説明

デオキシニバレノール及びニバレノールを分解する新規微生物

【課題】デオキシニバレノールおよびニバレノールを分解する新規の微生物を提供することを課題とする。
【解決手段】alpha-proteobacteriaに属し、デオキシニバレノール及びニバレノールに分解能力を有し、新規微生物KSM1株と16S rRNA遺伝子の塩基配列において98%以上の相同性を示す微生物であり、さらに本発明は、alpha-proteobacteriaに属し、デオキシニバレノール及びニバレノールに対して分解能を有することを特徴とする新規微生物KSM1株である。さらに本発明は、前記微生物を用いるデオキシニバレノール及び/又はニバレノールの分解方法、及び前記微生物を含有するデオキシニバレノール及び/又はニバレノールの分解剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デオキシニバレノール及びニバレノールを分解する新規微生物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
かび毒は、ある種のかびが農作物に付着・増殖し、そこで産生する化学物質(天然毒素)のうち、人や家畜の健康に悪影響を及ぼすものの総称であり、現在300種類以上あるといわれている。代表的なかび毒としては、アフラトキシン(ナッツ類、穀類)、デオキシニバレノール(穀類)、パツリン(りんご加工品)、オクラトキシンA(穀類、豆類)などがある。このうち、アフラトキシンB1(農作物を含む一般の食品)、デオキシニバレノール(小麦)、パツリン(リンゴ果汁)が、我が国の食品衛生法に基づく規制の対象となっている(平成20年8月現在)。
【0003】
ムギ類を始めとする穀類に広く感染する赤かび病菌Fusarium graminearumが産生するデオキシニバレノール(以下DONと略称することがある。)、ニバレノール、T−2トキシンは、トリコテセン系マイコトキシンであり、ムギ生産地帯で大きな問題となっている。中でもデオキシニバレノールは、各国のムギ生産地帯で発生しているマイコトキシン汚染の主要因であり、摂取すると嘔吐、下痢などの急性中毒を引き起こすことから、世界的に本毒素の対策が喫緊の課題となっている。我が国でも平成14年5月に、厚生労働省においてコムギ粒の暫定基準濃度が1.1 ppm以下と定められた。
【0004】
従来この対策としては、化学的手法により赤かび病菌を制御する方法が用いられてきた。また近年は植物体に残存する化学農薬の危険性が指摘されることから、微生物農薬がより安心で安全な植物病害防除剤として注目されている(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照)。またバチルス・ズブチリスに属する菌株が産生するアイツリンAのフザリウムに対する増殖抑制効果を利用し、当該菌株の培養液で農産物を処理する方法が提案されている(特許文献3を参照。)。
【0005】
しかしデオキシニバレノールはトリコテセン骨格の構造を有し、121℃ 20分の加圧高温処理に対しても安定である。そのため、一旦赤かび病菌が発生した植物体においては、赤かび病を殺菌剤等で防除した後であっても、罹病した植物体の穂等に残存する。さらにデオキシニバレノールの特徴として、赤かび病が感染した植物体においては、発病したムギ粒等だけではなく、無病徴のムギ粒等にも蓄積される。このため、発病の有無にかかわらず、赤かび病菌汚染にされたムギ粒に蓄積されたデオキシニバレノールを低減する技術が求められている。
【0006】
そのためにデオキシニバレノールを直接除去する方法として、食品のレベルで物理的吸着により不活性化または排除する、家畜が食べてもそのまま排泄可能なカビ毒吸着剤(特許文献4を参照。)や、マイコトキシンを吸着除去する金属酸化物粒子複合体(特許文献5を参照。)が提案されている。
【0007】
一方で、食品となる以前に、直接穀物等に付着したデオキシニバレノールを除去することが望まれており、デオキシニバレノール分解微生物の探索が進められている。デオキシニバレノール分解微生物としては、現在のところ、土壌から分離されたグラム陰性菌Agrobacterium-RhizobiumグループのE3-39株(非特許文献1を参照。)、嫌気性細菌BBSH797(非特許文献2を参照。)、ムギ根圏土壌から分離されたDevosia属細菌に近縁のRS1株(特許文献6を参照。)、ムギ根圏土壌から分離されたNocardioides属に属するWSN05-2株、LS1株、SS1株およびSS2株(特許文献7を参照。)が報告されている。しかしながら、これまでにニバレノール分解微生物についての報告例は皆無である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−206212号公報
