説明

トラバーサ及び鉄道列車搬入搬出方法

【課題】複雑な機構や大掛かりな地上設備を要することなく、異軌間軌道で鉄道列車を連続的に移動させることができ、しかも、その移動時間を大幅に短縮することを可能とする。
【解決手段】複数の鉄道車両2から構成され所定軌道を走行する鉄道列車と、鉄道車両が連結された状態のまま搭載する列車搭載部12を備えるとともに、所定軌道とは異なる寸法の軌間を有する特定軌道を走行する貨物列車10と、貨物列車に連結され貨物列車を駆動する貨物列車用機関車10aと、所定軌道を走行する鉄道列車に連結され前記鉄道列車を駆動する鉄道列車用機関車と、所定軌道と同一の軌間寸法を有する第1軌道部分と、前記貨物列車が走行する特定軌道と同一の軌間寸法を有する第2軌道部分と、が並列に設けられたトラバーサとにより、貨物列車の列車搭載部への鉄道列車の搬入と、列車搭載部に搭載された鉄道列車の搬出との双方を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道列車を搭載して走行する貨物列車に鉄道列車を搬入・搬出するのに適したトラバーサ及びこれを用いた鉄道列車搬入搬出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、軌間寸法の異なる線路区間(以下「異軌間軌道」という)において列車を連続的に移動させるための技術が種々提案され、実用化されている。例えば、異軌間軌道を有する国境等においては、貨車の車体をジャッキで持ち上げ、この車体の下方に装着された台車を異なる軌間の台車と交換する技術(以下「台車はきかえ方式」という)が実用化されている。
【0003】
また、レールを三本平行に敷設することにより、外側の二本のレールからなる広い軌間を有する軌道(例えば軌間寸法1435mm標準軌)と、外側の一本のレールと内側の一本のレールとからなる狭い軌間を有する軌道(例えば軌間寸法1067mm狭軌)と、を構成する技術(以下「三線軌条方式」という)が実用化されている。かかる三線軌条方式を採用すると、軌間の異なる2種類の列車を走行させることができる。
【0004】
また、近年においては、左右の車輪を車軸方向に移動させて軌間変更を行う「軌間可変車両」の開発が進められている(例えば、特許文献1参照。)。かかる軌間可変車両を採用すると、台車交換のためのジャッキ等が不要となるとともにレールの追加敷設作業が不要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−332950号公報(第1頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記した「台車はきかえ方式」を採用すると、ジャッキ等の地上設備や台車交換のための広い作業スペースが必要となる上に、台車を交換する作業に多くの時間や労力を要するという問題がある。また、前記した「三線軌条方式」を採用すると、軌間の異なる2種類の列車を走行させる際に、外側の一本のレールが共通して使用されることとなるため、この外側の一本のレールが他のレールより早く磨耗・損傷してしまうという問題がある。
【0007】
また、特許文献1に記載されたような「軌間可変車両」においては、軌間変換を行うための機構(軌間変換機構)がきわめて複雑であるので、機構の耐久性や軌間変更動作の確実性等を検証するための試験を行う必要があるため、現段階では実用化が困難な状況にある。
【0008】
本発明の課題は、所定軌道を走行する鉄道列車の貨物列車への搬入及び貨物列車に搭載された鉄道列車の搬出を可能とするトラバーサ及び鉄道列車搬入搬出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、複数の鉄道車両から構成され所定軌道を走行する鉄道列車と、前記鉄道車両が連結された状態のまま搭載する列車搭載部を備えるとともに、前記所定軌道とは異なる寸法の軌間を有する特定軌道を走行する貨物列車と、前記貨物列車に連結され前記貨物列車を駆動する貨物列車用機関車と、所定軌道を走行する鉄道列車に連結され前記鉄道列車を駆動する鉄道列車用機関車と、を用いて、前記貨物列車の前記列車搭載部への前記鉄道列車の搬入と、前記列車搭載部に搭載された前記鉄道列車の搬出との双方を行うトラバーサであって、前記所定軌道と同一の軌間寸法を有する第1軌道部分と、前記貨物列車が走行する特定軌道と同一の軌間寸法を有する第2軌道部分とを備え、前記第1軌道部分と第2軌道部分とが並列に設けられたことを特徴とする。