説明

トイレ装置

【課題】トイレ装置の動作中に停電があった場合でも、復電時に自動的に最適な処理を行うことを可能とする。
【解決手段】トイレ装置の動作中に、落雷等により停電が発生すると、停電発生時のトイレ装置の管理対象を示す管理対象情報および管理対象で行われている処理の段階を示す段階情報がEEPROMに記憶される。停電によりトイレ装置の電源がオフとなった後に復電した場合(S200)、CPUは、EEPROMから管理対象情報等を読み出してその内容を確認する(S210)。停電発生前に所定の処理ステップが実行されていたと判断した場合(S220)、その処理ステップがエラー状態であったか否かを判断する(S250)。エラー状態あった場合にはリトライ処理を実行する(S270〜S290)。処理ステップがエラー状態でない場合には、EEPROMから読み出した管理対象情報および段階情報に応じた最適な処理を実行する(S260)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排泄された汚物を粉砕して圧縮空気により既設トイレに圧送するトイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、寝たきり状態などの介護を必要とする人のために、介護用のポータブルトイレ装置が広く利用されている。一般的なポータブルトイレ装置は、例えば介護者が滞在(生活)する住宅や病院の各部屋に設置され、予め設置されている既設トイレに排出管を介して接続された構成となっている。このポータブルトイレ装置は、汚物が排泄される便器本体と、便器本体から排出される汚物を粉砕する粉砕機構とを備えている。利用者によって汚物が便器本体に排出されると粉砕機構により汚物が細かく粉砕され、粉砕された汚物(汚物流動体)がコンプレッサから供給される圧縮空気(空気圧)によって排水管を介して既設トイレに圧送される。既設トイレの便器本体内に圧送された汚物は、ポータブルトイレ装置から送信されるトイレ装置の使用の終了を知らせる終了情報に基づいて洗浄水と共に流されるようになっている。
【0003】
このようなポータブルトイレ装置としては、例えば、特許文献1に、排出部と、洗浄水供給部とを備えた便器内底方に、撹拌機構を設け、便器開口部に密閉可能な蓋体を設け、便器内に加圧供給して撹拌汚物水を排出する加圧流体供給部を付設してなるトイレ装置が開示されている。また、特許文献2には、筒状本体内の内筒内部に、回転破砕部と固定破砕部とで構成される破砕機構と、循環流促進部用として回転羽根と促進板とを備え、循環流促進板によって汚物の循環流を形成したトイレ装置が開示されている。上記特許文献1および2に開示されるトイレ装置は、規定量の洗浄水を溜めるための給水タンクを備えている。この給水タンクは、給水管を介して既設トイレ装置等の水道管に接続されており、給水管の経路中に設けられた弁の開閉制御により規定量の水が給水されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−8442号公報
【特許文献2】特開2008−86880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のトイレ装置では、トイレ動作中に、落雷等により停電が発生した際の復電時の単純な復旧処理では下記(1)、(2)等に示すような問題がある。
(1)給水動作中に停電が発生した場合、復電後に通常通り給水を再開すると、停電前に所定量の水が溜められた給水タンクに、さらに規定水量が溜められてしまうことになるので、給水再開により給水タンク内の水が溢れてしまう場合がある。一方で、復電時に給水タンクに給水を行わない場合、停電前の給水動作で給水タンク内に規定量の洗浄水が溜まっていないと、少ない洗浄水の水量で粉砕・圧送処理を行わなければならず、汚物が経路途中で詰まってしまったり、汚物の粉砕が不十分となってしまう問題がある。
(2)汚物やトイレットペーパーの粉砕処理中に停電が発生した場合、停電から復電までの間に一定時間が経過してしまうと、粉砕機構の容器内の汚物が容器の底面部に沈殿してしまう場合がある。このような場合、停電前からの粉砕処理の継続、つまり、停電前からの累積時間内での粉砕処理では、十分に粉砕と攪拌を行うことができないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、動作中に停電があった場合でも復電時に自動的に最適な処理を行うことが可能なトイレ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るトイレ装置は、排泄された汚物を受容して当該汚物を洗浄水と共に粉砕して汚物流動体と成し、当該汚物流動体を廃棄場所へ導いて排出するトイレ装置本体を備えたトイレ装置において、トイレ装置本体の動作中に発生した停電を検出する検出手段と、トイレ装置本体の動作状態を示す動作状態情報を記憶する記憶手段と、検出手段により停電が検出された後にトイレ装置本体が再起動(復電)された場合に、記憶手段に記憶されている動作状態情報に基づいてトイレ装置本体の動作を再開する制御手段とを備えたものである。
【0008】
本発明において、トイレ装置の動作中に、落雷や電源プラグの取り外し等により停電が発生した場合、検出手段により停電が検出される。停電が検出されると、トイレ装置本体の動作状態を示す動作状態情報が記憶手段に記憶される。動作状態情報には、停電発生時のトイレ装置の管理対象を示す管理対象情報と、管理対象で行われている処理の段階を示す段階情報とが含まれている。動作状態情報の記憶は、停電時だけでなく、定期的または動作状態情報が更新される毎に行うこともできる。停電によりトイレ装置の電源がオフとなった後に復電された場合、制御手段により記憶手段に記憶されている動作状態情報が読み出され、読み出された動作状態情報に基づいてトイレ装置本体の動作が再開される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、停電が発生した場合に、復電時に停電発生以前に実行されていた処理に応じた最適な処理を行うので、停電発生前の処理を何ら考慮しない従来の復旧処理と比べて、復電後におけるエラー発生や動作不良を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係るトイレ装置の概略構成例を示す図である。
【図2】トイレ装置のブロック構成例を示す図である。
【図3】EEPROMに記憶される動作状態情報の一例を示す図である。
【図4】トイレ装置の動作例を示すタイミングチャートである(その1)。
【図5】トイレ装置の動作例を示すタイミングチャートである(その2)。
【図6】停電発生時のトイレ装置の動作例を示すフローチャートである。
【図7】復電時のトイレ装置の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明を実施するための最良の形態(以下実施の形態とする)について説明する。
