説明

データ処理装置、データ処理方法およびデータ処理プログラム

【課題】作成元が異なる文書データ同士の記述をもとに、当該文書データの作成元による活動方針に関する情報を得る。
【解決手段】マップ生成部5は、指定された技術名および市場名ならびに記憶装置2に記憶される自社の特許出願書類データおよび他社の特許公報データをもとに前述した技術名または市場名に関わる自社他社特許マップデータを生成する。コメント生成部6は、自社他社特許マップデータをもとにして、特許出願の市場での強さを示す市場力αおよび他社に対する特許出願の先行力βを計算する。コメント生成部6は、市場力αおよび先行力βの計算結果にしたがったコメントを生成し、このコメントを自社他社特許マップ上の該当する技術名および比較対象の会社に対応するセル上に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば特許等の技術文書に関わる文書データの解析を行なうデータ処理装置、データ処理方法およびデータ処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、文書データ分析装置には、特許公報群の各文献において請求項などの特定の文章からキーワード群を抽出し、これらのキーワードを要素とする軸で構成されるマップに、各要素に対応する特許文献を自動的にマッピングすることで特許マップを自動作成する装置がある(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−192450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述したように作成された特許マップで示される特許情報分析結果は、例えばターゲットとする技術分野における特許文献番号、件数、発明数および出願人数などであり、経営戦略、つまり特許活動の指針の立案に対して具体的な示唆を与えるものでない。しかし、特許情報分析結果から分析対象の特許情報の作成元である事業者の特許活動の指針を従来どおり人間の試行錯誤の作業により導出するには多大な手間を要する。
【0004】
そこで、本発明の目的は、作成元が異なる文書データ同士の記述をもとに、当該作成元による活動方針に関する情報を得ることが可能になるデータ処理装置、データ処理方法およびデータ処理プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明に係わるデータ処理装置は、第1の作成元により作成された第1の文書データ群と第2の作成元により作成された第2の文書データ群とを記憶する記憶手段を備え、予め定められた分類に属する文書データを記憶手段に記憶された第1の文書データ群および第2の文書データ群からそれぞれ検索し、この検索した文書データ同士の関連性にもとづいた前記第1又は第2の作成元の活動方針に関するコメントを生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、作成元が異なる文書データ同士の記述をもとに、当該作成元による活動方針に関する情報を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下図面により本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態にしたがった特許文書データ分析装置の構成例を示すブロック図である。
【0008】
図1に示すように、本発明の実施形態にしたがった特許文書データ分析装置は、装置全体の動作を司る制御部1、記憶装置2、出願管理情報検索部3、公報検索部4、マップ生成部5、コメント生成部6、入力装置7および表示装置8を備え、それぞれがバス9を介して相互に接続される。
【0009】
記憶装置2は、例えばハ−ドディスクドライブや不揮発性メモリ装置などのハードウェアで構成される。記憶装置2は制御部1による実行対象の制御プログラムを記憶するのに加え、制御部1による各種処理のワークメモリとしても機能する。入力装置7は例えばキーボードやマウスであり、表示装置8はディスプレイ装置である。
【0010】
記憶装置2内の第1の記憶エリアである出願管理情報エリア21には、自社、つまり特許文書データ分析装置の運用元である事業者が出願人である出願管理情報テーブルが記憶される。以下、特許文書データ分析装置の運用元の事業者を「自社」と呼称し、他の事業者を「他社」と呼称する。
