck)に対する、大気圧と間隙Ckにおける気圧の差である差圧Pkの変化量(ΔPk=Pk−1−Pk)の比である局所差圧勾配Sk(=(Pk−1−Pk)/(Ck−1−Ck))を指標として、この局所差圧勾配Skが零又は負の値となったことを確かめて、光ディスク10の記録又は再生を行う可撓性ディスク駆動方法を示すフロー図である。
【0094】
局所差圧勾配Skを指標とする可撓性ディスク駆動方法について、図1〜3を参照しながら、図16に従って説明する。光ディスク装置100に光ディスク10の記録又は再生の動作の開始が指示されると、スピンドルモータ30が回転し、ディスク装着部40に装着されている光ディスク10が所定の回転数で回転する(ステップS101)。
【0095】
光ディスク10の回転数が所定値で安定したら、制御装置であるCPU90は、カウンタkを初期化して0とする(ステップS103)。光ディスク10のディスク面から隔離して配置されていた安定化板50を、ステッピングモータ等を有する昇降部70により所定の幅だけ光ディスク10のディスク面に接近させる(ステップS105)。安定化板50が所定量接近(降下)させたら、光ディスク10と安定化板50の間隙Cの幅(mm)を測定又は間隙Cの移動前の幅を基準値(例えば1.0mm)として相対的な間隙Cを算出し(ステップS107)、差圧計(差圧センサ)60により間隙部分の大気圧に対する差圧P(Pa)を測定する(ステップS109)。なお、昇降部70は、差圧Pが最初から負の値にならない程度に、安定化板50の位置を光ディスク10から適度な間隔で隔離しておく。
【0096】
差圧Pの値が負でなければ(ステップS111のN)、差圧P及び間隙Cの値を、それぞれP0、C0として、メモリ91のメモリ領域MP0、MC0に格納し(ステップS113)、ステップS105に戻り、ステップS105からステップS111を繰り返す。
【0097】
差圧Pの値が負になれば(ステップS111のY)、カウンタkの値を1つ増加させてk=1として、差圧P及び間隙Cの値を、それぞれ差圧P1、間隙C1とする(ステップS115)。
【0098】
そして、生成した差圧P1、間隙C1を、カウンタkに対応する差圧Pk、間隙Ckとして、それぞれメモリ91のメモリ領域MPk、MCkに格納する(ステップS117)。
【0099】
昇降部70を所定量降下させ(ステップS119)、カウンタkの値を1つ増加させて(k+1)とし(ステップS121)、間隙の幅Ckを算出又は測定する(ステップS123)。差圧計60により差圧Pを測定してPkとする(ステップS125)。
【0100】
算出又は測定した間隙の値Ckとメモリ91に記憶していた間隙C(k−1)、差圧Pkとメモリ91に記憶していたP(k−1)から局所差圧勾配Sk(=(P(k−1)−Pk)/(C(k−1)−Ck))を算出する(ステップS127)。
【0101】
局所差圧勾配Skが零又は負であれば(ステップS129のY)、光ディスク10は面振れ量が所定内(例えば、20μm以内)の領域にあるので、光ディスク装置は、そのまま光ディスク10への情報の記録又は再生を開始する(ステップS131)。そして、記録又は再生を繰り返し、所定の記録又は再生が完了したら(ステップS133のY)、スピンドルモータ30を停止する(ステップS135)と共に昇降部70を上昇させて(ステップS137)、安定化板50を光ディスク装置の運転開始前の元の位置に戻し、光ディスク装置の運転を終了する。
【0102】
局所差圧勾配Skが正の場合(ステップS129のN)は、ステップS117に戻り、新しいカウンタ値kに対する差圧Pk、間隙Ckを、それぞれメモリ91のメモリ領域MPk、MCkに格納する(ステップS117)。そして、昇降部70を所定量降下させ(ステップS119)、さらに次のステップへと進んでいく。昇降部70の降下幅の所定量は、間隙Ckの値又はカウンタkの値に応じて別々に設定されていてもよい。
【0103】
なお、ステップS127においては、局所差圧勾配Skの値の臨界値を零としたが、光ディスク10の厚さや回転数などが特定されている場合は、それぞれの条件に応じて他の値とすることもできる。この実施形態の特徴のひとつは、間隙Cの絶対値の測定や、面振れ量の測定が不用である。このため、光デスク装置の制御部を簡単なものとすることができる。
【0104】
また、光ディスク10の種類及びその回転数が特定されていれば、最初にこの実施形態で測定した局所差圧勾配Skが臨界値零以下となったときの差圧Pkを記憶しておき、次回の記憶・再生動作においては、ステップS103からステップS129までの工程に替えて、間隙Cを減少させていき、記憶しておいた差圧Pk以下になった時点の間隙Cを一定又はそれ以下に制御して(昇降部70の位置を固定して)、記憶・再生動作をすることもできる。
【0105】
(実施形態3)局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saとの勾配比Sk/Saを指標とする可撓性ディスク駆動方法
局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saとの勾配比Sk/Saを指標として、所定回転数で回転している可撓性ディスク(光ディスク)の面振れを所定値以下に安定させるには、安定化板50を光ディスク10に近づけるに従って光ディスク10の面ブレ量の変化量(差圧勾配)も小さくなることを利用する。すなわち、光ディスク10のディスク面と安定化板50の表面の間隙80における気圧の大気圧との差圧Pを測定しながら、所定回転数で回転している光ディスク10に安定化板50を近づけていき、それぞれの安定化板50の位置における差圧Pの間隙(の幅)Cに対する変化量(局所差圧勾配Sk)を算出し、その局所差圧勾配Skのそれまで安定化板50を移動させてきた間全体(k=1〜k)の局所差圧勾配Skの平均値(平均差圧勾配Sa)に対する比率(勾配比=(局所差圧勾配Sk)/(平均差圧勾配Sa))が所定値以下となったときを光ディスク10の面振れが所望値(通常は20mm以下)となり、光ディスク10は安定した記録・再生状態となることを利用して制御する。
【0106】
なお、実施例において説明したように、勾配比Sk/Saの所定値は、光ディスク装置、光ディスク10の厚さ、回転数などの使用状態により変化するので、それぞれの光ディスク10の使用状態に対応して勾配比Sk/Saを測定して求め、これを利用すればよい。本実施形態では、使用した光ディスク装置について全ての光ディスク10の使用状態に対して適用可能な勾配比Sk/Saにより光ディスク10の面振れを安定化させる駆動方法を示す。
【0107】
図17は、回転している光ディスク10と安定化板50の間隙Ckを小さくしていったときに、差圧Pが負になった時点(k=1)からk個の間隙Ckに対する局所差圧勾配Sk(=(Pk−1−Pk)/(Ck−1−Ck))を算出し、差圧Pが負になった時点からのk個の局所差圧勾配S1からSkまでの平均値である平均値局所差圧勾配Saを求め、間隙Ckにおける勾配比Sk/Saを制御指標として、勾配比Sk/Saが所定値以下となったら光ディスク10の記録又は再生を行う可撓性ディスク駆動方法を示すフロー図である。
【0108】
勾配比Sk/Saを指標とする可撓性ディスク駆動方法について、図1〜3を参照しながら、図17に従って説明する。本実施形態のステップS201からステップS227までは、実施形態1で説明したステップS101からステップS127までと同様であるので、実施形態1を参照することで説明を省略する。
【0109】
本実施形態においては、ステップS227で算出した局所差圧勾配Skをメモリ領域MSkに格納し(ステップS229)、メモリ領域MSk(k=1〜k)に格納してあった局所差圧勾配Sk(k=1〜k)から平均差圧勾配Saを算出する(ステップS231)。平均差圧勾配Saは、カウンタkが1からkまでの局所差圧勾配Skの平均値であり、算出式は既に説明した式(3)を参照すればよい。
【0110】
局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saから勾配比Sk/Saを算出し、この勾配比Sk/Saが0.1以下であれば(ステップS233のY)、光ディスク10の面振れは所定値以内であり、光ディスク装置は記録・再生操作を実行する。勾配比Sk/Saが0.1を超えていれば(ステップS233のN)、光ディスク10の面振れは所定値を超えているとみなして、ステップS217に戻り、ステップS217からステップS233のステップを繰り返す。
【0111】
ステップS235からステップS241までの光ディスク10の記録・再生及び光ディスク装置の停止操作は、実施形態1のステップS131からステップS137までと同様であるので、実施形態1を参照すればよいので説明を省略する。
【0112】
なお、ステップS233においては、勾配比Sk/Saの値の臨界値を0.1としたが、ディスク駆動装置、光ディスク10の厚さや回転数などの条件が特定されている場合は、それぞれの条件に応じて、他の値、例えば0.0、0.2、0.5などとすることもできる。この実施形態においても、間隙Cの絶対値の測定や、面振れ量の測定が不用である。このため、光デスク装置の制御部を簡単なものとすることができる。
【0113】
また、光ディスク10の種類及びその回転数が特定されていれば、最初にこの実施形態で算出した勾配比Sk/Saの値が臨界値、例えば0.1以下となったときの差圧Pkを記憶しておき、次回の記憶・再生動作においては、ステップS203からステップS233までの工程に替えて、間隙Cを減少させていき、記憶しておいた差圧Pk以下になった時点の間隙Cを一定又はそれ以下に制御して(昇降部70の位置を固定して)、記憶・再生動作をすることもできる。
【0114】
(実施形態4)局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stとの勾配比Sk/Stを指標とする可撓性ディスク駆動方法
局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stとの勾配比Sk/Stを指標として、所定回転数で回転している可撓性ディスク(光ディスク)の面振れを所定値以下に安定させる光ディスクの駆動方法は、実施形態2で説明した局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saとの勾配比Sk/Saを制御指標とする光ディスクの駆動方法と基本的考え方は同じである。この実施形態では、実施形態2で利用した平均差圧勾配Saに替えて全体差圧勾配Stを利用する点が異なっている。この実施形態では、局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stとの勾配比Sk/Stが所定値以下となったときを光ディスク10の面振れが所望値(通常は20mm以下)となり、光ディスク10は安定した記録・再生状態となることを利用して制御する。
【0115】
なお、既に実施例において説明したように、勾配比Sk/Stの所定値は、光ディスク10の厚さ、回転数などの使用状態(条件)により変化するので、それぞれの光ディスク10の使用状態等に対応して勾配比Sk/Stを測定して求め、これを利用すればよい。本実施形態では、使用した光ディスク装置について全ての光ディスク10の使用状態(条件)に対して適用可能な勾配比Sk/Stにより光ディスク10の面ブレを安定化させる駆動方法を示す。
【0116】
図18は、回転している光ディスク10と安定化板50の間隙90を、比較的離れた状態から徐々に小さくしていったときに、差圧Pが零又は正の値から負の値変化する直前の時点(カウンタk=0)の間隙(の幅)C0に対応する差圧P0を基準として、安定化板50を光ディスク10に徐々に近づけていき、間隙をk回変化させた場合、カウンタkが1からkまでの局所差圧勾配Sk(=(Pk−1−Pk)/(Ck−1−Ck))と全体差圧勾配St(=(P0−Pk)/(C0−Ck))を算出し、局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stの勾配比Sk/Stを制御指標として、勾配比Sk/Stが所定値以下となったら光ディスク10の記録又は再生を行う可撓性ディスク駆動方法を示すフロー図である。
