説明

トラックのティアドロップ荷台

【課題】トラックの箱形荷台の密閉性と貨物の積み卸し性を両立しつつ、走行抵抗を低減して燃費をより向上させる。
【解決手段】ルーフを前後方向に沿って中高状に膨出湾曲させたティアドロップ荷台の前後端に門枠2を設け、荷台のルーフおよびサイドを構成する左右ウイングルーフ3、3のルーフ部内縁の前後端を門枠2の上枠にルーフの膨出高さの二倍以上の間隔を隔てて上下に回動可能に枢着すると共に、左右ウイングルーフ3、3のルーフ部内縁間を柔軟性に富む弾性材5を介して連結遮蔽したことにより、ウイングルーフ3、3による荷台の密閉性と貨物の積み卸し性を確保しつつ、走行抵抗を低減して燃費をより向上させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトラックの箱形荷台に係り、特に、ルーフを前後方向に沿って中高状に膨出湾曲させたトラックのティアドロップ荷台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
箱形荷台を搭載したトラックの走行抵抗を小さくして燃費をより改善するために、特許文献1に見られるように、箱形荷台のルーフを前後方向に沿って中高状に膨出湾曲させてルーフ上面における気流の乱れを予防するようにしたティアドロップ荷台を用いることが有効であるとされている。
【0003】
ところで、上記従来例のようにルーフを前後方向に沿って中高状に膨出湾曲させたティアドロップ荷台にあっては、荷台のサイド高さが前後方向位置によって変わる。従って、例えば従来のウイングルーフを供えた箱形荷台の場合のように荷台のルーフおよびサイドを構成する左右のウイングルーフのルーフ部内縁を近接させて枢着した場合は、左右ウイングルーフの膨出部が相互に接近干渉してウイングルーフの開放回動を阻害する。
【0004】
従って、従来のティアドロップ荷台では、箱形荷台の密閉性を犠牲にして荷台のサイドをカーテンで覆って荷物の積み卸し性を確保するか、積み卸し性を犠牲にして荷台後方のみに扉あるいはシャッターを取り付けざるを得ないというように、荷台の密閉性と荷物の積み卸し性を両立できるウイングルーフを採用することは不可能であるとされていた。
【特許文献1】WO2008/125863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、箱形荷台の密閉性と貨物の積み卸し性を両立しつつ、走行抵抗を低減して燃費をより向上させることができない点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、箱形荷台のルーフを前後方向に沿って中高状に膨出湾曲させたティアドロップ荷台の前後端に門枠を設け、荷台のルーフおよびサイドを構成する左右ウイングルーフのルーフ部内縁の前後端を前記門枠の上枠にルーフの膨出高さの二倍以上の間隔を隔てて上下に回動可能に枢着すると共に、左右ウイングルーフのルーフ部内縁間を柔軟性に富む弾性材を介して連結遮蔽したことを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るティアドロップ荷台にあっては、左右のウイングルーフの内縁前後端を、ルーフの膨出高さの二倍以上の間隔を隔てて前後門枠の上枠に枢着しているために、ウイングルーフの開放回動時に左右ウイングルーフの膨出部が干渉することがない。また、左右ウイングルーフのルーフ部内縁間を柔軟性に富む弾性材を介して連結遮蔽しているために、荷台の密閉性が確保されると同時に、弾性材が変形して左右ウイングルーフの開閉回動を許容する。
【0008】
従って、本発明に係るティアドロップ荷台によれば、従来公知のウイングルーフを供えた荷台と同程度の荷台の密閉性および積み卸し性を確保しつつ、荷台のルーフを前後方向に沿って中高状に膨出湾曲させてルーフ上面における気流の乱れを予防することができるために、トラックの走行抵抗を小さくして燃費をより改善することができるという利点がある。
【0009】
なお、荷台の前後端に設けた門枠の上枠を上昇移動させる昇降手段を設けた場合は、上枠を上昇移動させた状態でウイングルーフを開放回動させれば、ウイングルーフの回動に伴って折り畳まれて垂下する弾性材が積荷などに干渉することを予防できるために、箱形荷台の上端まで貨物を積み込んで輸送効率を高くすることができる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は本発明に係るティアドロップ荷台を搭載したトラックの一実施形態を示す斜視図であり、荷台1の前後端に門枠2、2を設けている。また、荷台1のルーフを前後方向に沿って中高状に膨出湾曲させるとともに、荷台1のサイドおよびルーフを覆う左右ウイングルーフ3、3のルーフ部内縁の前後端を前記門枠2、2の上枠2a、2aにそれぞれ上下に回動可能に取り付けている。なお、この取り付けに際しては、左右ウイングルーフ3、3を枢着するピン4、4の間隔Lを、ルーフの膨出高さhの二倍以上の寸法に設定している。従って、ピン4、4を中心として左右ウイングルーフ3、3を開放回動させて左右ウイングルーフ3、3の膨出部内縁が相互に接近移動したとしても、これらルーフ部内縁が相互に干渉することがない。
