説明

トナー用帯電制御剤

【課題】 本発明の課題は、電子写真又は静電印刷等において静電荷像を現像するために用いたときに、トナーの色調に悪影響を及ぼさず、摩擦帯電性に優れる電子写真用又は静電印刷用として好適な帯電制御剤を提供することにある。
【解決手段】
ポリオレフィンに無水マレイン酸を付加させた変性ポリオレフィンであり、下記の式(1)によって得られる無水マレイン酸を付加させた変性ポリオレフィンの酸無水物の官能基の加水分解率が40〜100%であることを特徴とするトナー用帯電制御剤の製造方法。
式(1) 加水分解率(%)=(酸価−加水酸価×0.5)/(加水酸価×0.5)×100

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定した摩擦帯電性を有するトナー用の帯電制御剤に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスを利用した静電潜像を現像するために使用される静電荷像現像用トナーは、カブリなどのない鮮明な現像画像を得るために、適正な摩擦帯電量を有し、また、摩擦帯電量に経時変化がなく、例えば湿度変化などの環境変化によっても著しい摩擦帯電量の減衰が起きないことが要求されている。摩擦帯電量が減衰すると、トナー飛散が多くなりカブリや現像装置周辺にトナー汚れが発生するなどの問題が生じる。
【0003】
静電荷像現像用トナーは、トナー中に含まれる結着樹脂のみでも或る程度の摩擦帯電性が付与されるが、多くの場合不十分であるので、充分な摩擦帯電性を付与するために、通常、帯電制御剤を用いる。
【0004】
例えば、トナー粒子に電荷を付与させるための帯電制御剤として、含金属錯塩染料が一般的に用いられている(例えば、特許文献1参照)。しかし、含金属錯塩染料は構造が複雑で不安定なので、トナー製造時の溶融混練、粉砕工程において、熱的、機械的影響を受けて分解または変質されやすく、その結果、トナーの摩擦帯電量が安定せず、トナーの特性を著しく低下させることになる。
【0005】
また、含金属錯塩染料は、トナー中の結着樹脂との相溶性に乏しく、トナー中での分散性が悪いため、トナーに均一な摩擦帯電性を付与することができない。さらに、含金属錯塩染料は、有色で透明性が低いため、カラートナー用に任意に着色した場合、鮮明な色調のカラーコピーを得られない。特に近年は、電子複写機はカラー化が進み、色調への要求は非常に高く、トナー原料の変性や変質、トナーの色調の変化は大きな問題となる。加えて、含金属錯塩染料は、クロムやセレンのような重金属を使用するものが多く、環境面からも問題が提起されている。
【0006】
そこで、前述の各問題に対応するため、含金属錯塩染料と比べ、トナー中での分散性も良く、透明性も優れており、また環境面からも有利である帯電制御樹脂の開発が進み、スルホン酸を含有する重合性単量体の共重合体が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、このような帯電制御樹脂を用いたトナーは、特に湿度の変化に対して摩擦帯電量が安定しないばかりではなく、粉砕トナーに用いた場合は、混練時の熱により分解が起こり、トナーが変色するために、色再現性が求められるカラートナーには適さない。
【0007】
また、上記特許文献3には、ポリオレフィンにアミノ基、またはアミン塩、または第四級アンモニウム塩基を含有させた帯電制御樹脂が提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、このような帯電制御樹脂を用いたトナーは正帯電の帯電特性を有するので、市場で広範囲に普及している負帯電性トナーには適さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭45−26478号公報
【特許文献2】特開昭63−184762号公報
【特許文献3】特公平7−76848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、重金属を使用せず、トナーの色調に悪影響を及ぼさず、環境安定性に優れる摩擦帯電性を付与するトナー用帯電制御剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明の帯電制御剤をトナーに用いることで、トナーの色調に悪影響を及ぼさず、温度や湿度など環境変化に依存せず安定した摩擦帯電性を付与するトナーを提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、前記課題を解決するための手段である本発明は、
(1) ポリオレフィンに無水マレイン酸を付加させた変性ポリオレフィンであり、下記の式(1)によって得られる無水マレイン酸を付加させた変性ポリオレフィンの酸無水物の官能基の加水分解率が40〜100%であることを特徴とするトナー用帯電制御剤の製造方法、
式(1) 加水分解率(%)=(酸価−加水酸価×0.5)/(加水酸価×0.5)×100
(2) メタロセン触媒を用いて重合されたポリオレフィンに無水マレイン酸を付加させた変性ポリオレフィンである前記(1)のトナー用帯電制御剤の製造方法、
(3) 酸価が25〜70mgKOH/g、加水酸価が30〜95mgKOH/gである前記(1)又は(2)のトナー用帯電制御剤の製造方法、
