説明

トナー、二成分系現像剤及び画像形成方法

【課題】 本発明の目的は、転写効率とクリーニング性を両立し、耐ストレス性に優れ、更に低温定着と定着巻き付きを両立したトナーを提供することである。
【解決手段】 トナーの重量平均粒子径(D4)が、3.0μm以上8.0μm以下であり、前記トナーの、円相当径1.98μm以上200.00μm未満の粒子を0.200以上、1000以下の円形度の範囲において800分割して解析された平均円形度が、0.960以上0.985以下であり、円形度0.990以上1.000以下のトナーの個数Aが25.0個数%以下であり、円相当径0.50μm以上200.00μm未満の全粒子に対する、0.50μm以上1.98μm未満の粒子Bの個数%が10.0個数%以下であることを特徴とするトナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式、静電記録方式、静電印刷方式、トナージェット方式に用いられるトナー、そのトナーを用いた二成分系現像剤、及び、そのトナーを用いた画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置において長期にわたる良好な画像特性を得るために、トナーは、転写性とクリーニング性を両立することが求められている。そのために、特定の形状を有するトナーの粒子の分布状態を制御することが従来より行われている。
【0003】
特許文献1は、トナー粒子中の円相当径3.00μm以上のトナー粒子における、平均円形度および円形度分布を規定することにより、転写性とクリーニング性の両立を目指している。
【0004】
また、特許文献2では、粒径が2μm以上5μm以下のトナー粒子における円形度0.950以下のトナー粒子の個数%を40個数%以下に制御し、小粒径のトナー粒子の形状を適正化することで、転写効率を向上させ、高画質化を達成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−107517号公報
【特許文献2】特開2008−076574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のトナーは平均円形度が小さく、転写性及び現像性において改善の余地がある。
【0007】
また、特許文献2のトナーについて発明者らが検討した結果、粒径が2μmより小さい粒子が多く、印字画像比率40%条件下で1万枚以上プリントした場合、磁性キャリアの表面をトナーがスペントし、画像濃度が低下する可能性がある。
【0008】
本発明の目的は、転写効率とクリーニング性を両立し、多数枚を複写またはプリントした際の画像濃度変化が少ない耐ストレス性に優れたトナーを提供することにある。さらに、本発明の目的は、前記トナーを使用する二成分系現像剤及び画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、結着樹脂及びワックスを含有するトナー粒子と無機微粒子とを有するトナーであって、(i)重量平均粒径(D4)が3.0μm以上8.0μm以下であり、(ii)画像処理解像度512×512画素のフロー式粒子像測定装置による測定において、下記の条件(a)及び(b)を満たし、(a)円相当径1.98μm以上200.00μm未満の粒子において、該トナーの平均円形度が0.960以上0.985以下であり、円形度0.990以上1.000以下の粒子が25.0個数%以下である;(b)円相当径0.50μm以上200.00μm未満の粒子に対する、円相当径0.50μm以上1.98μm未満の粒子が10.0個数%以下である;(iii)ATR法を用い、ATR結晶としてGe、赤外光入射角として45°の条件で測定し得られたFT−IRスペクトルにおいて、2843cm−1以上2853cm−1以下の範囲の最大吸収ピーク強度をPa、1713cm−1以上1723cm−1以下の範囲の最大吸収ピーク強度をPbとし、ATR法を用い、ATR結晶としてKRS5、赤外光入射角として45°の条件で測定し得られたFT−IRスペクトルにおいて、2843cm−1以上2853cm−1以下の範囲の最大吸収ピーク強度をPc、1713cm−1以上1723cm−1以下の範囲の最大吸収ピーク強度をPdとしたときに、下記式(1)の関係を満たすことを特徴とするトナーに関する。
1.20≦P1/P2≦2.00 ・・・ (1)
[前記式(1)において、P1=Pa/Pb、P2=Pc/Pdである。]
また、本発明は、上記トナーを用いた二成分系現像剤及び画像形成方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐久性に優れ、転写効率とクリーニング性を両立したトナーを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】熱処理装置のフローを示す図である。
【図2】熱処理装置を示す図である。
【図3】熱風供給手段(2)及び気流調整部(2A)の一例を示した部分断面斜視図である。
【図4】冷風供給手段1(3)及び気流調整部(3A)の一例を示した部分断面斜視図である。
【図5】従来から用いられていた熱処理装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のトナーは、重量平均粒径(D4)が3.0μm以上8.0μm以下であり、画像処理解像度512×512画素(1画素あたり0.37μm×0.37μm)のフロー式粒子像測定装置による測定で、下記の条件(a)を満たすことが必要である。(a)円相当径1.98μm以上200.00μm未満の粒子において、平均円形度が0.960以上0.985以下であり、円形度0.990以上1.000以下の粒子が25.0個数%以下である。更に好ましくは、トナーの平均円形度が0.960以上0.975以下であり、円形度0.990以上1.000以下の粒子が20.0個数%以下である。
【0013】
球形に近いトナーは、異形のトナーに比べ、像担持体(感光体)との接触面積が小さいため、感光体との付着力が小さい。また、転写工程の際に形成される電界は、真球に近いトナーほど、電界が均一にかかり、転写材に転写されやすくなる。このような理由で、一般的に、トナーが球形に近いほど転写効率は高い。一方、トナーが球形に近くなるほど、トナーとクリーニングブレードとの接触面積が小さくなるため、像担持体上の転写残トナーをクリーニングブレードで掻き取ることが難しく、クリーニング性が低下してしまう。このように、転写性とクリーニング性とはある程度トレードオフの関係にあり、転写性とクリーニング性を両立させることは難しい。クリーニング性が低下する原因として、特に円形度0.990以上の粒子の存在量が影響している。しかし、一般に円形度0.990以上の粒子の存在量と平均円形度は正の相関関係があり、円形度0.990以上の粒子の存在量を少なくしようとすれば、平均円形度が下がり、転写性が低下してしまう。このように、転写性とクリーニング性を両立するためには、トナーの平均円形度及び円形度分布を適正な範囲に制御する必要がある。
【0014】
本発明者等が鋭意検討した結果、平均円形度が0.960以上0.985以下であり、且つ円形度0.990以上1.000以下の粒子が25.0個数%以下のとき、転写効率とクリーニング性が両立できることを見出した。
【0015】
この理由は、下記に示す通りである。一般に、トナー中の円形度0.990以上1.000以下の粒子の割合が大きいほど、トナーの円形度分布は広くなる。円形度分布が広いトナーは、同一平均円形度の円形度分布が狭いトナーに比べ、転写残トナー中に真球に近いトナーが多く存在する。真球に近いトナーは、クリーニングブレードの隙間をすり抜けやすいため、帯電ローラーを汚染してしまい、像担持体上の帯電ムラに起因した画像不良が起こりやすくなる。
【0016】
一方、上記した円形度分布が狭いトナーにおいては、円形度分布が広いトナーに比べ、真球に近い転写残トナーの量は少なくなる。その結果、円形度分布が狭いトナーを用いた場合、転写残トナーの多くが、ブレードで掻き採られるので、クリーニング性は良好となる。円形度0.990以上1.000以下のトナーの割合が25.0個数%を超えた場合、真球に近いトナーが多いため、クリーニング性が低下する。
【0017】
平均円形度が0.960未満の場合、異形のトナーが多く存在するため、像担持体上には転写残トナーが多量に残ってしまい、転写効率が十分ではない。また、画像出力時に、十分な画像濃度を得るために必要なトナー量が増え、ランニングコストの面でも好ましくない。平均円形度が0.985を超えた場合、転写効率は良好であるものの、真球に近いトナーが多い為、像担持体とクリーニングブレードとの隙間を転写残トナーがすり抜けやすく、像担持体上に転写残トナーが残ってしまう。その結果、転写残トナーが帯電ローラーを汚染することによって像担持体の帯電不良が起こる場合がある。また、像担持体上の転写残トナーによる像担持体上の電荷ムラにより、画像形成時に画像不良を起こす場合がある。この現象は、特に、像担持体最表面をクリーニングブレードにより削ることができない場合、顕著になる。
【0018】
本発明のトナーは、画像処理解像度512×512画素(1画素あたり0.37μm×0.37μm)のフロー式粒子像測定装置による測定で、条件(b)「円相当径0.50μm以上200.00μm未満の粒子に対する、0.50μm以上1.98μm未満の粒子が10.0個数%以下である。」を満たすことが必要である。条件(b)における0.50μm以上1.98μm未満の粒子の割合は、7.0個数%以下であることがより好ましい。
【0019】
0.50μm以上1.98μm未満の粒子が10個数%以下であれば、本発明のトナーを二成分系現像剤として用いた際に、磁性キャリアの表面へのトナースペントを抑制することができる。これによって、磁性キャリアの摩擦帯電付与能の低下を抑制することができるため、特にトナーを多く消費する高印字比率(印字画像比率40%以上)で長期耐久(多数枚の画像形成を行うこと)における、現像剤の長寿命化が計れる。
【0020】
一方、0.50μm以上1.98μm未満の粒子が10.0個数%を超えると、高印字比率(印字比率:40%以上)の長期耐久の際に、現像器内のストレスにより、0.5μm以上1.98μm未満の粒子が、磁性キャリアの表面をスペントしてしまう。その結果、磁性キャリアの摩擦帯電付与能は低下することでトナーの摩擦帯電量の低下が起こり、画像濃度の低下や、非画像部でのかぶりの発生、現像器内でのトナー飛散の発生が起こる場合がある。
【0021】
従来、平均円形度が0.960以上0.985以下であり、円形度0.990以上のトナーの割合を25.0個数%以下に抑え、0.50μm以上1.98μm未満のトナーの割合を10個数%以下に抑えたトナーを得ることは非常に困難であった。
【0022】
例えば、乳化凝集法によりトナー粒子を作製した場合は、平均円形度が0.960以上0.985以下であり、円形度0.990以上の粒子の割合が25個数%以下であるトナーが得られる可能性がある。しかし、乳化凝集法によりトナー粒子を作製した場合、0.50μm以上1.98μm未満のトナーの割合が10個数%よりも多くなってしまう。これは、トナーの製造過程で生成する乳化粒子の残留が原因である。また、懸濁重合法により得られるトナー粒子を有するトナーは、平均円形度が非常に高く、円形度0.990以上のトナーの割合も25.0個数%を超えてしまう。
【0023】
また、従来の粉砕法により得られるトナー粒子を有するトナーは、平均円形度が0.960よりも低くなってしまう。粉砕法により得られるトナー粒子を有するトナーの平均円形度を高めるための手段として、熱処理装置によってトナー粒子を球形化することが挙げられる。しかし、一般的な熱処理装置を用いると、トナーの平均円形度は0.960以上0.985以下になるものの、0.990以上の粒子の数が25個数%よりも多くなってしまう。これについては、後に詳述する。
【0024】
更に、本発明のトナーは、ATR法を用い、ATR結晶としてGe、赤外光入射角として45°の条件で測定し得られたFT−IRスペクトルにおいて、2843cm−1以上2853cm−1以下の範囲の最大吸収ピーク強度をPa、1713cm−1以上1723cm−1以下の範囲の最大吸収ピーク強度をPbとし、ATR法を用い、ATR結晶としてKRS5、赤外光入射角として45°の条件で測定し得られたFT−IRスペクトルにおいて、2843cm−1以上2853cm−1以下の範囲の最大吸収ピーク強度をPc、1713cm−1以上1723cm−1以下の範囲の最大吸収ピーク強度をPdとしたときに、下記式(1)の関係を満たす。
1.20≦P1/P2≦2.00 ・・・ (1)
[前記式(1)において、P1=Pa/Pb、P2=Pc/Pdである。]