【0011】
図2は、本発明の実施形態にしたがった特許文書データ分析装置の記憶装置に記憶される出願管理情報テーブルの構成例を表形式で示す図である。
この出願管理情報テーブルでは自社の特許出願書類の管理番号、出願番号、出願日(優先日)、公開番号、公開日、経過情報、技術、市場などが関連付けられて管理される。以下、出願日は「優先日」であるとして以下の処理を説明する。この特許番号に対応する特許出願書類データは記憶装置2に記憶される。
【0012】
経過情報とは、これと出願管理情報テーブル上で関連付けられる出願番号に対応する特許出願の最終処分結果及びこの最終処分に至る途中経過を示し、例えば登録査定、査定なし、拒絶査定、取り下げ、放棄および無効などのいずれかである。
【0013】
出願管理情報テーブル上の「技術」とは、これと出願管理情報テーブル上で関連付けられる出願番号に対応する出願書類の記述が関わる技術分野の分類体系に属する名称である、例えば半導体や電子回路などである。また、出願管理情報テーブル上の「市場」とは、前述した技術と異なる分類体系であり、これと出願管理情報テーブル上で関連付けられる出願番号に対応する出願書類の記述が関わる応用分野や適用分野の分類体系である。具体的には、市場とは例えば携帯電話、ノートPCなどである。
【0014】
これらの市場名や技術名のデータは、ユーザが入力装置7に対する操作を行なって定められるものであってもよいし、記憶装置2に記憶される特許出願書類データの記述を元に制御部1が決定するものであってもよい。この場合には、制御部1は特許出願書類データにおける技術分類を示すIPC、FIやFタームなどを参照して当該市場名や技術名のデータを決定することが望ましい。
【0015】
1つの特許出願書類には1つまたは複数の技術分野が対応し、また、1つの特許出願書類に関して、1つまたは複数の市場が対応する。また、これらの市場や技術は階層的な構造となっていても良い。すなわち、例えば、市場Pに市場Aと市場Bが属しているという構造になっていても良い。本発明の実施形態では、市場と技術に関して階層的な構造ではなく1階層の構造であると仮定して説明するが、階層的な構造であっても同様である。
【0016】
また、記憶装置2内の第2の記憶エリアである特許公報エリア22には自社および他社の特許公報データが記憶される。この特許公報エリア22には他社の特許公報データに対応する経過情報があわせて記憶される。
【0017】
記憶装置2内の第3の記憶エリアである製品情報エリア23には製品情報テーブルが記憶される。図3は、本発明の実施形態にしたがった特許文書データ分析装置の記憶装置に記憶される製品情報テーブルの構成例を表形式で示す図である。
図3に示すように製品情報テーブルでは他社の各製品名およびこの製品が関わる技術や市場が会社名ごとに管理される。
【0018】
また、記憶装置2内の第4の記憶エリアである分析ルールエリア24には分析ルールテーブルが記憶される。図4は、本発明の実施形態にしたがった特許文書データ分析装置の記憶装置に記憶される分析ルールテーブルの構成例を表形式で示す図である。
【0019】
図4に示すように、分析ルールテーブルでは、ルール名、条件内容およびコメントの内容が関連付けられて管理される。条件内容とは、自社の特許情報と他社の特許情報との関連性にもとづいた自社の活動方針決定のための条件である。コメントとは、これとテーブル上で関連付けられる条件内容で記述される条件を満たした場合に表示装置8より表示させるコメントである。
【0020】
次に、図1に示した構成の特許文書データ分析装置の動作について説明する。図5は、本発明の実施形態にしたがった特許文書データ分析装置の処理動作の一例を示すフローチャートである。
【0021】
まず、ユーザは、入力装置7に対する予め定められた操作を行なうことで、市場技術マップデータを入力する(ステップS1)。このデータは、前述した出願管理情報テーブルで管理される技術および市場のうち、自社の活動方針に関わる技術および市場の名称および各技術と市場の関連性の強さを示すデータである。制御部1は、この入力された市場技術マップデータを記憶装置2に記憶する。
【0022】
図6は、本発明の実施形態にしたがった特許文書データ分析装置に入力する市場技術マップデータの構成例を表形式で示す図である。
