説明

データ再生装置及び信号処理プログラム

【課題】乱れた波形の再生信号によるタイミング同期制御不能な状態の継続を回避し、良好なフィードバック制御によるインターポレータの内挿補間のタイミング調整を実現する。
【解決手段】インターポレータにおける処理のフィードバック制御を行うフィードバックループが、等化回路からのデジタル信号からタイミング誤差を検出するタイミングエラー検出器と、検出したタイミング誤差を積分処理する積分器122bと、積分処理により得られた積分値に応じた制御信号を生成してインターポレータに当該制御信号を供給するNCOと、前記積分値と、予め設定されているしきい値とを比較し、前記積分値が当該しきい値以上となった場合に、前記積分器122bの積分値をクリアする制御を行うリミッタ123と、を含んだ構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばテープやディスク等の記録媒体に光学的、磁気的または光磁気的に記録されたデジタルデータを再生するデータ再生装置及び信号処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、磁気テープ等に記録されているデジタル画像信号やデジタル音声信号を再生する技術が知られている。この種の装置においては、再生された信号をイコライザにより等化処理することで、記録再生系における信号の劣化や磁気テープの種類による特性ばらつき、磁気ヘッドの特性ばらつき等を補償し、エラーを低減している。
【0003】
従来のデータ再生装置は、図1に示すように、再生ヘッド100、アナログフィルタ102、アナログ/デジタル(A/D)変換器104、インターポレータ106、デジタルイコライザ107、タイミングエラー検出器120、ループフィルタ122、及びNCO(Numerically Controlled Oscillator)124を含んで構成される。また、デジタルイコライザ107は、固定FIRフィルタ108、可変バンドパスフィルタ(可変BPF)110、可変ハイパスフィルタ(可変HPF)112、可変全域通過フィルタ(可変APF)114、可変FIRフィルタ116、及び適応制御器118を含んで構成される。
【0004】
再生ヘッド100は、磁気テープ等の記録媒体に記録されたデジタルデータを再生し、その再生アナログ信号をヘッドアンプ(図示せず)により増幅してアナログフィルタ102に出力する。アナログフィルタ102は、アンチエイリアスフィルタであり、再生ヘッド100からのアナログ信号について、fs/2(fs:サンプリング周波数)以上の周波数成分をカットしてA/D変換器104に出力する。そして、A/D変換器104は、アナログフィルタ102からのアナログ信号をデジタル信号に変換してインターポレータ106に出力する。具体的には、A/D変換器104は、PLL(図示せず)からのクロックに応じてアナログ信号をサンプリングし、1サンプル複数ビットで量子化してデジタル化する。
【0005】
インターポレータ106は、A/D変換器104からのデジタル信号に対し、そのサンプル点データからサンプル間にあるシンボル点のデータを推定補間する。これは、A/D変換器104では、PLLからのクロックに応じ、シンボルとは非同期のタイミングでサンプリング(非同期サンプリング)するため、インターポレータ106でシンボル点のデータを内挿補間する必要が生じるからである。インターポレータ106は、A/D変換器104のサンプルデータに対して推定補間したデータをリサンプル処理する。このとき、一種のローパスフィルタ(LPF)であるインターポレータ16は、fb/2(fb:ビットレート)以上の周波数成分をカットする。こうしてリサンプルされ且つfb/2以上の周波数成分をカットされたデジタル信号は、等化処理を行うデジタルイコライザ107に供給される。
【0006】
インターポレータ106は、基本的にはFIRフィルタで構成される。インターポレータ106は、互いに直列接続された複数のラッチ素子、複数の乗算器、及び加算器を含んで構成される。各ラッチ素子は、デジタル信号をサンプル期間だけ保持して出力する。各乗算器は、入力デジタル信号に対して所定の係数を乗じて加算器に出力する。加算器は、各乗算器の出力を加算し、後段のデジタルイコライザに出力する。各乗算器の係数は、予めセットとして設定されている。また、係数のセットは予め複数セット用意され、これらのセットのいずれかが選択される。すなわち、内挿補間すべき位置に応じて複数セットの中のいずれかのセットが選択的に用いられる。シンボル点のデータを内挿補間すべき位置、すなわち内挿補間のタイミングは、後述のようにタイミングエラー検出器120、ループフィルタ122、NCO124からなるフィードバックループにより調整される。
【0007】
