説明

トナー及び該トナーを用いた画像形成装置

【課題】
トナーが定着装置で加熱溶融されて、トナーから揮発する臭気を有する揮発性有機化合物を分解することができるとともに、帯電性やオフセット性に優れたトナー及び該トナーを用いた画像形成装置を提供することにある。
【解決手段】
水酸化カルシウムをトナーに所定量、添加するだけで、トナーが定着装置で加熱溶融される際、トナーから揮発する臭気を有する揮発性有機化合物を分解することができるとともに、帯電性やオフセット性に優れたトナー及び該トナーを用いた画像形成装置を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー及び該トナーを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
定着ローラを用いた定着装置において、ヒータによって加熱が開始され、定着ローラが定着温度に達して定着動作を行える状態になると、定着ローラの表面温度は、180度以上の高温に達している。
【0003】
高温であることで、定着ローラによって、トナーが加熱溶融されて記録媒体上に定着される際、トナーから、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、スチレン等、臭気を有する揮発性有機化合物が揮発してしまっていた。これらの揮発性有機化合物は、製造されたトナーに僅かに残留する成分である。このように、揮発性有機化合物が揮発した場合、活性炭を有するフィルタに吸着させることで、定着装置を備える画像形成装置の外へ揮発性有機化合物を排出させない構成が主に採用されてきた。しかし、フィルタは、フィルタの表面積に応じた揮発性有機化合物しか吸着できないため、定期的な交換が必要であった。しかも、吸着では、揮発性有機化合物の分解までには至らなかった。
【0004】
このような問題に対処するために、例えば、特開平4−338970号公報(特許文献1)では、結着剤樹脂及び着色剤を主成分とするトナーに、活性炭無機質、ゲル、ゼオライトから選択された微粉末を混ぜることで、定着される際、不快臭を吸着、分解することが開示されている。
【0005】
一方、WO2004−089092号公報(特許文献2)では、ホタテ貝等の貝殻を焼成して得られた酸化カルシウムを水和した水和物粉末が消臭効果を有することが開示されているものの、トナーに消臭効果を有することは示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−338970号公報
【特許文献2】WO2004−089092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、不快臭を吸着、分解することが開示されているだけで、帯電性やオフセット性に優れたトナーが得られない場合があった。また、特許文献2では、ホタテ貝等から得られた酸化カルシウムが消臭効果を有することが開示されているだけであって、トナーに酸化カルシウムが添加された場合に、帯電性やオフセット性に優れたトナーが得られるかどうかについては記載がない。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、体積平均粒子径が0.1〜3μmの水酸化カルシウムをトナーに所定量、添加するだけで、トナーが定着装置で加熱溶融されて、トナーから揮発する臭気を有する揮発性有機化合物を分解することができるとともに、帯電性やオフセット性に優れたトナー及び該トナーを用いた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、少なくとも結着樹脂と着色剤を含むトナーにおいて、水酸化カルシウムが添加されていることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明は、前記水酸化カルシウムは、貝殻を焼成して得られることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、前記水酸化カルシウムを内添する添加量は、前記結着樹脂100重量部に対して、5〜20重量部の範囲であることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、前記水酸化カルシウムを外添する