説明

トナ−担持体

【発明の詳細な説明】
〔技術分野〕
本発明は一成分非磁性現像剤を使用する現像装置のトナー担持体に関するものであり、カラー複写機、特にフルカラー複写機、カラープリンター、カラーファクシミリ等に応用される。
〔従来技術〕
従来は二成分現像装置が主流であり、現像装置が複雑でコスト高であり、大型で重量がかさむなどの欠点があり、フルカラー複写機は大型でコスト高であった。
又、一成分現像剤を使用するプロセスとしては、磁性トナーを使用する技術が商用化されているが、磁性剤がトナー中に混入されているため、カラーが磁性剤のカラーに支配され、鮮明なカラーが得られなかった。
さらにまた、トナー担持層にトナー成分のフィルミングが発生し、現像トナーの帯電安定性が得られず、画像濃度の安定が得られなかった。
近年、高感度化、高耐久性化が可能になり、コスト、パンクロ性化に有利な有機感光体がSe系感光体に代って広く採用されつつある。有機感光体は通常■帯電にて感度付与が行われる。前記■成分非磁性現像剤は、有機感光体に対応させるためには■に帯電させることが望ましく、トナー担持体材料として含フッ素樹脂を使用することにより、トナーの■帯電の安定性が得られるが、含フッ素樹脂は耐摩耗性が悪く、耐久性に問題があった。
〔目的〕
本発明は、一成分非磁性トナーを使用する現像装置において、潜像担持体上の静電像と接触又は近接して、静電像をトナー現像するトナー担持体の最外層であるトナー担持層の耐摩耗性の向上、トナー搬送性の向上をはかり、現像装置の耐久性及び画質を向上し、従来の欠点を克服したトナー担持体を提供することを目的とする。
〔構成〕
本発明者は前記目的を達成するために、鋭意研究した結果、潜像担持体上の静電荷像と接触、又は近接して、前記静電荷像をトナー現像するトナー担持体、前記トナー担持体へトナーを供給するトナー供給部材、及び前記トナー担持体上へ供給されたトナーを均一な薄層とするためのトナー規制部材を設けた一成分非磁性現像剤を使用する現像装置において、前記トナー担持体の表面層が塗料用フッ素樹脂中に含フッ素高分子化合物微粉末を分散状態で含有せしめたものからなることを特徴とするトナー担持体を提供することによって前記目的が達成できることを見出した。
以下、本発明を第1図及び第2図に従って詳しく説明する。
第1図は、本発明のトナー担持体を備えた現像装置を含む複写装置の構成を示す概略図である。1は感光体であり、有機感光体、Se系、アモルファスシリコン系、CdS系光導電体−絶縁性バインダー系などが好都合に用いられる。
2は、感光体1に感光性を付与せしめるためのコロナ帯電器であり、3は画像露光を行う露光光学系であり、コロナ帯電器2により全面均一帯電された感光体1上には画像露光系3により図示されていない原稿の濃淡に対応した静電荷潜像が形成される。
前記のごとく形成された静電荷潜像は、現像器4により、トナー現像され、可視化される。現像器4において、4−1はトナー担持体、4−2はトナー供給部材、4−3はトナー層規制部材である。ここで使用される現像剤は一成分非磁性現像剤が好都合に使用される。一成分非磁性現像剤はトナーの帯電搬送を機能するキャリア粒子を含まず、又、トナー中に、磁性剤を含有しないトナーより成る現像剤であり、必要に応じてトナーの流動性、潜像担持体上の転写残トナーのクリーニング性向上などの性能向上外添剤を含む。トナーを構成する成分としては、主要樹脂としてスチレン系、ポリエステル系樹脂などの熱可塑性樹脂中に着色剤他必要に応じて荷電制御剤、定着適性向上剤などの機能付与剤が含有される。
トナー供給部材4−2の回転運動により、トナー4−6がトナー担持体4−1上に供給され、供給されたトナー4−6は、トナー担持体上に適当な厚みにて静電的に保持搬送され、トナー層規制部材4−3により均一薄層化される。通常、トナー規制部材4−3により、規制され薄層化されたトナー担持体4−1上のトナー層はトナーの単層となっており、又、トナー規制部材4−3とトナー担持体4−1との間にて、感光体1上に形成された静電荷像の極性とは逆の極性に均一に帯電される。このようにトナー担持体4−1上に、均一に薄層化され、帯電されたトナーは現像部4−7に搬送され、感光体1上の静電荷像に静電荷量に対応して感光体1上に付着することにより、トナー像が形成される。
なお、現像部4−7における感光体1の表面とトナー担持体4−1の表面とは接触あるいは近接していることによりトナー現像を可能にする。但し、近接状態にて現像を行う場合は適切な大きさの高周波バイアスを印加することにより、トナー4−6をトナー担持体4−1より飛しょうせしめて、前記感光体1上の静電荷像を現像せしめることができる。現像部4−7を通過した後、トナー担持体4−1上のトナーは除電ブラシ4−5で除電され、再使用される。
4−4はアジテータであり、トナー4−6のブロック化の防止とトナー供給部材4−2へ適当量のトナーを付着せしめ、トナー供給部材4−2のトナー供給性を高める働きも行う。
前記のごとく、現像部4−6を通過し、感光体1上に形成されたトナー像は転写極5により転写紙10上にコロナ転写され、分離極6により発生する交流コロナにより転写紙は感光性ドラム1から分離され、転写紙10上にトナー像が形成される。トナー像を担持した転写紙10は感光体1より分離された後、図示されていない定着器に搬送され、永久定着される。
転写後、感光体1上に残留している静電荷及びトナーは、除電極7及びクリーニング部8を通過し、クリーニングされることにより、感光体1は再使用可能状態となる。
なお、9は給紙部、9−1は給紙カセット、9−2は供紙ローラー、9−3はレジストローラー系である。