(4) ポリオレフィンの重量平均分子量が4000〜200000である前記(1)〜(3)ののトナー用帯電制御剤の製造方法、
(5) 変性ポリオレフィンと少なくとも水とを混合し、変性ポリオレフィンの懸濁液とし、次に水分を除去することで得られる前記(1)〜(4)のトナー用帯電制御剤の製造方法、
(6)負帯電トナー用帯電制御剤である前記(1)〜(5)のトナー用帯電制御剤の製造方法、
(7) ポリオレフィンに無水マレイン酸を付加させた変性ポリオレフィンであり、下記の式(1)によって得られる無水マレイン酸を付加させた変性ポリオレフィンの酸無水物の官能基の加水分解率が40〜100%であるトナー用帯電制御剤、
式(1) 加水分解率(%)=(酸価−加水酸価×0.5)/(加水酸価×0.5)×100
(8) メタロセン触媒を用いて重合されたポリオレフィンに無水マレイン酸を付加させた変性ポリオレフィンである前記(7)のトナー用帯電制御剤、
(9) 酸価が25〜70mgKOH/g、加水酸価が30〜95mgKOH/gである前記(7)又は(8)のトナー用帯電制御剤、
(10) ポリオレフィンの重量平均分子量が4000〜200000である前記(7)〜(9)のトナー用帯電制御剤、
(11) 変性ポリオレフィンと少なくとも水とを混合し、変性ポリオレフィンの懸濁液とし、次に水分を除去することで得られる前記(7)〜(10)のトナー用帯電制御剤、
(12)負帯電トナー用帯電制御剤である前記(7)〜(11)のトナー用帯電制御剤、
である。
【発明の効果】
【0012】
電子写真又は静電印刷等において静電荷像を現像するために用いたときに、トナーの色調に悪影響を及ぼさず、摩擦帯電性に優れる電子写真用又は静電印刷用として好適な帯電制御剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に本発明の実施の形態を以下に詳しく説明する。
【0014】
本発明の帯電制御剤は、ポリオレフィンに無水マレイン酸を付加させた変性ポリオレフィンであり、下記の式(1)によって得られる無水マレイン酸を付加させた変性ポリオレフィンの酸無水物の官能基の加水分解率が40〜100%であることを特徴とするトナー用帯電制御剤である。
式(1) 加水分解率(%)=(酸価−加水酸価×0.5)/(加水酸価×0.5)×100
【0015】
本発明で用いるポリオレフィンは、α−オレフィンの共重合体であり、α−オレフィンとしてはエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−ドデカデセン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。共重合体としてはランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0016】
本発明で用いるポリオレフィンは、メタロセン系触媒、あるいはチグラー−ナッタ系触媒の存在下に重合させて得られたポリオレフィン、または高分子量ポリオレフィンの熱減成法によって得られるポリオレフィンでもよい。その中でもメタロセン系触媒の存在下に重合させて得られたポリオレフィンであることが好ましい。メタロセン系触媒の存在下に重合させて得られたポリオレフィンは、他の触媒系に比べ分子量分布の狭い重合物を得ることができる。よって、極低分子量成分を含まないため、トナーに添加した場合にはトナーの保存性、耐久性や流動性を損なわないために好適である。
【0017】
本発明で用いる熱減成法によるポリオレフィンは、例えば分子量100000を超える高分子量ポリオレフィンを不活性ガス中、通常300℃ないし450℃で0.5時間ないし10時間熱減成する方法(例えば、特願平1−197874号明細書に記載の方法に準じて行う)等によって得られるポリオレフィンでも良い。
【0018】
本発明で用いるポリオレフィンの重量平均分子量は、4000〜200000が好ましい。重量平均分子量が4000未満であるとトナーの流動性を悪化させる恐れがあり、重量平均分子量が200000を越えると溶融粘度もきわめて高くなる場合があり、無水マレイン酸の付加反応を均一に行うことが難しくなる傾向がある。
【0019】
本発明で用いるポリオレフィンの軟化点は、60〜150℃が好ましい。軟化点が60℃未満であるとトナーの保存性や流動性を悪化させる恐れがあり、軟化点が150℃を越えるとトナーへ均一に分散させることが困難となる。
【0020】
本発明で用いるポリオレフィンの密度は、0.85g/cm以上0.89g/cm以下であることが好ましい。密度が0.85g/cmより小さいポリオレフィンは強度的に不十分なポリオレフィンしか得られていないため、密度が0.85g/cm以上である事が好ましい。密度が0.89g/cm以下であることは、ポリオレフィンの結晶性が低く、無水マレイン酸がポリオレフィンに相溶しやすくなり、反応の効率が向上し、未反応物の残留や副生成物の発生を抑制できるために好ましい。
【0021】
本発明における無水マレイン酸変性ポリオレフィンはポリオレフィンを溶融させ、無水マレイン酸と有機過酸化物などの開始剤を有機溶剤に溶解し、加温下に反応させることによって得ることができる。
【0022】