添加量は、トナー粉末100重量部に対して、1〜10重量部の範囲であることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、前記トナーを用いたことを特徴とする画像形成装置であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、水酸化カルシウムをトナーに所定量添加するだけで、トナーが定着装置で加熱溶融される際、トナーから揮発する臭気を有する揮発性有機化合物を分解することができるとともに、帯電性やオフセット性に優れたトナー及び該トナーを用いた画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のトナーに関して説明するが、本発明のトナーを用いた画像形成装置の構成については、画像形成装置の一般的な技術が適用できることはいうまでもない。
<実施例1>
トナーは、例えば、結着樹脂、着色剤、帯電制御剤、オフセット防止剤としてのワックス等を加熱混練した後、冷却により固化させてから、粉砕分級することよって得られる。トナーには、更に、一般的に流動性及び帯電性を向上させる目的で、例えば、シリカ、酸化アルミニウム等の無機粒子を外添剤として添加する。
【0016】
結着樹脂は、ガラス転移点が55〜65℃の範囲内であって、軟化点が105〜125℃の範囲内であれば、トナーの結着樹脂として常用されるものを使用でき、例えば、ポリエステル樹脂、ポリスチレンなどのスチレン系樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン−アクリル酸エステル共重合体等などのアクリル系樹脂、塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテルポリオール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂などの熱可塑性樹脂などが挙げられる。結着樹脂としては、これらの中でも、ポリエステル樹脂が好適に用いられる。ポリエステル樹脂としては、公知のものを使用でき、その中でも、ポリオールと多塩基酸とを縮重合させることによって得られるポリエステル樹脂が好ましい。
【0017】
結着樹脂のガラス転移点や軟化点がこの範囲より低いと、オフセット性が劣り、逆に、この範囲より高いと、低温定着性が損なわれる。なお、ガラス転移点や軟化点は、示差走査熱量計(パーキンエルマージャパン社製、Diamond DSC)を用い、JIS K−7121に準拠して測定した値である。
【0018】
着色剤としては、トナーの着色剤として常用される染料および顔料を使用でき、例えば、ニグロシン染料、カーマイン染料、各種の塩基性染料、酸性染料、油性染料、アントラキノン染料、ベンジジン系黄色有機顔料、キナントリン系有機顔料、ローダミン系有機顔料、フタロシアニン系有機顔料、酸化亜鉛、酸化チタン、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラックなどが挙げられる。着色剤は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。着色剤の添加量は、結着樹脂100重量部に対して、3〜12重量部の範囲内とすることが好ましく、このことで、安定した帯電性を示す。
【0019】
帯電制御剤としては、正及び負の帯電性をトナーに付与しうる当該分野で公知の帯電制御剤をいずれも使用できる。負帯電性を付与する帯電制御剤としては、クロムアゾ錯体染料、鉄アゾ錯体染料、コバルトアゾ錯体染料、サリチル酸もしくはその誘導体のクロム・亜鉛・アルミニウム・ホウ素錯体もしくは塩化合物、ナフトール酸(ヒドロキシナフトエ酸)もしくはその誘導体のクロム・亜鉛・アルミニウム・ホウ素錯体もしくは塩化合物、ベンジル酸もしくはその誘導体のクロム・亜鉛・アルミニウム・ホウ素錯体もしくは塩化合物、長鎖アルキル・カルボン酸塩、長鎖アルキル・スルフォン酸塩等を挙げることができる。正帯電性を付与する帯電制御剤としては、ニグロシン染料、及びその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、四級アンモニウム塩、四級ホスフォニウム塩、四級ピリジニウム塩、グアニジン塩、アミジン塩等の誘導体等を挙げることができる。帯電制御剤は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。帯電制御剤の使用量は、特に制限されず、結着樹脂の種類、着色剤の種類および含有量などの各種条件に応じて広い範囲から適宜選択することができる。
