説明

デングウイルス感染に対するワクチン接種

本発明は、デングウイルス感染に対するワクチン接種における使用のための方法およびキットに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デングウイルス感染に対するワクチン接種に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
デング熱は、4つの異なる種のデングウイルス(血清1〜4型と呼ばれる)に起因する疾患であり、人類史上最大のベクター媒介性疾患である。世界の熱帯および亜熱帯地域において、毎年およそ1億人がデングウイルスに冒される(Halstead, "Epidemiology of Dengue and Dengue Hemorrhagic Fever," CABI Publ., New York, pp. 23-44, 1997(非特許文献1); Gubler, "Dengue and Dengue Hemorrhagic Fever," CABI Publ., New York, pp. 1-22, 1997(非特許文献2))。デング出血熱(DHF)は、デングウイルス感染に起因する重篤かつ潜在的に致死性の疾患形態であり、地理的分布および発生率の点で増加傾向にある。これらの事実は、安全かつ有効なデングワクチンを開発する集中的な取組みを促したが、50年以上に及ぶ多大な労力にもかかわらず、商業利用可能なデング熱に対するワクチンは開発されていない。従って世界保健機関はデング熱に対するワクチンの開発を最重要課題としている(Chambers et al., Vaccine 15:1494-1502, 1997(非特許文献3))。
【0003】
DHFの病原論はデングワクチンの設計を前進させる。DHFは主として、過去にあるデング血清型の感染を受け、その後に第二の異なる(ヘテロ)血清型に曝された者において発症する免疫病理学的疾患である。4つのデング血清型の任意の一つの感染は、中和抗体に基づくそのホモ血清型に対する永続的な免疫を提供する。しかし、あるデング血清型への感染後の他のヘテロデング血清型に対する免疫は、それが生じたとしても短期的なものである(Sabin, Am. J. Trop. Med. Hyg. 1:30-50, 1952(非特許文献4))。典型的には、数週間または数か月後に現れる抗体は、ヘテロ血清型に結合するのみでこれを中和しない。これらの結合するが中和しない抗体はその後のヘテロ血清型のデングウイルスの感染を増進し、重篤な疾患の危険を増加させ得る(Rothman et al., Virology 257:1-6, 1999(非特許文献5))。
【0004】
DHFの免疫病原論が分かれば、デング熱に対するワクチンは完成し、それは安全でありかつ同時に4つ全てのデングウイルス血清型に対する持続的な交差中和抗体反応を誘導するはずであり、将来の感染から被験体を保護しないレベルにまで力価が落ちることもない。歴史的に見れば、経験主義的な弱毒化生ワクチン候補の開発努力は、候補ワクチンウイルスの十分な弱毒化(安全性)と免疫原性のバランスをとることが困難であることを実証している。4つ全ての血清型を示すワクチン株を有効な4価混合物としてまとめることもまた困難であり、かつ全ての血清型に対する血清変換(seroconversion)に到達するのに複数回の投与スケジュールが必要となり、それは被験体が免疫病理学的現象に感作され得る免疫化スケジュールの隙間を与えるという望ましくない効果があった。事実、1価の生デングワクチンの混合物で免疫化する試みは4つのウイルス株間の有意な相互作用を実証し、ウイルス干渉作用を引き起こした(Saluzzo, Adv. Virus Res. 61:420-444, 2003(非特許文献6)に概説されている)。
【0005】
デング血清1、2、3、または4型の二つの配列(すなわちプレ膜(prM)タンパク質および外被(E)タンパク質をコードする配列)が黄熱17Dウイルスの全長感染性クローンの対応する黄熱ウイルスタンパク質コード配列の位置に挿入された、遺伝子操作されたキメラフラビウイルス系のデングウイルスワクチンが開発された(例えば、Guirakhoo et al., J. Virol. 75:7290-7304, 2001(非特許文献7); Guirakhoo et al., Virology 298:146-159, 2002(非特許文献8)を参照のこと)。これらのウイルスは、サルに注射した場合に免疫反応を誘導するのに非常に効果的である。しかし、予備的データはまた、ヒトにおいて、デングワクチンの単回投与後の4つ全ての血清型に対する免疫化を制限し得るウイルス干渉作用も示した。
【0006】
本発明者らは、複数回のデングワクチン接種スケジュールの必要性および初期の不均衡な免疫反応に関連する潜在的危険を回避しつつデング血清1〜4型に対する持続的な交差中和抗体反応の誘導を可能にする、デング疾患に対する新規かつ安全な免疫化法を見出した。本発明の方法は、最初の黄熱ワクチン投与およびそれに続くキメラフラビウイルス系デングワクチン投与を含む免疫化レジメンを使用し、デングワクチンの投与後早期(30日以内)に現れ、4つの血清型に対して持続的かつ交差反応的であるという利点を示す、デングウイルスに対する交差中和免疫反応を誘導する。さらに、本発明の方法は、黄熱に対する保護免疫反応の誘導という付加的利益を示す。
【0007】
Priceら(Am. J. Epid. 88:392-397, 1968(非特許文献9))は以前に、デング2型および二つの異種ウイルス(黄熱および日本脳炎)を用いる連続した三つの免疫化を含む逐次的フラビウイルス免疫化法を記載した。さらに、本発明と異なり、日本脳炎免疫化を行わない、黄熱からデング2型という連続した免疫化は、交差保護的な免疫を付与するのに失敗した。
【0008】
Scottら(J. Infect. Dis. 148:1055-1060, 1983(非特許文献10))は、先に黄熱で免疫化しその後にデング2型弱毒化生ワクチンを接種した被験体が、デング2型に対する免疫反応を強化し、その反応は先に黄熱免疫をしなかった被験体よりも持続的(3年継続)であったことを示した。この強反応は、先行する黄熱ワクチン接種がデング2型ウイルスに対して惹起された(結合性、非中和性)抗体を強化したことに起因するものであった(Eckels et al., J. Immunol. 135(6):4201-4203, 1985(非特許文献11))。しかし、Scottらは、黄熱ワクチンおよびその後のデング2型ワクチンが他の3つのデング血清型(1、3、または4型)に対する持続的な免疫反応を惹起することを示さなかった。本発明と異なり、黄熱からデング2型という連続した免疫化が、保護免疫を予測する唯一の試験である中和試験により幅広い免疫を惹起するとは示されなかった。
【0009】
最近の誌面では、Kanesa-thasanら(Am. J. Trop. Med. Hyg. 69(Suppl 6):32-38, 2003(非特許文献12))は、弱毒化デングワクチンのワクチン接種後時間をおいて黄熱ワクチン接種を行った被験体において異種性反応および抗デング抗体価が亢進されることを発見した。これらの短期間(30日まで)の抗体反応は中和を含む抗体アッセイを用いて実証されたが、著者らはその後のデング感染に対する保護の証拠については結論に達していないと結論付けた。本発明と異なり、著者らは最終的に、黄熱ワクチン接種のタイミングまたは実施が先であることや、持続的で広範な中和抗体反応を実証することも、デングに対する交差反応性T細胞反応の証拠を提供することもできなかった。
【0010】
本発明者らは、ヒトにおける複数のデング血清型に対する交差中和免疫の誘導が黄熱およびデングキメラウイルスの逐次的投与により実際に付与され得ることを初めて実証した。
【0011】
【非特許文献1】Halstead, "Epidemiology of Dengue and Dengue Hemorrhagic Fever," CABI Publ., New York, pp. 23-44, 1997
【非特許文献2】Gubler, "Dengue and Dengue Hemorrhagic Fever," CABI Publ., New York, pp. 1-22, 1997
【非特許文献3】Chambers et al., Vaccine 15:1494-1502, 1997
【非特許文献4】Sabin, Am. J. Trop. Med. Hyg. 1:30-50, 1952
【非特許文献5】Rothman et al., Virology 257:1-6, 1999
【非特許文献6】Saluzzo, Adv. Virus Res. 61:420-444, 2003
【非特許文献7】Guirakhoo et al., J. Virol. 75:7290-7304, 2001
【非特許文献8】Guirakhoo et al., Virology 298:146-159, 2002
【非特許文献9】Price et al., Am. J. Epid. 88:392-397, 1968
【非特許文献10】Scott et al., J. Infect. Dis. 148:1055-1060, 1983
【非特許文献11】Eckels et al., J. Immunol. 135(6):4201-4203, 1985
【非特許文献12】Kanesa-thasan et al., Am. J. Trop. Med. Hyg. 69(Suppl 6):32-38, 2003
【発明の開示】
【0012】
発明の概要
本発明は、
(i)一回用量の黄熱ウイルスワクチン、および
(ii)黄熱ウイルスの外被タンパク質をコードする配列がデングウイルスの外被タンパク質をコードする配列で置換された黄熱ウイルス骨格を含む少なくとも一種類のキメラフラビウイルスを含む一回用量のキメラフラビウイルスワクチン
を患者に投与する段階を含み、キメラフラビウイルスワクチンは、黄熱ワクチンの投与から少なくとも30日後かつ10年以内に投与される、患者のデングウイルスに対する持続的な交差中和免疫反応の誘導方法を提供する。一つの例において、デング外被配列はシャッフル配列(shuffled sequence)である。
【0013】
一つの態様によれば、キメラフラビウイルスは、黄熱ウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列がデングウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列で置換された黄熱ウイルス骨格を含む。一つの例において、これらのデング配列のいずれかまたは両方はシャッフル配列である。
【0014】
