デジタル信号処理装置
【課題】 ΔΣ変調により得られた1ビットオーディオ信号を記録している光ディスクを再生するオーディオディスクプレーヤにおいて、再生信号にエラーがあった場合にノイズを発生させずに好ましいタイミングで、かつ滑らかに出力信号をミュートするのは困難であった。
【解決手段】 フェード処理部18は、デコーダ17からの音楽データDAに対してミュートのためのフェード処理を施す。エラーフラグ判断部20は、バッファ16からデコーダ17に送られる上記再生用1ビットデジタル信号DR’よりも時間的に前のデータ、例えば所定時間後にデコーダ17に送られるべき判断用データ列Dd中のエラーフラグfeの状態を判断する。フェード制御部21は、このエラーフラグ判断部20からのエラー判断結果(エラー判断フラグ)fe’に基づいて上記フェード処理部18のミュートのためのフェード処理を制御する。
【解決手段】 フェード処理部18は、デコーダ17からの音楽データDAに対してミュートのためのフェード処理を施す。エラーフラグ判断部20は、バッファ16からデコーダ17に送られる上記再生用1ビットデジタル信号DR’よりも時間的に前のデータ、例えば所定時間後にデコーダ17に送られるべき判断用データ列Dd中のエラーフラグfeの状態を判断する。フェード制御部21は、このエラーフラグ判断部20からのエラー判断結果(エラー判断フラグ)fe’に基づいて上記フェード処理部18のミュートのためのフェード処理を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ΔΣ変調により得られた1ビットデジタル信号を処理するデジタル信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アナログオーディオ信号にデルタシグマ(ΔΣ)変調を施して得られた1ビットオーディオ信号を高音質のレコーダーやデータ伝送に応用することが考えられている。ΔΣ変調により得られた1ビットオーディオ信号は、従来のデジタルオーディオに使われてきた例えばサンプリング周波数44.1KHz、データ語長16ビットのいわゆるマルチビットデジタル信号に比べて、サンプリング周波数が64倍(64×44.1KHz)でデータ語長が1ビットというように、非常に高いサンプリング周波数と短いデータ語長といった形をとる。
【0003】
上記1ビットオーディオ信号を記録した光ディスクを再生するオーディオディスクプレーヤの構成を図10に示す。このオーディオディスクプレーヤ60は、光ディスク61から1ビットオーディオ信号のRF信号や、アクチュエータ制御用のフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号を検出する光学ピックアップ62と、上記RF信号を波形整形したり上記フォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号を増幅するRF回路63と、波形整形されたRF信号にEFM+復調処理やRS(Read Solomon)−PC(Product Code)というECC処理を施す第1信号処理部64とを備える。
【0004】
また、このオーディオディスクプレーヤ60は、第1信号処理部64で上記復調やECC処理が施されたRF信号の再生レートを一定に保つために一旦蓄えるバッファ65と、バッファ65からの読み出し信号に施されている暗号化に対するデコード処理や、フェード処理等を施す第2信号処理部66と、第2信号処理部66でデコード、フェード処理された1ビットオーディオ信号をアナログオーディオ信号に変換して出力端子68に供給する1ビットD/A変換器67とを備えてなる。ここで、バッファ65は、第2の信号処理部66でデコード処理を行う為と再生レートを一定に保つために不可欠なものである。
【0005】
ところで、1ビットオーディオ信号を記録している光ディスク61の再生においては、上記光ディスク61から読み取った1ビットオーディオ信号に訂正不可能なエラーがあった場合、前値ホールドや直線補間といった信号処理ができないため、不要な大音量のノイズが出てしまう恐れがあった。これを防ぐためにエラー信号が出力される直前に出力信号をミュートさせることが好ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、図11に示す様に第1信号処理部64で復調及びECC処理されたRF信号出力と、第2信号処理部66で得られたデコード出力には0〜数秒の時間ずれTdが生じるので、第1信号処理部64で信号処理した時点で訂正不能なエラーデータが検出された場合に、その時点でアナログオーディオ出力信号にミュート処理を行ってもタイミングが合わない。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、再生信号にエラーがあった場合にノイズを発生させずに好ましいタイミングで、かつ滑らかに出力信号をミュートできるデジタル信号処理装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るデジタル信号処理装置は、上記課題を解決するために、ΔΣ変調されている1ビットオーディオ信号を一旦蓄積するメモリ手段と、記録媒体から再生された上記ΔΣ変調されている1ビットオーディオ信号を上記メモリ手段に供給する供給手段と、上記メモリ手段のデータ蓄積量を監視する監視手段と、ミュート信号を表す1ビットデジタル信号を生成するミュート信号生成手段と、上記メモリ手段から読み出された1ビットオーディオ信号と前記ミュート信号生成手段から出力されるミュート信号を表す1ビットデジタル信号とをフェーダ処理して切り換える切換手段と、上記切り換え手段から出力される1ビットデジタル信号をアナログ信号に変換するD/A変換手段と、上記メモリ手段に第1の所定量を超えるデータが蓄積されるまでの期間は上記切り替え手段から上記ミュート信号生成手段から出力されるミュート信号が出力されるように制御し、上記メモリ手段に第1の所定量を超えるデータが蓄積されたと上記監視手段によって判定された場合には上記メモリ手段からデータが出力されるように制御すると共に上記切替手段にて上記ミュート信号から上記メモリ手段から出力される1ビットオーディオ信号に上記A/D変換手段への出力がクロスフェード切り替えされるように制御し、上記メモリ手段に蓄積された1ビットオーディオ信号のデータ量が第2の所定量より少なくなったと上記監視手段によって判定された場合には上記切り替え手段にて上記メモリ手段から出力される1ビットオーディオ信号から上記ミュート信号生成手段から出力されるミュート信号に上記A/D変換手段への出力がクロスフェード切り換えされるように制御する制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るデジタル信号処理装置は、再生信号にエラーがあった場合にノイズを発生させずに好ましいタイミングで、かつ滑らかに出力信号をミュートできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。先ず、この実施の形態の構成を図1に示す。すなわち、この実施の形態は、光ディスク11に予め記録されている、ΔΣ変調により得られた1ビットオーディオ信号を再生するオーディオディスクプレーヤ10である。
【0011】
このオーディオディスクプレーヤ10は、光ディスク11からRF信号、フォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号を読み出す光学ピックアップ12と、光学ピックアップ12が読み出したRF信号に波形整形処理を施したり、フォーカスエラー信号FE及びトラッキングエラー信号TEを増幅するRF回路13と、RF回路13で波形整形されたRF信号に復調処理や、ECC処理を施して再生用1ビットデジタル信号DRを得ると共に、ECC処理によってでも訂正不能なエラーデータを検出し、かつディスクに記録されていたCLV速度及び位相情報を読み出す第1信号処理部14と、第1信号処理部14からの再生用1ビットデジタル信号DRに対してデコード処理を施す第2信号処理部15と、第2信号処理部15でデコードされた1ビットデジタル信号をアナログのオーディオ信号に変換する1ビットD/A変換器22とを備えている。1ビットD/A変換器22からのアナログのオーディオ信号は出力端子23に供給される。
【0012】
また、オーディオディスクプレーヤ10は、RF回路13で増幅されたフォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TEに基づいて光学ピックアップ12に供給するフォーカスサーボ,トラッキングサーボ及びスレッドサーボ信号を生成するサーボ回路24と、サーボ回路24からの上記各サーボ信号に基づいて光学ピックアップ12を駆動する駆動回路25と、光ディスク11を回転するスピンドルモータ26とを備えている。駆動回路25には第1信号処理部14からのCLV速度及び位相情報が供給され、スピンドルモータ26の駆動制御に使う。
【0013】
また、このオーディオディスクプレーヤ10は、第1信号処理部14で復調された時間情報等のサブコードsubを解読して各部を制御すると共に、第2信号処理部15に制御信号CNTを供給して通常再生時、又は再生停止時のデコード処理を制御するシステムコントローラ27と、このシステムコントローラ27に接続される表示部28と、ユーザからの入力操作を受け付けるキー操作部(key)29とを備えている。