該P1は、トナー表面からトナー中心部に向かうトナーの深さ方向において、トナー表面から約0.3μmにおける結着樹脂に対するワックスの存在比率に係る指数である。該P2は、トナー表面から約1.0μmにおける結着樹脂に対するワックスの存在比率に係る指数である。
【0025】
本発明では、トナー表面から約0.3μmにおける結着樹脂に対するワックスの存在比率に係る指数(P1)を、トナー表面から約1.0μmにおける結着樹脂に対するワックスの存在比率に係る指数(P2)より大きくし、その存在比率に係る指数比[P1/P2](すなわち、トナー表面からトナー中心部に向かうトナーの深さ方向におけるワックスの偏在度合い)を制御することが特徴である。以下に述べる様に、[P1/P2]を上記範囲に制御することで、トナーの耐久性を向上させることができると考えられる。
【0026】
トナーからのワックスの染み出しを良好にするためには、ある程度トナー表面にワックスを存在させる必要がある。トナーからのワックスの染み出しには、トナー表面から約0.3μmの間のワックスの存在比率が寄与している。しかし、トナー表面におけるワックスの存在比率が高くなると、トナー表面が軟らかくなり、無機微粒子の埋め込みが発生し易くなる。その結果、トナーの耐久性が低下してしまう。
【0027】
一方で、無機微粒子の埋め込みは、トナー表層だけではなく、その下層のやわらかさも関与している。例えば、トナーの最表層のワックス比率が高かったとしても、その下層が固い樹脂の層で構成されていれば、無機微粒子はその機能を失うほどには埋め込まれない。この無機微粒子の埋め込みに関与するのがトナー表層から約1.0μmの範囲である。
【0028】
[P1/P2]を上記範囲に制御することで、トナー表面からトナー中心部に向かうトナーの深さ方向において、トナー表面から約0.3μmの間のワックスの存在比率が、トナー表面から約1.0μmの間のワックスの存在比率に対してより多くなる。すなわち、ワックス比率が高いトナー表層からトナー中心部にいくにしたがって、樹脂が硬くなる。その結果、無機微粒子の過度な埋め込みが抑制され、トナーの耐久性を向上させることができる。
【0029】
該トナーの[P1/P2]は、好ましくは、1.25以上1.90以下であり、より好ましくは、1.30以上1.80以下である。
【0030】
トナーの[P1/P2]を上記範囲に制御するためには、後述する方法で該P1と該P2とを独立に制御する。
【0031】
トナーの[P1/P2]の算出方法は、下記の通りである。
【0032】
ATR法を用い、ATR結晶としてGe、赤外光入射角として45°の条件で測定し得られたFT−IRスペクトルにおいて、2843cm−1以上2853cm−1以下の範囲の最大吸収ピーク強度をPa、1713cm−1以上1723cm−1以下の範囲の最大吸収ピーク強度をPbとし、ATR結晶としてKRS5、赤外光入射角として45°の条件で測定し得られたFT−IRスペクトルにおいて、2843cm−1以上2853cm−1以下の範囲の最大吸収ピーク強度をPc、1713cm−1以上1723cm−1以下の範囲の最大吸収ピーク強度をPdとしたときに、P1=Pa/Pb、P2=Pc/Pdで算出できる。
【0033】
尚、最大吸収ピーク強度Pa乃至Pdは、FT−IRスペクトルの最大値からベースラインの影響を差し引いて求めたピークそのものの強度である。具体的には、最大吸収ピーク強度Paは、2843cm−1以上2853cm−1以下の範囲の吸収ピーク強度の最大値から3050cm−1吸収強度と2600cm−1の吸収強度との平均値を差し引いた値である。同様に、最大吸収ピーク強度Pbは、1713cm−1以上1723cm−1以下の範囲の吸収ピーク強度の最大値から1763cm−1の吸収強度と1630cm−1の吸収強度との平均値を差し引いた値であり、最大吸収ピーク強度Pcは、2843cm−1以上2853cm−1以下の範囲の吸収ピーク強度の最大値から3050cm−1の吸収強度と2600cm−1の吸収強度との平均値を差し引いた値であり、最大吸収ピーク強度Pdは、1713cm−1以上1723cm−1以下の範囲の吸収ピーク強度の最大値から1763cm−1の吸収強度と1630cm−1の吸収強度との平均値を差し引いた値である。
【0034】
FT−IRスペクトルにおいて、1713cm−1以上1723cm−1以下の範囲の吸収ピークは、主に結着樹脂由来の−CO−の伸縮振動に起因するピークである。結着樹脂由来のピークとしては、上記以外にも芳香環のCHの面外変角振動等様々なピークが検出されるが、1500cm−1以下の範囲には、ピークが数多く存在し、結着樹脂のピークだけを分離することが困難であり、正確な数値を算出できない。このため、他のピークとの分離が容易な1713cm−1以上1723cm−1以下の範囲の吸収ピークを結着樹脂由来のピークとして用いる。
【0035】
また、FT−IRスペクトルにおいて、2843cm−1以上2853cm−1以下の範囲の吸収ピークは、主にワックス由来の−CH−の伸縮振動(対称)に起因するピークである。ワックスのピークとしては、上記以外にも1450cm−1以上1500cm−1以下にCHの面内変角振動のピークが検出されるが、結着樹脂由来のピークとも重なり合ってしまい、ワックスのピークを分離することが困難である。このため、他のピークとの分離が容易な2843cm−1以上2853cm−1以下の範囲の吸収ピークをワックス由来のピークとして用いる。
【0036】
Pa及びPcを求めるに当たり、2843cm−1以上2853cm−1以下の範囲の吸収ピーク強度の最大値から3050cm−1と2600cm−1の吸収強度の平均値を差し引くが、通常、3050cm−1と2600cm−1付近には吸収ピークがないため、この2点の平均値を算出することで、ベースライン強度を算出できる。
【0037】
また、Pb及びPdを求めるに当たり、1713cm−1以上1723cm−1以下の範囲の吸収ピーク強度の最大値から1763cm−1と1630cm−1の吸収強度の平均値を差し引くが、通常、1763cm−1と1630cm−1付近には吸収ピークがないため、この2点の平均値を算出することで、ベースライン強度を算出できる。
【0038】
上記結着樹脂由来の最大吸収ピーク強度(Pb、Pd)及びワックス由来の最大吸収ピーク強度(Pa、Pc)が、結着樹脂及びワックスの存在量に相関している。そこで、本発明では、ワックス由来の最大吸収ピーク強度を結着樹脂由来の最大吸収ピーク強度で割ることで、結着樹脂に対するワックスの存在比率を算出している。
【0039】
定着部材に対して離型性を発現させるためには、定着工程時にワックスを染み出させて、定着部材とトナー層の間に離型層を形成することが重要であることがわかってきた。しかし、PODのような高速なマシンの場合、定着工程でのトナーの溶融時間が短くなるため、ワックスの染み出し時間が短くなり、十分な離型層が形成できなくなる。その結果、定着巻きつきが生じやすくなる。
【0040】
そのため、PODのような高速なマシンに適応するためには、ワックスを多量に添加する必要があり、その結果、トナー粒子の表面への無機微粒子の埋め込みや脱離による摩擦帯電量変化が大きくなる場合があった。
【0041】
本発明者らは、鋭意検討の結果、該P1は、画像の光沢性や耐定着巻き付き性に相関があることがわかってきた。これは、トナー表面から深さ方向に約0.3μmの、結着樹脂に対するワックスを多量に存在させることにより、PODのような高速なマシンでも、定着工程で迅速にワックスが溶融し、離型効果を発現し、定着部材とトナー層の剥離性が良好になるためと考えている。具体的には、P1は0.10以上0.70以下であることが好ましく、より好ましくは、0.12以上0.66以下である。
【0042】
ここで、本発明において、定着工程での離型効果を発現するためにはワックスの存在状態が重要であることが分かってきた。具体的には、約0.3μmにあるワックス存在比率とワックスの染み出し挙動に相関性があったため、本発明では、約0.3μmにあるワックス存在比率をP1として採用した。
【0043】
該P1を制御するためには、原料トナーを熱風により、表面処理することが好ましい。なお、原料トナーとは、熱処理により表面処理が行われる前のトナー粒子を示す。P1を増大させるには、例えば、熱風による表面処理温度を高くしたり、ワックスの添加量を多くしたりすればよい。一方、P1は、熱風による表面処理温度を低くしたり、ワックスの添加量を減少させたり、原料トナーに無機微粒子を外添することにより、減少させることが可能である。
【0044】
画像の光沢性や耐定着巻きつき性を向上させるには、P1を上記範囲に制御することが重要であるが、しかしながら、ワックスは分子量が結着樹脂に比べ小さいために軟らかい。そのため、P1を上記範囲にした場合でも、耐久を通じて、トナー粒子に無機微粒子が埋没することなどにより、摩擦帯電量の変化が大きくなってしまうことがある。
【0045】
本発明において、トナーと磁性キャリアとの摩擦による帯電量の安定性を発現するためには、トナー粒子表面に固着される無機微粒子の埋め込み抑制が重要である。そこで、約1.0μmにあるワックス存在比率と該無機微粒子の埋め込み抑制に相関性があったため、本発明では、約1.0μmにあるワックス存在比率P2を指標として採用した。
【0046】
そのメカニズムは明確ではないが、発明者らは以下のように推察している。
【0047】
磁性キャリアとの摩擦による帯電量変化は、耐久を通じてのトナー表面の変化を抑制することが重要であり、具体的には、現像器内でのストレスによる無機微粒子の脱離や埋め込みを抑制することで可能となると考えている。
【0048】
該無機微粒子の埋め込みは、トナー表面の硬さだけではなく、その下層の硬さが関与していると考えている。例えば、トナーの最表層のワックス存在量が多いとしてもその下層が硬い樹脂の層で構成されていれば、無機微粒子はその機能を失うほどには埋め込まれないと考えている。従って、トナー表面から深さ方向に約1.0μmの範囲における、結着樹脂に対するワックスの存在比率(P2)が重要であると考えており、該P2を特定の範囲にコントロールすることで、無機微粒子の埋め込みを制御し、摩擦帯電量変化を抑制できると考えている。トナー表面から約1.0μmにおける結着樹脂に対するワックスの存在比率(P2)は、上述のように、ATR法を用い、ATR結晶としてKRS5(n=2.4)、赤外光入射角として45°の条件で測定し得られた該Pc及びPdから算出される(P2=Pc/Pd)。具体的には、P2は0.05以上0.35以下であることが好ましく、より好ましくは、0.06以上0.33以下である。
【0049】
該P2は、ワックスの種類及び添加量、トナー中におけるワックスの分散径、規定範囲に制御することが可能である。熱風による表面処理を行う場合は、処理条件を変えることにより、P2を制御することができる。上記トナー中におけるワックスの分散径については、例えば、トナー粒子を作成する際に無機微粒子を内添することにより、トナー中におけるワックスの分散径を変えることも可能である。
【0050】
以下、本発明のトナーに用いることができる材料について説明する。
【0051】
トナーに用いられる結着樹脂としては、以下のものが挙げられる。ポリスチレン、ポリビニルトルエンの如きスチレン誘導体の単重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、及びスチレン−マレイン酸エステル共重合体の如きスチレン系共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族石油樹脂。これらの樹脂は単独もしくは混合して用いても良い。
【0052】
これらの中で、結着樹脂として好ましく用いられる重合体としては、スチレン系共重合体とポリエステルユニットを有する樹脂である。
【0053】
上記「ポリエステルユニット」とは、ポリエステルに由来する部分を意味し、ポリエステルユニットを構成する成分としては、2価以上のアルコールモノマー成分と、2価以上のカルボン酸、2価以上のカルボン酸無水物及び2価以上のカルボン酸エステル等の酸モノマー成分が挙げられる。
【0054】
2価以上のアルコールモノマー成分としては、以下のものが挙げられる。
2価アルコールモノマー成分としては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの如きビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA。
【0055】
3価以上のアルコールモノマー成分としては、ソルビット、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
【0056】