特定の態様によれば、キメラフラビウイルスワクチンは黄熱ワクチンの投与から30日後、60日後、または90日後に患者に投与される。
【0015】
特定の態様によれば、本発明のデングワクチンにおいて使用されるキメラフラビウイルスは、黄熱17D(YF17D)ウイルス骨格で構成される。
【0016】
別の態様によれば、本発明の方法において使用される黄熱ウイルスワクチンは、YF17D株を含む。
【0017】
別の態様によれば、本発明の方法において使用されるキメラフラビウイルスワクチンは、黄熱ウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列がデング血清1型ウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列で置換された黄熱ウイルス骨格を含む一種類のキメラフラビウイルスを含む。
【0018】
別の態様によれば、本発明の方法において使用されるキメラフラビウイルスワクチンは、黄熱ウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列がデング血清2型ウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列で置換された黄熱ウイルス骨格を含む一種類のキメラフラビウイルスを含む。
【0019】
別の態様によれば、本発明の方法において使用されるキメラフラビウイルスワクチンは、黄熱ウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列がデング血清3型ウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列で置換された黄熱ウイルス骨格を含む一種類のキメラフラビウイルスを含む。
【0020】
別の態様によれば、本発明の方法において使用されるキメラフラビウイルスワクチンは、黄熱ウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列がデング血清4型ウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列で置換された黄熱ウイルス骨格を含む一種類のキメラフラビウイルスを含む。
【0021】
特定の態様によれば、本発明の方法において使用されるキメラフラビウイルスワクチンは、1価ワクチンまたは4価ワクチンである。
【0022】
別の態様によれば、本発明の方法は、上記キメラフラビウイルスワクチンのブースター量を、最初のキメラフラビウイルスワクチン投与から6か月〜10年後に投与する段階をさらに含む。
【0023】
別の局面によれば、本発明は、
(i)黄熱ウイルスワクチン、および
(ii)黄熱ウイルスの外被タンパク質をコードする配列がデングウイルスの外被タンパク質をコードする配列で置換された黄熱ウイルス骨格を含む少なくとも一種類のキメラフラビウイルスを含むキメラフラビウイルスワクチン、
を含むキットに関する。一つの例において、デング外被配列はシャッフル配列である。
【0024】
一つの態様によれば、キメラフラビウイルスは、黄熱ウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列がデングウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列で置換された黄熱ウイルス骨格を含む。一つの例において、これらのデング配列のいずれか一方または両方はシャッフル配列である。
【0025】
本発明のキットの一つの態様によれば、黄熱ウイルスワクチンはYF17D株を含み、YF17Dは黄熱に対するワクチン接種に使用される多くの亜株(17D-204、17D-213、および17DDを含む)を含む。
【0026】
別の態様によれば、キメラフラビウイルスはYF17Dウイルス骨格で構成される。
【0027】
本発明のキットの別の態様によれば、キメラフラビウイルスワクチンは、黄熱ウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列がデング血清1型ウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列で置換されたYF17Dウイルス骨格を含む一種類のキメラフラビウイルスを含む。
【0028】
本発明のキットの別の態様によれば、キメラフラビウイルスワクチンは、黄熱YF17Dウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列がデング血清2型ウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列で置換された黄熱ウイルス骨格を含む一種類のキメラフラビウイルスを含む。
【0029】
本発明のキットの別の態様によれば、キメラフラビウイルスワクチンは、YF17Dウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列がデング血清3型ウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列で置換された黄熱ウイルス骨格を含む一種類のキメラフラビウイルスを含む。
【0030】
本発明のキットの別の態様によれば、キメラフラビウイルスワクチンは、黄熱ウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列がデング血清4型ウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列で置換されたYF17Dウイルス骨格を含む一種類のキメラフラビウイルスを含む。
【0031】
別の態様によれば、上記のキットは、少なくとも一回のブースター量の上記キメラフラビウイルスワクチンをさらに含む。
【0032】
別の態様によれば、本発明は、デングウイルス感染の予防および処置における上記のおよび本明細書の他の箇所に記載のウイルスの使用ならびに同じ目的の医薬の調製におけるこれらのウイルスの使用に関する。
【0033】
定義
「交差中和免疫反応」とは、複数の(最大4種類の)異なるデング血清型に対する中和抗体を含む特異的な免疫反応を意味する。交差中和免疫反応の誘導は、参照プラーク減少中和アッセイ(reference plaque reduction neutralization assay)(PRNT50)によって容易に決定できる。例えば、交差中和免疫反応の誘導は、実施例1に記載のPRNT50アッセイの一つによって決定できる。このようにして決定された中和抗体価がこれらのアッセイの少なくとも一つにおいて少なくとも1:10よりも高いかまたはこれと等しい場合に、血清サンプルは交差中和抗体の存在について陽性であると見なされる。
【0034】
「持続的な免疫反応」とは、ヒト血清において、以下で定義されるキメラフラビウイルスワクチンの投与後少なくとも6か月間検出でき、有利には、少なくとも12か月間検出でき、上記の陽性の交差中和免疫反応を意味する。
【0035】
「患者」とは、黄熱未処置の個体を意味し、成人および子供を含む。
【0036】
「黄熱未処置(yellow fever naive)」の個体とは、10年を超えて黄熱に対するワクチン接種を受けた記録がない個体および/または10年を超えて黄熱ウイルス感染が認定されなかった個体を意味する。
【0037】
「黄熱免疫者」とは、本発明の枠組みの中では、黄熱に対するワクチン接種を受けた記録のある個体および/または黄熱ウイルス感染の認定がなされた個体であって、それらが10年前もしくはそれ以降、例えば5年前もしくはそれ以降、例えば4、3、2、もしくは1年前、または6、5、4、3、もしくは2か月前に行われたもので、かついずれの場合であっても30日より以前に行われたものを意味する。
【0038】
「キメラフラビウイルス」とは、黄熱ウイルスの外被タンパク質をコードする配列がデングウイルスの外被タンパク質をコードする配列で置換された黄熱ウイルス骨格で構成されるキメラフラビウイルスを意味する。キメラフラビウイルスは、有利には、黄熱ウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列がデングウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列で置換された黄熱ウイルス骨格で構成される。黄熱骨格は、有利にはワクチン株、例えばYF17DまたはYF17DD由来である。これらのキメラフラビウイルスは以下でより詳細に規定され、YF/デング-N(Nはデング血清型を特定する)と名付けられている。
【0039】
「キメラフラビウイルスワクチン」とは、免疫有効量の少なくとも一種類の上記フラビウイルスおよび薬学的に許容される賦形剤を含む免疫原性組成物を意味する。
【0040】
キメラフラビウイルスワクチンは、一種類のデング血清型のタンパク質を発現する一種類のキメラフラビウイルスを含む場合に「1価」であると称する。1価ワクチンの例は、YF/デング-1、YF/デング-2、YF/デング-3、またはYF/デング-4を含むワクチンであり、有利にはYF/デング-2を含むワクチンである。
【0041】
キメラフラビウイルスワクチンは、二種類の異なるデング血清型のタンパク質を発現するキメラフラビウイルスを含む場合に「2価」であると称する。2価ワクチンの例は、YF/デング-2およびYF/デング-4、またはYF/デング-2およびYF/デング-3、またはYF/デング-2およびYF/デング-1を含むワクチンである。
【0042】
キメラフラビウイルスワクチンは、三種類の異なるデング血清型のタンパク質を発現するキメラフラビウイルスを含む場合に「3価」であると称する。3価ワクチンの例は、YF/デング-2、YF/デング-1、およびYF/デング-4、またはYF/デング-2、YF/デング-3、およびYF/デング-4を含むワクチンである。
【0043】
キメラフラビウイルスワクチンは、四種類の異なるデング血清型のタンパク質を発現するキメラフラビウイルスを含む場合に「4価」であると称する。4価ワクチンの例は、YF/デング-1、YF/デング-2、YF/デング-3、およびYF/デング-4を含むワクチンである。
【0044】
「免疫有効量のキメラフラビウイルス」とは、黄熱免疫者への投与後に上記の交差中和免疫反応を誘導できるキメラフラビウイルスの量を意味する。典型的には、免疫有効量のキメラフラビウイルスは、一つの血清型、一回用量あたり、102〜107、例えば103〜106、例えば104、105、または106の量の感染単位(例えば、プラーク形成単位または組織培養物感染用量)で構成される。
【0045】