[圧送式トイレシステムの構成例]
図1は、本発明に係る圧送式トイレシステムTSの概略構成の一例を示す図である。本発明に係る圧送式トイレシステムTSは、停電発生時にトイレ装置100の動作状態情報をEEPROM8bに保存し、復電時にEEPROM8bから動作状態情報を読み出してこの動作状態情報に適した最適な処理を実行するものである。ここで、停電とは、落雷によりトイレ装置100への電力供給が停止する場合や、電源プラグがコンセントから外れることによりトイレ装置100への電力供給が停止する場合等を含むものである。
【0012】
圧送式トイレシステムTSは、図1に示すように、介護者の居室等に設置される持ち運び可能なトイレ装置100と、予め住宅等に設置されている既設トイレ装置200とを備えている。トイレ装置100と既設トイレ装置とは排出管3fを介して連通されており、トイレ装置100側で排泄されて粉砕された汚物が、圧縮空気により排出管3fを経由して既設トイレ装置200に圧送される構成となっている。
【0013】
[トイレ装置の構成例]
トイレ装置(トイレ装置本体)100は、便器本体10と給水タンク4と粉砕装置2と圧送タンク3と圧力センサ12と連通管14とエア抜き電磁弁18と安全弁50とを備えている。便器本体10は、便蓋1aと便座1bと便器1cとを有している。便蓋1aは、便座1bの後部上端縁に図示しない取付部材を介して開閉可能に取り付けられている。便座1bは、便蓋1aと便器1cとの間に介設され、図示しない取付部材を介して便器1cの後部上端縁に開閉可能に取り付けられている。便器1cは、合成樹脂や陶器等からなる上端が開口されたボウル状をなし、汚物や洗浄水、トイレットペーパー等を受容する。便器1cの内側後部であってその上端部よりも若干低い位置には、便器1c内が満水となっているかを検出するための満水センサ1dが設けられている。
【0014】
給水タンク4は、例えば少なくとも1.7リットルの水が貯えられるような大きさのタンクにより構成され、便器本体10の後部に取り付けられている。給水タンク4には、既設トイレ装置200の給水口から分岐した給水管40の一端が接続されており、既設トイレ装置200側から水(洗浄水)が供給されるようになっている。
【0015】
給水管40の経路中には、タンク電磁弁4aと流量センサ(大)4bとが設けられている。タンク電磁弁4aは、便蓋1aの開閉に応じて給水管40の流路を開閉することで、給水タンク4への給水量や給水タイミングを調整する。流量センサ(大)4bは、タンク電磁弁4aよりも下流側に設けられて給水管40を流れる給水量(流量)を検出し、予め設定された給水量に達したときにタンク電磁弁4aを閉状態とさせ、給水タンク4に規定量の水が溜められるようにする。
【0016】
この給水管40は、タンク電磁弁4aの上流側で分岐しており、分岐した分岐管42の一端が人体局部を洗浄する洗浄便座の貯水タンク1eに接続されている。これにより、例えば、1リットルの人体局部洗浄用の水が給水管40および分岐管42を経由して貯水タンク1eに供給される。
【0017】
分岐管42の経路中には、便座電磁弁4cと流量センサ(小)4dとが設けられている。便座電磁弁4cは、利用者の人体局部洗浄開始ボタンの操作に基づいて分岐管42の流路を開閉し、貯水タンク1eへの給水量や給水タイミングを調整する。流量センサ(小)4dは、便座電磁弁4cの下流側に設けられて分岐管42を流れる給水量(流量)を検出し、予め設定された給水量となったときに便座電磁弁4cを閉状態とさせ、人体局部洗浄用に使用できる水量の上限を規定している。
【0018】
給水タンク4の内部には、洗浄水弁モータ4eとオーバーフロー検知スイッチ4fと洗浄水弁4gとが設けられている。洗浄水弁モータ4eは、洗浄水弁4gにチェーン4hを介して接続されており、ユーザにより洗浄ボタンが操作(押下)されると駆動して洗浄水弁4gを開き、給水タンク4に溜められている水を便器1cに流入させる。
【0019】
オーバーフロー検知スイッチ4fは、給水タンク4内のオーバーフローを検出するためのスイッチであり、給水タンク4内の水量が所定の規定量を超えたときにオンされる。オーバーフロー検知スイッチ4fがオンされると、タンク電磁弁4aを閉状態として給水タンク4に水が流入しないようになっている。
【0020】
給水タンク4の前面部には、便蓋1aの開閉を検出する便蓋開閉検知センサ13が設置されている。便蓋開閉検知センサ13は、便蓋1aが開いたときにオンされ、このオンに応じた開閉検知信号S13(図2参照)に基づいてトイレ装置100の準備動作や便器洗浄等の各種処理が開始される。
【0021】
便器本体10と粉砕装置2との間に設けられた投入口1fには、開閉弁(仕切り弁)2dが設けられている。開閉弁2dは、便器1cの前部下方に設置された開閉弁モータ2cに接続され、開閉弁モータ2cの駆動により水平移動することで投入口1fを開閉して便器本体10と粉砕装置2との間の流路を連通状態または非連通状態とする。開閉弁2dの移動経路中には、開閉弁開位置センサ90と開閉弁閉位置センサ92とが設けられている。
【0022】
粉砕装置2は、便器1cの下方に設置された収容容器22nと粉砕機構2jとを備えている。収容容器22nは、その上面部に便器本体10からの汚物が流下する図示しない流入口を有しており、この流入口が便器1cの投入口1fに接続されている。粉砕機構2jは、収容容器22nの内部に配置されており、トイレットペーパーや汚物を細かく擂り潰しながら粉砕する。粉砕機構2jは、上下に対向して配置された一対の固定臼2hおよび回転臼2iから構成されている。
【0023】
下側に配置された固定臼2hは、略円盤状を成して収容容器22nの底面部に固定され、回転臼2iとの対向面に凹凸形状の粉砕歯を有している。上側の回転臼2iは、略円盤状を成して図示しないシャフトを介して粉砕モータ2sに接続され、粉砕モータ2sの駆動により正回転または逆回転する。また、回転臼2iは、固定臼2hとの対向面に凹凸形状の粉砕歯を有しており、固定臼2hと若干の隙間を隔てて配置されている。回転臼2iの中央部には、図示しない複数の流入口が設けられており、便器本体10の投入口1fから排出された汚物が流入口から流れ込み、流れ込んだ汚物が洗浄水と共に固定臼2hと回転臼2iの隙間に入り込むようになっている。固定臼2hと回転臼2iの間隙に入り込んだ汚物は、それぞれの粉砕歯により細かく擂り潰されて洗浄水と混合され、流動性の高い状態となる。以下では、汚物やトイレットペーパーが洗浄水と混合して擂り潰されたものを汚物流動体と称する。
【0024】
圧送タンク3は、連結管3gを介して粉砕装置2に接続されると共にエア管3iを介してコンプレッサ6に接続され、粉砕装置2で粉砕された汚物を収容すると共に内部にコンプレッサ6から供給される圧縮空気を充填する。圧送タンク3は、所定の径を有する円筒管であって、例えばコの字状に折り曲げられて粉砕装置2の下方に配置され、その上流側に汚物が流入する図示しない流入口を有すると共に下流側に汚物を排出する図示しない排出口を有している。排出口には排出管3fの一端が接続され、圧送タンク3の排出口から排出された汚物流動体が流入される。また、圧送タンク3は、上流側から下流側に向かって緩やかに傾斜して設置され、内部に収容した汚物を効率的に排出管3fに排出できるように構成されている。