デジタルイコライザ107は、固定FIRフィルタ108、可変BPF110、可変HPF112、可変APF114、可変FIRフィルタ116、及び適応制御器118を含んで構成され、デジタル信号を所望の目標特性に一致させるためにデジタル信号の振幅及び群遅延を制御するもので、デジタル信号に対して等化処理を行う。
【0008】
固定FIRフィルタ108は、インターポレータ106からのデジタル信号に対し、高域成分をブーストして高域成分の劣化を補償する。すなわち、再生ヘッド100、アナログフィルタ102及びインターポレータ106により原信号の高域成分が劣化しているため、この高域成分を所定量(固定値)だけブーストする。可変BPF110は、所定の周波数成分のみを通過させるフィルタであって、かつ、その周波数成分を適宜可変調整できるフィルタである。可変HPF112は、高域成分のみを通過させるフィルタであって、かつ、その透過率を適宜可変調整できるフィルタである。そして、可変BPF110、可変HPF112では、固定FIRフィルタ108からのデジタル信号の振幅を調整する。一方、可変APF114でデジタル信号の群遅延量を制御する。上記の可変BPF110、可変HPF112、及び可変APF114は、例えば複数のラッチ素子及び乗算器で構成した場合の乗算器の係数(タップ係数)を可変とするものであり、各フィルタのタップ係数は外部からの調整信号により可変調整され、これにより各フィルタのフィルタ特性が調整される。そして、上記各フィルタにより高域成分の劣化が補償され且つ振幅及び群遅延が補償されたデジタル信号は、可変FIRフィルタ116に供給される。
【0009】
可変FIRフィルタ116は、入力デジタル信号の特性を目標特性に一致させるためのFIRフィルタであり、乗算器の係数を可変とするフィルタである。乗算器の可変係数は、適応制御器118からの調整信号により調整設定される。適応制御器118は、目標特性(仮に定めた目標特性である)と入力デジタル信号の特性との差分を演算し、この差分に応じて所定のアルゴリズムに従い可変FIRフィルタ116の可変係数を増減調整する。こうして、可変FIRフィルタ116においてデジタル信号が最終的に等化処理される。
【0010】
尚、可変FIRフィルタ116の出力は、タイミングエラー検出器120、ループフィルタ122、NCO124からなるフィードバックループにも供給され、このフィードバックループによるフィードバック制御により、インターポレータ106にて内挿補間すべき位置、すなわち内挿補間のタイミングが決められる。タイミングエラー検出器120は可変FIRフィルタ116の出力データからタイミングエラーを検出する。ループフィルタ122は、ローパスフィルタ、積分器、及び微分器を含んで構成されており、タイミングエラー検出器120で検出したタイミングエラーからローパスフィルタによりノイズ成分を取り除き、積分器での積分処理及び微分器での微分処理等を行う。NCO124は、ループフィルタ122で処理されたタイミングエラーに応じた制御信号を生成してインターポレータ106に供給し、インターポレータ106における内挿補間タイミングを調整する。こうしてインターポレータ106は、NCO124からの制御信号に基づいて、上述のように乗算器の係数の複数セットの中から制御信号に応じたセットを用いて内挿補間することで、内挿タイミングが最適化(タイミングの同期確立)される。
【0011】
【特許文献1】特開2001−209902号公報
【特許文献2】特開2002−216422号公報
【特許文献3】特開2003−7007号公報
【特許文献4】特開平11−213571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記構成を有するデータ再生装置では、インターポレータ106における内挿補間のタイミングは、等化手段(デジタルイコライザ)107の出力に基づくフィードバック制御により最適化される。ここで、再生ヘッド100で乱れた波形の信号が再生されると、タイミングエラー検出器120で正しいタイミングエラー値が検出されない。この異常再生状態が続くと、この誤ったタイミングエラー値がループフィルタ122の積分器に蓄積されていき、正常なタイミング制御が行われない。このような状態になると、正常再生状態に戻った場合にも、そのループフィルタ122の積分項が誤ったタイミング制御を行い続けるため、タイミング同期が不可能となり、正常動作に復帰できなくなり、インターポレータ106における内挿補間タイミングの調整に関して良好なフィードバック制御ができなくなるといった問題が生じる。このような問題は、例えば、磁気テープの速度が不安定、あるいは記録状態が悪い等の理由から、記録媒体の再生開始時、ビットレートの周波数オフセットが大きく、タイミング周期制御がそれに追従できない時、等に起こり得る。