図6に示した例では、技術と市場の関係の強さを、その関係の強い順に「◎」、「○」、「△」、「×」の4段階の記号で示している。この例では関係の強さが4段階の順序尺度で表現されているが、関係の有無のみでもよいし、定量的な数値で入力される形態としてもよい。
【0023】
次に出願管理情報検索部3は、前述したように入力された技術および市場の組み合わせについて、技術および市場の双方が関連付けられる出願番号を記憶装置2に記憶された出願管理情報テーブルから検索する。マップ生成部5は、この検索結果をもとに自社特許マップデータを生成し、このデータを記憶装置2に記憶する(ステップS2)。
【0024】
図7は、本発明の実施形態にしたがった特許文書データ分析装置により生成した自社特許マップデータの構成例を表形式で示す図である。
この自社特許マップデータでは、マップ生成部5が検索した出願番号が、これと出願管理情報テーブルで管理される技術および市場ごとに関連付けられる。
【0025】
出願管理情報検索部3は、自社特許マップデータで管理される特許番号に対応する特許出願書類データを記憶装置2から検索する。
公報検索部4は、この検索された特許番号に対応する特許出願書類データの記述のうち、これと自社特許マップデータ上で関連付けられる技術および市場の各組み合わせの双方に対応する記述を含む特許公報データを当該特許公報データの公開番号、優先日および経過情報とあわせて記憶装置2の特許公報エリア22から例えば概念検索により検索し、この検索結果を記憶装置2に記憶する(ステップS3)。
【0026】
ここでは、概念検索とは文書データ間の記述の類似度に基づき、内容が類似した文書を検索する公知の手法であり、一般には、文書データ中の単語の頻度分布の類似性を基準にした手法が用いられている。ここでは、公報検索部4は概念検索を行ない、類似度が基準値以上の特許公報データを検索する。
また、公報検索部4は概念検索の代わりに市場名や技術名をキーワードとして、これらのキーワードがともに含まれる特許公報データを検索してもよい。
【0027】
次に制御部1は、自社他社特許マップデータの出力のための市場名または技術名の指定入力画面を表示装置8に表示させる。この画面にしたがってユーザが入力装置7に対する予め定められた操作を行なって市場名または技術名を指定すると、マップ生成部5は、指定された名称およびステップS2による検索結果をもとに、指定された技術名または市場名に関わる自社他社特許マップデータを生成する(ステップS4)。
【0028】
図8は、本発明の実施形態にしたがった特許文書データ分析装置により生成した市場別の自社他社特許マップデータの出力画面G1の一例を示す図である。
図8に示した出力画面G1は、前述したように指定された名称が市場名であった場合の自社他社特許マップデータの画面である。マップ生成部5は、指定された名称が市場名であった場合には、指定された市場名およびこれと記憶装置2に記憶される市場技術マップデータ上で関連付けられる技術名の双方と関わる記述を含む自社の特許出願書類データの件数を出願管理情報検索部3による検索結果をもとに技術名ごとに計算する。
【0029】
そして、マップ生成部5は、指定された市場名およびこれと記憶装置2に記憶される市場技術マップデータ上で関連付けられる技術名の双方と関わる記述を含む他社の特許出願書類データの件数を公報検索部4による検索結果のうち技術名および会社ごとに計算する。
【0030】
マップ生成部5は、これらの計算結果をもとに自社他社特許マップデータを生成して表示装置8に表示させる(ステップS5)。この自社他社特許マップデータには前述したように計算された件数の技術別合計および会社別合計が含まれる。
【0031】
図9は、本発明の実施形態にしたがった特許文書データ分析装置により生成した技術別の自社他社特許マップデータの出力画面G2の一例を示す図である。
図9に示した出力画面G2は、前述したように指定された名称が技術名であった場合の自社他社特許マップデータの画面である。マップ生成部5は、指定された名称が技術名であった場合には、指定された技術名およびこれと記憶装置2に記憶される市場技術マップデータ上で関連付けられる市場名の双方と関わる記述を含む自社の特許出願書類データの件数を出願管理情報検索部3による検索結果をもとに市場名ごとに計算する。