【0020】
オフセット防止剤としては、トナーの離型剤として常用されるものを使用でき、その中でも、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの石油系ワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプッシュワックス、アミドワックスなどの合成系ワックス、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックスなどの動植物系ワックスなどのワックス類が好ましい。
オフセット防止剤は、トナー中に分散され、定着装置によるトナーの加熱時にトナー表面に溶出してトナーに離型性を発現させ、オフセット現象を防止するオフセット防止剤として働く。オフセット防止剤の使用量は、特に制限されず、結着樹脂の種類、着色剤の種類および含有量などの各種条件に応じて広い範囲から適宜選択することができる。
【0021】
本実施例では、結着樹脂として、ガラス転移温度62℃、軟化温度118℃のポリエステル樹脂100重量部、着色剤として、カーボンブラック(エボニックデグサジャパン社製、Nipex−60)7重量部、帯電制御剤として、ホウ素錯体(日本カーリット社製、LR−147)1.0重量部、オフセット防止剤として、エステルワックス(ニッサンエレクトール社製、WEP−8)2.5重量部、及びホタテ貝の貝殻を焼成して得られた、体積平均粒子径が0.5μmの水酸化カルシウム10重量部を気流混合機であるヘンシェルミキサ(三井鉱山株式会社製、FMミキサ)で均一に混合したのち、樹脂混合物を得た。本実施例の水酸化カルシウムは、ホタテ貝の貝殻を焼成して得たが、他の貝殻を焼成して、水酸化カルシウムを得てもよい。
【0022】
水酸化カルシウムを内添する添加量は、結着樹脂100重量部に対して、5〜20重量部が好ましく、5重量部より少ないと、トナーから揮発する臭気を有する揮発性有機化合物を分解できず、逆に、20重量部より多いと、帯電性やオフセット性が悪化してしまう。
【0023】
表1に、ホタテ貝の貝殻の成分とその比率を示す。
【0024】
【表1】

【0025】
このホタテ貝の貝殻から水酸化カルシウムを得るには、まず、ホタテ貝の貝殻を水で洗浄後、カッターミル(オリエント社製、VM−16)で粗粉砕し、1mm程度の粉末にする。その後、水を加えながら、900℃、4時間の乾燥を行ったのち、カウンタジェットミル(ホソカワミクロン社製、AFG)で微粉砕し、体積平均粒子径が0.1〜3μmの粉末とした。得られた粉末のpHは、12〜13であった。
このように、水を加えながら、乾燥を行っているため、ホタテ貝の貝殻の主成分である炭酸カルシウムから、水酸化カルシウムが得られる。水を加えずに、乾燥を行うと、炭酸カルシウムから、酸化カルシウムしか得られず、pHは、12程度で、水酸化カルシウムのpHより低い。
【0026】
なお、水酸化カルシウムの体積平均粒子径は、0.05〜5μmの範囲内が好ましく、さらに好ましくは、0.1〜3μmの範囲内である。体積平均粒子径が、0.05μmより小さいと、トナー中に偏在しやすくなり、逆に、5μmより大きいと、個々のトナー中に存在する量にばらつきが発生してしまう。
【0027】
トナーが定着装置で加熱溶融されて、トナーから揮発する臭気を有する揮発性有機化合物は、酸化力の強いOHラジカルイオンによって、分解されるが、酸化カルシウムのように、pHが低いと、空気中の水分と反応しても、酸化力の強いOHラジカルイオンが充分に生成されない。
【0028】
得られた樹脂混合物は、溶融混練機である二軸混練機(池貝社製、PCM−37)で、樹脂混合物を供給する供給量を5kg/時間、二軸混練機の設定温度を140℃とした条件で溶融混練することにより、溶融混練物を作製した。得られた溶融混練物は、冷却により固化させてから、粉砕分級することによって、粒子状のトナーが生成される。粉砕分級は、まず、カッターミル(オリエント社製、VM−16)で粗粉砕し、次いで、カウンタジェットミル(ホソカワミクロン社製、AFG)のようなエア式粉砕機によって微粉砕し、その後、ロータリ式分級機(ホソカワミクロン社製、TSPセパレータ)によって分級する。このことで、体積平均粒子径6.7μm、変動係数25%のトナーを得た。