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、トラバーサの第1軌道部分と貨物列車の列車搬送部とを接続し、鉄道列車用機関車を鉄道列車に連結し、鉄道列車用機関車の駆動力で鉄道列車を走行させることにより、鉄道列車をトラバーサの第1軌道部分を経由させて貨物列車の列車搭載部に搬入することができる。従って、ジャッキ等を用いることなく鉄道列車を貨物列車に容易かつ迅速に搭載することができるので、所定軌道から特定軌道へと移行する異軌間軌道において、鉄道列車の移動時間を大幅に短縮することができる。
【0011】
また、請求項1に記載の発明によれば、鉄道列車が搭載された貨物列車の進行方向前方に貨物列車用機関車を連結し、貨物列車用機関車の駆動力(牽引力)で貨物列車を走行させ、貨物列車用機関車をトラバーサの第2軌道部分に乗り入れさせることができる。そして、貨物列車用機関車と貨物列車との連結状態を解除し、トラバーサを移動させてトラバーサの第1軌道部分と貨物列車の列車搬送部とを接続し、鉄道列車用機関車を列車搬送部内の鉄道列車に連結して鉄道列車用機関車の駆動力で鉄道列車を走行させることにより、鉄道列車をトラバーサの第1軌道部分を経由させて搬出することができる。従って、ジャッキ等を用いることなく鉄道列車を貨物列車から容易かつ迅速に搬出することができるので、特定軌道から所定軌道へと移行する異軌間軌道において、鉄道列車の移動時間を大幅に短縮することができる。
【0012】
さらに、貨物列車は、所定軌道を走行する鉄道列車を連結状態のまま列車搭載部に搭載することができるので、この鉄道列車を搭載した状態で特定軌道を走行することができる。従って、所定軌道と特定軌道との双方が設けられている異軌間軌道において鉄道列車を連続的に移動させることができる。
しかも、所定軌道上を走行していた鉄道列車を特定軌道上に載せる際に、従来の「台車はきかえ方式」を採用する必要がないので、ジャッキ等の地上設備や台車交換のための広い作業スペースが不要となるとともに、台車を交換する作業に要する時間や労力を削減することができる。このため、鉄道列車の移動時間を大幅に短縮することができる。また、従来の「三線軌条方式」を採用する必要がないので、一本のレールに過度の負荷をかけることがなく、レールの磨耗や損傷を未然に防ぐことができる。また、複雑な軌間変換機構を用いていないので、鉄道列車を安全かつ確実に移動させることができる。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のトラバーサにおいて、前記第1軌道部分を前記第2軌道部分から分岐させるように設けることを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、トラバーサの第1軌道部分を第2軌道部分から分岐させるように設けるので、トラバーサが分岐器としての機能を果たすこととなり、貨物列車の列車搭載部に搭載された鉄道列車を搬出した後、特定軌道から分岐する方向へと鉄道列車を走行させることができる。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載のトラバーサにおいて、前記第1軌道部分を前記第2軌道部分よりも高い位置に配置したことを特徴とする。
【0016】
請求項4記載の発明は、請求項2記載のトラバーサにおいて、前記第1軌道部分を前記第2軌道部分よりも高い位置に配置すると共に、前記第1軌道部分が前記第2軌道部分の上方に移動可能であることを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明は、複数の鉄道車両から構成され所定軌道を走行する鉄道列車と、前記鉄道車両が連結された状態のまま搭載する列車搭載部を備えるとともに、前記所定軌道とは異なる寸法の軌間を有する特定軌道を走行する貨物列車と、所定軌道を走行する鉄道列車に連結され前記鉄道列車を駆動する鉄道列車用機関車と、前記貨物列車に連結され前記貨物列車を駆動する貨物列車用機関車と、前記所定軌道と同一の軌間寸法を有する第1軌道部分と、前記貨物列車が走行する特定軌道と同一の軌間寸法を有する第2軌道部分と、が並列に設けられたトラバーサと、を用いて、前記貨物列車の前記列車搭載部への前記鉄道列車の搬入と、前記列車搭載部に搭載された前記鉄道列車の搬出と、の双方を実現させることを特徴とする。