【0014】
以下、上記各部について詳細に説明する。先ず、光ディスク11に記録されている、1ビットオーディオ信号を生成するΔΣ変調器について図2を用いて説明する。図2において、ΔΣ変調器30は、加算器32と、積分器33と、1ビット量子化器34と、1サンプル遅延器36とを備えてなる。加算器32の加算出力は積分器33に供給され、積分器33からの積分出力は1ビット量子化器34に供給される。1ビット量子化器34の量子化出力は出力端子35から導出される一方、1サンプル遅延器36を介して負符号とされて加算器32にフィードバックされ、入力端子31から供給されるアナログオーディオ信号に加算される。加算器32からの加算出力は、積分器33で積分される。そして、この積分器33からの積分出力を1ビット量子化器34で1サンプル期間毎に量子化しているので、出力端子35から1ビット量子化データ、すなわち上記1ビットオーディオ信号を出力することができる。
【0015】
第1信号処理部14は、RF回路13で波形整形されたRF信号にEFM+と呼ばれる復調処理や、RS(Read Solomon)−PC(Product Code)と呼ばれるECC処理を施して再生用1ビットデジタル信号DRを出力すると共に、RS−PCによるECC処理の結果に応じたエラーフラグfeを生成する。このエラーフラグfeは、例えば2048バイトのセクタ単位毎に生成される。上記ECC処理で訂正不能なエラーデータが上記セクタ単位に存在したらエラーフラグfeはアクティブにされる。一方、訂正不能なエラーデータがセクタ単位に存在しなければエラーフラグfeはインアクティブにされる。
【0016】
第2信号処理部15は、第1信号処理部14からの再生用1ビットデジタル信号DRに対して上記エラーフラグfeに基づいた、ミュートのためのフェード処理を伴ったデコード処理を施すため、またシステムコントローラ27からの制御信号CNTに基づいた、ミュートのためのフェード処理を伴ったデコード処理を施すために以下の構成をとる。すなわち、第2信号処理部15は、上記再生用1ビットデジタル信号DRを一定レートで再生するためのバッファ16と、バッファ16から読み出した再生用1ビットデジタル信号DR’をデコードするデコーダ17と、デコーダ17からのデコード出力の内、音楽データDAに対してミュートのためのフェード処理を施すフェード処理部18と、バッファ16からデコーダ17に送られる上記再生用1ビットデジタル信号DR’よりも時間的に前のデータ、例えば所定時間後にデコーダ17に送られるべき判断用データ列Dd中のエラーフラグfeの状態を判断するエラーフラグ判断部20と、このエラーフラグ判断部20からのエラー判断結果(エラー判断フラグ)fe’に基づいて上記フェード処理部18のミュートのためのフェード処理を制御するフェード制御部21とを備えてなる。
【0017】
この第2信号処理部15でのデコード時に、行われるミュートのためのフェード処理について説明する。
【0018】
一般的に、ECC処理により訂正不能なエラーが発生した場合には、アナログ出力信号にミュート処理を行うことが考えられる。しかし、1ビットオーディオ信号を再生するときに、再生信号を音楽データからいきなりミュート処理し、無音データに変更すると大きなクリックノイズが出る。このため、1ビットフェード処理を行って滑らかにミュートを行う必要がある。
【0019】
この1ビットフェード処理とは、後述する図3及び図6に示すように、音楽データに任意の係数をかけて一旦データをマルチビットとして扱い、再びΔΣ変調を行って1ビットに戻すという信号処理を用意し、信号処理を行うときだけこの経路に切り替えるというものである。
【0020】
ただしこのようなミュート処理を行う為には数msecの音楽データが必要であり、データがエラーとなる数msec前から再生信号を減衰し始める為、前もってエラーの情報を知る必要がある。
【0021】
一方、フェード処理を伴ったミュートの後は、音楽データの復帰後にこのミュートを解除(OFF)させる必要がある。ミュートがONとなる場合はデコードした音楽データがエラーとなる数msec前に減衰を開始させる必要があるが、ミュートがOFFとなって音が出ていくときは前もって解除を始めるとエラーデータを出力してしまうため、ミュートOFF時はデコーダ出力がエラーの無い状態になって初めて解除を開始しなければいけない。
【0022】
また通常のデジタルオーディオと同様に、再生ポーズ、停止、サーチなどでは再生信号のオンオフでクリックノイズが出ない様に1ビットフェード処理を用いたソフトミュートが必要である。この再生ポーズや停止時の減衰は、比較的長い時間例えば数十msの時間をかけて行うのが好ましい。
【0023】
一方再生信号がエラーであった場合は音が途切れる時間が短いことが望ましいためこの減衰には比較的短い時間例えば数msの時間で減衰が終了したほうがよい。このようにミュートのための減衰時間は複数必要である。
【0024】
そこで、本発明では、ミュートのためのフェード処理を、データエラー時と再生停止時とで音量減衰時間、及び復帰の時間を変えて行うようにしている。
【0025】
バッファ16は空き領域のある限り、第1信号処理部14からの再生用1ビットデジタル信号DRを記憶し、一定のレートで読み出してデコーダ17に供給する。また、バッファ16は上記エラーフラグfeも付加的に記憶する。そして、上記デコーダ17に供給する再生用1ビットデジタル信号DR’よりも所定時間だけ前の判断用データ列Ddをエラーフラグ判断部20に供給する。
【0026】
デコーダ17は、バッファ16から供給された再生用1ビットデジタル信号DR’をタイムコード、サプリメントデータ、音楽データDAに分離し、音楽データDAをフェード処理部18に供給する。
【0027】
エラーフラグ判断部20は、バッファ16からデコーダ17に送られる再生用1ビットデジタル信号DR’よりも所定時間だけ前の判断用データ列Ddの上記エラーフラグfeがアクティブであるかインアクティブであるかを判断してエラー判断フラグfe’を生成し、フェード制御部21に送る。
【0028】
フェード制御部21は、エラーフラグ判断部20から供給されるエラー判断フラグfe’がアクティブであるときには、フェード処理部18に速やかなフェードアウト処理を行わせるためにアクティブのミュートフラグfmとステップフラグfsを発生する。また、上記エラー判断フラグフラグfe’がインアクティブになると所定の時間だけカウントして待ってからミュートフラグfmをインアクティブにし、更に所定のある時間だけ待ってからステップフラグfsをインアクティブにする。このように、フェード制御部21は、保持カウンタとして動作する。二つのフラグをインアクティブにするタイミングについては後述する。
【0029】
フェード処理部18は、フェード制御部21及びシステムコントローラ27の制御により音楽データDAにミュートのためのフェード処理を施す。エラー判断フラグfe’が始めからインアクティブ、すなわち再生用1ビットデジタル信号DRに上記ECC処理で訂正できないエラーが無く、通常再生しているときにはシステムコントローラ27からの制御信号CNTに基づいて上記音楽データDAをスルーして1ビットD/A変換器22に供給する。また、再生停止時には上記制御信号CNTに基づいて上記音楽データDAにエラー発生時とは異なった緩やかなミュートのためのフェード処理を施す。また、エラー発生時、すなわちエラー判断フラグfe’がアクティブであるときには、フェード制御部21からの上記ミュートフラグfm及びステップフラグfsに基づいて再生停止時とは異なった速やかなミュートのためのフェード処理を施す。再生停止時とエラー発生時でのミュートのためのフェード処理を異ならせるため、フェード処理部18は音量を制御するためのアッテネータ(ATT)カウンタ19を内蔵している。このATTカウンタ19は、上記ミュートフラグfm,ステップフラグfs及び制御信号CNTによりカウントのためのステップ幅(刻み幅)を変える。
【0030】
このフェード処理部18の具体例を図3に示す。フェード処理部18には信号端子41を介してデコーダ17から音楽データDAが供給される。また、このフェード処理部18内部のATTカウンタ19には制御端子42を介してフェード制御部21からミュートフラグfmが供給される。また、制御端子43を介して同じくフェード制御部21からのステップフラグfsが供給される。また、制御端子44を介してシステムコントローラ27からの制御信号CNTが供給される。ATTカウンタ19のカウント値Cvは乗算器45によって上記音楽データDAに乗算される。乗算器45からの乗算出力は1ビットデータではなくなるので、再ΔΣ変調器46により再度1ビットデータに変換される。この1ビットデータは切り換えスイッチ47の被選択端子bに供給される。一方、上記音楽データDAは切り換えスイッチ47の被選択端子aに供給されている。したがって、この切り換えスイッチ47の切り換え片cが被選択端子a側に接続すれば、音楽データDAはスルーされて出力端子48を介して1ビットD/A変換器22に供給される。また、切り換えスイッチ47の切り換え片cが被選択端子bに接続すれば、再ΔΣ変調器46からのフェード処理出力である1ビット信号が1ビットD/A変換器22に供給される。
【0031】
以下、このオーディオディスクプレーヤ10の動作を、通常再生時、データエラー時のミュート処理、ミュート解除処理、再生停止時等のミュート処理に分けて説明する。
