データ送信装置およびデータ受信装置
【課題】同一送信信号内で、伝送容量の拡大と受信耐性の強化とを同時に実現可能なデータ送信装置を提供する。
【解決手段】複数N本(Nは2以上の整数)の送信アンテナ101,102からデータを送信するデータ送信装置100であって、主として移動受信用の送信信号を時空間符号化してN個のSTC信号を生成するSTC符号化部103と、主として固定受信用の空間分割多重するN個のSDM信号とSTC符号化部103からのN個のSTC信号とを合成するN個のマルチプレクサ104,105と、N個のマルチプレクサ104,105からの合成信号をそれぞれOFDM信号に変調するN個のOFDM変調部106,107と、を備え、N個のOFDM変調部106,107でそれぞれ変調されたOFDM信号から成るデータを、N本の送信アンテナ101,102から送信する。
【解決手段】複数N本(Nは2以上の整数)の送信アンテナ101,102からデータを送信するデータ送信装置100であって、主として移動受信用の送信信号を時空間符号化してN個のSTC信号を生成するSTC符号化部103と、主として固定受信用の空間分割多重するN個のSDM信号とSTC符号化部103からのN個のSTC信号とを合成するN個のマルチプレクサ104,105と、N個のマルチプレクサ104,105からの合成信号をそれぞれOFDM信号に変調するN個のOFDM変調部106,107と、を備え、N個のOFDM変調部106,107でそれぞれ変調されたOFDM信号から成るデータを、N本の送信アンテナ101,102から送信する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ送信装置およびデータ受信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日本の現行の地上デジタル放送方式であるISDB−T(Integrated Services Digital Broadcasting .Terrestrial)では、1つの放送波(チャンネル)に割り当てられる直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)された複数のサブキャリアを有する周波数帯域を13個のセグメントに分割し、そのうちの12セグメントを固定受信向けのハイビジョン放送や複数標準画質放送用とし、1セグメントを移動受信向け放送用として同時に送信している。
【0003】
一方、次世代の地上デジタル放送方式では、家庭等の固定受信向けに、従来のハイビジョンに代わり3Dハイビジョン放送やハイビジョンの16倍の解像度を有するスーパーハイビジョン等の更に情報量の多いサービスを提供することが求められている。同様に、移動受信向けには、ハイビジョン画質相当のサービスを提供することが求められている。
【0004】
このような無線によるデータ伝送容量の増大に応えるものとして、近年、複数の送受信アンテナを用いるMIMO(Multiple Input Multiple Output)システムが提案されている。MIMOを用いる伝送システムには、大別して、伝送容量を拡大するための空間分割多重(SDM:Space Division Multiplexing)、伝送耐性を向上させるための時空間符号(STC:Space Time Codes)等がある。さらに、STCとして、時空間ブロック符号(STBC:Space-Time Block Codes)や空間周波数ブロック符号(SFBC:Space-Frequency Block Codes)、時空間トレリス符号(STTC:Space-Time Trellis Codes)等が提案されている(例えば、非特許文献1,2参照)。
【0005】
SDMは、一般に、複数の送信/受信アンテナを用いて複数の伝送路で異なるデータを送受信することで、伝送容量を拡大することが可能である。したがって、放送においては、家庭等の固定受信向け放送に伝送容量を拡大する技術として期待される。また、STCは、複数の送信/受信アンテナにデータを分散させることで、受信時の安定化、高耐性化を図ることが可能である。したがって、放送においては、移動受信向け放送への応用が期待される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】A.van Zelst,”Implementation on a MIMO OFDM based wireless LAN system”,IEEE Trans.Sig.Proc,vol.52,no.2,pp.483-494,Feb.2004
【非特許文献2】S.M.Alamouti,”Asimple transmit diversity technique for wireless communications”,IEEE J.Sel.Areas Commun,vol.16,no.8,pp.1451-1458,Oct.1998
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ISDB−Tの伝送容量は、現行の放送において主に使用されている、モード3、ガードインターバル1/8(126μsec)、キャリア変調方式64QAM、内符号化率3/4の場合で、全体で約18.3Mbpsである。一方、次世代の映像システムとして研究が進められているスーパーハイビジョン放送は、従来のハイビジョン放送の16倍の解像度を持つことから、映像符号化後の伝送容量は100Mbps程度になることが予想されている。
【0008】
そこで、次世代地上放送における要素技術として、伝送容量を拡大するために、MIMO−SDM方式を用いることが検討されている。この場合、例えば、2×2MIMOで、伝送容量を最大で2倍に増やすことが可能となる。しかし、MIMO−SDM方式は、伝送容量の拡大が期待できる反面、移動受信環境等の伝送路の状態が激しく変化すると、高い伝送容量を確保したまま安定に受信することが困難となる。
【0009】
これに対し、同様に複数の送受信アンテナを用いるMIMO伝送の一つであるMIMO−STC方式は、MIMO−SDM方式のようには伝送容量を増大できないが、移動受信環境等において安定にデータ伝送を行うことが可能である。
【0010】
このように、従来、固定受信における伝送の大容量化、移動受信における伝送の安定化を個別に改善する手法が提案されている。しかしながら、これらの手法は、いずれも単独では、同一の放送信号の中で固定受信向けの伝送容量拡大と、移動受信向けの受信耐性の強化とを同時に実現することができない。そのため、これらを同時に実現するデータ送信装置およびこれにより送信されたデータの受信装置の開発が望まれている。
【0011】
本発明は、かかる要望に応えるべくなされたもので、その目的とするところは、次世代の地上デジタル放送方式にも適用可能であり、同一送信信号内で、伝送容量の拡大と受信耐性の強化とを同時に実現可能なデータ送信装置、およびこれにより送信されたデータのデータ受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成する本発明に係るデータ送信装置は、複数N本(Nは2以上の整数)の送信アンテナからデータを送信するデータ送信装置であって、第1受信形態用の送信信号を時空間符号化してN個のSTC信号を生成するSTC符号化部と、第2受信形態用の空間分割多重するN個のSDM信号と前記STC符号化部からのN個の前記STC信号とを合成するN個のマルチプレクサと、N個の前記マルチプレクサからの合成信号をそれぞれOFDM信号に変調するN個のOFDM変調部と、を備え、N個の前記OFDM変調部でそれぞれ変調された前記OFDM信号から成るデータを、N本の前記送信アンテナから送信することを特徴とするものである。
【0013】
本発明の一実施の形態に係るデータ送信装置において、前記マルチプレクサは、前記STC信号と前記SDM信号とを所定の合成パターンに従って合成する、ことを特徴とするものである。
【0014】
本発明の一実施の形態に係るデータ送信装置において、前記合成パターンは、前記STC信号を、前記OFDM信号の特定キャリアに固定的に割り当てるものである、ことを特徴とするものである。
【0015】
本発明の一実施の形態に係るデータ送信装置において、前記合成パターンは、前記STC信号を、時間とともに前記OFDM信号の異なるキャリアに周期的に割り当てるものである、ことを特徴とするものである。
【0016】
本発明の一実施の形態に係るデータ送信装置において、前記合成パターンは、前記STC信号を、所定の規則に従って時間とともに前記OFDM信号のキャリアにランダムに割り当てるものである、ことを特徴とするものである。
【0017】
本発明の一実施の形態に係るデータ送信装置において、前記合成パターンは、前記STC信号を、所定時間毎に前記OFDM信号の全てのキャリアに割り当てるものである、ことを特徴とするものである。
【0018】
さらに、上記目的を達成する本発明に係るデータ受信装置は、上記のいずれかのデータ送信装置から送信されるデータを受信するデータ受信装置であって、少なくとも、N本の受信アンテナと、N本の前記受信アンテナからの受信信号を受けて、前記STC信号と前記SDM信号とを分離するデマルチプレクサと、を備えることを特徴とするものである。
【0019】
さらに、上記目的を達成する本発明に係るデータ受信装置は、上記のいずれかのデータ送信装置から送信されるデータを受信するデータ受信装置であって、少なくとも、受信アンテナと、前記受信アンテナからの受信信号を受けて、前記STC信号を復号するSTC信号復号部と、を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、同一送信信号内で、伝送容量の拡大と受信耐性の強化とを同時に実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るデータ送信装置およびデータ受信装置を適用する放送サービスの一形態を示す概要図である。
