説明

デコリンによる細胞増殖の抑制

【課題】 細胞増殖を制御するための新しい方法を提供すること。
【解決手段】 本発明は、デコリンをコードする遺伝子でトランスフェクトされ、この遺伝子を発現する細胞を提供する。このようなトランスフェクトされた細胞培養物からの培養後の培地は、正常または異常細胞の増殖を抑制するのに使用され得る。精製されたデコリンは、細胞の増殖を抑制するのに使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、細胞生物学、特に細胞増殖の制御に関する。
【0002】
【従来の技術】通常の状態では、細胞の増殖は厳しく制御された工程であり、迅速な増殖は、胚の発達および組織の再生に必要であるが、その一方増殖は、完成された組織においては停止されなければならない。細胞増殖は、主として成長因子によって制御されるようである。既知の成長因子の大半は誘発性を有し、それには、表皮成長因子、血小板由来の成長因子、様々なインターロイキンおよびコロニー刺激因子が包含される。少数の細胞増殖の負に制御する因子もまた知られている。形質転換成長因子βは、いくつかの細胞タイプの増殖を阻止する多機能因子であるが、増殖も刺激し得る。他の増殖阻止物質には、様々なインターフェロンが包含され、増殖阻止の役割はヘパリン、ヘパラン硫酸およびそれらの断片に起因している。
【0003】増殖制御であまりよく知られていない機構は、細胞が近接した位置関係にあることに関する。正常の細胞は互いに接触すると、増殖を中止する。この現象は、通常、接触による増殖阻止として知られており、正常な組織構造の形成には明らかに重要である。
【0004】多数の重要な病理条件は、異常な細胞増殖が原因となっている。このような状態の最も主要なものは癌である。増殖に関与する要素による他の疾病には、滑膜組織の異常成長による慢性間接リウマチ、糸球体間質細胞が増殖する糸球体腎炎、および異常に増殖する細胞が平滑筋細胞である、動脈硬化症が含まれる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記の例から、細胞増殖を制御するための新しい方法を開発する必要があることは明白である。本発明は、この必要性について取り組むとともに、他の関連した利点を提供する。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、プロテオグリカンであるデコリン(PG-IIまたはPG-40としても知られる)に関する。本発明は、デコリンをコードする遺伝子によってトランスフェクトされ、この遺伝子を発現する細胞およびそれによって生産される組換えデコリンを提供する。このようなトランスフェクトされた細胞培養物の培養後の(spent)培養培地は、正常または異常細胞の増殖を抑制するのに使用され得る。更に、精製されたデコリンは、細胞増殖を抑制するのに使用され得る。
【0007】本発明は、デコリンcDNAでトランスフェクトされた動物細胞を提供し、ここで上記デコリンは、デコリンの天然組成物およびその機能的特性を保持するその改変物からなる群から選択され、そして上記動物細胞は、細胞増殖阻害活性の組換えデコリンを分泌し得る。
【0008】本発明はまた、実質的に精製された組換えデコリンを提供し、ここで上記デコリンは、デコリンの天然組成物およびその機能的特性を保持するその改変物からなる群から選択され、そして上記精製組換えデコリンは天然の組織源由来の精製に関連した不純物を実質的に含有せず、細胞増殖阻害活性を有する。
【0009】本発明はまた、成熟コアタンパク質の4位のアミノ酸であるセリンの位置に、スレオニンを有し、そして天然の組織源由来の精製に関連した不純物を実質的に含有せず、細胞増殖阻害活性を有する、実質的に精製された組換えデコリンを提供する。
【0010】さらに、本発明は、上記の動物細胞から産生される、上記の実質的に精製された組換えデコリンを提供する。
【0011】本発明はまた、上記動物細胞から産生される、成熟コアタンパク質の4位のアミノ酸であるセリンの位置に、スレオニンを有し、そして天然の組織源由来の精製に関連した不純物を実質的に含有せず、細胞増殖阻害活性を有する実質的に精製された組換えデコリンを提供する。