【0032】
先ず、通常再生時の動作について説明する。
【0033】
通常再生時、バッファ16は空き領域のある限り、第1信号処理部14からの再生用1ビットデジタル信号DRを貯え、一定レートでデコーダ17に読み出す。またバッファ16はこの再生用1ビットデジタル信号DRより所定時間だけ前に読み出した判断用データ列Ddをエラーフラグ判断部20に供給する。
【0034】
デコーダ17はバッファ16からの再生用1ビットデジタル信号DR’をタイムコード、サプリメンタリデータ、音楽データDAにそれぞれ分離し、音楽データDAをフェード処理部18に送る。フェード処理部18では図3に示した切り換えスイッチ47の切り換え片cがシステムコントローラ27からの制御信号CNTにより被選択端子aに接続される。このため、フェード処理部18は、音楽データDAをスルーさせて1ビットD/A変換器22に送る。1ビットD/A変換器22は、1ビット音楽データDAを波形整形し、高周波ノイズ除去を行ってアナログ音楽信号に変換して出力端子23に供給する。
【0035】
次に、データエラー時のミュート処理について説明する。
【0036】
光ディスク11の大きなキズなどにより、第1信号処理部14でのRS−PCによるECC処理でも訂正不可能なエラーが発生したとき、第1信号処理部14はエラーフラグfeをアクティブにする。
【0037】
バッファ16は空き領域のある限り、第1信号処理部14からの再生用1ビットデジタル信号DRを記憶し、一定のレートでデコーダ17に供給する。また、バッファ16は上記エラーフラグfeも付加的に記憶する。そして、上記デコーダ17に供給する再生用1ビットデジタル信号DR’よりも所定時間だけ前に読み出した判断用データ列Ddをエラーフラグ判断部20に供給する。
【0038】
このため、デコーダ17にまだ正常な再生用1ビットデジタル信号DR’が送られているうちに、エラーフラグ判断部20は判断用データ列Ddからエラーフラグfeを読み取ることができる。
【0039】
エラーフラグ判断部20は、この判断用データ列Ddを常に監視し続け、エラーフラグfeがアクティブであるときにはエラー判断フラグfe’をアクティブにする。
【0040】
フェード制御部21は、エラーフラグ判断部20から供給されるエラー判断フラグfe’がアクティブであるときには、フェード処理部18に速やかなミュートのためのフェードアウト処理を行わせるためにアクティブのミュートフラグfmとステップフラグfsを発生する。
【0041】
ミュートフラグfm及びステップフラグfsがアクティブとなると、フェード処理部18は図3に示す切り換えスイッチ47の切り換え片cを被選択端子aから被選択端子bに切り換えて信号伝達の経路をスルーからフェード処理用経路に切り替える。次にフェード処理部18は、ATTカウンタ19を1.0から0.0まで比較的大きい刻み幅で、例えばカウントダウンまで3msecの時間がかかる様な刻み幅でカウントダウンし、0.0になったらカウントストップする。
【0042】
フェード処理部18では、入力される音楽データDAとATTカウンタ19のカウント値を乗算器45で乗算し、その乗算出力をΔΣ変調器46で再度1ビット信号に変換してミュートのためのフェードアウト出力とし、切り換えスイッチ47を介して出力端子48に供給する。このため、ATTカウンタ19によるカウントダウンによって得られた1ビットのフェードアウト出力は1ビットD/A変換器22によってアナログ出力に変換される。1ビットD/A変換器22からのアナログ出力は、図4に示すように、区間37(例えば3msec)で音量が徐々に小さくなり、3msecのフェードアウト処理がかけられる。
【0043】
3msecのフェ−ドアウト処理の後、図5に示すようにミュートフラグfmがアクティブである間、ATTカウンタ19は0.0の値を保持して停止している。なおこの0.0までのカウントダウンの時間t0は、ステップフラグfsがアクティブのときは判断用データ列Ddのエラー判断フラグfe’をデコーダ17のデコード出力より先に読みだす時間Aよりも短く設定する。これにより、再生データがエラーとなる前にミュートのためのフェードアウト処理を終わらせ、滑らかにアナログ出力を無音とすることができる。
【0044】
次に、エラーが回復したときのミュート解除処理について説明する。
【0045】
第1信号処理部14から出力される再生用1ビットデジタル信号DRには上記RS−PCによるECC処理で訂正不能なエラーが存在しないとき、すなわち正常に戻ったとき、エラーフラグfeはインアクティブとなる。これによりある時点でエラーフラグ判断部20からのエラー判断フラグfe’もインアクティブとなる。
【0046】
しかし、エラーフラグ判断部20からのエラー判断フラグfe’がインアクティブとなっても、デコーダ17からの音楽データDAはまだエラーデータを含んだままであるため、フェード制御部21は先に述べた様に所定の時間だけミュートフラグfeをアクティブのまま保持し続け、それからインアクティブに戻す。更にそれから所定の時間だけステップフラグfsを保持し続けてからインアクティブに戻す。
【0047】
図5において、エラーフラグ判断部20が判断用データ列Ddを読み出してエラーが無いのを判断してエラー判断フラグfe’をインアクティブにしてから、ミュートフラグfmをインアクティブにするまでに待つ時間Bは、判断用データ列Ddが再生データ(デコード出力)よりも先に読み出される時間A以上に設定する。図5には時間Bを時間Aよりもdだけ長くした様子を示す。さらに、エラー判断フラグfe’をインアクティブにしてからステップフラグfsをインアクティブにするのに待つ時間CはATTカウンタ19が0.0から1.0へカウントアップするのに必要な時間以上に設定する。
【0048】
これによりATTカウンタ19は再生データがエラーでなくなってから0.0から1.0へ所定の刻み幅と時間でカウントアップし、アナログ再生信号は滑らかにフェードインして音量がアップしミュート解除を行う。このとき、ATTカウンタ19が1.0になるまでステップフラグfsはアクティブを継続するため、フェードアウトによるミュートオンのときと同様に再生停止時等に比べて早くカウントアップする。
【0049】
このように、ATTカウンタ19はステップフラグfsがアクティブのときには、早くカウントアップする。一方、ステップフラグfsがインアクティブの時には、ゆっくりカントアップする。
【0050】
次に、再生停止時等のミュート処理について説明する。上述したデータエラー時のミュート処理に対して、通常再生停止時は数十ms、例えば23msecの時間をかけてより緩やかにミュートを行う。このため、通常再生停止時はシステムコントローラ27より送られる制御信号CNTによりATTカウンタ19を1.0から0.0へカウントダウンする。このときはステップフラグfsはアクティブでないのでATTカウンタ19の刻み幅はエラーミュート時よりも小さくなり、緩やかにミュート処理を行うことができる。
【0051】
このミュート処理の解除は同様にシステムコントローラ27から送られる制御信号CNTがインアクティブとなることでATTカウンタ19が0.0から1.0へカウントアップして音量が上がることによる。また同様にステップフラグfsはアクティブでないので緩やかにミュート解除を行うことになる。
【0052】
また、この緩やかな再生停止のミュートを行っている最中に上記ECC処理で訂正できないエラーが発生したとき、ステップフラグfeがアクティブとなるためエラー時のミュートが優先して途中からATTカウンタ19が早くカウントアップし、クリックノイズを生ずることなくミュートを完了する。
【0053】
そして、ミュート完了時は時間的余裕があるため可聴帯域で完全に無音となるパターンに切り替える。これにより再ΔΣ変調器が発生する僅かなノイズをなくすことができる。この切替を行う為、実際には音楽信号と無音となるパターンとのクロスフェード処理を伴ったミュート処理が行われる。
【0054】
図6には1ビット信号で完全に無音となるミュート信号を発生するミュート信号発生器49を備えるフェード処理部18の構成を示す。切り換えスイッチ47は、音楽データDAとフェード処理された1ビット信号、さらにミュート信号を切り換えてクロスフェード処理を伴ったミュート処理を行う。一方エラー時は、エラー終了とともにできるだけ早く元の音楽に復帰して空白となる時間が短い方が好ましいため、処理に時間のかかるこの無音パターンとの切替は行わないようにする。
【0055】
以上、このオーディオディスクプレーヤ10によれば、エラーデータ再生前のミュート処理、通常データ再生時のミュート解除が問題なく行える。また、同じカウンタ及び乗算器を使いながら、エラー検出時と再生停止時でそれぞれ最適な時間でミュート処理を行うことができる。さらに、再生停止のソフトミュート中にエラーが起こってもノイズを出すことなくミュートを完了できる。
【0056】
なお、図7に示すように、オーディオディスクプレーヤ10は、第2信号処理部15内部のバッファ16とフェード制御部21の間に、エラーフラグ判断部20と並列になるようにメモリコントローラ38を備え、バッファ16が空になったときにフェード処理を行うようにしてもよい。
【0057】