【0117】
勾配比Sk/Stを指標とする可撓性ディスク駆動方法について、図1〜3を参照しながら、及び図18に従って説明する。本実施形態のステップS311からステップS325までは、実施形態2で説明したステップS211からステップS225までと同様であるので、説明は実施形態2を参照することとし省略する。
【0118】
本実施形態においては、ステップS327において、算出若しくは測定してある、又は記憶している間隙Ck、C0、差圧Pk、P0などを基にして、局所差圧勾配Sk(=(Pk−1−Pk)/(Ck−1−Ck))、全体差圧勾配St(=(P0−Pk)/(C0−Ck))を算出する(ステップS327)。
【0119】
局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stから勾配比Sk/Stを算出し、この勾配比Sk/Stが0.1以下であれば(ステップS329のY)、光ディスク10の面振れは所定値以内であり、記録・再生操作を実行する。勾配比Sk/Stが0.1を超えていれば(ステップS329のN)、光ディスク10の面振れは所定値を超えているとみなして、ステップS317に戻り、ステップS317からステップS329のステップを繰り返す。
【0120】
ステップS331からステップS337までの光ディスク10の記録・再生及び光ディスク装置の停止操作は、実施形態2のステップS235からステップS241までと同様であるので、それを参照して説明を省略する。
【0121】
なお、ステップS331においては、勾配比Sk/Stの値の臨界値を0.1としたが、光ディスク10の厚さや回転数などが特定されている場合は他の値、例えば0、0.2、0.5などとすることもできる。この実施形態においても、間隙Cの絶対値の測定や、面振れ量の測定が不用である。このため、光デスク装置の制御部を簡単なものとすることができる。
【0122】
また、光ディスク10の種類及びその回転数が特定されていれば、最初にこの実施形態で算出した勾配比Sk/Stの値が臨界値、例えば0.1以下となったときの差圧Pkを記憶しておき、次回の記憶・再生動作においては、ステップS303からステップS329までの工程に替えて、間隙Cを減少させていき、記憶しておいた差圧Pk以下になった時点の間隙Cを一定又はそれ以下に制御して(昇降部70の位置を固定して)、記憶・再生動作をすることもできる。
【0123】
実施形態1〜3において、光ディスク10への記録・再生を実行するか否かの制御指標(局所差圧勾配Sk、勾配比Sk/Sa、又は勾配比Sk/St)の臨界値は、実施例1〜6に示すように、光ディスク10の面振れ量が20mm以下となるときの間隙(の幅)Cの臨界値に対応する値より小さい場合もある。しかし、光ディスク10の面振れ量は20mm以下を満足しており、間隙Cが臨界値より大きく離れることはないので、実用上は問題がなく、むしろ測定精度等によるバラツキを吸収する余裕と考えることもできる。
【符号の説明】
【0124】
10 :可撓性ディスク(光ディスク、ディスク)
20 :光ピックアップ
21 :レーザ制御回路
22 :駆動制御回路
30 :スピンドルモータ
31 :モータードライバ
40 :ディスク装着部
50 :安定化板(安定化部材)
60 :差圧計(差圧センサ)
61 :測定回路
70 :昇降部
71 :昇降制御回路
80 :ディスク面と安定化板の間隙(間隙の幅Cを表す場合もある)
90 :CPU(演算装置)
91 :インターフェース
92 :メモリ
100 :光ディスク装置(ディスク駆動装置)
200 :上位装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク駆動装置及びディスク駆動方法に関する、詳しくは、可撓性を有するシート状のディスクに対して情報の記録及び再生の少なくとも一方を行うディスク駆動装置及びディスク駆動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報のデジタル化に伴い、光ディスクの大容量化、高密度化、高速記録・再生に対する要求が高まっている。これに対して、低コストで情報の大容量化、高密度記録が可能な光ディスクとして、可撓性を有する厚さ0.1〜0.2mm程度のシート状の光ディスクの開発が進められている。
【0003】
本発明の説明においては、光ディスクを可撓性を有するシート状のディスクの代表例としてディスク駆動装置及びディスク駆動方法の説明をするが、本発明が対象とする記録/再生装置に用いられる可撓性を有するシート状のディスクは、相変化メモリ、光磁気メモリ、ホログラムメモリなどのディスク状の記録ディスクで活用するもの全てを対象にし、特に光ディスクに限定するものではない。
【0004】
可撓性を有するシート状のディスク(光ディスク、又は単にディスクともいう。)をスピンドルモータに固定して回転させ、空気力学的な力を作用させる安定化板(安定化部材の一態様)により、ディスクの高速回転中の面振れを抑制して安定化させ、記録/再生ヘッドの走査によりディスクに情報の記録及び/又は再生を行う記録/再生装置(光ディスク装置)において、安定化板を少なくとも記録ディスクの記録領域を覆う平板状とし、ディスクのディスク面と安定化板とのディスク回転軸方向の相対距離を調整する位置調整手段を備えた記録/再生装置が知られている。
【0005】
例えば、特許文献1に開示されている記録/再生方法では、可撓性ディスクと安定化板との相対距離を調整する位置調整手段を備え、ディスクの回転数に対する前記相対位置の調整パターンを装置内に記憶し、ディスクの回転数に応じて相対位置の調整を行う手法が示されている。
【0006】
また、様々なディスクの基材や記録膜、保護膜の構成に対する前記相対位置の調整パターンも同様に装置内に記憶し、ディスクの構成に応じて相対位置の調整を行う手法が示されている。
【0007】
さらに、ディスク外周部の半径方向チルト角を検出し、チルト角が零近傍となるように前記相対位置を調整することで、調整パターンを記憶することなく、相対位置の調整を行う手法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−107699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
可撓性を有するシート状のディスク(以下では、便宜上、「可撓性ディスク」、「光ディスク」、又は「ディスク」と略述することがある。)に対して、情報の記録あるいは再生を行う光ディスク装置では、可撓性ディスクのディスク面に近接して安定化板を配置することにより、安定化板と可撓性ディスクとの間に可撓性ディスクが回転することによって生じる空気流が影響して可撓性ディスクの面振れを抑制している。この場合、この安定化板が面振れを抑制する効果を発揮するためには、可撓性ディスクと安定化板との距離を所定の範囲内に保つ必要がある。
【0010】
しかしながら、前記可撓性ディスクと安定化板との適切な距離は、ディスク回転数や、ディスクの基材、記録膜、保護膜の構成等の機械特性などによって変化する。このため、安定化板が面振れを抑制する効果を発揮する可撓性ディスクと安定化板との距離を、所定の範囲に自動的に調整するためには、面振れが抑制されているか否かを調べる手段が必要であった。
【0011】
面振れの抑制の有無を調べる手段として、ピックアップレンズのフォーカスエラー信号を利用する方法が知られている。従来のCDやDVDなどの光ディスク装置は、対物レンズの開口数(NA)が小さく、対物レンズとディスク記録面の距離が大きいので両者が接触する危険は少ない。しかし、大容量、高密度化されたBlu-ray Discに代表される光ディスク装置などは、対物レンズのNAが大きく、対物レンズとディスク記録面の距離が小さいため、ディスクの面振れが大きいと両者が接触してピックアップ故障の原因となる。このため、Blu-ray Disc装置に代表される対物レンズのNAが大きい光ディスク装置では、フォーカスエラー信号を用いて面振れが抑制されている状態の有無を調べることは困難である。
【0012】
また、特許文献1に開示されている可撓性ディスクの構成に対する相対位置の調整パターンを装置内に記憶する方法は、あらかじめ構成を記憶している可撓性ディスク以外の可撓性ディスクに対しては、調整パターンが不明のため相対位置の調整が達成できない。また、特許文献1に示されている、ディスク外周部の半径方向チルト角を検出し、チルト角が零近傍となるように前記相対位置を調整する方法では、チルト角検出のための装置が必要となる。一般的に非接触でディスクのチルト角を検出可能な装置は高価なため、ディスク駆動装置の高コスト化を招来するという問題があった。
【0013】
本発明は、上記問題点を踏まえ、可撓性ディスクの情報記録又は再生時に発生するディスクの回転に伴う面振れを、情報記録又は再生可能な状態に簡便に制御するディスク駆動装置又はディスク駆動方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、可撓性を有するシート状のディスクに対して情報の再生及び記録の少なくとも一方を行うために、前記ディスクを回転させるディスク駆動装置であって、前記ディスクのディスク面に対向して近接し、前記ディスクの面振れを抑制する安定化部材と、前記安定化部材の表面と、回転している前記ディスクのディスク面とを所定幅毎に近接させる近接部材と、前記安定化部材の表面と前記ディスク面との間隙部分の気圧の周辺大気圧に対する差圧を検出する差圧計と、前記近接部材により、前記安定化部材の表面と前記ディスク面とを近接させた際の、前記差圧計により検出された差圧を基に、前記安定化部材の表面と前記ディスク面との間隙部分の幅を制御する制御部と、を備えることを特徴とするディスク駆動装置である。
【0015】
好ましい本発明は、前記制御部は、前記安定化部材の表面と前記ディスク面とを近接させた際の、前記間隙部分の幅(C)の微小変化(ΔC)に対する前記差圧(P)の微小変化(ΔP)の割合である局所差圧勾配(Sk=ΔP/ΔC)を基に、前記間隙部分の幅を制御することを特徴とする前記ディスク駆動装置である。
【0016】
好ましい本発明は、前記制御部は、前記間隙部分の幅を、前記局所差圧勾配(Sk)が0以下になったときの前記間隙部分の幅以下に制御することを特徴とする前記ディスク駆動装置である。
【0017】
好ましい本発明は、前記制御部は、前記安定化部材の表面と前記ディスク面とを近接させた際の、前記間隙部分の幅(C)の微小変化に対する前記差圧(P)の微小変化の割合である局所差圧勾配(Sk)と、前記間隙部分の幅(C)の変化全体に対する前記差圧(P)の変化の割合である全体差圧勾配(St)との勾配比(Sk)/(St)、又は前記局所差圧勾配(Sk)と、前記間隙部分の幅の変化領域全体における各部分の局所差圧勾配(Sk)の平均値である平均差圧勾配(Sa)との勾配比(Sk)/(Sa)を基に前記間隙部分の幅を制御することを特徴とする前記ディスク駆動装置である。
【0018】
好ましい本発明は、前記制御部は、前記間隙部分の幅を前記局所差圧勾配(Sk)と前記全体差圧勾配(St)との勾配比(Sk)/(St)、又は前記局所差圧勾配(Sk)と前記平均差圧勾配(Sa)との勾配比(Sk)/(Sa)が0.1以下となったときの前記間隙部分の幅以下に制御することを特徴とする前記ディスク駆動装置である。
である。
【0019】
本発明は、可撓性を有するシート状のディスクに対して情報の再生及び記録の少なくとも一方を行うために前記ディスクを回転させるディスク駆動方法であって、前記ディスクの面振れを抑制する安定化部材と前記ディスクのディスク面とを対向させながら近接させる近接工程と、周辺の大気圧と、前記安定化部材と前記ディスク面との間隙部分の気圧との差圧を検出する差圧検出工程と、検出された前記差圧に基づいて、前記安定化部材と前記ディスク面との間隙の幅を制御する制御工程と、を有することを特徴とするディスク駆動方法である。
【0020】