本発明の方法の主な利点は、4つ全てのデング血清型に対する中和抗体を迅速かつ同時に誘導し、それによってデング熱から保護し、従ってその後のデング感染に対する自然暴露時にデング出血熱を発症する潜在的に関連する危険を回避できることである。デング外被タンパク質に対する中和抗体は、感染に対する保護免疫の主たるメディエーターであるとみなされ、従って中和抗体の挙動は、患者の中和免疫の適当な代理者として扱われる。
【0046】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明、特許請求の範囲、および図面から明らかであろう。
【0047】
詳細な説明
本発明は、簡単な二段階の手順を用いて4つ全てのデング血清型(1〜4)に対する患者の持続的な交差中和免疫を誘導する方法を提供する。従って、対象となる集団は、特にデング感染の危険がある以下の患者で構成される:国外旅行者、国外居住者、および軍関係者、ならびにデング熱が風土病の地域の定住者。この方法において、患者は最初に、一回用量(好ましくは一回用量であるが、一回用量以上(例えば二回用量または三回用量)でも可能である)の黄熱ウイルスワクチン(例えば、市販の弱毒化生ワクチン;下記参照)で免疫化される。少なくとも30日の適当な時間間隔、特に黄熱ウイルスワクチンにより誘導される生来の免疫反応を静止させる時間間隔をおいた後に、構造タンパク質(例えばプレ膜タンパク質および外被タンパク質)をコードする一つ以上の配列が対応するデングウイルス(例えばデング1、2、3、または4)のタンパク質をコードする配列で置換された黄熱ウイルス骨格を各々含む一つ以上の弱毒化生キメラウイルスを含む一回用量のキメラフラビウイルスワクチンの投与を含む、この方法の第二段階が行われる。本発明者らは、この連続した免疫化が4つ全てのデング血清型に対する高い中和抗体価を惹起することを示した。これらの抗体は、デングワクチン投与後6か月を超えて高レベルで持続され、12か月を超える場合すらあり、これにより広範なデング免疫が持続的であることが示された。最初の免疫化/初回刺激剤(黄熱ワクチン)では被験体をDHFに対して感作することはできないので、第二の注射が遅れたり行われなかったりした場合に、最初の初回刺激接種が被験体をこの疾患に対して脆弱にするという危険はなかった。これらの結果は予想外であった。なぜなら、ゲノム配列および抗原性の関係で黄熱とデングの関係よりもずっと相互に近い関係にある二つのデングウイルス血清型による逐次的な感染でさえも、残りの二つのデング血清型の感染に対して強固な保護または広範な交差中和抗体反応を誘導しないからである。本発明の逐次的ワクチン接種法のこの予想外の性質のさらなる実証は、第二段階(キメラデングウイルスの接種)後の黄熱抗体反応の試験によりなされた。本発明の方法は、以下でさらに解説する。
【0048】
黄熱ウイルスワクチン
上記のように、本発明の方法の第一段階は、一回用量の黄熱ウイルスワクチンの患者への投与を含む。本発明において使用され得るこのようなワクチンの例には、弱毒化生ワクチン、例えば野生型アシビ(Asibi)株の弱毒化により獲得されたYF17D株由来のワクチンが含まれる(Smithburn et al., "Yellow Fever Vaccination," World Health Organization, p. 238, 1956; Freestone, in Plotkin et al. (eds.), Vaccines, 2nd edition, W.B. Saunders, Philadelphia, U.S.A., 1995)。本発明において使用され得るワクチンを獲得できるYF17D株の例は、YF17D-204(YF-VAX(登録商標), Sanofi-Pasteur, Swiftwater, PA, USA; Stamaril(登録商標), Sanofi-Pasteur, Marcy-L'Etoile, France; ARILVAX(商標), Chiron, Speke, Liverpool, UK; FLAVIMUN(登録商標), Berna Biotech, Bern, Switzerland; YF17D-204 France(X15067, X15062); YF17D-204, 234 US(Rice et al., Science 229:726-733, 1985))であるが、使用され得るこのような株の他の例は、関係の近いYF17DD株(Genbankアクセッション番号U17066)、YF17D-213(Genbankアクセッション番号U17067)、およびGaller et al., Vaccines 16(9/10):1024-1028, 1998に記載される黄熱ウイルス17DD株である。これらの株に加えて、ヒト、例えばヒト患者において許容できる程度に弱毒化されることが見出された任意のその他の黄熱ウイルスワクチン株が本発明において使用され得る。
【0049】
本発明において使用される黄熱ウイルスワクチンは、業者から入手できるし(上記参照)、または当技術分野で周知の方法を用いて調製することもできる。このような方法の一つの例において、ニワトリ胚にウイルスを一定継代レベルで接種し、次いで遠心分離したホモジネートの上清から単離したウイルスを凍結乾燥する。他の方法においては、黄熱株を、ニワトリ胚線維芽細胞培養物(例えば、Freire et al., Vaccine 23(19):2501-2512, 2005を参照のこと)またはウイルスワクチン製造用の培養細胞、例えばベロ細胞中で培養する。黄熱ウイルスワクチンは一般的に、使用時まで凍結乾燥形態で保存される。投与のために必要になった場合、ワクチンは水溶液(典型的には約0.5mL)、例えば0.4% 塩化ナトリウム溶液で再構成され、次いで皮下注射により、例えば三角筋に投与される。当業者が適当であると判断した他の投与様式(例えば、筋内注射もしくは皮内注射、またはウイルスを皮膚上層に送達する方法を用いる経皮投与)もまた使用され得る。ワクチンは、例えば一回用量あたり2〜5(例えば3または4)log10のプラーク形成単位(PFU)の範囲の用量で投与され得る。全ての市販のワクチンは、製造元の推奨に従い使用される。一つの態様において、本発明の方法の第一段階は、一回用量のStamaril(商標)または一回用量のYF-VAX(登録商標)の投与からなる。
【0050】
本発明の方法はまた、黄熱免疫患者に使用するのに適合され得る。このような場合、この方法は、一回用量の以下に定義するキメラフラビウイルスワクチンの投与を含む第二段階のみを包含する。上記方法もまた本発明の範囲に含まれる。
【0051】
キメラフラビウイルスワクチン
本発明に従う免疫化方法の第二段階は、一回用量の上記キメラフラビウイルスワクチンの投与を包含する。以下の解説においては、分かり易くするために、黄熱ウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列がデングウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列で置換された黄熱ウイルス骨格で構成されるキメラフラビウイルスの使用に関連してのみ本発明を定義する。本発明はまた、他のキメラ体、例えば黄熱ワクチン株の一つのタンパク質(例えば外被タンパク質)のみが置換されたキメラ体、または3つ全ての構造タンパク質が置換されたキメラ体の使用も包含する。
【0052】
本発明において使用され得るキメラウイルスには、上記のようなヒト黄熱ワクチン株YF17D(例えばYF17D-204、YF17D-213、またはYF17DD)に基づくウイルスが含まれる。これらのウイルスにおいて黄熱ウイルスのプレ膜タンパク質および外被タンパク質は、デングウイルス(血清1、2、3、または4型)のプレ膜タンパク質および外被タンパク質で置換される。本発明の一つの態様において、キメラウイルスは、黄熱ウイルスのプレ膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列が野生型デング血清1、2、3、および/または4型のプレ膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列、例えばデング1ウイルスPUO-359、デング2ウイルスPUO-218、デング3ウイルスPaH-881/88、またはデング4ウイルス1228のプレ膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列で置換されたYF17D-204骨格で構成される。これらおよび関連するキメラウイルス構築物の構築の詳細は、例えば以下の刊行物によって提供される:WO 98/37911; WO 01/39802; Chambers et al., J. Virol. 73:3095-3101, 1999; WO 03/103571; WO 2004/045529; 米国特許第6,696,281号; 米国特許第6,184,024号; 米国特許第6,676,936号; 米国特許第6,497,884号; Guirakhoo et al., J. Virology 75:7290-7304, 2001; Guirakhoo et al., Virology 298:146-159, 2002; およびCaufour et al., Virus Res. 79(1-2):1-14, 2001。本発明において使用され得るキメラフラビウイルスの一つの具体例として、本発明者らは、ブタベスト条約に基づきアメリカ合衆国バージニア州マナサスのアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)に寄託し、1998年1月6日の寄託日が認定された以下のキメラウイルスを記載する:キメラ黄熱17D/デング2型ウイルス(YF/DEN-2;ATCCアクセッション番号ATCC VR-2593)。
【0053】
本発明の方法において使用されるキメラフラビウイルスは、任意でデングウイルス配列中に弱毒化変異を入れることができる。例えば、デング配列は、野生型ウイルスにおいてはリジンである外被アミノ酸204位(デング血清1、2、および4型)または202位(デング血清3型)の欠失または置換を含み得る。このような置換の一例においては、この位置のリジンがアルギニンで置換される。他の例において、アミノ酸領域200〜208位の一つ以上のその他のアミノ酸(またはこれらのアミノ酸の組み合わせ)が変異され、その具体例には以下のものが含まれる:デング-1の202位(K);デング-2の202位(E);デング-3の200位(K);ならびにデング-4の200位(K)、202位(K)、および203位(K)。これらの残基は、例えばアルギニンで置換され得る。これらの変異については、WO 03/103571に詳細に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0054】