【0013】
本発明の目的は、等化手段の出力に基づくフィードバック制御によりインターポレータの内挿補間のタイミング調整を行うに際し、乱れた波形の再生信号に起因したタイミング同期制御不能な状態の継続を回避し、良好なフィードバック制御を実現するデータ再生装置及び信号処理プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のデータ再生装置は、アナログ信号をデジタルサンプリングしたデジタル信号を、制御信号に基づいて内挿補間して再サンプリングし、得られたデジタル信号を出力するインターポレータと、前記インターポレータからのデジタル信号を所望の目標特性とすべく等化処理する等化回路と、前記等化回路からの出力信号のシンボル点と所望のシンボル点とのタイミング誤差を検出し、当該タイミング誤差に基づいて前記制御信号を生成し、この制御信号を前記インターポレータへ出力するフィードバック回路と、を有し、前記フィードバック回路が、前記等化回路からのデジタル信号から前記タイミング誤差を検出する検出手段と、前記検出手段で検出したタイミング誤差を積分処理する積分器と、積分処理により得られた積分値に応じた制御信号を生成して前記インターポレータに当該制御信号を供給する制御手段と、前記積分値と、予め設定されているしきい値とを比較し、前記積分値が当該しきい値以上となった場合に、前記積分器の積分値をクリアする制御を行うリミッタと、を含む。
【0015】
また、本発明の信号処理プログラムは、アナログ信号をデジタルサンプリングしたデジタル信号を、制御信号に基づいて内挿補間して再サンプリングし、得られたデジタル信号を出力するインターポレータと、前記インターポレータからのデジタル信号を所望の目標特性とすべく等化処理する等化回路と、前記等化回路からの出力信号のシンボル点と所望のシンボル点とのタイミング誤差を検出し、当該タイミング誤差に基づいて前記制御信号を生成し、この制御信号を前記インターポレータへ出力するフィードバック回路と、前記フィードバック回路に対しデジタル信号処理を行う処理装置と、を有し、前記フィードバック回路が、前記等化回路からのデジタル信号から前記タイミング誤差を検出する検出手段と、前記検出手段で検出したタイミング誤差を積分処理する積分器と、積分処理により得られた積分値に応じた制御信号を生成して前記インターポレータに当該制御信号を供給する制御手段と、を含むデータ再生装置に用いる信号処理プログラムであって、前記処理装置に、前記積分値と、予め設定されたしきい値との比較を行うステップと、前記積分値がしきい値以上である場合に、前記積分器の積分値をクリアする制御を行うステップと、を実行させるものである。
【0016】
また、本発明の信号処理プログラムは、前記処理装置に、前記等化回路からのデジタル信号から前記タイミング誤差を検出する検出ステップと、前記検出ステップで検出したタイミング誤差を積分処理する積分ステップと、積分処理により得られた積分値に応じた制御信号を生成し、前記インターポレータに当該制御信号を供給する制御ステップと、前記積分値と、予め設定されたしきい値との比較を行うステップと、前記積分値がしきい値以上である場合に、前記積分器の積分値をクリアする制御を行うステップと、を実行させるものであっても良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、例えば記録媒体の再生開始時などに乱れた波形の信号が再生されても、ループフィルタの積分器による誤ったタイミングエラー検出値の蓄積が所定値以上(例えば、トリック再生時のビットレートの最大周波数オフセットに対応した値)にならない。従って、乱れた波形の再生信号に起因したタイミング同期制御不能な状態の継続が回避され、良好なフィードバック制御を実現でき、これにより、フィードバック制御による良好なインターポレータの内挿補間のタイミング調整を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明について以下詳細に説明する。本発明の一実施形態に係るデータ再生装置は、図1と同様であり、再生ヘッド100、アナログフィルタ102、アナログ/デジタル(A/D)変換器104、インターポレータ106、デジタルイコライザ107、タイミングエラー検出器120、ループフィルタ122、及びNCO(Numerically Controlled Oscillator)124を含んで構成される。また、デジタルイコライザ107は、固定FIRフィルタ108、可変バンドパスフィルタ(可変BPF)110、可変ハイパスフィルタ(可変HPF)112、可変全域通過フィルタ(可変APF)114、可変FIRフィルタ116、及び適応制御器118を含んで構成される。ただ、本実施形態に係るデータ再生装置では、後述の如く、従来のデータ再生装置におけるループフィルタ122内に、新たにリミッタ123を接続したものである。
