説明

データ予測装置及びデータ予測方法並びにプログラム

【課題】 需要実績等の過去の時系列データを、需要特性の分類メッシュを細かくすることによってより詳細に把握して、将来のデータ予測を好適に実施することができるデータ予測装置及びデータ予測方法並びにプログラムを提供する。
【解決手段】 データベース100に記憶された過去の時系列データから将来のデータを予測する。まず、予測対象となるアイテムの分類条件をマスタ情報設定部110で設定することにより、当該アイテムを複数の分類タイプに区分し、それぞれの分類タイプに対応する予測モデルを設定する。そして、対象アイテムの過去の時系列データから設定された予測モデルと用いて、アイテムの将来のデータを予測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過去の需要量に関する時系列データから将来の需要量を予測するデータ予測装置及びデータ予測方法並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
過去の需要量に関する時系列データから将来のデータを予測するための予測モデルとして、従来から、単純移動平均モデル、指数平滑化モデル、ARIMA(Auto Regressive Integrated Moving Average)モデル及びニューラルネットワークモデル等が利用されている。また、これらのモデルは、それぞれ固有のパラメータを用いて制御することが可能である。
【0003】
従来、予測モデルを時系列データに適用するような場合、対象となる時系列データの特性に合わせて予測モデルを選択し、当該予測モデルのパラメータを調整する必要があった。その際、精度のよい予測結果を得るためには、予測モデルの選択や、予測モデルのパラメータの調整を、人間のノウハウ等に頼るところが大きかった。
【0004】
この問題を解決するために、需要実績の分析結果から需要特性に適した予測モデルを抽出する過程を定式化し、人間による作業負荷を軽減し、予測精度の維持・向上を図る方法が提案されている(特許文献1参照)。また、需要特性に適した予測モデルを選択し、人間による作業負荷を軽減し、予測精度の維持・向上を図る方法も提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2000−250888号公報
【特許文献2】特開2001−014295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1で開示されている発明によれば、需要特性をトレンド/パターンの2つの切り口で分類し、各需要特性に適した予測モデル候補から最適な予測モデルを抽出することにより、予測精度の維持・向上を図ることを目的としている。しかし、トレンド/パターンの2つの切り口だけでは、需要特性を詳細に把握することは困難である。
【0006】
需要特性を構成する他の要素として、例えば、出庫頻度、出庫量の平均、出庫量のバラツキ、アイテム属性等がある。そこで、予測精度の維持・向上を図るためには、様々な需要特性に対応できるように、予測モデル候補に異なるタイプのモデルを多数設定する必要がある。しかし、その結果として、予測処理に要する計算時間が大きくなるという問題が生ずる。
【0007】
例えば、上記特許文献1で開示された発明によれば、需要特性にトレンドがあって変動が大きいアイテムと、需要特性にトレンドがあって変動が小さいアイテムは、同じトレンド特性があるアイテムとして分類される。ここで、予測精度の維持・向上を図るためには、両方の需要特性に適した予測モデルを候補として設定しなければならないが、多数のモデルを設定することによって予測にかかる計算処理時間も増大してしまう。
【0008】
また、上記特許文献1で開示された発明では、予測対象となるアイテムの需要特性を全て自動分類するため、人間の意思決定を含ませた予測モデルの選択ができないという問題がある。例えば、あるアイテムは自動分類してもよいが、別のアイテムは現行の分類のままで予測を実施したい場合等には、上記特許文献1を適用することはできない。
【0009】
さらに、上記特許文献1で開示された発明では、需要特性が変化した場合、当該需要特性の変化にタイムリーな諸施策等が実施できないという問題もある。例えば、需要が最近は減少傾向にあるにもかかわらず、その需特特性の変化に気づかないような場合には、販促活動の強化等の施策をタイムリーに実施することができない。
【0010】
一方、特許文献2で開示された発明では、特許文献1で開示された発明の問題と同様に、予測精度の維持・向上を図るためには、様々な需要特性に対応できるように予測モデル候補として多数の予測モデルを設定する必要がある。そのため、多数の予測モデルを候補として設定して予測を実施した場合、同様に予測の計算処理時間が大きくなる問題がある。
【0011】