第2図は、第1図の本発明のトナー担持体4−1の構造を示す概略図である。
第2図Aは、ハードタイプのトナー担持体を示しており、電極4−1−4と軸部4−1−1とが一体に構成され、電極4−1−4上にトナー担持層4−1−5が設けられている。
第2図Bはソフトタイプトナー担持体を与える構造を示しており、軸部4−1−1、ソフト化層4−1−2、薄肉シリンダ4−1−3、電極4−1−4、トナー担持層4−1−5より構成されている。
本発明のトナー担持層はいずれのタイプのものにも利用できるが、ソフトタイプのトナー担持体は下記のような利点を有する。
第2図Bにおいて、ソフト化層4−1−2の材質としては、スポンジゴム、ウレタンフォームなど極めてソフトな材料が好ましく使用される。薄肉シリンダー4−1−3は20μ〜500μ厚のポリエステル、塩化ビニルなどのビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリイミドアミドなど広い範囲の樹脂が選択できる。又、ウレタンゴム、シリコーンゴムなどのゴム類なども好都合な材料であり、さらに又、電鋳法により製造されるNiシリンダも好都合な材料である。
第2図Bのごとく、トナー担持体4−1をソフトな構造にすることにより、トナー規制部材4−3のトナー担持体に対する均一接触が実現され、トナー担持層上の薄膜形成性を高めることができるとともに、第1図における感光体1へのトナー担持体のソフトな接触を実現し、感光体上に現像時付着するトナーの掻き取り効果を低減せしめ、画質向上をはかれると同時に、感光体1への機械的な摩耗を制御して感光体1の耐久性の向上へも寄与できる。
本発明は、第2図において、トナー担持層材料として塗料用フッ素樹脂中に含フッ素樹脂粉末を分散状態で含有せしめた材料を用いることを特徴としている。
一般に含フッ素樹脂は非粘着性に優れており、トナー担持層材料として使用する場合、熱的なトナーのフィルミングの発生を防止し、常に安定したトナー帯電とトナーフィルミングが原因で発生するスジなどの画像欠陥を防止できる。
又、近年、感光体として主流であるSe系感光体に代りつつある有機感光体は■帯電にて感度付与を行う感光体であり、有機感光体用トナーは■に帯電されることが望ましいが、含フッ素樹脂は、摩擦帯電列が■側に有り、トナーを■に荷電制御する作用が強いため、前記有機感光体用のトナー担持体として好都合なトナー担持層を与える。
しかしながら、含フッ素樹脂は、他の樹脂に比して一般に耐摩耗性が劣るため前記のトナー供給部材、トナー規制部材、感光体、トナーなどによる機械的刺激により短時間の使用中にトナー担持層上にスジ状の模様が発生したり、時にはトナー担持層のはく離が発生する場合もあり、画像上に重大な欠陥を生じ易かった。
加えて、含フッ素樹脂は非粘着性が高く接触物質に対する摩擦抵抗が少さいため、前記トナー供給部材によるトナーのトナー担持体への供給性が悪く濃度低下や画像ムラが生じ易いという欠点があった。
本発明は前記の欠点を改善し、耐久性が高く、前記機械的刺激により発生するスジ状の模様の発生を防止し、又、トナー供給ロールによるトナー供給性を向上し、常にコントラストの高い、スジ、ムラのない均一な高画像を実現するトナー担持体を与えることを目的とするものである。
本発明において、樹脂バインダー中に分散させるのに好都合な含フッ素樹脂粉末の例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライト(VDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(CTFE)等の微粉末が挙げられる。含フッ素樹脂粉末の適当な平均粒粒は0.1〜100μ、好ましくは0.1〜30μである。
塗料用フッ素樹脂100重量部に対する含フッ素樹脂粉末の好ましい重量比は25重量部〜80重量部である。
含フッ素樹脂粉末の含有量が小さくなると、含フッ素樹脂含有の効果が小さくなり、耐摩耗性が低下し、トナー担持体にキズが発生しやすくなり、画像にスジなどの欠陥が発生する。又、トナーのフィルミングが発生しやすくなったり、トナーの■帯電制御能が低下し、トナーの帯電性が不安定となる。含フッ素樹脂粉末の含有量が大きくなり過ぎると、含フッ素樹脂の性質が強くなり、耐摩耗性が低下し、トナー担持体へのキズの発生が生じやすくなり、又、トナーの搬送性が低下し、画像のコントラストが得られなくなる。
また、前述のような適切量の含フッ素樹脂微粉末を含有せしめることにより、耐摩耗性が向上する他に、含フッ素樹脂微粉末がトナー担持体表面上に適度な表面粗さを形成し、それによってトナー付着量を適当にコントロールし、常に高濃度の画像を形成せしめることができる。
前記含フッ素樹脂微粉末を含有する塗料用フッ素樹脂は旭硝子(株)製商品名「ルミフロン」等が好適である。
又、前記含フッ素樹脂粉末の他に前記樹脂バインダー中にカーボンブラック、SnO2などの導電性微粉末を含有せしめることは、トナー担持体の前記潜像担持体静電潜像に対する電極効果を高めるためベタ画像の再現性を向上し、階調性をコントロールすることができるため、望ましいトナー担持層を与える。
又、トナー担持層表面はトナー薄層形成の均一性を向上せしめるため、必要に応じて、研摩することも望ましい。
さらにまた、耐久性、耐摩耗性を向上するために平均粒径が0.1〜3μのTiO2などの金属酸化物、ZnSなどの金属硫化物等の無機化合物粉末を樹脂バインダーに添加しても良い。
以下、本発明のトナー担持体の製造例、その実施例及び比較例を下記に示すが、本発明はこれらに限定されるものでないことを理解すべきである。
製造例1