【0019】
従来と同様、再生ヘッド100は、記録媒体に記録されたデジタルデータを再生し、その再生アナログ信号をヘッドアンプ(図示せず)により増幅して、アンチエイリアスフィルタであるアナログフィルタ102に出力する。アナログフィルタ102は、再生ヘッド100からのアナログ信号について、fs/2(fs:サンプリング周波数)以上の周波数成分をカットしてアナログ/デジタル(A/D)変換器104に出力し、A/D変換器104は、アナログフィルタ102からのアナログ信号をデジタル信号に変換してインターポレータ106に出力する。
【0020】
インターポレータ106は、A/D変換器104からのデジタル信号に対し、そのサンプル点データからサンプル間にあるシンボル点のデータを推定補間する。これは、A/D変換器104では、PLLからのクロックに応じ、シンボルとは非同期のタイミングでサンプリング(非同期サンプリング)するため、インターポレータ106でシンボル点のデータを内挿補間する必要が生じるからである。インターポレータ106は、A/D変換器104のサンプルデータに対して推定補間したデータをリサンプル処理する。このとき、一種のローパスフィルタ(LPF)であるインターポレータ16は、fb/2(fb:ビットレート)以上の周波数成分をカットする。こうしてリサンプルされ且つfb/2以上の周波数成分をカットされたデジタル信号は、等化処理を行うデジタルイコライザ107に供給される。
【0021】
インターポレータ106は、基本的にはFIRフィルタで構成され、例えば図2のように、互いに直列接続された複数のラッチ素子106a、複数の乗算器106b、及び加算器106cを含んで構成される。各ラッチ素子106aは、デジタル信号をサンプル期間だけ保持して出力する。各乗算器106bは、入力デジタル信号に対して所定の係数を乗じて加算器106cに出力する。加算器106cは、各乗算器106bの出力を加算し、後段のデジタルイコライザ107に出力する。各乗算器106bの係数は、予めセットとして設定されている。また、係数のセットは予め複数セット用意され、これらのセットのいずれかが選択される。すなわち、内挿補間すべき位置に応じて複数セットの中のいずれかのセットが選択的に用いられる。シンボル点のデータを内挿補間すべき位置、すなわち内挿補間のタイミングは、後述のようにタイミングエラー検出器120、ループフィルタ122、NCO124からなるフィードバックループにより調整される。
【0022】
デジタルイコライザ107において、固定FIRフィルタ108は、デジタル信号に対し、高域成分をブーストして高域成分の劣化を補償する。続けて、固定FIRフィルタ108からのデジタル信号について、可変BPF110、可変HPF112でデジタル信号の振幅を調整し、可変APF114でデジタル信号の群遅延量を制御して、可変FIRフィルタ116に出力する。この可変BPF110、可変HPF112、及び可変APF114も、従来と同様、例えば複数のラッチ素子及び乗算器で構成した場合の乗算器の係数(タップ係数)を可変とするものであり、各フィルタのタップ係数は外部からの調整信号により可変調整され、これにより各フィルタのフィルタ特性が調整される。
【0023】
可変FIRフィルタ116は、入力デジタル信号の特性を目標特性に一致させるためのFIRフィルタであり、乗算器の係数を可変とするフィルタである。乗算器の可変係数は、適応制御器118からの調整信号により調整設定される。適応制御器118は、目標特性(仮に定めた目標特性)と入力デジタル信号の特性との差分を演算し、この差分に応じて所定のアルゴリズムに従い可変FIRフィルタ116の可変係数を増減調整する。こうして、可変FIRフィルタ116においてデジタル信号が最終的に等化処理される。
【0024】
尚、可変FIRフィルタ116の出力は、タイミングエラー検出器120、ループフィルタ122、NCO124からなるフィードバックループにも供給され、このフィードバックループによるフィードバック制御により、インターポレータ106にて内挿補間すべき位置、すなわち内挿補間のタイミングが決められる。タイミングエラー検出器120は可変FIRフィルタ116の出力データからタイミングエラーを検出し、ループフィルタ122は検出したタイミングエラーからノイズ成分を取り除き、積分処理及び微分処理等を行う。
【0025】