【0032】
そして、マップ生成部5は、指定された技術名およびこれと記憶装置2に記憶される市場技術マップデータ上で関連付けられる市場名の双方と関わる記述を含む他社の特許出願書類データの件数を公報検索部4による検索結果のうち市場名および会社ごとに計算する。この自社他社特許マップデータには前述した件数の市場別合計および会社別合計も含まれる。
【0033】
以下、指定された名称が「市場A」であって、表示装置8に表示されたマップデータが図8に示した他社特許マップデータであるとして以後の処理を説明する。マップ生成部5は、前述したように計算した件数について経過情報の種別ごとの件数および優先日別の件数を計算して、この計算結果および各件の公開番号を記憶装置2に記憶する。
【0034】
図8に示したマップでは、「市場A」および「技術B」に関わる自社の特許出願書類データの件数は20件であり、「市場A」および「技術B」に関わる「他社X」の公開公報データの件数は80件である事が示される。
【0035】
ユーザが入力装置7に対する操作を行なうことで、図8に示した画面に表示される「詳細件数」に対応するチェックボックスが選択されて、経過情報の種別ごとの内訳を知りたい件数欄が選択されると、マップ生成部5は、この箇所に対応する会社、市場および技術に対応する特許書類データの件数のうち経過情報の種別ごとの件数の内訳を示す特許詳細件数出力画面を表示装置8に表示させる。この特許書類データとは自社の特許出願書類データおよび他社の特許公報データの何れかである。
【0036】
図10は、本発明の実施形態にしたがった特許文書データ分析装置の表示装置に表示される特許詳細件数出力画面G3の一例を示す図である。
図10に示した画面G3は、図8に示した画面上の「詳細件数」のチェックボックスが有効とされて「他社X」および「技術B」の双方に対応する特許公報の件数を示すセルである「80」が選択された場合の「市場A」、「技術B」および「他社X」に関わる特許公報データのうち登録査定件数「30件」、査定なしの件数「32件」および拒絶査定等の件数「18件」と表示されている。拒絶査定等の件数には取り下げ、放棄および無効などの件数が含まれる。これにより、ユーザは単純な出願件数ではなく、権利として有効な件数や特許査定を得ている割合などを知ることが出来る。
【0037】
また、ユーザが入力装置7に対する操作を行なうことで、図8に示した画面に表示される「優先日別件数」に対応するチェックボックスが選択されて、優先日別の件数を知りたい件数を示すセルが選択されると、マップ生成部5は、この箇所に対応する会社、市場および技術に対応する特許書類データの件数のうち当該特許公報の優先日が属する年ごとの内訳を示す優先日別件数出力画面を表示装置8に表示させる。
【0038】
図11は、本発明の実施形態にしたがった特許文書データ分析装置の表示装置に表示される優先日別件数出力画面G4の一例を示す図である。
図11に示した画面G4は、図8に示した画面上の「優先日別件数」のチェックボックスが有効とされて「他社X」および「技術B」の双方に対応する特許公報データの件数を示すセルである「80」が選択された場合の「市場A」、「技術B」および「他社X」に関わる特許公報データのうち2002年から2005年までの年別出願件数の出力画面である。ユーザはこの画面を参照することで、当該技術や市場に対して、会社が、いつの時期から取り組んでいるといった時系列的な情報を把握できる。
【0039】
また、ユーザが入力装置7に対する操作を行なうことで、図8に示した画面に表示される「公開番号一覧」に対応するチェックボックスが選択されて、公開番号を知りたい件数を示すセルが選択されると、マップ生成部5は、この箇所に対応する会社、市場および技術に対応する特許書類データのそれぞれの公開番号を示す公開番号出力画面を表示装置8に表示させる。
【0040】
図12は、本発明の実施形態にしたがった特許文書データ分析装置の表示装置に表示される公開番号出力画面G5の一例を示す図である。
図12に示した画面G5は、図8に示した画面上の「公開番号一覧」のチェックボックスが有効とされて「他社X」および「技術B」の双方に対応する特許公報の件数を示すセルである「80」が選択された場合の「市場A」、「技術B」および「他社X」に関わる特許公報データのそれぞれの公開番号の出力画面である。
