説明

データ管理システム、データ管理装置、データ管理方法およびデータ管理プログラム

【課題】ドメイン名とIPアドレスとの対応付け情報をDNSサーバ間で同期させる処理をできるだけ迅速に行うことを課題とする。
【解決手段】マスターサーバ100は、更新前のデータ集合に含まれる対応付け情報と更新後のデータ集合に含まれる対応付け情報との差分である差分データを、所定のサイズを有するデータブロックごとに記憶する。そして、マスターサーバ100は、データ集合の更新があった場合に、当該更新により発生した差分データと、既存のデータブロックの中で最新のデータブロック内に格納済みである差分データとの合計サイズが所定のサイズよりも大きい場合には、新たなデータブロックを生成して、更新により発生した差分データを格納する一方で、合計サイズが所定のサイズ以下である場合には、既存のデータブロックの中で最新のデータブロックに、更新により発生した差分データを格納する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ管理システム、データ管理装置、データ管理方法およびデータ管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、DNS(Domain Name System)サーバでは、ドメイン名と、このドメイン名に割り当てられたIP(Internet Protocol)アドレスとの対応付け情報を自動更新する技術であるDDNS(Dynamic DNS)が利用される。DDNSは、インターネットへの接続ごとに、対応付け情報を自動更新することにより、常時接続環境を利用するユーザに対して一意なホスト名の提供を可能とする。
【0003】
また、上述の対応付け情報の原本を管理するDNSサーバであるマスターサーバと、この対応付け情報の複製を管理するDNSサーバであるスレーブサーバとを用意し、マスターサーバとスレーブサーバの間で、DDNSにより自動更新された対応付け情報を同期させる仕組みがある。この仕組みでは、ドメインの管理範囲であるゾーンごとに、上述の対応付け情報を1つ以上含んだデータ集合を管理し、データ集合に対して、それぞれ一意なシリアル番号を付与することにより時系列で整理している。また、この仕組みでは、DDNSによりゾーンデータの動的な更新があると、更新より発生したゾーンデータを、マスターサーバからスレーブサーバに対して送信し、マスターサーバとスレーブサーバとの間で同期させて管理する(非特許文献1、2参照)。
【0004】
以下、図10および図11を用いて、マスターサーバとスレーブサーバとの間でゾーンデータの差分を同期させて管理する方法(差分ゾーンデータを用いた同期管理方法)の一例を具体的に説明する。図10および図11は、差分ゾーンデータを用いた同期管理方法の一例を示す図である。
【0005】
図10に示すように、DDNSクライアントから動的な更新があると、マスターサーバは、更新により発生したゾーンデータの差分である差分データを蓄積する(図10の(1)参照)。なお、マスターサーバは、更新があるたびに、差分データに一意なシリアル番号を付与して蓄積して時系列で管理する。続いて、マスターサーバは、スレーブサーバに対して、更新があったことを通知する(図10の(2)参照)。マスターサーバは、スレーブサーバから差分データの転送要求を受信すると、差分データをスレーブサーバへ送信する(図10の(3)参照)。例えば、マスターサーバは、シリアル番号が「serial=11」と「serial=1」の差分データ、言い換えれば、シリアル番号が「serial=1〜11」までの差分データ(シリアル番号が「serial=1」のゾーンデータと「serial=2」のゾーンデータの差分データ、シリアル番号が「serial=2」のゾーンデータと「serial=3」のゾーンデータの差分データ、シリアル番号が「serial=3」のゾーンデータと「serial=4」のゾーンデータの差分データ、シリアル番号が「serial=4」のゾーンデータと「serial=5」のゾーンデータの差分データ、シリアル番号が「serial=5」のゾーンデータと「serial=6」のゾーンデータの差分データ、シリアル番号が「serial=6」のゾーンデータと「serial=7」のゾーンデータの差分データ、シリアル番号が「serial=7」のゾーンデータと「serial=8」のゾーンデータの差分データ、シリアル番号が「serial=8」のゾーンデータと「serial=9」のゾーンデータの差分データ、シリアル番号が「serial=9」のゾーンデータと「serial=10」のゾーンデータの差分データ、シリアル番号が「serial=10」のゾーンデータと「serial=11」のゾーンデータの差分データ)をスレーブサーバへ送信する。
【0006】
また、図11を用いて、図10に示す差分ゾーンデータを用いた同期方法において、差分データを要約する場合の一例を説明する。図11に示すように、DDNSクライアントによりゾーンデータ動的な更新があるたびに、マスターサーバは差分データを蓄積するが、必要に応じて差分データを要約しておく(図11の(1)参照)。ここで、要約とは、時系列順に整理された差分データにおいて、先に発生した差分データ(更新部分)が、後に発生した差分データにより取り消しになるなど、先に発生した差分データが不要となった場合に、その差分データを削除する処理のことである。例えば、図11に示すように、マスターサーバは、先に発生した差分データである、シリアル番号が「serial=3」でホスト名「BBBB.TEST.AD.JP」の差分データが、後に発生した差分データである、シリアル番号が「serial=4」のホスト名「BBBB.TEST.AD.JP」に関する差分データにより、不要なデータとなった場合には、先に発生した差分データである、シリアル番号が「serial=3」でホスト名「BBBB.TEST.AD.JP」の差分データを削除する。続いて、マスターサーバは、図10と同様に、スレーブサーバに対して、更新があったことを通知し、スレーブサーバから差分データの転送要求を受信すると、要約した差分データをスレーブサーバへ送信する(図11の(2)参照)。スレーブサーバは、マスターサーバから、要約された差分データを受信するので、不要な差分データを反映させる必要がない(図11の(3)参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】RFC1995,「Incremental Zone Transfer in DNS」,M.Ohta,Tokyo Institute of Technology,August 1996
【非特許文献1】RFC1996,「A Mechanism for Prompt Notification of Zone Changes」,P Vixie,ISC,August 1996
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図12に、図10に示す差分ゾーンデータを用いた同期方法における問題点を示す。図12は、図10に示す差分ゾーンデータを用いた同期方法における問題点を示す図である。図10に示す差分ゾーンデータを用いた同期方法では、差分データを転送することができるデータのサイズに上限があるので、差分データが、この上限を超えてしまった場合には、図12に示すように、差分データを転送できないという問題がある。なお、差分データを転送できない場合には、図12に示すように、マスターサーバからスレーブサーバに対して全てのゾーンデータをまとめて転送する完全ゾーン転送を実行することになるので、転送されるゾーンデータのサイズが大きい場合、スレーブサーバ側での同期に時間を要する。この結果、DNSクライアントが最新のゾーンデータを参照するまでに時間がかかってしまうという事態に陥る可能性もある。
