説明

デジタルオーディオ信号補間装置、及びデジタルオーディオ信号補間方法

【課題】簡易な処理で真の値との誤差を極力小さくすることができる、デジタルオーディオ信号補間装置、及びデジタルオーディオ信号補間方法を提供する。
【解決手段】訂正不可能なポイントの補間値候補領域を選択し、補間値候補領域を複数の分割領域に等分割し、訂正不可能なポイントの直前のポイントまでの状態を再現したハイパスフィルタに、分割領域の代表値を加えて通過させ、値が最小となる分割領域を選択して更に複数の分割小領域に等分割し、訂正不可能なポイントの直前のポイントまでの状態を再現したハイパスフィルタに、分割小領域の代表値を加えて通過させ、値が最小となる分割小領域の代表値を訂正不可能なポイントの補間値とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルオーディオ信号の補間装置及び補間処理に関し、特に、CD−DAを再生する再生機や、CD−ROMからMP3などを再生する機器において、訂正不可能なサンプリングポイントの信号値を、前のポイントの信号値を用いて補間するデジタルオーディオ信号の補間装置及び補間方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CD(コンパクトディスク)などのデジタルオーディオ信号再生装置では、音源であるデジタルオーディオが記録される過程や、これを再生する過程でエラーが生じることを避けられない。そこで、エラー訂正符号を使用してエラー対策を図るのが普通である。しかしながら、エラー訂正符号の訂正能力を越えるエラーが発生した場合では、訂正が不可能である。
【0003】
従来、このような場合は、訂正不可能なサンプリングポイント(以下、単にポイントと示す)を時間的に近傍の正しいポイントを使用して補間し、エラーの影響を低減している。このようなデジタルオーディオ信号補間装置としては、例えば特許文献1に記載された装置が知られている。特許文献1に記載された装置では、補間対象となる訂正不可能なポイント(以下、対象ポイントと示す)とその前後の正しいポイント(前後数ポイントずつ)とを、予めメモリに記憶させてある一通り以上の係数テーブルと積和演算し、その結果に基づき対象ポイントの値として補間する。
【0004】
しかし、特許文献1に記載された装置では、対象ポイントが複数になった場合、補間に用いる係数テーブルが増加するため、計算量が増加し、処理が複雑になってしまうという問題があった。また、積和演算にはIIR型フィルタを用いるが、単純なIIR型フィルタでは、補間効果が低く、対象ポイントの補間された値が真の値から比較的離れた値であるため、補間された値を用いて対象ポイントと前後のポイントとを再生すると、「プチ」という耳障りなノイズ(以下、プチ音と示す)が残ってしまう(プチ音低減効果が低い)という問題があった。
【0005】
一方、対象ポイントの値として、前後の正しいポイントの平均値を用いる装置も従来知られている。しかし、対象ポイントが複数点連続して発生した場合や、対象ポイントがピーク点になる場合、補間効果が低く、補間された値と真の値とがかけ離れた値になってしまう。これを改善するものとして、前後の正しいポイントの増加率を用いて対象ポイントの値を補間する装置が提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
特許文献2に記載された装置では、対象ポイントが複数点連続して発生した場合にも対応できるという利点がある。しかしながら、補正に用いる処理範囲(増加率の計算対象となる前後のポイントの数)を固定化してバッファに取り込み、波形を加工して対象ポイントの補間を行うため、開始判定など補間のための処理が複雑になってしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3572769号公報(図1)
【特許文献2】特開平9−17133号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたもので、簡易な処理で真の値との誤差を極力小さくすることができる、デジタルオーディオ信号補間装置、及びデジタルオーディオ信号補間方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係るデジタルオーディオ信号補間装置は、CDなどから抽出されたデジタルオーディオ信号において訂正不可能なポイントを補間するデジタルオーディオ信号補間装置であって、前記訂正不可能なポイントの補間値候補領域を選択し、前記補間値候補領域を複数の分割領域に等分割し、前記訂正不可能なポイントの直前のポイントまでの状態を再現したハイパスフィルタに、前記分割領域の代表値を加えて通過させ、値が最小となる前記分割領域を選択して更に複数の分割小領域に等分割し、前記訂正不可能なポイントの直前のポイントまでの状態を再現した前記ハイパスフィルタに、前記分割小領域の代表値を加えて通過させ、値が最小となる前記分割小領域の前記代表値を前記訂正不可能なポイントの補間値とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