【0041】
ユーザが入力装置7に対する操作を行なうことで、この画面上の公開番号を選択すると、個別の特許公報データが表示される。よって該当する市場、技術および会社に関わる特許公報データへのアクセスが容易になる。
【0042】
また、ユーザが入力装置7に対する操作を行なうことで、図8に示した画面に対応する市場、技術および会社が全て関わる製品名を知りたい会社名を示すセルが選択されると、マップ生成部5はこの選択された会社名、出力画面上の市場名および技術名の全てに対応する製品名の情報を記憶装置2に記憶される製品情報テーブルから抽出し、これを示す製品一覧出力画面を表示装置8に表示させる。
【0043】
図13は、本発明の実施形態にしたがった特許文書データ分析装置の表示装置に表示される製品一覧出力画面G6の一例を示す図である。
図13に示した画面G6は、図8に示した画面上の「他社X」が選択された場合の「市場A」、「技術B」および「他社X」に関わる製品名の出力画面である。ユーザはこの画面を参照することで市場の状況を容易に把握できる。
【0044】
また、ユーザが入力装置7に対する操作を行なうことで、図8に示した画面に対応する市場名および技術名に関する各社の年別出願件数を知りたい件数欄が選択されると、マップ生成部5はこの選択された件数欄に対応する市場名および技術名にともに対応する各社の年別出願件数を示す年別出願件数出力画面を表示装置8に表示させる。
【0045】
図14は、本発明の実施形態にしたがった特許文書データ分析装置の表示装置に表示される年別出願件数出力画面G7例を示す図である。
図14に示した画面G7、図8に示した画面上の「技術A」に対応する特許公報データの「技術別合計」の件数を示すセルである「80」が選択された場合の「市場A」および「技術A」にともに関わる「自社」、「他社X」および「他社Y」の夫々の特許書類データの年別出願件数の出力画面である。ユーザはこの画面を参照することで、会社間の時系列的な比較ができる。
【0046】
また、図8に示した画面に表示されるコメント表示アイコン11をユーザが入力装置7に対する操作を行なうことで選択すると(ステップS6のYES)、コメント生成部6は自社他社特許マップデータと、記憶装置2に記憶される分析ルールテーブルを用いて、出力画面上の各セルに対応するコメントを生成する。
【0047】
具体的には、コメント生成部6は、ある技術および市場における特許出願の市場での強さを表す指標値である市場力αおよび、ある技術および市場における他社に対する先行度の指標値である先行力βを計算する(ステップS7)。
【0048】
自社の市場力は以下の式(1)で示され、他社N(他社を一般化した名称)の市場力は以下の式(2)で示される。
α(自社)=自社の特許出願の登録査定済み件数/出願件数 …式(1)
α(他社N)=他社Nの特許出願の登録査定済み件数/出願件数 …式(2)
コメント生成部6は、図10で示されるような経過情報の種別ごとの件数の情報を記憶装置2から読出し、この情報を用いて、市場力αを計算する。市場力αの計算式は上記(1)(2)に限定されない。例えば、登録査定済みの各件の請求項数を式(1)(2)の分子に乗じても良いし、さらに細かくは当該請求項の構成要素の数と所定ポイントとを対応付けたテーブルを参照しつつ当該構成要素数に応じたポイントを乗じても良いものとする。この場合、構成要素数が少ない請求項ほど権利範囲が広いことと解釈されることが多いため、構成要素数が少ないほど当該ポイントが多いように構成すれば良い。さらに、この所定ポイントと構成要素数の関係が定められたテーブルは、記憶装置2に記憶されているものとする。このテーブルの情報を用いて、当該構成要素の総和値に対応するポイント値を検索する。
【0049】
例えば、図8で示されるように「市場A」および「技術B」に関する自社の特許出願件数が20件で、登録査定済み件数が3件である場合には、「市場A」および「技術B」に関するα(自社)=3/20=0.15となる。
【0050】
また、図10に示されるように、「市場A」および「技術B」に関する「他社X」の特許出願件数が80件で、登録査定済み件数が30件である場合には、「市場A」および「技術B」に関するα(他社X)=30/80=0.375となる。
【0051】