【0025】
圧送タンク3と粉砕装置2との間の流路には、排出弁3bが設けられている。排出弁3bは、排出弁モータ2kに接続され、排出弁モータ2kの駆動により水平移動して圧送タンク3と粉砕装置2との間の流路を開閉することでその流路を連通状態または非連通状態とする。
【0026】
排出弁3bの移動経路中には、排出弁開位置センサ94と排出弁閉位置センサ96とが設けられている。排出弁開位置センサ94は、排出弁3bが開状態となるとオンとなり、排出弁3bが閉状態となるとオフとなる。排出弁閉位置センサ96は、排出弁3bが閉状態となるとオンとなり、排出弁3bが閉状態となるとオフとなる。
【0027】
コンプレッサ6は、圧送タンク3の後部に設置されており、エア管3iを介して圧送タンク3に連通している。このコンプレッサ6は、圧縮した空気を作り出し、作り出した圧縮空気を圧送タンク3に供給して圧送タンク3内を圧縮空気で充填し、圧送タンク3内に収容されている汚物流動体を空気圧で圧送する。圧力センサ12は、エア管3iに取り付けられて圧送タンク3内の圧力を検知する。
【0028】
連通管14は、一端が粉砕装置2の収容容器22nの上面部に接続されると共に他端が圧送タンク3の上面部に接続され、粉砕装置2と圧送タンク3との間を連通している。この連通管14は、粉砕装置2から圧送タンク3に流下する汚物の経路とは異なる経路を形成するものであって、粉砕装置2から圧送タンク3への汚物の流下時に汚物とは別経路で圧送タンク3内の空気を粉砕装置2内に導く。
【0029】
エア抜き電磁弁18は、連通管14の経路途中に設けられ、制御ユニット8の制御により排出弁3bの開閉操作に連動して開閉し、連通管14の経路を連通状態と非連通状態とに切り替える。例えば、排出弁3bが開くとこれに連動してエア抜き電磁弁18が開き、排出弁3bが閉じるとこれに連動してエア抜き電磁弁18が閉じるように制御される。これにより、粉砕装置2から圧送タンク3への汚物の流下時に、圧送タンク3内の空気を別経路の連通管14から逃すことができる。
【0030】
また、エア抜き電磁弁18は、圧送動作において、圧送タンク3内が異常圧力となったときに開いて、圧送タンク3内の空気を粉砕装置2の収容容器22n内に逃す機能を有している。これにより、圧送タンク3内の残圧が抜けて、圧送タンク3内を高圧状態から正常な圧力状態に戻すことができる。
【0031】
安全弁50は、圧送タンク3とコンプレッサ6との間を接続するエア管3iに連通して取り付けられている。この安全弁50は、圧送タンク3内の圧力が異常となった場合に、圧送タンク3内の空気を自動的に外部に逃して圧送タンク3の内部を減圧することで、圧送タンク3内を正常な圧力に戻すものである。
【0032】
圧送タンク3の下面には、便器1cや圧送タンク3から漏れ出た水を受け止めて外部への漏水を防止するためのドレンパン16が設けられている。ドレンパン16の底面部には、漏水を検出するための漏水センサ24が設置されている。
【0033】
また、トイレ装置100は、制御ユニット8と電源72と予備電源74と停電検出センサ70とを備えている。制御ユニット8は、圧送式トイレシステムTSの全体の動作を制御するものである。電源72には、例えば家庭用の電源プラグ等が用いられる。停電検出センサ70は、電源72に接続され、トイレ装置100への電力の供給が停止したか否かを検出する。
【0034】
[既設トイレの構成例]
既設トイレ装置200は、一般の家庭で使用されているタンク式の洗浄トイレ装置であって、便器本体202と既設トイレ洗浄水弁モータ204と排出お知らせ装置206とを備えている。便器本体202には、排出管3fの一端が取り付けられており、トイレ装置100側から圧送される汚物流動体が流入されるようになっている。
【0035】
既設トイレ洗浄水弁モータ204は、トイレ装置100で汚物の圧送が終了したときにトイレ装置100の制御ユニット8から出力される圧送終了信号に基づいて駆動して、洗浄水を便器本体202内に流す。排出お知らせ装置206は、トイレ装置100側で便器洗浄や粉砕動作、搬送動作、圧送動作が行われていることを既設トイレ装置200側のユーザに報知するための装置であり、例えば、点灯により排出を報知するLEDやブザー音や警告音声等を出力するスピーカ等で構成されている。
【0036】
[圧送式トイレシステムのブロック構成例]
次に、本発明に係る圧送式トイレシステムTSのブロック構成の一例について説明する。図2は、圧送式トイレシステムTSの制御系のブロック構成例を示している。図2に示すように、トイレ装置100と既設トイレ装置200とはシリアル通信線60を介して電気的に接続され、トイレ装置100と既設トイレ装置200との間で双方向通信が可能となっている。
【0037】
トイレ装置100は、トイレ装置100の全体の動作を制御する制御ユニット8を備えている。制御ユニット8は、制御手段の一例であり、居室CPU(Central Processing Unit)8aとEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)8bとを有している。居室CPU8aは、EEPROM8bに格納されているプログラムを読み出して実行することにより、準備動作や洗浄動作、粉砕動作、搬送動作、圧送動作を実行する。EEPROM8bには、トイレ装置100の各動作を実行するためのプログラムや、停電発生時の居室CPU8aの書き込み動作により停電発生時のトイレ装置100の管理対象情報Imおよび段階情報Irが記憶される(図3参照)。なお、EEPROM8bは、記憶手段の一例を構成し、管理対象情報Imおよび段階情報Irは、動作状態情報の一例を構成する。
【0038】
制御ユニット8には、I/Oポート62を介して、タンク電磁弁4a、便座電磁弁4c、エア抜き電磁弁18、流量センサ(大)4b、流量センサ(小)4d、洗浄水弁モータ4e、開閉弁モータ2c、開閉弁開位置センサ90、開閉弁閉位置センサ92、粉砕モータ2s、排出弁モータ2k、排出弁開位置センサ94、排出弁閉位置センサ96、操作部80、表示部82、電源72、予備電源74、停電検出センサ70、便蓋開閉検知センサ13、圧力センサ12およびコンプレッサ6が接続されている。
【0039】
流量センサ(大)4bは、給水管40内を流れる水の流量を検出して流量検出信号S4bを居室CPU8aに供給する。タンク電磁弁4aは、居室CPU8aから供給される制御信号S4aに基づいて給水管40の流路を開閉し、給水タンク4に供給する給水量を制御する。制御信号S4aは、流量センサ(大)4bから供給される流量検出信号S4bに基づいて居室CPU8aにより生成される信号である。