メモリコントローラ38は、バッファ16への信号の書き込み読み出しを監視し、上記デコーダ17から読み出される音楽データDAよりも所定時間だけ前に読みだされる判断用データ列Ddで、所定の曲が終わろうとするとき、すなわちエラーではなく、単純にデータが無くなろうとするとき、空になる数msec、例えば3msec手前からフェード制御部21にアクティブのエムプティフラグfPを送る。つまり、エムプティフラグfPがアクティブになるのはバッファ16の残りデータが所定の数より少なくなった時点である。
【0058】
フェード制御部21は、アクティブのエムプティフラグfPを受け取ると、バッファ16が空になった場合に再生データが無いことでノイズが出ないように、エラー時と同様にミュートフラグfm及びステップフラグfsを出力する。このため、バッファ16が空になる前にフェードアウト処理を完了させミュートオン処理を行うことができる。
【0059】
ミュートの解除はバッファ16にデータが所定の数より多く溜まってからミュートフラグfmをインアクティブにすればよく、ステップフラグfsはフェード制御部21によってそれから所定の数だけ更に保持した後にインアクティブとなる。
【0060】
この図7に示したオーディオディスクプレーヤ10によれば、上記図1のオーディオディスクプレーヤ10で得られた効果の他、バッファ16が空になる場合もノイズを出すことがない。
【0061】
図8には他の実施の形態となる、オーディオディスクプレーヤ50を示す。このオーディオディスクプレーヤ50は、上記図1のオーディオディスクプレーヤ10の第2信号処理部15に対応する第2信号処理部51の構成及び動作が異なる。
【0062】
第2信号信号処理部51では、第1信号処理部14からの再生用1ビットデジタル信号DRとエラーフラグfeをデータ置換部52で受ける。このデータ置換部52は、エラーフラグfeがインアクティブである通常再生時に上記再生用1ビットデジタル信号DRをスルーさせてバッファ16に入力する。また、第1信号処理部14からのエラーフラグfeがアクティブであり、再生用1ビットデジタル信号DRに上記ECC処理で訂正できないエラーが発生しているときに、例えば2048バイトのセクタを全て0に置換してバッファ16に入力する。このため、データエラーの情報をバッファ16内の別の空間に貯める必要がなく、メモリを削減できる。
【0063】
バッファ16からエラー判断部53へは、デコーダ17に送られるデータより所定時間だけ前のデータ、例えば数msec後にデコーダ17に送られるべき判断用データ列Ddが一足先に出力される。このため、エラー判断部53はデコーダ17にまだ正常なデータが送られている内に、全て0に置換されたセクタを読み取ることができる。
【0064】
エラー判断部53は、判断用データ列Ddを常に監視し続け、この判断用データDd中で所定の数、例えば32サンプル以上連続して0が並んでいるときに、上記ECC処理で訂正できないエラーが発生していると見なしてエラー判断フラグfe’をアクティブにする。
【0065】
フェード制御部21は、エラーフラグ判断部20から供給されるエラー判断フラグfe’がアクティブであるときには、フェード処理部18に速やかなミュートのためのフェードアウト処理を行わせるためにアクティブのミュートフラグfsとステップフラグfsを発生する。また、上記エラー判断フラグfe’がインアクティブになると所定の時間だけカウントして待ってからミュートフラグfmをインアクティブにし、更に所定のある時間だけ待ってからステップフラグfsをインアクティブにする。
【0066】
通常再生時、データエラー時のミュート処理、ミュート解除処理、再生停止時等のフェード処理部18における動作は上述した通りである。ここでは説明を省略する。
【0067】
以上、このオーディオディスクプレーヤ50によれば、エラーデータ再生前のミュート処理、通常データ再生時のミュート解除が問題なく行える。また、同じカウンタ及び乗算器を使いながら、エラー検出時と再生停止時でそれぞれ最適な時間でミュート処理を行うことができる。さらに、再生停止のソフトミュート中にエラーが起こってもノイズを出すことなくミュートを完了できる。またさらに、データエラーの情報をバッファ16内部の別の空間に貯める必要がなく、メモリを節約できる。
【0068】
なお、図9に示すように、オーディオディスクプレーヤ50は、第2信号処理部51内部のバッファ16とフェード制御部21の間に、エラー判断部53と並列になるようにメモリコントローラ54を備え、バッファ16が空になる前にフェード処理を行うようにしてもよい。
【0069】
メモリコントローラ54は、バッファ16への信号の書き込み読み出しを監視し、上記デコーダ17から読み出される音楽データDAよりも時間的に前の判断用データ列Ddで、所定の曲が終わったとき、すなわちエラーではなく、単純にデータが無くなったときに、空になる数msec、例えば3msec手前からフェード制御部21にアクティブのエムプティフラグfpを送る。
【0070】
フェード制御部21は、アクティブのエムプティフラグfpを受け取ると、バッファ16が空になった場合に再生データが無いことでノイズが出ないように、エラー時と同様にミュートフラグfm及びステップフラグfsを出力する。このため、バッファ16が空になる前にミュート処理を完了させることが可能である。
【0071】
ミュートの解除はバッファ16が所定の数より多く溜まってからミュートフラグfmをインアクティブにすればよく、ステップフラグfsはフェード制御部21によってそれから所定の数だけ更に保持した後にインアクティブとなる。
【0072】
この図9に示したオーディオディスクプレーヤ50によれば、上記図8のオーディオディスクプレーヤ50で得られた効果の他、バッファが空になる場合もノイズを出すことがない。
【0073】
なお、データ置換器52は、エラーがあった場合にデータを1に置換してもよい。この場合、エラー判断部53も1が連続した場合をエラーと見なすようにする。
【0074】
エラー時のソフトミュートの実行も、可聴帯域で完全に無音となるパターンとのクロスフェードでもよい。
【0075】
また、本発明は、上記1ビットオーディオ信号を記録している磁気テープを再生するデジタルオーディオテーププレーヤに適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施の形態となるオーディオディスクプレーヤの構成を示すブロック図である。
【図2】上記オーディオディスクプレーヤが再生する光ディスクに記録されている、1ビットオーディオ信号を生成するΔΣ変調器の構成を示すブロック図である。
【図3】上記図1に示したオーディオディスクプレーヤに内蔵されるフェード処理部の詳細な構成を示すブロック図である。
【図4】上記図1に示したオーディオディスクプレーヤで行われるミュート処理を概略的に説明するための図である。
【図5】上記図1に示したオーディオディスクプレーヤで行われるミュート処理を詳細に説明するためのタイミングチャートである。
【図6】1ビット信号で完全に無音となるミュート信号を発生するミュート信号発生器を備えるフェード処理部の構成を示すブロック図である。
【図7】上記オーディオディスクプレーヤの変形例のブロック図である。
【図8】本発明の他の実施の形態となるオーディオディスクプレーヤの構成を示すブロック図である。
【図9】上記図8に示したオーディオディスクプレーヤの変形例のブロック図である。
【図10】1ビットオーディオ信号を記録した光ディスクを再生する従来のオーディオディスクプレーヤの構成を示すブロック図である。
【図11】上記図10に示したオーディオディスクプレーヤでの動作を説明するためのダイミングチャートである。
【符号の説明】
【0077】
10 オーディオディスクプレーヤ、11 1ビットオーディオ信号を記録している光ディスク、12 光学ピックアップ、13 RF回路、14 第1信号処理部、15 第2信号処理部、16 バッファ、17 デコーダ、18 フェード処理部、19 ATTカウンタ、20 エラーフラグ判断部、21 フェード制御部、22 1ビットD/A変換器、27 システムコントローラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ΔΣ変調により得られた1ビットデジタル信号を処理するデジタル信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アナログオーディオ信号にデルタシグマ(ΔΣ)変調を施して得られた1ビットオーディオ信号を高音質のレコーダーやデータ伝送に応用することが考えられている。ΔΣ変調により得られた1ビットオーディオ信号は、従来のデジタルオーディオに使われてきた例えばサンプリング周波数44.1KHz、データ語長16ビットのいわゆるマルチビットデジタル信号に比べて、サンプリング周波数が64倍(64×44.1KHz)でデータ語長が1ビットというように、非常に高いサンプリング周波数と短いデータ語長といった形をとる。
【0003】
上記1ビットオーディオ信号を記録した光ディスクを再生するオーディオディスクプレーヤの構成を図10に示す。このオーディオディスクプレーヤ60は、光ディスク61から1ビットオーディオ信号のRF信号や、アクチュエータ制御用のフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号を検出する光学ピックアップ62と、上記RF信号を波形整形したり上記フォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号を増幅するRF回路63と、波形整形されたRF信号にEFM+復調処理やRS(Read Solomon)−PC(Product Code)というECC処理を施す第1信号処理部64とを備える。