そして、コメント生成部6は、各社の市場力αの計算結果と記憶装置2に記憶される分析ルールテーブルとを照合することで、分析ルールテーブル上の条件内容に、計算済みの各社の市場力αと合致する条件があればこれと分析ルールテーブル上で関連付けられるコメントを検索する。
【0052】
分析ルールテーブルが図4に示した構成であって、「市場A」および「技術B」に関するα(自社)の計算結果が前述したように0.15で、「市場A」および「技術B」に関するα(他社X)の計算結果が前述したように0.375である場合には、これらの計算結果は、ルール1である「α(自社)≦0.2 and α(他社N)≧0.3」と合致するので、コメント生成部6は、これと分析ルールテーブル上で関連付けられるコメントである「技術Mで他社Nに負けており、勝てる見込みがないので市場Kから撤退する」を選択する。
【0053】
次に、マップ生成部5は先行力βを計算する。ある市場および技術における他社Nに対する自社の先行力βは以下の式(3)で示される。
β=β(他社N)−β(自社) …式(3)
先行力βの計算式は上記(3)に限定されない。β(自社)は、予め定められた各年のうち自社のとある市場および技術における出願件数が最も多かった年であって、β(他社N)は、各年のうち他社Nのとある市場および技術における出願件数が最も多かった年である。
【0054】
コメント生成部6は、各社の年別出願件数情報を記憶装置2から読出し、この情報を用いて先行力βを計算する。
【0055】
例えば、各社の年別出願件数情報が図14で示される件数である場合には「市場A」および「技術A」に関する自社の2002年から2005年までの出願件数のうち、最も出願件数が多い年は2003年であるので、「市場A」および「技術A」に関するβ(自社)=2003となる。また、「市場A」および「技術A」に関する「他社X」の2002年から2005年までの出願件数のうち、最も出願件数が多い年は2004年であるので、「市場A」および「技術A」に関するβ(他社X)=2004となる。
【0056】
つまり、「市場A」および「技術A」に関する自社の「他社X」に対する先行力βの値は以下の式(4)に示した計算結果となる。
β=β(他社X)−β(自社)
=2004−2003
=1 …式(4)
分析ルールテーブルが図4に示した構成であって、先行力βの計算結果が前述したように1である場合には、これらの計算結果はルール3である「β≧1」と合致するので、コメント生成部6は、これと分析ルールテーブル上で関連付けられるコメントである「技術Mのライセンスを他社Nに売る」を選択する。
【0057】
コメント生成部6は、各技術および市場における市場力αおよび先行力βを自社を固定としたそれぞれの他社との組み合わせについても計算する。コメント生成部6は、この計算結果にしたがったコメントを生成し、このコメントを自社他社特許マップ上の該当する技術名および比較対象の会社名に対応するセル上の吹き出しとして表示させる(ステップS7,S8)。
【0058】
具体的には、前述した「市場A」および「技術B」に関する自社の「他社X」に対する市場力αの計算にしたがって分析ルールテーブルから選択されたコメント中の技術Mおよび市場Kは技術名および市場名とそれぞれ一般化した名称である。よってコメント生成部6は、「技術Bで他社Xに負けており、勝てる見込みがないので市場Aから撤退する」とのコメントを表示装置8に表示中の図8に示した自社他社特許マップ上の「技術B」および「他社X」に対応する80件と表示されるセル上の吹き出しとして表示させる。
【0059】
また、前述した「市場A」および「技術A」に関する自社の「他社X」に対する先行力βの計算にしたがって分析ルールテーブルから選択されたコメントの「技術M」および「他社N」は技術名および会社名とそれぞれ一般化した名称である。よってコメント生成部6は、「技術Aのライセンスを他社Xに売る」とのコメントを表示装置8に表示中の図8に示した自社他社特許マップ上の「技術A」および「他社X」に対応する17件と表示されるセル上の吹き出しとして表示させる。
【0060】
ただし、コメント生成部6は、表示される自社他社特許マップ上の各セルに対応する市場と技術のうち、ステップS1の処理で入力された市場技術マップデータで示される関係の強さが「×」である組み合わせが存在する場合には自社の特許活動に影響を及ぼさないとして、該当するセルにコメントを表示させない。