【0012】さらに、本発明は、デコリンを産生する動物細胞からの培養後の培地にデコリンによって抑制され得る動物細胞を接触させることによって、上記デコリンによって抑制され得る動物細胞の増殖を抑制する方法を提供し、ここで上記精製組換えデコリン産生細胞は上記動物細胞である。
【0013】本発明はまた、本発明の実質的に精製された組換えデコリンと、デコリンによって抑制され得る動物細胞とを接触させることによって、上記デコリンによって抑制され得る動物細胞の増殖を抑制する方法を提供する。
【0014】好ましい実施態様では、この方法において、上記精製組換えデコリンが上記の動物細胞によって産生される。
【0015】さらに本発明は、増殖性疾病の治療用の薬剤を調製するための、本発明の実質的に精製された組換えデコリンの使用を提供する。
【0016】好ましい実施態様では、上記使用において、上記疾病は、リウマチ様関節炎、糸球体腎炎またはアテローム硬化症である。
【0017】本発明はまた、細胞外マトリックス成分のタイプおよび/または量に影響を与える薬剤を調節するための、本発明の実質的に精製された組換えデコリンの使用を提供する。
【0018】
【発明の実施の形態】プロテオグリカンは、1またはそれ以上のグリコサミノグリカン鎖を有するタンパクである。既知のプロテオグリカンは様々な機能を行い、様々な細胞部分において見いだされる。しかし、その多くは、細胞外マトリックスの成分であり、そのマトリックスにおいてこれらのプロテオグリカンは細胞をマトリックスに組み入れたり、細胞をマトリックスに付着させたりする働きをする。
【0019】PG-IIまたはPG-40としても知られるデコリンは、繊維芽細胞によって生産される小さなプロテオグリカンである。そのコアタンパクは、分子量約40,000ダルトンを有する。コアは、配列決定されており(本願で参考のために引用した、KrusiusおよびRuoslahti, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:7683(1986); Dayら、Biochem. J. 248:801(1987))、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸タイプの単一なグリコサミノグリカン鎖を有することが知られている(本願で参考のために引用した、Pearson, ら、J. Biol. Chem. 258:15101(1983))。デコリンに関するすでに既知の機能は、タイプIおよびタイプIIコラーゲンヘの結合、およびこのコラーゲンによる筋原繊維の形成に対する影響のみである(Vogelら、Biochem. J. 223:587(1984))。
【0020】デコリンの分子生物学研究は、細胞増殖の制御におけるその役割について、予想外の発見に現在達しており、これらの発見により本発明の基礎が形成される。
【0021】3T3およびCOS細胞のような他の細胞もまた使用され得るが、デコリンcDNAは、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞、好ましくはジヒドロ葉酸レダクターゼ(dhfr)を生産しないような細胞にトランスフェクトされる。このようなトランスフェクションは、当該技術分野に既知の方法によって成し遂げられる。トランスフェクトされた細胞を、次いで培地において増殖させる。
【0022】ヒトデコリンcDNAがトランスフェクトされ、このcDNAからのプロテオグリカンを発現する、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、もとの細胞よりも基層部(substratum)により付着するようである。更に、cDNAからのデコリンを発現する細胞の増殖を抑制すると、それらは様々なコントロール細胞よりも低い飽和濃度に増殖した。これらのコントロールは、デコリンのコアタンパクを発現する構築物でトランスフェクトされ、デコリンを発現する細胞と同程度に増幅された細胞を含んでいた。これらの細胞は、もとのCHO細胞と類似していた。増殖および付着の変化の程度は、生産されたデコリンの量に比例していた。
【0023】更に、付着および飽和濃度における変化は、組換えデコリンを発現する細胞の培養後の培養培地およびこのような培養培地から単離され、精製されたデコリンにおいて再現することができた。これらの発見は、細胞増殖の制御においてデコリンが、以前には知られていなかった役割を果しており、細胞増殖を調整するのに使用され得ることを示している。腫瘍遺伝子で形質転換された3T3細胞にて見られる効力は、本発明が増殖性疾病の治療において有用であり得ることを示唆している。