【図2】図1の放送サービスに用いるデータ送信装置およびデータ受信装置の概要を説明するための概略構成図である。
【図3】図2のデータ送信装置100の要部の具体的構成を示す図である。
【図4】図3のMUXパターンデータベース115に記憶されているキャリア情報の一例を示す図である。
【図5】図3のMUX制御部114およびMUX104,105の動作説明図である。
【図6】図3のMUX104,105によるOFDM信号内のSDM信号とSTC信号との配置例を示す図である。
【図7】図4の4つの合成パターン例を示す図である。
【図8】図2のデータ受信装置200の要部の具体的構成を示す図である。
【図9】図8の前処理部205,206からSTC復号部204までの処理を示すフローチャートである。
【図10】図8のキャリア分離部217,218の動作を説明する図である。
【図11】図2のデータ送信装置100とデータ受信装置200とによるMIMO伝送路モデルを示す図である。
【図12】図2のデータ受信装置300の要部の具体的構成を示す図である。
【図13】図2のデータ受信装置400の要部の具体的構成を示す図である。
【図14】図2のデータ受信装置500の要部の具体的構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。
【0023】
図1は、本発明に係るデータ送信装置およびデータ受信装置を適用する放送サービスの一形態を示す概要図である。図1に示す放送サービスは、放送局(データ送信装置)から1つの放送波(1ch)で送信するOFDM信号のうち、第2受信形態用の例えば主として固定受信向けのキャリアでは、大容量化が可能なMIMO−SDM方式によりデータを送信し、第1受信形態用の例えば主として移動受信向けのキャリアでは、安定受信化が可能なMIMO−STC方式によりデータを送信する。図1では、同一のOFDM変調信号内に、MIMO−SDM変調信号とMIMO−STC変調信号とを配置して送信する場合を例示している。
【0024】
そして、固定受信側では、テレビ受像機等のデータ受信装置で受信した放送波からMIMO−SDM変調信号を復調して、映像を表示する等の復調したストリームデータを出力する。また、移動受信側では、テレビチューナ内蔵のカーナビゲーション機器や携帯通信機器等のデータ受信装置で受信した放送波からMIMO−STC変調信号を復調して、映像を表示する等の復調したストリームデータを出力する。
【0025】
このように、図1に示す放送サービスでは、複数の送信アンテナを使用するMIMO伝送により、主として固定受信向けに対してはMIMO−SDMを適用して、複数の送信アンテナから別々のデータを伝送することで大容量化を図る。例えば、水平/垂直偏波を同時に使う偏波MIMOでは、水平偏波および垂直偏波の各偏波において、別々の情報を伝送することにより、伝送容量を2倍に拡大することが可能となる。一方、主として移動受信向けに対しては、MIMO−STCを適用して、例えば1つのデータをSTBC符号化(アラモチ符号化)して水平/垂直偏波で伝送することにより、伝送の安定化を図る。
【0026】
これにより、1つのデータ送信装置から送信される同一送信信号内で、スーパーハイビジョン等の大容量コンテンツを放送する等の伝送容量の拡大と受信耐性の強化とを同時に実現することが可能となる。
【0027】
図2は、図1に示した放送サービスに用いるデータ送信装置およびデータ受信装置の概要を説明するための概略構成図である。図2は、データ送信装置100が2本の送信アンテナ101,102を有する場合を例示している。データ送信装置100は、STC符号化部103、2個のマルチプレクサ(以下、適宜、MUXと言う)104,105、2個のOFDM変調部106,107を有している。STC符号化部103は、主として移動受信向けの送信信号(図2では、便宜上、STC信号と表記する)を時空間符号化して2個のSTC信号を生成し、その一方をMUX104に供給し、他方をMUX105に供給する。また、MUX104,105には、主として固定受信向けに送信する異なるSDM信号が供給される。
【0028】
MUX104,105は、入力されるSTC信号とSDM信号とを合成して、それぞれ同一のOFDM信号内に配置する。そして、OFDM信号内に配置した合成信号を対応するOFDM変調部106,107に供給する。OFDM変調部106,107は、入力される合成信号をOFDM変調する。OFDM変調部106,107において変調されたOFDM信号は、公知の方法によりそれぞれRF送信部(図示せず)で周波数変換および電力増幅されて、対応する送信アンテナ101,102から例えば水平/垂直偏波で放射される。
【0029】
一方、受信側は、例えば4種類のデータ受信装置200,300,400,500が想定される。データ受信装置200は、例えばカーナビゲーション機器のような固定受信向けおよび移動受信向けの双方の放送を受信可能なもので、2本の受信アンテナ201,202、デマルチプレクサ(以下、適宜、DEMUXと言う)203、STC復号部204を有して構成される。このデータ受信装置200では、受信アンテナ201,202による受信信号が、RF受信部(図示せず)において公知の方法により周波数変換、増幅、デジタル変換等の処理が施されてDEMUX203に供給される。そして、DEMUX203において、SDM信号およびSTC信号が分離され、さらに、STC復号部204においてSTC信号が復号される。その後、公知の方法により、SDM信号および復号されたSTC信号が復調処理される。
【0030】
データ受信装置300は、例えば据え置き型のテレビ受像機のような固定受信向け放送を受信するもので、2本の受信アンテナ301,302、DEMUX303を有して構成される。このデータ受信装置300では、受信アンテナ301,302による受信信号が、RF受信部(図示せず)において公知の方法により処理されてDEMUX303に供給される。そして、DEMUX303において、SDM信号が分離される。その後、公知の方法により、SDM信号が復調処理される。
【0031】
データ受信装置400は、例えばテレビチューナ内蔵のパーソナルコンピュータのような移動受信向け放送を受信するもので、2本の受信アンテナ401,402、DEMUX403、STC復号部404を有して構成される。このデータ受信装置400では、受信アンテナ401,402による受信信号が、RF受信部(図示せず)において公知の方法により処理されてDEMUX403に供給される。そして、DEMUX403において、STC信号が分離される。その後、STC信号は、STC復号部404で復号されて、その復号されたSTC信号が公知の方法により復調処理される。
【0032】
データ受信装置500は、例えばテレビチューナ内蔵の携帯通信機器のような移動受信向け放送を受信するもので、1本の受信アンテナ501、STC復号部502を有して構成される。このデータ受信装置500では、受信アンテナ501による受信信号が、RF受信部(図示せず)において公知の方法により処理されてSTC復号部502に供給される。そして、STC復号部502において、STC信号が復号されて、その復号されたSTC信号が公知の方法により復調処理される。
【0033】
なお、図2に示す放送サービスにおいて、データ送信装置100から合成して送信するSDM信号およびSTC信号の合成パターンは、送受信装置間で予め固定的に設定しておいてもよいし、複数の合成パターンを定義して、パターンデータベースとして情報を共有して適宜変更するようにしてもよい。後者の場合は、送信側で伝送に使用する合成パターンをパターンデータベースから選択して、SDM信号とSTC信号との配置を決定し、その合成パターンの情報を信号の変調情報等を伝送する制御信号、例えば、現行のISDB−T方式ではTMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)に相当する制御信号に付加して送信することができる。
【0034】
図2から明らかなように、図1に示した放送サービスによると、1つのデータ送信装置100を共用して、2つの固定受信向けおよび2つの移動受信向けの合計4種類のデータ受信装置200,300,400,500に対する放送が可能となる。なお、図2において、データ送信装置100とデータ受信装置200,300,400との間では、それぞれMIMOの伝送系が構成され、データ送信装置100とデータ受信装置500との間では、MISO(Multiple Input Single Output)の伝送系が構成される。
【0035】
次に、図2に示したデータ送信装置100、データ受信装置200,300,400,500の要部の具体的構成について説明する。
【0036】
図3は、図2に示したデータ送信装置100の要部の具体的構成を示す図である。データ送信装置100は、図2に示したSTC符号化部103、2個のMUX104,105、2個のOFDM変調部106,107の他、3個の前処理部111,112,113、MUX制御部114、MUXパターンデータベース115、変調制御部116、パイロット配置データベース117を有している。
【0037】
図3において、主として固定受信向けに送信する異なるSDM信号1およびSDM信号2は、前処理部111および112にそれぞれ供給され、主として移動受信向けに送信するSTC信号は、前処理部113に供給される。そして、各送信信号は、対応する前処理部111,112,113において、必要に応じて、エネルギー拡散、符号誤り訂正エンコード、ビットインターリーブ、マッピング、時間インターリーブ、周波数インターリーブ等の処理が行われて、複素ベースバンド信号(I,Q)に変換される。