有機溶剤としては、アルキルアルキレート、アルキレングリコールアルキルエーテルアルキレート、ジアルキレングリコールアルキルエーテルアルキレートから選ばれる少なくとも1種であり、沸点が250℃以下である有機溶剤であればよく、具体的には、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、酪酸ブチルなどのアルキルアルキレート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのアルキレングリコールアルキルエーテルアルキレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのジアルキレングリコールアルキルエーテルアルキレートを挙げることができ、これらの中から選ばれる少なくとも1種以上の化合物を用いることができる。この中でも、130℃以上250℃以下の沸点であるプロピオン酸ブチル、酪酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートは水素引き抜きによるグラフト化反応を進行させやすくするための高温下の反応ができるため好ましく、さらに130℃以上150℃以下の沸点であるプロピオン酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートは蒸留による除去が容易であるため好ましい。
【0023】
有機溶剤の使用量はポリオレフィン100質量部に対して5質量部以上50質量部以下となることが好ましく、特に10質量部以上30質量部以下となることがより好ましい。5質量部よりも含有量が少ない場合に比べ、5質量部以上である場合には、有機溶剤によるポリオレフィンの粘性を抑えることができるため、無水マレイン酸、有機過酸化物の均一な分散が行いやすくなる。また有機溶剤が還流することで、反応槽の天井や壁面等に結露した無水マレイン酸、有機過酸化物を洗浄し、速やかに変性中のポリオレフィンに戻すことができる。
【0024】
反応温度は使用するポリオレフィンが溶解する温度であればよく、一般には60℃〜200℃が好ましい。溶剤を使用しないで溶融法で反応させることによっても得ることができる。
【0025】
無水マレイン酸の使用量はポリオレフィン100質量部に対して0.5質量部以上30質量部以下であることが好ましく、特に1質量部以上20質量部以下となることがより好ましい。0.5質量部未満であると、帯電制御効果が出にくくなり、30質量部を越えると無水マレイン酸の付加反応効率が低下し、副生成物が多く発生する。
【0026】
本発明では、上記無水マレイン酸以外のエチレン性不飽和化合物を、無水マレイン酸と同時に使用することができる。ここでいうエチレン性不飽和化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン系モノマー、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、アクリル酸2−ブチル、メタクリル酸2−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、メタクリル酸n−オクチル、アクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸n−ドデシル、アクリル酸n−オクタデシル、メタクリル酸n−オクタデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィン、ブタジエン、イソプレン等のアルカジエン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、イソブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルのようなビニルエーテル等が挙げられる。これらエチレン性不飽和化合物は単独で用いても良いし、2種以上を併用することもできる。
【0027】
有機過酸化物は炭素原子を化合物の骨格に有する過酸化物であればよく、水素引き抜き効果を持つラジカルを発生できる過酸化物が好ましく、具体的には、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、アルキルパーオキシカーボネートが挙げられ、具体的には、ジイソブチリル パーオキサイド、クミルパーオキシネオデカネート、ジ−n−プロピル パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ヘキシル パーオキシネオデカネート、ジメトキシブチル パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ(3,3,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジ−n−オクタノイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジステアロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、ジコハク酸パーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、ジベンゾイルパーオキサイド、t−ブチル