好ましい本発明は、前記近接工程において、前記安定化部材と回転している前記ディスクの間隙を所定幅ずつ減少させていき、前記制御工程において、差圧測定時における前記差圧の前記間隙の幅の変化に対する変化割合を算出し、前記間隙の幅を前記差圧の変化割合が所定値以下となったときの前記間隙の幅以下に制御することを特徴とする前記ディスク駆動方法である。
【0021】
好ましい本発明は、前記近接工程において、前記安定化部材と回転している前記ディスクの間隙を減少させていき、前記制御工程において、差圧測定時における前記差圧の前記間隙の幅の減少量に対する減少割合が、前記近接工程全体における前記差圧の前記間隙の幅の減少量に対する減少割合に対し、所定値以下となったときの前記間隙の幅以下を、前記ディスクの面振れ抑制領域として前記間隙を制御することを特徴とする前記ディスク駆動方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、可撓性ディスクの情報記録又は再生時に発生しやすい、ディスクの回転に伴う面振れを情報記録又は再生可能な状態に簡便に制御するディスク駆動装置又はディスク駆動方法を提供することができる。
【0023】
例えば、本発明によれば、可撓性ディスクのチルト角を検出する装置を用いずに、ディスクの面振れが情報記録又は再生可能な状態に抑制されている状態と、面振れ量が情報記録又は再生可能な状態以上に増大している状態とを容易に経済的に判別することができる。そして、本発明によれば、ディスクの形状、構成や回転数に依存せず、面振れ量を情報記録又は再生可能な状態に制御し、安定した記録又は再生を実現するディスク駆動装置又はディスク駆動方法を提供することができる。さらに、ディスクの形状、構成や回転数が特定されれば、より厳密に情報記録又は再生可能な状態に面振れ量を制御し、安定した記録又は再生を実現するディスク駆動装置又はディスク駆動方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係るディスク駆動装置を含む光ディスク装置の構成を表す断面模式図である。
【図2】図1に示した光ディスク装置の安定化板の平面図である。
【図3】本発明の実施形態例に係る光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
【図4】外径120mm、厚さ0.1mmの光ディスクを、ディスク駆動装置で回転数7,000rpmで回転させた際の、カウンタのカウント値kに対応するディスクと安定化板の間隙部分の幅(間隙C(mm))と、ディスクの外周付近(中心から59mmの位置)の間隙部分の気圧と装置周辺の大気圧との差圧P(Pa)、差圧Pと間隙Cの局所差圧勾配Sk(Pa/mm)、差圧Pと間隙Cの全体差圧勾配St(Pa/mm)、差圧Pと間隙Cの平均差圧勾配Sa(Pa/mm)、勾配比Sk/St、勾配比Sk/Sa及びディスクの外周部(中心から55mmの位置)の面振れ(μm)の関係を表す表である。
【図5】図4における、ディスクと安定化板との間隙C(mm)と、ディスクの外周付近の間隙部分の気圧と装置周辺の大気圧との差圧P(Pa)、との関係を示すグラフである。
【図6】外径120mm、厚さ0.1mmの光ディスクを、ディスク駆動装置で回転数10,000rpmで回転させた際の、カウンタのカウント値kに対応するディスクと安定化板の間隙部分の幅(間隙C(mm))と、ディスクの外周付近(中心から59mmの位置)の間隙部分の気圧と装置周辺の大気圧との差圧P(Pa)、差圧Pと間隙Cの局所差圧勾配Sk(Pa/mm)、差圧Pと間隙Cの全体差圧勾配St(Pa/mm)、差圧Pと間隙Cの平均差圧勾配Sa(Pa/mm)、勾配比Sk/St、勾配比Sk/Sa及びディスクの外周部(中心から55mmの位置)の面振れ(μm)の関係を表す表である。
【図7】図6における、ディスクと安定化板の間隙C(mm)と、ディスクの外周付近の間隙部分の気圧と装置周辺の大気圧との差圧P(Pa)、との関係を示すグラフである。
【図8】外径120mm、厚さ0.1mmの光ディスクを、ディスク駆動装置で回転数13,000rpmで回転させた際の、カウンタのカウント値kに対応するディスクと安定化板の間隙部分の幅(間隙C(mm))と、ディスクの外周付近(中心から59mmの位置)の間隙部分の気圧と装置周辺の大気圧との差圧P(Pa)、差圧Pと間隙Cの局所差圧勾配Sk(Pa/mm)、差圧Pと間隙Cの全体差圧勾配St(Pa/mm)、差圧Pと間隙Cの平均差圧勾配Sa(Pa/mm)、勾配比Sk/St、勾配比Sk/Sa及びディスクの外周部(中心から55mmの位置)の面振れ(μm)の関係を表す表である。
【図9】図8における、ディスクと安定化板の間隙C(mm)と、ディスクの外周付近の間隙部分の気圧と装置周辺の大気圧との差圧P(Pa)、との関係を示すグラフである。
【図10】外径120mm、厚さ0.2mmの光ディスクを、ディスク駆動装置で回転数7,000rpmで回転させた際の、カウンタのカウント値kに対応するディスクと安定化板の間隙部分の幅(間隙C(mm))と、ディスクの外周付近(中心から59mmの位置)の間隙部分の気圧と装置周辺の大気圧との差圧P(Pa)、差圧Pと間隙Cの局所差圧勾配Sk(Pa/mm)、差圧Pと間隙Cの全体差圧勾配St(Pa/mm)、差圧Pと間隙Cの平均差圧勾配Sa(Pa/mm)、勾配比Sk/St、勾配比Sk/Sa及びディスクの外周部(中心から55mmの位置)の面振れ(μm)の関係を表す表である。
【図11】図10における、ディスクと安定化板の間隙C(mm)と、ディスクの外周付近の間隙部分の気圧と大気圧との差圧P(Pa)、との関係を示すグラフである。
【図12】外径120mm、厚さ0.2mmの光ディスクを、ディスク駆動装置で回転数10,000rpmで回転させた際の、カウンタのカウント値kに対応するディスクと安定化板の間隙部分の幅(間隙C(mm))と、ディスクの外周付近(中心から59mmの位置)の間隙部分の気圧と装置周辺の大気圧との差圧P(Pa)、差圧Pと間隙Cの局所差圧勾配Sk(Pa/mm)、差圧Pと間隙Cの全体差圧勾配St(Pa/mm)、差圧Pと間隙Cの平均差圧勾配Sa(Pa/mm)、勾配比Sk/St、勾配比Sk/Sa及びディスクの外周部(中心から55mmの位置)の面振れ(μm)の関係を表す表である。
【図13】図12における、ディスクと安定化板の間隙C(mm)と、ディスクの外周付近の間隙部分の気圧と装置周辺の大気圧との差圧P(Pa)、との関係を示すグラフである。
【図14】外径120mm、厚さ0.2mmの光ディスクを、ディスク駆動装置で回転数13,000rpmで回転させた際の、カウンタのカウント値kに対応するディスクと安定化板の間隙部分の幅(間隙C(mm))と、ディスクの外周付近(中心から59mmの位置)の間隙部分の気圧と装置周辺の大気圧との差圧P(Pa)、差圧Pと間隙Cの局所差圧勾配Sk(Pa/mm)、差圧Pと間隙Cの全体差圧勾配St(Pa/mm)、差圧Pと間隙Cの平均差圧勾配Sa(Pa/mm)、勾配比Sk/St、勾配比Sk/Sa及びディスクの外周部(中心から55mmの位置)の面振れ(μm)の関係を表す表である。
【図15】図14における、ディスクと安定化板の間隙C(mm)と、ディスクの外周付近の間隙部分の気圧と装置周辺の大気圧との差圧P(Pa)、との関係を示すグラフである。
【図16】光ディスク装置が上位装置から情報記録要求又は再生要求を受けたときの、光ディスク装置が、可撓性ディスクの面振れを所定の範囲内に抑制した状態で、記録要求又は再生の動作を実行するステップを説明するためのフロー図の一例である。
【図17】光ディスク装置が上位装置から情報記録要求又は再生要求を受けたときの、光ディスク装置が、可撓性ディスクの面振れを所定の範囲内に抑制した状態で、記録要求又は再生の動作を実行するステップを説明するためのフロー図の他の例である。
【図18】光ディスク装置が上位装置から情報記録要求又は再生要求を受けたときの、光ディスク装置が、可撓性ディスクの面振れを所定の範囲内に抑制した状態で、記録要求又は再生の動作を実行するステップを説明するためのフロー図の、さらに他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(ディスク駆動装置)
図1〜3に、本発明のディスク駆動装置の一実施形態を含む光ディスク装置100を示す。図1は、本実施形態例の光ディスク装置の主要部を表す断面図である。図1において、可撓性ディスク(可撓性を有するシート状のディスク、光ディスク、ディスクということもある。)10の外径と内径はそれぞれ120mm(半径60mm)と15mm(半径7.5mm)である。ディスク装着部40は、直径が33mmであり、可撓性ディスク10を装着し、スピンドルモータ30により高速で定速回転させることができる。安定化板(安定化部材の一態様)50は、可撓性ディスク10のディスク面に対向する面が平滑なドーナツ状の円板で、回転している可撓性ディスク10と平行に配置されている。安定化板50の外径と内径は、それぞれ122mm(半径61mm)と35mm(半径17.5mm)である。昇降部(近接部材の一態様)70は、安定化板50を昇降させることができる。特に、昇降部70は、所定量ずつ制御しながら安定化板50を、回転している可撓性ディスク10の表面に対向するように配置して安定化板50と可撓性ディスク10とを徐々に近接させることができる。
【0026】
なお、可撓性ディスク10の表面と安定化板50の可撓性ディスク10との対向面の近接操作は、可撓性ディスク10又は安定化板50のいずれかを移動させることでも、両者を移動させることでも可能である。また、各々の部材等の寸法は、これに限定するものではないが、安定化板50の外径は可撓性ディスク10の外径より少し大きいことが好ましい。
【0027】
安定化板50の外周部付近には、差圧計(差圧センサともいう。)60が設置されている。差圧計60は、可撓性ディスク10と安定化板50との間隙部分80の圧力(気圧)と、この光ディスク装置周辺の大気圧との差圧を検出する差圧センサ(差圧計)である。
【0028】
図2は、上記光ディスク装置の安定化板50の平面図である。差圧計60は、安定化板50の外周付近(本実施形態では中心から59mmの位置)の位置に等間隔に3個設けてある。差圧計60は、安定化板50と可撓性ディスク10との間の空気圧と大気圧との差を測定する装置であり、可撓性ディスク10の面振れ量の増大の影響を顕著に受け易いディスク外周部付近と対向する位置に設けることが好ましい。また、差圧計60は、安定化板50に最低限1つ設ければよいが、複数個設けることにより、可撓性ディスク10の面振れ量の変化をより精密に検知することができる。差圧計60は、回転している可撓性ディスク10の空気流の影響を受けない周辺部分の圧力(大気圧)と、可撓性ディスク10と安定化板50との間隙部分の気圧との差圧を測定できればよく、可撓性ディスク10と安定化板50との間隙部分の気圧そのものを測定する必要はない。このため、本発明における差圧センサ(差圧計)60は簡易な装置が利用できる。差圧センサ(差圧計)60は、例えばダイアフラム差圧計や液柱差圧計を利用したものなどが使用できる。
【0029】
図3は、本実施形態の光ディスク装置(ディスク駆動装置を含んでいる。)100の制御部を中心としたブロック図である。光ディスク装置100は、例えば、画像収録・再生装置や音楽収録・再生装置などの上位装置200との信号授受をするインターフェース92、各種の情報を記憶するメモリ91、光ピックアップ20のレーザ出力を制御するレーザ制御回路21、光ピックアップ20の駆動を制御する駆動制御回路22、昇降部70を介して安定化板50の昇降を制御する昇降制御回路71、差圧センサ60による間隙80における差圧Pの検出動作を制御する測定回路61、スピンドルモータ30の回転を制御するモータードライバ31を備えている。
【0030】
本実施形態の光ディスク装置100においては、回転中の可撓性ディスク10と安定化板50の間隙部分の気圧と大気圧との差圧Pと、可撓性ディスク10のディスク面とこれに対向する安定化板50表面との間隙部分の間隙の幅C(図1における間隙80の幅、間隙Cと略称することもある。)とは、対応関係がある。このため、可撓性ディスク10の面振れを制御するには、間隙Cに替えて上記差圧Pを制御してもよい。