2価のカルボン酸モノマー成分としては、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸の如き芳香族ジカルボン酸類又はその無水物;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸類又はその無水物;炭素数6〜18のアルキル基又はアルケニル基で置換されたコハク酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸及びシトラコン酸の如き不飽和ジカルボン酸類又はその無水物が挙げられる。
【0057】
3価以上のカルボン酸モノマー成分としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸やその無水物の如き多価カルボン酸が挙げられる。
【0058】
また、その他のモノマーとしては、ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルの多価アルコール類等が挙げられる。
【0059】
上記した結着樹脂を用いる場合、結着樹脂のガラス転移温度(Tg)が、40℃以上、90℃以下、更に好ましくは、45℃以上65℃以下であることが、保存性、低温定着性、耐高温オフセット性を両立させる上で好ましい。
【0060】
トナーに用いられるワックスとしては、以下のものが挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスの如き炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合物;カルナバワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したもの。
【0061】
さらに、以下のものが挙げられる。パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸の如き飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、パリナリン酸の如き不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールの如き飽和アルコール類;ソルビトールの如き多価アルコール類;パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸の如き脂肪酸類と、ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールの如きアルコール類とのエステル類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドの如き脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドの如き飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’ジオレイルセバシン酸アミドの如き不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’ジステアリルイソフタル酸アミドの如き芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムの如き脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸の如きビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加によって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物。
【0062】
これらのワックスの中でも、細線画像周辺におけるトナー飛散、及び耐ストレス性を向上させる点で、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き炭化水素系ワックスが好ましい。
【0063】
ワックスは、結着樹脂100質量部あたり0.5質量部以上20質量部以下で使用されることが好ましい。ワックスの最大吸熱ピークのピーク温度としては45℃以上140℃以下であることが、トナーの保存性、低温定着性と耐高温オフセット性を両立できるため好ましい。また、トナーの耐ストレス性向上の観点から、ワックスの最大吸熱ピークのピーク温度は、75℃以上120℃以下であることがさらに好ましい。
【0064】
トナーに用いられる着色剤としては、以下のものが挙げられる。
【0065】
黒色着色剤としては、カーボンブラック;イエロー着色剤とマゼンタ着色剤及びシアン着色剤とを用いて黒色に調色したものが挙げられる。着色剤には、顔料を単独で使用してもかまわないが、染料と顔料とを併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点からより好ましい。
【0066】
マゼンタトナー用着色顔料としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物等の公知の物が用いられ、C.I.ピグメントレッド57:1、122、150、269、282、及びC.I.ピグメントバイオレット19が挙げられる。マゼンタトナー用染料としては、公知の物が用いられる。
【0067】
シアントナー用着色顔料としては、C.I.ピグメントブルー15:3の如きフタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換した銅フタロシアニン顔料が挙げられる。シアン用着色染料としては、C.I.ソルベントブルー70がある。
【0068】
イエロー用着色顔料としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、イソインドリン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられ、C.I.ピグメントイエロー74、93、155、180、185等が挙げられる。イエロー用着色染料としては、C.I.ソルベントイエロー98、162がある。
【0069】
着色剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して0.1質量部以上30質量部以下で使用されることが好ましい。
【0070】
トナーには、必要に応じて荷電制御剤を含有させることができる。トナーに含有される荷電制御剤としては、公知のものが利用できるが、特に、無色でトナーの摩擦帯電のスピードが速く且つ一定の摩擦帯電量を安定して保持できる芳香族カルボン酸の金属化合物が好ましい。
【0071】
ネガ系荷電制御剤としては、サリチル酸金属化合物、ナフトエ酸金属化合物、ジカルボン酸金属化合物、スルホン酸又はカルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物、スルホン酸塩或いはスルホン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、カルボン酸塩或いはカルボン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンが挙げられる。ポジ系荷電制御剤としては、四級アンモニウム塩、前記四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物が挙げられる。荷電制御剤はトナー粒子に対して内添しても良いし外添しても良い。荷電制御剤の添加量は結着樹脂100質量部に対し0.2質量部以上10質量部以下が好ましい。
【0072】
本発明のトナーは、流動性向上や耐久性安定化のため、外添剤として、無機微粒子が添加されていることが好ましい。無機微粒子としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウムが好ましい。無機微粒子は、シラン化合物、シリコーンオイル又はそれらの混合物の如き疎水化剤で疎水化処理されたものであることが好ましい。外添剤として用いられる無機微粒子は、流動性向上のためには、BET比表面積が50m/g以上400m/g以下であることが好ましい。一方、耐久性安定化のためには、BET比表面積が10m/g以上50m/g以下の無機微粒子であることが好ましい。流動性向上や耐久性安定化を両立させるためには、BET比表面積が上記範囲の無機微粒子を併用してもよい。外添剤としての無機微粒子は、トナー粒子100質量部に対して0.1質量部以上5.0質量部以下使用されることが好ましい。トナー粒子と外添剤との混合は、ヘンシェルミキサーの如き公知の混合機を用いることができる。
【0073】
一方、P1/P2を制御するという観点で、内添剤として無機微粒子をトナー粒子に含有させることが好ましい。内添剤として好ましく用いられる無機微粒子としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウムが挙げられる。該無機微粒子は、シラン化合物、シリコーンオイル又はそれらの混合物の如き疎水化剤で疎水化処理されたものであることが好ましい。内添剤としての無機微粒子は、BET比表面積が、10m/g以上400m/g以下であることが好ましい。内添剤としての無機微粒子の添加量は、トナー粒子100質量部に対して、0.5質量部乃至5.0質量部であることが好ましい。トナー粒子に無機微粒子を内添剤として含有させた場合、ワックスの分散性が改善されると考えられる。
【0074】
無機微粒子を内添剤として用いることで、ワックスの分散性が向上する理由については、以下の様に考えられる。一般に、結着樹脂は比較的親水性であるのに対して、ワックスは疎水性が高い。そのため、粉砕法でトナーを製造する場合において、結着樹脂やワックス等を溶融混練する際に、結着樹脂とワックスは混ざりにくい。しかし、溶融混練の際に、無機微粒子が存在する場合、固体である無機微粒子が機械的なシェアによって結着樹脂中に分散する。そして、無機微粒子が疎水化処理されている場合、疎水性が高い無機微粒子はワックスとの親和性が高いので、無機微粒子の周りにワックスが存在することになり、結果として、結着樹脂中にワックスが分散し易くなる。また、粉砕法でトナーを製造する場合において、結着樹脂やワックス等を溶融混練する際に無機微粒子が存在すると、溶融混練物の粘度が上昇し、溶融混練物に対するシェアがよりかかり易くなる。これによって、結着樹脂中におけるワックスの分散性が改善されるやすくなる。
【0075】
トナー粒子を製造する方法としては、例えば、結着樹脂及びワックスを溶融混練し、混練物を冷却後、粉砕及び分級する粉砕法;結着樹脂とワックスとを溶剤中に溶解または分散させた溶液を水系媒体中に導入し懸濁造粒させ、溶剤を除去することによってトナー粒子を得る懸濁造粒法;重合性単量体、ワックス、着色剤等を含有する重合性単量体組成物を水系媒体中に分散し、重合反応を行うことでトナー粒子を作製する懸濁重合法;重合体微粒子及びワックスを凝集して微粒子凝集体を形成する工程と微粒子凝集体中の融着を行う熟成工程を経てトナー粒子を得る乳化凝集法が挙げられる。
【0076】
以下、粉砕法でのトナー製造手順について説明する。まず、原料混合工程において、結着樹脂及びワックス、必要に応じて着色剤、荷電制御剤、無機微粒子の如き他の成分を所定量秤量して配合し、混合する。混合装置としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサー、メカノハイブリッド(日本コークス工業株式会社製)が挙げられる。次に、混合した材料を溶融混練して、結着樹脂中にワックス等を分散させる、溶融混練工程を行う。該工程では、加圧ニーダー、バンバリィミキサーの如きバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができる。連続生産できる優位性から、1軸又は2軸押出機が主流となっている。押出機としては、KTK型2軸押出機(神戸製鋼所社製)、TEM型2軸押出機(東芝機械社製)、PCM混練機(池貝鉄工製)、2軸押出機(ケイ・シー・ケイ社製)、コ・ニーダー(ブス社製)、ニーデックス(日本コークス工業株式会社製)が挙げられる。更に、溶融混練することによって得られる樹脂組成物は、2本ロール等で圧延される。その後、樹脂組成物を水などによって冷却する冷却工程を行っても良い。
【0077】