【0038】
前処理部111の出力信号はMUX104に、前処理部112の出力信号はMUX105に、前処理部113の出力信号はSTC符号化部103に、それぞれ供給される。STC符号化部103は、入力信号を時空間符号化してN個のSTC信号を生成する。例えば、STC符号としてSTBC符号を用いる場合は、図3に吹き出して示すように、時間的(もしくは周波数的)に連続した2つの複素ベースバンド信号(I,Q)のs(m),s(m+1)を、STC符号化部103に相当するMIMO−STBC符号化部118により、x1(m)=s(m),x1(m+1)=−s*(m+1)のSTC信号と、x2(m)=s(m+1),x2(m+1)=s*(m)のSTC信号とを生成する。なお、s*は、sの複素共役を示す。そして、STC符号化部103(MIMO−STBC符号化部118)からの一方のSTC信号(STBC信号)がMUX104に、他方のSTC信号(STBC信号)がMUX105に、それぞれ供給される。
【0039】
MUX104,105は、それぞれ入力されるSDM信号およびSTC信号を合成してOFDMフレームを構成する。その際、MUX制御部114は、図示しない送信制御部等から入力されるMUXパターン(合成パターン)値に基づいて、MUXパターンデータベース115に記憶されているMUXパターン値に対応するキャリア情報を取得し、その取得したキャリア情報に基づいて、MUX104,105によるSDM信号およびSTC信号の合成を制御する。また、MUX制御部114は、その際のMUXパターン情報を、例えばTMCC信号に重畳してMUX104,105に供給する。
【0040】
図4は、図3のMUXパターンデータベース115に記憶されているキャリア情報の一例を示す図である。図4では、4つのMUXパターン値「00」、「01」、「10」、「11」に対して、キャリア毎にSDMまたはSTCのいずれかの信号が指定されている。なお、MUXパターン値「00」、「01」、「10」、「11」については、後述する。
【0041】
図5は、図3のMUX制御部114およびMUX104,105の動作説明図である。MUX制御部114は、送信制御部等からMUXパターン値が入力されると(ステップS501)、その入力MUXパターン値とMUXパターンデータベース115に記憶されているMUXパターン値とを照合してMUXパターンを確定し(ステップS502)、そのMUXパターン値のキャリア情報をMUX104,105に供給する。また、MUX制御部114は、入力されたMUXパターン値に基づいてTMCCを変調して(ステップS503)、MUXパターン情報を書き込んだTMCC信号をMUX104,105に供給する。
【0042】
MUX104,105は、入力するSDM信号、STC信号、TMCC信号を、MUX制御部114からのキャリア情報に基づいて選択して、それぞれ同一のOFDM信号内に配置する。これにより、例えば図6に示すような同一OFDM信号内にSDM信号とSTC信号とが存在するOFDMフレームを構成する(ステップS504)。そして、生成したOFDMフレーム構成を、それぞれ対応するOFDM変調部106,107に供給する。
【0043】
OFDM変調部106,107は、対応するMUX104,105から入力されるOFDM信号を変調し、その変調されたOFDM信号をアナログ信号に変換して送信信号1および送信信号2を生成する。その際、変調制御部116は、必要に応じて、パイロット配置データベース117に記憶されている所定のパイロット配置に基づいてOFDM信号内にパイロット信号を配置したり、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform)処理したり、GI(Guard interval)を付加したり、所要の変調制御を実行する。そして、OFDM変調部106,107で生成された送信信号1および送信信号2は、公知の方法によりそれぞれRF送信部(図示せず)で周波数変換および電力増幅されて、対応する送信アンテナ101,102(図2参照)から例えば水平/垂直偏波で放射される。
【0044】
図7(a)〜(d)は、図4に示した4つのMUXパターン値「00」、「01」、「10」、「11」の各MUXパターン例を示すものである。図7(a)〜(d)において、OFDM信号の白地のキャリア部分はSDM信号部分を示し、ハッチングを施したキャリア部分はSTC信号部分を示し、太線の同一キャリアはTMCC信号を示している。
【0045】
図7(a)は、MUXパターン値「00」のMUXパターン例を示すもので、STC信号をOFDM信号の特定キャリアに固定的に割り当てるものである。すなわち、特定キャリア(またはセグメント)は常にSTC信号とし、時間方向に不変とする。このMUXパターンは、現行のISDB−T方式におけるワンセグ放送と同じ形態であり、ハードウェア化が容易である。
【0046】
図7(b)は、MUXパターン値「01」のMUXパターン例を示すもので、STC信号を、時間とともにOFDM信号の異なるキャリアに周期的に割り当てるものである。なお、割り当て周期は、予め送/受信側両方に蓄積しておく。このMUXパターンは、規則性があるためPLL(Phase Locked Loop)が作り易く、ハードウェア化が比較的容易になる利点がある。
【0047】
図7(c)は、MUXパターン値「10」のMUXパターン例を示すもので、STC信号を、所定の規則に従って時間とともにOFDM信号のキャリアにランダムに割り当てるものである。なお、所定の規則であるランダマイズするパターンは、予め送/受信側両方に蓄積しておく。このMUXパターンは、STC信号の配置をランダマイズするので、フェージング等に強力な耐性を有する利点がある。
【0048】
図7(d)は、MUXパターン値「11」のMUXパターン例を示すもので、STC信号を、所定時間毎にOFDM信号の全てのキャリアに割り当てるものである。このMUXパターンは、規則性があるためハードウェア化が比較的容易になる利点がある。また、移動受信においては、STC信号の受信タイミングが分かるので、該当するシンボル期間だけ復調動作をすれば良く、受信装置の省電力化が期待できる。
【0049】
図7(a)〜(d)に示す4つのMUXパターン例は、上述したように、いずれか1つを送受信装置間で固定的に使用するように予め設定してもよいし、4つのMUXパターン例の全てを送受信装置間でパターンデータベースとして情報を共有して、適宜変更して使用するようにしてもよい。
【0050】
図8は、図2に示したデータ受信装置200の要部の具体的構成を示す図である。データ受信装置200は、図2に示したDEMUX203、STC復号部204の他、2個の前処理部205,206、3個の後処理部207,208,209を有している。図8において、2本の受信アンテナ201,202(図2参照)に対応する受信信号1および受信信号2は、対応する前処理部205,206にそれぞれ供給される。前処理部205,206は、入力される受信信号1,2を、それぞれガード相関処理、FFT(Fast Fourier Transform)処理して、各キャリアを同期させる。これら前処理部205,206の出力信号は、DEMUX203に供給される。
【0051】
DEMUX203は、2個のTMCC復調部211,212、TMCC読取部213、2個のSP(Scattered Pilot)抽出/等化処理部214,215、伝送路応答算出/偏波分離部216、2個のキャリア分離部217,218を有する。前処理部205で処理された受信信号1は、TMCC復調部211に入力されてTMCC信号が復調された後、SP抽出/等化処理部214に入力されてSPの抽出処理および等化処理が行われて伝送路応答算出/偏波分離部216に入力される。同様に、前処理部206で処理された受信信号2は、TMCC復調部212に入力されてTMCC信号が復調された後、SP抽出/等化処理部215に入力されてSPの抽出処理および等化処理が行われて伝送路応答算出/偏波分離部216に入力される。
【0052】
TMCC復調部211,212で復調されたTMCC信号は、TMCC読取部213で読み取られる。TMCC読取部213は、TMCC信号からMUXパターン値を抽出し、その抽出したMUXパターン値に対応するキャリア情報を、内蔵するMUXパターンデータベースから取得して、その取得したキャリア情報をキャリア分離部217,218に供給する。
【0053】
伝送路応答算出/偏波分離部216は、SP抽出/等化処理部214,215で抽出されたSPに基づいて伝送路応答を算出し、その算出された伝送路応答に基づいて水平/垂直偏波の受信信号を分離する。この伝送路応答算出/偏波分離部216で分離された一方の受信信号はキャリア分離部217に、他方の受信信号はキャリア分離部218にそれぞれ供給される。
【0054】
キャリア分離部217,218は、TMCC読取部213で抽出されたTMCC信号内のMUXパターン値に対応するキャリア情報に基づいて、SDM信号キャリアとSTC信号キャリアとを分離する。すなわち、固定受信向けストリームと移動受信向けストリームとを分離する。そして、DEMUX203は、キャリア分離部217で分離されたSDM信号キャリアを後処理部207に、STC信号キャリアをSTC復号部204にそれぞれ供給し、キャリア分離部218で分離されたSDM信号キャリアを後処理部208に、STC信号キャリアをSTC復号部204にそれぞれ供給する。
【0055】