【0031】
(間隙Cと差圧Pと面振れの関係)
図4〜15は、図1〜3に記載した光ディスク装置100を用いて、厚さの異なる光ディスク(可撓性ディスク)10を異なる回転数(それぞれ7,000rpm、10,000rpm、13,000rpm)で回転させながら、光ディスク10と安定化板50を所定幅ずつ近接させたときの間隙Cと、装置周辺の気圧(大気圧)に対する回転中の光ディスク10と安定化板50の間隙80の気圧の差圧(差圧Pと略称する。)と、光ディスク10の面振れ量との関係を測定した測定データとその一部のグラフである。それぞれの図を参照しながら、光ディスク装置100における間隙Cと差圧Pと面振れ量の関係から、それぞれの条件において光ディスク10の面振れ量を光ディスク10に対する記録・再生可能な範囲内に制御する方法について述べる。
【0032】
(実施例1)
図4は、外径120mm(半径60mm)、厚さ0.1mmの光ディスク10を、回転数7,000rpmで回転させたときのディスク10と安定化板50の間隙C(mm)、ディスク10の外周部(中心から59mmの位置)の間隙部分の気圧と装置周辺部の大気圧との差圧P(Pa)、間隙Cの値が所定値(図4におけるカウンタの値がk)のときの間隙Ck(mm)の微小変化ΔCk(mm)に対する差圧Pk(Pa)の微小変化量ΔPk(Pa)を表す局所差圧勾配Sk(=ΔP/ΔC(Pa/mm))、間隙Cが初期値から所定値まで(図4におけるカウンタの値kが0からkまで)変化したときの、間隙Cの変化全体に対応する差圧Pの変化量である全体差圧勾配St(Pa/mm)、間隙Cが初期値から所定値まで(図4におけるカウンタの値kが0からkまで)変化したときの、それぞれのカウンタの値kにおける前記局所差圧勾配Skの平均値である平均差圧勾配Sa(Pa/mm)、局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stの比である勾配比Sk/St、局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saとの比である勾配比Sk/Sa、及びディスク10の外周部(中心から55mmの位置)の面振れ量(μm)を示す表である。
【0033】
間隙Ckにおける局所差圧勾配Skは、光ディスク10を所定回転数で回転させながらディスクと安定化板の間隙Cを初期値から所定量ずつk回狭めていったときに、k番目に設定した間隙Ckにおける間隙Cの局所的な変化量ΔCkと、間隙部分の圧力(気圧)と大気圧との差圧Pkの局所的な変化量ΔPkの比、すなわち、下式(1)で表される。
Sk=ΔPk/ΔCk・・・・・・(1)
【0034】
間隙Ckにおける全体勾配Stは、光ディスク10を所定回転数で回転させながら光ディスク10と安定化板50の間隙Cを初期値から所定量(一定量でなくてもよい。)ずつ狭めていったときに、間隙部分の気圧と大気圧との差圧Pが負の値になる直前の間隙Cの値C0と差圧Pの値P0を基準(C0、P0が初期値に相当する。)にして、所定の間隙Ckに変化したときの差圧Pkの変化量から求めた勾配であり、下式(2)で表される。
St=(P0−Pk)/(C0−Ck)・・・・・(2)
【0035】
なお、可撓性ディスクを高速で回転させながら安定化板をディスク面に近接させてディスクの面振れを抑制する光ディスク駆動装置においては、安定化板がディスク面から十分に離れていれば。安定化板とディスク面との間の間隙部分(間隙C)の気圧は、光ディスク駆動装置周辺の大気圧と変わらない。安定化板とディスク面との間の間隙を次第に狭くしていくと、間隙Cの気圧は一時的に大気圧より若干高くなることもあるが、さらに安定化板とディスク面とを近づけていくと、間隙Cの気圧が装置周辺の大気圧より低くなり、大気圧に対する間隙Cの気圧(差圧P)が負の値(装置周辺の大気圧を0とする。)となる。このような状態では、光ディスクの面振れに対して安定化板が影響を及ぼし、光ディスクの面振れ量が小さくなってくる。本願発明においては、安定化板とディスク面とを近づける際に、間隙Cの差圧Pが負の値に変化する寸前の状態の測定値を基準として、カウンタ値k=0に対応させ、それぞれ間隙C、差圧Pの初期値C0、P0としている。
【0036】
局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saの勾配比Sk/Saは、以下のようにして算出する。平均差圧勾配Saは、光ディスク10を所定回転数で回転させながらディスクと安定化板の間隙Cを所定量ずつ狭めていったときに、間隙部分の気圧と大気圧との差圧Pが負の値になった時点の直前を0回目(カウンタk=0)と数えてk回目まで間隙Cを所定量ずつ狭めていってそれぞれPkを測定し、1番目の局所差圧勾配S1から、k番目の測定点における局所差圧勾配Skまでのk個の局所差圧勾配Siの平均値である。すなわち、平均差圧勾配Saは下式(3)で表される。
【0037】
【数1】
【0038】
従って、局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stとの勾配比は、Sk/Stで表され、局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saとの勾配比は、Sk/Saで表される。
【0039】
図5は、図4における光ディスク10と安定化板50の間隙C(mm)に対する、ディスクの外周部の間隙部分の気圧と大気圧との差圧P(Pa)と、光ディスク10の面振れ量の関係の主要部分を示したグラフである。
【0040】
図4、5から判るように、光ディスク10のディスク面と安定化板50の表面の間隙Cが狭くなると、光ディスク10の外周部の間隙部分の気圧と大気圧との差圧Pは負の値となる。そして、間隙Cをさらに狭めると、光ディスク10の差圧Pはさらに小さくなっていく。図4、5に示す実施例1では、差圧Pは、間隙Cが0.60mm付近から負の値となり、間隙Cが0.40mm付近まで13〜25Pa/mm程度の勾配でほぼ単調に低下していく。間隙Cが0.40mm以下になると、差圧Pは、0.44Pa/mm程度でほとんど低下しなくなる。
【0041】
一方、光ディスク10の面振れ量は、間隙Cが0.40mmを超える領域では、50μmを超えているが、0.40mm付近で急速に低下し、間隙Cが0.40mmで10μm、間隙Cが0.39mmで8μmとなり、その後は間隙Cが小さくなるに連れてゆっくりと低下する。なお、面振れ量は光学的に測定した値である(以下の説明で同じ)。
【0042】
なお、間隙Cが0.1mmになるまで安定化板50を光ディスク10に近づけているが、実用上では、光ディスク10の面振れが所定値以下になれば、それ以上安定化板50を可撓性ディスク10に近づけることは、安定化板50と光ディスク10の接触の恐れが増加するので実行する必要はない。このため、光ディスク10の面振れが小さくなり、一旦安定した後は、間隙Cをそれ以上小さくすることは実用上不必要であり、間隙Cが0.15mm以下の領域の面振れ量が3μm以下おける差圧Pは急降下傾向を示すことがある。しかし、一旦面振れ量が20μm、好ましくは10μm以下となれば、面振れ量は増加することはないので、この領域の測定はあまり意味がなく無視できる。この傾向は、後述する実施例2〜6においても同じである。
【0043】
通常、光ディスク10の面振れ量は、20μm以下、好ましくは10μm以下であれば使用可能である。このため、0.1mm厚の光ディスク10を7,000rpmで回転させて使用するこの実施例の光ディスク装置においては、間隙Cが0.40mm以下とすればよい。また、間隙Cの代わりに、差圧Pを−4.4Pa以下に制御すればよいことが判る。光ディスク10の面振れ量を制御するために、間隙Cの代わりに、差圧Pを制御指標とすることで、間隙Cの測定が不用となり、光ディスク装置を簡単なものとすることができる。
【0044】
図4において、間隙Cの減少に伴う光ディスク10の面振れ量(μm)の変化、及び差圧Pk、局所差圧勾配Sk、全体差圧勾配St、局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stの勾配比Sk/St、局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saの勾配比Sk/Saを観察すると、面振れ量が確実に所定値20μm以下とするための制御条件として、差圧Pkを−4.4Pa以下とする方法以外に、以下の制御条件を選択すればよいことが判る。
(1)局所差圧勾配Skが1.0Pa/mm以下、好ましくは0.0Pa/mm以下である。
(2)局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stの勾配比Sk/Stが0.2未満、好ましくは0.1以下、さらに好ましくは0.0以下である。
(3)局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saの勾配比Sk/Saが0.2未満、好ましくは0.1以下、さらに好ましくは0.0以下である。
【0045】
(実施例2)
図6、7は、ディスク10の外周部(中心から59mmの位置)の間隙部分の気圧と大気圧との差圧P(Pa)、差圧Pと間隙Cの局所差圧勾配Sk(Pa/mm)、差圧Pと間隙Cの全体差圧勾配St(Pa/mm)、平均差圧勾配Sa(Pa/mm)、局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stの勾配比Sk/St、局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saとの勾配比Sk/Saの関係、及びディスクの外周部(中心から55mmの位置)の面振れ(μm)を表す表及びグラフである。
【0046】
図6は、実施例1において、光ディスク10を回転数7,000rpmから10,000rpmに変更して回転させた以外は、実施例1と同様にして測定及び算出した光ディスク10と安定化板50の間隙C(mm)、ディスク10の外周部(中心から59mmの位置)の間隙部分の気圧と大気圧との差圧P(Pa)、差圧Pと間隙Cの局所差圧勾配Sk(Pa/mm)、差圧Pと間隙Cの全体差圧勾配St(Pa/mm)、平均差圧勾配Sa(Pa/mm)、局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stの勾配比Sk/St、局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saとの勾配比Sk/Saの関係、及びディスクの外周部(中心から55mmの位置)の面振れ(μm)を表す表である。
【0047】
図7は、図6における光ディスク10と安定化板50の間隙C(mm)に対する、ディスクの外周部の間隙部分の気圧と大気圧との差圧P(Pa)と、光ディスクの面振れ量の関係を示したグラフである。
【0048】
図6、7から判るように、実施例2は、実施例1と同様の傾向を示しており、光ディスク10のディスク面と安定化板50の表面の間隙Cが狭くなると、光ディスク10の外周部の間隙部分の気圧と大気圧との差圧Pは負の値となる。そして、光ディスク10のディスク面と安定化板50の表面の間隙Cをさらに狭めると、差圧Pは小さくなっていく。図6、7に示す実施例では、差圧Pは、間隙Cが0.23mm付近から負の値となり、間隙Cが0.20mm付近までほぼ200〜250Pa/mm程度の勾配で単調に低下していく。間隙Cが0.20〜0.15mmでは、差圧Pの低下傾向は小さくなる。
【0049】
一方、光ディスク10の面振れ量は、間隙Cが0.24mmを超える領域では、50μm以上であるが、間隙Cの減少と共に急速に減少し、間隙Cが0.20mmで14μm、間隙Cが0.19mmで10μmとなり、その後は間隙Cが小さくなるに連れてゆっくりと低下する。
【0050】
光ディスク10の面振れ量は、20μm以下、好ましくは10μm以下であれば使用可能である。このため、0.1mm厚の光ディスク10を10,000rpmで回転させて使用するこの実施例においては、間隙Cを0.20mm以下とすればよい。また、間隙Cの代わりに、差圧Pが−9.3Pa以下となればよいことが判る。