【特許文献2】特開2003−192515号公報
【特許文献3】特開平5−85911号公報
【特許文献4】特表2002−512011号公報
【特許文献5】特表2004−500214号公報
【特許文献6】特開2008−220179号公報
【特許文献7】特開2008−220184号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Shima J. et. al (1997) Appl. Environ. Microbiol., 63: 3825-3830
【非特許文献2】Fuchs E. et al(2002) Food Additives and Contaminants., 19: 379-386
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、デオキシニバレノールおよびニバレノールを分解する新規の微生物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、霞ヶ浦湖水に生息する微生物の中から、デオキシニバレノールおよびニバレノールを効率よく分解することができる菌株を見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、以下のとおりである。
【0012】
<1> 本発明は、alpha-proteobacteriaに属し、デオキシニバレノール及びニバレノールに分解能力を有し、新規微生物KSM1株と16S rRNA遺伝子の塩基配列において98%以上の相同性を示す微生物である。
<2> 本発明は、alpha-proteobacteriaに属し、デオキシニバレノール及びニバレノールに対して分解能を有することを特徴とする新規微生物KSM1株である。
<3> さらに本発明は、前記微生物を用いるデオキシニバレノール及び/又はニバレノールの分解方法である。
<4> さらに本発明は、前記微生物を含有するデオキシニバレノール及び/又はニバレノールの分解剤である。
【発明の効果】
【0013】
本発明において、熱に安定で、難分解性であるデオキシニバレノールおよびニバレノールを分解する新規微生物株、及び当該微生物を用いたデオキシニバレノール及び/又はニバレノールの分解処理方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】デオキシニバレノール及びニバレノールの残存濃度の経時変化を示す。
【図2】本発明の菌株の16S r RNA遺伝子の部分配列1235 bpに基づく系統樹である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、alpha-proteobacteriaに属し、Sphingomonas sp. に近縁で、デオキシニバレノール及びニバレノールに対して分解能を有することを特徴とする新規微生物KSM1菌株を提供することであり、更に前記微生物を用いて、デオキシニバレノール及びニバレノールを分解処理する方法である。以下本発明について詳説する。
【0016】
<本発明に係る新規微生物について>
本発明の菌株KSM1菌株は、霞ヶ浦湖水から採取されたもので、該菌株の16S rRNA遺伝子の部分配列1235 bpをDNA DATA BANK of JAPAN(以下DDBJと略称する。)において、BLAST検索により相同性を調べた結果、alpha-proteobacteriaのSphingomonassp.と96 %の相同性を示す(図2)。
【0017】
細菌の分類においては、経験的に、16S rRNA遺伝子の塩基配列の相同性が97%未満なら別種と判断されるケースが多い。本発明の菌株KSM1菌株は、Sphingomonas属細菌に近縁の新種の菌株と推測される。該KSM1菌株と異種と言い切れないところの、16S r RNA遺伝子の塩基配列の相同性が98%以上の細菌は報告されていない。
【0018】
なお前記に関連して、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターの寄託に関するQ&A「種が不明、あるいは新属新種の微生物を寄託したいのですが、可能ですか」の項においても、種の単位で安全性を定めている、「独立行政法人産業技術総合研究所の微生物実験取扱要領に定められている微生物の安全度レベル(BSL)」のリストにある細菌との比較において、「16S rDNA 1300 bpでBSL2の病原性細菌種との相同性が97%未満であるなら、一般細菌として取り扱います」との見解を示しており、97%未満では、同種とは判定していない。