Bイソシアネート化合物 (コロネートEH) 10重量部 A剤を混合し、ボールミルにて48時間混合した後、ボールミル容器より混合液を取り出し、B剤(硬化剤)を加えて充分攪拌した後、第2図Bのトナー担持体電極層4−1−4上にディッピングにより塗布を行ない、トナー担持層を形成した。常温にて、充分乾燥後、100℃、5時間の熱処理を行った。熱処理後、サンドペーパー、バフにより研摩を行い、膜厚26μのトナー担持層4−1−5を形成した。
比較製造例1 製造例1において、PTFE粉末を加えない以外は、製造例1と全く同様にトナー担持層を形成せしめ、膜厚20μを得た。
実施例 前記製造例1及び比較製造例1のトナー担持体について、第1図の構成による作像試験機にて、画質の安定性及び耐久性について下記のように評価を行った。
作像試験機動作条件 感光体 有機感光体 120φ 周速 125mm/secトナー担持体 25.4φ 周速 500mm/secトナー供給ロール 14.0φ 周速 600mm/sec (ウレタンフォームからなり、トナー担持体への食い込み量1mm)
トナー層規制ブレイド エチレン−4フッ化エチレン共重合体 1mm厚 トナー担持体への食い込み量 1mm ブレードエッジ部の先端面がト ナー担持体の回転中心とブレイ ドエッジ部のトナー担持体に対 する接触点とを結ぶ直線とのなす角 32°評価項目1)耐久性 トナー担持体表面上にキズが生じて画像にスジ等が生じるかどうかの検査。
2)画質の安定性 トナー担持体上のトナー帯電量が変化し、トナー担持体上へのトナー付着量が変化して、初期時と多数枚コピー後とで画像濃度が変化するかどうかの検査。
3)画質 画像濃度、カブリ及び階調性の検査。
4)トナーフィルミング評価方法1)耐久性においては、1000枚コピーを行った後のトナー担持体表面上に発生する回転方向のキズの数で表わす。例えば、キズの本数/cm2。評価としては、キズが発生すれば×、発生しないとき○とする。
2)トナー帯電量はブローオフ法にて測定し、トナー帯電量の変化及びトナー付着量の変化は共に下記の式で表わす。