【0061】
図15は、本発明の実施形態にしたがった特許文書データ分析装置の表示装置に表示されるコメント出力画面の一例を示す図である。
このコメント出力画面は、前述した自社他社特許マップデータの出力画面上にコメントの吹き出しが上書き表示されたものである。
【0062】
このコメント出力画面では、「市場A」および「技術B」に関する自社の「他社X」に対する市場力αの計算の結果選択された「技術Bが強い他社Xとアライアンスを結ぶ」とのコメントが図8に示した自社他社特許マップ上の「技術B」および「他社X」に対応する80件と表示されるセル上の吹き出しとして表示されている。
【0063】
また、コメントの表示前に画面上に表示されていたコメント表示アイコン11はコメント消去アイコン12に切り替わる。ユーザが入力装置7に対する操作を行なってコメント消去アイコン12を選択すると、制御部1は、画面上に表示されていたコメントの吹き出しを消去する。
【0064】
以上のように、本発明の実施形態にしたがった特許文書データ分析装置では、自社の特許出願書類データおよび他社の特許公報データの関連性をもとに自社の特許活動指針に関するコメントを表示させるので、ユーザはある技術や市場が関わる自社の特許活動に関する支援情報を得ることができる。
この支援を行なうことにより、ユーザがある技術の市場性を把握して、この技術の新たな適用先を見つけるなどといった技術戦略立案の効率化・容易化を図ることができる。
【0065】
また、調査対象の市場および技術の組み合わせのうち関係が強い組み合わせのみに関するコメントを表示させることで、ユーザは、優先的に考慮すべき特許活動を把握出来るので、効率のよい支援を行なうことができる。
【0066】
前述した特許文書データ分析装置は、表示される自社他社特許マップ上の各セルのうち、入力済みの市場技術マップデータで示される関係の強さが「◎」「○」および「△」であるそれぞれの組み合わせに該当するセルに表示させるコメントの文字の太さや色を区分することで市場と技術間の関係の強さを強調する形態であっても良いし、あるいは、関係の強さに無関係に表示させても良い。
【0067】
また、この実施例では、出力コメントを決定する際に分析ルールテーブル上のルールに対応したコメントを出力すると説明したが、これに限らず、決定木や、統計的推論手法などを用いてもよい。
【0068】
この実施例では、市場別の自社他社特許マップを例としたが、技術別の自社他社特許マップでも、同様のコメントを出力することができることは勿論である。
【0069】
なお、前記実施の形態は、本発明を特許出願書類データの分析に適用した場合について説明したものであるが、これに限らず、例えば技術論文や学会発表予稿、技術報告書など技術的な内容が記載されている文書データの分析にも本発明を適用することが可能である。
【0070】
なお、この発明は前記実施形態そのままに限定されるものではなく実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を省略してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施形態にしたがった特許文書データ分析装置の構成例を示すブロック図。
【図2】本発明の実施形態にしたがった特許文書データ分析装置の記憶装置に記憶される出願管理情報テーブルの構成例を表形式で示す図。
【図3】本発明の実施形態にしたがった特許文書データ分析装置の記憶装置に記憶される製品情報テーブルの構成例を表形式で示す図。
【図4】本発明の実施形態にしたがった特許文書データ分析装置の記憶装置に記憶される分析ルールテーブルの構成例を表形式で示す図。
【図5】本発明の実施形態にしたがった特許文書データ分析装置の処理動作の一例を示すフローチャート。
【図6】本発明の実施形態にしたがった特許文書データ分析装置に入力する市場技術マップデータの構成例を表形式で示す図。
【図7】本発明の実施形態にしたがった特許文書データ分析装置により生成した自社特許マップデータ構成例を表形式で示す図。
【図8】本発明の実施形態にしたがった特許文書データ分析装置により生成した市場別の自社他社特許マップデータの出力画面の一例を示す図。
【図9】本発明の実施形態にしたがった特許文書データ分析装置により生成した技術別の自社他社特許マップデータの出力画面の一例を示す図。