【0040】
流量センサ(小)4dは、分岐管42内を流れる水の流量を検出して流量検出信号S4dを居室CPU8aに供給する。便座電磁弁4cは、居室CPU8aから供給される制御信号S4cに基づいて分岐管42の流路を開閉し、貯水タンク1eに供給する給水量を制御する。制御信号S4cは、流量センサ(小)4dから供給される流量検出信号S4dに基づいて居室CPU8aにより生成される信号である。
【0041】
エア抜き電磁弁18は、制御ユニット8から供給される制御信号S18に基づいてエア抜き電磁弁18を開閉する。制御信号S18は、排出弁3bを開閉するモータ駆動データD2kの出力や、排出弁開位置センサ94からの検出信号S94の入力に同期(連動)して制御ユニット8から出力される信号である。これにより、排出弁3bの開動作と同時にエア抜き電磁弁18が開くので、粉砕装置2から圧送タンク3内に汚物が流入されるのと同時に、圧送タンク3内の空気を別経路の連通管14を経由して粉砕装置2に排出できる。
【0042】
洗浄水弁モータ4eは、居室CPU8aから供給されるモータ制御信号S4eに基づいて回転駆動して洗浄水弁4gを開閉し、給水タンク4から便器1cに洗浄水を流入させたり、停止したりする。モータ制御信号S4eは、操作部80から供給される操作信号S80に基づいて居室CPU8aで生成される信号である。
【0043】
開閉弁モータ2cは、居室CPU8aから供給されるモータ制御信号S2cに基づいて回転駆動して開閉弁2dを開閉し、トイレットペーパーや汚物、洗浄水を便器1cから粉砕装置2に流下させたり、流下を停止させたりする。
【0044】
開閉弁開位置センサ90は、開閉弁2dが全開したことを検出して検出信号S90を居室CPU8aに供給する。開閉弁閉位置センサ92は、開閉弁2dが全開したことを検出して検出信号S92を居室CPU8aに供給する。居室CPU8aは、停電が発生した場合、検出信号S90,S92に基づいて開閉弁2dの開閉状態が「開完了」、「閉完了」、「開途中」または「閉途中」であるかを判断し、この判断結果を段階情報IrとしてEEPROM8bに保存する。例えば、居室CPU8aは、検出信号S90がオンの場合に開閉弁2dが「開完了」であると判断し、検出信号S92がオンの場合に開閉弁2dが「開完了」であると判断し、検出信号S90と検出信号S92が共にオフである場合に開閉弁2dが「開途中」または「閉途中」であると判断する(図4(G)、図4(H)参照)。
【0045】
粉砕モータ2sは、居室CPU8aから供給されるモータ制御信号S2sに基づいて回転駆動し、回転臼2iを回転させて汚物を粉砕する。モータ制御信号S2sは、開閉弁モータ2cの閉じ動作に基づいて居室CPU8aで生成される信号である。
【0046】
排出弁モータ2kは、居室CPU8aから供給されるモータ制御信号S2kに基づいて回転駆動して排出弁3bを開閉し、粉砕装置2で粉砕された汚物を圧送タンク3内に流入させる。モータ制御信号S2kは、粉砕モータ2sの閉じ動作に基づいて居室CPU8aで生成される信号である。
【0047】
排出弁開位置センサ94は、排出弁3bが全開したことを検出して検出信号S94を居室CPU8aに供給する。排出弁閉位置センサ96は、排出弁3bが全閉したことを検出して検出信号S96を居室CPU8aに供給する。居室CPU8aは、停電が発生した場合、検出信号S94,S96に基づいて排出弁3bの開閉状態が「開完了」、「閉完了」、「開途中」または「閉途中」であるかを判断し、この判断結果を段階情報IrとしてEEPROM8bに保存する。例えば、居室CPU8aは、検出信号S94がオンの場合に開閉弁2dが「開完了」であると判断し、検出信号S96がオンの場合に開閉弁2dが「閉完了」であると判断し、検出信号S94と検出信号S96が共にオフである場合に排出弁3bが「開途中」または「閉途中」であると判断する(図5(K)、図5(L)参照)。
【0048】
操作部80は、ユーザの操作ボタンの操作に応じた操作信号S80を生成して居室CPU8aに供給する。表示部82は、居室CPU8aから供給される制御信号(画像信号)S82に基づいて、異常LEDや清掃LED等を点灯表示させる。
【0049】
停電検出センサ70は、検出手段の一例であり、トイレ装置100の動作中に停電が発生したか否かを検出し、停電が発生したことを検出した場合に停電検出信号S70を生成して居室CPU8aに供給する。
【0050】
便蓋開閉検知センサ13は、例えば透過型のセンサにより構成されており、図1に示した便蓋1aの開閉動作を検出して、便蓋1aの開閉を示す開閉検知信号S13を制御ユニット8に出力する。圧力センサ12は、圧送タンク3内の圧力を検出して圧力検知信号(データ)S12を制御ユニット8に出力する。
【0051】
コンプレッサ6は、制御ユニット8から供給される制御信号S6に基づいて作動して圧縮空気を作り出し、排出弁3bが閉じた後に圧送タンク3内に圧縮空気を供給する。これにより、圧送タンク3内に流入した汚物流動体が圧縮空気によって排出管3fを経由して既設トイレ装置200に圧送される。
【0052】
予備電源74は、例えばコンデンサや電池等により構成され、停電発生時に電源72から切り替えられて居室CPU8aに電力を供給する。なお、このコンデンサや電池等は、停電発生時に居室CPU8aがEEPROM8bに管理対象情報Im等を書き込むだけの電力を保持しているものとする。
【0053】
続けて、既設トイレ装置200側の制御系について説明する。既設CPU210は、既設CPU210を備えている。既設CPU210は、トイレ装置100側の居室CPU8aから供給される制御信号S21に基づいて、既設トイレ洗浄水弁モータ204や排出お知らせ装置206の動作を制御する。既設CPU210には、I/Oポート64を介して、既設トイレ洗浄水弁モータ204と排出お知らせ装置206とがそれぞれ接続されている。
【0054】
既設トイレ洗浄水弁モータ204は、既設CPU210から供給されるモータ制御信号S04に基づいて回転駆動して図示しない洗浄水弁を開き、トイレ装置100側から圧送された汚物流動体を洗浄水により流す。排出お知らせ装置206は、トイレ装置100側で洗浄動作等が開始されたことを報知するお知らせLEDやブザー音で報知するスピーカ等を備え、制御ユニット8の指示に基づいてLEDの点灯やブザー音を出力する。
【0055】
[メモリに記憶される情報例]
次に、EEPROM8bに格納される動作状態情報の一例について説明する。図3は、EEPROM8bに格納される動作状態情報の一例を示している。図3に示すように、EEPROM8bには、停電発生時のトイレ装置100の管理対象を示す管理対象情報Imと、この管理対象で実行されている処理の段階を示す段階情報Irとがそれぞれ対応付けられて記憶される。管理対象情報Imとは、トイレ装置100の準備動作、洗浄動作、粉砕動作、圧送動作で使用される部材やこれらの各動作の状態を示すものである。
【0056】