簡易な処理で真の値との誤差を極力小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係わるデジタルオーディオ信号補間装置の構成の一例を説明する概略ブロック図。
【図2】訂正不可能なポイントを補間する一連の流れを説明するフローチャート。
【図3】訂正不可能なポイントが1点の場合における補間の一連の流れを説明するフローチャート。
【図4】訂正不可能なポイントが連続して2点存在する場合における補間の一連の流れを説明するフローチャート。
【図5】補間の方法を説明するための略線図。
【図6】サンプル補間プロセスPにおける補間方法を説明するための概略図。
【図7】サンプル補間プロセスPにおける補間方法を説明するための概略図。
【図8】訂正不可能なポイントを補間する一連の流れをC言語的に示した簡易プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
始めに、図1を参照して、本実施の形態に係わるデジタルオーディオ信号補間装置の構成を説明する。図1は、本発明の実施の形態に係わるデジタルオーディオ信号補間装置の構成の一例を説明する概略ブロック図である。
【0014】
図1に示すように、本実施の形態に係わるデジタルオーディオ信号補間装置は、CD−DAなどデジタルオーディオ信号を記録したCD1bと、CDデコーダー1aと、CD1bからデジタルオーディオ信号を抽出するCDプロセッサ2と、抽出されたデジタルオーディオ信号を解析・加工するDSP3と、デジタルオーディオ信号をアナログ化するDAC4と、アナログ化されたオーディオ信号を増幅させるAMP5と、オーディオ信号を出力するスピーカ6とから構成されている。
【0015】
CD−DAの仕様は、サンプリング周波数44.1kHz、量子化ビット深度16bit、2チャンネル(L,R)と規格化されている。従って、CDプロセッサ2で抽出されたデジタルオーディオ信号は、具体的には、チャンネル(L/R)用のクロック信号と、サンプリング周波数44.1kHzのベースクロック信号と、オーディオデータ信号との、3種類の信号としてDSP3に入力される。
【0016】
次に、DSP3において、入力されたデジタルオーディオ信号から、訂正不可能なポイントが検出された場合に補間を行う手順を、図2を用いて説明する。図2は、訂正不可能なポイントを補間する一連の流れを説明するフローチャートである。
【0017】
図2に示すように、まず、ステップS1において、CDプロセッサ2から入力されたデジタルオーディオ信号に、エラー訂正が不可能なポイントがあるか否かを識別する。エラー訂正が不可能なポイントがない場合、補間の必要がないと判断され、補間処理を終了する。
【0018】
一方、ステップS1において、訂正不可能なポイントが存在すると識別された場合、ステップS2に進み、サンプル補間プロセスPを実行する。ここで、サンプル補間プロセスPの具体的な手順について、図3,図5,及び図6を用いて説明する。図3は、訂正不可能なポイントが1点の場合における補間の一連の流れを説明するフローチャートである。また、図5は、補間の方法を説明するための略線図であり、(a)は訂正不可能なポイントが1点の場合、(b)は訂正不可能なポイントが連続して3点続いた場合、(c)は訂正不可能なポイントが連続して4点続いた場合の略線図を示している。更に、図6は、サンプル補間プロセスPにおける補間方法を説明するための概略図である。
【0019】
図3に示すように、サンプル補間プロセスPを開始すると、最初に、訂正不可能なポイントの補間値の算出対象となる範囲を選択する(ステップS21)。補間値の算出対象範囲としては、例えば、訂正不可能なポイントの直前の正しいポイントの値を中心とする上下フルスケールの4分の1の幅で区切られた範囲を用いることができる。また、例えば、訂正不可能なポイントの前後の1ないし2ポイントが存在する範囲、もしくは該範囲の2倍の範囲を用いることもできる。なお、上述した2つの範囲の選択方法はあくまでも例であり、これ以外の方法で範囲を選択してもよい。
【0020】