【0051】
図6において、間隙Cの減少に伴う可撓性ディスク10の面振れ量の変化、及び差圧P、局所差圧勾配Sk、全体差圧勾配St、局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stの勾配比Sk/St、局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saの勾配比Sk/Saを観察すると、面振れ量が所定値以下となるための制御条件として、差圧Pkを−9.0Pa以下とする方法以外に、以下の制御条件を選択すればよいことが判る。
(1)局所差圧勾配Skが220Pa/mm未満、好ましくは180Pa/mm以下、さらに好ましくは20Pa/mm以下となる。
(2)局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stの勾配比Sk/Stが1.0未満、好ましくは0.8以下になる。
(3)局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saの勾配比Sk/Sa1.0未満、好ましくは0.8以下になる。
【0052】
(実施例3)
図8は、実施例1において、光ディスク10を回転数7,000rpmから13,000rpmに変更して回転させた以外は、実施例1と同様にして測定及び算出したディスクと安定化板の間隙C(mm)、ディスク10の外周部(中心から59mmの位置)の間隙部分の気圧と大気圧との差圧P(Pa)、差圧Pと間隙Cの局所差圧勾配Sk(Pa/mm)、差圧Pと間隙Cの全体差圧勾配St(Pa/mm)、平均差圧勾配Sa(Pa/mm)、局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stの勾配比Sk/St、局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saとの勾配比Sk/Saの関係、及びディスクの外周部(中心から55mmの位置)の面振れ(μm)を表す表である。
【0053】
図9は、図8における光ディスク10と安定化板50の間隙C(mm)と、ディスクの外周部の間隙部分の気圧と大気圧との差圧P(Pa)、との関係を示したグラフである。
【0054】
図8、9から判るように、実施例3は、実施例1とほぼ同様の傾向を示しており、光ディスク10のディスク面と安定化板50の表面の間隙Cが狭くなると、光ディスク10の外周部の間隙部分の気圧と大気圧との差圧Pは負の値となる。そして、光ディスク10のディスク面と安定化板50の表面の間隙Cをさらに狭めると、差圧Pは小さくなっていく。図8、9に示す実施例では、差圧Pは、間隙Cが0.130mm付近から負の値となり、間隙Cが0.125mm付近までほぼ1500〜2500Pa/mm程度の勾配で低下していく。間隙Cが0.125mm以下になると、差圧Pは低下率が減少する。
【0055】
一方、光ディスク10の面振れ量は、間隙Cが0.130mm以上の領域では、30μm以上であるが、間隙Cが0.125mmで10μm、間隙Cが0.120mmで6μmとなり、その後は間隙Cが小さくなるに連れてゆっくりと低下する。
【0056】
光ディスク10の面振れ量は、20μm以下、好ましくは10μm以下であれば使用可能である。このため、0.1mm厚の可撓性ディスク10を13,000rpmで回転させて使用するこの実施例においては、間隙Cを0.125mm以下とすればよい。また、間隙Cの代わりに、差圧Pが−20Pa以下とすればよいことが判る。
【0057】
図8、9において、間隙Cの減少に伴う可撓性ディスク10の面振れ量の変化、及び差圧P、局所差圧勾配Sk、全体差圧勾配St、局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stの勾配比Sk/St、局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saの勾配比Sk/Saを観察すると、面振れ量が所定値以下となるための制御条件として、差圧Pkを−20.0Pa以下とする方法以外に、以下の制御条件を選択すればよいことが判る。
(1)局所差圧勾配Skが2500Pa/mm未満、好ましくは1500Pa/mm以下となる。
(2)局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stの勾配比Sk/Stが0.8以下、好ましくは0.2以下、さらに好ましくは0.1以下となる。
(3)局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saの勾配比Sk/Saが0.8以下、好ましくは0.2以下、さらに好ましくは0.1以下となる。
【0058】
このように、厚さが0.1mmの光ディスク10においては、差圧の正負の符号と、間隙Cに対する差圧の勾配の大きさの変化から、面振れ抑制状態を判別することが可能とである。差圧の符号と差圧の勾配と面振れ状態の定性的な関係を表1に整理する。
【0059】
【表1】
【0060】
(実施例4)
図10は、実施例1において、光ディスク10の厚さを0.1mmから0.2mmに変更した以外は、実施例1と同様にして測定及び算出したディスクと安定化板の間隙C(mm)、ディスク10の外周部(中心から59mmの位置)の間隙部分の気圧と大気圧との差圧P(Pa)、差圧Pと間隙Cの局所差圧勾配Sk(Pa/mm)、差圧Pと間隙Cの全体差圧勾配St(Pa/mm)、平均差圧勾配Sa(Pa/mm)、局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stの勾配比Sk/St、局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saとの勾配比Sk/Saの関係、及びディスクの外周部(中心から55mmの位置)の面振れ(μm)を表す表である。
【0061】
図11は、図10における光ディスク10と安定化板50の間隙C(mm)と、ディスクの外周部の間隙部分の気圧と大気圧との差圧P(Pa)、との関係を示したグラフである。
【0062】
図10、11から判るように、実施例4は、実施例1とほぼ同様の傾向を示しており、光ディスク10のディスク面と安定化板50の表面の間隙Cが狭くなると、光ディスク10の外周部の間隙部分の気圧と大気圧との差圧Pは負の値となる。そして、光ディスク10のディスク面と安定化板50の表面の間隙Cをさらに狭めると、光ディスク10の差圧Pはさらに小さくなっていく。
【0063】
図10、11に示す実施例では、差圧Pは、間隙Cが0.7mm付近から負の値となり、間隙Cが0.45mm付近までほぼ7〜50Pa/mm程度の勾配で低下していく。間隙Cが0.44mm以下になると、差圧Pは、僅かな上昇傾向に転ずる。
【0064】
一方、光ディスク10の面振れ量は、間隙Cが0.46mm以上の領域では、90μmを超えているが、0.45mm付近で急激に低下し、間隙Cが0.45mmで17μm、間隙Cが0.25mmで15μmとなり、その後は間隙Cが小さくなるに連れてゆっくりと低下し、間隙Cが0.15mmで9μmとなる。
【0065】
光ディスク10の面振れ量は、20μm以下、好ましくは10μm以下であれば使用可能である。このため、0.2mm厚の光ディスク10を7,000rpmで回転させて使用するこの実施例の場合は、間隙Cを0.45mm以下、好ましくは0.15mm以下とすればよい。また、間隙Cの代わりに、差圧Pが−8.2Pa以下となればよいことが判る。
【0066】
図10、11において、間隙Cの減少に伴う光ディスク10の面振れ量の変化、及び差圧P、局所差圧勾配Sk、全体差圧勾配St、局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stの勾配比Sk/St、局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saの勾配比Sk/Saを観察すると、面振れが所定値以下となるための制御条件として、差圧Pkを−7.9Pa以下とする方法以外に、以下の制御条件を選択すればよいことが判る。
(1)局所差圧勾配Skが7.0Pa/mm未満、好ましくは0.0Pa/mm以下となる。
(2)局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stの勾配比Sk/Stが0.5未満、好ましくは0.0以下となる。
(3)局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saの勾配比Sk/Saが0.6以下、好ましくは0.0以下となる。
【0067】
(実施例5)
図12は、実施例4において、光ディスク10を回転数7,000rpmから10,000rpmに変更して回転させた以外は、実施例4と同様にして測定及び算出したディスクと安定化板の間隙C(mm)、ディスク10の外周部(中心から59mmの位置)の間隙部分の気圧と大気圧との差圧P(Pa)、差圧Pと間隙Cの局所差圧勾配Sk(Pa/mm)、差圧Pと間隙Cの全体差圧勾配St(Pa/mm)、平均差圧勾配Sa(Pa/mm)、局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stの勾配比Sk/St、局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saとの勾配比Sk/Saの関係、及びディスクの外周部(中心から55mmの位置)の面振れ(μm)を表す表である。
【0068】
図13は、図12における光ディスク10と安定化板50の間隙C(mm)と、ディスクの外周部の間隙部分の気圧と大気圧との差圧P(Pa)、との関係を示したグラフである。
【0069】
図12、13から判るように、実施例5は、実施例4とほぼ同様の傾向を示しており、光ディスク10のディスク面と安定化板50の表面の間隙Cが狭くなると、光ディスク10の外周部の間隙部分の気圧と大気圧との差圧Pは負の値となる。そして、光ディスク10のディスク面と安定化板50の表面の間隙Cをさらに狭めると、光ディスク10の差圧Pは小さくなっていく。しかし、光ディスク10の面振れ量が十分小さくなると差圧Pは若干上昇する傾向にある。図12、13に示す例では、差圧Pは、間隙Cが0.5mm付近から負の値となり、間隙Cが0.33mm付近まで20〜380Pa/mm程度の勾配で低下していく。間隙Cが0.33〜0.20mmにおいては、差圧Pは、少しずつ上昇する傾向にある。
【0070】
一方、光ディスク10の面振れ量は、間隙Cが0.34mm以上の領域では、100μmを超えているが、間隙Cが0.33mmで18μm、その後は間隙Cが小さくなるに連れてゆっくりと低下し、間隙Cが0.25mm以下で10μm以下となる。
【0071】
光ディスク10の面振れ量は、20μm以下、好ましくは10μm以下であれば使用可能である。このため、0.2mm厚の光ディスク10を10,000rpmで回転させて使用するこの実施例においては、間隙Cを0.33mm以下、好ましくは0.25mm以下とすればよい。また、間隙Cの代わりに、差圧Pが−15.7Pa以下となればよいことが判る。
【0072】
図12、13において、間隙Cの減少に伴う可撓性ディスク10の面振れ量の変化、及び差圧P、局所差圧勾配Sk、全体差圧勾配St、局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stの勾配比Sk/St、局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saの勾配比Sk/Saを観察すると、面振れが所定値以下となるための制御条件として、差圧Pkを−13Pa以下とする方法以外に、以下の制御条件を選択すればよいことが判る。
(1)局所差圧勾配Skが20Pa/mm未満、好ましくは−10Pa/mm以下、さらに好ましくは−20Pa/mm以下となる。
(2)局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stの勾配比Sk/Stが0.8未満、好ましくは−0.1以下、さらに好ましくは−0.2以下となる。