【0029】
トナーの体積平均粒子径は、5.5〜9.5μmである。5.5μmより小さいと、出力画像上で充分な画像濃度が得られず、逆に、9.5μmより大きいと、トナーの帯電性が低下してしまう。変動係数は、25%程度が好ましく、小さすぎると、粒度分布が狭くなり、出力画像で均一な画像が得られず、大きすぎると、粒度分布が拡がり、感光体上でかぶりが発生してしまう。なお、体積平均粒子径や変動係数は、粒度分布測定装置(ベックマン・コールタ社製、Multisizer3)を用い、測定した値である。
【0030】
外添剤は、公知のものを使用でき、例えば、コロイダルシリカ、アルミナ粉末、酸化チタン粉末、炭酸カルシウム粉末などが挙げられる。
【0031】
本実施例では、得られたトナー100重量部に対して、シランカップリング剤とジメチルシリコーンオイルで表面処理した(a)平均粒子径が12nmの小粒子径の疎水性のシリカ(アエロジル社製、RX200)1.5重量部、同様に表面処理した(b)平均粒子径が110nmの中粒子径の疎水性のシリカ(信越化学社製、X24)0.5重量部、同様に表面処理した(c)平均粒子径が50nmの疎水性のアナターゼ型の酸化チタン(チタン工業社製、ST500R)0.2重量部を外添剤として添加し、ヘンシェルミキサ(三井鉱山株式会社製、FMミキサ)で混合することによってトナーを製造した。
【0032】
次に、本実施例のトナーを、シャープ株式会社製複写機MX−2300(複写速度23枚/分、定着速度225mm/sec)を改造した画像形成装置を用いて、常温常湿環境下で、画像面積率5%のA4原稿にて、普通紙(シャープ株式会社製、SF−4AM3)を横通紙して、複写試験を行い、トナーの流動性、帯電量、出力画像の画像濃度、感光体上のかぶり濃度、低温オフセット、非オフセット域、VOC(Volatile Organic Compounds)値、臭気値の測定を行なった。
【0033】
まず、トナーの流動性は、加振移送式流動性測定装置(ディーアイティー社製)を用いて測定した。0.50mg/sec未満を「○」、0.50以上、1.00mg/sec未満を「△」、1.00mg/sec以上を「×」とした。なお、本装置は、トナーに振動を与えながら勾配をのぼらせる方式のため、数値は低いほうが流動性がよい。
【0034】
トナーの帯電量は、吸引式小型帯電量測定装置(トレックジャパン社製、210HS−2A)を用いて測定した。
【0035】
出力画像の画像濃度は、画像部を、濃度計(マクベス社製、RD−918)を用いて測定し、画像濃度が1.35以上を「○」、1.25以上、1.35未満を「△」、1.25未満を「×」とした。
【0036】
感光体上のかぶり濃度は、感光体上の非画像部に、透明テープ(住友スリーエム社製、メンディングテープ)を貼り付け、その後、外したのち、この透明テープを白紙に貼り付け、濃度計(マクベス社製、RD−918)を用いて測定する。あらかじめ、感光体に貼り付ける前に、透明テープを白紙に貼り付けて測定しておいた濃度との差をかぶり濃度とした。0.01未満を「○」、0.01以上、0.015未満を「△」、0.015以上を「×」とした。
【0037】
低温オフセットは、出力された紙上に、トナーが再転写されていないかどうかを目視で確認し、再転写されはじめる定着温度が140℃以下なら「○」、145〜155℃なら「△」、160℃以上なら「×」とした。なお、定着速度は、124mm/secに下げて行った。
【0038】
非オフセット域は、低温オフセットも高温オフセットも発生しない定着温度の領域のことで、この領域が、60℃以上なら「○」、45〜55℃なら「△」、40℃以下なら「×」とした。
【0039】