STC復号部204は、キャリア分離部217,218で分離されたSTC信号を復号して1つのSTC信号を生成する。例えば、STC符号としてSTBC符号が用いられた場合は、図8に吹き出して示すように、一方のキャリア分離部217から得られる時間的(もしくは周波数的)に連続した2つの複素ベースバンド信号(I,Q)のy1(m),y1(m+1)と、一方のキャリア分離部218から得られる2つの複素ベースバンド信号(I,Q)のy2(m),y2(m+1)とを、STC復号部204に相当するMIMO−STBC復号部219により、s(m),s(m+1)のSTC信号を生成する。そして、STC復号部204(MIMO−STBC復号部219)で復号されたSTC信号(STBC信号)は、後処理部209に供給される。
【0056】
後処理部207,208,209は、それぞれ入力する受信信号に対して、必要に応じて、周波数デインターリーブ、時間デインターリーブ、デマッピング、ビットデインターリーブ、符号誤り訂正、エネルギー逆拡散等を行う。これにより、空間分割多重して送信された2個のSDM信号1,2と、時空間符号化されて送信されたSTC信号とのそれぞれの受信データが得られる。これらの受信データは公知の手法により処理されて、映像を表示する等の復調されたストリームデータが出力される。
【0057】
図9は、図8の前処理部205,206からSTC復号部204までの要部の処理を示すフローチャートである。上述したように、先ず、前処理部205,206は、それぞれの受信信号をキャリア同期させる(ステップS901)。次に、DEMUX203において、TMCC復調部211,212により各受信信号からTMCC信号を復調し(ステップS902)、その復調されたTMCC信号からTMCC読取部213によりMUXパターン値を抽出する(ステップS903)。
【0058】
その後、SP抽出/等化処理部214,215において、各受信信号からSPを抽出するとともに、各受信信号の等化処理を行ってから(ステップS904)、伝送路応答算出/偏波分離部216において、両受信信号を水平/垂直偏波毎に偏波分離する(ステップS905)。つまり、ステップS904およびS905において、MIMO復調処理が行われる。
【0059】
一方、TMCC読取部213は、ステップS903においてMUXパターン値を抽出すると、その抽出したMUXパターン値と内蔵するMUXパターンデータベース220に記憶されているMUXパターン値と照合してMUXパターンを確定し(ステップS906)、そのMUXパターン値のキャリア情報をキャリア分離部217,218に供給する。そして、キャリア分離部217,218は、TMCC読取部213からのキャリア情報に基づいて、偏波分離された受信信号からSDM信号キャリアとSTC信号キャリアとを分離する(ステップS907)。これにより、例えば図10に示すように、同一OFDM信号内に配置されていたSDM信号とSTC信号とが分離される。
【0060】
そして、キャリア分離部217で分離されたSDM信号は後処理部207に、キャリア分離部218で分離されたSDM信号は後処理部208にそれぞれ供給される。また、キャリア分離部217,218で分離されたSTC信号は、STC復号部204で復号される(ステップS908)。
【0061】
ここで、上述したデータ送信装置100とデータ受信装置200とによるMIMO伝送路モデルについて説明する。なお、ここでは、主として移動受信用の送信信号をSTBC符号により伝送する場合を例にとって説明する。
【0062】
図11は、この場合のMIMO伝送路モデルを示す図である。なお、図11において、Tx1,Tx2は、データ送信装置100の送信アンテナ101,102に相当し、Rx1,Rx2は、データ受信装置200の受信アンテナ201,202に相当する。図11において、受信信号y1,y2は、次式で表される。
【数1】
【0063】
MIMO−SDM復調においては、各受信信号に含まれる既知パイロット信号からMIMO伝送路応答行列Hを求め、次式に示すように両辺に逆行列H-1をかけることにより、空間多重された送信信号x1,x2を分離して求めることができる。なお、受信装置雑音は無視できるほど小さいものとする。
【数2】
【0064】
また、MIMO−STBC復号について、受信信号y1に注目すると、下記の数式が成り立つ。
【数3】
【0065】
受信信号y2についても、受信信号y1と同様の数式が得られる。したがって、SDM復調の場合と同様に、各OFDMキャリアから伝送路応答を求めることにより、送信信号s(m),s(m+1)を復号することができる。なお、この際、受信信号y1のSN比(電力比)は、以下のように表される。受信信号y2についても、同様に表される。
【数4】
【0066】
このように、受信信号y1,y2ともに、SN比が改善されるので、システム全体のSN比は、更に改善される。その結果、より安定受信化が期待される。
【0067】
なお、データ受信装置200は、上述したようにSDM信号とSTC信号との双方を同時に受信処理する場合に限らず、いずれか一方のみを選択して受信処理することも可能である。
【0068】
図12〜図14は、それぞれ図2のデータ受信装置300,400,500の要部の具体的構成を示す図である。これらのデータ受信装置300,400,500は、図8に示したデータ受信装置200の部分構成からなるので、図8に示した構成要素と同一構成要素には、同一の参照符号を付して説明を省略する。つまり、図2に示したデータ受信装置200,300,400のDEMUX203,303,403は同一構成からなり、データ受信装置200,400,500のSTC復号部204,404,502は同一構成からなる。
【0069】
なお、図12のデータ受信装置300において、DEMUX303のキャリア分離部217,218は、SDM信号キャリアを抽出するキャリア抽出部として機能する。また、図13のデータ受信装置400において、DEMUX403のキャリア分離部217,218は、STC信号キャリアを抽出するキャリア抽出部として機能する。同様に、図14のデータ受信装置500において、キャリア分離部217は、STC信号キャリアを抽出するキャリア抽出部として機能する。なお、図14のデータ受信装置500は、受信信号系が1系統であるので、1系統の前処理部205、TMCC復調部211、SP抽出/等化処理部214およびキャリア分離部217が設けられており、伝送路応答算出/偏波分離部216は設ける必要がない。
【0070】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形または変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、データ送信装置100側からMUXパターン(合成パターン)情報を送信するようにしたが、MUXパターンを固定とする場合は、その送信を省略することもできる。この場合は、送受信装置の双方において、固定のMUXパターンのキャリア情報を有していればよい。また、データ送信装置100のSTC符号化部103は、上述したように送信信号を時空間ブロック符号化してSTBC信号を生成するSTBC符号化部により構成する場合に限らず、送信信号を空間周波数ブロック符号化してSFBC信号を生成するSFBC符号化部や、送信信号を時空間トレリス符号化してSTTC信号を生成するSTTC符号化部等により構成してもよい。さらに、本発明は、地上デジタル放送に限らず、同一送信信号内で、主として移動受信用の信号と、主として固定受信用の信号との送信または受信を行う装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
100 データ送信装置
101,102 送信アンテナ
103 STC符号化部
104,105 マルチプレクサ(MUX)
106,107 OFDM変調部
200,300,400 データ受信装置
201,202,301,302,401,402,501 受信アンテナ
203,303,403 デマルチプレクサ(DEMUX)
204,404,502 STC復号部
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ送信装置およびデータ受信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日本の現行の地上デジタル放送方式であるISDB−T(Integrated Services Digital Broadcasting .Terrestrial)では、1つの放送波(チャンネル)に割り当てられる直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)された複数のサブキャリアを有する周波数帯域を13個のセグメントに分割し、そのうちの12セグメントを固定受信向けのハイビジョン放送や複数標準画質放送用とし、1セグメントを移動受信向け放送用として同時に送信している。
【0003】
一方、次世代の地上デジタル放送方式では、家庭等の固定受信向けに、従来のハイビジョンに代わり3Dハイビジョン放送やハイビジョンの16倍の解像度を有するスーパーハイビジョン等の更に情報量の多いサービスを提供することが求められている。同様に、移動受信向けには、ハイビジョン画質相当のサービスを提供することが求められている。
【0004】
このような無線によるデータ伝送容量の増大に応えるものとして、近年、複数の送受信アンテナを用いるMIMO(Multiple Input Multiple Output)システムが提案されている。MIMOを用いる伝送システムには、大別して、伝送容量を拡大するための空間分割多重(SDM:Space Division Multiplexing)、伝送耐性を向上させるための時空間符号(STC:Space Time Codes)等がある。さらに、STCとして、時空間ブロック符号(STBC:Space-Time Block Codes)や空間周波数ブロック符号(SFBC:Space-Frequency Block Codes)、時空間トレリス符号(STTC:Space-Time Trellis Codes)等が提案されている(例えば、非特許文献1,2参照)。
