説明

デンドロビウム植物「YFY−HS1」

【課題】新しい区別特徴を有するデンドロビウム植物品種「YFY-HS1」を提供する。
【解決手段】目的抽出物を有するが、成長が緩慢なDendrobium huoshaneseと、快速な成長を示すDendrobium tosaenseを交配し、植物組織培養による繁殖を行って、新種のデンドロビウム植物品種を作成した。その特徴は、成長が旺盛でかつアメリカ特許出願No.10/648,651に定義された「DCMPbL6,7D2H2」抽出物を有することにある。

【発明の詳細な説明】
【発明の属する技術分野】
【0001】
本発明は、新しい区別特徴を有するラン花植物に関し、特に、デンドロビウムの交雑植物に関する。
【従来の技術および発明の説明】
【0002】
現在、デンドロビウム植物は眼疾(ophthalmic defects)を治療する高貴な薬草と認定されている。デンドロビウム植物はラン科(Orchidaceae)である。デンドロビウム植物の茎は主要な薬用部分であり、一部の中国草薬典籍にはDendrobii Caulisが一部の病症、例えば津液虧損(salivary defects)、胃疾(stomach defects)、眼疾等の症候に対して治療効果を有すると開示されている。
【0003】
アメリカ特許出願No.10/648,651中に、Dendrobii Caulisの中から抽出された「DCMPbL6,7D2H2」が眼疾に対して治療効果があると確証している。しかしながら、Dendrobii Caulisは生長が緩慢であると共に、環境に対する抵抗性が非常に弱いため、株の生長が非常に快速で同時に大量な「DCMPbL6,7D2H2」抽出物を有するデンドロビウム植物を探し出すことが切望されてきた。そして長期的な研究を経て、一種のDendrobium huoshanese C.Z. Tang et S.J. Chengに、「DCMPbL6,7D2H2」抽出物を有するが生長が緩慢であり、また他の一種である「Dendrobium tosaense Makino」には「DCMPbL6,7D2H2」抽出物を含まないが、快速な生長能力があることを発見した。一般に、Dendrobium huoshanese C.Z. Tang et S.J. Chengは中国の安徽省霍山県と河南省との間に広く分布しており、そしてDendrobium tosaense Makinoは台湾、日本及び中国の広西省、雲南省及び貴州省に分布している。
【0004】
しかしながら、父系とするDendrobium huoshanese C.Z. Tang et S.J. Chengと母系とするDendrobium tosaense Makinoとを一般交雑方法で交雑を行った後、一種の新しい区別特徴を有するDendrobii Caulis(標記はDendrobium tosaense Makino x Dendrobium huoshanese C.Z. Tang et S.J. Chengである)を発見した。当該Dendrobii Caulisは田圃において良好な生長能力を有すると共に大量な「DCMPbL6,7D2H2」抽出物を有しており、これを「YFY-HS1」と名付けた。
【0005】
一般的な組織培養を介して、「YFY-HS1」を、制御された環境下で、台湾宜蘭で無性繁殖を行った。連続的な無性培養により、本書に開示された「YFY-HS1」の特性がいずれも安定かつ持続的に維持された。
【0006】
「YFY-HS1」の特徴は、良好な生長能力を有すると共に、大量の「DCMPbL6,7D2H2」抽出物を含有していることにある。したがって「YFY-HS1」は顕著な経済価値を有する。
【0007】
現在、「YFY-HS1」は組織培養により繁殖され、かつ台湾及び上海の温室中で栽培されているが、まだ凡ての可能環境状況において「YFY-HS1」を観察していない。注意すべきところは、不同の環境下において、例えば温度、光の強度、土壌肥沃度、日照等の不同環境下において、表現型に顕著な変化を起こす可能性があるが、その遺伝子型は改変していない。以下に説明する観察及び計量の結果は、いずれも宜蘭で栽植された植株を基準としており、その栽植条件は大概商業栽植時の条件と同一である。
【植物特性の説明】
【0008】
表1はDendrobium huoshanese C.Z. Tang et S.J. Cheng、Dendrobium tosaense Makino及び本発明の「YFY-HS1」の部分特徴を示す。
【0009】
【表1】

【0010】
図1〜図3は順にDendrobium huoshanese C.Z. Tang et S.J. Cheng、Dendrobium tosaense Makino、本発明の「YFY-HS1」のランの花を示す。図1〜図3に示すように「YFY-HS1」の花形はDendrobium huoshanese C.Z. Tang et S.J. Chengと近似しているが、その対応の色分布は相違している。