上記のキメラ体に加えて、一つ以上(2、3、または4つ)のデングウイルス血清型由来のエピトープを含む構造タンパク質を含む他のキメラ体が本発明において使用され得る。一つの例において、キメラ体は、シャッフルさせる配列の断片化、再結合、および選択のサイクルを含むシャッフル技術を用いて作製され得る(例えば、Locher et al., DNA Cell Biol. 24(4):256-263, 2005を参照のこと)。従って、この場合、所望のデング血清型のサブセット(または全てのデング血清型)由来の外被タンパク質および/またはプレ膜タンパク質をコードする配列は、シャッフルされた外被配列および/またはプレ膜配列となるようこの方法で処理され、次いで本明細書中に記載の黄熱ウイルス骨格(例えばYF17D)の対応する配列を置換するのに使用される。このようなキメラYF/Den1-4シャッフル体(shufflant)(シャッフル配列は4つ全ての血清型由来のエピトープを含むものと考えられる)は、例えば、以前に記載され(Guirakhoo et al., J. Virol. 75(16):7290-7304, 2001)かつ本明細書中の他箇所でも言及されるように、キメラRNA転写物でベロ細胞をトランスフェクトし、その上清から生ウイルスを回収することによって製造され得る。本発明においてこれらのシャッフル・キメラ体は、黄熱(例えばYF17D)ワクチン接種後のシャッフル・キメラ体の投与を含むワクチン接種レジメンまたは本明細書中の他箇所に記載される併用方法のいずれかにおいて使用され得る。
【0055】
上記のキメラウイルスは、当技術分野で標準的な方法を用いて作製され得る。例えば、ウイルスゲノムに対応するRNA分子は、初代細胞、ニワトリ胚、または二倍体細胞株に導入されてもよく、次いでこれらの細胞から(またはその上清から)子孫ウイルスが精製され得る。ウイルスの作製に使用され得る他の方法は、異数体細胞、例えばベロ細胞を使用する(Yasumura et al., Nihon Rinsho 21:1201-1215, 1963)。このような方法の一例において、ウイルスゲノムに対応する核酸分子(例えばRNA分子)は異数体細胞に導入され、それらの細胞を培養した培地からウイルスが回収され、回収されたウイルスはヌクレアーゼ(例えば、DNAおよびRNAの両方を分解するエンドヌクレアーゼ、例えばBenzonase(商標);米国特許第5,173,418号)で処理され、ヌクレアーゼ処理されたウイルスは濃縮され(例えば、例えば500kDaの分子量カットオフ値を有するフィルターを用いる限外濾過によって)、濃縮されたウイルスはワクチン接種用に処方される。この方法の詳細については、参照として本明細書に組み入れられるWO 03/060088 A2に提供されている。さらに、キメラウイルスの製造法は、キメラウイルス構築物の構築に関して引用した上記文献に記載されている。
【0056】
本発明の方法において使用されるキメラウイルスの処方は、当技術分野で標準的な方法を用いて行われ得る。ワクチン製剤において使用される多くの薬学的に許容される溶液が周知であり、本発明において使用するために当業者により容易に適合され得る(例えば、Remington 's Pharmaceutical Sciences (18th edition), ed. A. Gennaro, 1990, Mack Publishing Co., Easton, PAを参照のこと)。二つの具体例において、ウイルスは、7.5%ラクトースおよび2.5%ヒト血清アルブミンを含有する最小必須培地イーグル塩(MEME)または10%ソルビトールを含有するMEME中に処方される。しかし、キメラフラビウイルスは、単に生理学的に許容される溶液、例えば滅菌生理食塩水または滅菌緩衝生理食塩水に希釈することもできる。別の例において、ウイルスは、例えば黄熱17Dワクチンと同じ様式で、例えば感染させたニワトリ胚組織の清澄な上清またはキメラウイルスを感染させた細胞培養物から収集した液体として投与および処方され得る。
【0057】
本発明のキメラフラビウイルスワクチンは、従来通り、凍結液体組成物の形態または凍結乾燥品の形態のいずれかで保存される。この目的のために、キメラフラビウイルスは、希釈剤、従来的には凍結保護性の化合物、例えば糖アルコールおよび安定剤を含む緩衝水溶液と混合され得る。凍結乾燥品は、使用前に、薬学的に許容される希釈剤または賦形剤、例えば滅菌NaCl 4%溶液と混合され、液体の注射可能なキメラフラビウイルスワクチンに再構成される。
【0058】
本発明の方法において、キメラフラビウイルスワクチンは、1価、2価、3価、または4価ワクチンであり得る。
【0059】
一つの態様によれば、キメラフラビウイルスワクチンは、キメラウイルスが、黄熱ウイルスのプレ膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列がデング2ウイルスPUO-218のプレ膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列で置換されたYF17D-204骨格で構成される1価ワクチンである。
【0060】
別の態様によれば、キメラフラビウイルスワクチンは、4価ワクチン、すなわち4つのデング(1〜4)ウイルス血清型由来の抗原を発現するキメラウイルスを含むワクチンである。具体的な態様において、この4価ワクチンは、有利には、黄熱ウイルスのプレ膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列がデング1ウイルスPUO-359(YF/デング1)、デング2ウイルスPUO-218(YF/デング2)、デング3ウイルスPaH-881/88(YF/デング3)、またはデング4ウイルス1228(YF/デング4)のプレ膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列で置換されたYF17D-204骨格で各々構成される4つのキメラフラビウイルスを含む。この具体的な4価ワクチンは、以下の実施例2においてChimeriVax(商標)-DEN 4価と名付けた。
【0061】
本発明の方法において使用するのに適した4価キメラフラビウイルスワクチンの例はWO 03/101397にも詳細に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み入れられる。多価ワクチンは、個々の1価デングワクチンを混合することにより獲得され得る。
【0062】
本発明のキメラウイルスは、当技術分野で周知の方法を用いて投与され得る。例えば、ウイルスは、例えば皮下、筋内、または皮内経路により投与される0.1〜1.0mLの用量において、1つの血清型あたり102〜107、例えば103〜106、例えば104、105、または106の感染単位(例えば、プラーク形成単位または組織培養物感染用量)を含む滅菌水溶液として処方され得る。一つの態様において、キメラフラビウイルスワクチンは、1価、2価、3価、または4価ワクチンであり、一回用量の一血清型あたり105pfuを含むのが良く、そして皮下投与される。さらに、フラビウイルスは粘膜経路、例えば経口経路を通じてヒト宿主に感染することができるので(Gresikova et al., "Tick-borne Encephalitis," In The Arboviruses, Ecology and Epidemiology, Monath (ed.), CRC Press, Boca Raton, Florida, 1988, Volume IV, 177-203)、粘膜(例えば経口)経路による投与もまた意図され得る。
【0063】
任意で、当業者に公知のアジュバントが、本発明において使用されるウイルスの投与の際に使用され得る。キメラフラビウイルスの免疫原性を強化するのに使用され得るアジュバントには、例えば、トール(toll)様受容体(TLR)のアゴニストおよびアンタゴニストが含まれる。
【0064】
免疫化方法
上記のように、本発明は概して、黄熱ワクチン株(例えば、上記のようなYF17D株)の投与およびそれに続く、その各々において黄熱ウイルスのプレ膜タンパク質および外被タンパク質がデングウイルス(血清1、2、3、また4型)の対応するタンパク質で置換された一つ以上のキメラフラビウイルスの投与を包含する。黄熱ウイルスワクチンは、標準的な方法を用いて(例えば、皮下注射、筋内注射、もしくは皮内注射によってまたはウイルスを皮膚上層に送達するデバイスを用いる経皮投与によって)、例えば一回用量あたり2〜5(例えば3または4)log10のプラーク形成単位(PFU)の範囲の量で、典型的には皮下注射については約0.5mL、皮内注射については0.1mL、または経皮投与については0.002〜0.02mLの量で投与される。
【0065】
黄熱ワクチンにより誘導される生来の免疫反応が静止するのに十分な時間を確保するため、キメラフラビウイルスワクチンは、標準的な方法および一回用量一血清型あたり102〜107、例えば103〜106、例えば104、105、または106の感染単位(pfuまたは組織培養物感染用量で表される)の範囲の量を用いて、黄熱ワクチンから少なくとも30日後から10年後の間、特に30日後から5年後の間、例えば30日後から1〜3年後の間に投与され、有利には、30、60、または90日後に投与される。さらに、2価、3価、または4価処方物を投与する場合(以下参照)、一般論としてそのようなワクチン中の各キメラ体の量は等量であるが、異なる量の各キメラ体の使用もまた本発明に包含される。
【0066】
従って本発明の方法は、例えば、第0日の黄熱ウイルスワクチンの投与ならびに第30日(または上記のようにそれ以降)のYF/デング-1、YF/デング-2、YF/デング-3、および/またはYF/デング-4キメラ体の投与を包含し得る。キメラ体は、1価ワクチン(すなわち、以下のキメラウイルスのうちの一種類のみを含むワクチン:YF/デング-1、YF/デング-2、YF/デング-3、またはYF/デング-4)、2価処方物(例えば、上記のキメラ体のうちの二つを含むワクチン、例えば有利には、YF/デング-2およびYF/デング-4、またはYF/デング-2およびYF/デング-3、またはYF/デング-2およびYF/デング-1を含む)、3価ワクチン(例えば、上記キメラ体のうちの三つを含むワクチン、有利にはYF/デング-2、YF/デング-1、およびYF/デング-4、またはYF/デング-2、YF/デング-3、およびYF/デング-4を含むワクチン)、または4価ワクチンとして投与され得る。
【0067】