【0019】
更に本発明の菌株KSM1菌株はR2A寒天培地で、小さなコロニーを形成する。本菌株KSM1菌株は、2009年10月9日に、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに、受領番号FERM AP-21853として寄託されている。
【0020】
本発明のKSM1菌株は、デオキシニバレノールを唯一の炭素源とする無機塩培地で、20 mg/mlのデオキシニバレノールを、24時間後には検出限界以下にまで低減した。また、ニバレノールを唯一の炭素源とする無機塩培地で、20 mg/mlのニバレノールを、48時間後には検出限界値以下にまで低減した。
【0021】
前記KSM1菌株の培養は、R2A寒天培地 (培地組成:酵母エキス, 0.5 g;ポリペプトン, 0.5 g;カザミノ酸, 0.5 g;グルコース, 0.5 g;溶性デンプン, 0.5 g;K2HPO4, 0.3 g;MgSO4・7H2O, 0.05 g;ピルビン酸ナトリウム, 0.3 g; 寒天, 15 gを入れ、全体で1000 mlとした。)、または1/10 R2A液体培地(培地組成:酵母エキス, 0.05 g;ポリペプトン, 0.05 g;カザミノ酸, 0.05 g;グルコース, 0.05 g;溶性デンプン, 0.05 g;K2HPO4, 0.03 g;MgSO4・7H2O, 0.005 g;ピルビン酸ナトリウム, 0.03 gを入れ、全体で1000 mlとした。)による培養が好ましい。また培養条件としては20℃〜30℃が好ましい。
【実施例】
【0022】
<霞ヶ浦湖水を接種源とした集積培養系の構築>
霞ヶ浦・土浦港付近の沿岸部6カ所の湖水を採取し、それぞれの試料湖水約50 mlにデオキシニバレノールを20 mg/mlとなるように添加し、28℃、暗所で、振とう条件にて30日間培養した。
【0023】
前記培養後の試料水について、高速液体クロマトグラフィー分析(以下単にHPLC 分析という。)により、該試料水中の残留デオキシニバレノール濃度を検討した結果、4種の試料水において検出限界値以下にまでデオキシニバレノールが減少していた。該HPLC 分析は、分析装置:600 Controller, 717plus Autosampler, 2487 Dual λ AbsorbanceDetector, カラム:Symmetry C18 5mm 3.9x150mm(Waters社製), 移動相:水/メタノール(85:15), 検出波長:220 nm, 流速:1 ml/分, 温度:室温で行った。
【0024】
前記4種の試料水からそれぞれ100 mlを採取し、下記表1に示す培地組成の無機塩培地(以下CDM培地という。)10 mlに、デオキシニバレノールを1 mg加えた、デオキシニバレノールを唯一の炭素源とする培地において、28℃、暗所で、振とう条件にて14日間集積培養を行った。
【0025】
【表1】

【0026】
前記培養の後、培養液からそれぞれ100 mlを採取し、更に新鮮な10 mlのCDM培地に移しかえ、デオキシニバレノールを1 mg加えて同様の条件で振とう培養を6日間行った。培養後の培地約1.2 mlを、エッペンドルフチューブに移し、常温、21,600 x g にて2分間遠心分離し、遠心分離後の上清を、口径0.20mmの滅菌フィルター(ADVANTEC社製)にてろ過し、ろ過後の培養上清をHPLC分析により培地中の残存デオキシニバレノール濃度を測定した(以下本測定方法をHPLC測定法という。)。測定の結果、1つの培養系において検出限界値以下にまで、デオキシニバレノールが減少していた。
【0027】
<DON分解細菌KSM1株の集積培養系からの分離>
前記デオキシニバレノールが検出限界値以下にまで減少した培養系について、CDM培地を用いて集積培養サンプルの1,000倍希釈液を作製した。該希釈液100 mlをR2A寒天培地に塗布し、28℃、暗所で培養を行った。該R2A寒天培地上での培養8日目の時点で、培地上を顕微鏡観察したところ、色彩と形態の異なる7種のコロニーが確認された。
【0028】
前記7種のコロニーのそれぞれを釣菌して、新たなR2A寒天培地に塗抹し、28℃で培養した。培養6日後に該寒天培地上に生育した7種の菌体を、それぞれ5 ml程度かきとり、デオキシニバレノールを20 mg/mlの濃度で含むCDM培地2 mlにそれぞれ懸濁し、該懸濁液を28℃で2日間振とう培養した。