ここでは、図5(a)に示すように、例えばポイントBが訂正不可能なポイントであり、直前のポイントAと直後のポイントEとは正しい値である場合に、上述した選択方法のうち前者の方法を用いて補間値の算出対象範囲を選択する場合を例にあげて説明する。なお、量子化ビット深度16bitであるため、0を中心としてフルスケールは−0x7FFFから0x7FFFである。例えば、ポイントAの値が0x2000の場合、0x2000を中心とする上下フルスケールの4分の1の幅で区切られた範囲は、図6(a)に示すように、0から0x4000までの範囲となる。すなわち、ステップS21で選択される補間値の算出対象範囲は、0から0x4000までの範囲となる。
【0021】
次に、ステップS22に進み、選択された補間値の算出対象範囲を16分割する(図6(b)参照)。すなわち、0から0x4000までの範囲が、0から0x0400までの範囲(範囲1)、0x0400から0x0800までの範囲(範囲2)、0x0800から0x0C00までの範囲(範囲3)、0x0C00から0x1000までの範囲(範囲4)、0x1000から0x1400までの範囲(範囲5)、0x1400から0x1800までの範囲(範囲6)、0x1800から0x1C00までの範囲(範囲7)、0x1C00から0x2000までの範囲(範囲8)、0x2000から0x2400までの範囲(範囲9)、0x2400から0x2800までの範囲(範囲10)、0x2800から0x2C00までの範囲(範囲11)、0x2C00から0x3000までの範囲(範囲12)、0x3000から0x3400までの範囲(範囲13)、0x3400から0x3800までの範囲(範囲14)、0x3800から0x3C00までの範囲(範囲15)、0x3C00から0x4000までの範囲(範囲16)、の16の範囲に等分割される。
【0022】
続いて、ステップS23に進み、ステップS22で分割された16の範囲のそれぞれから代表点(値)を抽出し、ポイントB補間候補(値)とする。そして、それぞれの範囲について、ポイントB補間候補を、カットオフ周波数10kHzの2次HPF(ハイパスフィルタ)に通す。HPFでは、補正が必要なポイントBの直前の正しいポイントであるポイントAまでの内部状態を繰り返し、再現させる。そして、再現された状態、すなわち、ポイントAまでの正しい状態にポイントB候補を追加して結果を出力する。更に、HPFからの出力値が最小の範囲を、次のステップにおける補間値の算出対象範囲として範囲の絞込みを行う。
【0023】
ステップS23における補間値算出範囲の絞込みは、補間値が真の値に近いほどプチ音が小さくなるという性質を利用している。プチ音は高周波数領域に存在するので、10kHz以下の領域をカットし高周波数領域のみを透過させるHPFに、ポイントAまでの正しい状態に、ポイントB補間候補を加えて通すことで、プチ音を検出している。ここでは、例えば0から0x0400までの範囲(範囲1)が、プチ音が最小となる範囲として選択されたとする。
【0024】
次に、ステップS24において、ステップS23で選択された補間値の算出対象範囲を、更に16分割する(図6(c)参照)。すなわち、0から0x0040までの範囲が、0から0x0040までの範囲(範囲1´)、0x0040から0x0080までの範囲(範囲2´)、0x0080から0x00C0までの範囲(範囲3´)、0x00C0から0x0100までの範囲(範囲4´)、0x0100から0x0140までの範囲(範囲5´)、0x0140から0x0180までの範囲(範囲6´)、0x0180から0x01C0までの範囲(範囲7´)、0x01C0から0x0200までの範囲(範囲8´)、0x02000から0x0240までの範囲(範囲9´)、0x0240から0x0280までの範囲(範囲10´)、0x0280から0x02C0までの範囲(範囲11´)、0x02C0から0x0300までの範囲(範囲12´)、0x0300から0x0340までの範囲(範囲13´)、0x0340から0x0380までの範囲(範囲14´)、0x0380から0x03C0までの範囲(範囲15´)、0x03C0から0x0400までの範囲(範囲16´)、の16の範囲に等分割される。
【0025】
最後に、ステップS25に進み、ステップS23と同様にして、分割された16の範囲からプチ音が最小となる範囲を選択し、この範囲の代表値をポイントBの補間値とする。例えば、0から0x0040までの範囲(範囲1´)が、プチ音が最小となる範囲として選択された場合、同範囲の代表値として0x0040をポイントBの補間値とする。上記例の場合、ステップS21,S23,S25での補間値算出対象範囲の絞込みにより、ポイントBの補間値は、2ビット+4ビット+4ビット=10ビットの精度が得られる。ステップS21での対象範囲の選択を適切に行えば、10ビット以上の精度を得ることも可能である。