【0009】
図13に、図11に示す差分ゾーンデータを用いた同期方法における問題点を示す。図13は、図11に示す差分ゾーンデータを用いた同期方法における問題点を示す図である。図11に示す差分ゾーンデータを用いた同期方法では、マスターサーバに蓄積されている差分データの数が膨大となると、マスターサーバにおいて、差分データの要約を行うためのデータの検出や照合の処理に時間を要するので、DDNSの更新処理のスループットに影響を及ぼすという問題がある(図13の(1)、(2)参照)。また、差分データの要約を行うためのデータの検出や照合の処理に時間を要する結果、マスターサーバからスレーブサーバへの更新通知の送信が遅れたり、スレーブサーバからの差分データの転送要求に対するマスターサーバの応答性能が低下したり、といった事態に陥る可能性もある(図13の(3)参照)。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ドメイン名とIPアドレスとの対応付け情報をDNSサーバ間で同期させる処理をできるだけ迅速に行うことが可能なデータ管理システム、データ管理装置、データ管理方法およびデータ管理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、ドメイン名とIPアドレスとの対応付け情報を含むデータ集合の原本を管理する第1のデータ管理装置と、前記データ集合の複製を管理する第2のデータ管理装置とを有するデータ管理システムであって、前記第1のデータ管理装置は、更新前の前記データ集合に含まれる対応付け情報と更新後の前記データ集合に含まれる対応付け情報との差分である差分データを、所定のサイズを有するデータブロックごとに記憶する記憶部と、前記データ集合の更新があった場合に、当該更新により発生した差分データと、前記記憶部に既存のデータブロックの中で最新のデータブロック内に格納済みである差分データとの合計サイズを算出し、算出した合計サイズが前記所定のサイズよりも大きいか否かを判定する判定部と、前記判定部により前記合計サイズが前記所定のサイズよりも大きいものと判定された場合には、前記記憶部に新たなデータブロックを生成し、生成した新たなデータブロックに前記更新により発生した差分データを格納する一方で、前記判定部により前記合計サイズが前記所定のサイズ以下であると判定された場合には、前記記憶部に既存のデータブロックの中で最新のデータブロックに前記更新により発生した差分データを格納するデータ管理部と、前記第2のデータ管理装置に対して、前記データ集合の更新があった旨の通知を送信する送信部と、前記第2のデータ管理装置から前記通知に応じた転送要求を受信した場合に、前記第2のデータ管理装置に対して、前記記憶部に記憶されている差分データをデータブロック単位で転送する転送部とを有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、ドメイン名とIPアドレスとの対応付け情報を含むデータ集合の原本を管理するデータ管理装置であって、更新前の前記データ集合に含まれる対応付け情報と更新後の前記データ集合に含まれる対応付け情報との差分である差分データを、所定のサイズを有するデータブロックごとに記憶する記憶部と、前記データ集合の更新があった場合に、当該更新により発生した差分データと、前記記憶部に既存のデータブロックの中で最新のデータブロック内に格納済みである差分データとの合計サイズを算出し、算出した合計サイズが前記所定のサイズよりも大きいか否かを判定する判定部と、前記判定部により前記合計サイズが前記所定のサイズよりも大きいものと判定された場合には、前記記憶部に新たなデータブロックを生成し、生成した新たなデータブロックに前記更新により発生した差分データを格納する一方で、前記判定部により前記合計サイズが前記所定のサイズ以下であると判定された場合には、前記記憶部に既存のデータブロックの中で最新のデータブロックに前記更新により発生した差分データを格納するデータ管理部と、前記データ集合の複製を管理するデータ管理装置に対して、前記記憶部に記憶されている差分データをデータブロック単位で転送する転送部とを有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、ドメイン名とIPアドレスとの対応付け情報を含むデータ集合の原本を管理する第1のデータ管理装置と、前記データ集合の複製を管理する第2のデータ管理装置とを有するデータ管理システムで実行されるデータ管理方法であって、前記第1のデータ管理装置が、前記データ集合の更新があった場合に、当該更新により発生した差分データと、当該更新前の前記データ集合に含まれる対応付け情報と当該更新後の前記データ集合に含まれる対応付け情報との差分である差分データを所定のサイズを有するデータブロックごとに記憶する記憶部に既存のデータブロックの中で最新のデータブロック内に格納済みである差分データとの合計サイズを算出し、算出した合計サイズが前記所定のサイズよりも大きいか否かを判定する判定工程と、前記第1のデータ管理装置が、前記判定工程により前記合計サイズが前記所定のサイズよりも大きいものと判定された場合には、前記記憶部に新たなデータブロックを生成し、生成した新たなデータブロックに前記更新により発生した差分データを格納する一方で、前記判定工程により前記合計サイズが前記所定のサイズ以下であると判定された場合には、前記記憶部に既存のデータブロックの中で最新のデータブロックに前記更新により発生した差分データを格納するデータ管理工程と、前記第1のデータ管理装置が、前記第2のデータ管理装置に対して、前記データ集合の更新があった旨の通知を送信する送信工程と、前記第1のデータ管理装置が、前記第2のデータ管理装置から前記通知に応じた転送要求を受信した場合に、前記第2のデータ管理装置に対して、前記記憶部に記憶されている差分データをデータブロック単位で転送する転送工程とを含むことを特徴とする。
【0014】
ドメイン名とIPアドレスとの対応付け情報を含むデータ集合の原本を管理するデータ管理装置が実行するデータ管理方法であって、前記データ集合の更新があった場合に、当該更新により発生した差分データと、当該更新前の前記データ集合に含まれる対応付け情報と当該更新後の前記データ集合に含まれる対応付け情報との差分である差分データを所定のサイズを有するデータブロックごとに記憶する記憶部に既存のデータブロックの中で最新のデータブロック内に格納済みである差分データとの合計サイズを算出し、算出した合計サイズが前記所定のサイズよりも大きいか否かを判定する判定工程と、前記判定工程により前記合計サイズが前記所定のサイズよりも大きいものと判定された場合には、前記記憶部に新たなデータブロックを生成し、生成した新たなデータブロックに前記更新により発生した差分データを格納する一方で、前記判定工程により前記合計サイズが前記所定のサイズ以下であると判定された場合には、前記記憶部に既存のデータブロックの中で最新のデータブロックに前記更新により発生した差分データを格納するデータ管理工程と、前記データ集合の複製を管理する第2のデータ管理装置に対して、前記記憶部に記憶されている差分データをデータブロック単位で転送する転送工程とを含むことを特徴とする。
【0015】