【0024】本願で使用される、「デコリン」という用語は、KrusiusおよびRuoslahti、前出、において、それであるとされる特性を有する構造的特性を有し、実施例IIIの方法によって決定されるように、細胞増殖を抑制するプロテオグリカンをさしていう。ヒト繊維芽細胞デコリンは、本願で参考のために引用されているKrusiusおよびRuoslahti、前出、図2において示されるアミノ酸配列を実質的に有する。「デコリン」は、機能的特性を保持する天然の組成物およびその修飾物の両方をさしていう。
【0025】本願で使用される用語「実質的に精製されたデコリン」とは、実施例IVにおいて示される実験方法によって得られる精製度をさしていう。
【0026】本発明の組換えデコリンは、天然のプロテオグリカンの構造に実質的に相当する構造を有する。しかし、制限された変形は、デコリンの活性を破壊せずに成し遂げられ得る。
【0027】
【実施例】
(実施例I)
デコリンおよびデコリンコアタンパクの発現本願で参考のために引用されているKrusiusおよびRuoslahti, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:7683(1986)における1.8kbの全長のデコリンcDNAをデコリン発現ベクターの構築に使用した。この細胞系はATCC(American Type CultureCollection,12301 Parklawn Dr., Rockville MD 20852 USA)に受託番号CRL10332で寄託されている。デコリンコアタンパクを発現するために、セリンをコードするTCTである第4コドンを、トレオニンをコードするACTに変化させるというcDNAの変異を、本願で参考のために引用されているKunkel, Proc. Natl.Acad. Sci USA 82:488(1985)に従って、位置特異的変異により行った。哺乳類発現ベクターpSV2-DecorinおよびpSV2-Decorin/CP(core protein)を、3.4kbのpSV2のHindIII-Bam HI断片(本願で参考のために引用されているMulliganおよびBerg,Science 209:1423(1980)に記載)にデコリンcDNAまたは変異デコリンcDNAをそれぞれ連結させることによって構築した。ジヒドロ葉酸レダクターゼ(dhfr)を産生しないCHO細胞(CHO-DG44)を、リン酸カルシウム沈澱方法(本願で参考のために引用されているGraham. F. およびVan der Eb. Virology 52:456(1973))によってpSV2-DecorinまたはpSV2-Decorin/CPおよびpSV2dhfrでコトランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞を、9%の透析胎児ウシ血清、2mMのグルタミン、100ユニット/mlのペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンを補足した、ヌクレオシドが入っていないα改変最小必須培地(α-MEM, GIBCO, Long Island)において培養した。トランスフェクトされた細胞からのコロニーをクローニングシリンダで採取し、これを増殖させ(expanded)、35SO4で標識した培地上澄み液による免疫沈澱によってデコリンの発現を検査した。大量のデコリンを発現するクローンについて、メトトレキセート(MTX, Kaufman and Sharp, J. Mol. Biol. 159:601(1982))の濃度を0.64μMに段階的に増加させることによって遺伝子増幅を行った。増幅されたすべての細胞系を、限界希釈法またはMTX耐性の単一コロニーを採取することによってクローン化した。これらの樹立細胞系の保存培養物をMTX含有培地中に保持した。実験に使用する前に、保存培養物からのMTXを含まない培地中で細胞を継代培養し、MTXの影響の可能性を除去するために、この培地の中を少なくとも一回通過させた。コントロールは、pSV2dhfrのみでトランスフェクトし、その後実験細胞と全く同様に処理した。35SO4または3H-ロイシンによる細胞の代謝標識および免疫沈澱を、本願で参考のために引用されているBrennanら、J. Biol. Chem 259:13742(1984)に説明されるように実施した。