例えば、図3に示すように、給水動作(準備動作)時に停電が発生した場合、EEPROM8bには、管理対象情報Imとして「給水タンク」が記憶され、段階情報Irとして停電前までに給水タンク4に溜められた「給水水量(リットル)」が記憶される。
【0057】
洗浄動作時に停電が発生した場合、EEPROM8bには、管理対象情報Imとして「洗浄水弁4g」が保存され、段階情報Irとして洗浄水弁4gの「開閉状態」が記憶される。「開閉状態」としては、停電発生時に、洗浄水弁4gが完全に開いている場合には「開完了」が記憶され、洗浄水弁4gが完全に閉じている場合には「閉完了」が記憶され、洗浄水弁4gが開き途中の場合には「開途中」が記憶され、洗浄水弁4gが閉じ途中の場合には「閉途中」が記憶される。なお、その他の開閉弁2dや排出弁3bについては、洗浄水弁4gと管理対象情報Imが異なるだけで、段階情報Irは同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0058】
粉砕動作時に停電が発生した場合、EEPROM8bには、管理対象情報Imとして「粉砕モータ」が記憶され、段階情報Irとして「粉砕処理状態」が記憶される。「粉砕処理状態」としては、粉砕処理の途中で停電が発生した場合には「粉砕中」が記憶され、粉砕処理の停止中で停電が発生した場合には「停止中」が記憶される。
【0059】
圧送動作中に停電が発生した場合、EEPROM8bには、管理対象情報Imとして「圧送タンク」が記憶され、段階情報Irとして圧送動作の「圧送状態」が記憶される。「圧送状態」としては、圧送動作の途中で停電が発生した場合には「圧送中」と「圧送経過時間」とが対応付けられて記憶され、圧送動作の停止中に停電が発生した場合には「停止中」が記憶される。「圧送経過時間」とは、圧送動作開始時から停電発生時までの時間である。
【0060】
また、EEPROM8bには、停電時に保存される管理対象情報Imおよび段階情報Irに応じて実行されるトイレ装置100の動作内容情報(プログラム)が記憶されている。例えば、給水動作中に停電が発生した場合、居室CPU8aは、復電時に規定水量までの不足分の洗浄水を給水するように動作を実行する。また、洗浄水弁4gの開閉中に停電が発生した場合、居室CPU8aは、開閉動作が完了するように洗浄水弁4gを継続動作させる。また、粉砕動作中に停電が発生した場合、居室CPU8aは、粉砕動作を最初からやり直すように粉砕動作を実行する。さらに、圧送動作中に停電が発生した場合、居室CPU8aは、停電発生前からの累積時間が予め設定された規定時間に達するまで圧送動作を継続して実行する。
【0061】
[圧送式トイレシステムの動作例]
次に、本発明に係るトイレ装置100の動作の一例について説明する。図4および図5は、トイレ装置100の動作例を示すタイミングチャートである。トイレ装置100の処理工程は、準備動作、便器洗浄動作、粉砕動作、搬送動作および圧送動作の5つの工程で構成されている。本例では、各工程を1回行う例について説明するが、もちろん各工程を2回行っても良いし、複数の工程を同時に並列処理しても良い。
【0062】
ユーザによりトイレ装置100の使用が開始されると、まず、トイレ装置100では準備動作が行われる。時刻t1で、ユーザによりトイレ装置100の便蓋1aが開けられると、便蓋開閉検知センサ13がオンとなり、開閉検知信号S13がローレベル(以下Lレベルという)からハイレベル(以下Hレベルという)に立ち上がる(図4(A),図4(B))。
【0063】
便蓋開閉検知センサ13により便蓋1aの開きが検出されると、時刻t2においてタンク電磁弁4aが開き、給水タンク4に給水が開始される。時刻t3でタンク電磁弁4aが閉じて給水タンク4への給水が停止する(図4(C))。これにより、給水タンク4には例えば1.7リットルの水が溜められる。
【0064】
便座電磁弁4c(タンク電磁弁4a)が開いて貯水タンク1eに水が給水され始めると、時刻t4で、モータ制御信号S2cがLレベルからHレベルに立ち上がり開閉弁モータ2cが駆動する。そして、時刻t5で、モータ制御信号S2cがHレベルからLレベルに立ち下がり開閉弁モータ2cが停止する(図4(F))。これにより、開閉弁2dが少しだけ開口した状態となり、次工程の便器洗浄動作の洗浄水や人体局部洗浄水が便器1cに溜められる前に、予め開閉弁2dの上部に溜められていた少量の溜水が粉砕装置2に排出される。
【0065】
時刻t6において、ユーザの排泄が終了して便蓋1aが閉じられると、便蓋開閉検知センサ13がオフとなり、開閉検知信号S13がHレベルからLレベルに立ち下がる(図4(A),図4(B))。
【0066】
準備動作が終了すると、続けて便器洗浄動作が開始される。便蓋開閉検知センサ13がオフとなってから数秒経過すると、ユーザの排泄が終了したものと判断して、時刻t7〜t8においてモータ制御信号S4eがLレベルからHレベルに立ち上がり、洗浄水弁モータ4eが駆動して洗浄水弁4gが開く(図4(D),図4(E))。これにより、給水タンク4から便器1cに洗浄水が流入される。なお、洗浄水の流しの開始は、洗浄開始の操作ボタンがユーザにより操作されたときに行うようにしても良い。時刻t11〜t12で再度洗浄水弁モータ4eが駆動して洗浄水弁4gが閉じる(図4(D),図4(E))。
【0067】
洗浄水の便器1cへの流入に同期して(同時に)、時刻t7〜t8で開閉弁モータ2cが正回転し、開閉弁2dが開く(図4(F))。これにより、汚物が載っている開閉弁2dの上面を洗浄水によって洗浄しつつ、開閉弁2dの開き動作に伴って汚物を粉砕装置2内に流入させることができる。汚物の粉砕装置2内への流入が終了する時刻t9〜t10で、開閉弁モータ2cが逆回転し、開閉弁2dが閉じる(図4(F))。
【0068】
時刻t4での開閉弁2dの小開口により、開閉弁閉位置センサ92の検出信号S92がHレベルからLレベルに立ち下がって開閉弁閉位置センサ92がオフとなる(図4(H))。時刻t8で、開閉弁2dの開位置への移動により、開閉弁開位置センサ90の検出信号S90がLレベルからHレベルに立ち上がって開閉弁閉位置センサ92がオンとなる(図4(G))。時刻t9で、開閉弁2dが開位置から閉位置に移動すると、開閉弁開位置センサ90の検出信号S90がHレベルからLレベルに立ち下がって開閉弁開位置センサ90がオフとなる(図4(G))。時刻t10で、開閉弁閉位置センサ92の検出信号S92がLレベルからHレベルに立ち上がって開閉弁閉位置センサ92がオンとなる(図4(H))。
【0069】
便器洗浄動作が終了すると、続けて粉砕動作が開始される。便蓋開閉検知センサ13がオフとなってからさらに数秒経過すると(便洗浄動作が終了すると)、時刻t11において、モータ制御信号S2sがLレベルからHレベルに立ち上がり、粉砕モータ2sが正回転する(図4(I))。これにより、粉砕動作が開始されて、便器1cから排出された汚物が粉砕機構2jにより細かく粉砕される。時刻t13で、モータ制御信号S4sがHレベルからLレベルに立ち下がって粉砕モータ2sが停止する。粉砕モータ2sが停止することで、回転臼2iの回転が停止して粉砕動作が終了する。