本発明の方法は、キメラフラビウイルスワクチンの一回のみの投与後に4つのデング血清型に対する血清変換(すなわち、中和免疫反応の誘導)をもたらす。所望の血清変換および持続的な交差中和免疫反応に到達するのにキメラフラビウイルスワクチンの追加投与は必要ないが、ブースター量のキメラフラビウイルスワクチンの投与が本発明において意図される。本発明のブースター量のキメラワクチンは、交差中和免疫反応をより長期間持続させるのに必要とされることがあり、最初のキメラデングワクチン投与後6か月から5〜10年の間に、例えば最初のキメラフラビウイルスワクチン投与から6か月後、1年後、2年後、3年後、4年後、もしくは5年後に投与され、または10年後にさえ投与され得る。ブースターキメラフラビウイルスワクチンは、最初に投与されたキメラフラビウイルスワクチンと異なるものでよいが、有利には同一である。本発明の方法において投与されるキメラフラビウイルスワクチンに関連する上記の記載は、必要な変更を加えて、キメラフラビウイルスワクチンブースターに適用される。従ってブースターは、ワクチンに含まれるデング血清型に関して1価、2価、3価、または4価ワクチンであり得る。従って、本発明の方法の一例は、一回用量の黄熱ワクチンの投与、それに続く一回用量の1価キメラフラビウイルスワクチン(デング1、2、3、もしくは4、有利にはデング2)の投与、さらにそれに続く(i)最初に投与されたキメラ体と同一もしくは異なる血清型(有利には血清4型)の1価キメラフラビウイルスワクチン、(ii)最初のキメラ体と同じ血清型を含むもしくは含まない2価キメラフラビウイルスワクチン(例えば、有利にはデング1および2、その後にデング3および4)、(iii)最初のキメラ体と同じ血清型を含むもしくは含まない3価キメラフラビウイルスワクチン、または(iv)4価キメラフラビウイルスワクチンの投与を包含し得る。ブースターキメラフラビウイルスワクチンは、その抗原組成に関して最初のキメラフラビウイルスワクチンと有利には同一である。
【0068】
従って本発明はまた、(i)黄熱ウイルスワクチンおよび(ii)キメラフラビウイルスワクチンを含み、キメラ黄熱ワクチンが黄熱ウイルスワクチンの投与から少なくとも30日後かつ10年以内に投与される逐次的投与のための、デングウイルスに対する持続的な交差中和免疫反応を患者において誘導するための組成物に関する。
【0069】
本発明はまた、本明細書中に記載の黄熱ウイルスワクチンおよび/または一つ以上のキメラフラビウイルスワクチンを含むキットを包含する。本発明のキットはまた、本明細書中に記載のワクチン接種方法においてキットを使用するための説明書を含み得る。これらの説明書は、例えば、投与するワクチンの量に関する指示および/またはワクチンを投与する時期に関する情報を含み得る。
【0070】
本明細書において引用した全ての刊行物および特許出願は、各個別の刊行物または特許出願が参照により組み入れられることを具体的かつ個別に意図されていたものとして参照により本明細書に組み入れられる。
【0071】
本発明は、部分的に、以下の実施例に記載される実験結果に基づく。
【0072】
実施例
以下に示す実施例において、キメラYF/デング-2ワクチン(実施例1)または4価(YF/デング-1、YF/デング-2、YF/デング-3、およびYF/デング-4)ワクチン(実施例2)を用いたその後のワクチン接種に対する黄熱ウイルスへの事前免疫(prior immunity)の効果を示す実験および臨床研究が記載されている。これらの研究は、中和抗体、血清変換、ウイルス血症、およびT細胞反応の分析を含む。
【0073】
実施例1:ChimeriVax(商標)-Den2
市販のYF17Dワクチン(YF-VAX(登録商標))はAventis-Pasteur, Swiftwater, PAから購入した。ChimeriVax(商標)-DEN2は、遺伝子操作された弱毒化生ウイルスであり、YF17Dワクチンウイルスの二つの構造タンパク質(prMおよびE)をコードする配列がDEN2ウイルス(タイ・バンコクにおける古典的なデング熱の症例から単離されたPUO-218株)の対応する配列で置換されている。キメラウイルスゲノムの遺伝子構築は、クローニングされた環状デオキシリボ核酸(cDNA)を用いて行う。全長cDNAをリボ核酸(RNA)に転写し、そのRNAを、生ウイルスを生成する細胞培養物をトランスフェクトするのに使用する(Guirakhoo et al., J. Virol. 75:7290-7304, 2001)。
【0074】
ワクチンウイルスは、現行の適正製造基準(cGMP)に従い製造した。このウイルスは、哺乳動物細胞培養物由来製品についての米国食品医薬品局(FDA)のガイドラインに従い外来因子について試験された、細胞バンクから得たベロ(アフリカミドリザル腎臓)細胞中で培養する。ワクチンウイルスを含むベロ細胞培養物由来の上清液を回収し、濾過により細胞片を取り除き、ヌクレアーゼ(Benzonase(登録商標))処理により宿主細胞由来の核酸分子を消化する。次いでヌクレアーゼ処理したバルクウイルスを限外濾過により濃縮し、ダイアフィルトレーションにより精製する。このワクチンをヒト血清アルブミン(HSA)USP(2.5%)およびラクトースUSP(7.5%)で処方する。このワクチンは、インビトロおよびインビボ試験により無菌でありかつマイコプラスマ、レトロウイルス(プロダクト・エンハンスド・リバース・トランスクリプターゼ(PERT)による)および外来ウイルスを含まないことが示された。ワクチンとなる最終なウイルスを、増殖性、力価、同一性、pH、外観、浸透圧、HSA、ラクトース、内毒素、安全性(マウスおよびモルモットにおける一般安全性・改定版)、およびマウス神経毒性について試験した。
【0075】
サルを用いた前臨床研究は、ChimeriVax(商標)-DEN2は免疫原性が高く、2〜5 log10 PFUの範囲の用量の接種後に十分寛容されることを示した(Guirakhoo et al., J. Virol. 74(12):5477-5485, 2000)。サルへのワクチン接種後最初の一週間の間に、黄熱17Dワクチンにより誘導されるのと同様の軽度のウイルス血症が起こった。2 log10 PFUワクチン(最小試験用量)の一回の皮下注射は、15〜30日後に中和抗体を誘導し、野生型DEN2ウイルスによるチャレンジから保護した。
【0076】
1価ChimeriVax(商標)-DEN2ワクチンを用いた臨床研究
無作為、二重盲検、同一施設、外来患者の研究を行った。スクリーニング後、黄熱(YF)未処理被験体適格者に対して、低用量もしくは高用量のChimeriVax(商標)-DEN2(3.0または5.0 log10プラーク形成単位)またはYF-VAX(登録商標を)を無作為に一回ワクチン接種した。高用量のChimeriVax(商標)-DEN2のワクチン接種に対する抗体反応をYF免疫被験体において評価する非盲検的要素(open component)もあった。第1〜11日、第21日、および第31日に被験体の抗体反応および安全性評価を追跡し、抗体反応の持続性をワクチン接種から6か月後および12か月後に評価した。
【0077】
スクリーニング後、42人のYF未処置被験体適格者を無作為に3つの群(高用量もしくは低用量のChimeriVax(商標)-DEN2またはYF-VAX(登録商標))に等分した。第1日に、14人の被験体に対して、ChimeriVax(商標)-DEN2(高用量もしくは低用量)またはYF-VAX(登録商標)の皮下(SC)ワクチン接種を一回行った。(キメラデングワクチン投与の6か月〜5年前に行った過去のYFワクチン接種により)YFに対する免疫を有する別の14人の被験体には、高用量のChimeriVax(商標)-DEN2を与えた。第2〜11日、第21日、および第31日に被験体を来院させた。安全性評価は、第1〜31日の間の特定の時点で行った。DEN2の同種ワクチン株および野生株に対する抗体反応ならびにYF17DおよびDEN1〜4のプロトタイプ株に対する中和抗体は、第1日(ワクチン接種前)および第31日に測定した。本研究は、処置期間の完遂後に盲検を解き、抗体反応の持続性についてワクチン接種から6か月後および12か月後に被験体を評価した。
【0078】
4つのデング血清型を示す異なる株に対して1:10以上のレベルで中和抗体を生成した被験体の率を決定した。高用量のChimeriVax(商標)-DEN2を与えたYF免疫群およびYF未処置群におけるDEN2血清変換率に対するYFの事前免疫化の効果を分析した。各処置群における4つ全てのデング血清型に対する中和抗体価の幾何平均を、ワクチン接種12か月後までの様々な時間間隔で測定した。
【0079】
ウイルス血症
ウイルスの血中循環(ウイルス血症)は、本研究で使用した異なる弱毒化生ワクチンの複製の指標である。ウイルス血症は、ベロ細胞のおけるプラークアッセイによりアッセイした。ワクチン接種から11日後にウイルス血症を発症した被験体数を、表1において来院日により示す。YF-VAX(登録商標)よりもChimeriVax(商標)-DEN2をワクチン接種したYF未処置被験体の方が、複数の研究日でウイルス血症を発症していた:YF-VAX(登録商標)の2人(14%)に対して、ChimeriVax(商標)-DEN2 5.0 log10 PFU群において8人(57%)およびChimeriVax(商標)-DEN2 3.0 log10 PFU群において9人(64%)。YF未処置被験体と比較して若干多いYF免疫被験体が、ChimeriVax(商標)-DEN2 5.0 log10 PFUのワクチン接種後にウイルス血症を発症した(YF免疫被験体において11/14(79%)であるのに対しYF未処置被験体においては8/14(57%))が、この差は統計的に有意ではなかった(p=0.4724)。第5日〜第7日の間に最も多くの被験体がウイルス血症を発症した。ウイルス血症の定量的測定値(ピーク平均値、持続期間平均値、AUC)もまたYF免疫群において高かったが、ここでもその差は統計的に有意ではなく、安全性プロフィールに対する影響が観察されなかったことが重要である。
【0080】
(表1)ウイルス血症測定のまとめ

a PFU=ベロ細胞培養物において測定したプラーク形成単位
b 曲線下面積
c YF未処置被験体 対 YF免疫被験体におけるChimeriVax(商標)-DEN2 5.0 log10のペアワイズ比較
【0081】
中和抗体
三つの異なる野生型デング2型株(16681、JAH、およびPR-159)、ならびに同種ワクチン株(ChimeriVax(商標)-DEN2)を中和試験に使用した。異種のデング血清1型(16007)、3型(16562)、および4型(1036)の野生株もまた、中和抗体反応の範囲を測定するのに使用した。血清変換を起こした(第1日と第30日の間に少なくとも1:10以上の中和抗体価を示した)被験体の率を決定した。加えて、中和抗体価の幾何平均を測定した。
【0082】
CVD2、PR-159、およびJAHに使用したプラーク減少中和試験(PRNT50)は以下の段階を包含する。
【0083】