揮発性有機化合物の測定にあたっては、測定のまえに、まず、画像形成装置の図示しない排気口から10cm離れた位置にノズルを設置する。そして、排気口から排出される空気をこのノズルで吸引し、空気中に含まれる揮発性有機化合物を、ポータブルVOC(Volatile Organic Compounds)モニタ(ジェイエムエス社製、JHV−1000)にて測定した。複写試験を始めて1分後に、ノズルで吸引を開始し、その後の1分間の空気中に含まれる揮発性有機化合物を測定した。この吸引後の測定値から吸引前の測定値を差し引いた値を、VOC値とした。複写試験を行って、VOC値が100μg/m未満では、不快感を感じないため、「○」と判定し、VOC値が100以上200μg/m未満を「△」と判定し、VOC値が200μg/m以上では、不快感を感じるため、「×」と判定した。
【0040】
臭気の測定にあたっては、揮発性有機化合物の測定と同様に、ノズルを設置する。そして、排気口から排出される空気をこのノズルで吸引し、空気中に含まれる臭気を、ポータブルニオイセンサ(新コスモス電機社製、XP−329III)にて測定した。複写試験を始めて1分後に、ノズルで吸引を開始し、その後の1分間の空気中に含まれる臭気を測定した。この吸引後の表示値から吸引前の表示値を差し引いた値を、臭気値とした。複写試験を行って、臭気値が50未満では、不快感を感じないため、「○」と判定し、臭気値が50以上100未満を「△」と判定し、臭気値が100以上では、不快感を感じるため、「×」と判定した。
【0041】
以上の結果を表2に示す。
【0042】
【表2】

【0043】
本実施例では、水酸化カルシウムを内添する添加量は、結着樹脂100重量部に対して、10重量部であるため、トナーの帯電量も24.0μC/gと高く、トナーの流動性、出力画像の画像濃度、感光体上のかぶり濃度も良好であった。また、低温オフセットも130℃と良好で、非オフセット域も75℃と充分に拡かった。更に、VOC値、臭気値も良好で、トナーから揮発する臭気を有する揮発性有機化合物を充分に分解できたことがわかるとともに、製造されたトナーに僅かに残留するモノマー、酸性分、ベンズアルデヒド、エチルヘキサナール等による臭気も解消されたことがわかる。
<実施例2>
水酸化カルシウムを内添する添加量を、結着樹脂100重量部に対して、10重量部から5.0重量部に変更した以外は実施例1と同一とした。
【0044】
水酸化カルシウムは、正帯電性を付与するため、添加量を減らした本実施例は、実施例1に比べて、トナーの帯電量が25.5μC/gと更に高くなり、トナーの流動性、出力画像の画像濃度、感光体上のかぶり濃度も良好であった。また、低温オフセットも125℃と良好で、非オフセット域も80℃と充分に拡かった。更に、VOC値、臭気値も良好で、トナーから揮発する臭気を有する揮発性有機化合物を充分に分解できたことがわかるとともに、製造されたトナーに僅かに残留するモノマー、酸性分、ベンズアルデヒド、エチルヘキサナール等による臭気も解消されたことがわかる。
<実施例3>
水酸化カルシウムを内添する添加量を、結着樹脂100重量部に対して、10重量部から20重量部に変更した以外は実施例1と同一とした。
【0045】
水酸化カルシウムは、正帯電性を付与するため、添加量を増やした本実施例は、実施例1に比べて、トナーの帯電量が21.2μC/gとやや低くなったものの、トナーの流動性、出力画像の画像濃度、感光体上のかぶり濃度も良好であった。また、低温オフセットも140℃と良好で、非オフセット域も65℃と充分に拡かった。更に、VOC値、臭気値も良好で、トナーから揮発する臭気を有する揮発性有機化合物を充分に分解できたことがわかるとともに、製造されたトナーに僅かに残留するモノマー、酸性分、ベンズアルデヒド、エチルヘキサナール等による臭気も解消されたことがわかる。
<比較例1>
水酸化カルシウムを内添する添加量を、結着樹脂100重量部に対して、10重量部から4.0重量部に変更した以外は実施例1と同一とした。
【0046】
水酸化カルシウムは、正帯電性を付与するため、添加量を減らした本比較例は、実施例1に比べて、トナーの帯電量が26.3μC/gと更に高くなり、トナーの流動性、出力画像の画像濃度、感光体上のかぶり濃度も良好であった。また、低温オフセットも125℃と良好で、非オフセット域も80℃と充分に拡かった。
【0047】
しかし、水酸化カルシウムを内添する添加量が4.0重量部と少ないため、VOC値が、190μg/mの「△」と判定され、臭気値も85の「△」と判定され、トナーから揮発する臭気を有する揮発性有機化合物を充分に分解できなかった。
<比較例2>
水酸化カルシウムを内添する添加量を、結着樹脂100重量部に対して、10重量部から0重量部に変更した以外は実施例1と同一とした。