さらに、上記特許文献1及び特許文献2で開示された発明は、複数の予測モデル候補の中から最適なモデルを抽出するために、予測誤差を評価し、最も予測誤差の小さいモデルを最適なモデルとして抽出し、未来の予測結果を算出していくものである。しかし、予測誤差という1つの指標だけでは、需要特性の評価が十分にはできない可能性がある。これは、予測誤差の指標は、過去の予測精度を重点的に考慮しており、需要特性に関しては十分考慮されていないためである。その結果、予測誤差という1つの指標だけで需要特性を評価すると、需要特性に適さない予測モデルが抽出される可能性があり、予測精度の維持・向上が困難になるという問題がある。
【0012】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、需要実績等の過去の時系列データを、需要特性の分類メッシュを細かくすることによってより詳細に把握して、将来のデータ予測を好適に実施することができるデータ予測装置及びデータ予測方法並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明によるデータ予測装置は、以下の構成を備える。即ち、
過去の時系列データから将来のデータを予測するデータ予測装置であって、
予測対象となるアイテムのグループ分けを行うための分類条件を設定する分類条件設定手段と、
前記分類条件により分類されるグループごとに、それぞれのグループに分類される前記アイテムの予測を行う際に用いられる予測モデルを設定する予測モデル設定手段と、
前記分類条件と予測対象のアイテムの特性に基づいて、該予測対象のアイテムを前記グループに分類するアイテム分類手段と、
前記アイテムが分類されたグループに設定された予測モデルを用いて将来のデータを予測するデータ予測手段と
を備えることを特徴とする。
【0014】
また、好ましくは、前記予測対象のアイテム毎に、前記分類条件によるグループ分けを行う、或いは行わないを設定する分類実行設定手段を更に有し、
前記アイテム分類手段は、前記予測対象のアイテムがグループ分けを行うと設定されている場合に、前記分類条件と前記予測対象のアイテムの特性に基づいて、該予測対象のアイテムを前記グループに分類することを特徴とする。
【0015】
さらに、好ましくは、前記分類条件設定手段によって設定された分類条件の表示するため、及び該分類条件の変更を受け付けられるための画面情報を表示する第一の表示手段を備え、
前記分類条件設定手段は、前記第一の画面情報で受け付けた分類条件に基づき設定されている分類条件を変更することを特徴とする。
【0016】
さらにまた、好ましくは、前記分類条件設定手段により設定された分類条件の変更及び/又はアイテムの特性の変更により分類されるグループが変更されたアイテムを抽出するアイテム抽出手段と、前記アイテム抽出手段により抽出されたアイテムを識別可能に表示する第二の表示手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0017】
さらにまた、好ましくは、前記分類条件設定手段が、各分類条件項目について等号及び/又は不等号を含む符号と所定の閾値とを組み合わせて構成される条件式を単一又は複数の分類条件項目について組み合わせた条件で前記分類条件を設定することを特徴とする。
【0018】
さらにまた、好ましくは、前記条件項目は、アイテム属性値、需要データの平均値、標準偏差、変動係数、最大値、最小値、相関係数、入力データ数、ランク、出庫頻度のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0019】
さらにまた、好ましくは、前記データ予測手段が、複数の予測モデルを用いて各モデルについて過去の時系列データから将来のデータを予測し、
前記複数の予測モデルのそれぞれに対して評価値を算出する算出手段と、
前記評価値に基づき一の予測モデルを選択するモデル選択手段と、
前記モデル選択手段により選択された予測モデルについて前記予測手段で予測されたデータを前記将来のデータとして選択するデータ選択手段と
をさらに備えることを特徴とする。
【0020】
さらにまた、上記目的を達成するために本発明によるデータ予測方法は以下の構成を備える。即ち、
過去の時系列データから将来のデータを予測するデータ予測方法であって、
予測対象となるアイテムのグループ分けを行うための分類条件を設定する分類条件設定工程と、
前記分類条件により分類されるグループごとに、それぞれのグループに分類される前記アイテムの予測を行う際に用いられる予測モデルを設定する予測モデル設定工程と、
前記分類条件と予測対象のアイテムの特性に基づいて、該予測対象のアイテムを前記グループに分類するアイテム分類工程と、
前記アイテムが分類されたグループに設定された予測モデルを用いて将来のデータを予測するデータ予測工程と
を備えることを特徴とする。
【0021】
さらにまた、上記目的を達成するために、本発明にかかるデータ予測装置の制御を実現するためのプログラムは以下の構成を備える。即ち、