ドメイン名とIPアドレスとの対応付け情報を含むデータ集合の原本を管理するデータ管理装置に実行させるためのデータ管理プログラムであって、前記データ集合の更新があった場合に、当該更新により発生した差分データと、当該更新前の前記データ集合に含まれる対応付け情報と当該更新後の前記データ集合に含まれる対応付け情報との差分である差分データを所定のサイズを有するデータブロックごとに記憶する記憶部に既存のデータブロックの中で最新のデータブロック内に格納済みである差分データとの合計サイズを算出し、算出した合計サイズが前記所定のサイズよりも大きいか否かを判定する判定手順と、前記判定手順により前記合計サイズが前記所定のサイズよりも大きいものと判定された場合には、前記記憶部に新たなデータブロックを生成し、生成した新たなデータブロックに前記更新により発生した差分データを格納する一方で、前記判定手順により前記合計サイズが前記所定のサイズ以下であると判定された場合には、前記記憶部に既存のデータブロックの中で最新のデータブロックに前記更新により発生した差分データを格納するデータ管理手順と、前記データ集合の複製を管理する第2のデータ管理装置に対して、前記記憶部に記憶されている差分データをデータブロック単位で転送する転送手順とを実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ドメイン情報とアドレス情報との対応付け情報をDNSサーバ間で同期させる処理をできるだけ迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、実施例1に係るデータ管理システムの構成例を示す図である。
【図2】図2は、実施例1に係るデータ管理システムの処理の概要を示す図である。
【図3】図3は、実施例1に係るデータ管理システムの処理の概要を示す図である。
【図4】図4は、実施例1に係るデータ管理システムの処理の概要を示す図である。
【図5】図5は、実施例1に係るデータ管理システムにおけるマスターサーバによる処理の流れを示す図である。
【図6】図6は、実施例1に係るデータ管理システムにおけるマスターサーバによる処理の流れを示す図である。
【図7】図7は、実施例1に係る効果を説明するための図である。
【図8】図8は、実施例1に係る効果を説明するための図である。
【図9】図9は、実施例で説明した処理と同様の機能を実現させるためのプログラムを実行するコンピュータの一例を示す図である。
【図10】図10は、差分ゾーンデータを用いた同期管理方法の一例を示す図である。
【図11】図11は、差分ゾーンデータを用いた同期管理方法の一例を示す図である。
【図12】図12は、図10に示す差分ゾーンデータを用いた同期方法における問題点を示す図である。
【図13】図13は、図11に示す差分ゾーンデータを用いた同期方法における問題点を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照しつつ、本願にかかるデータ管理システム、データ管理装置、データ管理方法およびデータ管理プログラムの実施例を説明する。後述する各実施例は一実施形態にすぎず、本願にかかるデータ管理システム、データ管理装置、データ管理方法およびデータ管理プログラムの実施形態を限定するものではない。また、後述する各実施例は処理内容に矛盾を生じさせない範囲で適宜組み合わせることもできる。
【実施例1】
【0019】
[データ管理システムの概要および特徴(実施例1)]
実施例1に係るデータ管理システムの概要および特徴を説明する。実施例1に係るデータ管理システムは、ドメイン名とIPアドレスとの対応付け情報を含むゾーンデータの原本を管理する第1のデータ管理装置と、前記ゾーンデータの複製を管理する第2のデータ管理装置とを有する。そして、実施例1に係るデータ管理システムは、ドメイン情報とアドレス情報との対応付け情報をDNSサーバ間で同期させる処理をできるだけ迅速に行うことができる点に主たる特徴がある。
【0020】
すなわち、第1のデータ管理装置は、更新前のデータ集合(ドメイン管理ゾーンごとに集約されたドメイン名とIPアドレスとの対応付け情報の集合)に含まれる対応付け情報と更新後のデータ集合に含まれる対応付け情報との差分である差分データを、所定のサイズを有するデータブロックごとに記憶する記憶部を有し、データ集合の更新があった場合に、当該更新により発生した差分データと、記憶部に既存のデータブロックの中で最新のデータブロック内に格納済みである差分データとの合計サイズを算出し、算出した合計サイズが前記所定のサイズよりも大きいか否かを判定する。続いて、第1のデータ管理装置は、合計サイズが所定のサイズよりも大きいものと判定された場合には、記憶部に新たなデータブロックを生成し、生成した新たなデータブロックに、更新により発生した差分データを格納する。一方で、第1のデータ管理装置は、合計サイズが所定のサイズ以下であると判定された場合には、記憶部に既存のデータブロックの中で最新のデータブロックに、更新により発生した差分データを格納する。そして、第1のデータ管理装置は、第2のデータ管理装置に対してデータ集合の更新があった旨の通知を送信し、第2のデータ管理装置から通知に応じた転送要求を受信した場合に、第2のデータ管理装置に対して、記憶部に記憶されている差分データをデータブロック単位で転送する。
【0021】
このようなことから、実施例1に係るデータ管理装置は、ゾーンデータの更新より発生する対応付け情報の差分データを、所定のサイズのデータブロック単位で記録管理するので、差分データが転送できないという事態が発生することを防止しつつ、転送可能な範囲で最大限に記録された差分データの転送が可能であり、ドメイン名とIPアドレスとの対応付け情報を同期させる処理をできるだけ迅速に行うことができる。
【0022】
[データ管理システムの構成(実施例1)]
以下の実施例1では、ドメイン名と、このドメイン名に割り当てられたIP(Internet Protocol)アドレスとの対応付け情報を含むゾーンデータを管理するDNS(Domain Name System)サーバを、実施例1に係るデータ管理システムに実装される第1および第2のデータ管理装置として説明する。
【0023】
図1は、実施例1に係るデータ管理システムの構成例を示す図である。図1に示すように、実施例1に係るデータ管理システムは、DDNS(Dynamic DNS)クライアント10と、DNSクライアント20と、マスターサーバ100と、スレーブサーバ200とを有する。そして、このデータ管理システムでは、ネットワーク1を介して、DDNSクライアント10とマスターサーバ100とが相互に通信可能であり、マスターサーバ100とスレーブサーバ200とが相互に通信可能であり、スレーブサーバ200とDNSクライアント20とが相互に通信可能である。
【0024】
DDNSクライアント10は、上述の対応付け情報を自動更新する機能部(ソフトウェア)であり、ユーザ端末などに搭載される。DDNSクライアント10は、自己が搭載される装置の接続IPアドレスを一定間隔で監視し、IPアドレスが変更されるたびに、マスターサーバ100に登録されている、ホスト名とIPアドレスとの対応付け情報を動的に更新する処理を実行することで、常時接続環境を利用するユーザが一意なホスト名を利用することを可能とする。例えば、DDNSクライアント10は、上述の対応付け情報の更新があると、更新された対応付け情報をマスターサーバ100に送信する。
【0025】
DNSクライアント20は、スレーブサーバ200に登録されている上述の対応付け情報を利用して、ドメイン名に対応するIPアドレスを解決する機能部(ソフトウェア)であり、ユーザ端末などに搭載される。例えば、DNSクライアント20は、スレーブサーバ200に対し、クエリとしてドメイン名を送信し、このドメイン名に対応するIPアドレスをDNSクライアント20から受信する。