【0004】
また、このオーディオディスクプレーヤ60は、第1信号処理部64で上記復調やECC処理が施されたRF信号の再生レートを一定に保つために一旦蓄えるバッファ65と、バッファ65からの読み出し信号に施されている暗号化に対するデコード処理や、フェード処理等を施す第2信号処理部66と、第2信号処理部66でデコード、フェード処理された1ビットオーディオ信号をアナログオーディオ信号に変換して出力端子68に供給する1ビットD/A変換器67とを備えてなる。ここで、バッファ65は、第2の信号処理部66でデコード処理を行う為と再生レートを一定に保つために不可欠なものである。
【0005】
ところで、1ビットオーディオ信号を記録している光ディスク61の再生においては、上記光ディスク61から読み取った1ビットオーディオ信号に訂正不可能なエラーがあった場合、前値ホールドや直線補間といった信号処理ができないため、不要な大音量のノイズが出てしまう恐れがあった。これを防ぐためにエラー信号が出力される直前に出力信号をミュートさせることが好ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、図11に示す様に第1信号処理部64で復調及びECC処理されたRF信号出力と、第2信号処理部66で得られたデコード出力には0〜数秒の時間ずれTdが生じるので、第1信号処理部64で信号処理した時点で訂正不能なエラーデータが検出された場合に、その時点でアナログオーディオ出力信号にミュート処理を行ってもタイミングが合わない。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、再生信号にエラーがあった場合にノイズを発生させずに好ましいタイミングで、かつ滑らかに出力信号をミュートできるデジタル信号処理装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るデジタル信号処理装置は、上記課題を解決するために、ΔΣ変調されている1ビットオーディオ信号を一旦蓄積するメモリ手段と、記録媒体から再生された上記ΔΣ変調されている1ビットオーディオ信号を上記メモリ手段に供給する供給手段と、上記メモリ手段のデータ蓄積量を監視する監視手段と、ミュート信号を表す1ビットデジタル信号を生成するミュート信号生成手段と、上記メモリ手段から読み出された1ビットオーディオ信号と前記ミュート信号生成手段から出力されるミュート信号を表す1ビットデジタル信号とをフェーダ処理して切り換える切換手段と、上記切り換え手段から出力される1ビットデジタル信号をアナログ信号に変換するD/A変換手段と、上記メモリ手段に第1の所定量を超えるデータが蓄積されるまでの期間は上記切り替え手段から上記ミュート信号生成手段から出力されるミュート信号が出力されるように制御し、上記メモリ手段に第1の所定量を超えるデータが蓄積されたと上記監視手段によって判定された場合には上記メモリ手段からデータが出力されるように制御すると共に上記切替手段にて上記ミュート信号から上記メモリ手段から出力される1ビットオーディオ信号に上記A/D変換手段への出力がクロスフェード切り替えされるように制御し、上記メモリ手段に蓄積された1ビットオーディオ信号のデータ量が第2の所定量より少なくなったと上記監視手段によって判定された場合には上記切り替え手段にて上記メモリ手段から出力される1ビットオーディオ信号から上記ミュート信号生成手段から出力されるミュート信号に上記A/D変換手段への出力がクロスフェード切り換えされるように制御する制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るデジタル信号処理装置は、再生信号にエラーがあった場合にノイズを発生させずに好ましいタイミングで、かつ滑らかに出力信号をミュートできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。先ず、この実施の形態の構成を図1に示す。すなわち、この実施の形態は、光ディスク11に予め記録されている、ΔΣ変調により得られた1ビットオーディオ信号を再生するオーディオディスクプレーヤ10である。
【0011】
このオーディオディスクプレーヤ10は、光ディスク11からRF信号、フォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号を読み出す光学ピックアップ12と、光学ピックアップ12が読み出したRF信号に波形整形処理を施したり、フォーカスエラー信号FE及びトラッキングエラー信号TEを増幅するRF回路13と、RF回路13で波形整形されたRF信号に復調処理や、ECC処理を施して再生用1ビットデジタル信号DRを得ると共に、ECC処理によってでも訂正不能なエラーデータを検出し、かつディスクに記録されていたCLV速度及び位相情報を読み出す第1信号処理部14と、第1信号処理部14からの再生用1ビットデジタル信号DRに対してデコード処理を施す第2信号処理部15と、第2信号処理部15でデコードされた1ビットデジタル信号をアナログのオーディオ信号に変換する1ビットD/A変換器22とを備えている。1ビットD/A変換器22からのアナログのオーディオ信号は出力端子23に供給される。
【0012】
また、オーディオディスクプレーヤ10は、RF回路13で増幅されたフォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TEに基づいて光学ピックアップ12に供給するフォーカスサーボ,トラッキングサーボ及びスレッドサーボ信号を生成するサーボ回路24と、サーボ回路24からの上記各サーボ信号に基づいて光学ピックアップ12を駆動する駆動回路25と、光ディスク11を回転するスピンドルモータ26とを備えている。駆動回路25には第1信号処理部14からのCLV速度及び位相情報が供給され、スピンドルモータ26の駆動制御に使う。
【0013】
また、このオーディオディスクプレーヤ10は、第1信号処理部14で復調された時間情報等のサブコードsubを解読して各部を制御すると共に、第2信号処理部15に制御信号CNTを供給して通常再生時、又は再生停止時のデコード処理を制御するシステムコントローラ27と、このシステムコントローラ27に接続される表示部28と、ユーザからの入力操作を受け付けるキー操作部(key)29とを備えている。
【0014】
以下、上記各部について詳細に説明する。先ず、光ディスク11に記録されている、1ビットオーディオ信号を生成するΔΣ変調器について図2を用いて説明する。図2において、ΔΣ変調器30は、加算器32と、積分器33と、1ビット量子化器34と、1サンプル遅延器36とを備えてなる。加算器32の加算出力は積分器33に供給され、積分器33からの積分出力は1ビット量子化器34に供給される。1ビット量子化器34の量子化出力は出力端子35から導出される一方、1サンプル遅延器36を介して負符号とされて加算器32にフィードバックされ、入力端子31から供給されるアナログオーディオ信号に加算される。加算器32からの加算出力は、積分器33で積分される。そして、この積分器33からの積分出力を1ビット量子化器34で1サンプル期間毎に量子化しているので、出力端子35から1ビット量子化データ、すなわち上記1ビットオーディオ信号を出力することができる。
【0015】
第1信号処理部14は、RF回路13で波形整形されたRF信号にEFM+と呼ばれる復調処理や、RS(Read Solomon)−PC(Product Code)と呼ばれるECC処理を施して再生用1ビットデジタル信号DRを出力すると共に、RS−PCによるECC処理の結果に応じたエラーフラグfeを生成する。このエラーフラグfeは、例えば2048バイトのセクタ単位毎に生成される。上記ECC処理で訂正不能なエラーデータが上記セクタ単位に存在したらエラーフラグfeはアクティブにされる。一方、訂正不能なエラーデータがセクタ単位に存在しなければエラーフラグfeはインアクティブにされる。
【0016】
第2信号処理部15は、第1信号処理部14からの再生用1ビットデジタル信号DRに対して上記エラーフラグfeに基づいた、ミュートのためのフェード処理を伴ったデコード処理を施すため、またシステムコントローラ27からの制御信号CNTに基づいた、ミュートのためのフェード処理を伴ったデコード処理を施すために以下の構成をとる。すなわち、第2信号処理部15は、上記再生用1ビットデジタル信号DRを一定レートで再生するためのバッファ16と、バッファ16から読み出した再生用1ビットデジタル信号DR’をデコードするデコーダ17と、デコーダ17からのデコード出力の内、音楽データDAに対してミュートのためのフェード処理を施すフェード処理部18と、バッファ16からデコーダ17に送られる上記再生用1ビットデジタル信号DR’よりも時間的に前のデータ、例えば所定時間後にデコーダ17に送られるべき判断用データ列Dd中のエラーフラグfeの状態を判断するエラーフラグ判断部20と、このエラーフラグ判断部20からのエラー判断結果(エラー判断フラグ)fe’に基づいて上記フェード処理部18のミュートのためのフェード処理を制御するフェード制御部21とを備えてなる。
【0017】