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、トラバーサの第1軌道部分と貨物列車の列車搬送部とを接続し、鉄道列車用機関車を鉄道列車に連結し、鉄道列車用機関車の駆動力で鉄道列車を走行させることにより、鉄道列車をトラバーサの第1軌道部分を経由させて貨物列車の列車搭載部に搬入することができる。従って、ジャッキ等を用いることなく鉄道列車を貨物列車に容易かつ迅速に搭載することができるので、所定軌道から特定軌道へと移行する異軌間軌道において、鉄道列車の移動時間を大幅に短縮することができる。
【0019】
また、請求項5に記載の発明によれば、鉄道列車が搭載された貨物列車の進行方向前方に貨物列車用機関車を連結し、貨物列車用機関車の駆動力(牽引力)で貨物列車を走行させ、貨物列車用機関車をトラバーサの第2軌道部分に乗り入れさせることができる。そして、貨物列車用機関車と貨物列車との連結状態を解除し、トラバーサを移動させてトラバーサの第1軌道部分と貨物列車の列車搬送部とを接続し、鉄道列車用機関車を列車搬送部内の鉄道列車に連結して鉄道列車用機関車の駆動力で鉄道列車を走行させることにより、鉄道列車をトラバーサの第1軌道部分を経由させて搬出することができる。従って、ジャッキ等を用いることなく鉄道列車を貨物列車から容易かつ迅速に搬出することができるので、特定軌道から所定軌道へと移行する異軌間軌道において、鉄道列車の移動時間を大幅に短縮することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の鉄道列車搬入搬出方法において、前記トラバーサの前記第1軌道部分を前記第2軌道部分から分岐させるように設けることを特徴とする。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、トラバーサの第1軌道部分を第2軌道部分から分岐させるように設けるので、トラバーサが分岐器としての機能を果たすこととなり、貨物列車の列車搭載部に搭載された鉄道列車を搬出した後、特定軌道から分岐する方向へと鉄道列車を走行させることができる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載の鉄道列車搬入搬出方法において、前記貨物列車の列車搭載部には、前記鉄道列車の車輪をガイドするレールが個々に周囲の平面全体に対して凹状となる部分に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、複雑な機構や大掛かりな地上設備を要することなく、異軌間軌道で鉄道列車を連続的に移動させることができ、しかも、その移動時間を格段に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1の実施の形態に係る異軌間軌道列車移動システムの概要を説明するための説明図である。
【図2】図1に示した異軌間軌道列車移動システムで使用される新幹線貨物列車を標準軌上に載置した状態を示す断面図である。
【図3】図2に示した新幹線貨物列車の一部切欠側面図である。
【図4】図1に示した異軌間軌道列車移動システムで使用されるトラバーサの断面図である。
【図5】図4に示したトラバーサを用いて在来線貨車を新幹線貨車に搬入する工程を説明するための説明図である。
【図6】図4に示したトラバーサを用いて在来線貨車を新幹線貨車から搬出する工程を説明するための説明図である。
【図7】同上
【図8】第2の実施の形態に係る異軌間軌道列車移動システムにおいて、分岐器を兼ねるトラバーサを用いて在来線貨車を新幹線貨車に搬入する工程を説明するための説明図である。
【図9】第2の実施の形態に係る異軌間軌道列車移動システムにおいて、分岐器を兼ねるトラバーサを用いて在来線貨車を新幹線貨車から搬出する工程を説明するための説明図である。
【図10】同上
【図11】参考例に係る異軌間軌道列車移動システムにおいて、列車搬入搬出用車両を用いて在来線貨車を新幹線貨車に搬入する工程を説明するための説明図である。