過去の時系列データから将来のデータを予測するデータ予測装置の制御を実現するプログラムであって、
予測対象となるアイテムのグループ分けを行うための分類条件を設定する分類条件設定工程のプログラムコードと、
前記分類条件により分類されるグループごとに、それぞれのグループに分類される前記アイテムの予測を行う際に用いられる予測モデルを設定する予測モデル設定工程のプログラムコードと、
前記分類条件と予測対象のアイテムの特性に基づいて、当該予測対象のアイテムを前記グループに分類するアイテム分類工程のプログラムコードと、
前記アイテムが分類されたグループに設定された予測モデルを用いて将来のデータを予測するデータ予測工程のプログラムコードと
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、需要実績等の過去の時系列データを、需要特性の分類メッシュを細かくすることによってより詳細に把握して、将来のデータ予測を好適に実施することができる。
【0023】
これによって、需要実績をトレンド/パターン以外に、例えば、アイテム属性値、平均出庫量等の統計値をも考慮して、需要特性に適さない予測モデルを抽出することなく、需要特性に適する予測モデル候補の数を絞り込むことができ、絞り込まれた少数の予測モデル候補の設定で予測精度の維持・向上を図ることができるとともに、予測処理に要する計算時間を短縮することも可能となる。また、予測処理において、人間の意思決定が反映できるため、需要特性の変化にタイムリーな諸施策等を実施することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係るデータ予測装置及びその予測動作の詳細について説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係るデータ予測装置の構成図である。図1に示すように、本実施形態に係るデータ予測装置は、データベース100と、マスタ情報設定部110と、グループ分け実行部120と、需要予測実行部130とを備える。
【0026】
データベース(DB)100には、アイテムマスタ101、需要実績DB102、需要予測履歴DB103、統計値DB104、及びグループマスタ105が備わっている。アイテムマスタ101には、商品等の各種アイテムに関する属性値等の情報が記憶されている。需要実績DB102には、過去の商品別・期間別の需要実績値が蓄積されている。需要予測履歴DB103には、過去の需要予測結果データが蓄積されている。統計値DB104には、需要実績の特性を示す統計値等が蓄積されている。グループマスタ105には、グループ分類条件や該グループ条件を適用する優先順位を記憶している条件DB、及び、夫々のグループ毎に使用する予測モデルが記憶されているモデルDBが蓄積されている。
【0027】
マスタ情報設定部110は、グループ分け分類実施の有無の設定、当該グループ分けを実施する際の分類条件の設定、及び、分類タイプ毎に使用する予測モデルの設定等を行うための設定部である。グループ分け実行部120は、グループ分けの対象のアイテムを選択し、当該アイテムの分類に必要な各種情報を取得し、当該アイテムを分類する。需要予測実行部130は、分類タイプごとに登録されている予測モデルに対して、過去の予測結果と需要実績とを参照して評価値を算出し、当該評価値に基づいて予測モデルを選択する。
【0028】
図2は、本発明の一実施形態に係るデータ予測装置を実現する情報処理装置(コンピュータ)の細部構成を示すブロック図である。図2において、CPU201は、システムバス212に接続された各デバイスを統括的に制御する。また、RAM202は、CPU201の主メモリ、ワークエリア、一時退避領域等として機能する。さらに、ROM203は、ブートプログラムが記憶されている。
【0029】
入力制御部204は、キーボードやマウス等のポインティングデバイスで実現される入力部205からの入力を制御する。また、表示制御部206は、CRTモニタや液晶モニタ等で実現される表示部207による表示を制御する。さらに、外部メモリ制御部208は、CPU201の制御プログラムであるオペレーションシステム(OS)や、本データ予測装置の各種機能を実現するためのプログラムや上記各種データベース(DB)、各種ファイル等、各種アプリケーション、各種マスタファイル、ユーザファイル等の各種データを記憶する外部メモリ209へのアクセスを制御する。
【0030】
外部メモリ209には、さらに本データ予測装置の各種機能を実現するための各種テーブル等が記憶されている。尚、外部メモリ209としては、ハードディスク(HD)やフレキシブルディスク(FD)、PCMCIAカードスロットにアダプタを介して接続可能なコンパクトフラッシュ(登録商標)やスマートメディア等が挙げられる。本実施形態における処理は、CPU201により外部メモリ209に記録されているプログラムが必要に応じてRAM202にロードされ、該プログラムの制御に基づき、CPU201によって実行されるものとする。