次に、得られた樹脂組成物を所望の粒径に粉砕する、粉砕工程を行う。該工程では、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミルの如き粉砕機で粗粉砕した後、更に、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング社製)、ターボ・ミル(ターボ工業製)やエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕し、粉砕品を得る。その後、必要に応じて慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業社製)、遠心力分級方式のターボプレックス(ホソカワミクロン社製)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製)、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)の如き分級機や篩分機を用いた分級工程を行う。また、必要に応じて、粉砕後に、ハイブリタイゼーションシステム(奈良機械製作所製)、メカノフージョンシステム(ホソカワミクロン社製)、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)を用いて、球形化処理の如きトナー粒子の表面処理を行うこともできる。
【0078】
本発明のトナーに用いられるトナー粒子を得るためには、上記粉砕品(原料トナー)を得た後、熱処理装置によって表面処理を行うことが好ましい。熱処理装置によって、粉砕品の熱処理を行うフローを図1に示す。
【0079】
熱処理装置(1)は、上流に熱風供給手段(2)、原料供給手段(8)、冷風供給手段(3、4、5)が設けられ、下流にはバグ(19)及びブロワー(20)が設けられている。
【0080】
原料供給手段(8)は、圧縮気体により原料トナーを熱処理装置(1)内のトナー処理空間へ搬送する。なお、トナー処理空間は、熱処理装置本体内の略円筒形状の空間であり、この空間で原料トナーの熱処理が行われる。原料トナーをトナー処理空間に定量的に送るため、供給機(16)の下流に、圧縮気体供給手段(15)を備えている。
【0081】
熱風供給手段(2)は、内部のヒーター(17)により外気を加熱し、トナー処理空間に熱風を供給する。原料トナーは、トナー処理空間において、この熱風により球形化される。更に熱処理装置本体(1)には、熱処理されたトナーを冷却するために、冷風供給手段(3、4、5)が備えられている。冷風供給手段(3、4、5)には、冷風供給機(30)から冷風が供給される。トナー処理空間で熱処理されたトナーは、トナー回収手段(19)により回収される。トナー回収手段としては、サイクロンやダブルクロンなどが用いられる。そして、原料トナーの熱処理に用いられた熱風は、吸引排出手段であるブロワー(20)により吸引され、熱処理装置の系外に排出される。
【0082】
次に、熱処理装置について説明する。図2(A)〜(C)は熱処理装置の一例を示した図である。装置外周は最大径が500mm、下部装置底面から天板(粉体導入管出口)までの高さがおよそ1200mmで設計されている。図2(A)は、熱処理装置の外観を表ており、図2(B)は熱処理装置の内部構造を表すものである。また、図2(C)は、原料供給手段(8)の出口部を拡大した図である。なお、以下に記載する装置構成及び運転条件の範囲は、装置のスケール上述の様にした場合を前提とする。
【0083】
原料供給手段(8)には、径方向に広がる第1のノズル(9)と該第1のノズルの内側に配設される第2のノズル(10)が設けられている。原料供給手段(8)に供給された原料トナーは、圧縮気体供給手段(15)から供給される圧縮気体により加速され、原料料供給手段(8)出口部に設けられた、第1のノズル(9)と第2のノズル(10)とで形成される空間を通過して、装置内のトナー処理空間の周方向外側に向けて環状に噴射される。
【0084】
原料供給手段(8)内部には、管状部材1(6)及び管状部材2(7)が設けられ、各々の管状部材内部にも圧縮気体が供給される。管状部材1(6)内を通過した圧縮気体は、第1ノズル(9)と第2ノズル(10)とで形成される空間を通過する。管状部材2(7)は、第2ノズル(10)を貫通し、第2ノズル(10)内側において、管状部材2(7)出口部より第2ノズル(10)の内面に向けて圧縮気体が噴射される。第2ノズル(10)の外周面には、複数のリブ(10B)が設けられており、このリブ(10B)は後述する熱風供給手段(2)から供給される熱風の流れる方向に向けて湾曲して設けられている。原料供給手段(8)上流部から第1ノズル(9)に至る原料供給路において、原料供給手段(8)上流端の径よりも第1ノズル(9)に接続する部分の径の方が小さく設計されている。すなわち、第2ノズル(10)は管状部材2(7)との接続部から出口部方向に向かってテーパー状に広がるよう設けられている。これは供給されたトナー粒子が、一度第1ノズル(9)入り口において、流速が加速されるため、より原料トナーの分散を補助することが可能となるためである。また、出口部方向の端部においては、更にテーパーの角度が変化して、半径方向に拡大する返し部(10A)が設けられている。
【0085】
図2に示す熱処理装置では、原料供給手段(8)の外周面に近接あるいは水平方向に対して距離を隔てた位置に、環状に熱風供給手段(2)が設けられている。更にその外側及び下流側には、熱処理されたトナーを冷却し、装置内の温度上昇によりトナー粒子の合一、融着を防止するための冷風供給手段1(3)、冷風供給手段2(4)及び冷風供給手段3(5)が設けられている。熱風供給手段(2)は、水平方向において原料供給手段(8)の外周部に対して距離を隔てた位置に環状に設けられることが好ましい。これは第1及び第2ノズルの出口部分が、供給される熱風によって熱せられ、出口部分から噴射されるトナー粒子が溶融、付着するのを防ぐためである。
【0086】
図3は、熱風供給手段(2)及び気流調整部(2A)の一例を示した部分断面斜視図である。図3に示すように、熱風供給手段(2)の出口部には、熱風が装置内に傾斜かつ旋回するように供給されるための気流調整部(2A)が設けられており、複数の板状のルーバーで構成されている。円筒形状である熱風供給手段(2)からトナー処理空間へ供給された熱風は、気流調整部(2A)のルーバーによって傾斜され、トナー処理空間内において旋回する。原料供給手段(8)より投入される原料トナーは、熱風の流れに乗って旋回する。トナー処理空間において、原料トナーが旋回しながら熱処理されることで、各トナー粒子に対して、均一に近い状態で熱がかかり、円形度分布及び粒度分布がシャープなトナー粒子を得ることができる。
【0087】
気流調整部(2A)のルーバーにおける羽板の枚数及び角度は、原料の種類や処理量によって、任意に調整可能である。気流調整部(2A)におけるルーバーの羽板の傾斜角度は、鉛直方向に対して羽板の主面のなす角度が、20度から70度であることが好ましい。より好ましくは30度から60度である。羽板の傾斜角度が上記の範囲内であれば、装置内で熱風が適度に旋回しつつ、鉛直方向への風速の低下を抑えることができる。その結果、処理量が多くなってもトナー粒子の合一が防止され、且つクリーニング性に弊害を与える円形度が0.990以上であるトナー粒子の頻度も抑制される。また、装置上部に熱が滞留することが防止され、製造エネルギー面でも効率が良い。
【0088】
熱処理装置は、冷風供給手段を有することが好ましい。図4は冷風供給手段1(3)及び気流調整部(3A)の一例を示した部分断面斜視図である。図4に示すように、冷風供給手段1(3)の出口部には、冷風が装置内のトナー処理空間で旋回するように、複数のルーバーが一定の間隔で傾斜して設置された気流調整部(3A)が設けられている。気流調整部(3A)のルーバーは、上述した熱風供給手段(2)からの熱風の旋回方向と略同一方向(トナー処理空間における原料トナーの旋回を維持する方向)に旋回するようにルーバーの傾斜が調整されている。これによって、熱風の旋回力がさらに強化されると共に、トナー処理空間での温度上昇を抑えることで、装置内外周部へのトナー粒子の融着やトナー粒子同士の合一が防止される。
【0089】
冷風供給手段1(3)の気流調整部(3A)のルーバーについても、羽板の枚数及び角度は、原料の種類や処理量によって任意に調整可能である。冷風供給手段1(3)におけるルーバーの羽板の傾斜角度は、鉛直方向に対して羽板の主面のなす角度が、20度から70度であることが好ましい。より好ましくは30度から60度である。羽板の傾斜角度が上記の範囲内であれば、装置内のトナー処理空間における熱風及びトナー粒子の流れが阻害されず、装置上部に熱が滞留することも防止される。
【0090】
また、上述した冷風供給手段以外に、熱風供給手段の下方に1以上の冷風供給手段を有し、装置内部に冷風を供給する際、冷風が装置鉛直方向において分割導入されることが好ましい。例えば、図2(A)に示す装置では、トナー処理空間に対して、冷風供給手段1(3)、冷風供給手段2(4)及び冷風供給手段3(5)から、それぞれ冷風を4分割導入する仕組みとなっている。これは装置内の風の流れを均一に制御しやすくするためであり、4分割された導入路における冷風の風量は独立して制御可能である。冷風供給手段2(4)及び冷風供給手段3(5)は、冷風供給手段1(3)の下方にそれぞれ設けられており、冷風を装置外周部より水平で且つ接線方向から供給するよう構成されていることが好ましい。
【0091】
装置軸中心部には、装置最下部から第2ノズル(10)近傍まで延びる円筒状のポール(14)が設けられており、ポール(14)内部にも冷風が導入され、ポール(14)外周面から冷風が放出される構成になっている。ポール(14)は、熱風供給手段(2)、冷風供給手段1(3)、冷風供給手段2(4)及び冷風供給手段3(5)から供給される熱風及び冷風の旋回方向と、略同一方向(トナー処理空間における原料トナーの旋回を維持する方向)に冷風が放出されるように出口部が構成されている。ポール(14)出口部の形状としては、スリット形状、ルーバー形状、多孔板形状、メッシュ形状が挙げられる。
【0092】
更に、トナー粒子の融着防止を目的として、原料供給手段(8)の外周部、装置外周部、熱風供給手段(2)内周部には、冷却ジャケットが設けられている。冷却ジャケットには、冷却水やエチレングリコール等の不凍液を導入することが好ましい。
【0093】
装置内に供給される熱風は、熱風供給手段(2)出口部における温度C(℃)が100≦C≦450であることが好ましい。熱風供給手段(2)出口部における温度が上記の範囲内であれば、加熱しすぎることによるトナー粒子の融着や合一を防止しつつ、トナー粒子の粒径や円形度が均一に近くなるように球形化処理することが可能となる。
【0094】
冷風供給手段1(3)、冷風供給手段2(4)及び冷風供給手段3(5)内の温度E(℃)は−20≦E≦40であることが好ましい。冷風供給手段内の温度が上記の範囲内であれば、トナー粒子を適度に冷却することができ、トナー粒子の融着や合一を防止することができる。
【0095】
冷却されたトナー粒子はトナー排出口(13)を通過してから回収される。トナー排出口(13)の下流側にはブロワー(20)が設けられ、ブロワー(20)により吸引搬送される構成となっている。トナー排出口(13)は、装置最下部に設けられ、装置外周部に水平になるように構成される。排出口の接続の向きは、装置上流部から排出口に至るまでの旋回による流れを維持する向きとなっている。
【0096】
熱処理装置において、装置内に供給される圧縮気体、熱風及び冷風の流量の総量QINと、ブロワー(20)により吸引される風量QOUTの関係は、QIN≦QOUTの関係となるように調整されることが好ましい。QIN≦QOUTであれば、装置内の圧力が負圧となるため、噴射されたトナー粒子が装置外に排出されやすくなり、トナー粒子が熱を過剰に受けることを防止できる。その結果、合一したトナー粒子の増加や装置内での融着を防止できる。
【0097】
本発明のトナーは一成分系現像剤としても使用できるが、ドット再現性をより向上させ、長期にわたり安定した画像を得るために、磁性キャリアと混合して二成分系現像剤として用いることが好ましい。トナーと組み合わせる磁性キャリアは、磁性キャリアの真比重は3.2g/cm以上4.9g/cm以下であることが好ましく、更に好ましくは、真比重が3.4g/cm以上4.2g/cm以下である。磁性キャリアの真比重が上記範囲内であれば、現像剤を現像器内で攪拌する際にかかる負荷が低くなり、高印字比率(印字比率:40%以上)の耐久時のトナースペントが抑制される。また、トナーの摩擦帯電量の低下に伴う非画像部のかぶりの発生が抑制される。
【0098】
本発明のトナーを組み合わせる磁性キャリアは、体積分布基準50%粒径(D50)が30.0μm以上、70.0μm以下であることが好ましい。磁性キャリアのD50が上記範囲内であれば、安定してトナーの帯電量が得られる為に好ましい。また、本発明のトナーを組み合わせる磁性キャリアの磁化量は、1000エルステッドの磁界下で測定した磁化の強さ(σ1000)が15Am/kg(emu/g)以上65Am/kg(emu/g)以下であることが、現像性、耐久安定性を維持させる上で好ましい。