パーオキシイソブチレート、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサネート、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサネート、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン)プロパン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピル モノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサネート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(3−メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)バレラート、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、p−メンタン ヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド等が挙げられる。これらは、一種単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
本発明における無水マレイン酸変性ポリオレフィンの酸価は以下のようにして測定する。
<酸価の測定>
1)試料1gを精秤し、その重さをW(g)とする。
2)200ml三角フラスコに試料を入れ、キシレン70mlを加え、加熱して溶解する。
3)溶解後、テトラヒドロフラン30mlと、指示薬としてフェノールフタレインのエタノール溶液数滴を加える。
4)0.1規定のKOHのエタノール溶液を用いてフラスコ内の溶液をビュレットを用いて滴定する。この時のKOH溶液の量をS(ml)とする。同時にブランクテストをし、この時のKOH溶液の量をB(ml)とする。
5)次式により酸価を計算する。
式(3) 酸価=((S−B)×f×5.61)/W (f:KOH溶液のファクター)
この場合、酸無水物の官能基を1価のカルボン酸として算出できる。
【0029】
本発明における無水マレイン酸変性ポリオレフィンの加水酸価は以下のようにして測定する。
<加水酸価の測定>
1)試料0.5gを精秤し、その重さをW′(g)とする。
2)200ml三角フラスコに試料を入れ、キシレン70ml、テトラヒドロフラン30ml、イオン交換水1mlを加え30分間加熱溶解する。
3)指示薬としてフェノールフタレインのエタノール溶液数滴を加える。
4)0.1規定のKOHのエタノール溶液を用いてフラスコ内の溶液をビュレットを用いて滴定する。この時のKOH溶液の量をS′(ml)とする。同時にブランクテストをし、この時のKOH溶液量をB′(ml)とする。
6)次式により加水酸価を測定する。
式(4) 加水酸価=((S′−B′)×f×5.61)/W′ (f:KOH溶液のファクター)
加水酸価は酸無水物を加水分解することで、酸無水物の官能基を2価のカルボン酸として算出できる。
【0030】
すなわちポリオレフィンに付加した無水マレイン酸のうち、加水分解した酸無水物の官能基の割合を加水分解率とすると、以下の式(1)で表わされる。
式(1) 加水分解率(%)=(酸価−加水酸価×0.5)/(加水酸価×0.5)×100
【0031】
本発明における無水マレイン酸変性ポリオレフィンは、無水マレイン酸を付加させた変性ポリオレフィンの酸無水物の官能基の加水分解率が40〜100%であることが必要であり、好ましくは、45〜100%である。加水分解率が40%未満であると帯電付与性能が不十分であり、また湿度の変化に寄って帯電性能が安定しない。
【0032】
本発明における無水マレイン酸変性ポリオレフィンは、酸価が25〜70mgKOH/g、加水酸価が30〜95mgKOH/gであることが好ましい。酸価が25mgKOH/g未満、あるいは加水酸価が30mgKOH/g未満であると、帯電量が不足する場合がある。酸価が70mgKOH/gを越える、あるいは加水酸価が95mgKOH/gを越えると湿度の変化により帯電量が変化する場合がある。
【0033】
本発明の帯電制御剤は公知の方法に従って通常トナーの製造工程で結着樹脂に着色剤,離型剤、流動化剤等と共に混合溶融して使用される。
【0034】
結着樹脂としては特に限定されず、例えばスチレン単独重合体及びスチレン共重合体、ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然樹脂変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂、架橋されたスチレン系共重合体、スチレン−アクリル系共重合体とポリエステル樹脂とを複合化した樹脂などが挙げられる。
【0035】
本発明の帯電制御剤の使用量は、結着樹脂の固形分に対して、0.5〜30質量部である。好ましくは1〜20質量部である。
【0036】