【0031】
また、通信I/F制御部210は、LANやインターネット等のネットワーク211を介して外部機器との通信制御処理を実行する。
【0032】
図3は、本発明の一実施形態に係るデータ予測装置の動作手順の一例を説明するためのフローチャートである。この処理は、データ予測装置のCPU201の制御により行われることになる。
【0033】
まず、データ予測装置のCPU201は、各アイテムの需要特性を分類するために必要なマスタを設定する(ステップS301)。図4を参照して、ステップS301の処理の詳細を説明する。
【0034】
図4は、図3に示すフローチャートのマスタ情報の設定処理(ステップS301)の詳細を説明するためのフローチャートである。尚、ステップS301のマスタ情報の設定処理は、ユーザに対して後述するような画面を用いたユーザインタフェース(UI)から各種情報を入力させるステップである。この処理は、データ予測装置のCPU201により行われる、図1に示すマスタ情報設定部110の処理である。
【0035】
マスタ情報の設定に際しては、まず、データ予測装置のCPU201は、グループ分け実施有無設定処理を行う(ステップS401)。ここで、グループ分け実施有無設定処理とは、グループ分けを実行する、或いはグループ分けをしないのいずれかをアイテム毎に設定する処理のことを意味する。その際に、図2に示す表示部207で実現されるコンピュータの表示装置等に図5に示すようなグループ分け実施有無設定画面を表示してユーザに入力を促す。尚、ユーザは、その際に、更新フラグの設定を行うようにする。
【0036】
図5は、グループ分け実施有無設定処理(ステップS401)を行う画面の一例を示す図である。図5に示すグループ分け実施有無設定画面におけるユーザによる入力部の操作に基づき、CPU201は、グループ分けを実施するアイテムについては更新フラグを「更新」に設定し、グループ分けの自動分類を行わない現行のグループのままのアイテムについては更新フラグを「固定」に設定する。このように、当該グループ分け実施有無設定処理では、アイテム単位毎に、グループ分け実施有無が設定される。
【0037】
例えば、図5に示す画面では、アイテムコード(製品コード)がA001、A002、A003、A004のアイテムについては、今回はグループ分けを実施するアイテムであると設定し、A005、A006のアイテムについては、グループ分けを実施せずに現行のグループのままにするアイテムであると設定されている。
【0038】
ステップS401で設定されたグループ分け実施有無に関する設定情報は、図6に示すアイテムマスタとして登録される。
【0039】
図6は、データ予測装置のアイテムマスタ101に登録されている設定情報の一例を示す図である。尚、グループ分け実施有無設定画面の立ち上げ時には、アイテムマスタ101に登録されている情報を読み込んで画面表示が行われる。
【0040】
次いで、データ予測装置のCPU201は、ステップS401で設定されたデータを取得して、グループ付与条件設定処理を行う(ステップS402)。ここで、グループ付与条件設定処理とは、グループ分けを実施する際に使用する検索条件や条件式を設定(追加、変更、或いは削除)する処理を意味する。その際に、CPU201は、図2に示す表示部207で実現されるコンピュータの表示装置等に図7に示すようなグループ付与条件設定画面を表示してユーザに入力を促す。
【0041】
図7は、データ予測装置の画面上に表示されるグループ付与条件設定画面の一例を示す図である。尚、ユーザは、その際に、検索条件設定においては、優先順、検索条件、分類タイプを設定し、条件式設定においては、条件式番号、条件項目、符号、閾値を設定する。
【0042】
アイテム毎のグループ分けでは、優先順の小さい(優先度が高い)番号から順に条件に合うグループに分類タイプを付与する。この場合の検索条件は、条件式番号の論理式で入力する。尚、検索条件が空白の場合はその他となる。
【0043】
例えば、本実施形態に係るグループ付与条件設定画面では、分類タイプをG1からG4まで設定することができる。それぞれの分類タイプが表す意味は、拠点コードがK1のアイテムで出庫頻度(実際に出庫があったサイクル数)が15サイクル未満のアイテムは、出庫頻度が少ない需要特性として分類タイプをG1に分類する。また、G1の条件にあわなかったアイテムの内、拠点コードがK1のアイテムで相関係数が0.8より大きいアイテムは、季節性がある需要特性としてG2に分類する。さらに、G1とG2の条件にあわなかったアイテムの内、拠点コードがK1のアイテムで変動係数が0.3より小さいアイテムは、変動が小さい需要特性としてG3に分類する。そして、それ以外の需要特性を持つアイテムはG4に分類する。
【0044】