【0099】
磁性キャリアとしては、例えば、鉄、リチウム、カルシウム、マグネシウム、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、希土類の如き金属粒子、それらの合金粒子、酸化物粒子、フェライトの如き磁性体や、磁性体と、この磁性体を分散した状態で保持するバインダー樹脂とを含有する磁性体分散樹脂キャリア(いわゆる樹脂キャリア)を使用できる。
【0100】
トナーを磁性キャリアと混合して二成分系現像剤として使用する場合、現像剤中のトナー濃度が2質量%以上15質量%以下、好ましくは4質量%以上13質量%以下であれば、良好な結果が得られる。
【0101】
電子写真装置における画像形成方法について説明する。電子写真感光体(像担持体)は、所定の周速度で回転駆動され、回転過程で帯電手段により表面が正または負に帯電される(帯電工程)。次いで、電子写真感光体は、像露光手段により露光(スリット露光・レーザービーム走査露光など)を受ける。これにより感光体表面に露光像に対応した静電潜像が形成される(潜像形成工程)。静電潜像を担持する電子写真感光体に対し、現像スリーブからトナーが供給されることでトナー画像が現像され(現像工程)、トナー画像は転写手段により転写材に転写される(転写工程)。トナー画像の転写材への転写は、中間転写体を介しても行っても介さずに行っても良い。転写材が感光体面から分離された後、像定着手段による熱や圧力によってトナー画像が転写材に定着され、複写物として機外へ出力される。像転写後の電子写真感光体の表面は、クリーニング手段により、転写残トナーの除去を行う(クリーニング工程)。
【0102】
本発明のトナーは、像担持体の表面にブレードを当接させてクリーニングするブレードクリーニング工程を有する画像形成方法に用いることが好ましい。例えば懸濁重合法により得られるトナー粒子を有するトナーの如く、平均円形度が高く、円形度が0.990以上である粒子の割合が大きいトナーを用いた場合、像担持体とクリーニングブレードの隙間をトナーがすり抜け易いため、クリーニング性が良くない。弾性変形率の大きな像担持体を用い、像担持体とクリーニングブレードの当接ニップ部の平均面圧を上げれば、初期のクリーニング性は良化する。しかし、耐久後は、ブレードの振動によりクリーニング性の低下傾向が見られる。
【0103】
これに対し、本発明のトナーを用いた場合、円形度が0.990以上である粒子の割合が少ないため、クリーニング性が良好であり、弾性変形率が比較的低い像担持体を用いることができる。一般に、像担持体の弾性変形率が低いとクリーニング性は低下するが、耐久性に優れる。本発明のトナーを用いれば、比較的低い弾性変形率の像担持体を用いることができるため、長期にわたり安定なクリーニング性を得ることができる。また、従来の粉砕法により得られるトナーと比較すれば、本発明のトナーは平均円形度が高いため、クリーニング性に加え転写性及び現像性にも優れている。
【0104】
像担持体の表面の弾性変形率は、40%以上70%以下であることが好ましい。像担持体の表面の弾性変形率が上記範囲内であれば、像担持体表面が摩耗しにくく、高耐久である一方で、クリーニングブレードの摩擦抵抗の増加に伴うクリーニングブレードの振動やクリーニングブレードの捲れが起こりにくくなる。像担持体の表面の弾性変形率は、45%以上60%以下であることが更に好ましい。
【0105】
クリーニングブレードと感光体間の面圧は、10gf/cm以上30gf/cm以下であることが好ましい。像担持体上の転写残トナーをクリーニングブレードから抜け難くするために、クリーニングブレードと感光体間の面圧を上げた方が良い。しかし、クリーニングブレードと像担持体間の圧力が高くなりすぎると、耐久時、特に高温高湿環境下(温度32.5℃、湿度80%RH)において、クリーニングブレード面と像担持体面との摩擦抵抗が上がり、クリーニングブレードに過剰な負荷がかかる。クリーニングブレードに過剰な負荷がかかると、クリーニングブレードの先端欠けや、クリーニングブレードの捲れが起こってしまうことがあり、クリーニングブレードの先端欠けや捲れに伴うクリーニング不良が起こる場合がある。この現象は、電子写真感光体上の最表層の材質の摩擦係数μが高いものほど、クリーニングブレードと電子写真感光体間の摩擦抵抗が高くなる為、顕著に起こりやすい。
【0106】
また、像担持体の表面は、重合性官能基を有する化合物を重合又は架橋することにより硬化させた樹脂(以下、硬化性樹脂ともいう)であることが好ましい。これにより、像担持体の耐久性がさらに向上する。架橋の方法としては、像担持体を作成する際の塗料中に重合性官能基を有するモノマー又はオリゴマーを含有させ、製膜、乾燥後その膜を加熱および放射線や電子線照射で重合を進行させる方法が挙げられる。
【0107】
上記の像担持体と本発明のトナーとを組み合わせることで、クリーニングブレードの当接ニップ部分の平均面圧を上げても、クリーニングブレードの摩擦抵抗の増加を抑制することができる。その結果、クリーニングブレードの振動やクリーニングブレードの捲れを抑制することができ、帯電ローラーと像担持体間の放電電流により放電生成物(NOxやオゾン)を掻き取ることができるため、放電生成物による画像流れを抑制することが可能である。
【0108】
上記硬化性樹脂を含有する表面は電荷輸送機能を有していても、有していなくてもどちらでもよい。硬化性樹脂を含有する最表面層が電荷輸送機能を有している場合は感光層の一部として扱い、電荷輸送機能を有していない場合は下記にも述べるとおり保護層(または表面保護層)と称して感光層とは区別している。
【0109】
像担持体の感光層の層構成として、導電性支持体側から電荷発生層/電荷輸送層をこの順に積層した順層積層構成、導電性支持体側から電荷輸送層/電荷発生層をこの順に積層した逆層積層構成、または電荷発生材料と電荷輸送材料を同一層中に分散した単層からなる構成の、いずれの構成をとることも可能である。
【0110】
単層の感光層では光キャリアの生成と移動が同一層内で行われ、また感光層そのものが表面層となる。一方積層の感光層では、光キャリアを生成する電荷発生層と生成したキャリアが移動する電荷輸送層とが積層された構成をとる。
【0111】
最も好ましい層構成は、導電性支持体側から電荷発生層/電荷輸送層をこの順に積層した順層構成である。
【0112】
この場合、電荷輸送層が硬化性樹脂を含有する一層からなる最表面層である像担持体、または電荷輸送層が非硬化型の第一層と硬化型の第二層の積層型であり、硬化型の第二層が最表面層である像担持体のいずれかが好ましい。
【0113】
また、単層、積層どちらの場合においても、感光層の上層に保護層を設けることが可能であり、この場合保護層が硬化性樹脂を含有していることが好ましい。
【0114】
本発明におけるトナー及び原材料の各種物性の測定法について以下に説明する。
【0115】
<トナーの平均円形度、0.50μm以上1.98μm未満の粒子の個数%、円形度0.990以上の粒子の個数%の測定方法>
本発明におけるトナーの平均円形度、円相当径0.50μm以上1.98μm未満の粒子の個数%、円形度0.990以上の粒子の個数%は、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(シスメックス社製)によって測定する。
【0116】
具体的な測定方法は、以下の通りである。まず、ガラス製の容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水約20mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.2ml加える。更に測定試料を約0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(例えば「VS−150」(ヴェルヴォクリーア社製))を用い、水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
【0117】
測定には、標準対物レンズ(10倍)を搭載した前記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE−900A」(シスメックス社製)を使用する。前記手順に従い調製した分散液を前記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3000個のトナー粒子を計測する。そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を指定することにより、その範囲の粒子の個数割合(%)、平均円形度を算出することができる。トナーの平均円形度は、円相当径の解析粒子径範囲を1.98μm以上、200.00μm未満とし、その範囲内のトナーの平均円形度を求める。円形度0.990以上、1.000以下の粒子の割合は、円相当径の解析粒子径範囲を1.98μm以上、200.00μm未満とし、その範囲に含まれる粒子の円形度分布から個数割合(%)を算出する。円相当径0.50μm以上、1.98μm未満である粒子(小粒子)の割合は、円相当径の解析粒子径範囲を、0.50μm以上、1.98μm未満とし、0.50μm以上、200.00μm未満の範囲に含まれる粒子に対する、0.50μm以上、1.98μm以下の範囲に含まれる粒子の個数割合(%)を算出する。
【0118】
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(例えば、Duke Scientific社製の「RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5200A」をイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
【0119】
なお、本願実施例では、シスメックス社による校正作業が行われた、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用した。
【0120】
<P1及びP2の算出方法>
FT−IRスペクトルは、ユニバーサルATR測定アクセサリー(Universal ATR Sampling Accessory)を装着したフーリエ変換赤外分光分析装置(Spectrum One:PerkinElmer社製)を用い、ATR法で測定する。具体的な測定手順と、P1、P2及びP1をP2で除した[P1/P2]の算出方法は以下の通りである。
【0121】
赤外光の入射角は45°に設定する。ATR結晶としては、GeのATR結晶(屈折率=4.0)、KRS5のATR結晶(屈折率=2.4)を用いる。その他の条件は以下の通りである。
【0122】
Range
Start:4000cm−1
End:600cm−1(GeのATR結晶)
400cm−1(KRS5のATR結晶)
Duration
Scan number:16
Resolution:4.00cm−1
Advanced:CO/HO補正あり
[P1の算出方法]
(1)GeのATR結晶(屈折率=4.0)を装置に装着する。
(2)Scan typeをBackground、UnitsをEGYに設定し、バックグラウンドを測定する。
(3)Scan typeをSample、UnitsをAに設定する。
(4)トナーをATR結晶の上に、0.01g精秤する。
(5)圧力アームでサンプルを加圧する。(Force Gaugeは90)
(6)サンプルを測定する。
(7)得られたFT−IRスペクトルを、Automatic Correctionでベースライン補正をする。
(8)2843cm−1以上2853cm−1以下の範囲の吸収ピーク強度の最大値を算出する。(Pa1)
(9)3050cm−1と2600cm−1の吸収強度の平均値を算出する。(Pa2)
(10)Pa1−Pa2=Paとする。当該Paを2843cm−1以上2853cm−1以下の範囲の最大吸収ピーク強度と規定する。
(11)1713cm−1以上1723cm−1以下の範囲の吸収ピーク強度の最大値を算出する。(Pb1)
(12)1763cm−1と1630cm−1の吸収強度の平均値を算出する(Pb2)
(13)Pb1−Pb2=Pbとする。当該Pbを1713cm−1以上1723cm−1以下の範囲の最大吸収ピーク強度と規定する。
(14)Pa/Pb=P1とする。
【0123】
[P2の算出方法]
(1)KRS5のATR結晶(屈折率=2.4)を装置に装着する。
(2)トナーをATR結晶の上に、0.01g精秤する。
(3)圧力アームでサンプルを加圧する。(Force Gaugeは90)