【0028】図1は、還元条件の下でSDS-7%ポリアクリルアミドゲル電気泳動法を使用して、増幅されていない、および増幅されたトランスフェクタントにおけるデコリンの発現を示す。(A)ヒトデコリンのNH2末端に対して調製されたウサギ抗ペプチド抗血清によって免疫沈滅した、35SO4で標識された培養物上澄み液(KrusiusおよびRuoslahti、前出)。(B)培地に分泌された、35SO4で標識されたすべての産物。(C)培地に分泌されたすべての3H-ロイシンで標識された産物。レーン1:pSV2dhfrでトランスフェクトされ、増幅されていないクローンである、コントロールのトランスフェクタントA;レーン2:コントロールのトランスフェクタントAからのクローンであって、0.64μMのMTX耐性にまで増幅されたクローンである、コントロールのトランスフェクタントC;レーン3:0.2pg/細胞/日のデコリンを発現する、増幅されていない第1トランスフェクタントである、クローン1;レーン4:0.32μMのMTX耐性にまで増幅され、4pg/細胞/日のデコリンを発現するクローンである、クローン31;レーン5:0.64μMのMTX耐性にまで増幅され、25pg/細胞/日のデコリンを発現するクローンである、クローン61。
【0029】図2は、CHO細胞におけるデコリンコアタンパクの発現を示す。レーン1および2:3H-ロイシンで標識された培養物上澄み液を図1に説明されるように免疫沈澱した。レーン3および4:培地に分泌される、すべての3H-ロイシン標識産物。レーン1および3:pSV2-Decorin/CPでトランスフェクトされたCHO細胞。レーン2および4:pSV2dhfrでトランスフェクトされたコントロールCHO細胞。
【0030】(実施例II)
細胞の広がり(spreading)および飽和濃度の定量実施例Iの細胞系を、ウェル当り3×105細胞濃度でMTXを含まない培地中の24のウェルプレートにプレートした。24時間後、培地を取り換え(ウェル当り0.3ml)、細胞を更に24時間インキュベートした。これらの培養物上澄み液中のデコリンの濃度を競合ELISAによって決定した(本願で参考のために引用されているEngvall, Meth. Enzymol. 70:419(1980))。簡単に述べると、培養物上澄み液とデコリンに対するウサギ抗ペプチド抗体との混合物を、ヒト胎児膜から精製したデコリンでコートしたマイクロタイタープレートのウェル中でインキュベートした(Brennanら、前出)。ウェルに結合した抗体の量を、第2抗体としてアルカリホスファターゼ結合ヤギ抗ウサギIgGによって決定した。精製したデコリンの様々な濃度を使用して標準曲線を作製した。24時間のインキュベーションを行った後、血球計によって細胞の数を数えた。
【0031】表1に示されるように、デコリン遺伝子でトランスフェクトされた細胞は、コントロールの細胞よりも広い広がりの領域を示した。デコリン発現が増幅されたところでは、広がりの領域は発現が増大するとともに増加した。
【0032】表1はまた、デコリンを発現する細胞、およびコントロール細胞の飽和濃度を示す。飽和濃度を決定するために、細胞(1.2×105)を、60mmの培養皿中のMTXを含まない培地にプレートした。6時間後、細胞を、3%のパラホルムアルデヒドで固定し、トルイジン青で染色した。拡散の定量評価を、像分析器(Olympus)の表面集積プログラム(surface integration program)で細胞が広がった表面領域を測定することによって行った。広がっていない細胞を測定から除いた。50の細胞からの平均および標準偏差値を示す。
【0033】
【表1】


【0034】(実施例III)
培養後の培地の効果の分析CHO細胞およびHarvey ras遺伝子で形質転換されたNIH 3T3細胞の形態に対する、培養後の培地の影響を調べた。これは、クローン61からの2日間培養後の培地(約20μg/mlのデコリンを含む)およびコントロール細胞系Cからの同様に培養した培地に(デコリンを含まない)、2×105細胞/皿の濃度で、35mmの皿中にCHO細胞をプレートすることによって、行われた。上記、細胞系は、実施例Iに記載のものである。