【0026】
ステップS2のサンプル補間プロセスPが完了すると、ステップS3に進み、他にエラー訂正が不可能なサンプルがあるか否かを識別する。エラー訂正が不可能なポイントがない場合、すなわち、ステップS2を実行することにより、エラー訂正不可能な全てのポイントに関して補間が完了した場合、補間処理を終了する。
【0027】
一方、ステップS3において、訂正不可能なポイントが存在すると識別された場合、ステップS4に進み、2点以上の連続する訂正不可能なポイントが存在するか否かを識別する。存在しない場合、訂正不可能なポイントは1点のみであると識別され、ステップS2に戻って該ポイントの補間処理を行う(サンプル補間プロセスPを実行する)。
【0028】
一方、ステップS4において、2点以上の連続する訂正不可能なポイントが存在すると識別された場合、ステップS5に進み、サンプル補間プロセスPを実行する。ここで、サンプル補間プロセスPの具体的な手順について、図4,図5,及び図7を用いて説明する。図4は、訂正不可能なサンプルが連続して2点存在する場合における補間の一連の流れを説明するフローチャートである。また、図7は、サンプル補間プロセスPにおける補間方法を説明するための概略図である。
【0029】
図4に示すように、サンプル補間プロセスPを開始すると、最初に、訂正不可能なポイントの補間値の算出対象となる範囲を選択する(ステップS51)。なお、補間値の算出対象範囲の選択方法は、サンプル補間プロセスPのステップS21と同様である。
【0030】
ここでは一例として、図5(b)に示すように、ポイントC,Cが訂正不可能なポイント、ポイントCの直前のポイントBがサンプル補間プロセスPによって補間値が算出されたポイント、ポイントBの直前のポイントAとポイントCの直後のポイントEとが正しい値である場合について説明する。
【0031】
なお、補間値の算出対象範囲は、上述のステップS21での説明と同様に、訂正不可能なポイントの直前のポイント、すなわちポイントBの値を中心とする上下フルスケールの4分の1の幅で区切られた範囲を選択するものとする。例えば、ポイントBの補間値が0x1800の場合、0x1800を中心とする上下フルスケールの4分の1の幅で区切られた範囲は、−0x0200から0x3800までの範囲となる。すなわち、ステップS51で選択される補間値の算出対象範囲は、−0x0200から0x3800までの範囲となる。
【0032】
次に、ステップS52に進み、選択された補間値の算出対象範囲を、ポイントCとポイントCとのそれぞれについて4分割する。すなわち、ステップS51で選択された算出対象範囲である−0x0200から0x3800は、−0x0200から0x0800までの範囲(範囲1)、0x0800から0x1800までの範囲(範囲2)、0x1800から0x2800までの範囲(範囲3)、0x2800から0x3800までの範囲(範囲4)、の4の範囲に等分割される(図7(a)(b)参照)。
【0033】
なお、以降の説明において、ポイントCに関する範囲とポイントCに関する範囲とを識別容易にするため、ポイントCに関する範囲1,範囲2,範囲3,及び範囲4を、それぞれ範囲1a,範囲2a,範囲3a,範囲4aとし、ポイントCに関する範囲1,範囲2,範囲3,及び範囲4を、それぞれ範囲1b,範囲2b,範囲3b,範囲4bと表記する。
【0034】
続いて、ステップS53に進み、ポイントCとポイントCとのそれぞれについて、ステップS52で分割された4つの範囲のそれぞれから代表点(値)を抽出し、ポイントC補間候補(値),ポイントC補間候補(値)とする。そして、ポイントCに関する4つの範囲と、ポイントCに関する4つの範囲との全ての組み合わせについて、ポイントC補間候補と、ポイントC補間候補との2点を、カットオフ周波数10kHzの2次HPFに通す。HPFでは、補正されたポイントBまでの過去の内部状態を繰り返し、これに、ポイントC補間候補と、ポイントC補間候補とを加え、結果を出力する。更に、HPFからの出力値が最小の範囲を、次のステップにおける補間値の算出対象範囲として範囲の絞込みを行う。
【0035】
なお、ポイントCに関する4つの範囲と、ポイントCに関する4つの範囲との全ての組み合わせとは、具体的には、範囲1aと範囲1b、範囲1aと範囲2b、範囲1aと範囲3b、範囲1aと範囲4b、範囲2aと範囲1b、範囲2aと範囲2b、範囲2aと範囲3b、範囲2aと範囲4b、範囲3aと範囲1b、範囲3aと範囲2b、範囲3aと範囲3b、範囲3aと範囲4b、範囲4aと範囲1b、範囲4aと範囲2b、範囲4aと範囲3b、範囲4aと範囲4b、の16通りの組み合わせを指す。それぞれの組み合わせについて、選択された範囲の補間候補(値)をHPFに通し、過去の正しい状態(補正されたポイントBを含む過去の状態)に加えたときに、値が最小となる組み合わせを求める。