また、条件項目としては、アイテムコード、アイテム分類、拠点コード、拠点分類等のアイテム属性値や、需要データの平均値、標準偏差、変動係数、最大値、最小値、相関係数、入力データ数、ランク、出庫頻度等がある。ここで、相関係数とは、ある期間の需要データと別のある期間の需要データの相関を表す係数のことを意味する。
【0045】
ステップS402で設定されたグループ付与条件の設定情報は、図8に示す条件DBに登録される。
【0046】
図8は、データ予測装置のデータベース100中のグループマスタ105中の条件DBに登録されている設定情報の一例を示す図である。尚、グループ付与条件設定画面の立ち上げ時には、条件DBに登録されている情報を読み込んで画面表示が行われる。
【0047】
その後、データ予測装置のCPU201は、ステップS402で設定されたデータを取得し、モデル設定処理が行われる(ステップS403)。ここで、モデル設定処理とは、分類タイプ毎に使用する予測モデル、及び予測モデルのパラメータを設定(追加、変更、或いは削除)する処理を意味する。その際に、CPU201は、図2に示す表示部207で実現されるコンピュータの表示装置等に図9に示すようなモデル設定画面を表示してユーザに入力を促す。
【0048】
図9は、データ予測装置の画面上に表示されるモデル設定画面の一例を示す図である。尚、ユーザは、その際に、分類タイプ、予測モデル、予測モデルパラメータを入力する。また、この際に登録可能な予測モデル数は、複数であっても単一であってもよいものとする。ここで、予測モデルパラメータとは、予測モデルを制御する固有のパラメータを意味する。
【0049】
例えば、図9では、分類タイプがG1に属するアイテムは、モデルM1を使用する。また、分類タイプがG2に属するアイテムは、モデルM2及びM3を使用する。さらに、分類タイプがG3に属するアイテムは、モデルM4及びM5を使用する。さらにまた、分類タイプがG4に属するアイテムは、モデルM6を使用することを意味する。
【0050】
ステップS403で設定されたモデルの設定情報は、図10に示すモデルDBに登録される。
【0051】
図10は、データ予測装置のグループマスタ105中のモデルDBに登録されている設定情報の一例を示す図である。尚、モデル設定画面の立ち上げ時には、モデルDBに登録されている情報を読み込んで画面表示が行われる。
【0052】
以上が、ステップS301における各種設定処理の詳細である。次に、ステップS301で設定された各種マスタ情報に基づいてグループ分けが実行される(ステップS302)。図11を参照して、ステップS302の処理を詳細に説明する。
【0053】
図11は、図3に示すフローチャートのグループ分け実行処理(ステップS302)の詳細を説明するためのフローチャートである。この処理はデータ予測装置のCPU201により行われる、図1に示すグループ分け実行部の処理である。
【0054】
まず、データ予測装置のCPU201は、アイテムマスタ101の更新フラグが「更新」のアイテムのみを選択して、グループ分け処理の対象アイテムとする(ステップS1101)。次に、グループ付与条件設定画面で設定した条件式にある条件項目の情報を取得する(ステップS1102)。例えば、図5において、拠点コードは、アイテムマスタ101から該当アイテムの情報を取得する。出庫頻度、相関係数、変動係数の該当アイテムの情報は、需要実績データから計算して取得する。
【0055】
図12は、データ予測装置の需要実績DB102に登録されている需要実績データの一例を示す図である。需要実績データから計算して算出する統計値情報は、グループ分け実行の際に都度計算してもよいし、事前に全ての統計値を計算してDBに保存しておき、グループ分け実行の際に必要な統計値情報だけをそのDBから取得してきてもよい。
【0056】
そして、グループ分けを実行した後、データ予測装置のCPU201は、分類タイプが変更になるアイテムについて、アイテムマスタ101の分類タイプを更新する(ステップS1103)。その際、変更欄には「変更」と登録する。これにより、前回と今回のグループ分け実行で分類タイプが変更になったアイテムをグループ分け実施有無設定画面から確認することができる。
【0057】
図13は、図5に示す画面でグループの更新と設定したアイテムを、図12に示す需要実績データに基づいて、図7で設定した条件に従って分類タイプを付与した後のアイテムマスタ101の一例を示す図である。また、図14は、図12に示す各アイテムの需要実績をグラフ化した図である。さらに、図15は、図12に示す各アイテムの需要実績から出庫頻度、相関係数、変動係数を計算した値を示す図である。
【0058】
図13に示すDBの結果から、A001はG1に、A002はG2に、A003はG3に、A004はG4に分類されている。また、図12の各アイテムの需要実績から、A001は出庫頻度が少ないアイテム、A002は各年同じ季節性があるアイテム、A003は各年の需要変動が小さいアイテム、A004はそれ以外の特性(例えば、各年の需要変動が大きく、季節性もない)があるアイテムであることがわかる。