【0035】図5は、上記の処理後のCHO細胞の形態を示し、図6は、腫瘍遺伝子で形質転換された3T3細胞処理後の形態を示す。観察されるように、デコリンを発現する細胞系であるクローン31からの培養後の培地は、デコリンを発現する細胞自身において観察されるのと同様の形態を誘導した。このように処理された腫瘍遺伝子で形質転換された3T3細胞は、通常の細胞とほぼ同様の形態を示す。この形態は、しばしば「接触抑制形態」と呼ばれ、正常の成長の制御を示すものと思われる。この現象によると、コントロール培地で処理された培養物と比較してこれらの培養物中には細胞が少なかった。これらの結果は、デコリンを発現する細胞系が、組換えデコリン発現細胞自身で見られる形態上のおよび増殖の阻止効果を生み出すことを示す。
【0036】(実施例IV)
培養後の培地からのデコリンの精製クローン61細胞を、9%の透析胎児ウシ血清、2mMのグルタミン、100ユニット/mlのペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシンを補足した、ヌクレオチドを含まないα-MEM培地中、8-175cm2の培養フラスコで90%の集密度にまで増殖させた。90%の集密度となったときに、培地を、1個のフラスコあたり6%の透析胎児ウシ血清を補足したヌクレオシドを含まない25mlのα-MEMに変えた。この培地は、あらかじめ0.05Mのリン酸緩衝剤、pH7.4中の0.25MのNaClで平衡化したDEAE セファロース ファスト フロー カラム(Pharamacia)を通過させてある。細胞を3日間培養し、培養後の培地を採取し、迅速に0.5mMのフェニルメチルスルホニルフルオライド、1μg/mlのペプスタチン、0.04mg/mlのアプロチニンおよび5mMのEDTAとなるように調製した。
【0037】400mlの培養後の培地をまず、ゼラチン−セファロースに通過させ、繊維芽細胞およびセファロースに結合する物質を除去した。次いで通り抜けたフラクションを、50mMのTris/HCl, pH7.4および0.2MのNaCl中で予備平衡化させたDEAE-セファロースと混合し、これを4℃で一晩ゆるやかに混合することによって吸収させた。このスラリーを、1.6cm×24cmのカラムに注ぎ、0.2MのNaClを含む50mMのTris/HCl、pH7.4で更に洗浄し、50mMのTris/HCl、pH7.4中、0.2M-0.8MのNaClの直線勾配で溶離した。デコリンの濃度を、上記のように競合ELISAによって決定した。
【0038】図7は、DEAE-セファロースファストフローにおける溶離パターンを示す。観察されるように、デコリンを、培地中に存在するタンパクの塊から分離し、最高の免疫反応を示すフラクションから実質的に純枠な形で回収し得た。
【0039】本発明を、好ましい実施態様を参照して説明したが、本発明の精神を逸脱せずに様々な改変を行うことが可能であることは理解されなければならない。従って、本発明は上記の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0040】
【発明の効果】本発明により、デコリンをコードする遺伝子によってトランスフェクトされ、この遺伝子を発現する細胞およびそれによって生産される組換えデコリンが提供される。従って、本発明により細胞増殖を制御するための新しい方法が提供される。さらに、本発明により、異常な細胞増殖が原因となる多数の重要な病理状態の治療が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、増幅されていない、および増幅されたトランスフェクタント(transfectant)におけるデコリンの発現を示す電気泳動写真である。
【図2】図2は、CHO細胞におけるデコリンコアタンパクの発現を示すラジオグラムである電気泳動写真である。
【図3】図3は、CHO細胞におけるデコリンの発現によって生じる形態の変化を示す生物形態写真である。
【図4】図4は、培養物中のデコリン発現細胞およびコントロールのCHO細胞の増殖を示すグラフである。
【図5】図5は、培養後の培養培地のCHO細胞の形態に対する影響を示す顕微鏡による生物形態写真である。
【図6】図6は、培養後の培養培地の、Harvey ras遺伝子で形質転換されたNIH 3T3細胞の形態に対する影響を示す顕微鏡による生物形態写真である。