【0011】
図4は成熟したDendrobium tosaense Makino及び本発明の成熟した「YFY-HS1」の生長型態を示す図である。18カ月を栽植した後、図4に示すように、これをDendrobium huoshanese C.Z. Tang et S.J. Chengと比較したところ、本発明の「YFY-HS1」の生長型態はDendrobium tosaense Makinoと比較的近似していることを発見した。
【0012】
図5〜図7は順に、Dendrobium tosaense Makino、Dendrobium huoshanese C.Z. Tang et S.J. Cheng、本発明の「YFY-HS1」のHPLCデータ・グラフを示す。対応の分析条件は以下のとおりである。
儀器:Waters HPLC (WATERS 600)
分析管柱:VERCORPAK Inertsil 5 ODS-2 4.6 x 150mm
溶剤:A 0.1% 酢酸
B 100% メチルアルコール
グラジエント:A/B 80/20 → 45/55
流速:1〜0.6mL/分
波長:337nm
注射液:100μL
【0013】
図5〜図7に示すように、Dendrobium huoshanese C.Z. Tang et S.J. Cheng及び本発明の「YFY-HS1」は確かに「DCMPbL6,7D2H2」抽出物(約42分間時に出現した層析クレスト)を含有している。
【0014】
以上の説明から分かるように、本発明は新しい区別特徴を有するデンドロビウム植物品種「YFY-HS1」を提供する。
本発明の「YFY-HS1」は、China Center for Type Culture Collection (CCTCC)に、「YFY-HS1 (Dendrobium tosaense Makino × Dendrobium huoshanese C.Z. Tang et S.J. Cheng)」の名称で、2005年9月13日に寄託され、受託番号CCTCC-P200503が付与されている。
【0015】
花色の鑑定に用いられるカラー・カードはPANTONE専業カラー・カード系統が採用されている。観察される植物は栽植18カ月の植株である。
起源:Dendrobium huoshanese C.Z. Tang et S.J. ChengとDendrobium tosaense Makinoとを交雑した苗木。
親代:
父系:Dendrobium huoshanese C.Z. Tang et S.J. Cheng。
母系:Dendrobium tosaense Makino。
分類:デンドロビウム交雑種。
繁殖方式:組織培養による無性繁殖。
【0016】
植株:
サイズ:成熟した植株は叢生的であり、高さは約20〜35cm。
生長特性:湿潤な環境になじみ、20〜30℃の温度時生長が良好である。
花茎毎の花数:約2〜5朶
茎:叢生的、直立的、円形的であり、高さは20〜35cm、直径は約4〜7.5cm、底部は比較的細小である。
茎色:シュロ・シダ色(Fern, Pantone 16-0430)、橄欖緑(Peridot, Pantone 17-0336)、キリギリス緑(Grasshopper, Pantone 18-0332)、青緑色(Calliste Green, Pantone 18-0324);茎の表面に部分的紅梅色(Red Plum, Pantone 19-2025)及び淡紫色(Mauvewood, Pantone 17-1522)斑点を有する。
茎表面の特徴:茎の表面は垂直繊維線を有する膜状葉鞘(leaf sheath)により堅密に被覆される。
【0017】
葉:
葉形:卵状披針形
葉尖端の形状:微鈍までにするどい。
葉の方向:互生。
長さ:3.5〜6cm
幅:1.2〜1.5cm
葉表面の色:アーティチョーク緑(Artichoke Green, Pantone 18-0125)、ニレ木緑(Elm Green, Pantone 18-0121)、ブドウ園緑(Vineyard Green, Pantone 18-0117)、青銅緑(Bronze Green, Pantone 18-0317)、エゾネギ緑(Chive, Pantone 19-0323)。
葉背面の色:ニレ木緑(Elm Green, Pantone 18-0121)、ブドウ園緑(Vineyard Green, Pantone 18-0117)、橄欖緑(Peridot, Pantone 17-0336)、カメ緑(Turtle Green, Pantone 17-0330)、キリギリス緑(Grasshopper, Pantone 18-0332)及び青緑色(Calliste Green, Pantone 18-0324)。
葉表面の特徴:薄革質。
厚さ:0.1cm〜0.2cm。
斑点:なし。
葉鞘:膜状、葉柄がない。