【0029】
前記培養後の培地を、前記HPLC測定法により培地中の残存デオキシニバレノール濃度を測定した。測定の結果1種の培養系において、デオキシニバレノールが検出限界値以下にまで減少していた。該培養系に接種した菌株のデオキシニバレノール分解能の再現性を確認したのち、該菌株をKSM1株と命名した。
【0030】
<選抜した菌KSM1株のデオキシニバレノールおよびニバレノール分解能>
-80℃冷凍庫にグリセロールストックとして保存した前記KSM1菌株を、100 mlの前記1/10 R2A液体培地に接種し、28℃にて6日間振とう培養を行った。培養6日後の該培養液を、10倍希釈となるようにCDM培地に接種し、デオキシニバレノールを20 mg/mlとなるように添加した。デオキシニバレノール添加時を培養開始0時間として、経時的に培養液中の残存デオキシニバレノール濃度を、前記HPLC測定法により測定した。その結果、培養開始24時間後までにデオキシニバレノールは検出限界値以下まで分解された(図1)。なお培養開始時の培養液中の菌密度は1.5 x 107 CFU/mlであった。菌密度の測定はR2A寒天培地を用いた希釈平板法により求めた。
【0031】
前記デオキシニバレノール分解能の測定と同様にして、前記KSM1菌株のニバレノール分解能についても測定した。その結果、培養開始48時間後までにニバレノールは検出限界値以下まで分解された。図1にデオキシニバレノール及びニバレノールの残存濃度の経時変化を示す。該菌株の初期接種菌密度は1.5 x 10 CFU/mlである。
【0032】
<KSM1株の菌学的性質>
本発明のKSM1株の16S r RNA遺伝子の塩基配列の解析を行った。該菌株の16S rRNA遺伝子の部分塩基配列1,235bpを配列表の配列番号1に示す。さらに本発明の菌株について系統学的分類を行うため、DNA Data Bank of Japan (以下DDBJという。)において、BLAST検索により相同性を調べた結果、KSM1株は、alpha-proteobacteriaのSphingobium sp.に近縁(96%の相同性)であることが明らかとなった。図2に、本発明の菌株の16S r RNA遺伝子の塩基配列に基づく系統樹を示す。
【0033】
<KSM1株の培養特性>
本発明のKSM1株について、各種の培地を用いて、培養特性を検討した。NB液体培地(培地組成:水1 L当たり、肉エキス, 3 g; ペプトン, 5 gを入れ、全体で1,000mlとした。)中で、28℃で培養すると、培養6日目において、培地は透明のままであり、菌体の増殖は確認できなかった。
【0034】
1/3 NB液体培地(培地組成:水1 L当たり、肉エキス, 1 g, ;ペプトン, 1.67 gを入れ、全体で1,000mlとした。)中で、28℃で培養すると、培養6日目において、培地は透明のままであり、増殖は確認できなかった。
【0035】
1/10 NB液体培地(培地組成:水1 L当たり、肉エキス, 0.3 g; ペプトン, 0.5 gを入れ、全体で1,000mlとした。)中で、28℃で培養すると、培養6日目において、培地にごく薄い濁りが生じた(増殖+)。
【0036】
1/30 NB液体培地(培地組成:水1 L当たり、肉エキス, 0.1 g; ペプトン, 0.167 gを入れ、全体で1,000mlとした。)中で、28℃で培養すると、培養6日目において、培地に薄い濁りが生じた(増殖++)。
【0037】
TB液体培地(培地組成:水1 L当たり、酵母エキス, 24 g; ペプトン, 12 g ; K2HPO4 , 9.4 g;KH2PO4, 2.2 gを入れ、全体で1,000mlとした。)中で、28℃で培養すると、培養6日目において、培地は透明のままであり、菌体の増殖は確認できなかった。
【0038】
LB液体培地 (培地組成:水1 L当たり、酵母エキス, 5 g;トリプトン, 10 g; NaCl, 5 gを入れ、全体で1,000mlとした。)中で、28℃で培養すると、培養6日目において、培地は透明のままであり、菌体の増殖は確認できなかった。
【0039】
1/3 LB液体培地 (培地組成:水1 L当たり、酵母エキス, 1.67 g;トリプトン, 3.33 g; NaCl, 5 gを入れ、全体で1,000mlとした。)中で、28℃で培養すると、培養6日目において、菌体の増殖は確認できるものの、凝集して塊になっており、培地の液体部分は透明であった(増殖+++)。
【0040】