【0036】
ここでは、例として、範囲4aと範囲2bとの組み合わせのとき、HPFからの出力値が最小であるとする。従って、ポイントCについては0x2800から0x3800までの範囲、ポイントCについては0x0800から0x1800の範囲が、次のステップにおける補間値の算出対象範囲として選択される。
【0037】
次に、ステップS54において、ステップS53で選択された補間値の算出対象範囲を、更に4分割する(図7(c)(d)参照)。すなわち、ポイントCについては、0x2800から0x3800までの範囲が、0x2800から0x2C00までの範囲(範囲4a1)、0x2C00から0x3000までの範囲(範囲4a2)、0x3000から0x3400までの範囲(範囲4a3)、0x3400から0x3800までの範囲(範囲4a4)の4つの範囲に等分割される。また、ポイントCについては、0x0800から0x0C00までの範囲(範囲2b1)、0x0C00から0x1000までの範囲(範囲2b2)、0x1000から0x1400までの範囲(範囲2b3)、0x1400から0x1800までの範囲(範囲2b4)の4つの範囲に等分割される。
【0038】
最後に、ステップS55に進み、ステップS53と同様にして、ポイントCに関する4つの範囲とポイントCに関する4つの範囲との全ての組み合わせから、プチ音が最小となる範囲を選択し、この範囲の代表値をポイントC及びポイントCの補間値とする。例えば、範囲4a3と範囲2b2との組み合わせが、プチ音が最小となる範囲として選択された場合、それぞれの範囲の代表値として、0x3200をポイントCの補間値とし、0x0E00をポイントCの補間値とする(図7(c)(d)参照)。
【0039】
ステップS5のサンプル補間プロセスPが完了すると、ステップS6に進み、他にエラー訂正が不可能なサンプルが他にもあるか否かを識別する。エラー訂正が不可能なポイントがない場合、すなわち、ステップS5を実行することにより、エラー訂正不可能な全てのポイントに関して補間が完了した場合、補間処理を終了する。
【0040】
一方、ステップS6において、訂正不可能なポイントが他に存在すると識別された場合、ステップS7に進み、サンプル補間プロセスPを実行する。ステップS2のサンプル補間プロセスP、ステップS5のサンプル補間プロセスPを実行してもなお訂正不可能なポイントが存在するのは、訂正不可能なポイントが連続して4点以上存在する場合である。
【0041】
例えば図5(c)に示すように、ポイントAが正しい値であるポイント、ポイントAの直後のポイントBがサンプル補間プロセスPによって補間値が算出されたポイント、ポイントBに続くポイントC,Cがサンプル補間プロセスPによって補間値が算出されたポイント、ポイントCに続くポイントDが訂正不可能なポイント、ポイントDの直後のポイントEとが正しい値である場合が該当する。
【0042】
このサンプル補間プロセスPでは、既に補間されたポイントB,C,Cの値から、一定ではない増減率を算定することにより、Dの値を生成する。訂正不可能なポイントが連続して5点以上存在する場合、D,D,…,Dと、連続的に値を生成し続ける。このとき、Dの値が上下フルスケール側ではなく、ゼロの方向に向かうように値を生成する。なお、Dの値がゼロに到達した場合、それ以降の訂正不可能なポイントの補間値はゼロとする。
【0043】
ステップS7において、全ての訂正不可能なポイントの補間が完了すると、図2の補間処理を終了する。なお、図2,図3,図4に示す一連の手順をC言語的に簡易表現で記述したプログラムを、図8に示す。
【0044】
このように、本発明の実施の形態においては、訂正不可能なポイントの補間候補範囲を抽出して分割し、分割された各範囲の代表値を、該ポイント以前の正しい状態に加えてHPFに通し、値が最小となる範囲を選択するという一連の手順を繰り返すことにより補間値の選択範囲を絞り込むため、計算量が比較的少なく簡易な処理で10ビット以上の精度を得ることができ、真の値との誤差を極力小さくすることができる。また、訂正不可能なポイントが連続して3点以内の場合と3点を超える場合とで補間値の算出方法を変え、3点を超えて発生した場合には、それまでに算出された補間値を用いてゼロに近づく一定でない増減率を算出し、4点目以降の補間値を生成するため、より簡易な処理で補間値を得ることができる。