【0026】
マスターサーバ100は、上述の対応付け情報を少なくとも1つ以上含むデータ集合であるゾーンデータの原本を管理するDNSサーバである。また、マスターサーバ100は、更新前のゾーンデータに含まれる対応付け情報と更新後のゾーンデータに含まれる対応付け情報との差分である差分データを管理する。なお、差分データには、更新前のゾーンデータには含まれていない、新規に追加された対応付け情報や変更された対応付け情報、削除された対応付け情報など、対応付け情報に関する更新の履歴が列挙された状態にある。
【0027】
ここで、マスターサーバ100におけるゾーンデータの管理方法について説明する。マスターサーバ100は、各ユーザ端末などに搭載されたDDNSクライアント10から、対応付け情報の更新(更新されたドメイン名とIPアドレスの対が列挙された変更履歴データ)を受信すると、所定のリフレッシュタイミングでドメインの管理範囲であるゾーンごとに集約し、更新されたゾーンデータとして管理する。また、マスターサーバ100には、ゾーンデータに対して一意なシリアル番号(例えば、自然数)を付与して時系列で管理する。例えば、シリアル番号として数字を用いた場合には、シリアル番号が大きいほど、時系列の新しい世代の情報となる。また、ゾーンデータの中に複数の対応付け情報が含まれる場合には、ゾーンデータに付与されたシリアル番号は、ゾーンデータの中に格納されている全ての対応付け情報(ドメイン名とIPアドレスとの対のそれぞれ)についても有効な値となる。なお、差分データ記憶部110は、シリアル番号の代わりに、例えば、対応付け情報の受信時刻を対応付け情報に関連付けて記憶するようにしてもよい。
【0028】
図1に示すように、マスターサーバ100は、差分データ記憶部110と、差分データ管理部120と、差分データ転送部130とを有する。
【0029】
差分データ記憶部110は、更新前のゾーンデータに含まれる対応付け情報と更新後のゾーンデータに含まれる対応付け情報との差分である差分データを、所定のサイズを有するデータブロックごとに記憶する。データブロックのサイズは、例えば、UDP(User Datagram Protocol)パケットのデータサイズを適用し、データブロック単位での差分データの転送に寄与する。
【0030】
差分データ管理部120は、データブロックのサイズの上限を超えない範囲で、更新前のゾーンデータに含まれる対応付け情報と更新後のゾーンデータに含まれる対応付け情報との差分である差分データを格納する。具体的に説明すると、差分データ管理部120は、ゾーンデータの更新に応じて発生した差分データを抽出し、抽出した差分データと、差分データ記憶部110に既存のデータブロックの中で最新のデータブロック内に格納済みである差分データとの合計サイズを算出し、算出した合計サイズが、データブロックに適用された所定のサイズよりも大きいか否かを判定する。判定の結果、所定のサイズよりも大きいものと判定された場合には、差分データ記憶部110に新たなデータブロックを生成し、生成した新たなデータブロックに、ゾーンデータの更新に応じて新たに抽出した差分データを格納する。一方、差分データ管理部120は、所定のサイズ以下であると判定された場合には、差分データ記憶部110に既存のデータブロックの中で最新のデータブロックに、ゾーンデータの更新に応じて新たに抽出した差分データを格納する。ここで、既存のデータブロックとは、ゾーンデータの更新に応じて新たに抽出した差分データを格納するために、差分データ記憶部110に既に生成された状態にあるデータブロックである。また、最新のデータブロックとは、差分データ記憶部110に既に生成された状態にあるデータブロックの中で、ゾーンデータの更新に応じて抽出した最新の差分データ(シリアル番号が最大である差分データ)が格納されているデータブロックである。
【0031】
また、差分データ管理部120は、差分データ記憶部110の最新のデータブロックに記録された差分データの中で、同一のドメイン名を有する差分データについては、時系列が新しい差分データによって打ち消される古い差分データを削除することにより、同一のドメイン名を有する差分データを要約する(同一のドメイン名を有する差分データのデータ量を圧縮する)。例えば、差分データの中に、「BBBB.TEST.AD.JP(ドメイン名):100.100.100.33(IPアドレス):serial=33(シリアル番号)」と、「BBBB.TEST.AD.JP(ドメイン名):134.134.134.34(IPアドレス):serial=34(シリアル番号)」が含まれているとする。この場合、差分データ管理部120は、シリアル番号が大きい方のデータを時系列が新しいデータと判定して、シリアル番号が「34」である「BBBB.TEST.AD.JP:134.134.134.34:serial=34」を時系列が最新のデータとして残し、シリアル番号が「33」である「BBBB.TEST.AD.JP:100.100.100.33:serial=33」を削除することにより、同一のドメイン名を有する差分データを要約する。なお、差分データ管理部120は、差分データ記憶部110において、シリアル番号の代わりに、例えば、対応付け情報の更新を受信した受信時刻、または対応付け情報の更新を集約したリフレッシュタイミングに対応する時刻などが記憶される場合には、これらの時刻に基づいて、時系列が最新のデータを判定する。
【0032】
差分データ転送部130は、上述の差分データをスレーブサーバ200に転送する。例えば、差分データ転送部130は、上述の差分データを格納した後、対応付け情報の更新があった旨の通知をスレーブサーバ200に送信する。そして、差分データ転送部130は、スレーブサーバ200から転送要求を受信すると、差分データ記憶部110の最新のデータブロックに記録されている差分データを、データブロック単位でスレーブサーバ200に転送する。
【0033】
スレーブサーバ200は、上述のゾーンデータの複製を管理するDNSサーバであり、差分データ記憶部210と、差分データ取得部220と、データ提供部230とを有する。
【0034】
差分データ記憶部210は、マスターサーバ100から受信した差分データをデータブロックごとに記憶する。
【0035】
差分データ取得部220は、マスターサーバ100から更新通知を受信すると、差分データの転送要求をマスターサーバ100に送信する。そして、差分データ取得部220は、マスターサーバ100から差分データを受信すると、マスターサーバ100の差分データ記憶部110に設けられたものと同一のサイズのデータブロックに差分データを格納する。なお、差分データ取得部220は、差分データ格納後、差分データ記憶部220の最新のデータブロックに記録されている差分データを、ゾーンデータに直ちに反映する。
【0036】
データ提供部230は、DNSクライアント20から、ドメイン名を含む検索クエリを受信すると、このドメイン名に対応するIPアドレスをゾーンデータの中から取得し、DNSクライアント20に返信する。
【0037】
[実施例1に係るデータ管理システムの処理の概要]
図2〜4を用いて、実施例1に係るデータ管理システムの処理の概要を説明する。図2〜図4は、実施例1に係るデータ管理システムの処理の概要を示す図である。
【0038】