図3には、ループフィルタ122の構成が示されている。ループフィルタ122は、ローパスフィルタ122aと乗算器122dが直列接続され、この乗算器122dに、加算器122g、積分器122b及び乗算器122eと、微分器122c及び乗算器122fと、が並列接続された構成となっている。タイミングエラー検出器120からの出力はローパスフィルタ122aに供給され、ローパスフィルタ122aでノイズ成分の除去が行われる。ローパスフィルタ122aからの出力は、乗算器122d、積分器122b、及び微分器122cに供給される。乗算器122dに入力されたデジタル信号は、予め設定された係数が乗算され、加算器122hに出力される。微分器122cに入力されたデジタル信号は、微分処理が行われた後、乗算器122fにて予め設定された係数が乗算され、加算器122hに出力される。加算器122gに入力されたデジタル信号は、積分器122b内の遅延器122iからフィードバックされた信号と加算して、遅延器122iに入力され、積分処理が行われる。こうして積分処理が行われた後、乗算器122eにて予め設定された係数が乗算され、後述のリミッタ123を経て加算器122hに出力される。そして、加算器122hは、各乗算器からの信号を加算して、次段のNCO124に出力する。また、リミッタ123は、積分処理及び係数乗算の後段に接続されており、ループフィルタ122の積分項の値を検出している。
【0026】
NCO124は、ループフィルタ122で処理されたタイミングエラーに応じた制御信号を生成してインターポレータ106に供給し、インターポレータ106における内挿補間タイミングを調整する。こうしてインターポレータ106は、NCO124からの制御信号に基づいて、上述のように乗算器の係数の複数セットの中から制御信号に応じたセットを用いて内挿補間することで、内挿タイミングが最適化(タイミングの同期確立)される。
【0027】
ここで、本実施形態におけるループフィルタ122では、積分項の値を検出するリミッタ123が、図3のように積分処理、係数乗算の後段に接続されている。リミッタ123には、予めしきい値が設定されている。しきい値としては、例えば、トリック再生時のビットレートの最大周波数オフセットに応じた値とすると良い。リミッタ123は、ループフィルタ122の積分項の値を検出し、しきい値との比較を行う。そして、比較の結果、積分項の値がしきい値以上になった場合には、リミッタ123は、積分器122bの積分値をクリアして初期状態に戻す制御信号を生成し、積分器122bに出力する。こうしてリミッタ123から制御信号が入力されると、積分器122bにおける積分値がクリアされ、積分器122bは初期状態に戻る。
【0028】
以上、本実施形態に係るデータ再生装置によれば、記録媒体の再生開始時などに乱れた波形の信号が再生され、正しいタイミングエラー値が検出されないような場合でも、ループフィルタ122の積分器122bに誤ったタイミングエラー検出値が所定値以上(例えば、トリック再生時のビットレートの最大周波数オフセットに対応した値)蓄積されることがない。これにより、インターポレータ106における内挿補間タイミングの調整に関して、乱れた波形の再生信号に起因したタイミング同期制御不能な状態の継続が回避され、良好なフィードバック制御を実現することが可能となる。
【0029】
尚、本実施形態のデータ再生装置は、DVC(デジタルビデオカメラ)やHDD(ハードディスクドライブ)、CDドライブやDVDドライブの再生装置に組み込むことができ、PR4等のデジタルデータを再生ヘッドでアナログ信号として再生し、このアナログ再生信号をデジタル化して再生処理する任意のデバイスに適用することができる。
【0030】
また、本実施形態のループフィルタ122による積分器122bの制御は、これと同様の制御を行うプラグラムを作成し、このプログラムに基づいて積分器122bの制御を実行させるようにしても良い。具体的には、ループフィルタ122の積分項の値を検出し、予め設定されたしきい値との比較を行うステップと、比較の結果、積分項の値がしきい値以上になった場合には、積分器122bの積分値をクリアして初期状態に戻すステップと、をDSP(Digital Signal Processor)等の処理装置にソフト的に処理させるようにすれば良い。
【0031】
あるいは、デジタルイコライザ107からのデジタル信号からタイミングエラーを検出する検出ステップと、検出したタイミング誤差を積分処理する積分ステップと、積分処理により得られた積分値に応じた内挿補間タイミング調整用の制御信号を生成し、インターポレータ106に当該制御信号を供給する制御ステップと、積分器122bの積分値と、予め設定されたしきい値との比較を行うステップと、前記積分値がしきい値以上である場合に、積分器122bの積分値をクリアする制御を行うステップと、を処理装置にソフト的に処理させるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】データ再生装置の構成図である。