(3)局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saの勾配比Sk/Saが0.8以下、好ましくは−0.1以下、さらに好ましくは−0.2以下となる。
【0073】
(実施例6)
図14は、実施例4において、光ディスク10を回転数7,000rpmから13,000rpmに変更して回転させた以外は、実施例4と同様にして測定及び算出したディスクと安定化板の間隙C(mm)、ディスク10の外周部(中心から59mmの位置)の間隙部分の気圧と大気圧との差圧P(Pa)、差圧Pと間隙Cの局所差圧勾配Sk(Pa/mm)、差圧Pと間隙Cの全体差圧勾配St(Pa/mm)、平均差圧勾配Sa(Pa/mm)、局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stの勾配比Sk/St、局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saとの勾配比Sk/Saの関係、及びディスクの外周部(中心から55mmの位置)の面振れ(μm)を表す表である。
【0074】
図15は、図14における光ディスク10と安定化板50の間隙C(mm)と、ディスクの外周部の間隙部分の気圧と大気圧との差圧P(Pa)、との関係を示したグラフである。
【0075】
図14、15から判るように、実施例6は、実施例4とほぼ同様の傾向を示しており、光ディスク10のディスク面と安定化板50の表面の間隙Cが狭くなると、光ディスク10の外周部の間隙部分の気圧と大気圧との差圧Pは負の値となる。そして、光ディスク10のディスク面と安定化板50の表面の間隙Cをさらに狭めると、光ディスク10の差圧Pは小さくなっていく。図14、15に示す実施例では、差圧Pは、間隙Cが0.3mm付近から負の値となり、間隙Cが0.25mm付近まで100〜700Pa/mm程度の勾配で低下していく。間隙Cが0.25〜0.15mmにおいては、差圧Pは、変わらないか若干上昇する傾向にある。
【0076】
一方、光ディスク10の面振れ量は、間隙Cが0.26mm以上の領域では、95μm以上であるが、間隙Cが0.25mmで12μm、0.24mmで10μm、その後は間隙Cが小さくなるに連れてゆっくりと低下する。
【0077】
光ディスク10の面振れ量は、20μm以下、好ましくは10μm以下であれば使用可能である。このため、0.2mm厚の光ディスク10を13,000rpmで回転させて使用するこの実施例においては、間隙Cを0.25mm以下、好ましくは0.24mm以下とすればよい。また、間隙Cの代わりに、差圧Pが−26.2Pa以下となればよいことが判る。
【0078】
図14、15において、間隙Cの減少に伴う光ディスク10の面振れ量の変化、及び差圧P、局所差圧勾配Sk、全体差圧勾配St、局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stの勾配比Sk/St、局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saの勾配比Sk/Saを観察すると、面振れが所定値以下となるための制御条件として、差圧Pkを−24Pa以下とする方法以外に、以下の制御条件を選択すればよいことが判る。
(1)局所差圧勾配Skが103Pa/mm未満、好ましくは0.0Pa/mm以下となる。
(2)局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stの勾配比Sk/Stが1.6未満、好ましくは0.0以下となる。
(3)局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saの勾配比Sk/Saが1.3未満、好ましくは0.0以下となる。
【0079】
このように、ディスク厚0.2mmのディスクにおいても、間隙Cに対する差圧Pの勾配の大きさの変化から、面振れ抑制状態を判別することが可能となる。差圧Pの符号と差圧Pの勾配と面振れ状態の定性的な関係を表2に整理する。
【0080】
【表2】
【0081】
(光ディスクの駆動方法)
上記実施例1〜6の結果を踏まえて、光ディスク10の面振れ状態を抑えるための安定化板50の配置、すなわち光ディスク10と安定化板50の間隙の設定の方法を定量的に考察する。
【0082】
厚さが0.1〜0.2mm程度の可撓性ディスクでは、安定化板による高速回転中のディスクの面振れ抑制が必要である。ディスクの面振れ量は、20μm以下、好ましくは10μm以下とすることが求められる。そこで、実施例1〜6の結果を踏まえて、以下の光ディスクの駆動方法を発明した。
【0083】
光ディスクを記録・再生等に必要な所定の回転数で回転させて、面振れが発生した状態において、安定化板を所定量ずつ光ディスクに近づける。安定化板が光ディスクの表面に近づくと、光ディスクと安定化板の間隙Cがある程度狭くなった段階で、この間隙Cの気圧がディスク駆動装置周辺の大気圧より低くなる。この大気圧と間隙Cの気圧との差圧Pが負の値になる付近から、光ディスクは安定化板の影響を受けて面振れが抑制されてくる。そして、間隙Cが所定値以下となると、差圧Pも所定値以下となり、間隙Cの減少量に対する差圧Pの減少量、すなわち間隙Cに対する差圧Pの減少勾配(局所差圧勾配)も急激に低下する。この差圧勾配の急激な減少点が面振れ量が、20μm好ましくは10μm以下となる点である。そこで、間隙Cを減少させながら差圧Pを測定し、この差圧Pを基にして、光ディスクの面振れ量を所望値に制御することができる。以下に、実施例1〜6を基にして、具体的な制御方法の例を示す(図4〜15参照)。
【0084】
(1)それぞれの光ディスク、及びその記録・再生回転数毎に、この条件に対応する光ディスクの面振れ量が20μm、好ましくは10μm以下となるとき差圧Pを測定して記憶しておく。そして、光ディスクによる記録・再生を開始する前に、光ディスクを所定回転数で回転させながら、間隙Cを徐々に減少させ記録・再生条件に対応して記憶しておいた差圧P以下となったときに間隙Cを固定するように制御して記録・再生を始める。
【0085】
(2)光ディスクと安定化板の間隙Cは、間隙Cの変化に対する差圧Pの変化の勾配(局所差圧勾配Sk)が、所定値以下、好ましくは正の値から零又は負の値に変わったときの間隙C以下とすればよい。実施例1〜5において、間隙Cは好適な制御指標として光ディスクの面振れ量を制御することができる。但し、実施例3においては、局所差圧勾配Skの所定値を0とすると間隙Cを狭く制御しすぎている傾向がある。
【0086】
(3)間隙Cを狭めていくに従って、差圧Pが負になってからk回の差圧Pの測定における、測定点毎の平均差圧勾配Saに対する局所差圧勾配Skの勾配比Sk/Saが、0.1以下、好ましくは0.15未満となる間隙Cを選べば、ディスクの面振れ量は20μm以下に制御することができる。ほとんどの場合は、勾配比Sk/Saが0.5以下となれば問題ないが、厚さ0.1mmの光ディスクの場合実施例1に示すように、勾配比Sk/Saが0.154でもディスクの面振れ量が100μm以上となることがある。しかし、厚さ0.2mmの光ディスクの場合であれば、勾配比Sk/Saが0.5以下、好ましくは0.0以下となるように制御すれば十分である。
【0087】
(4)差圧Pが負になってからk回目の測定点における局所差圧勾配Skの値の、差圧Pが負になってからk回目の測定点までの全体差圧勾配Stに対する勾配比Sk/Stを指標として制御することもできる。前記の勾配比Sk/Saと大きくは相違しないが、算出計算が簡単なので、制御における記憶装置や計算装置を簡略にしたり、演算速度を速める効果がある。勾配比Sk/Stが、0.1以下、好ましくは0.15未満となったときの間隙Cを選べば、ディスクの面振れ量は20μm以下に制御することができる。制御のための指標を勾配比Sk/Stとした場合も、厚さ0.1mmの光ディスクの場合実施例1に示すように、勾配比Sk/Stが0.15でもディスクの面振れ量が100μm以上となることがある。しかし、厚さ0.2mmの光ディスクの場合であれば、勾配比Sk/Stが0.5以下、好ましくは0.0以下となるように制御すれば十分である。
【0088】
(可撓性ディスク駆動方法の実施形態)
(実施形態1)差圧Pkを指標とする可撓性ディスク駆動方法
差圧Pkを制御指標として、所定回転数で回転している可撓性ディスク(光ディスク)の面振れを所定値以下に安定させるには、安定化板50を光ディスク10に近づけるに従って、差圧Pと光ディスク10の面振れ量が小さくなることを利用する。但し、差圧Pと光ディスク10の面振れ量の定量的な関係は、光ディスク10の厚さ、記録・再生時の回転数(記録・再生条件)により異なるので、それぞれの記録・再生条件に対応した好適な差圧Pを事前に測定しておく。最初に、所定の光ディスク10を所定の回転数で回転させながら、間隙Cを初期状態(光ディスク10に対して安定化板50の影響がない程度に十分隔離された状態)から徐々に狭めていく。そして、図4に示したように、間隙Cを所定量変化させる毎に、差圧Pと面振れ量を測定する。面振れ量が20μm以下、好ましくは10μm以下となった時点の差圧Pを、この場合の面振れ量制御する臨界値として光ディスク装置の制御部に記憶しておく。
【0089】
光ディスク10に記憶・再生を行う場合は、差圧Pが光ディスク装置の制御部に記憶しておいた差圧となった時点の間隙C以下の間隙の幅で固定するように昇降部70を制御すればよい。例えば、実施例1で示した、0.1mm厚の光ディスク10を7,000rpmで回転させて記録・再生する場合で説明すれば、臨界値としての差圧Pは、−0.4Paとすればよい。
【0090】
この実施形態においては、最初に光ディスク10、及び記録・再生条件に対応して好適な差圧Pを求めておけば、同じ光ディスク10、及び記録・再生条件の基では、間隙Cを狭めながら差圧Pを制御するだけで、光ディスク10を好適な面振れ量に抑制することができる。
【0091】
(実施形態2)局所差圧勾配Skを指標とする可撓性ディスク駆動方法
局所差圧勾配Skを指標として、所定回転数で回転している可撓性ディスク(光ディスク)の面振れを所定値以下に安定させるには、安定化板50を光ディスク10に近づけるに従って光ディスク10の面振れ量が小さくなることを利用する。すなわち、光ディスク10のディスク面と安定化板50の表面の間隙の周辺大気圧との差圧Pを測定しながら、所定回転数で回転している光ディスク10に安定化板50を近づけていき、安定化板50のそれぞれの位置における差圧Pの間隙Cの変化に対する変化量(局所差圧勾配Sk)を算出し、その局所差圧勾配Skが所定値以下となったときを光ディスク10の面振れが所望値(通常は20mm以下)となり、光ディスク10は安定した記録・再生状態に制御される。
【0092】
なお、実施例において説明したように、局所差圧勾配Skの所定値は、光ディスク10の厚さ、回転数などの使用状態により大きく変化するので、それぞれの光ディスク10の種類や使用状態に対応して局所差圧勾配Skを測定して求め、これを利用すれば、光ディスクの種類や回転数毎の緻密な面振れ抑制ができる。本実施形態では、使用した光ディスク装置について全ての光ディスク10とその使用状態に対して適用可能な局所差圧勾配Skにより光ディスク10の面ブレを安定化させる駆動方法を示す。
【0093】
図16は、回転している光ディスク10の安定化板50との間隙Ck(基準の間隙C0から回間隙の幅をk回減少させたときの間隙の幅)の変化量(ΔCk=Ck−1−Ck)に対する、大気圧と間隙Ckにおける気圧の差である差圧Pkの変化量(ΔPk=Pk−1−Pk)の比である局所差圧勾配Sk(=(Pk−1−Pk)/(Ck−1−Ck))を指標として、この局所差圧勾配Skが零又は負の値となったことを確かめて、光ディスク10の記録又は再生を行う可撓性ディスク駆動方法を示すフロー図である。
【0094】
局所差圧勾配Skを指標とする可撓性ディスク駆動方法について、図1〜3を参照しながら、図16に従って説明する。光ディスク装置100に光ディスク10の記録又は再生の動作の開始が指示されると、スピンドルモータ30が回転し、ディスク装着部40に装着されている光ディスク10が所定の回転数で回転する(ステップS101)。