図2に、マスターサーバ100による差分データの記録管理方法を示す。差分データ管理部120は、図2に示すように、更新前のゾーンデータに含まれる対応付け情報と更新後のゾーンデータに含まれる対応付け情報との差分である差分データを、データブロックのサイズを超えない範囲内で、データブロックごとに管理する。例えば、差分データ管理部120は、差分データブロック1に、serial=1〜serial=11までの差分データを管理し、差分データブロック2に、serial=11〜serial=21までの差分データを管理し、差分データブロック3に、serial=21〜serial=31までの差分データを管理し、差分データブロック4に、serial=31〜serial=41までの差分データを管理する。なお、差分データとは、シリアル番号「1」が付与されたゾーンデータに含まれる対応付け情報と、シリアル番号「2」が付与されたゾーンデータに含まれる対応付け情報との差分、すなわち、対応付け情報が新規に追加、変更、削除などが行われ、シリアル番号「2」のゾーンデータに新たに含まれることとなった対応付け情報に該当する。よって、serial=1〜serial=11までの差分データとは、serial=1のゾーンデータとserial=2のゾーンデータとの差分データ、serial=2のゾーンデータとserial=3のゾーンデータとの差分データ、serial=3のゾーンデータとserial=4のゾーンデータとの差分データ、serial=4のゾーンデータとserial=5のゾーンデータとの差分データ、serial=5のゾーンデータとserial=6のゾーンデータとの差分データ、serial=6のゾーンデータとserial=7のゾーンデータとの差分データ、serial=7のゾーンデータとserial=8のゾーンデータとの差分データ、serial=8のゾーンデータとserial=9のゾーンデータとの差分データ、serial=9のゾーンデータとserial=10のゾーンデータとの差分データ、serial=10のゾーンデータとserial=11のゾーンデータとの差分データ、のデータ集合である。なお、serial=11〜serial=21までの差分データ、serial=21〜serial=31までの差分データ、serial=31〜serial=41までの差分データも、同様のデータ集合である。また、マスターサーバ100は、差分データを最新データブロックに追加した場合、データブロックのサイズを超えてしまう場合には、新規にデータブロックを生成し、このデータブロック差分データを格納する。
【0039】
図3に、例えば、マスターサーバ100からスレーブサーバ200への完全ゾーンデータ転送中に、ゾーンデータの更新(差分データの記録)があった場合の差分データの転送方法を示す。差分データ転送部130は、図3に示すように、完全ゾーンデータ転送の完了後、更新通知をスレーブサーバ200に送信する。そして、差分データ転送部130は、スレーブサーバ200から転送要求を受信すると、完全ゾーンデータ転送中に、差分データ記憶部110に格納された差分データを、データブロック単位でスレーブサーバ200に順次転送する。例えば、完全ゾーンデータ転送中に、serial=1〜serial=11の差分データ、serial=11〜serial=21の差分データ、serial=21〜serial=31の差分データ、serial=31〜serial=41の差分データが、差分データブロック1〜4にそれぞれ記録された場合には、マスターサーバ100は、差分データブロック1の差分データ、差分データブロック2の差分データ、差分データブロック3の差分データ、差分データブロック4の差分データを、スレーブサーバ200に順次転送する。
【0040】
図4に、マスターサーバ100における差分データの要約方法を示す。例えば、差分データ管理部120は、差分データ記憶部110の最新のデータブロックに記録された同一のドメイン名を有する差分データについては、時系列が最新のデータのみを残して他のデータを削除することにより、同一のドメイン名を有する差分データを要約する。例えば、差分データ管理部120は、図4に示すように、最新のデータブロックである差分データブロック4に記録された差分データとして、「AAAA.TEST.AD.JP(ドメイン名):100.100.100.32(IPアドレス):serial=32(シリアル番号)」、「BBBB.TEST.AD.JP(ドメイン名):100.100.100.33(IPアドレス):serial=33(シリアル番号)」、「BBBB.TEST.AD.JP(ドメイン名):134.134.134.34(IPアドレス):serial=34(シリアル番号)」の3つのデータが含まれているとする。なお、差分データの1つである「AAAA.TEST.AD.JP:100.100.100.32:serial=32」は、シリアル番号「31」が付与されたゾーンデータとシリアル番号「32」が付与されたゾーンデータとの差分であり、「BBBB.TEST.AD.JP:100.100.100.33:serial=33」は、シリアル番号「32」が付与されたゾーンデータとシリアル番号「33」が付与されたゾーンデータとの差分であり、「BBBB.TEST.AD.JP:134.134.134.34:serial=34」は、シリアル番号「33」が付与されたゾーンデータとシリアル番号「34」が付与されたゾーンデータとの差分である。差分データ管理部120は、図4に示す差分データのうち、シリアル番号が「33」と「34」の対応付け情報の含まれるドメイン名が「BBBB.TEST.AD.JP」で同一であるので、差分データ管理部120は、シリアル番号が「34」である「BBBB.TEST.AD.JP:134.134.134.34:serial=34」を時系列が最新のデータとして残し、シリアル番号が「33」である「BBBB.TEST.AD.JP:100.100.100.33:serial=33」を削除することにより、同一のドメイン名を有する差分データを要約する(同一のドメイン名を有する差分データのデータ量を圧縮する)。
【0041】
[マスターサーバ100による処理の流れ]
次に、図5および図6を用いて、実施例1に係るデータ管理システムにおけるマスターサーバ100による処理の流れを説明する。図5および図6は、実施例1に係るデータ管理システムにおけるマスターサーバによる処理の流れを示す図である。
【0042】
まず、図5を用いて、マスターサーバ100による差分データ転送処理の流れを説明する。図5に示すように、マスターサーバ100は、ゾーンデータの更新判定を実行する(S101)。マスターサーバ100は、「ゾーンデータに更新あり」の判定結果が導出されるまで(S101、No)、ステップS101の判定を繰り返す。
【0043】
そして、マスターサーバ100は、「ゾーンデータに更新あり」の判定結果を導出した場合には(S101、Yes)、所定のリフレッシュタイミングで、ゾーンごとに、更新情報(更新された対応付け情報)を集約し(S102)、差分データ追加処理を実行する(S103)。なお、マスターサーバ100は、DDNSクライアント10から更新に係る対応付け情報を受信した場合には、「ゾーンデータに更新あり」の判定結果を導出する。
【0044】
続いて、マスターサーバ100は、スレーブサーバ200に、ゾーンデータに更新があった旨の通知(更新通知)を送信する(S104)。続いて、マスターサーバ100は、スレーブサーバ200からの転送要求に応じて、データブロック単位で差分データをスレーブサーバ200に送信し(S105)、未送信の差分データ(データブロック)があるかどうかを判定する(S106)。
【0045】