【0045】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。
【0046】
例えば、上述した実施の形態においては、訂正不可能なポイントが2点連続して発生した場合は、サンプル補間プロセスPを2回繰り返して補間値を求めているが、サンプル補間プロセスPを1回実行して一度に2点の補間値を求めるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1a…CDデコーダー、
1b…CD、
2…CDプロセッサ、
3…DSP、
4…DAC、
5…AMP、
6…スピーカ、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CDなどから抽出されたデジタルオーディオ信号において訂正不可能なポイントを補間するデジタルオーディオ信号補間装置であって、
前記訂正不可能なポイントの補間値候補領域を選択し、前記補間値候補領域を複数の分割領域に等分割し、前記訂正不可能なポイントの直前のポイントまでの状態を再現したハイパスフィルタに、前記分割領域の代表値を加えて通過させ、値が最小となる前記分割領域を選択して更に複数の分割小領域に等分割し、前記訂正不可能なポイントの直前のポイントまでの状態を再現した前記ハイパスフィルタに、前記分割小領域の代表値を加えて通過させ、値が最小となる前記分割小領域の前記代表値を前記訂正不可能なポイントの補間値とすることを特徴とする、デジタルオーディオ信号補間装置。
【請求項2】
CDなどから抽出されたデジタルオーディオ信号において訂正不可能なポイントを補間するデジタルオーディオ信号補間装置であって、
連続する2つの前記訂正不可能なポイントの補間値候補領域をそれぞれ選択し、前記補間値候補領域をそれぞれ複数の分割領域に等分割し、前記訂正不可能なポイントの直前のポイントまでの状態を再現したハイパスフィルタに、前記一の訂正不可能なポイントの前記分割領域の代表値と、前記他の訂正不可能なポイントの前記分割領域の代表値とを加えて通過させ、値が最小となる前記分割領域の組み合わせを選択し、それぞれの選択された前記分割領域を更に複数の分割小領域に等分割し、前記訂正不可能なポイントの直前のポイントまでの状態を再現した前記ハイパスフィルタに、前記一の訂正不可能なポイントの前記分割小領域の代表値と、前記他の訂正不可能なポイントの前記分割小領域の代表値と、前記直前のポイントの値とを加えて通過させ、値が最小となる前記分割小領域の組み合わせの前記代表値をそれぞれ前記訂正不可能なポイントの補間値とすることを特徴とする、デジタルオーディオ信号補間装置。
【請求項3】
CDなどから抽出されたデジタルオーディオ信号において訂正不可能なポイントを補間するデジタルオーディオ信号補間装置であって、
前記訂正不可能なポイントの直前の3つのポイントの値から一定でない増減率を算定し、前記増減率に基づき前記訂正不可能なポイントの補間値を算出することを特徴とする、デジタルオーディオ信号補間装置。
【請求項4】
CDなどから抽出されたデジタルオーディオ信号において訂正不可能なポイントを補間するデジタルオーディオ信号補間装置であって、
前記訂正不可能なポイントの連続発生数が3点以下の場合は、前記訂正不可能なポイントの直前のポイントまでの状態を再現したハイパスフィルタに、前記訂正不可能なポイントを加えて通過させたときに、値が最小となる領域を段階的に絞込むことにより補間を行い、前記訂正不可能なポイントの連続発生数が4点以上の場合は、前記絞込みにより補間された3点の値を用いて一定でない増減率を算定し、前記増減率に基づき4点目以降の前記訂正不可能なポイントの補間値を算出することを特徴とする、デジタルオーディオ信号補間装置。
【請求項5】
CDなどから抽出されたデジタルオーディオ信号における訂正不可能なポイントの補間値候補領域を選択し、
前記補間値候補領域を複数の分割領域に等分割し、
前記訂正不可能なポイントの直前のポイントまでの状態を再現したハイパスフィルタに、前記分割領域の代表値を加えて通過させ、値が最小となる前記分割領域を選択し、
前記選択した分割領域を複数の分割小領域に等分割し、
前記訂正不可能なポイントの直前のポイントまでの状態を再現した前記ハイパスフィルタに、前記分割小領域の代表値を加えて通過させ、値が最小となる前記分割小領域の前記代表値を訂正不可能なポイントの補間値とすることを特徴とする、デジタルオーディオ信号補間方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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