【0070】
粉砕動作が終了したら、続けて汚物を粉砕装置2から圧送タンク3に移動させる搬送動作が開始される。粉砕動作が終了してから数秒経過したら、時刻t14〜t15の間、排出弁モータ2kが正回転する(図5(J))。これにより、排出弁3bが閉位置から開位置に移動して開き、粉砕装置2内の汚物が圧送タンク3に流れ込む。排出弁3bの開動作に伴って、時刻t14で排出弁閉位置センサ96がオフとなり、時刻t15で排出弁開位置センサ94がオンとなる(図5(K),図5(L))。
【0071】
続けて、汚物の圧送タンク3内への搬送が終了したら、時刻t16において排出弁モータ2kが逆回転する(図5(J))。これにより、排出弁3bが開位置から閉位置に移動して閉じて、粉砕装置2と圧送タンク3とを結ぶ流路が非連通状態となる。排出弁3bの閉動作に伴って、時刻t16で排出弁開位置センサ94がオフとなり、時刻t17で排出弁閉位置センサ96がオンとなる(図5(K),図5(L))。
【0072】
また、時刻t15で、排出弁開位置センサ94がオンとなると、排出弁3bの開動作に同期(連動)してエア抜き電磁弁18が開き、連通管14が連通状態となる(図5(M))。これにより、粉砕装置2から圧送タンク3への汚物の流入に伴って、汚物流入経路とは別経路の連通管14を経由して圧送タンク3内の空気が粉砕装置2に排出される。時刻t16で排出弁開位置センサ94がオフになると、排出弁3bの閉動作に同期してエア抜き電磁弁18が閉じて、連通管14が非連通状態に切り替わる(図5(M))。これにより、圧送タンク3から粉砕装置2への空気の流入が停止する。
【0073】
排出弁3bが閉じて数秒経過したら(搬送動作が終了したら)、時刻t18において、コンプレッサ6が作動して圧縮空気を作り出して圧送タンク3に充填(送出)し、時刻t19においてコンプレッサ6が停止する(図5(N))。圧力センサ12は、圧送タンク3内の圧力の変化を検知する(図5(O))。正常動作時における圧送タンク3内の圧力は、圧送開始時に上昇し、圧送中は一定の圧力値で推移し、圧送終了時に下降する。
【0074】
既設トイレ装置200側では、時刻t6において、便蓋1aが閉じられて便蓋開閉検知センサ13がオフとなると、既設トイレ室の壁面部に設けられた排出お知らせ装置206のLEDが点灯する。さらに、トイレ装置100が便器洗浄、粉砕動作、搬送動作、圧送動作中であることを排出お知らせ装置206がブザー音で警告する(図5(P))。
【0075】
時刻t20〜t21および時刻t22〜t23において、既設トイレ洗浄水モータ32がオンすることで洗浄水弁が開く(図5(Q))。これにより、洗浄水が便器本体30内に流れて、トイレ装置100から圧送された汚物が排出される。
【0076】
[停電発生時のトイレ装置の動作例]
次に、停電発生時のトイレ装置100の動作の一例について説明する。図6は、停電発生時のトイレ装置100の動作の一例を示すフローチャートである。図6に示すように、ステップS100で居室CPU8aは、トイレ装置100の電源がオンされたか否かを判断する。居室CPU8aは、トイレ装置100の電源がオンされたと判断した場合にはステップS110に進み、トイレ装置100の電源がオンされていないと判断した場合には電源がオンされるまで待機する。
【0077】
ステップS110で居室CPU8aは、停電検出センサ70により停電が検出されたか否かを判断する。居室CPU8aは、停電検出センサ70から停電検出信号S70が供給された場合には停電が発生したと判断してステップS120に進み、停電検出センサ70により停電が検出されない場合には停電が発生していないと判断してステップS130に進む。
【0078】
停電検出センサ70により停電が検出された場合、ステップS120で居室CPU8aは、予備電源74に切り替えて、この予備電力74の電力を用いて、トイレ装置100の停電発生時(現在)の管理対象情報Imおよび段階情報IrをEEPROM8bに記憶する。管理対象情報Im等の記憶後に、電力供給が停止してトイレ装置100の電源がオフ状態となると、復電まで待機状態となる。トイレ装置100が復電すると、図7に示す動作フローに移行する。一方、停電が発生していない場合、ステップS130で居室CPU8aは、ユーザの操作に基づいて、準備動作、洗浄動作、搬送動作、粉砕動作および圧送動作等の処理を継続実行する。
【0079】
[復電時のトイレ装置の動作例]
次に、復電時のトイレ装置100の動作の一例について説明する。図7は、復電時のトイレ装置100の動作の一例を示すフローチャートである。図7に示すように、ステップS200で居室CPU8aは、停電によりトイレ装置100の電源がオフした後にトイレ装置100が再起動されたか否かを判断する。再起動としては、例えば、落雷による停電の場合には配電が再開された場合であり、電源プラグが取り外されていた場合には電源プラグがコンセントに挿入された場合である。居室CPU8aは、トイレ装置100が再起動されたと判断した場合にはステップS210に進み、トイレ装置100が再起動されていないと判断した場合には停電により電源がオフ状態のままであると判断してトイレ装置100が再起動されるまで待機状態となる。
【0080】
ステップS210で居室CPU8aは、停電時にEEPROM8bに保存されたトイレ装置100の管理対象情報Imおよび段階情報Irを読み出してその内容を確認する。
【0081】
ステップS220で居室CPU8aは、EEPROM8bから読み出した管理対象情報Imおよび段階情報Irから、停電発生時にトイレ装置100で準備動作、洗浄動作、粉砕動作および圧送動作の何れかの処理ステップ(動作)が実行中であったか否かを判断する。居室CPU8aは、停電発生時にトイレ装置100で何れかの上記処理ステップが実行中であったと判断した場合にはステップS250に進み、停電発生時にトイレ装置100で処理ステップを実行していなかった(停止状態)と判断した場合にはステップS230に進む。
【0082】
処理ステップを実行していなかったと判断した場合、ステップS230で居室CPU8aは、イニシャライズ動作を実行する。イニシャライズ動作とは、いわゆる空運転動作であり、便器1cに流入させた洗浄水のみを粉砕装置2内に流下させると共に粉砕機構2jを回転させ、その後、洗浄水を圧送タンク3内に流下させて圧縮空気により既設トイレ装置200に圧送する処理である。イニシャライズ動作が終了したらステップS240に進み、ステップS240でユーザによる次の操作指示があるまで待機状態となる。
【0083】
一方、停電発生時に処理ステップが実行中であった場合、ステップS250で居室CPU8aは、管理対象情報Imの内容が「エラー状態」であるか否かを判断する。居室CPU8aは、管理対象情報Imの内容が「エラー状態」であると判断した場合にはステップS270に進む。ステップS270で居室CPU8aは、管理対象情報Imに対応したリトライ処理を実行する。例えば、「エラー状態」が給水エラーである場合、タンク電磁弁4aを開いて給水管40内を水が流れるか否かを流量センサ(大)4bにより検出して確認する。