【図12】参考例に係る異軌間軌道列車移動システムにおいて、列車搬入搬出用車両を用いて在来線貨車を新幹線貨車から搬出する工程を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を、図を用いて詳細に説明する。なお、本実施の形態においては、狭軌(軌間寸法1067mmの軌道)と標準軌(軌間寸法1435mmの軌道)とから構成される線路区間(異軌間軌道)で列車を連続的に移動させる「異軌間軌道列車移動システム」について説明することとする。
【0026】
[第1の実施の形態]
まず、図1〜図7を用いて、本発明の第1の実施の形態における異軌間軌道列車移動システムについて説明する。異軌間軌道列車移動システムは、後述する新幹線貨物列車10やトラバーサ20等を備えており、図1に示すように、北海道側に敷設された狭軌LNと、本州側に敷設された狭軌LNと、これら狭軌LNの間に敷設された青函トンネル内の標準基LSと、からなる異軌間軌道で在来線貨物列車1の「直通運転」を実現させるものである。なお、狭軌LNは本発明における所定軌道であり、標準基LSは本発明における特定軌道である。
【0027】
在来線貨物列車1は、図1に示すように、複数の連結された在来線貨車2と、これら在来線貨車2を駆動する在来線機関車3と、から構成されている。在来線貨物列車1の在来線貨車2は、狭軌LN上を走行することができるように、狭軌LNの軌間寸法(1067mm)に対応する間隔で配置された左右1対の車輪2a(図2参照)を有している。在来線貨車2が複数連結されることにより、本発明における鉄道列車が構成される。
【0028】
在来線貨車2は、青函トンネル内の標準軌LS上を走行することができないが、図1(b)に示すように、後述する新幹線貨物列車10の新幹線貨車11の内部に搭載されて高速で運搬されるため、結果的に青函トンネル内を高速移動する。このため、在来線貨物列車1は、北海道側の所定の出発点PS(例えば函館駅)から本州側の所定の目的点PG(例えば東京駅)まで、青函トンネル内を経由して連続的に移動することが可能となる。
【0029】
次に、図1〜図3を用いて、本実施の形態における異軌間軌道列車移動システムで用いられる新幹線貨物列車10の構成について説明する。
【0030】
新幹線貨物列車10は、図1及び図2に示すように、複数の連結された新幹線貨車11と、これら新幹線貨車11を駆動する新幹線機関車10aと、からなり、青函トンネルT内の標準軌LS上を新幹線100と同等の速度で走行するものである。
【0031】
新幹線貨車11は、図2及び図3に示すように、在来線貨車2を連結状態のまま搭載する列車搭載部として機能する車体12、車体12の下方に標準軌LSの軌間寸法(1435mm)に対応する間隔で配置された左右1対の車輪13、左右の車輪13を連結する車軸14、等を備えて構成されている。新幹線貨車11の高さは、図2に示すように、従来の新幹線100の車両の高さとほぼ同一とされている。新幹線貨車11が複数連結されることにより、本発明における貨物列車が構成される。
【0032】
新幹線貨車11の車体12の内部には、図2に示すように、狭軌LNの軌間寸法(1067mm)に対応する間隔で配置されたレール12aが設けられている。レール12aは、車体12の内部に在来線貨車2を搬入する際に、在来線貨車2の車輪2aをガイドするためのものである。レール12aは、図3に示すように、新幹線貨車11同士を連結する連結部15にも設けられているため、在来線貨車2を連結した状態で新幹線貨車11の車体12内に搬入することができる。
【0033】
次に、図4〜図7を用いて、本実施の形態における異軌間軌道列車移動システムで用いられるトラバーサ20の構成について説明する。
【0034】
トラバーサ20は、図5〜図7に示すように、平面形状が矩形状を呈する構造体であり、所定の鉄道車両を上部に載置した状態でこの鉄道車両の走行方向に対して直角な方向に移動するものである。本実施の形態におけるトラバーサ20は、図4〜図7に示すように、その上部に在来線機関車3や新幹線機関車10aを載置した状態で、駆動装置20aにより矢印A方向及び矢印B方向に移動するように構成されている。
【0035】