熱不活性化血清を2倍連続希釈し、等量のウイルスと混合して30〜50pfu/ウェルとした。この血清-ウイルス混合物を4℃で18+/-2時間インキュベートし、その後に12ウェル培養プレート上のベロ細胞単層に加えた。60+/-10分間のインキュベーション後、この単層に、0.84%カルボキシメチルセルロースを含む培養培地を重層した。次いで、プレートを37℃、5%CO2下で3〜5日間インキュベートした。
【0084】
単層を7.4%ホルマリンで固定し、次いでPBS-Tween20中2.5%脱脂粉乳および0.5% Triton X-100でブロッキングおよび透過処理を行った。抗デング2一次抗体(3H5、1:5000)を60+/-10分間、その後にヤギ抗マウスIgGアルカリホスファターゼ(1:500)をインキュベートした。60+/-10分間のインキュベーション後、基質となる0.36mMレバミソールを含有するBCIP-NBTを加えた。十分な染色がなされた後にこの反応を停止した。
【0085】
プラークを計数し、PRNT50価を決定した。PRNT50価は、プラーク計数値が陰性対照のプラーク計数値の50%以下となる最初の血清希釈物と定義した。このようにして決定された中和抗体価が少なくとも1:10以上となる場合に、血清が中和抗体の存在について陽性であると判断する。
【0086】
他の株については、Russellら(J. Immunol. 99:285-290, 1967)により記載された以下のプロトコルに従い別の研究室でPRNT50アッセイを行った。プラークの計数は、LLC-MK2プラークアッセイシングルオーバーレイ技術を用いて決定した。血清を解凍し、希釈し、56℃で30分間のインキュベーションによって熱不活性化する。血清の4倍連続希釈物(1:5、1:10、1:40、1:160、および1:640)を作製する。約40〜60pfuを含むよう希釈した等量のデングウイルスを各血清希釈物チューブに加える。37℃で60分間のインキュベーション後、各チューブから0.2mLを採取し、6ウェルプレート上のコンフルエントなLLC-MK2を含む三連のウェルに接種する。各ウェルを37℃で90分間インキュベートし、次いでその単層に4mLの1%カルボキシメチルセルロース/イーグル改変培地を重層する。プレートを37℃、5%CO2下で7日間インキュベートする。次いでプラークを計数し、対数プロビット紙(log probit paper)を用いてPRNT50を決定する。各希釈レベルにおけるプラークのパーセント減少率をプトットして50%減少価を決定し:15%〜85%の間のプラーク減少点を使用する。結果を希釈の逆数で表す。このようにして決定された中和抗体価が少なくとも1:10以上となる場合に、血清が中和抗体の存在について陽性であると判断する。
【0087】
ワクチン接種から30日後の反応
第31日の血清変換率は、ChimeriVax(商標)-DEN2をワクチン接種した全群において、デング2型ウイルスに対して高くなっていた。異種のDEN血清1型、3型、および4型に対する低い血清変換率が、高用量または低用量のChimeriVax(商標)-DEN2を接種したYF未処置被験体において観察された。DEN1に対する血清変換率は、5.0および3.0 log10 PFU投与群においては、それぞれ23%および23%であり(表2);DEN3に対してはそれぞれ15%および23%であり;DEN4に対してはそれぞれ0%および0%であった。対照的に、ChimeriVax(商標)-DEN2を接種したYF免疫被験体の100%が全ての異種のDEN血清型に対して血清変換を起こした。
【0088】
ChimeriVax(商標)-DEN2ワクチンは、YF未処置被験体において異種の血清1、3、および4型に対して非常に低い交差中和抗体価を誘導した(表3)。第31日の異種のデング血清型に対する中和抗体価の幾何平均は、YF未処置被験体よりもChimeriVax(商標)-DEN2をワクチン接種したYF免疫被験体の方が有意に高かった。DEN1については、5.0または3.0 log10 PFUのいずれかのChimeriVax(商標)-DEN2をワクチン接種したYF免疫被験体およびYF未処置被験体における抗体価の幾何平均は、それぞれ79対10および12であった(p<0.0001)。同様に、DEN3については、力価は73対13および12であった(p<0.0001)(表3)。YF未処置被験体はいずれもDEN4に対して血清変換を起こさなかった。YF免疫被験体におけるDEN4に対する中和抗体価の幾何平均は57であった。
【0089】
(表2)処理群による第31日の血清変換率(%)

【0090】
(表3)処理群による第31日の幾何平均抗体価

【0091】
ワクチン接種から6か月後の反応
ワクチン接種から6か月後の反応を以下の表4および表5に示す。6か月目に、高用量または低用量のChimeriVax(商標)-DEN2を接種したYF未処置被験体において、異種のDEN血清1型、3型、および4型に対する低い血清陽性率が観察された。DEN1に対する血清変換率は、5.0および3.0 log10 PFU投与群においてそれぞれ23%および31%であり(表4);DEN3に対してはそれぞれ15%および23%であり;DEN4に対してはそれぞれ8%および8%であった。対照的に、ChimeriVax(商標)-DEN2を接種したYF免疫被験体の100%がDEN1および3に対して血清陽性であり、DEN4に対しては64%が血清陽性であった。
【0092】
ChimeriVax(商標)-DEN2ワクチンは、YF未処置被験体において異種の血清1、3、および4型に対して低い交差反応性中和抗体価を誘導した(表5)。6か月目の異種のデング血清型に対する中和抗体価の幾何平均は、YF未処置被験体よりもChimeriVax(商標)-DEN2をワクチン接種したYF免疫被験体の方が高かった。DEN1については、5.0または3.0 log10 PFUのいずれかのChimeriVax(商標)-DEN2をワクチン接種したYF免疫被験体およびYF未処置被験体における抗体価の幾何平均は、それぞれ285対<10および14であった。同様に、DEN3については、力価は268対<10および<10であった(表5)。
【0093】
(表4)処理群による6か月目の血清変換率(%)

【0094】
(表5)処理群による6か月目の幾何平均抗体価

【0095】
ワクチン接種から1年後の反応
12か月目の血清陽性率は、ChimeriVax(商標)-DEN2をワクチン接種したYF免疫群におけるデング2型ウイルスに対するものが最も高かった。これは、二つのDEN2株、PR-159およびJAHを考慮した場合に特に明白であった。これら二つの株はアメリカ大陸で得たものであり、二つの異なる変種群(それぞれアメリカI型およびII型)に属する。
【0096】
高用量または低用量のChimeriVax(商標)-DEN2を接種したYF未処置被験体において、異種のDEN血清1型、3型、および4型に対する低い血清陽性率が観察された。DEN1に対する血清変換率は、5.0および3.0 log10 PFU投与群においてそれぞれ23%および31%であり(表6);DEN3に対してはそれぞれ8%および23%であり;DEN4に対してはそれぞれ8%および0%であった。対照的に、ChimeriVax(商標)-DEN2を接種したYF免疫被験体の100%がDEN1および3に対して血清陽性であり、DEN4に対しては29%が血清陽性であった。
【0097】
ChimeriVax(商標)-DEN2ワクチンは、YF未処置被験体においてDEN2株JaHおよびPR-159ならびに異種の血清1、3、および4型に対して低い交差反応性中和抗体価を誘導した(表7)。12か月目の異種のデング血清型に対する中和抗体価の幾何平均は、YF未処置被験体よりもChimeriVax(商標)-DEN2をワクチン接種したYF免疫被験体の方が有意に高かった。DEN1については、5.0または3.0 log10 PFUのいずれかのChimeriVax(商標)-DEN2をワクチン接種したYF免疫被験体およびYF未処置被験体における抗体価の幾何平均は、それぞれ89対10および13であった(p<0.0001)。同様に、DEN3については、力価は72対<10および<10であった(p<0.0001)(表7)。
【0098】
(表6)処理群による12か月目の血清変換率(%)

【0099】
(表7)処理群による12か月目の幾何平均抗体価

【0100】
黄熱抗体反応
驚くべきことに、ChimeriVax(商標)-DEN2を接種した14人のYF免疫被験体のうち、2人(14%)のみがYF抗体のブーストを起こした。従って、既存のYF免疫は、ChimeriVax(商標)のワクチン接種後にデング血清1〜4型に対する反応をブーストするが、その逆は真ではなかった(すなわち、ChimeriVax(商標)-DEN2は黄熱ウイルスに対する抗体をブーストしなかった)。この結果は予期せぬものであった。というのも、ChimeriVax(商標)-DEN2(黄熱外被タンパク質とデング外被タンパク質の間の共通のエピトープ)を受けた黄熱免疫患者におけるデングに対する抗体反応の亢進の基礎となる機構は、ChimeriVax(商標)-D2後に黄熱抗体をブーストすると考えられていたからである。この結果は、フラビウイルスに対する交差保護免疫反応の予測不可能性を例証し、本発明の新規性を強調するものである。
【0101】
T細胞反応
T細胞反応は、培養上清におけるウイルス抗原に対するIFNγ産生によって評価した。被験体を不活性化ウイルス細胞溶解産物を用いてスクリーニングしたところ、このワクチンに対して主としてCD4+ T細胞反応が生じることが示されたが、CD8+細胞もある程度産生される(Mangada et al., J. Immunol. Methods 284:89-97, 2004)。
【0102】
材料および実験手順
T細胞反応は、第1日および第31日に、不活性化ウイルス抗原と共に培養することによって刺激されたPBMCによるIFNγの産生を測定することによって評価した。第1日および第31日に全血をバキュテナー細胞調製用チューブ(CPT、BDBiosciences)に回収し、PBMCの単離および低温保存のためにAcambis, Inc.に送付した。細胞をRPMI 1640で洗浄し、10% DMSOを含有する熱不活性化ヒトAB血清(SeraCare, Oceanside CA)中で低温保存し、液体窒素下で保管し、試験直前に解凍した。IFNγ産生の測定のために、PBMCを、3つの異なるグルタルアルデヒド不活性化ウイルス細胞抗原:(1)ChimeriVax(商標)-DEN2ウイルス(ベロ細胞で培養)、(2)デング2株PUO218ウイルス(C6/36細胞で培養した野生型デング2ウイルス)、および(3)YFウイルス(ベロ細胞で培養)と共に、96ウェル平底プレートにおいて1.5×105細胞/ウェルで、37℃で7日間培養した。対照は、不活性化モック感染ベロ細胞またはC6/36細胞で構成された。不活性化ウイルス抗原または対照細胞抗原を1:100(15)の濃度で加えた。PBMCを、アッセイ陽性対照としての1μg/ml ConAによっても刺激した。IFNγ産生は、第7日に回収した培養上清を用いてELISAによって決定した。