葉鞘の色:若い葉鞘は浅白色(Silver Lining, Pantone 14-4501)、同時に部分的紅梅色(Red Plum, Pantone 19-2025)及び淡紫色(Mauvewood, Pantone 17-1522)の斑点を有する;年長の葉鞘はアルミ色(Aluminum, Pantone 16-1107)である。
【0018】
花:
花配列(Inflorescence):総状花配列、茎節の上方に位置し、長さが約2cm〜4cm。
萼片:
上萼片:卵円形、長さは1.4cmまで、幅は0.4〜0.6cm。
上萼片の色:灰白色(Antique White, Pantone 11-0105)、冬白色(Winter White, Pantone 11-0507)。
上萼片数:1片。
側萼片:斜三角形で幾らか微鈍、長さは1.4cmまで、幅は0.5cm〜0.8cm。
側萼片の色:灰白色(Antique White, Pantone 11-0105)、冬白色(Winter White, Pantone 11-0507)。
側萼片数:2片
花弁:楕円形、長さは1.7cmまで、幅は0.6cm〜0.8cm。
花弁数:2片。
花弁形状:長楕円形
唇弁形状と特徴:いくらか幅広い菱形、長さは1.3cm〜1.7cm、内表面はラフィア色(Raffia, Pantone 13-0725)または乳黄色(Cream Gold, Pantone 13-0739)肉状突起の中央盤を有すると共に横方向の紅梅色(Red Plum, Pantone 19-2025)及び淡紫色(Mauvewood, Pantone 17-1522)条紋までに延伸する。
唇弁の色:外表面は灰白色(Antique White, Pantone 11-0105)及び冬白色(Winter White, Pantone 11-0507)であり;内表面はラフィア色(Raffia, Pantone 13-0725)または乳黄色(Cream Gold, Pantone 13-0739)である。
花色:灰白色(Antique White, Pantone 11-0105)、冬白色(Winter White, Pantone 11-0507)。
蕊柱:長さは3.0mm〜5.0mm、基部は湾曲して紅梅色(Red Plum, Pantone 19-2025)及び淡紫色(Mauvewood, Pantone 17-1522)の斑点を有する。
葯(アンサー):灰白色(Antique White, Pantone 11-0105)。
花粉の色:タンポポ色(Dandelion, Pantone 13-0758)、レモン色(Lemon, Pantone 13-0752)及びトウモロコシ色(Maize, Pantone 13-0746)。
花粉サイズ:幅は約0.5mmよりも小さく、長さは約1mm。
開花周期:7〜14日
香り:清香。
花期:4〜6月
【0019】
仮球茎:なし。
繁殖器官:
花粉塊:4個;色:タンポポ色(Dandelion, Pantone 13-0758)、レモン色(Lemon, Pantone 13-0752)及びトウモロコシ色(Maize, Pantone 13-0746)。
花梗:長さ2cm〜3cm;色:シダ色(Fern, Pantone 16-0430)、青緑色(Green Oasis, Pantone 15-0538)。
とげ:なし。
抗病性:特定抗性がない。
抗虫性:特定抗性がない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1はDendrobium huoshanese C.Z. Tang et S.J. Chengの花を示す図である。
【図2】図2はDendrobium tosaense Makinoの花を示す図である。
【図3】図3は本発明のデンドロビウム「YFY-HS1」の花を示す図である。
【図4】図4は成熟したDendrobium huoshanese C.Z. Tang et S.J. Cheng、Dendrobium tosaense Makino及び本発明のデンドロビウム「YFY-HS1」の植株成長型態を示す図である。
【図5】図5はDendrobium tosaense MakinoのHPLCデータ・グラフである。
【図6】図6はDendrobium huoshanese C.Z. Tang et S.J. ChengのHPLCデータ・グラフである。
【図7】図7は本発明の「YFY-HS1」デンドロビウムのHPLCデータ・グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書で説明及び表示された特性を有する、新しい区別特徴を有するデンドロビウム植物品種「YFY−HS1」。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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