トラバーサ20は、図1に示した2箇所の軌道変換部P1、P2に設置される。トラバーサ20を用いることにより、在来線貨車2の狭軌LN上の走行状態を、標準軌LS上の被運搬状態(新幹線貨車11に搭載され運搬されている状態)に変換したり、在来線貨車2の標準軌LS上の被運搬状態を、狭軌LN上の走行状態に変換したりすることができる。
【0036】
トラバーサ20には、図4〜図7に示すように、在来線貨物列車1の在来線貨車2や在来線機関車3を走行させる狭軌部分21と、新幹線貨物列車10の新幹線貨車11や新幹線機関車10aを走行させる標準軌部分22と、が並列に設けられている。狭軌部分21は本発明における第1軌道部分であり、標準軌部分22は、本発明における第2軌道部分である。
【0037】
トラバーサ20の狭軌部分21は標準軌部分22よりも高い位置に設けられている。トラバーサ20の狭軌部分21の地上からの高さH1は、図4に示すように、トラバーサ20の標準軌部分22(又は標準軌LS)の上に載置された新幹線貨車11のレール12aの地上からの高さH2と同一となるように設定されている。このため、トラバーサ20を矢印A方向又は矢印B方向に移動させて、トラバーサ20の狭軌部分21と新幹線貨車11のレール12aとを位置合わせすることにより、連続的な一の狭軌を構成することができる。
【0038】
続いて、図5〜図7を用いて、新幹線貨車11に在来線貨車2を搬入する方法(列車搬入方法)、及び、新幹線貨車11から在来線貨車2を搬出する方法(列車搬出方法)について説明する。
【0039】
<列車搬入方法>
最初に、図5を用いて、新幹線貨物列車10の新幹線貨車11に在来線貨物列車1の在来線貨車2を搬入する方法について説明する。なお、以下の説明では、北海道側の軌道変換部P1に設置されたトラバーサ20を用いて、北海道から本州に向けて走行してきた在来線貨物列車1の在来線貨車2を、新幹線貨物列車10の新幹線貨車11に搬入する方法を例示することとする。
【0040】
まず、北海道側の軌道変換部P1に設置されたトラバーサ20を移動させて、トラバーサ20の狭軌部分21と北海道側の狭軌LNとを位置合わせすることにより、連続的な一の狭軌を構成する。本実施の形態においては、図5(a)、(b)に示すように、トラバーサ20を矢印B方向(図5の紙面下側)に移動させることにより、トラバーサ20の狭軌部分21と北海道側の狭軌LNとを位置合わせして、連続的な一の狭軌を構成している。また、トラバーサ20の標準軌部分22上には、図5(a)に示すように新幹線機関車10aを載置しておく。
【0041】
次いで、図5(a)に示すように、新幹線貨物列車10の新幹線貨車11の北海道側(図5の紙面右側端部)端部をトラバーサ20の本州側(図5の紙面左側)端部に近接させることにより、新幹線貨車11の(図示されていない)レール12aと、トラバーサ20の狭軌部分21と、を接続する。これにより、北海道側の狭軌LNと、トラバーサ20の狭軌部分21と、新幹線貨車11のレール12aと、からなる連続的な一の狭軌が構成されることとなる。なお、図5(a)に示した新幹線貨車11の本州側端部には、(図示されていない)牽引用の新幹線機関車10aが接続されている。
【0042】
次いで、北海道側の軌道変換部P1に、北海道側の狭軌LN上を走行してきた在来線貨物列車1を進入させる。この際、在来線貨物列車1の進行方向を逆転させることにより在来線機関車3を北海道側に位置させ、在来線機関車3で在来線貨車2を本州側に押して走行させるようにする。そして、図5(a)、(b)に示すように、トラバーサ20の狭軌部分21及び新幹線貨車11のレール12aに在来線貨車2を順次乗り入れさせて、在来線貨車2を新幹線貨車11の車体12内に搬入する。
【0043】
次いで、新幹線貨車11の車体12内に在来線貨車2を完全に搬入した後、図5(c)に示すように在来線貨車2から在来線機関車3を切り離し、在来線機関車3の進行方向を逆転させることにより、トラバーサ20の狭軌部分21を経由して在来線機関車3を北海道側の狭軌LN上に戻す。
【0044】
この後、図5(d)に示すように、トラバーサ20を矢印A方向に移動させることにより、新幹線貨車11と、トラバーサ20の標準軌部分22に載置されていた新幹線機関車10aと、を位置合わせして、新幹線貨車11の北海道側端部に新幹線機関車10aを連結する。そして、図5(e)に示すように、新幹線貨車11に在来線貨車2を搭載した状態の新幹線貨物列車10を本州に向けて走行させる。