本発明では、上記帯電制御剤以外の帯電制御剤を同時に使用することができる。例えば、ニグロシン染料、4級アンモニウム塩化合物、含金属アゾ染料、サリチル酸金属塩、4級アンモニウム塩基含有ポリマー、含フッ素系ポリマー、スルホン酸基含有ポリマー及びハロゲン置換芳香環含有ポリマーが挙げられる。トナー中の帯電制御剤の含有量は、結着樹脂の固形分に対して、好ましくは0〜10質量部である。
【0037】
着色剤としては特に限定されず、例えば従来公知の染料、顔料等を挙げることができる。この着色剤の具体例としては、カーボンブラック、スーダンブラックSM、ファーストイエロ−G、ベンジジンイエロー、ピグメントイエロー、インドファーストオレンジ、ピグメントレッド、イルガシンレッド、バラニトアニリンレッド、トルイジンレッド、カーミン、ピグFBメントオレンジR、レーキレッド2G、ローダミンFB、ローダミンBレーキ、メチルバイオレットBレーキ、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、ブリリアントグリーン、フタロシアニングリーン、オイルイエローGG、カヤセットYG、オラゾールブラウンB、オイルピンクOP、マグネタイト、鉄黒などが挙げられる。着色剤の含有量は、着色剤として染料又は顔料を使用する場合には、結着樹脂の固形分に対して、好ましくは0.5〜15質量部である。磁性トナーの場合は、磁性体微粉末を用いるため、着色剤の含有量は、結着樹脂の固形分に対して、好ましくは20〜150質量部である。
【0038】
離型剤としては特に限定されず、例えばポリオレフィン樹脂類[ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−αオレフィン(炭素数3〜8)共重合体、αオレフィン重合体など]、パラフィン類(n−パラフィン、イソパラフィンなど)、エステルワックス類(カルナバワックス、モンタンワックス、ライスワックス等)、炭素数30以上の脂肪族アルコール、炭素数30以上の脂肪酸及びこれらの混合物等が挙げられ、1種又は2種以上を併用しても良い。トナー中の離型剤の含有量は、結着樹脂の固形分に対して、好ましくは0.5〜20質量部である。
【0039】
表面処理剤としては特に限定されず、例えば、コロイダルシリカ、アルミナ、酸化チタン、ポリテトラフロロエチレン、ポリビニリデンクロライド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン超微粒子、シリコーン等の微粉末が挙げられる。トナー中の表面処理剤の含有量は、結着樹脂の固形分に対して、好ましくは0.1〜20質量部である。
【0040】
本発明の帯電制御剤はあらかじめ結着樹脂の製造工程たとえば重合工程で添加し、結着樹脂中に混合ないし、部分的に結合した型で使用することもできる。またトナー化後、粉末状態で混合して使用することもできる。
【0041】
本発明の帯電制御剤を含有するトナーの製造方法としては従来から公知の方法を用いて製造することができる。例えば、混練粉砕法等の乾式法、および直接重合法、懸濁重合法、乳化重合法、乳化会合重合法、シード重合法、乳化凝集法、懸濁造粒法等の水系媒体中で造粒する湿式法が挙げられる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
(変性ポリオレフィンの測定方法)
酸価の測定及び加水酸価の測定は上記のようにして行い、測定によって得られた値を用いて加水分解率を上記のようにして算出した。
【0044】
<実施例1>
攪拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた3000mlセパラフラスコに、ポリオレフィンA−1(メタロセン触媒を用いたエチレン、プロピレン共重合体、密度0.87g/cm、重量平均分子量18,000、軟化点90℃) 1000gを仕込み、窒素雰囲気下、200℃に保たれたオイルバス中で溶融を行い、攪拌を行いながら系内が180℃になるようにオイルバスの温度を調整した。系内が溶融した後、攪拌を行い均一な状態としながら、無水マレイン酸30gとジ−t−ブチルパーオキサイド20gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200gに溶解させた混合液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、180℃で2時間熟成反応を行った後、アスピレーターでフラスコ内を10mmHgに減圧しながら、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、未反応の無水マレイン酸、ジ−t−ブチルパーオキサイドおよびジ−t−ブチルパーオキサイドの分解化合物の除去を1時間行った後、反応物を取り出し、冷却することで、変性ポリオレフィンM−1を得た。
パドル翼による攪拌機、温度計及び還流冷却器を備えた1000mlのセパラフラスコに、分散剤(クラレポバールPVA−210(株式会社クラレ製))3gをイオン交換水197gに溶解した水溶液を添加し、90℃に加温した。次に上記のようにして得られたポリオレフィンM−1 100gの溶融を行い、90℃のイオン交換水中に溶融したポリオレフィン M−1を添加し、90℃に保ちながら攪拌する事で懸濁状態とした後、冷却を行い、水温が30℃になってから懸濁液を300メッシュのナイロンメッシュによりろ過し、変性ポリオレフィン粒子とろ液に分離した。変性ポリオレフィン粒子をイオン交換水で2回洗浄した後、遠心脱水機により脱水を行い、40℃の熱風により乾燥を十分に行い、透明の変性ポリオレフィンの帯電制御剤C−1を得た。帯電制御剤C−1の酸価、加水酸価、加水分解率を表1に示す。