【0084】
ステップS280で居室CPU8aは、リトライ処理が成功したか否かを判断する。居室CPU8aは、リトライ処理が成功したと判断した場合にはステップS260に進み、リトライ処理が失敗した場合にはステップS290に進む。ステップS290で居室CPU8aは、例えば表示部82のLED等を点灯させてエラー表示を行う。
【0085】
リトライ処理が成功した場合や、管理対象情報Imが「エラー状態」以外の情報である場合、ステップS260で居室CPU8aは、管理対象情報Imおよび段階情報Irに応じて停電発生前に行っていた処理動作を継続して実行したり、処理動作を最初に戻して実行する。この継続処理が終了したらステップS240に進み、ユーザによる次の操作指示が入力されるまで待機状態となる。
【0086】
以上説明したように、本実施の形態によれば、トイレ装置100の動作中に停電が発生した場合、停電時のトイレ装置100の管理対象情報Imおよび段階情報IrをEEPROM8bに記憶し、復電時にEEPROM8bから管理対象情報Imおよび段階情報Irを読み出すので、これらの管理対象情報Imおよび段階情報Irに応じた最適な処理を実行することができる。
【0087】
[給水動作時に停電が発生した場合]
続けて、給水動作(準備動作)時に停電が発生した場合のトイレ装置100の動作の一例について詳細に説明する。給水動作中に停電検出センサ70により停電が検出されると、居室CPU8aは、停電発生時(現在)の管理対象である「給水タンク」を管理対象情報ImとしてEEPROM8bに記憶すると共に、停電前に給水タンクに溜められた水の「給水量」を段階情報IrとしてEEPROM8bに記憶する。「給水量」は、流量センサ(大)4bにより検出される。
【0088】
停電の発生後に、ユーザによりトイレ装置100が再起動されると、居室CPU8aは、管理対象情報Imとしての「給水タンク」と、段階情報Irとしての停電前に給水タンク4内に溜められた洗浄水の「給水量」をEEPROM8bからそれぞれ読み出し、これらの管理対象情報Imおよび段階情報Irに基づいて復電時に給水動作を再開する。
【0089】
居室CPU8aは、段階情報Irの「給水量」と、予め設定された給水タンク4内に溜められる水の「規定水量」とから不足分の給水量、つまり新たに追加する給水量を算出する。具体的には、予め設定された「規定水量」から停電前までに溜められた「給水量」を減算して、不足分の給水量を算出する。なお、「規定水量」は、例えばEEPROM8bに予め記憶され、「洗浄水」と「溜め水」の場合とで異なる「規定水量」が設定されているものとする。
【0090】
居室CPU8aは、不足分の給水量を算出したら、タンク電磁弁4aを開いて給水を開始する。そして、流量センサ(大)4bから供給される流量検出信号S4dに基づいて、不足分の給水量が得られるまで給水を行い、不足分の給水量が給水タンク4内に溜められた時点でタンク電磁弁4aを閉じて、給水タンク4内への給水を停止する。
【0091】
このように、本実施の形態によれば、給水動作中に停電が発生した場合、復電時において、停電前に給水した給水量を考慮して給水を再開するので、給水の再開により給水タンク4内の水が漏れ出してしまったり、洗浄水の水量が不足してしまう等の問題を回避することができる。これにより、復電時の動作再開後におけるエラー発生を防止できる。なお、貯水タンク1eへの便座水の給水動作時に停電が発生した場合も、上述した給水タンク4への給水動作と同様の動作により復電時の復旧動作を行うことができる。
【0092】
[洗浄動作時に停電が発生した場合]
続けて、洗浄動作時に停電が発生した場合のトイレ装置100の動作の一例について詳細に説明する。洗浄動作中に停電検出センサ70により停電が検出されると、居室CPU8aは、停電発生時(現在)の管理対象である「洗浄水弁」を管理対象情報ImとしてEEPROM8bに記憶すると共に、停電前の洗浄水弁4gの「開閉状態(開完了/閉完了/開途中/閉途中)」を段階情報IrとしてEEPROM8bに記憶する。
【0093】
停電の発生後に、ユーザによりトイレ装置100が再起動された場合、居室CPU8aは、管理対象情報Imとしての「洗浄水弁」と段階情報Irとしての「開閉状態」をEEPROM8bからそれぞれ読み出し、これらの管理対象情報Imおよび段階情報Irに基づいて洗浄動作を再開する。例えば、洗浄水弁4gの停電時の状態が「開途中」または「閉途中」である場合には、復電時に、開閉弁モータ2cを駆動させて洗浄水弁4gを開完了状態または閉完了状態とする。
【0094】
このように、本実施の形態によれば、洗浄水弁4gの開閉動作中に停電が発生した場合でも、復電時には動作途中の洗浄水弁4gの開閉動作を完了させるので、前工程の給水動作や次工程の破砕動作をエラーなく実行することができる。
【0095】
[粉砕動作時に停電が発生した場合]
続けて、粉砕動作時に停電が発生した場合のトイレ装置100の動作の一例について詳細に説明する。粉砕動作中に停電検出センサ70により停電が検出されると、居室CPU8aは、停電発生時(現在)の管理対象である「粉砕モータ」を管理対象情報ImとしてEEPROM8bに記憶すると共に、停電前の粉砕動作の「段階(粉砕中または停止中)」を段階情報IrとしてEEPROM8bに記憶する。
【0096】
停電の発生後に、ユーザによりトイレ装置100が再起動された場合、居室CPU8aは、管理対象情報Imとしての「粉砕モータ」と段階情報Irとしての「段階(粉砕中または停止中)」をEEPROM8bからそれぞれ読み出し、これらの管理対象情報Imおよび段階情報Irに基づいて粉砕動作を再開する。段階情報Irが「粉砕中」である場合には、停電前の粉砕処理の途中からではなく、粉砕動作を最初からやり直して実施する。一方、段階情報Irが「停止中」であると判断した場合には、再起動後も粉砕動作を停止状態のままとして待機する。
【0097】
このように、本実施の形態によれば、粉砕動作中に停電が発生した場合、復電時には粉砕動作を最初からやり直して実行するため、トイレ装置100の停電時発生から再起動時までに、粉砕装置2の収容容器22n内に汚物が沈殿した場合でも、沈殿した汚物を再度循環(浮上)させることができる。その結果、収容容器22nの底に汚物が残ることを防止でき、衛生面の向上を図ることができる。
【0098】
[圧送動作時に停電が発生した場合]
続けて、圧送動作時に停電が発生した場合のトイレ装置100の動作の一例について詳細に説明する。圧送動作中に停電検出センサ70により停電が検出されると、居室CPU8aは、停電発生時の管理対象である「コンプレッサ」を管理対象情報ImとしてEEPROM8bに記憶すると共に、停電前の圧送動作の「段階(圧送中または停止中)」を段階情報IrとしてEEPROM8bに記憶する。段階情報Irが「圧送中」である場合には、圧送開始時から停電時までの「圧送経過時間」を「圧送中」に対応付けてEEPROM8bに記憶する。