【0005】
SDMは、一般に、複数の送信/受信アンテナを用いて複数の伝送路で異なるデータを送受信することで、伝送容量を拡大することが可能である。したがって、放送においては、家庭等の固定受信向け放送に伝送容量を拡大する技術として期待される。また、STCは、複数の送信/受信アンテナにデータを分散させることで、受信時の安定化、高耐性化を図ることが可能である。したがって、放送においては、移動受信向け放送への応用が期待される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】A.van Zelst,”Implementation on a MIMO OFDM based wireless LAN system”,IEEE Trans.Sig.Proc,vol.52,no.2,pp.483-494,Feb.2004
【非特許文献2】S.M.Alamouti,”Asimple transmit diversity technique for wireless communications”,IEEE J.Sel.Areas Commun,vol.16,no.8,pp.1451-1458,Oct.1998
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ISDB−Tの伝送容量は、現行の放送において主に使用されている、モード3、ガードインターバル1/8(126μsec)、キャリア変調方式64QAM、内符号化率3/4の場合で、全体で約18.3Mbpsである。一方、次世代の映像システムとして研究が進められているスーパーハイビジョン放送は、従来のハイビジョン放送の16倍の解像度を持つことから、映像符号化後の伝送容量は100Mbps程度になることが予想されている。
【0008】
そこで、次世代地上放送における要素技術として、伝送容量を拡大するために、MIMO−SDM方式を用いることが検討されている。この場合、例えば、2×2MIMOで、伝送容量を最大で2倍に増やすことが可能となる。しかし、MIMO−SDM方式は、伝送容量の拡大が期待できる反面、移動受信環境等の伝送路の状態が激しく変化すると、高い伝送容量を確保したまま安定に受信することが困難となる。
【0009】
これに対し、同様に複数の送受信アンテナを用いるMIMO伝送の一つであるMIMO−STC方式は、MIMO−SDM方式のようには伝送容量を増大できないが、移動受信環境等において安定にデータ伝送を行うことが可能である。
【0010】
このように、従来、固定受信における伝送の大容量化、移動受信における伝送の安定化を個別に改善する手法が提案されている。しかしながら、これらの手法は、いずれも単独では、同一の放送信号の中で固定受信向けの伝送容量拡大と、移動受信向けの受信耐性の強化とを同時に実現することができない。そのため、これらを同時に実現するデータ送信装置およびこれにより送信されたデータの受信装置の開発が望まれている。
【0011】
本発明は、かかる要望に応えるべくなされたもので、その目的とするところは、次世代の地上デジタル放送方式にも適用可能であり、同一送信信号内で、伝送容量の拡大と受信耐性の強化とを同時に実現可能なデータ送信装置、およびこれにより送信されたデータのデータ受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成する本発明に係るデータ送信装置は、複数N本(Nは2以上の整数)の送信アンテナからデータを送信するデータ送信装置であって、第1受信形態用の送信信号を時空間符号化してN個のSTC信号を生成するSTC符号化部と、第2受信形態用の空間分割多重するN個のSDM信号と前記STC符号化部からのN個の前記STC信号とを合成するN個のマルチプレクサと、N個の前記マルチプレクサからの合成信号をそれぞれOFDM信号に変調するN個のOFDM変調部と、を備え、N個の前記OFDM変調部でそれぞれ変調された前記OFDM信号から成るデータを、N本の前記送信アンテナから送信することを特徴とするものである。
【0013】
本発明の一実施の形態に係るデータ送信装置において、前記マルチプレクサは、前記STC信号と前記SDM信号とを所定の合成パターンに従って合成する、ことを特徴とするものである。
【0014】
本発明の一実施の形態に係るデータ送信装置において、前記合成パターンは、前記STC信号を、前記OFDM信号の特定キャリアに固定的に割り当てるものである、ことを特徴とするものである。
【0015】
本発明の一実施の形態に係るデータ送信装置において、前記合成パターンは、前記STC信号を、時間とともに前記OFDM信号の異なるキャリアに周期的に割り当てるものである、ことを特徴とするものである。
【0016】
本発明の一実施の形態に係るデータ送信装置において、前記合成パターンは、前記STC信号を、所定の規則に従って時間とともに前記OFDM信号のキャリアにランダムに割り当てるものである、ことを特徴とするものである。
【0017】
本発明の一実施の形態に係るデータ送信装置において、前記合成パターンは、前記STC信号を、所定時間毎に前記OFDM信号の全てのキャリアに割り当てるものである、ことを特徴とするものである。
【0018】
さらに、上記目的を達成する本発明に係るデータ受信装置は、上記のいずれかのデータ送信装置から送信されるデータを受信するデータ受信装置であって、少なくとも、N本の受信アンテナと、N本の前記受信アンテナからの受信信号を受けて、前記STC信号と前記SDM信号とを分離するデマルチプレクサと、を備えることを特徴とするものである。
【0019】
さらに、上記目的を達成する本発明に係るデータ受信装置は、上記のいずれかのデータ送信装置から送信されるデータを受信するデータ受信装置であって、少なくとも、受信アンテナと、前記受信アンテナからの受信信号を受けて、前記STC信号を復号するSTC信号復号部と、を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、同一送信信号内で、伝送容量の拡大と受信耐性の強化とを同時に実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るデータ送信装置およびデータ受信装置を適用する放送サービスの一形態を示す概要図である。
【図2】図1の放送サービスに用いるデータ送信装置およびデータ受信装置の概要を説明するための概略構成図である。
【図3】図2のデータ送信装置100の要部の具体的構成を示す図である。
【図4】図3のMUXパターンデータベース115に記憶されているキャリア情報の一例を示す図である。
【図5】図3のMUX制御部114およびMUX104,105の動作説明図である。
【図6】図3のMUX104,105によるOFDM信号内のSDM信号とSTC信号との配置例を示す図である。
【図7】図4の4つの合成パターン例を示す図である。
【図8】図2のデータ受信装置200の要部の具体的構成を示す図である。
【図9】図8の前処理部205,206からSTC復号部204までの処理を示すフローチャートである。
【図10】図8のキャリア分離部217,218の動作を説明する図である。
【図11】図2のデータ送信装置100とデータ受信装置200とによるMIMO伝送路モデルを示す図である。
【図12】図2のデータ受信装置300の要部の具体的構成を示す図である。
【図13】図2のデータ受信装置400の要部の具体的構成を示す図である。
【図14】図2のデータ受信装置500の要部の具体的構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。
【0023】
図1は、本発明に係るデータ送信装置およびデータ受信装置を適用する放送サービスの一形態を示す概要図である。図1に示す放送サービスは、放送局(データ送信装置)から1つの放送波(1ch)で送信するOFDM信号のうち、第2受信形態用の例えば主として固定受信向けのキャリアでは、大容量化が可能なMIMO−SDM方式によりデータを送信し、第1受信形態用の例えば主として移動受信向けのキャリアでは、安定受信化が可能なMIMO−STC方式によりデータを送信する。図1では、同一のOFDM変調信号内に、MIMO−SDM変調信号とMIMO−STC変調信号とを配置して送信する場合を例示している。
【0024】
そして、固定受信側では、テレビ受像機等のデータ受信装置で受信した放送波からMIMO−SDM変調信号を復調して、映像を表示する等の復調したストリームデータを出力する。また、移動受信側では、テレビチューナ内蔵のカーナビゲーション機器や携帯通信機器等のデータ受信装置で受信した放送波からMIMO−STC変調信号を復調して、映像を表示する等の復調したストリームデータを出力する。
【0025】
このように、図1に示す放送サービスでは、複数の送信アンテナを使用するMIMO伝送により、主として固定受信向けに対してはMIMO−SDMを適用して、複数の送信アンテナから別々のデータを伝送することで大容量化を図る。例えば、水平/垂直偏波を同時に使う偏波MIMOでは、水平偏波および垂直偏波の各偏波において、別々の情報を伝送することにより、伝送容量を2倍に拡大することが可能となる。一方、主として移動受信向けに対しては、MIMO−STCを適用して、例えば1つのデータをSTBC符号化(アラモチ符号化)して水平/垂直偏波で伝送することにより、伝送の安定化を図る。
【0026】
これにより、1つのデータ送信装置から送信される同一送信信号内で、スーパーハイビジョン等の大容量コンテンツを放送する等の伝送容量の拡大と受信耐性の強化とを同時に実現することが可能となる。
【0027】