【0103】
IFNγ ELISA
製造元の説明書に従う間接ELISAアッセイ(OptEIA(商標)ヒトIFNγキット, BDBiosciences-Pharmingen, Cat # 555142)によってIFNγ含有量について培養上清を分析した。
【0104】
IFNγサイトカイン産生
第1研究日および第31研究日(ワクチン接種前およびワクチン接種から30日後)に、不活性化ウイルス抗原に対する反応を試験することによってIFNγサイトカイン産生を比較した。投与したワクチン(ChimeriVax(商標)-DEN2)、親の野生型デング-2ウイルス(PUO218)、および投与した対照ウイルス(YF-VAX(登録商標))を試験した。ベロ細胞で培養したChimeriVax(商標)-DEN2は第0日に非常に低いバックグラウンドを有していたが、C6/36細胞で培養したデング-2ウイルスは被験体の一部で反応を生じた。それにもかかわらず、これらの抗原は両方とも4つのワクチン群の各々においてIFNγ産生を増加させた。不活性化YF-VAX(登録商標)はいずれの被験体においても免疫原性が高くなかったが、特にYFワクチン接種被験体において、第1日よりも第31日に高い値を示した。
【0105】
ワクチン接種群間の比較は、第31日と第1日の値の差を用いて行った(図1)。全ての群が各不活性化抗原に対して反応した。103または105 PFUのChimeriVax(商標)-DEN2ワクチンを与えられた被験体は同等のIFNγレベルを生じた。IFNγ ELISAアッセイにおいては、ChimeriVax(商標)-Den2ワクチン接種被験体は、YFワクチン接種被験体よりもわずかに大きい反応を示した(有意ではない)(図1)。
【0106】
YF事前免疫被験体は、応答者数の増加および平均IFNγレベルの増加を示した(図1)。表8はその結果をまとめるものであり、総数の分数として応答者数を示す。ChimeriVax(商標)-DEN2ワクチン接種被験体およびYFワクチン接種被験体の約65%が、試験抗原として投与されたワクチンに対して陽性のIFNγ反応を示し、ChimeriVax(商標)-DEN2をワクチン接種したYF事前免疫被験体のおよそ90%が陽性反応を示した(表8)。
【0107】
(表8)IFNγ反応に基づくワクチンに対して反応した被験体の数

陽性反応は、バックグラウンドの5倍、または第1日が10pg/ml未満(検出感度以下)である場合は第30日に≧50pg/mlと定義する。
【0108】
本研究結果は、ChimeriVax(商標)-DEN2ワクチン接種被験体およびYFワクチン接種被験体のおよそ65%が試験抗原として投与されたワクチンに対して陽性のT細胞反応を示し、ChimeriVax(商標)-DEN2をワクチン接種したYF事前免疫被験体の〜90%が(IFNγ反応により定義される)陽性反応を示すことを示す。IFNγ産生は、ChimeriVax(商標)-DEN2ワクチンウイルスに対する反応において最も高かった。
【0109】
本臨床試験におけるT細胞反応は、両方の用量のワクチンが類似のT細胞免疫反応を刺激する点および黄熱ウイルスに対する事前免疫がChimeriVax(商標)-DEN2に対するT細胞免疫反応を阻害しなかったという点で中和抗体反応と共通する。IFNγ反応は、二つのChimeriVax(商標)-DEN2の用量(103および105 pfu)について実質的に同じであった。ChimeriVax(商標)-DEN2に対するIFNγ反応は、黄熱ウイルスによる事前ワクチン接種によって弱まらず、それどころか多数の応答者が観察されたことは、YF事前免疫被験体におけるT細胞免疫の亢進傾向を示唆する。
【0110】
アッセイにおいて使用した不活性化抗原は、最も強い応答者を特定したが、その免疫反応を発生させた具体的なタンパク質を決定しなかった。不活性化デング抗原を使用したので、主にCD4+反応を測定したと考えられる。
【0111】
実施例2:4価デングワクチン
研究設計および方法
本実施例において、本発明者らは、黄熱17Dワクチンならびにそれに続く各々が互いに異なるデング血清型由来の膜タンパク質および外被タンパク質を含む4種類のキメラ黄熱ウイルスの混合物(ChimeriVax(商標)-DEN 4価)の投与による逐次的免疫化に対するヒト被験体における免疫反応を評価する。本研究の第一ステージは、血清型DEN1、2、3、および4を含む4価ChimeriVax(商標)-DENワクチンの安全性、耐容性、および免疫原性を、黄熱(YF)ワクチン(YF-VAX(登録商標))およびプラセボとの比較により評価することであった。この試験の第二ステージでは、YF-VAX(登録商標)/4価ChimeriVax(商標)-DENの逐次的投与の安全性および免疫原性を、5〜9か月の間隔で二回投与した4価ChimeriVax(商標)-DENとの対比で評価した。
【0112】
本研究は、第一ワクチン接種前の3〜21日間のスクリーニング期間、第一ワクチン接種後の1か月間の二重盲検処置期間、および第一ワクチン接種から5〜9か月後に開始する30日間の非盲検処置期間前の第二の3〜21日スクリーニング期間で構成された。12か月目での追跡のための来院を計画した。
【0113】
本研究の第一ステージにおいて、33人の健常な成人男性および成人女性の被験体からなる3つの群、計99人の患者に対して、4価ChimeriVax(商標)-DEN(第1群)、YF-VAX(登録商標)(第2群)、またはプラセボ(YF-VAX(登録商標)希釈物-第3群)のワクチン接種を行った。
【0114】
任意の研究手順を行う前に、被験体から書面によるインフォームドコンセントを得た。スクリーニングの際に、病歴、理学的検査、生命徴候、臨床化学、血液学および血清学(女性被験体においては血清妊娠診断を含む)、ならびに尿検査用の尿サンプルにより適格性を評価した。第1日に、被験体の三角筋領域に二重盲検皮下ワクチン接種を行い、その後、AE面談およびウイルス血症用の血液サンプル回収のために、第3、5、7、9、11、13、15、17、19、および21日に来院させた。さらに、第5、9、11、および15日に、被験体から臨床研究評価用の血液サンプルを得た。第11日および第31日ならびに5〜9か月目に被験体から抗体分析用の血液サンプルを得た。
【0115】
5〜9か月目に、継続適格性を評価し、暫定病歴を記録した。適格被験体には、三角筋領域皮下から第二のワクチン接種(4価ChimeriVax(商標)-DENワクチン)を行った。AE面談およびウイルス血症用の血液サンプル回収のために2、4、6、8、10、12、14、16、18、および20日後に被験体を来院させた。抗体検査用の血液サンプルはこの第二ワクチン接種から10日後および30日後に得た。
【0116】
全ての被験体は、抗体検査のために最初のワクチン接種から12か月後(第二ワクチン接種から3〜7か月後)に来院させた。この研究設計を表9および10に示す。
【0117】
(表9)第1日に施される処置

【0118】
(表10)5〜9か月目に施される処置

血清型毎の正確な4価ChimeriVax(商標)-DEN用量はTCID50アッセイによって決定し、血清1、2、3、および4型についてそれぞれ3.7/3.1/3.8/3.2 TCID50である。
【0119】
免疫反応の評価基準は以下の通りであった。
【0120】
免疫原性に関する第一のエンドポイントは、同一ウイルスを用いた第31日におけるデング血清1〜4型に対する血清変換率であり、血清希釈物50%プラーク減少中和試験(PRNT50)を実施例1に記載の通りに実施した。この分析は4つ全てのデング血清型に対する血清変換率および個々の血清型各々に対する血清変換率を定義する。基準値が血清陰性(<1:10)の被験体は、血清変換の基準を満たすために≧1:10のPRNT50価が必要となる。
【0121】
第二のエンドポイントは、第一ワクチン接種から5〜9か月後および第一ワクチン接種から12か月後(すなわち第二のブースターワクチン接種から3〜7か月後)の各デング血清型に対する中和抗体価の幾何平均および血清変換率の分析を含んだ。(a)一回用量のChimeriVax(商標)-DEN 4価、(b)二回用量のChimeriVax(商標)-DEN 4価、または(c)一回用量の黄熱17Dワクチン(YF-VAX(登録商標))およびそれに続く5〜9か月後の一回用量のChimeriVax(商標)-DEN 4価を投与された被験体についてのこれらの血清学的反応を比較する。
【0122】
結果
本研究の目的は、異なる免疫化レジメン後の4つ全てのデング血清型にわたる免疫反応の範囲を評価することであった。デングウイルス疾患に対するヒト被験体の免疫化の目標は、可能な限り幅広い交差中和抗体反応を達成することである。研究薬物適用の第二投与から30日後の(基準時にデングおよび黄熱未処置であった)全被験体の免疫反応を表11(野生型株に対する結果)に示す。
【0123】
(基準時にデングおよび黄熱未処置であった)54人の被験体に、第1日に一回用量のChimeriVax(商標)-DEN 4価または第1日にプラセボを与え、その後の5〜9か月目に一回用量のChimeriVax(商標)-DEN 4価を与えた。これらの群における活性ワクチン投与から30日後の中和抗体反応をまとめ、表11の最も右側のカラムに示す。ChimeriVax(商標)-DEN 4価を一回接種された被験体の少数は、デング血清3型または4型に対する交差反応性免疫反応を生じた。一回用量のChimeriVax(商標)-DEN 4価を与えた被験体の43%および17%のみが、それぞれ少なくともデング血清3型または4型に対する中和抗体を生成した。
【0124】
(基準時にデングおよび黄熱未処置であった)27人の被験体にChimeriVax(商標)-DEN 4価を、第1日および5〜9か月目の二回与えた(第1群)。その中和抗体反応を表11に示す。第1群における中和抗体反応の範囲は、ChimeriVax(商標)-DEN 4価を一回のみ投与された被験体よりも大きかった。ChimeriVax(商標)-DEN 4価を二回投与された被験体の55.6%および40.7%が、それぞれデング血清3型または4型に対する中和抗体を生成した。
【0125】