R2A液体培地 (培地組成:酵母エキス, 0.5 g;ポリペプトン, 0.5 g;カザミノ酸, 0.5 g;グルコース, 0.5 g;溶性デンプン, 0.5 g;K2HPO4, 0.3 g;MgSO4・7H2O, 0.05 g;ピルビン酸ナトリウム, 0.3 gを入れ、全体で1,000 mlとした。) 中で、28℃で培養すると、培養6日目において、培地は透明のままであり、菌体の増殖は確認できなかった。
【0041】
1/10 R2A液体培地 (培地組成:酵母エキス, 0.05 g;ポリペプトン, 0.05 g;カザミノ酸, 0.05 g;グルコース, 0.05 g;溶性デンプン, 0.05 g;K2HPO4, 0.03 g;MgSO4・7H2O, 0.005 g;ピルビン酸ナトリウム, 0.03 gを入れ、全体で1,000 mlとした。) 中で、28℃で培養すると、培養6日目において、半透明ではあるものの、培地に菌体の増殖による明確な濁りが生じた(増殖+++)。培養6日目の培養液のOD610値は約0.05であった。
【0042】
NA培地(培地組成:水1 L当たり、肉エキス, 3 g; ペプトン, 5 g; 寒天, 15 gを入れ、全体で1,000mlとした。)上で、28℃で培養すると、培養開始6日目において、菌体の増殖は確認できなかった。
【0043】
1/100 NA培地(培地組成:水1 L当たり、肉エキス, 0.03 g; ペプトン, 0.5 g; 寒天, 15 gを入れ、全体で1,000mlとした。)上で、28℃で培養すると、培養6日目において、ごく小さなコロニーが形成された(増殖+)。
【0044】
LB寒天培地(培地組成:水1 L当たり、酵母エキス, 5 g;トリプトン, 10 g; NaCl, 5 g; 寒天, 15 gを入れ、全体で1,000mlとした。)上で、28℃で培養すると、培養6日目において、菌体の増殖は確認できなかった。
【0045】
R2A寒天培地(培地組成:酵母エキス, 0.5 g;ポリペプトン, 0.5 g;カザミノ酸, 0.5 g;グルコース, 0.5 g;溶性デンプン, 0.5 g;K2HPO4, 0.3 g;MgSO4・7H2O, 0.05 g;ピルビン酸ナトリウム, 0.3 g; 寒天, 15 gを入れ、全体で1,000 mlとした。)上で、28℃で培養すると、培養6日目において、菌体の増殖による小さなコロニーが形成された(増殖+++)。
【0046】
以上より本発明のKSM1株の培養は、液体培地としては1/30 NB液体培地か1/10R2A液体培地が好ましく、中でも1/10 R2A液体培地が特に好ましい。固体培地としてはR2A寒天培地か1/100 NA培地が好ましく、中でもR2A寒天培地が特に好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の利用により、デオキシニバレノールおよびニバレノールの分解が可能となり、本発明の微生物を用いたデオキシニバレノールおよびニバレノールの分解剤の製造が可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
alpha-proteobacteriaに属し、デオキシニバレノール及びニバレノールに分解能力を有し、新規微生物KSM1株と16S rRNA遺伝子の塩基配列において98%以上の相同性を示す微生物。
【請求項2】
Alpha-proteobacteriaに属し、デオキシニバレノール及びニバレノールに対して分解能を有することを特徴とする新規微生物KSM1株。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の微生物を用いるデオキシニバレノール及び/又はニバレノールの分解方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の微生物を含有するデオキシニバレノール及び/又はニバレノールの分解剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−103862(P2011−103862A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265761(P2009−265761)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、農林水産省プロジェクト研究、生産・流通・加工工程における体系的な危害要因の特性解明とリスク低減技術の開発(麦類のかび毒汚染防止・低減技術の開発)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(501245414)独立行政法人農業環境技術研究所 (60)
【Fターム(参考)】