【図2】図1におけるインターポレータの構成図である。
【図3】本実施形態におけるループフィルタの構成図である。
【符号の説明】
【0033】
100 再生ヘッド、102 アナログフィルタ、104 A/D変換器、106 インターポレータ、108 固定FIRフィルタ、110 可変BPF、112 可変HPF、114 可変APF、116 可変FIRフィルタ、118 適応制御器、120 タイミングエラー検出器、122 ループフィルタ、122a ローパスフィルタ、122b 積分器、122c 微分器、122d〜122f 乗算器、122g,122h 加算器、122i 遅延器、123 リミッタ、124 NCO。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ信号をデジタルサンプリングしたデジタル信号を、制御信号に基づいて内挿補間して再サンプリングし、得られたデジタル信号を出力するインターポレータと、
前記インターポレータからのデジタル信号を所望の目標特性とすべく等化処理する等化回路と、
前記等化回路からの出力信号のシンボル点と所望のシンボル点とのタイミング誤差を検出し、当該タイミング誤差に基づいて前記制御信号を生成し、この制御信号を前記インターポレータへ出力するフィードバック回路と、
を有し、
前記フィードバック回路は、
前記等化回路からのデジタル信号から前記タイミング誤差を検出する検出手段と、
前記検出手段で検出したタイミング誤差を積分処理する積分器と、
積分処理により得られた積分値に応じた制御信号を生成して前記インターポレータに当該制御信号を供給する制御手段と、
前記積分値と、予め設定されているしきい値とを比較し、前記積分値が当該しきい値以上となった場合に、前記積分器の積分値をクリアする制御を行うリミッタと、
を含むことを特徴とするデータ再生装置。
【請求項2】
アナログ信号をデジタルサンプリングしたデジタル信号を、制御信号に基づいて内挿補間して再サンプリングし、得られたデジタル信号を出力するインターポレータと、
前記インターポレータからのデジタル信号を所望の目標特性とすべく等化処理する等化回路と、
前記等化回路からの出力信号のシンボル点と所望のシンボル点とのタイミング誤差を検出し、当該タイミング誤差に基づいて前記制御信号を生成し、この制御信号を前記インターポレータへ出力するフィードバック回路と、
前記フィードバック回路に対しデジタル信号処理を行う処理装置と、
を有し、
前記フィードバック回路は、
前記等化回路からのデジタル信号から前記タイミング誤差を検出する検出手段と、
前記検出手段で検出したタイミング誤差を積分処理する積分器と、
積分処理により得られた積分値に応じた制御信号を生成して前記インターポレータに当該制御信号を供給する制御手段と、
を含むデータ再生装置に用いる信号処理プログラムであって、
前記処理装置に、
前記積分値と、予め設定されたしきい値との比較を行うステップと、
前記積分値がしきい値以上である場合に、前記積分器の積分値をクリアする制御を行うステップと、
を実行させることを特徴とする信号処理プログラム。
【請求項3】
アナログ信号をデジタルサンプリングしたデジタル信号を、制御信号に基づいて内挿補間して再サンプリングし、得られたデジタル信号を出力するインターポレータと、
前記インターポレータからのデジタル信号を所望の目標特性とすべく等化処理する等化回路と、
前記等化回路からの出力信号のシンボル点と所望のシンボル点とのタイミング誤差を検出し、当該タイミング誤差に基づいて前記制御信号を生成し、この制御信号を前記インターポレータへ出力するフィードバック回路と、
前記フィードバック回路に対しデジタル信号処理を行う処理装置と、
を含むデータ再生装置に用いる信号処理プログラムであって、
前記処理装置に、
前記等化回路からのデジタル信号から前記タイミング誤差を検出する検出ステップと、
前記検出ステップで検出したタイミング誤差を積分処理する積分ステップと、
積分処理により得られた積分値に応じた制御信号を生成し、前記インターポレータに当該制御信号を供給する制御ステップと、
前記積分値と、予め設定されたしきい値との比較を行うステップと、
前記積分値がしきい値以上である場合に、前記積分器の積分値をクリアする制御を行うステップと、
を実行させることを特徴とする信号処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−147041(P2006−147041A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−335259(P2004−335259)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】