【0045】
<実施例2>
ポリオレフィンにA−2(メタロセン触媒を用いたエチレン、プロピレン共重合体、密度0.89g/cm、重量平均分子量58,000、軟化点100℃)を使用したことと、無水マレイン酸100gとした以外は実施例1と同様に行い、帯電制御剤C−2を得た。帯電制御剤C−2の酸価、加水酸価、加水分解率を表1に示す。
【0046】
<実施例3>
ポリオレフィンにA−3(メタロセン触媒を用いたエチレン、プロピレン共重合体、密度0.88g/cm、重量平均分子量56,000、軟化点85℃)を使用したことと、無水マレイン酸60gとした以外は実施例1と同様に行い、帯電制御剤C−3を得た。帯電制御剤C−3の酸価、加水酸価、加水分解率を表1に示す。
【0047】
<実施例4>
攪拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた3000mlセパラフラスコに、ポリオレフィンA−4(チグラー−ナッタ触媒を用いたエチレン、プロピレン、ブテン共重合体、密度0.87g/cm、重量平均分子量92,000、軟化点107℃) 1000gを仕込み、窒素雰囲気下、200℃に保たれたオイルバス中で溶融を行い、攪拌を行いながら系内が180℃になるようにオイルバスの温度を調整した。系内が溶融した後、攪拌を行い均一な状態としながら、無水マレイン酸90gとジ−t−ブチルパーオキサイド20gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200gに溶解させた混合液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、180℃で2時間熟成反応を行った後、アスピレーターでフラスコ内を10mmHgに減圧しながら、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、未反応の無水マレイン酸、ジ−t−ブチルパーオキサイドおよびジ−t−ブチルパーオキサイドの分解化合物の除去を1時間行った後、反応物を取り出し、冷却することで、変性ポリオレフィンM−4を得た。
パドル翼による攪拌機、温度計及び還流冷却器を備えた1000mlのオートクレーブに、上記のようにして得られたポリオレフィンM−4 100gを入れ溶融を行い、ポリオレフィンM−4が溶融した後、攪拌を行いながら系内が120℃になるようにオートクレーブの温度を調整した。攪拌を停止した後、90℃に加熱した分散剤(ゴーセノールGH−20(日本合成化学工業株式会社製))5gをイオン交換水195gに溶解した水溶液を添加し、加圧下、系内の水温が120℃になるように加温しながら攪拌する事で懸濁状態とした後、冷却を行い、水温が30℃になってから懸濁液を300メッシュのナイロンメッシュによりろ過し、変性ポリオレフィン粒子とろ液に分離した。変性ポリオレフィン粒子をイオン交換水で2回洗浄した後、遠心脱水機により脱水を行い、40℃の熱風により乾燥を十分に行い、透明の変性ポリオレフィンの帯電制御剤C−4を得た。帯電制御剤C−4の酸価、加水酸価、加水分解率を表1に示す。
【0048】
<実施例5>
攪拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた1000mlセパラフラスコに、実施例1の途中で得られた変性ポリオレフィンM−1 200gを仕込み、窒素雰囲気下、120℃に保たれたオイルバス中で溶融を行い、攪拌を行いながら系内が95℃になるようにオイルバスの温度を調整した。系内が溶融した後、攪拌を行い均一な状態としながら、イオン交換水10gを添加した。添加終了後、95℃で1時間撹拌を行った後、アスピレーターでフラスコ内を10mmHgに減圧しながら、添加したイオン交換水の除去を5分行った後、反応物を取り出し、帯電制御剤C−5を得た。帯電制御剤C−5の酸価、加水酸価、加水分解率を表1に示す。
【0049】
<比較例1>
攪拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた3000mlセパラフラスコに、ポリオレフィンA−1(メタロセン触媒を用いたエチレン、プロピレン共重合体、密度0.88g/cm、重量平均分子量56,000、軟化点85℃) 1000gを仕込み、窒素雰囲気下、200℃に保たれたオイルバス中で溶融を行い、攪拌を行いながら系内が180℃になるようにオイルバスの温度を調整した。系内が溶融した後、攪拌を行い均一な状態としながら、無水マレイン酸30gとジ−t−ブチルパーオキサイド20gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200gに溶解させた混合液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、180℃で2時間熟成反応を行った後、アスピレーターでフラスコ内を10mmHgに減圧しながら、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、未反応の無水マレイン酸、ジ−t−ブチルパーオキサイドおよびジ−t−ブチルパーオキサイドの分解化合物の除去を8時間行った後、反応物を取り出し、帯電制御剤C−6を得た。帯電制御剤C−6の酸価、加水酸価、加水分解率を表1に示す。