【0011】
そして、左右ウイングルーフ3、3の内縁間を柔軟性に富む弾性材5を介して連結することにより、左右ウイングルーフ3、3のルーフ部内縁間を遮蔽して荷台1の密閉性を確保している。6、6は後部の門枠による開口部に取り付けた後部ゲートである。
【0012】
また、前記門枠2、2の上枠2a、2aを上昇移動させる昇降手段7、7を設けている。昇降手段7、7は、例えば油圧シリンダなどによって構成されており、左右のウイングルーフ3、3を閉じた通常の状態では昇降手段7、7を下降保持させて図1、2に示したように上枠2a、2aを門枠2、2の側枠上に密接保持させて箱形荷台1を閉じている。一方、ウイングルーフ3、3の開放回動時は、昇降手段7、7を伸長作動させて上枠2a、2aを側枠の上端から浮上させる。従って、ウイングルーフ3、3の開放回動に伴って次第に折り畳まれて垂下する弾性材5が積荷の上端に接触することが回避される。
【0013】
即ち、荷台1のルーフを前後方向に沿って中高状に膨出湾曲させつつ、ルーフ部の前後端内縁を門枠2、2の上枠2a、2aに枢着している。従って、ウイングルーフ3、3を開放回動させると、左右ウイングルーフ3、3の膨出部がその膨出高さhに応じた分だけ相互に接近移動する。従って、ウイングルーフ3、3を開放回動させるとルーフ部の内縁間を接続遮蔽する弾性材5が膨出部の接近移動分だけ折り畳まれて垂下して荷物の上端に近接するが、ウイングルーフ3、3の開放回動に同期して、あるいは開放回動に先んじて昇降手段7、7を伸長作動させて門枠2、2の上枠2a、2aを上昇移動させるようにした場合は、この上昇分だけウイングルーフ3、3の回動支点が上昇して荷物と弾性材5との隙間を確保する。よって、ルーフを前後方向に沿って中高状に膨出湾曲させて走行抵抗を小さくするようにしたティアドロップ荷台の場合においても、従来公知のウイングルーフを供えた箱形荷台の場合と同等の積み卸し性と密閉性を確保することが可能となる。
【0014】
因みに、上記のようなウイングルーフ3、3の開放回動時における弾性材5と荷物の接触を回避するためには、昇降手段7、7による上枠2a、2aの上昇高さHをウイングルーフ3、3の膨出高さhと同程度に設定すればよいが、荷物の積み卸し性をより高くするためには、実際の上昇寸法Hをルーフの膨出高さhより大きくして満載時における荷物の上端とルーフ部の接触を回避するようにすることが望まれる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るティアドロップ荷台を搭載したトラックの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示したトラックの側面図である。
【図3】図1に示したトラックのウイングルーフを開放回動した状態での側面図である。
【図4】図3の後面図である。
【図5】図3の平面図である。
【符号の説明】
【0016】
1 箱形荷台
2 門枠
2a 上枠
3 ウイングルーフ
4 ピン
5 弾性材
6 後部ゲート
7 昇降手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーフを前後方向に沿って中高状に膨出湾曲させたティアドロップ荷台(1)の前後端に門枠(2)(2)を設け、荷台(1)のルーフおよびサイドを構成する左右ウイングルーフ(3)(3)のルーフ部内縁の前後端を前記門枠(2)(2)の上枠(2a)(2a)にルーフの膨出高さ(h)の二倍以上の間隔(L)を隔てて上下に回動可能に枢着すると共に、左右ウイングルーフ(3)(3)のルーフ部内縁間を柔軟性に富む弾性材(5)を介して連結遮蔽したことを特徴とするトラックのティアドロップ荷台。
【請求項2】
荷台(1)の前後端に設けた門枠(2)(2)の上枠(2a)(2a)を上昇移動させる昇降手段(7)(7)を設けたことを特徴とする請求項1記載のトラックのティアドロップ荷台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−82364(P2013−82364A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224393(P2011−224393)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)