(4)サンプルを測定する。
(5)得られたFT−IRスペクトルを、Automatic Correctionでベースライン補正をする。
(6)2843cm−1以上2853cm−1以下の範囲の吸収ピーク強度の最大値を算出する。(Pc1)
(7)3050cm−1と2600cm−1の吸収強度の平均値を算出する。(Pc2)
(8)Pc1−Pc2=Pcとする。当該Pcを2843cm−1以上2853cm−1以下の範囲の最大吸収ピーク強度と規定する。
(9)1713cm−1以上1723cm−1以下の範囲の吸収ピーク強度の最大値を算出する。(Pd1)
(10)1763cm−1と1630cm−1の吸収強度の平均値を算出する(Pd2)
(11)Pd1−Pd2=Pdとする。当該Pdを1713cm−1以上1723cm−1以下の範囲の最大吸収ピーク強度と規定する。
(12)Pc/Pd=P2とする。
【0124】
[P1/P2の算出方法]
上記のようにして求めたP1とP2を用い、P1/P2を算出する。
【0125】
<樹脂の重量平均分子量(Mw)、ピーク分子量(Mp)の測定方法>
樹脂の重量平均分子量(Mw)及びピーク分子量(Mp)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
【0126】
まず、室温で24時間かけて、試料(樹脂)をテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マエショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。尚、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が約0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置 :HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
カラム :Shodex KF−801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液 :THF
流速 :1.0ml/min
オーブン温度 :40.0℃
試料注入量 :0.10ml
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500」、東ソ−社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
【0127】
<ワックスの最大吸熱ピークの測定>
ワックスの最大吸熱ピークは、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
【0128】
ワックスの最大吸熱ピークの測定は具体的には次のように行う。
【0129】
ワックス約5mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定温度範囲30〜200℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。尚、測定においては、一度200℃まで昇温させ、続いて30℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程での温度30〜200℃の範囲におけるDSC曲線の最大の吸熱ピークを、ワックスのDSC測定における吸熱曲線の最大吸熱ピークとする。
【0130】
<重量平均粒径(D4)、個数平均粒径(D1)の測定方法>
トナーの重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。尚、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
【0131】
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
【0132】
尚、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
【0133】
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
【0134】
前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
【0135】
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)を算出する。尚、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)であり、前記専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「平均径」が個数平均粒径(D1)である。
【0136】
<微粉(4.0μm以下の粒子)量の算出方法>
トナー中の個数基準の微粉(4.0μm以下の粒子)量(個数%)は、前記のMultisizer 3の測定を行った後、データを解析することにより算出する。
【0137】
トナー中の4.0μm以下の粒子の個数%は、以下の手順で算出する。まず、前記専用ソフトでグラフ/個数%に設定して測定結果のチャートを個数%表示とする。そして、「書式/粒径/粒径統計」画面における粒径設定部分の「<」にチェックし、その下の粒径入力部に「4」を入力する。「分析/個数統計値(算術平均)」画面を表示したときの「<4μm」表示部の数値が、トナー中の4.0μm以下の粒子の個数%である。
【0138】
<粗粉(10.0μm以上の粒子)量の算出方法>
トナー中の体積基準の粗粉(10.0μm以上の粒子)量(体積%)は、前記のMultisizer 3の測定を行った後、データを解析することにより算出する。トナー中の10.0μm以上の粒子の体積%は、以下の手順で算出する。まず、前記専用ソフトでグラフ/体積%に設定して測定結果のチャートを体積%表示とする。そして、「書式/粒径/粒径統計」画面における粒径設定部分の「>」にチェックし、その下の粒径入力部に「10」を入力する。「分析/体積統計値(算術平均)」画面を表示したときの「>10μm」表示部の数値が、トナー中の10.0μm以上の粒子の体積%である。
【0139】
<磁性キャリア及び磁性キャリアコア材の磁化の強さの測定方法>
磁性キャリア及び磁性キャリアコア材の磁化の強さは、振動磁場型磁気特性測定装置(Vibrating sample magnetometer)や直流磁化特性記録装置(B−Hトレーサー)で求めることが可能である。本願の実施例においては、振動磁場型磁気特性測定装置BHV−30(理研電子(株)製)で以下の手順で測定する。
(1)円筒状のプラスチック容器にキャリアを十分に密に充填したものを試料とする。該容器に充填したキャリアの実際の質量を測定する。その後、瞬間接着剤により磁性キャリア粒子が動かないようにプラスチック容器内の磁性キャリア粒子を接着する。
(2)標準試料を用いて、5000/4π(kA/m)での外部磁場軸及び磁化モーメント軸の校正を行う。
(3)スイープ速度5min/loopとし、1000/4π(kA/m)の外部磁場を印加した磁化モーメントのループから磁化の強さを測定する。これらより、試料重さで除して、キャリアの磁化の強さ(Am/kg)を求める。
【0140】
<磁性キャリアの体積分布基準50%粒径(D50)の測定方法>
粒度分布測定は、レーザー回折・散乱方式の粒度分布測定装置「マイクロトラックMT3300EX」(日機装社製)により行う。測定には、乾式測定用の試料供給機「ワンショットドライ型サンプルコンディショナーTurbotrac」(日機装社製)を装着して行う。Turbotracの供給条件として、真空源として集塵機を用い、風量約33リットル/sec、圧力約17kPaとした。制御は、ソフトウエア上で自動的に行う。粒径は体積基準の累積値である50%粒径(D50)を求める。制御及び解析は付属ソフト(バージョン10.3.3−202D)を用いて行う。
【0141】
測定条件は、以下の通りである。
SetZero時間:10秒
測定時間 :10秒
測定回数 :1回
粒子屈折率 :1.81
粒子形状 :非球形
測定上限 :1408μm
測定下限 :0.243μm
測定環境 :常温常湿環境(23℃50%RH)
<磁性キャリアの真比重の測定方法>
磁性キャリアの真比重は、乾式自動密度計アキュピック1330(島津製作所社製)を用い測定する。まず、23℃/50%RHの環境に24時間放置したサンプルを5g精秤し、測定用セル(10cm)に入れ、本体試料室に挿入する。測定は、サンプル重量を本体に入力し測定をスタートさせることにより自動測定できる。自動測定の測定条件は、20.000psig(2.392×10kPa)で調整されたヘリウムガスを用いる。試料室内に10回パージした後、試料室内の圧力変化が0.005psig/min(3.447×10−2kPa/min)になる状態を平衡状態とし、平衡状態になるまで繰り返しヘリウムガスをパージする。平衡状態の時の本体試料室の圧力を測定する。その平衡状態に達した時の圧力変化によりサンプル体積が算出できる。
【0142】
サンプル体積が算出できることにより、以下の式でサンプルの真比重が計算できる。
サンプルの真比重(g/cm)=サンプル質量(g)/サンプル体積(cm
この自動測定により5回繰り返し測定した値の平均値を磁性キャリア及び磁性コアの真比重(g/cm)とする。
【0143】
<電子写真感光体の最表面層の弾性変形率の測定>
弾性変形率(%)は、微小硬さ測定装置フィシャースコープH100V(Fischer社製)を用いて測定する。具体的には、温度25℃、湿度50%RHの環境下で電子写真感光体の最表面層の表面に配置された対面角136°のビッカース四角錐ダイヤモンド圧子に連続的に6mNまでの荷重をかけ、荷重下での押し込み深さを直読する。初期の荷重0mNから最終荷重6mNまでの間を段階的に(各点0.1Sの保持時間で273点)測定する。
【0144】
弾性変形率は、電子写真感光体の最表面層の表面に圧子を押し込んだときに、電子写真感光体の最表面層の表面に対して圧子が行った仕事量(エネルギー)、即ち電子写真感光体の最表面層の表面に対する圧子の荷重の増減によるエネルギーの変化より求めることができ、具体的には下記式により求めることができる。
【0145】
弾性変形率(%)=We/Wt×100
Wt(nJ)=全仕事量
We(nJ)=弾性変形量
【実施例】
【0146】
<ポリエステル樹脂Aの製造例>
・ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン:55.1質量部
・ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン:19.3質量部
・テレフタル酸:8.0質量部
・無水トリメリット酸:6.9質量部
・フマル酸:10.5質量部
・チタンテトラブトキシド:0.2質量部
上記材料をガラス製4リットルの4つ口フラスコに入れ、温度計、撹拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取りつけマントルヒーター内においた。次に、フラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温した。180℃の温度で撹拌しつつ、4時間反応を行い、ポリエステル樹脂Aを得た。ポリエステル樹脂AのGPCによる分子量は、重量平均分子量(Mw)が5,000、ピーク分子量(Mp)が3,000であった。軟化点は85℃であった。
【0147】
<ボリエステル樹脂Bの製造例>
・ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン:40.0質量部
・テレフタル酸:55.0質量部
・アジピン酸:1.0質量部
・チタンテトラブトキシド:0.6質量部
上記材料をガラス製4リットルの四つ口フラスコに入れた。そして、この四つ口フラスコに温度計、撹拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取り付け、マントルヒーター内においた。次に、四つ口フラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に220℃に昇温し、8時間反応させた。その後、無水トリメリット酸4.0質量部(0.021モル)を添加し、180℃で4時間反応させ、ポリエステル樹脂Bを得た。ポリエステル樹脂BのGPCによる分子量は、重量平均分子量(Mw)が300,000、ピーク分子量(Mp)が10,000であった。軟化点は135℃であった。
【0148】
<トナー製造例1>
・ポリエステル樹脂A 60質量部
・ポリエステル樹脂B 40質量部