【0048】
水酸化カルシウムは、正帯電性を付与するため、添加量を減らした本比較例は、実施例1に比べて、トナーの帯電量が28.0μC/gと更に高くなり、トナーの流動性、出力画像の画像濃度、感光体上のかぶり濃度も良好であった。また、低温オフセットも125℃と良好で、非オフセット域も80℃と充分に拡かった。
【0049】
しかし、水酸化カルシウムを内添する添加量が0重量部と少ないため、VOC値が、332μg/mと、不快感を感じる「×」と判定され、臭気値も158と、不快感を感じる「×」と判定され、トナーから揮発する臭気を有する揮発性有機化合物を充分に分解できなかった。
<比較例3>
水酸化カルシウムを内添する添加量を、結着樹脂100重量部に対して、10重量部から21.0重量部に変更した以外は実施例1と同一とした。
【0050】
水酸化カルシウムを内添する添加量が21.0重量部と多いため、VOC値、臭気値は良好で、トナーから揮発する臭気を有する揮発性有機化合物を充分に分解できたことがわかるとともに、製造されたトナーに僅かに残留するモノマー、酸性分、ベンズアルデヒド、エチルヘキサナール等による臭気も解消されたことがわかる。
【0051】
しかし、水酸化カルシウムは、正帯電性を付与するため、添加量を増やした本比較例は、実施例1に比べて、トナーの帯電量が18.9μC/gと大幅に低くなり、感光体上のかぶり濃度も0.016の「×」と判定された。また、水酸化カルシウムの帯電極性とは無関係に、内添する添加量を増やしすぎたことにより、トナーの定着性が阻害され、低温オフセットは、150℃と「△」、非オフセット域も55℃と「△」と判定された。
<実施例4>
本実施例では、実施例1〜3と異なり、水酸化カルシウムは樹脂混合物中に混ぜずに、樹脂混合物を溶融混練したのち、粉砕分級して得られたトナー粉末
に水酸化カルシウムを添加した。水酸化カルシウムを外添する場合、添加量は、トナー100重量部に対して、1〜10重量部が好ましい。1重量部より少ないと、トナーから揮発する臭気を有する揮発性有機化合物を分解できず、逆に、10重量部より多いと、帯電性が悪化してしまう。
【0052】
具体的には、水酸化カルシウムを外添する添加量を、トナー100重量部に対して、0重量部から5.0重量部に変更した以外は実施例1と同一とした。
【0053】
水酸化カルシウムを内添せず、外添した本実施例は、実施例1と同様、トナーの帯電量が24.0μC/gと高く、トナーの流動性、出力画像の画像濃度、感光体上のかぶり濃度も良好であった。また、低温オフセットも125℃と良好で、非オフセット域も80℃と充分に拡かった。更に、VOC値、臭気値も良好で、トナーから揮発する臭気を有する揮発性有機化合物を充分に分解できたことがわかるとともに、製造されたトナーに僅かに残留するモノマー、酸性分、ベンズアルデヒド、エチルヘキサナール等による臭気も解消されたことがわかる。
<実施例5>
水酸化カルシウムを外添する添加量を、トナー100重量部に対して、5.0重量部から1.0重量部に変更した以外は実施例4と同一とした。
【0054】
水酸化カルシウムは、正帯電性を付与するため、添加量を減らした本実施例は、実施例4に比べて、トナーの帯電量が26.4μC/gと更に高くなり、トナーの流動性、出力画像の画像濃度、感光体上のかぶり濃度も良好であった。また、低温オフセットも125℃と良好で、非オフセット域も80℃と充分に拡かった。更に、VOC値、臭気値も良好で、トナーから揮発する臭気を有する揮発性有機化合物を充分に分解できたことがわかるとともに、製造されたトナーに僅かに残留するモノマー、酸性分、ベンズアルデヒド、エチルヘキサナール等による臭気も解消されたことがわかる。
<実施例6>
水酸化カルシウムを外添する添加量を、トナー100重量部に対して、5.0重量部から10重量部に変更した以外は実施例4と同一とした。
【0055】
水酸化カルシウムは、正帯電性を付与するため、添加量を増やした本実施例は、実施例4に比べて、トナーの帯電量が19.9μC/gと低くなったものの、トナーの流動性、出力画像の画像濃度、感光体上のかぶり濃度も良好であった。また、低温オフセットも135℃と良好で、非オフセット域も75℃と充分に拡かった。更に、VOC値、臭気値も良好で、トナーから揮発する臭気を有する揮発性有機化合物を充分に分解できたことがわかるとともに、製造されたトナーに僅かに残留するモノマー、酸性分、ベンズアルデヒド、エチルヘキサナール等による臭気も解消されたことがわかる。