判定の結果、未送信の差分データがある場合には(S106、Yes)、マスターサーバ100は、上述したステップS104に戻り、スレーブサーバ200に更新通知を送信し、未送信の差分データの送信を実行する。一方、判定の結果、未送信の差分データがない場合には(S106、No)、マスターサーバ100は、処理を終了する。
【0046】
次に、図6を用いて、マスターサーバ100による差分データ追加処理(図5のステップS103)の流れを説明する。図6に示すように、マスターサーバ100は、ゾーンデータの更新により発生した差分データを抽出する(S201)。
【0047】
続いて、マスターサーバ100は、抽出した差分データを最新のデータブロックに追加した場合の最新のデータブロック内のデータの合計サイズを計算する(S202)。続いて、マスターサーバ100は、算出した合計サイズが、上限値であるデータブロックのサイズよりも大きいか否かを判定する(S203)。
【0048】
判定の結果、合計サイズが上限値以下であるものと判定された場合には(S203、No)、マスターサーバ100は、最新のデータブロックに差分データを追加する(S204)。一方、判定の結果、合計サイズが上限値よりも大きいものと判定された場合には(S203、Yes)、マスターサーバ100は、現在の最新データブロックを凍結して新たなデータブロックを生成し、生成した新規のデータブロックに差分データを追加する(S205)。
【0049】
続いて、マスターサーバ100は、最新のデータブロック内のデータを要約可能であるか否かを判定する(S206)。例えば、マスターサーバ100は、最新のデータブロックに追加された対応付け情報の中に、ドメイン名が同一の対応付け情報がある場合には、要約可能である旨の判定結果を導出する。
【0050】
判定の結果、最新のデータブロック内のデータが要約可能であるものと判定された場合には(S206、Yes)、マスターサーバ100は、最新データブロック内のデータを要約し(S207)、図6の処理を終了し、図5のステップS104の処理に移る。一方、判定の結果、最新のデータブロック内のデータが要約不可能であるものと判定された場合には(S206、No)、マスターサーバ100は、そのまま図6の処理を終了し、図5のステップS104の処理に移る。
【0051】
[実施例1による効果]
上述してきたように、実施例1に係るデータ管理システムでは、マスターサーバ100が、ゾーンデータの更新により発生する差分データ(ドメイン名とIPアドレスとの対応付け情報)を、スレーブサーバ200へ転送可能なサイズのデータブロックごとに記録して管理する。したがって、実施例1に係るデータ管理システムでは、差分データが転送できないという事態が発生することを防止しつつ、転送可能な範囲で最大限に記録された差分データを転送でき、メイン情報とアドレス情報との対応付け情報を同期させる処理をできるだけ迅速に行うことができる。
【0052】
また、図7に示すように、スレーブサーバ200の再起動などにより、マスターサーバ100からスレーブサーバ200に対して全ゾーンデータを転送する完全ゾーン転送の実行中に、マスターサーバ100に蓄積された差分データが転送可能なサイズを超えてしまった場合には、完全ゾーン転送後に差分データのみ転送することができないので、再び、完全ゾーン転送を実行する必要があった。これに対して、実施例1に係るデータ管理システムでは、図8に示すように、マスターサーバ100が、ゾーンデータの更新により発生する差分データを、スレーブサーバ200へ転送可能なサイズのデータブロックごとに記録して管理するので、完全ゾーン転送後に差分データのみ転送することが可能となる。この結果、スレーブサーバ200の再起動などにより、マスターサーバ100からスレーブサーバ200に対する完全ゾーン転送の実行中にゾーンデータの更新があった場合であっても、ドメイン名とIPアドレスとの対応付け情報をDNSサーバ間で迅速に同期させることができる。なお、図7および図8は、実施例1に係る効果を説明するための図である。
【0053】
また、実施例1に係るデータ管理システムでは、マスターサーバ100が、最新のデータブロックに記録された差分データを要約するので、要約処理に要する負荷や時間をできるだけ抑えることができ、DDNSクライアント10による更新処理(ゾーンデータの更新)のスループットに悪影響を与えることがなく、結果として、ドメイン名とIPアドレスとの対応付け情報をDNSサーバ間で迅速に同期させることができる。
【0054】
なお、上述した実施例1において、差分データ記憶部110のデータブロックを、差分データをスレーブサーバ200側に転送済みのものから順に削除することにより、差分データ記憶部110の記憶領域を圧迫することを防止することもできる。また、上述した実施例1において、差分データ記憶部110のデータブロックの中から、差分データのレコードのみを削除してデータブロックを再利用することもできる。
【実施例2】
【0055】
以下、本発明にかかるデータ管理システム、データ管理装置、データ管理方法およびデータ管理プログラムのその他の実施形態として実施例2を説明する。
【0056】
(1)装置構成等
実施例1に係るデータ管理システムの構成、例えば、図1に示すマスターサーバ100の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。
【0057】
例えば、図1に示すマスターサーバ100の差分データ管理部120と差分データ転送部130とを、機能的または物理的に統合した構成としてもよい。このように、図1に示すデータ管理システムの各構成要素の分散または統合の具体的形態は、図1に示すものに限られず、各構成要素の全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0058】
(2)データ管理方法
実施例1に係るデータ管理システムにより、以下のようなデータ管理方法が実現される。例えば、ドメイン名とIPアドレスとの対応付け情報を含むデータ集合の原本を管理する第1のデータ管理装置と、前記データ集合の複製を管理する第2のデータ管理装置とを有するデータ管理システムで実行されるデータ管理方法であって、前記第1のデータ管理装置が、前記データ集合の更新があった場合に、当該更新により発生した差分データと、当該更新前の前記データ集合に含まれる対応付け情報と当該更新後の前記データ集合に含まれる対応付け情報との差分である差分データを所定のサイズを有するデータブロックごとに記憶する記憶部に既存のデータブロックの中で最新のデータブロック内に格納済みである差分データとの合計サイズを算出し、算出した合計サイズが前記所定のサイズよりも大きいか否かを判定する判定工程と(例えば、図6のステップS203など参照)、前記第1のデータ管理装置が、前記判定工程により前記合計サイズが前記所定のサイズよりも大きいものと判定された場合には、前記記憶部に新たなデータブロックを生成し、生成した新たなデータブロックに前記更新により発生した差分データを格納する一方で、前記判定工程により前記合計サイズが前記所定のサイズ以下であると判定された場合には、前記記憶部に既存のデータブロックの中で最新のデータブロックに前記更新により発生した差分データを格納するデータ管理工程と(例えば、図6のステップS204およびステップS205など参照)、前記第1のデータ管理装置が、前記第2のデータ管理装置に対して、前記データ集合の更新があった旨の通知を送信する送信工程と(例えば、図5のステップS104など参照)、前記第1のデータ管理装置が、前記第2のデータ管理装置から前記通知に応じた転送要求を受信した場合に、前記第2のデータ管理装置に対して、前記記憶部に記憶されている差分データをデータブロック単位で転送する転送工程と(例えば、図5のステップS105など参照)、を含むデータ管理方法が実現される。