上記変化率の値が90〜110であれば○、その他は×とする。
3)画質について画像濃度 充分であるとき、 ○ やや不足 △ 不足 × カブリについて 明らかに目視されるとき × うっすらと、あるいは極く 部分的にみとめられるとき △ 全くみとめられないとき ○ 階調について ベタ画像の均一なコピーが 得られるとき ○ ベタ画像のエッジ部の濃度が 中央部に比して大きいが許容 できるレベルのとき △ ベタ画像のエッジ部の濃度が 中央部に比して大であるとき × 4)トナーフィルミングについて トナー担持層上のフィルミングの状態 1000枚コピーを行った後のトナーフィルミングの状態 目に見えるトナー フィルミング × 目ではほとんど見ることが できずトルエンなどの溶剤 でふくとフィルミング色が みとめられる。 △ 全くフィルミング発生せず。 ○ 前述の評価方法によって得られた結果を下記の表1に示す。


〔効果〕
以上述べたように、本発明のトナー担持体は、一成分非磁性現像剤を使用する現像プロセスにおいて、トナー担持層へのトナーフィルミングの防止、トナー担持層の耐久性向上、トナー担持体への均一な薄層形成を実現し、高画質、画質の安定を実現する。
加えて、極めてコンパクトで電子写真フルカラー複写機に重要な鮮明なカラートナーの使用を可能とし、コンパクトにて低コストな電子写真フルカラーシステムの実現性を高める。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明のトナー担持体を備えた現像装置を含む複写装置の概略図である。
第2図は本発明のトナー担持体の概略図であり、第2図Aはハードタイプのものを示し、第2図Bはソフトタイプのものを示す。
1……感光体、2……コロナ帯電器
3……露光光学系、4……現像器
5……転写極、6……分離極
7……除電極、8……クリーニング部
9……給紙部、10……転写紙
4−1……トナー担持体、4−2……トナー供給部材
4−3……トナー層規制部材、4−4……アジテーター
4−5……除電ブラシ、4−6……トナー
4−7……現像部、9−1……給紙カセット
9−2……給紙ローラー、9−3……レジストローラー
4−1−1……軸部、4−1−2……ソフト層
4−1−3……薄肉シリンダー、4−1−4……電極
4−1−5……トナー担持層

【特許請求の範囲】
【請求項1】潜像担持体上の静電荷像と接触、又は近接して、前記静電荷像をトナー現像するトナー担持体、前記トナー担持体へトナーを供給するトナー供給部材、及び前記トナー担持体上へ供給されたトナーを均一な薄層とするためのトナー規制部材を設けた一成分非磁性現像剤を使用する現像装置において、前記トナー担持体の表面層が塗料用フッ素樹脂中に含フッ素系高分子化合物微粉末を分散状態で含有せしめたものからなることを特徴とするトナー担持体。

【第1図】
image rotate


【第2図】
image rotate


【特許番号】第2504979号
【登録日】平成8年(1996)4月2日
【発行日】平成8年(1996)6月5日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭62−16737
【出願日】昭和62年(1987)1月27日
【公開番号】特開昭63−183471
【公開日】昭和63年(1988)7月28日
【出願人】(999999999)株式会社リコー
【参考文献】
【文献】特開昭59−149376(JP,A)
【文献】特開昭60−247669(JP,A)
【文献】特開昭61−176961(JP,A)