この第2信号処理部15でのデコード時に、行われるミュートのためのフェード処理について説明する。
【0018】
一般的に、ECC処理により訂正不能なエラーが発生した場合には、アナログ出力信号にミュート処理を行うことが考えられる。しかし、1ビットオーディオ信号を再生するときに、再生信号を音楽データからいきなりミュート処理し、無音データに変更すると大きなクリックノイズが出る。このため、1ビットフェード処理を行って滑らかにミュートを行う必要がある。
【0019】
この1ビットフェード処理とは、後述する図3及び図6に示すように、音楽データに任意の係数をかけて一旦データをマルチビットとして扱い、再びΔΣ変調を行って1ビットに戻すという信号処理を用意し、信号処理を行うときだけこの経路に切り替えるというものである。
【0020】
ただしこのようなミュート処理を行う為には数msecの音楽データが必要であり、データがエラーとなる数msec前から再生信号を減衰し始める為、前もってエラーの情報を知る必要がある。
【0021】
一方、フェード処理を伴ったミュートの後は、音楽データの復帰後にこのミュートを解除(OFF)させる必要がある。ミュートがONとなる場合はデコードした音楽データがエラーとなる数msec前に減衰を開始させる必要があるが、ミュートがOFFとなって音が出ていくときは前もって解除を始めるとエラーデータを出力してしまうため、ミュートOFF時はデコーダ出力がエラーの無い状態になって初めて解除を開始しなければいけない。
【0022】
また通常のデジタルオーディオと同様に、再生ポーズ、停止、サーチなどでは再生信号のオンオフでクリックノイズが出ない様に1ビットフェード処理を用いたソフトミュートが必要である。この再生ポーズや停止時の減衰は、比較的長い時間例えば数十msの時間をかけて行うのが好ましい。
【0023】
一方再生信号がエラーであった場合は音が途切れる時間が短いことが望ましいためこの減衰には比較的短い時間例えば数msの時間で減衰が終了したほうがよい。このようにミュートのための減衰時間は複数必要である。
【0024】
そこで、本発明では、ミュートのためのフェード処理を、データエラー時と再生停止時とで音量減衰時間、及び復帰の時間を変えて行うようにしている。
【0025】
バッファ16は空き領域のある限り、第1信号処理部14からの再生用1ビットデジタル信号DRを記憶し、一定のレートで読み出してデコーダ17に供給する。また、バッファ16は上記エラーフラグfeも付加的に記憶する。そして、上記デコーダ17に供給する再生用1ビットデジタル信号DR’よりも所定時間だけ前の判断用データ列Ddをエラーフラグ判断部20に供給する。
【0026】
デコーダ17は、バッファ16から供給された再生用1ビットデジタル信号DR’をタイムコード、サプリメントデータ、音楽データDAに分離し、音楽データDAをフェード処理部18に供給する。
【0027】
エラーフラグ判断部20は、バッファ16からデコーダ17に送られる再生用1ビットデジタル信号DR’よりも所定時間だけ前の判断用データ列Ddの上記エラーフラグfeがアクティブであるかインアクティブであるかを判断してエラー判断フラグfe’を生成し、フェード制御部21に送る。
【0028】
フェード制御部21は、エラーフラグ判断部20から供給されるエラー判断フラグfe’がアクティブであるときには、フェード処理部18に速やかなフェードアウト処理を行わせるためにアクティブのミュートフラグfmとステップフラグfsを発生する。また、上記エラー判断フラグフラグfe’がインアクティブになると所定の時間だけカウントして待ってからミュートフラグfmをインアクティブにし、更に所定のある時間だけ待ってからステップフラグfsをインアクティブにする。このように、フェード制御部21は、保持カウンタとして動作する。二つのフラグをインアクティブにするタイミングについては後述する。
【0029】
フェード処理部18は、フェード制御部21及びシステムコントローラ27の制御により音楽データDAにミュートのためのフェード処理を施す。エラー判断フラグfe’が始めからインアクティブ、すなわち再生用1ビットデジタル信号DRに上記ECC処理で訂正できないエラーが無く、通常再生しているときにはシステムコントローラ27からの制御信号CNTに基づいて上記音楽データDAをスルーして1ビットD/A変換器22に供給する。また、再生停止時には上記制御信号CNTに基づいて上記音楽データDAにエラー発生時とは異なった緩やかなミュートのためのフェード処理を施す。また、エラー発生時、すなわちエラー判断フラグfe’がアクティブであるときには、フェード制御部21からの上記ミュートフラグfm及びステップフラグfsに基づいて再生停止時とは異なった速やかなミュートのためのフェード処理を施す。再生停止時とエラー発生時でのミュートのためのフェード処理を異ならせるため、フェード処理部18は音量を制御するためのアッテネータ(ATT)カウンタ19を内蔵している。このATTカウンタ19は、上記ミュートフラグfm,ステップフラグfs及び制御信号CNTによりカウントのためのステップ幅(刻み幅)を変える。
【0030】
このフェード処理部18の具体例を図3に示す。フェード処理部18には信号端子41を介してデコーダ17から音楽データDAが供給される。また、このフェード処理部18内部のATTカウンタ19には制御端子42を介してフェード制御部21からミュートフラグfmが供給される。また、制御端子43を介して同じくフェード制御部21からのステップフラグfsが供給される。また、制御端子44を介してシステムコントローラ27からの制御信号CNTが供給される。ATTカウンタ19のカウント値Cvは乗算器45によって上記音楽データDAに乗算される。乗算器45からの乗算出力は1ビットデータではなくなるので、再ΔΣ変調器46により再度1ビットデータに変換される。この1ビットデータは切り換えスイッチ47の被選択端子bに供給される。一方、上記音楽データDAは切り換えスイッチ47の被選択端子aに供給されている。したがって、この切り換えスイッチ47の切り換え片cが被選択端子a側に接続すれば、音楽データDAはスルーされて出力端子48を介して1ビットD/A変換器22に供給される。また、切り換えスイッチ47の切り換え片cが被選択端子bに接続すれば、再ΔΣ変調器46からのフェード処理出力である1ビット信号が1ビットD/A変換器22に供給される。
【0031】
以下、このオーディオディスクプレーヤ10の動作を、通常再生時、データエラー時のミュート処理、ミュート解除処理、再生停止時等のミュート処理に分けて説明する。
【0032】
先ず、通常再生時の動作について説明する。
【0033】
通常再生時、バッファ16は空き領域のある限り、第1信号処理部14からの再生用1ビットデジタル信号DRを貯え、一定レートでデコーダ17に読み出す。またバッファ16はこの再生用1ビットデジタル信号DRより所定時間だけ前に読み出した判断用データ列Ddをエラーフラグ判断部20に供給する。
【0034】
デコーダ17はバッファ16からの再生用1ビットデジタル信号DR’をタイムコード、サプリメンタリデータ、音楽データDAにそれぞれ分離し、音楽データDAをフェード処理部18に送る。フェード処理部18では図3に示した切り換えスイッチ47の切り換え片cがシステムコントローラ27からの制御信号CNTにより被選択端子aに接続される。このため、フェード処理部18は、音楽データDAをスルーさせて1ビットD/A変換器22に送る。1ビットD/A変換器22は、1ビット音楽データDAを波形整形し、高周波ノイズ除去を行ってアナログ音楽信号に変換して出力端子23に供給する。
【0035】
次に、データエラー時のミュート処理について説明する。
【0036】
光ディスク11の大きなキズなどにより、第1信号処理部14でのRS−PCによるECC処理でも訂正不可能なエラーが発生したとき、第1信号処理部14はエラーフラグfeをアクティブにする。
【0037】
バッファ16は空き領域のある限り、第1信号処理部14からの再生用1ビットデジタル信号DRを記憶し、一定のレートでデコーダ17に供給する。また、バッファ16は上記エラーフラグfeも付加的に記憶する。そして、上記デコーダ17に供給する再生用1ビットデジタル信号DR’よりも所定時間だけ前に読み出した判断用データ列Ddをエラーフラグ判断部20に供給する。
【0038】
このため、デコーダ17にまだ正常な再生用1ビットデジタル信号DR’が送られているうちに、エラーフラグ判断部20は判断用データ列Ddからエラーフラグfeを読み取ることができる。
【0039】
エラーフラグ判断部20は、この判断用データ列Ddを常に監視し続け、エラーフラグfeがアクティブであるときにはエラー判断フラグfe’をアクティブにする。
【0040】
フェード制御部21は、エラーフラグ判断部20から供給されるエラー判断フラグfe’がアクティブであるときには、フェード処理部18に速やかなミュートのためのフェードアウト処理を行わせるためにアクティブのミュートフラグfmとステップフラグfsを発生する。
【0041】
ミュートフラグfm及びステップフラグfsがアクティブとなると、フェード処理部18は図3に示す切り換えスイッチ47の切り換え片cを被選択端子aから被選択端子bに切り換えて信号伝達の経路をスルーからフェード処理用経路に切り替える。次にフェード処理部18は、ATTカウンタ19を1.0から0.0まで比較的大きい刻み幅で、例えばカウントダウンまで3msecの時間がかかる様な刻み幅でカウントダウンし、0.0になったらカウントストップする。