・フィッシャートロプシュワックス(最大吸熱ピークのピーク温度78℃) 5質量部
・3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 0.5質量部
・C.I.ピグメントブルー15:3 5.0質量部
・疎水化処理シリカ粒子1 2.0質量部
(10質量%のヘキサメチルジシラザンで表面処理したもの、個数平均径90nm)
上記材料をヘンシェルミキサー(FM−75型、三井三池化工機(株)製)で混合した後、温度120℃に設定した二軸混練機(PCM−30型、池貝鉄工(株)製)にて混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られた粗砕物を、機械式粉砕機(T−250、ターボ工業(株)製)にて粉砕し、微粉砕物を得た。得られた微粉砕物をコアンダ効果を利用した多分割分級機により分級を行い、トナー粒子1を得た。
【0149】
100質量部のトナー粒子1に、3.0質量部の疎水性シリカ微粒子1を添加し、ヘンシェルミキサー(FM−75型、三井三池化工機(株)製)で混合して、微粒子添加トナー粒子1を得た。
【0150】
得られた微粒子添加トナー粒子1を、図1で示す熱処理装置にて、表面処理を行い、表面処理トナー粒子1を得た。
【0151】
装置の内径は450mm、熱風供給手段出口部は、内径200mm、外径300mmとし、熱風は整流ブレード(角度50°、ブレード厚み1mm、枚数36枚)を介して導入した。原料供給手段の第1のノズルの稜線角度を40°、第2ノズルの稜線角度を60°とし、下端部に返し部が設けられているものを用いた。返し部の稜線のなす角度は140°、外径は150mmとした。なお、本実施例に用いられた熱処理装置は、熱風供給手段及び第1ノズルは一体的に構成され、断熱かつジャケット化されている。
【0152】
運転条件は、フィード量(F)=15kg/hr、熱風温度(T1)=160℃、熱風風量(Q1)=12.0m/min、冷風1総量(Q2)=4.0m/min、冷風2総量(Q3)=2.0m/min、圧縮気体風量(IJ)=1.6m/min、ブロワー風量(Q4)=22.0m/minとした。
【0153】
得られた表面処理トナー粒子1を再度、コアンダ効果を利用した多分割分級機により分級を行い、所望の粒径の分級表面処理トナー粒子1を得た。
【0154】
得られた100質量部の分級表面処理トナー粒子1に、1.0質量部の酸化チタン微粒子(イソブチルトリメトキシシラン16質量%で表面処理したもの、個数平均粒径10nm)、及び0.8質量部の疎水性シリカ微粒子(ヘキサメチルジシラザン10質量%で表面処理したもの、個数平均粒径20nm)を添加し、ヘンシェルミキサー(FM−75型、三井三池化工機(株)製)で混合して、トナー1を得た。トナー1の物性を表2に示す。
【0155】
<トナー製造例2乃至13、16乃至20>
トナー製造例1において、トナー処方、熱処理装置の条件を表1に示す様に変更した。それ以外は、トナー製造例1と同様にして、トナー2乃至13、16乃至20を得た。トナー2乃至13、16乃至20の物性を表2に示す。
【0156】
<トナー製造例14、15>
トナー製造例1において、トナー処方を表1に示す様に変更した。また、微粒子添加トナー粒子を熱処理する際に、図5に示す熱処理装置を用いた。図1で示す熱処理装置は、熱風が装置の略水平方向から導入されるのに対して、図5に示す熱処理装置は、略鉛直方向から熱風が導入される。また、図5に示す熱処理装置は、装置軸中心部にポールを有していない。そのため、図1で示す熱処理装置を用いた場合と比較して、図5に示す熱処理装置では、トナー粒子が熱処理空間を通過する時間が短く、熱のかかり具合も不均一になる傾向がある。
【0157】
トナー14及び15の物性を表2に示す。
【0158】
【表1】

【0159】
【表2】

【0160】
<磁性キャリア製造例1>
(秤量・混合工程)
・Fe:59.8質量%
・MnCO:34.7質量%
・Mg(OH):4.6質量%
・SrCO:0.9質量%
となるようにフェライト原材料を秤量した。その後、ジルコニア(直径10mm)のボールを用いた乾式ボールミルで2時間粉砕・混合した。
【0161】
(仮焼成工程)
粉砕・混合した後、バーナー式焼成炉を用い大気中で960℃で2時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。
【0162】
(粉砕工程)
クラッシャーで0.5mm程度に粉砕した後に、ジルコニアのビーズ(直径1.0mm)を用い、仮焼フェライト100質量部に対し、水を35質量部加え、湿式ビーズミルで5時間粉砕し、フェライトスラリーを得た。
【0163】
(造粒工程)
フェライトスラリーに、バインダーとして仮焼フェライト100質量部に対してポリビニルアルコール1.5質量部を添加し、スプレードライヤー(製造元:大川原化工機)で、球状粒子に造粒した。
【0164】
(本焼成工程)
焼成雰囲気をコントロールするために、電気炉にて窒素雰囲気下(酸素濃度0.02体積%)で、1050℃で4時間焼成した。
【0165】
(選別工程)
凝集した粒子を解砕した後に、目開き250μmの篩で篩分して粗大粒子を除去し、コア粒子1を得た。
【0166】
(コート工程)
・シリコーンワニス:75.8質量部
(SR2410 東レ・ダウコーニング社製 固形分濃度20質量%)
・γ−アミノプロピルトリエトキシシラン:1.5質量部
・トルエン:22.7質量部
上記材料を混合し、樹脂溶液Aを得た。100質量部のコア粒子1を万能攪拌混合機(ダルトン社製)に入れ、減圧下、温度50℃に加熱した。100質量部のコア粒子1に対して、充填樹脂成分として15質量部に相当する樹脂溶液Aを2時間かけて滴下し、さらに温度50℃で1時間攪拌を行った。その後、温度80℃まで昇温して溶剤を除去した。得られた試料をジュリアミキサー(徳寿工作所)に移し、窒素雰囲気下に温度180℃で2時間熱処理して、開口70μmのメッシュで分級して磁性コア粒子1を得た。
【0167】
100質量部の磁性コア1をナウタミキサ(ホソカワミクロン社製)に投入し、スクリューの回転速度100min−1、自転速度が3.5min−1の条件で撹拌しながら減圧下で70℃に調整した。樹脂溶液Aを固形分濃度が10質量%になるようにトルエンで希釈し、磁性コア1の100質量部に対して被覆樹脂成分として0.5質量部になるように樹脂溶液を投入した。2時間かけて溶媒除去及び塗布操作を行った。その後、温度180℃まで昇温し、2時間攪拌を続けた後、温度70℃まで降温した。試料を万能攪拌混合機(ダルトン社製)に移し、原料の磁性コア粒子1の100質量部に対して、樹脂溶液Aを用いて被覆樹脂成分が0.5質量部になるよう樹脂溶液を投入し、2時間かけて溶媒除去及び塗布操作を行った。得られた試料は、ジュリアミキサー(徳寿工作所社製)に移し、窒素雰囲気下、温度180℃で4時間熱処理した後、開口70μmのメッシュで分級して磁性キャリア1を得た。得られた磁性キャリア1のD50は43.1μm、真比重は3.9g/cm、1000エルステッド下の磁化量は52.7Am/kgであった。
【0168】
<磁性キャリア製造例2>
磁性キャリア製造例1の本焼成工程における、酸素濃度を0.3体積%、焼成温度を1150℃に変更した以外は、磁性キャリアの製造例1と同様にして磁性キャリア2を得た。得られた磁性キャリア2のD50は45.0μm、真比重が4.8g/cm、1000エルステッド下の磁化量が53.8Am/kgであった。
【0169】
<磁性キャリア製造例3>
・Fe:62.8質量%
・MnCO:7.7質量%
・Mg(OH):15.6質量%
・SrCO:13.9質量%
磁性キャリア製造例1の秤量・混合工程の原材料を上記原材料に変更し、本焼成工程における条件を、大気中、温度1300℃4時間に変更した以外は、磁性キャリアの製造例1と同様にし、磁性キャリア3を得た。得られた磁性キャリア3のD50は40.4μm、真比重が3.6g/cm、1000エルステッド下の磁化量が52.1Am/kgであった。
【0170】
<電子写真感光体製造例1>
電子写真感光体1を以下の通りに作製した。まず、長さ370mm、外径32mm、肉厚3mmのアルミニウムシリンダー(JIS A3003で規定されるアルミニウムの合金)を切削加工により作製した。このシリンダーの表面粗さを回転軸方向に測定したところRzjis=0.08μmであった。このシリンダーを洗剤(商品名:ケミコールCT、常盤化学(株)製)を含む純水中で超音波洗浄を行い、続いて洗剤を洗い流す工程を経た後、更に純水中で超音波洗浄を行って脱脂処理した。
【0171】
アンチモンをドープした酸化スズの被覆膜を有する酸化チタン粉体(商品名:クロノスECT−62、チタン工業(株)製)60質量部、酸化チタン粉体(商品名:titone SR−1T、堺化学(株)製)60質量部、レゾール型フェノール樹脂(商品名:フェノライト J−325、大日本インキ化学工業(株)製、固形分70%)70質量部、2−メトキシ−1−プロパノール50質量部、メタノール50質量部とからなるスラリーを約20時間ボールミルで分散させて分散液を得た。この分散液に含有するフィラーの平均粒径は、0.25μmであった。
【0172】
このようにして調合した分散液を、前記アルミニウムシリンダー上に浸漬法によって塗布し、前記分散液が塗布されたアルミニウムシリンダーを温度150℃に調整された熱風乾燥機中で48分間加熱乾燥し、前記分散液の塗布膜を硬化させることにより膜厚15μmの導電層を形成した。
【0173】
次に、共重合ナイロン樹脂(商品名:アミランCM8000、東レ(株)製)10質量部およびメトキシメチル化ナイロン樹脂(商品名:トレジンEF30T、帝国化学産業(株)製)30質量部をメタノール500質量部およびブタノール250質量部の混合液に溶解した溶液を、前記導電層の上に浸漬塗布し、前記溶液が塗布されたアルミニウムシリンダーを温度100℃に調整された熱風乾燥機中で22分間投入し加熱乾燥して、前記溶液の塗布膜を硬化させることにより膜厚み0.45μmの下引き層を形成した。
【0174】
次に、CuKa線回折スペクトルにおけるブラッグ角2θ±0.2°の7.4°および28.2°に強いピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料4質量部、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレックBX−1、積水化学工業(株)製)2質量部、シクロヘキサノン90質量部からなる混合溶液を、直径1mmガラスビーズを用いてサンドミルで10時間分散させた後、得られた混合溶液に酢酸エチル110質量部を加えて電荷発生層用塗工液を調製した。この塗工液を上記の下引き層上に浸漬塗布し、前記塗工液が塗布されたアルミニウムシリンダーを温度80℃に調整された熱風乾燥機中で22分間投入し加熱乾燥して、前記塗工液の塗布膜を硬化させることにより膜厚0.17μmの電荷発生層を形成した。
【0175】
次に、下記構造式(11)で示されるトリアリールアミン系化合物35質量部
【0176】
【化1】

【0177】
およびビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(商品名:ユーピロンZ400、三菱エンジニアリングプラスティックス(株)製)50質量部を、モノクロロベンゼン320質量部およびジメトキシメタン50質量部に溶解して電荷輸送層用塗工液を調製した。この塗工液を、上記電荷発生層上に浸漬塗布し、前記塗工液が塗布されたアルミニウムシリンダーを温度100℃に調整された熱風乾燥機中で40分間加熱乾燥して、前記塗工液の塗布膜を硬化させることにより、膜厚20μmの第一の電荷輸送層を形成した。
【0178】
次いで、下記構造式(12)で示される重合性官能基を有する正孔輸送性化合物30質量部
【0179】
【化2】

【0180】
を1−プロパノール35質量部と1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン(商品名:ゼオローラH、日本ゼオン(株)製)35質量部に溶解した後にPTFE製の0.5μmメンブレンフィルターで加圧ろ過を行い、硬化型表面層としての第二の電荷輸送層用塗工液を調製した。この塗工液を前記第一の電荷輸送層上に浸漬塗布法により塗工し、硬化型表面層としての第二の電荷輸送層用の塗布膜を形成した。その後、前記塗布膜へ、窒素中において加速電圧150kV、線量15kGyの条件で電子線を照射し、塗布膜を硬化させたアルミニウムシリンダー(電子写真感光体)を得た。引き続いて電子写真感光体の温度が120℃になる条件で90秒間加熱処理を行った。このときの酸素濃度は10ppmであった。更に、電子写真感光体を大気中で100℃に調整された熱風乾燥機中で20分間加熱処理を行って、膜厚5μmの硬化型表面層を形成した。