【0059】
そして、ステップS302の処理の後、分類タイプ毎に登録されている予測モデル群を用いて各アイテムの予測をする(ステップS303)。図16を参照して、ステップS303の処理を詳細に説明する。
【0060】
図16は、図3に示すフローチャートにおける予測実行処理(ステップS303)の詳細を説明するためのフローチャートである。この処理はデータ予測装置のCPU201により行われる、図1に示す需要予測実行部130の処理である。まず、予測モデルのCPU201は、各アイテムについて、分類タイプ毎に登録されている予測モデルm(m=1〜M)から任意の予測モデルmを取得を取得する(ステップS1601)。次に、取得された予測モデルmについて、将来の予測結果を算出する(ステップS1602)。尚、このとき将来の予測結果はDBに登録してもよいし、しなくてもよい。そして、上記ステップS1601とステップS1602の処理を全ての予測モデルmに対して行う(ステップS1603)。
【0061】
次に、任意の予測モデルmについて算出された過去の予測結果と、需要実績データとを取得する(ステップS1604)。その際、過去の予測結果がない場合は、ローリング予測実行を行って過去の予測結果を算出し、取得しておく。そして、取得した過去の予測結果と需要実績データとを基にして評価値を算出する(ステップS1605)。そして、上記ステップS1604とステップS1605の処理を全ての予測モデルmに対して行う(ステップS1606)。
【0062】
その後、使用した全ての予測モデルのうち、予測モデルの評価値が一番よい予測モデルを選択し、選択した予測モデルで算出した予測結果を将来の予測結果として採用する(ステップS1607)。尚、予測の際に使用される評価値は特に限定されるものではないが、例えば、以下に示すような予測誤差の平均、標準誤差、或いは標準誤差率等を使用することができる。
【0063】
【数1】

【0064】
図17は、図12に示す需要実績から算出した将来の予測結果を評価値とともに記述した図である。すなわち、図17では、図13に示すアイテムコードA001からA004に対して図9で設定した予測モデルを使用して、図12の需要実績から将来の予測をした結果と評価期間を6月として各予測モデルの評価値を算出した結果とを併記している。ここでは予測期間を6か月とし、評価値には予測誤差率を使用している。
【0065】
ここで、A002は、予測モデルM2、M3を使用してそれぞれ将来の予測結果を算出している。そして、予測モデルM2及びM3のうち評価値がよいM2の予測結果を将来の予測結果として採用する。同様に、A003では、予測モデルM4、M5を使用して、それぞれ将来の予測結果を算出しているが、評価値がよいM4の予測結果を将来の予測結果として採用する。
【0066】
図18は、図12の各アイテムの需要実績に評価値の最もよい予測モデルで予測した将来の予測結果を付与した様子を示す図である。
【0067】
このように、需要特性の分類メッシュを細かくすることにより、一つの分類タイプに同じタイプの予測モデルのみ登録でき、予測精度の維持・向上が可能である。また、予測モデル数を減らせるため、予測計算処理時間も短縮することが可能になる。さらに、人間の意思決定を反映させることにより、より効果的な予測が実施できる。
【0068】
以上、実施形態例を詳述したが、本発明は、例えば、システム、装置、方法、プログラム若しくは記憶媒体(記録媒体)等としての実施態様をとることが可能であり、具体的には、複数の機器から構成されるシステムに適用しても良いし、また、一つの機器からなる装置に適用しても良い。
【0069】
尚、本発明は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラム(実施形態では図に示すフローチャートに対応したプログラム)を、システムあるいは装置に直接あるいは遠隔から供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータが該供給されたプログラムコードを読み出して実行することによっても達成される場合を含む。
【0070】
従って、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、該コンピュータにインストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。つまり、本発明は、本発明の機能処理を実現するためのコンピュータプログラム自体も含まれる。
【0071】
その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等の形態であっても良い。
【0072】
プログラムを供給するための記録媒体としては、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、MO、CD−ROM、CD−R、CD−RW、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM、DVD(DVD−ROM,DVD−R)などがある。