【0042】
フェード処理部18では、入力される音楽データDAとATTカウンタ19のカウント値を乗算器45で乗算し、その乗算出力をΔΣ変調器46で再度1ビット信号に変換してミュートのためのフェードアウト出力とし、切り換えスイッチ47を介して出力端子48に供給する。このため、ATTカウンタ19によるカウントダウンによって得られた1ビットのフェードアウト出力は1ビットD/A変換器22によってアナログ出力に変換される。1ビットD/A変換器22からのアナログ出力は、図4に示すように、区間37(例えば3msec)で音量が徐々に小さくなり、3msecのフェードアウト処理がかけられる。
【0043】
3msecのフェ−ドアウト処理の後、図5に示すようにミュートフラグfmがアクティブである間、ATTカウンタ19は0.0の値を保持して停止している。なおこの0.0までのカウントダウンの時間t0は、ステップフラグfsがアクティブのときは判断用データ列Ddのエラー判断フラグfe’をデコーダ17のデコード出力より先に読みだす時間Aよりも短く設定する。これにより、再生データがエラーとなる前にミュートのためのフェードアウト処理を終わらせ、滑らかにアナログ出力を無音とすることができる。
【0044】
次に、エラーが回復したときのミュート解除処理について説明する。
【0045】
第1信号処理部14から出力される再生用1ビットデジタル信号DRには上記RS−PCによるECC処理で訂正不能なエラーが存在しないとき、すなわち正常に戻ったとき、エラーフラグfeはインアクティブとなる。これによりある時点でエラーフラグ判断部20からのエラー判断フラグfe’もインアクティブとなる。
【0046】
しかし、エラーフラグ判断部20からのエラー判断フラグfe’がインアクティブとなっても、デコーダ17からの音楽データDAはまだエラーデータを含んだままであるため、フェード制御部21は先に述べた様に所定の時間だけミュートフラグfeをアクティブのまま保持し続け、それからインアクティブに戻す。更にそれから所定の時間だけステップフラグfsを保持し続けてからインアクティブに戻す。
【0047】
図5において、エラーフラグ判断部20が判断用データ列Ddを読み出してエラーが無いのを判断してエラー判断フラグfe’をインアクティブにしてから、ミュートフラグfmをインアクティブにするまでに待つ時間Bは、判断用データ列Ddが再生データ(デコード出力)よりも先に読み出される時間A以上に設定する。図5には時間Bを時間Aよりもdだけ長くした様子を示す。さらに、エラー判断フラグfe’をインアクティブにしてからステップフラグfsをインアクティブにするのに待つ時間CはATTカウンタ19が0.0から1.0へカウントアップするのに必要な時間以上に設定する。
【0048】
これによりATTカウンタ19は再生データがエラーでなくなってから0.0から1.0へ所定の刻み幅と時間でカウントアップし、アナログ再生信号は滑らかにフェードインして音量がアップしミュート解除を行う。このとき、ATTカウンタ19が1.0になるまでステップフラグfsはアクティブを継続するため、フェードアウトによるミュートオンのときと同様に再生停止時等に比べて早くカウントアップする。
【0049】
このように、ATTカウンタ19はステップフラグfsがアクティブのときには、早くカウントアップする。一方、ステップフラグfsがインアクティブの時には、ゆっくりカントアップする。
【0050】
次に、再生停止時等のミュート処理について説明する。上述したデータエラー時のミュート処理に対して、通常再生停止時は数十ms、例えば23msecの時間をかけてより緩やかにミュートを行う。このため、通常再生停止時はシステムコントローラ27より送られる制御信号CNTによりATTカウンタ19を1.0から0.0へカウントダウンする。このときはステップフラグfsはアクティブでないのでATTカウンタ19の刻み幅はエラーミュート時よりも小さくなり、緩やかにミュート処理を行うことができる。
【0051】
このミュート処理の解除は同様にシステムコントローラ27から送られる制御信号CNTがインアクティブとなることでATTカウンタ19が0.0から1.0へカウントアップして音量が上がることによる。また同様にステップフラグfsはアクティブでないので緩やかにミュート解除を行うことになる。
【0052】
また、この緩やかな再生停止のミュートを行っている最中に上記ECC処理で訂正できないエラーが発生したとき、ステップフラグfeがアクティブとなるためエラー時のミュートが優先して途中からATTカウンタ19が早くカウントアップし、クリックノイズを生ずることなくミュートを完了する。
【0053】
そして、ミュート完了時は時間的余裕があるため可聴帯域で完全に無音となるパターンに切り替える。これにより再ΔΣ変調器が発生する僅かなノイズをなくすことができる。この切替を行う為、実際には音楽信号と無音となるパターンとのクロスフェード処理を伴ったミュート処理が行われる。
【0054】
図6には1ビット信号で完全に無音となるミュート信号を発生するミュート信号発生器49を備えるフェード処理部18の構成を示す。切り換えスイッチ47は、音楽データDAとフェード処理された1ビット信号、さらにミュート信号を切り換えてクロスフェード処理を伴ったミュート処理を行う。一方エラー時は、エラー終了とともにできるだけ早く元の音楽に復帰して空白となる時間が短い方が好ましいため、処理に時間のかかるこの無音パターンとの切替は行わないようにする。
【0055】
以上、このオーディオディスクプレーヤ10によれば、エラーデータ再生前のミュート処理、通常データ再生時のミュート解除が問題なく行える。また、同じカウンタ及び乗算器を使いながら、エラー検出時と再生停止時でそれぞれ最適な時間でミュート処理を行うことができる。さらに、再生停止のソフトミュート中にエラーが起こってもノイズを出すことなくミュートを完了できる。
【0056】
なお、図7に示すように、オーディオディスクプレーヤ10は、第2信号処理部15内部のバッファ16とフェード制御部21の間に、エラーフラグ判断部20と並列になるようにメモリコントローラ38を備え、バッファ16が空になったときにフェード処理を行うようにしてもよい。
【0057】
メモリコントローラ38は、バッファ16への信号の書き込み読み出しを監視し、上記デコーダ17から読み出される音楽データDAよりも所定時間だけ前に読みだされる判断用データ列Ddで、所定の曲が終わろうとするとき、すなわちエラーではなく、単純にデータが無くなろうとするとき、空になる数msec、例えば3msec手前からフェード制御部21にアクティブのエムプティフラグfPを送る。つまり、エムプティフラグfPがアクティブになるのはバッファ16の残りデータが所定の数より少なくなった時点である。
【0058】
フェード制御部21は、アクティブのエムプティフラグfPを受け取ると、バッファ16が空になった場合に再生データが無いことでノイズが出ないように、エラー時と同様にミュートフラグfm及びステップフラグfsを出力する。このため、バッファ16が空になる前にフェードアウト処理を完了させミュートオン処理を行うことができる。
【0059】
ミュートの解除はバッファ16にデータが所定の数より多く溜まってからミュートフラグfmをインアクティブにすればよく、ステップフラグfsはフェード制御部21によってそれから所定の数だけ更に保持した後にインアクティブとなる。
【0060】
この図7に示したオーディオディスクプレーヤ10によれば、上記図1のオーディオディスクプレーヤ10で得られた効果の他、バッファ16が空になる場合もノイズを出すことがない。
【0061】
図8には他の実施の形態となる、オーディオディスクプレーヤ50を示す。このオーディオディスクプレーヤ50は、上記図1のオーディオディスクプレーヤ10の第2信号処理部15に対応する第2信号処理部51の構成及び動作が異なる。
【0062】
第2信号信号処理部51では、第1信号処理部14からの再生用1ビットデジタル信号DRとエラーフラグfeをデータ置換部52で受ける。このデータ置換部52は、エラーフラグfeがインアクティブである通常再生時に上記再生用1ビットデジタル信号DRをスルーさせてバッファ16に入力する。また、第1信号処理部14からのエラーフラグfeがアクティブであり、再生用1ビットデジタル信号DRに上記ECC処理で訂正できないエラーが発生しているときに、例えば2048バイトのセクタを全て0に置換してバッファ16に入力する。このため、データエラーの情報をバッファ16内の別の空間に貯める必要がなく、メモリを削減できる。
【0063】
バッファ16からエラー判断部53へは、デコーダ17に送られるデータより所定時間だけ前のデータ、例えば数msec後にデコーダ17に送られるべき判断用データ列Ddが一足先に出力される。このため、エラー判断部53はデコーダ17にまだ正常なデータが送られている内に、全て0に置換されたセクタを読み取ることができる。
【0064】
エラー判断部53は、判断用データ列Ddを常に監視し続け、この判断用データDd中で所定の数、例えば32サンプル以上連続して0が並んでいるときに、上記ECC処理で訂正できないエラーが発生していると見なしてエラー判断フラグfe’をアクティブにする。
【0065】