図2は、図1に示した放送サービスに用いるデータ送信装置およびデータ受信装置の概要を説明するための概略構成図である。図2は、データ送信装置100が2本の送信アンテナ101,102を有する場合を例示している。データ送信装置100は、STC符号化部103、2個のマルチプレクサ(以下、適宜、MUXと言う)104,105、2個のOFDM変調部106,107を有している。STC符号化部103は、主として移動受信向けの送信信号(図2では、便宜上、STC信号と表記する)を時空間符号化して2個のSTC信号を生成し、その一方をMUX104に供給し、他方をMUX105に供給する。また、MUX104,105には、主として固定受信向けに送信する異なるSDM信号が供給される。
【0028】
MUX104,105は、入力されるSTC信号とSDM信号とを合成して、それぞれ同一のOFDM信号内に配置する。そして、OFDM信号内に配置した合成信号を対応するOFDM変調部106,107に供給する。OFDM変調部106,107は、入力される合成信号をOFDM変調する。OFDM変調部106,107において変調されたOFDM信号は、公知の方法によりそれぞれRF送信部(図示せず)で周波数変換および電力増幅されて、対応する送信アンテナ101,102から例えば水平/垂直偏波で放射される。
【0029】
一方、受信側は、例えば4種類のデータ受信装置200,300,400,500が想定される。データ受信装置200は、例えばカーナビゲーション機器のような固定受信向けおよび移動受信向けの双方の放送を受信可能なもので、2本の受信アンテナ201,202、デマルチプレクサ(以下、適宜、DEMUXと言う)203、STC復号部204を有して構成される。このデータ受信装置200では、受信アンテナ201,202による受信信号が、RF受信部(図示せず)において公知の方法により周波数変換、増幅、デジタル変換等の処理が施されてDEMUX203に供給される。そして、DEMUX203において、SDM信号およびSTC信号が分離され、さらに、STC復号部204においてSTC信号が復号される。その後、公知の方法により、SDM信号および復号されたSTC信号が復調処理される。
【0030】
データ受信装置300は、例えば据え置き型のテレビ受像機のような固定受信向け放送を受信するもので、2本の受信アンテナ301,302、DEMUX303を有して構成される。このデータ受信装置300では、受信アンテナ301,302による受信信号が、RF受信部(図示せず)において公知の方法により処理されてDEMUX303に供給される。そして、DEMUX303において、SDM信号が分離される。その後、公知の方法により、SDM信号が復調処理される。
【0031】
データ受信装置400は、例えばテレビチューナ内蔵のパーソナルコンピュータのような移動受信向け放送を受信するもので、2本の受信アンテナ401,402、DEMUX403、STC復号部404を有して構成される。このデータ受信装置400では、受信アンテナ401,402による受信信号が、RF受信部(図示せず)において公知の方法により処理されてDEMUX403に供給される。そして、DEMUX403において、STC信号が分離される。その後、STC信号は、STC復号部404で復号されて、その復号されたSTC信号が公知の方法により復調処理される。
【0032】
データ受信装置500は、例えばテレビチューナ内蔵の携帯通信機器のような移動受信向け放送を受信するもので、1本の受信アンテナ501、STC復号部502を有して構成される。このデータ受信装置500では、受信アンテナ501による受信信号が、RF受信部(図示せず)において公知の方法により処理されてSTC復号部502に供給される。そして、STC復号部502において、STC信号が復号されて、その復号されたSTC信号が公知の方法により復調処理される。
【0033】
なお、図2に示す放送サービスにおいて、データ送信装置100から合成して送信するSDM信号およびSTC信号の合成パターンは、送受信装置間で予め固定的に設定しておいてもよいし、複数の合成パターンを定義して、パターンデータベースとして情報を共有して適宜変更するようにしてもよい。後者の場合は、送信側で伝送に使用する合成パターンをパターンデータベースから選択して、SDM信号とSTC信号との配置を決定し、その合成パターンの情報を信号の変調情報等を伝送する制御信号、例えば、現行のISDB−T方式ではTMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)に相当する制御信号に付加して送信することができる。
【0034】
図2から明らかなように、図1に示した放送サービスによると、1つのデータ送信装置100を共用して、2つの固定受信向けおよび2つの移動受信向けの合計4種類のデータ受信装置200,300,400,500に対する放送が可能となる。なお、図2において、データ送信装置100とデータ受信装置200,300,400との間では、それぞれMIMOの伝送系が構成され、データ送信装置100とデータ受信装置500との間では、MISO(Multiple Input Single Output)の伝送系が構成される。
【0035】
次に、図2に示したデータ送信装置100、データ受信装置200,300,400,500の要部の具体的構成について説明する。
【0036】
図3は、図2に示したデータ送信装置100の要部の具体的構成を示す図である。データ送信装置100は、図2に示したSTC符号化部103、2個のMUX104,105、2個のOFDM変調部106,107の他、3個の前処理部111,112,113、MUX制御部114、MUXパターンデータベース115、変調制御部116、パイロット配置データベース117を有している。
【0037】
図3において、主として固定受信向けに送信する異なるSDM信号1およびSDM信号2は、前処理部111および112にそれぞれ供給され、主として移動受信向けに送信するSTC信号は、前処理部113に供給される。そして、各送信信号は、対応する前処理部111,112,113において、必要に応じて、エネルギー拡散、符号誤り訂正エンコード、ビットインターリーブ、マッピング、時間インターリーブ、周波数インターリーブ等の処理が行われて、複素ベースバンド信号(I,Q)に変換される。
【0038】
前処理部111の出力信号はMUX104に、前処理部112の出力信号はMUX105に、前処理部113の出力信号はSTC符号化部103に、それぞれ供給される。STC符号化部103は、入力信号を時空間符号化してN個のSTC信号を生成する。例えば、STC符号としてSTBC符号を用いる場合は、図3に吹き出して示すように、時間的(もしくは周波数的)に連続した2つの複素ベースバンド信号(I,Q)のs(m),s(m+1)を、STC符号化部103に相当するMIMO−STBC符号化部118により、x1(m)=s(m),x1(m+1)=−s*(m+1)のSTC信号と、x2(m)=s(m+1),x2(m+1)=s*(m)のSTC信号とを生成する。なお、s*は、sの複素共役を示す。そして、STC符号化部103(MIMO−STBC符号化部118)からの一方のSTC信号(STBC信号)がMUX104に、他方のSTC信号(STBC信号)がMUX105に、それぞれ供給される。
【0039】
MUX104,105は、それぞれ入力されるSDM信号およびSTC信号を合成してOFDMフレームを構成する。その際、MUX制御部114は、図示しない送信制御部等から入力されるMUXパターン(合成パターン)値に基づいて、MUXパターンデータベース115に記憶されているMUXパターン値に対応するキャリア情報を取得し、その取得したキャリア情報に基づいて、MUX104,105によるSDM信号およびSTC信号の合成を制御する。また、MUX制御部114は、その際のMUXパターン情報を、例えばTMCC信号に重畳してMUX104,105に供給する。
【0040】
図4は、図3のMUXパターンデータベース115に記憶されているキャリア情報の一例を示す図である。図4では、4つのMUXパターン値「00」、「01」、「10」、「11」に対して、キャリア毎にSDMまたはSTCのいずれかの信号が指定されている。なお、MUXパターン値「00」、「01」、「10」、「11」については、後述する。
【0041】
図5は、図3のMUX制御部114およびMUX104,105の動作説明図である。MUX制御部114は、送信制御部等からMUXパターン値が入力されると(ステップS501)、その入力MUXパターン値とMUXパターンデータベース115に記憶されているMUXパターン値とを照合してMUXパターンを確定し(ステップS502)、そのMUXパターン値のキャリア情報をMUX104,105に供給する。また、MUX制御部114は、入力されたMUXパターン値に基づいてTMCCを変調して(ステップS503)、MUXパターン情報を書き込んだTMCC信号をMUX104,105に供給する。
【0042】
MUX104,105は、入力するSDM信号、STC信号、TMCC信号を、MUX制御部114からのキャリア情報に基づいて選択して、それぞれ同一のOFDM信号内に配置する。これにより、例えば図6に示すような同一OFDM信号内にSDM信号とSTC信号とが存在するOFDMフレームを構成する(ステップS504)。そして、生成したOFDMフレーム構成を、それぞれ対応するOFDM変調部106,107に供給する。
【0043】