【0095】
光ディスク10の回転数が所定値で安定したら、制御装置であるCPU90は、カウンタkを初期化して0とする(ステップS103)。光ディスク10のディスク面から隔離して配置されていた安定化板50を、ステッピングモータ等を有する昇降部70により所定の幅だけ光ディスク10のディスク面に接近させる(ステップS105)。安定化板50が所定量接近(降下)させたら、光ディスク10と安定化板50の間隙Cの幅(mm)を測定又は間隙Cの移動前の幅を基準値(例えば1.0mm)として相対的な間隙Cを算出し(ステップS107)、差圧計(差圧センサ)60により間隙部分の大気圧に対する差圧P(Pa)を測定する(ステップS109)。なお、昇降部70は、差圧Pが最初から負の値にならない程度に、安定化板50の位置を光ディスク10から適度な間隔で隔離しておく。
【0096】
差圧Pの値が負でなければ(ステップS111のN)、差圧P及び間隙Cの値を、それぞれP0、C0として、メモリ91のメモリ領域MP0、MC0に格納し(ステップS113)、ステップS105に戻り、ステップS105からステップS111を繰り返す。
【0097】
差圧Pの値が負になれば(ステップS111のY)、カウンタkの値を1つ増加させてk=1として、差圧P及び間隙Cの値を、それぞれ差圧P1、間隙C1とする(ステップS115)。
【0098】
そして、生成した差圧P1、間隙C1を、カウンタkに対応する差圧Pk、間隙Ckとして、それぞれメモリ91のメモリ領域MPk、MCkに格納する(ステップS117)。
【0099】
昇降部70を所定量降下させ(ステップS119)、カウンタkの値を1つ増加させて(k+1)とし(ステップS121)、間隙の幅Ckを算出又は測定する(ステップS123)。差圧計60により差圧Pを測定してPkとする(ステップS125)。
【0100】
算出又は測定した間隙の値Ckとメモリ91に記憶していた間隙C(k−1)、差圧Pkとメモリ91に記憶していたP(k−1)から局所差圧勾配Sk(=(P(k−1)−Pk)/(C(k−1)−Ck))を算出する(ステップS127)。
【0101】
局所差圧勾配Skが零又は負であれば(ステップS129のY)、光ディスク10は面振れ量が所定内(例えば、20μm以内)の領域にあるので、光ディスク装置は、そのまま光ディスク10への情報の記録又は再生を開始する(ステップS131)。そして、記録又は再生を繰り返し、所定の記録又は再生が完了したら(ステップS133のY)、スピンドルモータ30を停止する(ステップS135)と共に昇降部70を上昇させて(ステップS137)、安定化板50を光ディスク装置の運転開始前の元の位置に戻し、光ディスク装置の運転を終了する。
【0102】
局所差圧勾配Skが正の場合(ステップS129のN)は、ステップS117に戻り、新しいカウンタ値kに対する差圧Pk、間隙Ckを、それぞれメモリ91のメモリ領域MPk、MCkに格納する(ステップS117)。そして、昇降部70を所定量降下させ(ステップS119)、さらに次のステップへと進んでいく。昇降部70の降下幅の所定量は、間隙Ckの値又はカウンタkの値に応じて別々に設定されていてもよい。
【0103】
なお、ステップS127においては、局所差圧勾配Skの値の臨界値を零としたが、光ディスク10の厚さや回転数などが特定されている場合は、それぞれの条件に応じて他の値とすることもできる。この実施形態の特徴のひとつは、間隙Cの絶対値の測定や、面振れ量の測定が不用である。このため、光デスク装置の制御部を簡単なものとすることができる。
【0104】
また、光ディスク10の種類及びその回転数が特定されていれば、最初にこの実施形態で測定した局所差圧勾配Skが臨界値零以下となったときの差圧Pkを記憶しておき、次回の記憶・再生動作においては、ステップS103からステップS129までの工程に替えて、間隙Cを減少させていき、記憶しておいた差圧Pk以下になった時点の間隙Cを一定又はそれ以下に制御して(昇降部70の位置を固定して)、記憶・再生動作をすることもできる。
【0105】
(実施形態3)局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saとの勾配比Sk/Saを指標とする可撓性ディスク駆動方法
局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saとの勾配比Sk/Saを指標として、所定回転数で回転している可撓性ディスク(光ディスク)の面振れを所定値以下に安定させるには、安定化板50を光ディスク10に近づけるに従って光ディスク10の面ブレ量の変化量(差圧勾配)も小さくなることを利用する。すなわち、光ディスク10のディスク面と安定化板50の表面の間隙80における気圧の大気圧との差圧Pを測定しながら、所定回転数で回転している光ディスク10に安定化板50を近づけていき、それぞれの安定化板50の位置における差圧Pの間隙(の幅)Cに対する変化量(局所差圧勾配Sk)を算出し、その局所差圧勾配Skのそれまで安定化板50を移動させてきた間全体(k=1〜k)の局所差圧勾配Skの平均値(平均差圧勾配Sa)に対する比率(勾配比=(局所差圧勾配Sk)/(平均差圧勾配Sa))が所定値以下となったときを光ディスク10の面振れが所望値(通常は20mm以下)となり、光ディスク10は安定した記録・再生状態となることを利用して制御する。
【0106】
なお、実施例において説明したように、勾配比Sk/Saの所定値は、光ディスク装置、光ディスク10の厚さ、回転数などの使用状態により変化するので、それぞれの光ディスク10の使用状態に対応して勾配比Sk/Saを測定して求め、これを利用すればよい。本実施形態では、使用した光ディスク装置について全ての光ディスク10の使用状態に対して適用可能な勾配比Sk/Saにより光ディスク10の面振れを安定化させる駆動方法を示す。
【0107】
図17は、回転している光ディスク10と安定化板50の間隙Ckを小さくしていったときに、差圧Pが負になった時点(k=1)からk個の間隙Ckに対する局所差圧勾配Sk(=(Pk−1−Pk)/(Ck−1−Ck))を算出し、差圧Pが負になった時点からのk個の局所差圧勾配S1からSkまでの平均値である平均値局所差圧勾配Saを求め、間隙Ckにおける勾配比Sk/Saを制御指標として、勾配比Sk/Saが所定値以下となったら光ディスク10の記録又は再生を行う可撓性ディスク駆動方法を示すフロー図である。
【0108】
勾配比Sk/Saを指標とする可撓性ディスク駆動方法について、図1〜3を参照しながら、図17に従って説明する。本実施形態のステップS201からステップS227までは、実施形態1で説明したステップS101からステップS127までと同様であるので、実施形態1を参照することで説明を省略する。
【0109】
本実施形態においては、ステップS227で算出した局所差圧勾配Skをメモリ領域MSkに格納し(ステップS229)、メモリ領域MSk(k=1〜k)に格納してあった局所差圧勾配Sk(k=1〜k)から平均差圧勾配Saを算出する(ステップS231)。平均差圧勾配Saは、カウンタkが1からkまでの局所差圧勾配Skの平均値であり、算出式は既に説明した式(3)を参照すればよい。
【0110】
局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saから勾配比Sk/Saを算出し、この勾配比Sk/Saが0.1以下であれば(ステップS233のY)、光ディスク10の面振れは所定値以内であり、光ディスク装置は記録・再生操作を実行する。勾配比Sk/Saが0.1を超えていれば(ステップS233のN)、光ディスク10の面振れは所定値を超えているとみなして、ステップS217に戻り、ステップS217からステップS233のステップを繰り返す。
【0111】
ステップS235からステップS241までの光ディスク10の記録・再生及び光ディスク装置の停止操作は、実施形態1のステップS131からステップS137までと同様であるので、実施形態1を参照すればよいので説明を省略する。
【0112】
なお、ステップS233においては、勾配比Sk/Saの値の臨界値を0.1としたが、ディスク駆動装置、光ディスク10の厚さや回転数などの条件が特定されている場合は、それぞれの条件に応じて、他の値、例えば0.0、0.2、0.5などとすることもできる。この実施形態においても、間隙Cの絶対値の測定や、面振れ量の測定が不用である。このため、光デスク装置の制御部を簡単なものとすることができる。
【0113】
また、光ディスク10の種類及びその回転数が特定されていれば、最初にこの実施形態で算出した勾配比Sk/Saの値が臨界値、例えば0.1以下となったときの差圧Pkを記憶しておき、次回の記憶・再生動作においては、ステップS203からステップS233までの工程に替えて、間隙Cを減少させていき、記憶しておいた差圧Pk以下になった時点の間隙Cを一定又はそれ以下に制御して(昇降部70の位置を固定して)、記憶・再生動作をすることもできる。
【0114】
(実施形態4)局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stとの勾配比Sk/Stを指標とする可撓性ディスク駆動方法
局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stとの勾配比Sk/Stを指標として、所定回転数で回転している可撓性ディスク(光ディスク)の面振れを所定値以下に安定させる光ディスクの駆動方法は、実施形態2で説明した局所差圧勾配Skと平均差圧勾配Saとの勾配比Sk/Saを制御指標とする光ディスクの駆動方法と基本的考え方は同じである。この実施形態では、実施形態2で利用した平均差圧勾配Saに替えて全体差圧勾配Stを利用する点が異なっている。この実施形態では、局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stとの勾配比Sk/Stが所定値以下となったときを光ディスク10の面振れが所望値(通常は20mm以下)となり、光ディスク10は安定した記録・再生状態となることを利用して制御する。
【0115】
なお、既に実施例において説明したように、勾配比Sk/Stの所定値は、光ディスク10の厚さ、回転数などの使用状態(条件)により変化するので、それぞれの光ディスク10の使用状態等に対応して勾配比Sk/Stを測定して求め、これを利用すればよい。本実施形態では、使用した光ディスク装置について全ての光ディスク10の使用状態(条件)に対して適用可能な勾配比Sk/Stにより光ディスク10の面ブレを安定化させる駆動方法を示す。
【0116】
図18は、回転している光ディスク10と安定化板50の間隙90を、比較的離れた状態から徐々に小さくしていったときに、差圧Pが零又は正の値から負の値変化する直前の時点(カウンタk=0)の間隙(の幅)C0に対応する差圧P0を基準として、安定化板50を光ディスク10に徐々に近づけていき、間隙をk回変化させた場合、カウンタkが1からkまでの局所差圧勾配Sk(=(Pk−1−Pk)/(Ck−1−Ck))と全体差圧勾配St(=(P0−Pk)/(C0−Ck))を算出し、局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stの勾配比Sk/Stを制御指標として、勾配比Sk/Stが所定値以下となったら光ディスク10の記録又は再生を行う可撓性ディスク駆動方法を示すフロー図である。
【0117】
勾配比Sk/Stを指標とする可撓性ディスク駆動方法について、図1〜3を参照しながら、及び図18に従って説明する。本実施形態のステップS311からステップS325までは、実施形態2で説明したステップS211からステップS225までと同様であるので、説明は実施形態2を参照することとし省略する。
【0118】
本実施形態においては、ステップS327において、算出若しくは測定してある、又は記憶している間隙Ck、C0、差圧Pk、P0などを基にして、局所差圧勾配Sk(=(Pk−1−Pk)/(Ck−1−Ck))、全体差圧勾配St(=(P0−Pk)/(C0−Ck))を算出する(ステップS327)。