【0073】
その他、プログラムの供給方法としては、クライアントコンピュータのブラウザを用いてインターネットのホームページに接続し、該ホームページから本発明のコンピュータプログラムそのもの、もしくは圧縮され自動インストール機能を含むファイルをハードディスク等の記録媒体にダウンロードすることによっても供給できる。また、本発明のプログラムを構成するプログラムコードを複数のファイルに分割し、それぞれのファイルを異なるホームページからダウンロードすることによっても実現可能である。つまり、本発明の機能処理をコンピュータで実現するためのプログラムファイルを複数のユーザに対してダウンロードさせるWWWサーバも、本発明に含まれるものである。
【0074】
また、本発明のプログラムを暗号化してCD−ROM等の記憶媒体に格納してユーザに配布し、所定の条件をクリアしたユーザに対し、インターネットを介してホームページから暗号化を解く鍵情報をダウンロードさせ、その鍵情報を使用することにより暗号化されたプログラムを実行してコンピュータにインストールさせて実現することも可能である。
【0075】
また、コンピュータが、読み出したプログラムを実行することによって、前述した実施形態の機能が実現される他、そのプログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが、実際の処理の一部または全部を行い、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現され得る。
【0076】
さらに、記録媒体から読み出されたプログラムが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の一実施形態に係るデータ予測装置の構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るデータ予測装置を実現する情報処理装置(コンピュータ)の細部構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るデータ予測装置の動作手順の一例を説明するためのフローチャートである。
【図4】図3に示すフローチャートのマスタ情報の設定処理(ステップS301)の詳細を説明するためのフローチャートである。
【図5】グループ分け実施有無設定処理(ステップS401)を行う画面の一例を示す図である。
【図6】データ予測装置のアイテムマスタに登録されている設定情報の一例を示す図である。
【図7】データ予測装置の画面上に表示されるグループ付与条件設定画面の一例を示す図である。
【図8】データ予測装置のデータベース100中のグループマスタ105中の条件DBに登録されている設定情報の一例を示す図である。
【図9】データ予測装置の画面上に表示されるモデル設定画面の一例を示す図である。
【図10】データ予測装置のグループマスタ105中のモデルDBに登録されている設定情報の一例を示す図である。
【図11】図3に示すフローチャートのグループ分け実行処理(ステップS302)の詳細を説明するためのフローチャートである。
【図12】データ予測装置の需要実績DB102に登録されている需要実績データの一例を示す図である。
【図13】図5に示す画面でグループの更新と設定したアイテムを、図12に示す需要実績データに基づいて、図7で設定した条件に従って分類タイプを付与した後のアイテムDBの一例を示す図である。
【図14】図12に示す各アイテムの需要実績をグラフ化した図である。
【図15】図12に示す各アイテムの需要実績から出庫頻度、相関係数、変動係数を計算した値を示す図である。
【図16】図3に示すフローチャートにおける予測実行処理(ステップS303)の詳細を説明するためのフローチャートである。
【図17】図12に示す需要実績から算出した将来の予測結果を評価値とともに記述した図である。
【図18】図12の各アイテムの需要実績に評価値の最もよい予測モデルで予測した将来の予測結果を付与した様子を示す図である。グラフ化したものである。
【符号の説明】
【0078】
100 データベース(DB)
101 アイテムマスタ
102 需要実績DB
103 需要予測履歴DB
104 統計値DB
105 グループマスタ
110 マスタ情報設定部
120 グループ分け実行部
130 需要予測実行部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過去の時系列データから将来のデータを予測するデータ予測装置であって、
予測対象となるアイテムのグループ分けを行うための分類条件を設定する分類条件設定手段と、
前記分類条件により分類されるグループごとに、それぞれのグループに分類される前記アイテムの予測を行う際に用いられる予測モデルを設定する予測モデル設定手段と、