OFDM変調部106,107は、対応するMUX104,105から入力されるOFDM信号を変調し、その変調されたOFDM信号をアナログ信号に変換して送信信号1および送信信号2を生成する。その際、変調制御部116は、必要に応じて、パイロット配置データベース117に記憶されている所定のパイロット配置に基づいてOFDM信号内にパイロット信号を配置したり、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform)処理したり、GI(Guard interval)を付加したり、所要の変調制御を実行する。そして、OFDM変調部106,107で生成された送信信号1および送信信号2は、公知の方法によりそれぞれRF送信部(図示せず)で周波数変換および電力増幅されて、対応する送信アンテナ101,102(図2参照)から例えば水平/垂直偏波で放射される。
【0044】
図7(a)〜(d)は、図4に示した4つのMUXパターン値「00」、「01」、「10」、「11」の各MUXパターン例を示すものである。図7(a)〜(d)において、OFDM信号の白地のキャリア部分はSDM信号部分を示し、ハッチングを施したキャリア部分はSTC信号部分を示し、太線の同一キャリアはTMCC信号を示している。
【0045】
図7(a)は、MUXパターン値「00」のMUXパターン例を示すもので、STC信号をOFDM信号の特定キャリアに固定的に割り当てるものである。すなわち、特定キャリア(またはセグメント)は常にSTC信号とし、時間方向に不変とする。このMUXパターンは、現行のISDB−T方式におけるワンセグ放送と同じ形態であり、ハードウェア化が容易である。
【0046】
図7(b)は、MUXパターン値「01」のMUXパターン例を示すもので、STC信号を、時間とともにOFDM信号の異なるキャリアに周期的に割り当てるものである。なお、割り当て周期は、予め送/受信側両方に蓄積しておく。このMUXパターンは、規則性があるためPLL(Phase Locked Loop)が作り易く、ハードウェア化が比較的容易になる利点がある。
【0047】
図7(c)は、MUXパターン値「10」のMUXパターン例を示すもので、STC信号を、所定の規則に従って時間とともにOFDM信号のキャリアにランダムに割り当てるものである。なお、所定の規則であるランダマイズするパターンは、予め送/受信側両方に蓄積しておく。このMUXパターンは、STC信号の配置をランダマイズするので、フェージング等に強力な耐性を有する利点がある。
【0048】
図7(d)は、MUXパターン値「11」のMUXパターン例を示すもので、STC信号を、所定時間毎にOFDM信号の全てのキャリアに割り当てるものである。このMUXパターンは、規則性があるためハードウェア化が比較的容易になる利点がある。また、移動受信においては、STC信号の受信タイミングが分かるので、該当するシンボル期間だけ復調動作をすれば良く、受信装置の省電力化が期待できる。
【0049】
図7(a)〜(d)に示す4つのMUXパターン例は、上述したように、いずれか1つを送受信装置間で固定的に使用するように予め設定してもよいし、4つのMUXパターン例の全てを送受信装置間でパターンデータベースとして情報を共有して、適宜変更して使用するようにしてもよい。
【0050】
図8は、図2に示したデータ受信装置200の要部の具体的構成を示す図である。データ受信装置200は、図2に示したDEMUX203、STC復号部204の他、2個の前処理部205,206、3個の後処理部207,208,209を有している。図8において、2本の受信アンテナ201,202(図2参照)に対応する受信信号1および受信信号2は、対応する前処理部205,206にそれぞれ供給される。前処理部205,206は、入力される受信信号1,2を、それぞれガード相関処理、FFT(Fast Fourier Transform)処理して、各キャリアを同期させる。これら前処理部205,206の出力信号は、DEMUX203に供給される。
【0051】
DEMUX203は、2個のTMCC復調部211,212、TMCC読取部213、2個のSP(Scattered Pilot)抽出/等化処理部214,215、伝送路応答算出/偏波分離部216、2個のキャリア分離部217,218を有する。前処理部205で処理された受信信号1は、TMCC復調部211に入力されてTMCC信号が復調された後、SP抽出/等化処理部214に入力されてSPの抽出処理および等化処理が行われて伝送路応答算出/偏波分離部216に入力される。同様に、前処理部206で処理された受信信号2は、TMCC復調部212に入力されてTMCC信号が復調された後、SP抽出/等化処理部215に入力されてSPの抽出処理および等化処理が行われて伝送路応答算出/偏波分離部216に入力される。
【0052】
TMCC復調部211,212で復調されたTMCC信号は、TMCC読取部213で読み取られる。TMCC読取部213は、TMCC信号からMUXパターン値を抽出し、その抽出したMUXパターン値に対応するキャリア情報を、内蔵するMUXパターンデータベースから取得して、その取得したキャリア情報をキャリア分離部217,218に供給する。
【0053】
伝送路応答算出/偏波分離部216は、SP抽出/等化処理部214,215で抽出されたSPに基づいて伝送路応答を算出し、その算出された伝送路応答に基づいて水平/垂直偏波の受信信号を分離する。この伝送路応答算出/偏波分離部216で分離された一方の受信信号はキャリア分離部217に、他方の受信信号はキャリア分離部218にそれぞれ供給される。
【0054】
キャリア分離部217,218は、TMCC読取部213で抽出されたTMCC信号内のMUXパターン値に対応するキャリア情報に基づいて、SDM信号キャリアとSTC信号キャリアとを分離する。すなわち、固定受信向けストリームと移動受信向けストリームとを分離する。そして、DEMUX203は、キャリア分離部217で分離されたSDM信号キャリアを後処理部207に、STC信号キャリアをSTC復号部204にそれぞれ供給し、キャリア分離部218で分離されたSDM信号キャリアを後処理部208に、STC信号キャリアをSTC復号部204にそれぞれ供給する。
【0055】
STC復号部204は、キャリア分離部217,218で分離されたSTC信号を復号して1つのSTC信号を生成する。例えば、STC符号としてSTBC符号が用いられた場合は、図8に吹き出して示すように、一方のキャリア分離部217から得られる時間的(もしくは周波数的)に連続した2つの複素ベースバンド信号(I,Q)のy1(m),y1(m+1)と、一方のキャリア分離部218から得られる2つの複素ベースバンド信号(I,Q)のy2(m),y2(m+1)とを、STC復号部204に相当するMIMO−STBC復号部219により、s(m),s(m+1)のSTC信号を生成する。そして、STC復号部204(MIMO−STBC復号部219)で復号されたSTC信号(STBC信号)は、後処理部209に供給される。
【0056】
後処理部207,208,209は、それぞれ入力する受信信号に対して、必要に応じて、周波数デインターリーブ、時間デインターリーブ、デマッピング、ビットデインターリーブ、符号誤り訂正、エネルギー逆拡散等を行う。これにより、空間分割多重して送信された2個のSDM信号1,2と、時空間符号化されて送信されたSTC信号とのそれぞれの受信データが得られる。これらの受信データは公知の手法により処理されて、映像を表示する等の復調されたストリームデータが出力される。
【0057】
図9は、図8の前処理部205,206からSTC復号部204までの要部の処理を示すフローチャートである。上述したように、先ず、前処理部205,206は、それぞれの受信信号をキャリア同期させる(ステップS901)。次に、DEMUX203において、TMCC復調部211,212により各受信信号からTMCC信号を復調し(ステップS902)、その復調されたTMCC信号からTMCC読取部213によりMUXパターン値を抽出する(ステップS903)。
【0058】
その後、SP抽出/等化処理部214,215において、各受信信号からSPを抽出するとともに、各受信信号の等化処理を行ってから(ステップS904)、伝送路応答算出/偏波分離部216において、両受信信号を水平/垂直偏波毎に偏波分離する(ステップS905)。つまり、ステップS904およびS905において、MIMO復調処理が行われる。
【0059】
一方、TMCC読取部213は、ステップS903においてMUXパターン値を抽出すると、その抽出したMUXパターン値と内蔵するMUXパターンデータベース220に記憶されているMUXパターン値と照合してMUXパターンを確定し(ステップS906)、そのMUXパターン値のキャリア情報をキャリア分離部217,218に供給する。そして、キャリア分離部217,218は、TMCC読取部213からのキャリア情報に基づいて、偏波分離された受信信号からSDM信号キャリアとSTC信号キャリアとを分離する(ステップS907)。これにより、例えば図10に示すように、同一OFDM信号内に配置されていたSDM信号とSTC信号とが分離される。
【0060】
そして、キャリア分離部217で分離されたSDM信号は後処理部207に、キャリア分離部218で分離されたSDM信号は後処理部208にそれぞれ供給される。また、キャリア分離部217,218で分離されたSTC信号は、STC復号部204で復号される(ステップS908)。
【0061】
ここで、上述したデータ送信装置100とデータ受信装置200とによるMIMO伝送路モデルについて説明する。なお、ここでは、主として移動受信用の送信信号をSTBC符号により伝送する場合を例にとって説明する。
【0062】
図11は、この場合のMIMO伝送路モデルを示す図である。なお、図11において、Tx1,Tx2は、データ送信装置100の送信アンテナ101,102に相当し、Rx1,Rx2は、データ受信装置200の受信アンテナ201,202に相当する。図11において、受信信号y1,y2は、次式で表される。