【0119】
局所差圧勾配Skと全体差圧勾配Stから勾配比Sk/Stを算出し、この勾配比Sk/Stが0.1以下であれば(ステップS329のY)、光ディスク10の面振れは所定値以内であり、記録・再生操作を実行する。勾配比Sk/Stが0.1を超えていれば(ステップS329のN)、光ディスク10の面振れは所定値を超えているとみなして、ステップS317に戻り、ステップS317からステップS329のステップを繰り返す。
【0120】
ステップS331からステップS337までの光ディスク10の記録・再生及び光ディスク装置の停止操作は、実施形態2のステップS235からステップS241までと同様であるので、それを参照して説明を省略する。
【0121】
なお、ステップS331においては、勾配比Sk/Stの値の臨界値を0.1としたが、光ディスク10の厚さや回転数などが特定されている場合は他の値、例えば0、0.2、0.5などとすることもできる。この実施形態においても、間隙Cの絶対値の測定や、面振れ量の測定が不用である。このため、光デスク装置の制御部を簡単なものとすることができる。
【0122】
また、光ディスク10の種類及びその回転数が特定されていれば、最初にこの実施形態で算出した勾配比Sk/Stの値が臨界値、例えば0.1以下となったときの差圧Pkを記憶しておき、次回の記憶・再生動作においては、ステップS303からステップS329までの工程に替えて、間隙Cを減少させていき、記憶しておいた差圧Pk以下になった時点の間隙Cを一定又はそれ以下に制御して(昇降部70の位置を固定して)、記憶・再生動作をすることもできる。
【0123】
実施形態1〜3において、光ディスク10への記録・再生を実行するか否かの制御指標(局所差圧勾配Sk、勾配比Sk/Sa、又は勾配比Sk/St)の臨界値は、実施例1〜6に示すように、光ディスク10の面振れ量が20mm以下となるときの間隙(の幅)Cの臨界値に対応する値より小さい場合もある。しかし、光ディスク10の面振れ量は20mm以下を満足しており、間隙Cが臨界値より大きく離れることはないので、実用上は問題がなく、むしろ測定精度等によるバラツキを吸収する余裕と考えることもできる。
【符号の説明】
【0124】
10 :可撓性ディスク(光ディスク、ディスク)
20 :光ピックアップ
21 :レーザ制御回路
22 :駆動制御回路
30 :スピンドルモータ
31 :モータードライバ
40 :ディスク装着部
50 :安定化板(安定化部材)
60 :差圧計(差圧センサ)
61 :測定回路
70 :昇降部
71 :昇降制御回路
80 :ディスク面と安定化板の間隙(間隙の幅Cを表す場合もある)
90 :CPU(演算装置)
91 :インターフェース
92 :メモリ
100 :光ディスク装置(ディスク駆動装置)
200 :上位装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するシート状のディスクに対して情報の再生及び記録の少なくとも一方を行うために、前記ディスクを回転させるディスク駆動装置であって、
前記ディスクのディスク面に対向して近接し、前記ディスクの面振れを抑制する安定化部材と、
前記安定化部材の表面と、回転している前記ディスクのディスク面とを所定幅毎に近接させる近接部材と、
前記安定化部材の表面と前記ディスク面との間隙部分の気圧の周辺大気圧に対する差圧を検出する差圧計と、
前記近接部材により、前記安定化部材の表面と前記ディスク面とを近接させた際の、前記差圧計により検出された差圧を基に、前記安定化部材の表面と前記ディスク面との間隙部分の幅を制御する制御部と、
を備えることを特徴とするディスク駆動装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記安定化部材の表面と前記ディスク面とを近接させた際の、前記間隙部分の幅(C)の微小変化(ΔC)に対する前記差圧(P)の微小変化(ΔP)の割合である局所差圧勾配(Sk=ΔP/ΔC)を基に、前記間隙部分の幅を制御することを特徴とする請求項1に記載のディスク駆動装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記間隙部分の幅を、前記局所差圧勾配(Sk)が0以下になったときの前記間隙部分の幅以下に制御することを特徴とする請求項2に記載のディスク駆動装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記安定化部材の表面と前記ディスク面とを近接させた際の、前記間隙部分の幅(C)の微小変化に対する前記差圧(P)の微小変化の割合である局所差圧勾配(Sk)と、前記間隙部分の幅(C)の変化全体に対する前記差圧(P)の変化の割合である全体差圧勾配(St)との勾配比(Sk)/(St)、
又は前記局所差圧勾配(Sk)と、前記間隙部分の幅の変化領域全体における各部分の局所差圧勾配(Sk)の平均値である平均差圧勾配(Sa)との勾配比(Sk)/(Sa)、
を基に前記間隙部分の幅を制御することを特徴とする請求項1に記載のディスク駆動装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記間隙部分の幅を前記局所差圧勾配(Sk)と前記全体差圧勾配(St)との勾配比(Sk)/(St)、又は前記局所差圧勾配(Sk)と前記平均差圧勾配(Sa)との勾配比(Sk)/(Sa)が0.1以下となったときの前記間隙部分の幅以下に制御することを特徴とする請求項4に記載のディスク駆動装置。
【請求項6】
可撓性を有するシート状のディスクに対して情報の再生及び記録の少なくとも一方を行うために前記ディスクを回転させるディスク駆動方法であって、
前記ディスクの面振れを抑制する安定化部材と前記ディスクのディスク面とを対向させながら近接させる近接工程と、
周辺の大気圧と、前記安定化部材と前記ディスク面との間隙部分の気圧との差圧を検出する差圧検出工程と、
検出された前記差圧に基づいて、前記安定化部材と前記ディスク面との間隙の幅を制御する制御工程と、
を有することを特徴とするディスク駆動方法。
【請求項7】
前記近接工程において、前記安定化部材と回転している前記ディスクの間隙を所定幅ずつ減少させていき、
前記制御工程において、差圧測定時における前記差圧の前記間隙の幅の変化に対する変化割合を算出し、前記間隙の幅を前記差圧の変化割合が所定値以下となったときの前記間隙の幅以下に制御することを特徴とする請求項6に記載のディスク駆動方法。
【請求項8】
前記近接工程において、前記安定化部材と回転している前記ディスクの間隙を減少させていき、
前記制御工程において、差圧測定時における前記差圧の前記間隙の幅の減少量に対する減少割合が、前記近接工程全体における前記差圧の前記間隙の幅の減少量に対する減少割合に対し、所定値以下となったときの前記間隙の幅以下を、前記ディスクの面振れ抑制領域として前記間隙を制御することを特徴とする請求項6に記載のディスク駆動方法。
【請求項1】
可撓性を有するシート状のディスクに対して情報の再生及び記録の少なくとも一方を行うために、前記ディスクを回転させるディスク駆動装置であって、
前記ディスクのディスク面に対向して近接し、前記ディスクの面振れを抑制する安定化部材と、
前記安定化部材の表面と、回転している前記ディスクのディスク面とを所定幅毎に近接させる近接部材と、
前記安定化部材の表面と前記ディスク面との間隙部分の気圧の周辺大気圧に対する差圧を検出する差圧計と、
前記近接部材により、前記安定化部材の表面と前記ディスク面とを近接させた際の、前記差圧計により検出された差圧を基に、前記安定化部材の表面と前記ディスク面との間隙部分の幅を制御する制御部と、
を備えることを特徴とするディスク駆動装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記安定化部材の表面と前記ディスク面とを近接させた際の、前記間隙部分の幅(C)の微小変化(ΔC)に対する前記差圧(P)の微小変化(ΔP)の割合である局所差圧勾配(Sk=ΔP/ΔC)を基に、前記間隙部分の幅を制御することを特徴とする請求項1に記載のディスク駆動装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記間隙部分の幅を、前記局所差圧勾配(Sk)が0以下になったときの前記間隙部分の幅以下に制御することを特徴とする請求項2に記載のディスク駆動装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記安定化部材の表面と前記ディスク面とを近接させた際の、前記間隙部分の幅(C)の微小変化に対する前記差圧(P)の微小変化の割合である局所差圧勾配(Sk)と、前記間隙部分の幅(C)の変化全体に対する前記差圧(P)の変化の割合である全体差圧勾配(St)との勾配比(Sk)/(St)、
又は前記局所差圧勾配(Sk)と、前記間隙部分の幅の変化領域全体における各部分の局所差圧勾配(Sk)の平均値である平均差圧勾配(Sa)との勾配比(Sk)/(Sa)、
を基に前記間隙部分の幅を制御することを特徴とする請求項1に記載のディスク駆動装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記間隙部分の幅を前記局所差圧勾配(Sk)と前記全体差圧勾配(St)との勾配比(Sk)/(St)、又は前記局所差圧勾配(Sk)と前記平均差圧勾配(Sa)との勾配比(Sk)/(Sa)が0.1以下となったときの前記間隙部分の幅以下に制御することを特徴とする請求項4に記載のディスク駆動装置。
【請求項6】
可撓性を有するシート状のディスクに対して情報の再生及び記録の少なくとも一方を行うために前記ディスクを回転させるディスク駆動方法であって、
前記ディスクの面振れを抑制する安定化部材と前記ディスクのディスク面とを対向させながら近接させる近接工程と、
周辺の大気圧と、前記安定化部材と前記ディスク面との間隙部分の気圧との差圧を検出する差圧検出工程と、
検出された前記差圧に基づいて、前記安定化部材と前記ディスク面との間隙の幅を制御する制御工程と、
を有することを特徴とするディスク駆動方法。
【請求項7】
前記近接工程において、前記安定化部材と回転している前記ディスクの間隙を所定幅ずつ減少させていき、
前記制御工程において、差圧測定時における前記差圧の前記間隙の幅の変化に対する変化割合を算出し、前記間隙の幅を前記差圧の変化割合が所定値以下となったときの前記間隙の幅以下に制御することを特徴とする請求項6に記載のディスク駆動方法。
【請求項8】
前記近接工程において、前記安定化部材と回転している前記ディスクの間隙を減少させていき、
前記制御工程において、差圧測定時における前記差圧の前記間隙の幅の減少量に対する減少割合が、前記近接工程全体における前記差圧の前記間隙の幅の減少量に対する減少割合に対し、所定値以下となったときの前記間隙の幅以下を、前記ディスクの面振れ抑制領域として前記間隙を制御することを特徴とする請求項6に記載のディスク駆動方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−252759(P2012−252759A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126638(P2011−126638)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【出願人】(591053926)財団法人エヌエイチケイエンジニアリングサービス (169)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【出願人】(591053926)財団法人エヌエイチケイエンジニアリングサービス (169)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
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