前記分類条件と予測対象のアイテムの特性に基づいて、該予測対象のアイテムを前記グループに分類するアイテム分類手段と、
前記アイテムが分類されたグループに設定された予測モデルを用いて将来のデータを予測するデータ予測手段と
を備えることを特徴とするデータ予測装置。
【請求項2】
前記予測対象のアイテム毎に、前記分類条件によるグループ分けを行う、或いは行わないを設定する分類実行設定手段をさらに備え、
前記アイテム分類手段は、前記予測対象のアイテムがグループ分けを行うと設定されている場合に、前記分類条件と前記予測対象のアイテムの特性に基づいて、該予測対象のアイテムを前記グループに分類する
ことを特徴とする請求項1に記載のデータ予測装置
【請求項3】
前記分類条件設定手段によって設定された分類条件の表示するため、及び、該分類条件の変更を受け付けるための画面情報を表示する第一の表示手段をさらに備え、
前記分類条件設定手段は、前記第一の画面情報で受け付けられた分類条件に基づき設定されている分類条件を変更する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のデータ予測装置。
【請求項4】
前記分類条件設定手段により設定された分類条件の変更及び/又はアイテムの特性の変更により分類されるグループが変更されたアイテムを抽出するアイテム抽出手段と、
前記アイテム抽出手段により抽出されたアイテムを識別可能に表示する第二の表示手段と
をさらに備えることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載のデータ予測装置。
【請求項5】
前記分類条件設定手段が、各分類条件項目について等号及び/又は不等号を含む符号と所定の閾値とを組み合わせて構成される条件式を単一又は複数の分類条件項目について組み合わせた条件で前記分類条件を設定することを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載のデータ予測装置。
【請求項6】
前記条件項目は、アイテム属性値、需要データの平均値、標準偏差、変動係数、最大値、最小値、相関係数、入力データ数、ランク、出庫頻度のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項5に記載のデータ予測装置。
【請求項7】
前記データ予測手段が、複数の予測モデルを用いて各モデルについて過去の時系列データから将来のデータを予測し、
前記複数の予測モデルのそれぞれに対して評価値を算出する算出手段と、
前記評価値に基づき一の予測モデルを選択するモデル選択手段と、
前記モデル選択手段により選択された予測モデルについて前記データ予測手段で予測されたデータを前記将来のデータとして選択するデータ選択手段と
をさらに備えることを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項に記載のデータ予測装置。
【請求項8】
過去の時系列データから将来のデータを予測するデータ予測方法であって、
予測対象となるアイテムのグループ分けを行うための分類条件を設定する分類条件設定工程と、
前記分類条件により分類されるグループごとに、それぞれのグループに分類される前記アイテムの予測を行う際に用いられる予測モデルを設定する予測モデル設定工程と、
前記分類条件と予測対象のアイテムの特性に基づいて、該予測対象のアイテムを前記グループに分類するアイテム分類工程と、
前記アイテムが分類されたグループに設定された予測モデルを用いて将来のデータを予測するデータ予測工程と
を有することを特徴とするデータ予測方法。
【請求項9】
過去の時系列データから将来のデータを予測するデータ予測装置の制御を実現するプログラムであって、
予測対象となるアイテムのグループ分けを行うための分類条件を設定する分類条件設定工程のプログラムコードと、
前記分類条件により分類されるグループごとに、それぞれのグループに分類される前記アイテムの予測を行う際に用いられる予測モデルを設定する予測モデル設定工程のプログラムコードと、
前記分類条件と予測対象のアイテムの特性に基づいて、該予測対象のアイテムを前記グループに分類するアイテム分類工程のプログラムコードと、
前記アイテムが分類されたグループに設定された予測モデルを用いて将来のデータを予測するデータ予測工程のプログラムコードと
を備えることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−85645(P2006−85645A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−272520(P2004−272520)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(592135203)キヤノンシステムソリューションズ株式会社 (528)