【図10】本発明の実施形態にしたがった特許文書データ分析装置の表示装置に表示される特許詳細件数出力画面の一例を示す図。
【図11】本発明の実施形態にしたがった特許文書データ分析装置の表示装置に表示される優先日別件数出力画面の一例を示す図。
【図12】本発明の実施形態にしたがった特許文書データ分析装置の表示装置に表示される公開番号出力画面の一例を示す図。
【図13】本発明の実施形態にしたがった特許文書データ分析装置の表示装置に表示される製品一覧出力画面の一例を示す図。
【図14】本発明の実施形態にしたがった特許文書データ分析装置の表示装置に表示される年別出願件数出力画面の一例を示す図。
【図15】本発明の実施形態にしたがった特許文書データ分析装置の表示装置に表示されるコメント出力画面の一例を示す図。
【符号の説明】
【0072】
1…制御部、2…記憶装置、3…出願管理情報検索部、4…公報検索部、5…マップ生成部、6…コメント生成部、7…入力装置、8…表示装置、9…バス、21…出願管理情報エリア、22…特許公報エリア、23…製品情報エリア、24…分析ルールエリア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の作成元により作成された第1の文書データ群と第2の作成元により作成された第2の文書データ群とを記憶する記憶手段と、
予め定められた分類に属する文書データを前記記憶手段に記憶された第1の文書データ群および第2の文書データ群からそれぞれ検索する検索手段と、
前記検索した文書データ同士の関連性にもとづいた前記第1又は前記第2の作成元の活動方針に関するコメントを生成する生成手段と
を備えたことを特徴とするデータ処理装置。
【請求項2】
前記検索手段は、
予め定められた第1の分類および第2の分類にともに属する文書データを前記第1の文書データ群および第2の文書データ群から検索する
ことを特徴とする請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記記憶手段は、
第1の事業者により作成された第1の特許文書データ群と第2の事業者により作成された第2の特許文書データ群とを記憶し、
前記検索手段は、
予め定められた分類に属する特許文書データを前記記憶手段に記憶された第1の特許文書データ群および第2の特許文書データ群からそれぞれ検索し、
前記生成手段は、
前記検索手段により検索した特許文書データ群同士の関連性にもとづいた前記第1又は第2の事業者による特許活動方針に関するコメントを生成する
ことを特徴とする請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項4】
第1の作成元により作成された第1の文書データ群と第2の作成元により作成された第2の文書データ群とを記憶する記憶装置を備えた装置で用いられ、
予め定められた分類に属する文書データを前記記憶装置に記憶された第1の文書データ群および第2の文書データ群からそれぞれ検索する検索ステップと、
前記検索した文書データ同士の関連性にもとづいた前記第1の作成元の活動方針に関するコメントを生成する生成ステップと
を有することを特徴とするデータ処理方法。
【請求項5】
第1の作成元により作成された第1の文書データ群と第2の作成元により作成された第2の文書データ群とを記憶する記憶装置を備えたコンピュータを制御するためのプログラムであって、
予め定められた分類に属する文書データを前記記憶手段に記憶された第1の文書データ群および第2の文書データ群からそれぞれ検索する検索手段、および
前記検索した文書データ同士の関連性にもとづいた前記第1の作成元の活動方針に関するコメントを生成する生成手段と
として機能させるようにした、コンピュータ読み取り可能なデータ処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−310720(P2007−310720A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−140359(P2006−140359)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(301063496)東芝ソリューション株式会社 (1,478)