【図7】図7は、デコリン発現細胞系であるクローン61の培養液の培養培地の、DEAE-セファロースからの溶離パターンを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 デコリンcDNAでトランスフェクトされた動物細胞であって、該デコリンが、デコリンの天然組成物およびその機能的特性を保持するその改変物からなる群から選択され、そして該動物細胞が、細胞増殖阻害活性の組換えデコリンを分泌し得る、動物細胞。
【請求項2】 実質的に精製された組換えデコリンであって、該デコリンが、デコリンの天然組成物およびその機能的特性を保持するその改変物からなる群から選択され、そして該精製組換えデコリンが天然の組織源由来の精製に関連した不純物を実質的に含有せず、細胞増殖阻害活性を有する、組換えデコリン。
【請求項3】 成熟コアタンパク質の4位のアミノ酸であるセリンの位置に、スレオニンを有し、そして天然の組織源由来の精製に関連した不純物を実質的に含有せず、細胞増殖阻害活性を有する、実質的に精製された組換えデコリン。
【請求項4】 実質的に精製された組換えデコリンであって、該デコリンが、デコリンの天然組成物およびその機能的特性を保持するその改変物からなる群から選択され、そして天然の組織源由来の精製に関連した不純物を実質的に含有せず、細胞増殖阻害活性を有し、該精製組換えデコリンが請求項1に記載の動物細胞から産生される、組換えデコリン。
【請求項5】 成熟コアタンパク質の4位のアミノ酸であるセリンの位置に、スレオニンを有し、そして天然の組織源由来の精製に関連した不純物を実質的に含有せず、細胞増殖阻害活性を有する実質的に精製された組換えデコリンであって、該精製組換えデコリンが請求項1に記載の動物細胞から産生される、組換えデコリン。
【請求項6】 デコリンを産生する動物細胞からの培養後の培地にデコリンによって抑制され得る動物細胞を接触させることによって、該デコリンによって抑制され得る動物細胞の増殖を抑制する方法であって、該精製組換えデコリン産生細胞が請求項1に記載の動物細胞である、方法。
【請求項7】 実質的に精製された組換えデコリンと、デコリンによって抑制され得る動物細胞とを接触させることによって、該デコリンによって抑制され得る動物細胞の増殖を抑制する方法であって、ここで該デコリンが、デコリンの天然組成物およびその機能的特性を保持するその改変物からなる群から選択され、そして該精製組換えデコリンが天然の組織源由来の精製に関連した不純物を実質的に含有せず、細胞増殖阻害活性を有する、方法。
【請求項8】 前記精製組換えデコリンが請求項1に記載の動物細胞によって産生される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】 増殖性疾病の治療用の薬剤を調製するための、実質的に精製された組換えデコリンの使用であって、該デコリンが、デコリンの天然組成物およびその機能的特性を保持するその改変物からなる群から選択され、そして該精製組換えデコリンが天然の組織源由来の精製に関連した不純物を実質的に含有せず、細胞増殖阻害活性を有する、使用。
【請求項10】 前記疾病がリウマチ様関節炎、糸球体腎炎またはアテローム硬化症である、請求項9に記載の使用。
【請求項11】 細胞外マトリックス成分のタイプおよび/または量に影響を与える薬剤を調節するための、実質的に精製された組換えデコリンの使用であって、該デコリンが、デコリンの天然組成物およびその機能的特性を保持するその改変物からなる群から選択され、そして該精製組換えデコリンが天然の組織源由来の精製に関連した不純物を実質的に含有せず、細胞増殖阻害活性を有する、使用。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【公開番号】特開平9−117278
【公開日】平成9年(1997)5月6日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−61486
【分割の表示】特願平1−507543の分割
【出願日】平成1年(1989)6月23日
【出願人】(591180152)ラ ホヤ キャンサー リサーチ ファウンデーション (8)
【氏名又は名称原語表記】LA JOLLA CANCER RESEARCH FOUNDATION