【数1】
【0063】
MIMO−SDM復調においては、各受信信号に含まれる既知パイロット信号からMIMO伝送路応答行列Hを求め、次式に示すように両辺に逆行列H-1をかけることにより、空間多重された送信信号x1,x2を分離して求めることができる。なお、受信装置雑音は無視できるほど小さいものとする。
【数2】
【0064】
また、MIMO−STBC復号について、受信信号y1に注目すると、下記の数式が成り立つ。
【数3】
【0065】
受信信号y2についても、受信信号y1と同様の数式が得られる。したがって、SDM復調の場合と同様に、各OFDMキャリアから伝送路応答を求めることにより、送信信号s(m),s(m+1)を復号することができる。なお、この際、受信信号y1のSN比(電力比)は、以下のように表される。受信信号y2についても、同様に表される。
【数4】
【0066】
このように、受信信号y1,y2ともに、SN比が改善されるので、システム全体のSN比は、更に改善される。その結果、より安定受信化が期待される。
【0067】
なお、データ受信装置200は、上述したようにSDM信号とSTC信号との双方を同時に受信処理する場合に限らず、いずれか一方のみを選択して受信処理することも可能である。
【0068】
図12〜図14は、それぞれ図2のデータ受信装置300,400,500の要部の具体的構成を示す図である。これらのデータ受信装置300,400,500は、図8に示したデータ受信装置200の部分構成からなるので、図8に示した構成要素と同一構成要素には、同一の参照符号を付して説明を省略する。つまり、図2に示したデータ受信装置200,300,400のDEMUX203,303,403は同一構成からなり、データ受信装置200,400,500のSTC復号部204,404,502は同一構成からなる。
【0069】
なお、図12のデータ受信装置300において、DEMUX303のキャリア分離部217,218は、SDM信号キャリアを抽出するキャリア抽出部として機能する。また、図13のデータ受信装置400において、DEMUX403のキャリア分離部217,218は、STC信号キャリアを抽出するキャリア抽出部として機能する。同様に、図14のデータ受信装置500において、キャリア分離部217は、STC信号キャリアを抽出するキャリア抽出部として機能する。なお、図14のデータ受信装置500は、受信信号系が1系統であるので、1系統の前処理部205、TMCC復調部211、SP抽出/等化処理部214およびキャリア分離部217が設けられており、伝送路応答算出/偏波分離部216は設ける必要がない。
【0070】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形または変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、データ送信装置100側からMUXパターン(合成パターン)情報を送信するようにしたが、MUXパターンを固定とする場合は、その送信を省略することもできる。この場合は、送受信装置の双方において、固定のMUXパターンのキャリア情報を有していればよい。また、データ送信装置100のSTC符号化部103は、上述したように送信信号を時空間ブロック符号化してSTBC信号を生成するSTBC符号化部により構成する場合に限らず、送信信号を空間周波数ブロック符号化してSFBC信号を生成するSFBC符号化部や、送信信号を時空間トレリス符号化してSTTC信号を生成するSTTC符号化部等により構成してもよい。さらに、本発明は、地上デジタル放送に限らず、同一送信信号内で、主として移動受信用の信号と、主として固定受信用の信号との送信または受信を行う装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
100 データ送信装置
101,102 送信アンテナ
103 STC符号化部
104,105 マルチプレクサ(MUX)
106,107 OFDM変調部
200,300,400 データ受信装置
201,202,301,302,401,402,501 受信アンテナ
203,303,403 デマルチプレクサ(DEMUX)
204,404,502 STC復号部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数N本(Nは2以上の整数)の送信アンテナからデータを送信するデータ送信装置であって、
第1受信形態用の送信信号を時空間符号化してN個のSTC信号を生成するSTC符号化部と、
第2受信形態用の空間分割多重するN個のSDM信号と前記STC符号化部からのN個の前記STC信号とを合成するN個のマルチプレクサと、
N個の前記マルチプレクサからの合成信号をそれぞれOFDM信号に変調するN個のOFDM変調部と、を備え、
N個の前記OFDM変調部でそれぞれ変調された前記OFDM信号から成るデータを、N本の前記送信アンテナから送信することを特徴とするデータ送信装置。
【請求項2】
前記マルチプレクサは、前記STC信号と前記SDM信号とを所定の合成パターンに従って合成する、ことを特徴とする請求項1に記載のデータ送信装置。
【請求項3】
前記合成パターンは、前記STC信号を、前記OFDM信号の特定キャリアに固定的に割り当てるものである、ことを特徴とする請求項2に記載のデータ送信装置。
【請求項4】
前記合成パターンは、前記STC信号を、時間とともに前記OFDM信号の異なるキャリアに周期的に割り当てるものである、ことを特徴とする請求項2に記載のデータ送信装置。
【請求項5】
前記合成パターンは、前記STC信号を、所定の規則に従って時間とともに前記OFDM信号のキャリアにランダムに割り当てるものである、ことを特徴とする請求項2に記載のデータ送信装置。
【請求項6】
前記合成パターンは、前記STC信号を、所定時間毎に前記OFDM信号の全てのキャリアに割り当てるものである、ことを特徴とする請求項2に記載のデータ送信装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のデータ送信装置から送信されるデータを受信するデータ受信装置であって、
少なくとも、
N本の受信アンテナと、
N本の前記受信アンテナからの受信信号を受けて、前記STC信号と前記SDM信号とを分離するデマルチプレクサと、
を備えることを特徴とするデータ受信装置。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のデータ送信装置から送信されるデータを受信するデータ受信装置であって、
少なくとも、
受信アンテナと、
前記受信アンテナからの受信信号を受けて、前記STC信号を復号するSTC信号復号部と、
を備えることを特徴とするデータ受信装置。
【請求項1】
複数N本(Nは2以上の整数)の送信アンテナからデータを送信するデータ送信装置であって、
第1受信形態用の送信信号を時空間符号化してN個のSTC信号を生成するSTC符号化部と、
第2受信形態用の空間分割多重するN個のSDM信号と前記STC符号化部からのN個の前記STC信号とを合成するN個のマルチプレクサと、
N個の前記マルチプレクサからの合成信号をそれぞれOFDM信号に変調するN個のOFDM変調部と、を備え、
N個の前記OFDM変調部でそれぞれ変調された前記OFDM信号から成るデータを、N本の前記送信アンテナから送信することを特徴とするデータ送信装置。
【請求項2】
前記マルチプレクサは、前記STC信号と前記SDM信号とを所定の合成パターンに従って合成する、ことを特徴とする請求項1に記載のデータ送信装置。
【請求項3】
前記合成パターンは、前記STC信号を、前記OFDM信号の特定キャリアに固定的に割り当てるものである、ことを特徴とする請求項2に記載のデータ送信装置。
【請求項4】
前記合成パターンは、前記STC信号を、時間とともに前記OFDM信号の異なるキャリアに周期的に割り当てるものである、ことを特徴とする請求項2に記載のデータ送信装置。
【請求項5】
前記合成パターンは、前記STC信号を、所定の規則に従って時間とともに前記OFDM信号のキャリアにランダムに割り当てるものである、ことを特徴とする請求項2に記載のデータ送信装置。
【請求項6】
前記合成パターンは、前記STC信号を、所定時間毎に前記OFDM信号の全てのキャリアに割り当てるものである、ことを特徴とする請求項2に記載のデータ送信装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のデータ送信装置から送信されるデータを受信するデータ受信装置であって、
少なくとも、
N本の受信アンテナと、
N本の前記受信アンテナからの受信信号を受けて、前記STC信号と前記SDM信号とを分離するデマルチプレクサと、
を備えることを特徴とするデータ受信装置。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のデータ送信装置から送信されるデータを受信するデータ受信装置であって、
少なくとも、
受信アンテナと、
前記受信アンテナからの受信信号を受けて、前記STC信号を復号するSTC信号復号部と、
を備えることを特徴とするデータ受信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−55375(P2013−55375A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190068(P2011−190068)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】
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