【0050】
<比較例2>
攪拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた3000mlセパラフラスコに、ポリオレフィンA−5(チグラー−ナッタ触媒を用いたエチレン、プロピレン、ブテン共重合体、密度0.87g/cm、重量平均分子量118,000、軟化点108℃) 1000gを仕込み、窒素雰囲気下、200℃に保たれたオイルバス中で溶融を行い、攪拌を行いながら系内が180℃になるようにオイルバスの温度を調整した。系内が溶融した後、攪拌を行い均一な状態としながら、無水マレイン酸50gとジ−t−ブチルパーオキサイド20gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200gに溶解させた混合液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、180℃で2時間熟成反応を行った後、アスピレーターでフラスコ内を10mmHgに減圧しながら、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、未反応の無水マレイン酸、ジ−t−ブチルパーオキサイドおよびジ−t−ブチルパーオキサイドの分解化合物の除去を1時間行った後、反応物を取り出し、冷却することで、変性ポリオレフィンM−7を得た。
パドル翼による攪拌機、温度計及び還流冷却器を備えた1000mlのオートクレーブに、上記のようにして得られたポリオレフィンM−7 100gを入れ溶融を行い、ポリオレフィンM−7が溶融した後、攪拌を行いながら系内が120℃になるようにオートクレーブの温度を調整した。攪拌を停止した後、90℃に加熱した分散剤(ゴーセノールGH−20(日本合成化学工業株式会社製))5gをイオン交換水195gに溶解した水溶液を添加し、加圧下、系内の水温が120℃になるように加温しながら攪拌する事で懸濁状態とした後、冷却を行い、水温が30℃になってから懸濁液を300メッシュのナイロンメッシュによりろ過し、変性ポリオレフィン粒子とろ液に分離した。変性ポリオレフィン粒子をイオン交換水で2回洗浄した後、遠心脱水機により脱水を行い、40℃の熱風により乾燥を十分に行い、透明の変性ポリオレフィンの帯電制御剤C−7を得た。帯電制御剤 C−7の酸価、加水酸価、加水分解率を表1に示す。
【0051】
(結着樹脂R−1の合成)
ビスフェノールA PO付加物(2mol付加物) 113mol%
テレフタル酸 74mol%
アジピン酸 16mol%
無水トリメリット酸 10mol%
上記縮重合系モノマーとテトラブチルチタネート0.2mol%を温度計、リービッヒ冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽に仕込み、窒素雰囲気下、常圧下200℃で8時間反応し、さらに減圧しながら240℃で8時間反応し、脱水縮合反応を行うことにより、結着樹脂R−1を得た。得られた結着樹脂R−1のガラス転移温度は57.3℃、軟化点118.5℃、重量平均分子量49000であった。
なお、上記「mol%」はカルボン酸成分のmol数の合計を100mol%としたときのモル比率である。
【0052】
(トナーの作成)
<評価例1>
結着樹脂R−1 100質量部、フィッシャートロプシュワックス(C105 サゾールワックス社製) 3部、カーボンブラック(MA−100、三菱化学株式会社製) 4質量部、帯電制御剤C−1 4質量部をブレンダーにて混合し、130℃に加熱した二軸エクストルーダーで溶融混練した。冷却した混練物をスピードミルで粗粉砕後、ジェットミルで微粉砕し、得られた微粉砕物を分級機にて厳密に分級して体積平均粒子径8μm以下のトナー粒子を得た。次いで、得られたトナー粒子100質量部に対し、コロイダルシリカ(アエロゾルR972、日本アエロジル株式会社製)1質量部を混合機にて混合し、トナーT−1を得た。得られたトナーT−1の帯電性を表2に示す。
【0053】
<評価例2>
帯電制御剤をC−2とした以外は評価例1と同様に行い、トナーT−2を得た。得られたトナーT−2の帯電性を表2に示す。
【0054】
<評価例3>
帯電制御剤をC−3とした以外は評価例1と同様に行い、トナーT−3を得た。得られたトナーT−3の帯電性を表2に示す。
【0055】
<評価例4>
帯電制御剤をC−4とした以外は評価例1と同様に行い、トナーT−4を得た。得られたトナーT−4の帯電性を表2に示す。
【0056】
<評価例5>
帯電制御剤をC−5とした以外は評価例1と同様に行い、トナーT−5を得た。得られたトナーT−5の帯電性を表2に示す。
【0057】
<評価例6>
帯電制御剤をC−6とした以外は評価例1同様に行い、トナーT−6を得た。得られたトナーT−6の帯電性を表2に示す。
【0058】
<評価例7>
帯電制御剤をC−7とした以外は評価例1同様に行い、トナーT−7を得た。得られたトナーT−7の帯電性を表2に示す。