<比較例4>
水酸化カルシウムを外添する添加量を、トナー100重量部に対して、5.0重量部から0.5重量部に変更した以外は実施例4と同一とした。
【0056】
水酸化カルシウムは、正帯電性を付与するため、添加量を減らした本比較例は、実施例4に比べて、トナーの帯電量が27.1μC/gと更に高くなり、トナーの流動性、出力画像の画像濃度、感光体上のかぶり濃度も良好であった。また、低温オフセットも125℃と良好で、非オフセット域も80℃と充分に拡かった。
【0057】
しかし、水酸化カルシウムを外添する添加量が0.5重量部と少ないため、VOC値が、170μg/mと、「△」、臭気値も90と、「△」と判定され、トナーから揮発する臭気を有する揮発性有機化合物を充分に分解できなかった。
<比較例5>
水酸化カルシウムを外添する添加量を、トナー100重量部に対して、5.0重量部から11.0重量部に変更した以外は実施例4と同一とした。
【0058】
水酸化カルシウムを外添する添加量が11.0重量部と多いため、VOC値、臭気値は良好で、トナーから揮発する臭気を有する揮発性有機化合物を充分に分解できたことがわかるとともに、製造されたトナーに僅かに残留するモノマー、酸性分、ベンズアルデヒド、エチルヘキサナール等による臭気も解消されたことがわかる。
【0059】
しかし、水酸化カルシウムは、正帯電性を付与するため、添加量を増やした本比較例は、実施例4に比べて、トナーの帯電量が16.5μC/gと大幅に低くなり、感光体上のかぶり濃度も0.019の「×」と判定された。トナーの流動性も、内添に比べて、外添の場合のほうが、流動性への影響が大きいため、0.65mg/secと低下し、「△」と判定された。
【0060】
一方、水酸化カルシウムの帯電極性とは無関係に、外添する添加量を増やしすぎたものの、トナーの定着性が阻害されるほどには至らず、低温オフセットも140℃と良好で、非オフセット域も70℃と充分に拡かった。
【0061】
以上の通り、少なくとも結着樹脂と着色剤を含むトナーにおいて、ホタテ貝の貝殻を焼成して得られた、体積平均粒子径が0.1〜3μmの水酸化カルシウムを内添する場合の添加量を、結着樹脂100重量部に対して、5〜20重量部の範囲、外添する場合の添加量を、トナー100重量部に対して、1〜10重量部の範囲としたことで、トナーが定着装置で加熱溶融されて、トナーから揮発する臭気を有する揮発性有機化合物を充分に分解できたとともに、製造されたトナーに僅かに残留するモノマー、酸性分、ベンズアルデヒド、エチルヘキサナール等による臭気も解消され、さらに、帯電性やオフセット性に優れたトナー及び該トナーを用いた画像形成装置を提供することができた。
【0062】
また、このように、ホタテ貝から得られる水酸化カルシウムを、トナーに所定量、添加するのは、環境保全の見地からも、好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも結着樹脂と着色剤を含むトナーにおいて、水酸化カルシウムが添加されていることを特徴とするトナー。
【請求項2】
前記水酸化カルシウムは、貝殻を焼成して得られることを特徴とする請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記水酸化カルシウムは、前記結着樹脂100重量部に対して、5〜20重量部の範囲で内添されていることを特徴とする請求項1または2に記載のトナー。
【請求項4】
前記水酸化カルシウムは、トナー粉末100重量部に対して、1〜10重量部の範囲で外添されていることを特徴とする請求項1または2に記載のトナー。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のトナーを用いたことを特徴とする画像形成装置。

【公開番号】特開2012−173310(P2012−173310A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31818(P2011−31818)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】