得られた像担持体1の弾性変形率は、55%であった。
【0181】
<電子写真感光体製造例2>
電子写真感光体製造例1の電子線照射条件を、窒素中において加速電圧100kV、線量10kGyに変更し、電子写真感光体製造例1と同様にして像担持体を得た。得られた像担持体2の弾性変形率は、45%であった。
【0182】
<電子写真感光体製造例3>
電子写真感光体製造例1の電子線照射条件を、窒素中において加速電圧200kV、線量20kGyに変更し、電子写真感光体製造例1と同様にして像担持体を得た。得られた像担持体3の弾性変形率は65%であった。
【0183】
<実施例1乃至13、比較例1乃至7>
トナーと磁性キャリアとを表3に示す様に組み合わせて二成分系現像剤を作成した。その際、磁性キャリア90.0質量部に対し、トナーを10.0質量部加え、V型混合機にて混合することで二成分系現像剤を作成した。
【0184】
上記の様にして作成した現像剤を、下記に記載する現像器、補給容器に詰め込み、常温低湿環境(温度23℃、湿度4%RH)又は高温高湿環境(温度32.5℃、湿度80%RH)にて調温・調湿した。
【0185】
評価機としては、デジタルフルカラー複写機 Image Press C1(キヤノン社製)を以下の様に改造したものを用いた。
【0186】
上記装置の現像器に付属している像担持体を取り出し、作成した像担持体1〜3のいずれかに付け替えた。現像スリーブには、周波数1.5kHz、ピーク間電圧(Vpp1.0kV)の交流電圧と直流電圧VDCを印加するようにした。さらに、クリーニング装置を改造し、像担持体とクリーニングブレードの当接ニップ部の平均面圧を表3に示すように変更した。また、定着温度を自由に設定できるようにした。尚、クリーニングブレードは、製品に付属していたものをそのまま使用した。
【0187】
上記の現像剤及び評価機を用いて、下記の様にして評価を行った。なお、転写材は、レーザービームプリンター用紙CS−814(A4、81.4g/m)を用いた。評価結果を表4に示す。
【0188】
<常温低湿環境下(温度23℃、湿度4%RH)での評価内容>
[画像安定性]
上記装置に現像器及び補給容器をセットした後、感光体上のトナーの現像量が0.42g/cmとなるように現像バイアスを調整し、初期評価としてベタ画像を出力した。
【0189】
次に、トナー濃度が一定となるよう定量補給しながら、印字比率40%の画像を1.5万枚(15k)出力した。15k出力終了後にさらにベタ画像を出力し、ベタ画像の濃度を測定した。その後、トナー濃度が一定となるよう定量補給しながら、更に印字比率1%の画像を1.5万枚(15k)出力し、合計3万枚(30k)の出力をした。30k出力後に、再びベタ画像を出力し、ベタ画像の濃度を測定した。
【0190】
ベタ画像において、任意の5点の濃度を濃度計X−Rite500型によって測定し、その平均値を画像濃度とした。初期画像濃度をD1、15k出力後の画像濃度をD15、30k出力後の画像濃度をD30とし、画像濃度変化率D1−D15及びD1−D30を求めた。
【0191】
(D1−D15の評価基準)
A:画像濃度変化率D1−D15が0.05未満である。
B:画像濃度変化率D1−D15が0.05以上0.10未満である。
C:画像濃度変化率D1−D15が0.10以上0.15未満である。
D:画像濃度変化率D1−D15が0.15以上である。
【0192】
(D1−D30の評価基準)
A:画像濃度変化率D1−D30が0.10未満である。
B:画像濃度変化率D1−D30が0.10以上0.15未満である。
C:画像濃度変化率D1−D30が0.15以上0.20未満である。
D:画像濃度変化率D1−D30が0.20以上0.25未満である。
E:画像濃度変化率D1−D30が0.25以上である。
【0193】
<高温高湿環境下(温度32.5℃、湿度80%RH)の評価内容>
温度32.5℃、80%RHの環境下、感光体上のトナーの載り量が0.42g/cmとなるよう現像バイアスを設定し、初期評価として、下記に記載する非画像部のかぶり評価、クリーニング性評価、転写残評価を行った。
【0194】
次に、トナー濃度が一定となるよう定量補給しながら、印字比率40%の画像を1.5万枚(15k)出力した。15k出力後、非画像部のかぶり評価及び転写残評価を行った。
【0195】
その後、トナー濃度が一定となるよう定量補給しながら、印字比率1%の画像を1.5万枚(15k)出力し、30k出力をした。30k出力終了後に、非画像部のかぶり評価、転写残評価を行った。
【0196】
[非画像部のかぶり評価]
初期、15k出力後及び30k出力後に白紙画像を出力した。出力した転写材の先端から50mmの位置における用紙中央部のかぶり濃度を測定し、該濃度から出力前の転写材の濃度を差し引き、濃度差を求めた。初期のかぶり濃度差、15k出力後のかぶり濃度差及び30k出力後のかぶり濃度差を下記の評価基準に基づいて評価した。尚、かぶり濃度はDENSITOMETER TC−6DS(東京電色社製)で測定した。
【0197】
(初期の評価基準)
A:かぶり濃度差が0.5未満である。
B:かぶり濃度差が0.5以上、1.0未満である。
C:かぶり濃度差が1.0以上、2.0未満である。
D:かぶり濃度差が2.0以上である。
【0198】
(15k出力後の評価基準)
A:かぶり濃度差が1.0未満である。
B:かぶり濃度差が1.0以上、1.5未満である。
C:かぶり濃度差が1.5以上、2.5未満である。
D:かぶり濃度差が2.5以上である。
【0199】
(30k出力後の評価基準)
A:かぶり濃度差が1.0未満である。
B:かぶり濃度差が1.0以上、1.5未満である。
C:かぶり濃度差が1.5以上、2.5未満である。
D:かぶり濃度差が2.5以上である。
【0200】
[転写効率(転写残濃度)]
初期、15k出力後及び30k出力後にベタ画像を出力した。その際、現像中に停止させ、画像形成時の感光体ドラム上の転写残トナーを、透明なポリエステル製の粘着テープによりテーピングしてはぎ取った。はぎ取った粘着テープを紙上に貼ったものの濃度から、粘着テープのみを紙上に貼ったものの濃度を差し引いた濃度差をそれぞれ算出した。下記の評価基準に基づいて評価を行った。尚、転写残濃度はX−Riteカラー反射濃度計(500シリーズ)で測定した。
【0201】
(初期の評価基準)
A:濃度差が0.10未満である。
B:濃度差が0.10以上、0.15未満である。
C:濃度差が0.15以上、0.25未満である。
D:濃度差が0.25以上である。
【0202】
(15k出力後の評価基準)
A:濃度差が0.15未満である。
B:濃度差が0.15以上、0.20未満である。
C:濃度差が0.20以上、0.25未満である。
D:濃度差が0.25以上である。
【0203】
(30k出力後の評価基準)
A:濃度差が0.15未満である。
B:濃度差が0.15以上、0.20未満である。
C:濃度差が0.20以上、0.30未満である。
D:濃度差が0.30以上である。
【0204】
[クリーニング性評価]
30k耐久後にハーフトーン画像を印字し、目視で観察することにより評価した。
【0205】
(評価基準)
A:汚れが発生しない。
B:微小な汚れが発生するが実用上問題ない。
C:斑点状、線状の汚れがところどころに発生している。
D:斑点状、線状の汚れが顕著に発生している
<実施例14、15>
使用する磁性キャリアを表3に示すように変更した以外は、実施例2と同様にして画像安定性、非画像部のかぶり及び転写残濃度の評価を行った。評価結果を表5に示す。
【0206】
磁性キャリアの真比重を変更することで、磁性キャリアへのトナーのスペントが抑制され、トナーの帯電量低下に伴う非画像部のかぶりが良化する。本発明のトナーは、耐ストレス性に優れるため、磁性キャリアの真比重を変更しても、非画像部のかぶりの悪化は抑制されたと考えられる。
【0207】
<実施例16乃至23>
像担持体、像担持体とクリーニングブレードの当接ニップ部の平均面圧を表3に示すように変更した以外は、実施例2と同様にして多数枚出力前後のクリーニング性の評価を行った。評価結果を表6に示す。
【0208】
像担持体とクリーニングブレードの当接ニップ部の平均面圧を上げることで、初期のクリーニング性は良化するものの、多数枚出力後は、弾性変形率の大きな像担持体において、ブレードの振動によりクリーニング性が悪化する傾向が見られる。しかしながら、本発明のトナーを用いることで、多数枚出力後のクリーニングブレードの振動によるクリーニング性の悪化は抑制されていたので、画像形成方法としての長寿命化が可能となっていると考えている。
【0209】
【表3】



【0210】
【表4】

【0211】
【表5】

【0212】
【表6】

【符号の説明】
【0213】
1 熱処理装置
2 熱風供給手段
2A 気流調整部
3 冷風供給手段1
3A 気流調整部
4 冷風供給手段2
5 冷風供給手段3
6 管状部材1
7 管状部材2
8 原料供給手段
9 第1ノズル
10 第2ノズル
10A 返し部
10B リブ
13 回収手段
14 ポール
15 圧縮気体供給手段(エジェクタ)
16 原料定量供給機
17 ヒーター
19 原料回収手段(バグ)
20 吸引排出手段(ブロワー)
30 冷風供給機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂及びワックスを含有するトナー粒子と無機微粒子とを有するトナーであって、
(i)重量平均粒径(D4)が3.0μm以上8.0μm以下であり、
(ii)画像処理解像度512×512画素のフロー式粒子像測定装置による測定において、下記の条件(a)及び(b)を満たし、
(a)円相当径1.98μm以上200.00μm未満の粒子において、該トナーの平均円形度が0.960以上0.985以下であり、円形度0.990以上1.000以下の粒子が25.0個数%以下である;
(b)円相当径0.50μm以上200.00μm未満の粒子に対する、円相当径0.50μm以上1.98μm未満の粒子が10.0個数%以下である;
(iii)ATR法を用い、ATR結晶としてGeを用い、赤外光入射角として45°の条件で測定し得られたFT−IRスペクトルにおいて、2843cm−1以上2853cm−1以下の範囲の最大吸収ピーク強度をPa、1713cm−1以上1723cm−1以下の範囲の最大吸収ピーク強度をPbとし、ATR法を用い、ATR結晶としてKRS5を用い、赤外光入射角として45°の条件で測定し得られたFT−IRスペクトルにおいて、2843cm−1以上2853cm−1以下の範囲の最大吸収ピーク強度をPc、1713cm−1以上1723cm−1以下の範囲の最大吸収ピーク強度をPdとしたときに、下記式(1)
1.20≦P1/P2≦2.00 ・・・ 式(1)
[前記式(1)において、P1=Pa/Pb、P2=Pc/Pdである。]
の関係を満たす、
ことを特徴とするトナー。
【請求項2】
前記トナー粒子が、熱風により表面処理されたものであることを特徴とする請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記トナー粒子が、無機微粒子を有する原料トナーを熱風により表面処理して製造されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項4】
トナーと磁性キャリアとを有する二成分系現像剤であって、
前記トナーは、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のトナーであることを特徴とする二成分系現像剤。
【請求項5】
像担持体を帯電させる帯電工程、前記帯電工程で帯電された像担持体上に静電潜像を形成する潜像形成工程、前記像担持体上に形成された静電潜像をトナーを有する二成分系現像剤を用いて現像し、トナー画像を形成する現像工程、前記像担持体上のトナー画像を中間転写体を介して又は介さずに転写材に転写する転写工程、前記像担持体の表面の転写残トナーをクリーニングするクリーニング工程、熱及び/又は圧力によってトナー画像を転写材に定着する定着工程を有する画像形成方法であって、
前記二成分系現像剤が、請求項4に記載の二成分系現像剤であることを特徴とする画像形成方法。
【請求項6】
前記クリーニング工程が、前記像担持体の表面にブレードを当接させてクリーニングするブレードクリーニング工程であり、
前記像担持体の最表面層の弾性変形率が40%以上70%以下であることを特徴とする請求項5に記載の画像形成方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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