【0059】
(3)マスターサーバに所定の手順を実行させるプログラム
また、上述の実施例で説明した各種の処理(例えば、図5、6など)は、実施例1に係るデータ管理システムにマスターサーバ100として実装される、パーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータに、上述の実施例で説明した各種の処理と同様の処理機能を実現するための手順(プロセス)を実行させるためのプログラムをインストールすることにより実現することもできる。
【0060】
そこで、以下では、図9を用いて、上述の実施例で説明した各種の処理(例えば、図5、6など)と同様の機能を実現するコンピュータの一例を説明する。図9は、上述の実施例で説明した処理と同様の機能を実現させるためのプログラムを実行するコンピュータの一例を示す図である。
【0061】
図9に示すように、マスターサーバ100として実装されるコンピュータ300は、例えば、メモリ301と、CPU(Central Processing Unit)302を有する。また、コンピュータ300は、図9に示すように、ハードディスクドライブインタフェース303と、光ディスクドライブインタフェース304を有する。また、コンピュータ300は、図9に示すように、シリアルポートインタフェース305と、ビデオアダプタ306と、ネットワークインタフェース307を有する。そして、コンピュータ300は、これらの各部301〜307をバス308によって接続する。
【0062】
メモリ301は、図9に示すように、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含む。ROMは、例えば、BIOS(Basic Input Output System)等のブートプログラムを記憶する。ハードディスクドライブインタフェース303は、図9に示すように、ハードディスクドライブ309に接続される。光ディスクドライブインタフェース304は、図9に示すように、光ディスクドライブ310に接続される。例えば、光ディスクドライブ310には、光ディスク等の着脱可能な記憶媒体が挿入される。シリアルポートインタフェース305は、図9に示すように、例えば、マウス400およびキーボード500に接続される。ビデオアダプタ306は、図9に示すように、例えば、ディスプレイ600に接続される。
【0063】
ここで、図9に示すように、ハードディスクドライブ309は、例えば、OS(Operating System)、アプリケーションプログラム、プログラムモジュール、プログラムデータを記憶する。
【0064】
すなわち、上述したマスターサーバ100により実行される処理と同様の機能を実現するための所定の手順をコンピュータに実行させるプログラムは、コンピュータ300によって実行される指令が記述されたプログラムモジュールとして、例えばハードディスクドライブ309に記憶される。つまり、上述の実施例で説明した各種の処理(例えば、図5、6など)と同様の処理機能をマスターサーバ100としてのコンピュータ300に実現させるための手順が記述されたプログラムモジュールが、ハードディスクドライブ309に記憶される。このプログラムモジュールは、例えば、図1に示すマスターサーバ100の差分データ管理部120や差分データ転送部130などにより実行される手順(プロセス)に対応する。
【0065】
また、上述の実施例で説明した各種の処理(例えば、図5、6など)と同様の処理機能をマスターサーバ100としてのコンピュータ300に実現させるための手順が記述されたプログラムモジュールにより用いられるデータは、プログラムデータとして、例えばハードディスクドライブ309に記憶される。例えば、このプログラムデータは、例えば、図1に示すマスターサーバ100の差分データ記憶部110に記憶された各種データに対応する。
【0066】
そして、CPU302が、ハードディスクドライブ309に記憶されたプログラムモジュールやプログラムデータを必要に応じてRAMに読み出し、上述の実施例で説明した各種の処理(例えば、図6など)を実現するための手順を実行する。
【0067】
なお、上述の実施例で説明した各種の処理(例えば、図5、6など)と同様の処理をマスターサーバ100としてのコンピュータ300に実現させるために、コンピュータ300に実行させる手順が記述されたプログラムモジュールやプログラムデータは、ハードディスクドライブ309に記憶される場合に限られるものではなく、例えば、着脱可能な記憶媒体である光ディスクドライブ310等に記憶されていてもよい。この場合には、CPU302が、光ディスクドライブ310を介して、マスターサーバ100と同様の機能を有するプログラムモジュールやプログラムデータを読み出す。
【0068】
あるいは、上述の実施例で説明した各種の処理(例えば、図5、6など)と同様の処理機能をマスターサーバ100としてのコンピュータ300に実現させるための手順が記述されたプログラムモジュールやプログラムデータは、ネットワーク(LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)など)を介して接続された他のコンピュータに記憶されていてもよい。この場合には、CPU302が、ネットワークインタフェース307を介して、マスターサーバ100と同様の機能を有するプログラムモジュールやプログラムデータを他のコンピュータから読み出す。
【0069】
なお、プログラムによりCPU302が動作して各種処理を行う代わりに、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などの電子回路を用いて処理を行うこともできる。また、メモリ301として、フラッシュメモリ(flash memory)などを用いることもできる。
【符号の説明】
【0070】
10 DDNSクライアント
20 DNSクライアント
100 マスターサーバ
110 差分データ記憶部
120 差分データ管理部
130 差分データ転送部
200 スレーブサーバ
210 差分データ記憶部
220 差分データ取得部
230 データ提供部
300 コンピュータ
301 メモリ
302 CPU
303 ハードディスクドライブインタフェース
304 光ディスクドライブインタフェース
305 シリアルポートインタフェース
306 ビデオアダプタ
307 ネットワークインタフェース
308 バス
309 ハードディスクドライブ
310 光ディスクドライブ
400 マウス
500 キーボード
600 ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドメイン名とIPアドレスとの対応付け情報を含むデータ集合の原本を管理する第1のデータ管理装置と、前記データ集合の複製を管理する第2のデータ管理装置とを有するデータ管理システムであって、
前記第1のデータ管理装置は、
更新前の前記データ集合に含まれる対応付け情報と更新後の前記データ集合に含まれる対応付け情報との差分である差分データを、所定のサイズを有するデータブロックごとに記憶する記憶部と、
前記データ集合の更新があった場合に、当該更新により発生した差分データと、前記記憶部に既存のデータブロックの中で最新のデータブロック内に格納済みである差分データとの合計サイズを算出し、算出した合計サイズが前記所定のサイズよりも大きいか否かを判定する判定部と、