【0059】
(トナーの評価方法)
トナーの帯電性能を以下の方法で評価した。その結果を表2に示す。
・摩擦帯電量:得られたトナー0.1gと酸化鉄粉5gを広口瓶に採取し、23℃、40%R.H.に調湿した。シェーカーにて一定時間振とう(2分、5分、10分)させた後、吸引分離式摩擦帯電量測定器(機器名:STC−1、三協パイオテク(株)製)を用いて、吸引圧6.7kPa、吸引時間1分の条件下において摩擦帯電量(−μC/g)を測定した。測定値を摩擦帯電量として記載した。摩擦帯電量は、数値が高く、かつ2分、5分、10分で数値の変動が少ないことが好ましく、摩擦帯電量は20〜70(−μC/g)であることがトナーの転写効率を向上させる上で好ましく、変動率が20%以下であることが安定した画像形成を得ることができる。
・環境安定性:上記手法により調製されたトナー類で振とう時間が10分のサンプルを高温高湿下(37℃、Rh=85%)の条件下において2時間放置した。
得られたサンプルの摩擦帯電量を測定し、放置前のサンプルの摩擦帯電量との差(減少率)を求めた。摩擦帯電量の差が0以上4%未満であるものを◎、4%以上8%未満であるものを○、8%以上16%未満であるものを△、16%以上のものを×と評価した。8%以上あると環境安定性が悪く、画像形成不良が発生しやすい。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
表2のトナーの帯電性評価結果から、帯電制御剤C−1〜C−5を使用したトナーT−1〜T−5は、十分に帯電しており、振とう時間に対して帯電量が安定しており、さらに湿度変化があっても帯電量を維持し、良好な帯電性を示している。一方、ポリオレフィンに付加した無水マレイン酸の加水分解率が40%に満たないC−6、C−7を使用したトナーT−6、T−7は、帯電が不十分であり、湿度の変化により帯電量が安定しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンに無水マレイン酸を付加させた変性ポリオレフィンであり、下記の式(1)によって得られる無水マレイン酸を付加させた変性ポリオレフィンの酸無水物の官能基の加水分解率が40〜100%であることを特徴とするトナー用帯電制御剤の製造方法。
式(1) 加水分解率(%)=(酸価−加水酸価×0.5)/(加水酸価×0.5)×100
【請求項2】
メタロセン触媒を用いて重合されたポリオレフィンに無水マレイン酸を付加させた変性ポリオレフィンであることを特徴とする請求項1に記載のトナー用帯電制御剤の製造方法。
【請求項3】
酸価が25〜70mgKOH/g、加水酸価が30〜95mgKOH/gであることを特徴とする請求項1又は2に記載のトナー用帯電制御剤の製造方法。
【請求項4】
ポリオレフィンの重量平均分子量が4000〜200000であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のトナー用帯電制御剤の製造方法。
【請求項5】
変性ポリオレフィンと少なくとも水とを混合し、変性ポリオレフィンの懸濁液とし、次に水分を除去することで得られる請求項1〜4のいずれか1項に記載のトナー用帯電制御剤の製造方法。
【請求項6】
負帯電トナー用帯電制御剤であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のトナー用帯電制御剤の製造方法。
【請求項7】
ポリオレフィンに無水マレイン酸を付加させた変性ポリオレフィンであり、下記の式(1)によって得られる無水マレイン酸を付加させた変性ポリオレフィンの酸無水物の官能基の加水分解率が40〜100%であることを特徴とするトナー用帯電制御剤。
式(1) 加水分解率(%)=(酸価−加水酸価×0.5)/(加水酸価×0.5)×100
【請求項8】
メタロセン触媒を用いて重合されたポリオレフィンに無水マレイン酸を付加させた変性ポリオレフィンであることを特徴とする請求項7に記載のトナー用帯電制御剤。
【請求項9】
酸価が25〜70mgKOH/g、加水酸価が30〜95mgKOH/gであることを特徴とする請求項7又は8に記載のトナー用帯電制御剤。
【請求項10】
ポリオレフィンの重量平均分子量が4000〜200000であることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載のトナー用帯電制御剤。
【請求項11】
変性ポリオレフィンと少なくとも水とを混合し、変性ポリオレフィンの懸濁液とし、次に水分を除去することで得られることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載のトナー用帯電制御剤。
【請求項12】
負帯電トナー用帯電制御剤であることを特徴とする請求項7〜11のいずれか1項に記載のトナー用帯電制御剤。

【公開番号】特開2012−13799(P2012−13799A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148145(P2010−148145)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000109635)星光PMC株式会社 (102)
【Fターム(参考)】