【0099】
停電の発生後に、ユーザによりトイレ装置100が再起動された場合、居室CPU8aは、管理対象情報Imとしての「コンプレッサ」と、段階情報Irとしての「段階(圧送中または停止中)」をEEPROM8bからそれぞれ読み出し、これらの管理対象情報Imおよび段階情報Irに基づいて圧送動作を再開する。段階情報Irが「圧送中」である場合には、停電により停止した圧送動作(加圧)をコンプレッサ6を作動させることで再開する。
【0100】
この復電後の圧送動作において、居室CPU8aは、圧送タイムアウト判定を行う。圧送タイムアウト判定では、予め設定された圧送開始から圧送終了までの圧送時間を規定する「圧送規定時間」と、EEPROM8bから読み出した「圧送経過時間」との差分(以下「差分時間」という)を算出し、再起動時(復電時)から現在までの「圧送時間」が「差分時間」を経過したか否かを判断する。すなわち、停電前の圧送開始時から再起動による現在までの「累積時間」が予め設定された「圧送規定時間」を越えたか否かを判断する。なお、「圧送規定時間」は、コンプレッサ6の機能と圧送タンク3の収容量とから予め設定され、例えばEEPROM8bに記憶されているものとする。
【0101】
居室CPU8aは、復電時から現在に至る「圧送時間」が「差分時間」を経過したと判断した場合、コンプレッサ6の動作を停止して圧送動作を終了する。一方、「圧送時間」が「差分時間」を経過していない判断した場合、コンプレッサ6を継続作動させて圧送動作を継続して実施する。
【0102】
このように、本実施の形態によれば、圧送動作中に停電が発生した場合でも、復電時においては、停電前に行われた圧送経過時間との累計時間により圧送動作を制御するので、排出管3fに汚物流動体を残留させることなく既設トイレ装置200に確実に圧送することができ、より衛生面の向上を図ることができる。
【0103】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。上記実施の形態では、管理対象情報Imおよび段階情報IrのEEPROM8bへの記憶を停電発生時に行っていたが、これに限定されることはない。例えば、定期的に管理対象情報Imおよび段階情報IrをEEPROM8bに記憶するようにしても良い。復電時には、停電が発生した時刻に最も近い時刻に記憶された管理対象情報Imおよび段階情報Irを読み出して、これらの管理対象情報Imおよび段階情報Irに応じた処理を実行すれば良い。
【0104】
また、定期的に管理対象情報Imおよび段階情報IrをEEPROM8bに記憶することは、一定の周期(時間)で記憶することに限定されず、管理対象情報Imおよび段階情報Irが更新される毎であっても良い。具体的には、トイレ装置100の動作状態が、給水動作(準備動作)から洗浄動作に切り替わるとき、洗浄動作から粉砕動作に切り替わるとき、粉砕動作から搬送動作に切り替わるとき、搬送動作から圧送動作に切り替わるときに管理対象情報Imおよび段階情報Irを更新することができる。CPU8aは、各モータの信号や各センサのオン/オフに基づいて動作の切り替えを検出し、切り替わった動作に対応した管理対象情報Imおよび段階情報IrをEEPROM8bに書き込んで更新する。
【符号の説明】
【0105】
2s・・・粉砕モータ(粉砕手段)、4・・・給水タンク(給水手段)、6・・・コンプレッサ(圧送手段)、8a・・・居室CPU(制御手段)、8b・・・EEPROM(記憶手段)、70・・・停電検出センサ(検出手段)、100・・・トイレ装置、200・・・既設トイレ装置、Im・・・管理対象情報、Ir・・・段階情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排泄された汚物を受容して当該汚物を洗浄水と共に粉砕して汚物流動体と成し、当該汚物流動体を廃棄場所へ導いて排出するトイレ装置本体を備えたトイレ装置において、
前記トイレ装置本体の動作中に発生した停電を検出する検出手段と、
前記トイレ装置本体の動作状態を示す動作状態情報を記憶する記憶手段と、
前記検出手段により停電が検出された後に前記トイレ装置本体が再起動された場合に、前記記憶手段に記憶されている前記動作状態情報に基づいて前記トイレ装置本体の動作を再開する制御手段と
を備えたことを特徴とするトイレ装置。
【請求項2】
前記動作状態情報は、前記記憶時における前記トイレ装置本体の管理対象を示す管理対象情報と、前記管理対象で行われている処理の段階を示す段階情報とを含む
ことを特徴とする請求項1に記載のトイレ装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記管理対象情報が前記汚物を粉砕する粉砕手段であるとき、当該粉砕手段による粉砕処理を最初の段階に戻してから再開する
ことを特徴とする請求項2に記載のトイレ装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記管理対象情報が前記トイレ装置本体に給水する給水手段であり、前記段階情報が給水タンク内に溜められた水の貯水量であるとき、当該給水タンク内の前記貯水量と予め設定された規定水量とに基づいて前記タンク内に追加する給水量を算出し、当該給水量が前記タンク内に給水されるように給水動作を再開する
ことを特徴とする請求項2に記載のトイレ装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記管理対象情報が前記汚物流動体を既設トイレに圧送する圧送手段であり、前記段階情報が圧送開始時から停電発生時までの圧送経過時間であるとき、圧送動作を再開し、当該圧送動作において、圧送動作の再開時から現在までの圧送時間と前記圧送経過時間との累積時間が、予め設定された圧送開始から圧送終了までの規定時間を越えたか否かを判断する
ことを特徴とする請求項2に記載のトイレ装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記記憶手段への前記動作状態情報の記憶を、前記検出手段により停電が検出された時、または、前記トイレ装置本体の動作中に定期的に、または、前記動作状態情報が更新される毎に行う
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のトイレ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−57391(P2012−57391A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203178(P2010−203178)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000006301)マックス株式会社 (1,275)
【Fターム(参考)】