前記判定部により前記合計サイズが前記所定のサイズよりも大きいものと判定された場合には、前記記憶部に新たなデータブロックを生成し、生成した新たなデータブロックに前記更新により発生した差分データを格納する一方で、前記判定部により前記合計サイズが前記所定のサイズ以下であると判定された場合には、前記記憶部に既存のデータブロックの中で最新のデータブロックに前記更新により発生した差分データを格納するデータ管理部と、
前記第2のデータ管理装置に対して、前記データ集合の更新があった旨の通知を送信する送信部と、
前記第2のデータ管理装置から前記通知に応じた転送要求を受信した場合に、前記第2のデータ管理装置に対して、前記記憶部に記憶されている差分データをデータブロック単位で転送する転送部と
を有することを特徴とするデータ管理システム。
【請求項2】
前記データ管理部は、前記記憶部の最新のデータブロックに記録された複数の差分データの中で、同一のドメイン名を有する差分データについては、時系列が新しい差分データによって打ち消される古い差分データを削除することにより、前記最新のデータブロックに記録されたデータ量を圧縮することを特徴とする請求項1に記載のデータ管理システム。
【請求項3】
ドメイン名とIPアドレスとの対応付け情報を含むデータ集合の原本を管理するデータ管理装置であって、
更新前の前記データ集合に含まれる対応付け情報と更新後の前記データ集合に含まれる対応付け情報との差分である差分データを、所定のサイズを有するデータブロックごとに記憶する記憶部と、
前記データ集合の更新があった場合に、当該更新により発生した差分データと、前記記憶部に既存のデータブロックの中で最新のデータブロック内に格納済みである差分データとの合計サイズを算出し、算出した合計サイズが前記所定のサイズよりも大きいか否かを判定する判定部と、
前記判定部により前記合計サイズが前記所定のサイズよりも大きいものと判定された場合には、前記記憶部に新たなデータブロックを生成し、生成した新たなデータブロックに前記更新により発生した差分データを格納する一方で、前記判定部により前記合計サイズが前記所定のサイズ以下であると判定された場合には、前記記憶部に既存のデータブロックの中で最新のデータブロックに前記更新により発生した差分データを格納するデータ管理部と、
前記データ集合の複製を管理するデータ管理装置に対して、前記記憶部に記憶されている差分データをデータブロック単位で転送する転送部と
を有することを特徴とするデータ管理装置。
【請求項4】
前記データ管理部は、前記記憶部の最新のデータブロックに記録された複数の差分データの中で、同一のドメイン名を有する差分データについては、時系列が新しい差分データによって打ち消される古い差分データを削除することにより、前記最新のデータブロックに記録されたデータ量を圧縮することを特徴とする請求項3に記載のデータ管理装置。
【請求項5】
ドメイン名とIPアドレスとの対応付け情報を含むデータ集合の原本を管理する第1のデータ管理装置と、前記データ集合の複製を管理する第2のデータ管理装置とを有するデータ管理システムで実行されるデータ管理方法であって、
前記第1のデータ管理装置が、前記データ集合の更新があった場合に、当該更新により発生した差分データと、当該更新前の前記データ集合に含まれる対応付け情報と当該更新後の前記データ集合に含まれる対応付け情報との差分である差分データを所定のサイズを有するデータブロックごとに記憶する記憶部に既存のデータブロックの中で最新のデータブロック内に格納済みである差分データとの合計サイズを算出し、算出した合計サイズが前記所定のサイズよりも大きいか否かを判定する判定工程と、
前記第1のデータ管理装置が、前記判定工程により前記合計サイズが前記所定のサイズよりも大きいものと判定された場合には、前記記憶部に新たなデータブロックを生成し、生成した新たなデータブロックに前記更新により発生した差分データを格納する一方で、前記判定工程により前記合計サイズが前記所定のサイズ以下であると判定された場合には、前記記憶部に既存のデータブロックの中で最新のデータブロックに前記更新により発生した差分データを格納するデータ管理工程と、
前記第1のデータ管理装置が、前記第2のデータ管理装置に対して、前記データ集合の更新があった旨の通知を送信する送信工程と、
前記第1のデータ管理装置が、前記第2のデータ管理装置から前記通知に応じた転送要求を受信した場合に、前記第2のデータ管理装置に対して、前記記憶部に記憶されている差分データをデータブロック単位で転送する転送工程と
を含むことを特徴とするデータ管理方法。
【請求項6】
ドメイン名とIPアドレスとの対応付け情報を含むデータ集合の原本を管理するデータ管理装置が実行するデータ管理方法であって、
前記データ集合の更新があった場合に、当該更新により発生した差分データと、当該更新前の前記データ集合に含まれる対応付け情報と当該更新後の前記データ集合に含まれる対応付け情報との差分である差分データを所定のサイズを有するデータブロックごとに記憶する記憶部に既存のデータブロックの中で最新のデータブロック内に格納済みである差分データとの合計サイズを算出し、算出した合計サイズが前記所定のサイズよりも大きいか否かを判定する判定工程と、
前記判定工程により前記合計サイズが前記所定のサイズよりも大きいものと判定された場合には、前記記憶部に新たなデータブロックを生成し、生成した新たなデータブロックに前記更新により発生した差分データを格納する一方で、前記判定工程により前記合計サイズが前記所定のサイズ以下であると判定された場合には、前記記憶部に既存のデータブロックの中で最新のデータブロックに前記更新により発生した差分データを格納するデータ管理工程と、
前記データ集合の複製を管理する第2のデータ管理装置に対して、前記記憶部に記憶されている差分データをデータブロック単位で転送する転送工程と
を含むことを特徴とするデータ管理方法。
【請求項7】
ドメイン名とIPアドレスとの対応付け情報を含むデータ集合の原本を管理するデータ管理装置に実行させるためのデータ管理プログラムであって、
前記データ集合の更新があった場合に、当該更新により発生した差分データと、当該更新前の前記データ集合に含まれる対応付け情報と当該更新後の前記データ集合に含まれる対応付け情報との差分である差分データを所定のサイズを有するデータブロックごとに記憶する記憶部に既存のデータブロックの中で最新のデータブロック内に格納済みである差分データとの合計サイズを算出し、算出した合計サイズが前記所定のサイズよりも大きいか否かを判定する判定手順と、
前記判定手順により前記合計サイズが前記所定のサイズよりも大きいものと判定された場合には、前記記憶部に新たなデータブロックを生成し、生成した新たなデータブロックに前記更新により発生した差分データを格納する一方で、前記判定手順により前記合計サイズが前記所定のサイズ以下であると判定された場合には、前記記憶部に既存のデータブロックの中で最新のデータブロックに前記更新により発生した差分データを格納するデータ管理手順と、
前記データ集合の複製を管理する第2のデータ管理装置に対して、前記記憶部に記憶されている差分データをデータブロック単位で転送する転送手順と
を実行させることを特徴とするデータ管理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−109552(P2013−109552A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253552(P2011−253552)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】