(基準時にデングおよび黄熱未処置であった)26人の被験体に、第1日に黄熱ワクチン(YF-VAX(登録商標))を、その後の5〜9か月目に一回用量のChimeriVax(商標)-DEN 4価を投与した(第2群)。第2群における中和抗体反応を表11に示す。第2群における中和抗体反応の範囲は、ChimeriVax(商標)-DEN 4価を一回投与された被験体またはChimeriVax(商標)-DEN 4価を5〜9か月空けて二回投与された被験体よりも大きかった。黄熱ワクチンおよびChimeriVax(商標)-DEN 4価ワクチンを用いた逐次的免疫化を与えた被験体の92%および65%が、少なくともそれぞれデング血清3型または4型に対する中和抗体を生成した。
【0126】
この結果は、黄熱ワクチンをChimeriVax(商標)-DEN 4価ワクチンの前に与える逐次的免疫化レジメンが、試験したChimeriVax(商標)-DEN 4価ワクチンのみの一回または二回の投与により達成され得る免疫反応よりも、デング血清型にわたる広範囲の交差反応性を有するデングに対する優れた免疫反応をもたらすことを明確に示している。
【0127】
上記発明は、理解を助けるために例証および実施例によってある程度詳細に説明されているが、当業者は本発明の教示に照らして、添付の特許請求の範囲の意図または範囲から逸脱することなく本発明に対して一定の変更および修正がなされ得ることを容易に理解するであろう。これまでに引用した全ての参考文献は参照により本明細書に組み入れられる。
【0128】
(表11)非盲検処置期間
処置群による、デング株(1〜4型)のうちの少なくとも一つの血清型、少なくとも二つの血清型、少なくとも三つの血清型、および四つの血清型に対する、ワクチン接種前ならびに第二ワクチン接種(第一投与から5〜9か月後に投与)から10日後および30日後の抗体反応

[1]第0日は5〜9か月目に第二ワクチン接種を行った日である。この時点で測定した抗体は5〜9か月前の第一ワクチン接種の結果である。
[2]中和抗体価≧10。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】ワクチンに対するIFNγの反応を示すグラフである(研究第31日から研究第1日を差し引く)。二つの用量のChimeriVax(商標)-Den2は等価なT細胞反応をもたらした。この反応は、以前に黄熱ウイルスワクチンのワクチン接種をした被験体においては阻害されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)一回用量の黄熱ウイルスワクチン、および
(ii)黄熱ウイルスの外被タンパク質をコードする配列がデングウイルスの外被タンパク質をコードする配列で置換された黄熱ウイルス骨格を含む少なくとも一種類のキメラフラビウイルスを含む一回用量のキメラフラビウイルスワクチン
を患者に投与する段階を含む、患者のデングウイルスに対する持続的な交差中和免疫反応の誘導方法であって、キメラフラビウイルスワクチンが、黄熱ワクチンの投与から少なくとも30日後かつ10年以内に投与される、方法。
【請求項2】
黄熱ウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列がデングウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列で置換された黄熱ウイルス骨格を、キメラフラビウイルスが含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
デング外被タンパク質および/またはデング膜タンパク質がシャッフルタンパク質(shuffled protein)である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
キメラフラビウイルスワクチンが黄熱ワクチンの投与から30日後、60日後、または90日後に患者に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
キメラフラビウイルスがYF17Dウイルス骨格で構成される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
黄熱ウイルスワクチンがYF17Dワクチン株17D-204、17D-213、または17DDを含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
黄熱ウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列がデング血清1型ウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列で置換された黄熱ウイルス骨格を、一種類のキメラフラビウイルスが含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
黄熱ウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列がデング血清2型ウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列で置換された黄熱ウイルス骨格を、一種類のキメラフラビウイルスが含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
黄熱ウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列がデング血清3型ウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列で置換された黄熱ウイルス骨格を、一種類のキメラフラビウイルスが含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
黄熱ウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列がデング血清4型ウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列で置換された黄熱ウイルス骨格を、一種類のキメラフラビウイルスが含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
キメラフラビウイルスワクチンが1価ワクチンである、請求項1記載の方法。
【請求項12】
キメラフラビウイルスワクチンが4価ワクチンである、請求項1記載の方法。
【請求項13】
請求項1の(ii)に記載のキメラフラビウイルスワクチンのブースター量を、最初のキメラフラビウイルスワクチン投与から6か月〜10年後に投与する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項14】
(i)黄熱ウイルスワクチン、および
(ii)黄熱ウイルスの外被タンパク質をコードする配列がデングウイルスの外被タンパク質をコードする配列で置換された黄熱ウイルス骨格を含む少なくとも一種類のキメラフラビウイルスを含むキメラフラビウイルスワクチン
を含むキット。
【請求項15】
黄熱ウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列がデングウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列で置換された黄熱ウイルス骨格を、キメラフラビウイルスが含む、請求項14記載のキット。
【請求項16】
デング外被タンパク質および/またはデング膜タンパク質がシャッフルタンパク質である、請求項14または15記載のキット。
【請求項17】
黄熱ウイルスワクチンがYF17D株を含む、請求項14記載のキット。
【請求項18】
キメラフラビウイルスがYF17Dウイルス骨格で構成される、請求項14記載のキット。
【請求項19】
黄熱ウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列がデング血清1型ウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列で置換された黄熱ウイルス骨格を含む一種類のキメラフラビウイルスを、キメラフラビウイルスワクチンが含む、請求項14記載のキット。
【請求項20】
黄熱ウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列がデング血清2型ウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列で置換された黄熱ウイルス骨格を含む一種類のキメラフラビウイルスを、キメラフラビウイルスワクチンが含む、請求項14記載のキット。
【請求項21】
黄熱ウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列がデング血清3型ウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列で置換された黄熱ウイルス骨格を含む一種類のキメラフラビウイルスを、キメラフラビウイルスワクチンが含む、請求項14記載のキット。
【請求項22】
黄熱ウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列がデング血清4型ウイルスの膜タンパク質および外被タンパク質をコードする配列で置換された黄熱ウイルス骨格を含む一種類のキメラフラビウイルスを、キメラフラビウイルスワクチンが含む、請求項14記載のキット。
【請求項23】
少なくとも一回のブースター量のキメラフラビウイルスワクチンをさらに含む、請求項14記載のキット。
【請求項24】
患者のデングウイルスに対する持続的な交差中和免疫反応の誘導における、(i)一回用量の黄熱ウイルスワクチン、および(ii)黄熱ウイルスの外被タンパク質をコードする配列がデングウイルスの外被タンパク質をコードする配列で置換された黄熱ウイルス骨格を含む少なくとも一種類のキメラフラビウイルスを含む一回用量のキメラフラビウイルスワクチンの使用であって、キメラフラビウイルスワクチンが、黄熱ワクチンの投与から少なくとも30日後かつ10年以内に投与される、使用。

【図1】
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【公表番号】特表2009−504654(P2009−504654A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526124(P2008−526124)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【国際出願番号】PCT/US2006/030846
【国際公開番号】WO2007/021672
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(503389389)アカンビス インコーポレーティッド (17)
【出願人】(508037234)サノフィ パスツール ソシエテ アノニム (1)
【Fターム(参考)】