フェード制御部21は、エラーフラグ判断部20から供給されるエラー判断フラグfe’がアクティブであるときには、フェード処理部18に速やかなミュートのためのフェードアウト処理を行わせるためにアクティブのミュートフラグfsとステップフラグfsを発生する。また、上記エラー判断フラグfe’がインアクティブになると所定の時間だけカウントして待ってからミュートフラグfmをインアクティブにし、更に所定のある時間だけ待ってからステップフラグfsをインアクティブにする。
【0066】
通常再生時、データエラー時のミュート処理、ミュート解除処理、再生停止時等のフェード処理部18における動作は上述した通りである。ここでは説明を省略する。
【0067】
以上、このオーディオディスクプレーヤ50によれば、エラーデータ再生前のミュート処理、通常データ再生時のミュート解除が問題なく行える。また、同じカウンタ及び乗算器を使いながら、エラー検出時と再生停止時でそれぞれ最適な時間でミュート処理を行うことができる。さらに、再生停止のソフトミュート中にエラーが起こってもノイズを出すことなくミュートを完了できる。またさらに、データエラーの情報をバッファ16内部の別の空間に貯める必要がなく、メモリを節約できる。
【0068】
なお、図9に示すように、オーディオディスクプレーヤ50は、第2信号処理部51内部のバッファ16とフェード制御部21の間に、エラー判断部53と並列になるようにメモリコントローラ54を備え、バッファ16が空になる前にフェード処理を行うようにしてもよい。
【0069】
メモリコントローラ54は、バッファ16への信号の書き込み読み出しを監視し、上記デコーダ17から読み出される音楽データDAよりも時間的に前の判断用データ列Ddで、所定の曲が終わったとき、すなわちエラーではなく、単純にデータが無くなったときに、空になる数msec、例えば3msec手前からフェード制御部21にアクティブのエムプティフラグfpを送る。
【0070】
フェード制御部21は、アクティブのエムプティフラグfpを受け取ると、バッファ16が空になった場合に再生データが無いことでノイズが出ないように、エラー時と同様にミュートフラグfm及びステップフラグfsを出力する。このため、バッファ16が空になる前にミュート処理を完了させることが可能である。
【0071】
ミュートの解除はバッファ16が所定の数より多く溜まってからミュートフラグfmをインアクティブにすればよく、ステップフラグfsはフェード制御部21によってそれから所定の数だけ更に保持した後にインアクティブとなる。
【0072】
この図9に示したオーディオディスクプレーヤ50によれば、上記図8のオーディオディスクプレーヤ50で得られた効果の他、バッファが空になる場合もノイズを出すことがない。
【0073】
なお、データ置換器52は、エラーがあった場合にデータを1に置換してもよい。この場合、エラー判断部53も1が連続した場合をエラーと見なすようにする。
【0074】
エラー時のソフトミュートの実行も、可聴帯域で完全に無音となるパターンとのクロスフェードでもよい。
【0075】
また、本発明は、上記1ビットオーディオ信号を記録している磁気テープを再生するデジタルオーディオテーププレーヤに適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施の形態となるオーディオディスクプレーヤの構成を示すブロック図である。
【図2】上記オーディオディスクプレーヤが再生する光ディスクに記録されている、1ビットオーディオ信号を生成するΔΣ変調器の構成を示すブロック図である。
【図3】上記図1に示したオーディオディスクプレーヤに内蔵されるフェード処理部の詳細な構成を示すブロック図である。
【図4】上記図1に示したオーディオディスクプレーヤで行われるミュート処理を概略的に説明するための図である。
【図5】上記図1に示したオーディオディスクプレーヤで行われるミュート処理を詳細に説明するためのタイミングチャートである。
【図6】1ビット信号で完全に無音となるミュート信号を発生するミュート信号発生器を備えるフェード処理部の構成を示すブロック図である。
【図7】上記オーディオディスクプレーヤの変形例のブロック図である。
【図8】本発明の他の実施の形態となるオーディオディスクプレーヤの構成を示すブロック図である。
【図9】上記図8に示したオーディオディスクプレーヤの変形例のブロック図である。
【図10】1ビットオーディオ信号を記録した光ディスクを再生する従来のオーディオディスクプレーヤの構成を示すブロック図である。
【図11】上記図10に示したオーディオディスクプレーヤでの動作を説明するためのダイミングチャートである。
【符号の説明】
【0077】
10 オーディオディスクプレーヤ、11 1ビットオーディオ信号を記録している光ディスク、12 光学ピックアップ、13 RF回路、14 第1信号処理部、15 第2信号処理部、16 バッファ、17 デコーダ、18 フェード処理部、19 ATTカウンタ、20 エラーフラグ判断部、21 フェード制御部、22 1ビットD/A変換器、27 システムコントローラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ΔΣ変調されている1ビットオーディオ信号を一旦蓄積するメモリ手段と、
記録媒体から再生された上記ΔΣ変調されている1ビットオーディオ信号を上記メモリ手段に供給する供給手段と、
上記メモリ手段のデータ蓄積量を監視する監視手段と、
ミュート信号を表す1ビットデジタル信号を生成するミュート信号生成手段と、
上記メモリ手段から読み出された1ビットオーディオ信号と前記ミュート信号生成手段から出力されるミュート信号を表す1ビットデジタル信号とをフェーダ処理して切り換える切換手段と、
上記切り換え手段から出力される1ビットデジタル信号をアナログ信号に変換するD/A変換手段と、
上記メモリ手段に第1の所定量を超えるデータが蓄積されるまでの期間は上記切り替え手段から上記ミュート信号生成手段から出力されるミュート信号が出力されるように制御し、上記メモリ手段に第1の所定量を超えるデータが蓄積されたと上記監視手段によって判定された場合には上記メモリ手段からデータが出力されるように制御すると共に上記切替手段にて上記ミュート信号から上記メモリ手段から出力される1ビットオーディオ信号に上記A/D変換手段への出力がクロスフェード切り替えされるように制御し、上記メモリ手段に蓄積された1ビットオーディオ信号のデータ量が第2の所定量より少なくなったと上記監視手段によって判定された場合には上記切り替え手段にて上記メモリ手段から出力される1ビットオーディオ信号から上記ミュート信号生成手段から出力されるミュート信号に上記A/D変換手段への出力がクロスフェード切り換えされるように制御する制御手段と
を備えるデジタル信号処理装置。
【請求項1】
ΔΣ変調されている1ビットオーディオ信号を一旦蓄積するメモリ手段と、
記録媒体から再生された上記ΔΣ変調されている1ビットオーディオ信号を上記メモリ手段に供給する供給手段と、
上記メモリ手段のデータ蓄積量を監視する監視手段と、
ミュート信号を表す1ビットデジタル信号を生成するミュート信号生成手段と、
上記メモリ手段から読み出された1ビットオーディオ信号と前記ミュート信号生成手段から出力されるミュート信号を表す1ビットデジタル信号とをフェーダ処理して切り換える切換手段と、
上記切り換え手段から出力される1ビットデジタル信号をアナログ信号に変換するD/A変換手段と、
上記メモリ手段に第1の所定量を超えるデータが蓄積されるまでの期間は上記切り替え手段から上記ミュート信号生成手段から出力されるミュート信号が出力されるように制御し、上記メモリ手段に第1の所定量を超えるデータが蓄積されたと上記監視手段によって判定された場合には上記メモリ手段からデータが出力されるように制御すると共に上記切替手段にて上記ミュート信号から上記メモリ手段から出力される1ビットオーディオ信号に上記A/D変換手段への出力がクロスフェード切り替えされるように制御し、上記メモリ手段に蓄積された1ビットオーディオ信号のデータ量が第2の所定量より少なくなったと上記監視手段によって判定された場合には上記切り替え手段にて上記メモリ手段から出力される1ビットオーディオ信号から上記ミュート信号生成手段から出力されるミュート信号に上記A/D変換手段への出力がクロスフェード切り換えされるように制御する制御手段と
を備えるデジタル信号処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−40529(P2006−40529A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−237831(P2005−237831)
【出願日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【分割の表示】特願平10−331618の分割
【原出願日】平成10年11月20日(1998.11.20)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【分割の表示】特願平10−331618の分割
【原出願日】平成10年11月20日(1998.11.20)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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