【0045】
なお、本州側の軌道変換部P2で、本州から北海道に向けて走行してきた在来線貨物列車1の在来線貨車2を、新幹線貨物列車10の新幹線貨車11に搬入する際においても、以上の方法と同様の方法を採用することができる。
【0046】
<列車搬出方法>
次に、図6を用いて、新幹線貨物列車10の新幹線貨車11から在来線貨物列車1の在来線貨車2を搬出する方法について説明する。なお、以下の説明では、北海道側の軌道変換部P1に設置されたトラバーサ20を用いて、青函トンネルを経由して本州から北海道に向けて走行してきた新幹線貨物列車10の新幹線貨車11から、在来線貨物列車1の在来線貨車2を搬出する方法を例示することとする。
【0047】
まず、北海道側の軌道変換部P1に設置されたトラバーサ20を移動させて、トラバーサ20の標準軌部分22と青函トンネル内の標準軌LSとを位置合わせすることにより、連続的な一の標準軌を構成する。本実施の形態においては、図6(a)に示すように、トラバーサ20を矢印A方向(図6の紙面上側)に移動させることにより、トラバーサ20の標準軌部分22と青函トンネル内の(図示されていない)標準軌LSとを位置合わせして、連続的な一の標準軌を構成している。
【0048】
次いで、前記のように設定した北海道側の軌道変換部P1に、青函トンネル内の標準軌LS上を走行してきた新幹線貨物列車10を進入させる。そして、図6(a)に示すように、トラバーサ20の標準軌部分22に新幹線機関車10aを乗り入れさせた後、新幹線機関車10aから新幹線貨車11を切り離す。
【0049】
次いで、図6(b)に示すように、トラバーサ20を矢印B方向に移動させることにより、新幹線貨車11の(図示されていない)レール12aと、トラバーサ20の狭軌部分21と、北海道側の狭軌LNとを位置合わせすることにより、連続的な一の狭軌を構成する。そして、図6(b)に示すように、北海道側の狭軌LN上に載置されていた在来線機関車3をトラバーサ20の狭軌部分21に進入させる。
【0050】
次いで、図6(c)に示すように、新幹線貨車11の内部に搭載された在来線貨車2の北海道側端部に、在来線機関車3を連結する。そして、図6(d)に示すように、在来線機関車3の駆動力で在来線貨車2を北海道側に牽引することにより、在来線貨車2を新幹線貨車11から搬出する。この後、在来線貨物列車1を北海道に向けて走行させる。
【0051】
なお、図7(a)に示すように、トラバーサ20の狭軌部分21に予め在来線機関車3を載置しておくこともできる。このようにトラバーサ20の狭軌部分21に予め在来線機関車3を載置しておくと、図6(b)に示したような工程(トラバーサ20の狭軌部分21と、北海道側の狭軌LNと、を位置合わせした後、北海道側の狭軌LN上に載置されていた在来線機関車3をトラバーサ20の狭軌部分21に進入させる工程)を省くことができる。
【0052】
また、本州側の軌道変換部P2で、青函トンネルを経由して北海道から本州に向けて走行してきた新幹線貨物列車10の新幹線貨車11から、在来線貨物列車1の在来線貨車2を搬出する際においても、以上の方法と同様の方法を採用することができる。
【0053】
以上説明した実施の形態における異軌間軌道列車移動システムにおいては、新幹線貨物列車10の新幹線貨車11の車体12内に、狭軌LNを走行する在来線貨車2を連結状態のまま搭載することができる。そして、新幹線貨物列車10は、在来線貨車2を搭載した状態で標準軌LSを走行することができる(図1〜図3参照)。従って、狭軌LNと標準軌LSとの双方が設けられている異軌間軌道において、在来線貨車2を連続的に移動させることができる。
【0054】
しかも、狭軌LN上の在来線貨車2を標準軌LS上に移動させる際(又は標準軌LSの在来線貨車2を狭軌LN上に移動させる際)に、従来の「台車はきかえ方式」を採用する必要がないので、ジャッキ等の地上設備や台車交換のための広い作業スペースが不要となるとともに、台車を交換する作業に要する時間や労力を削減することができる。このため、在来線貨車2の移動時間を大幅に短縮することができる。また、従来の「三線軌条方式」を採用する必要がないので、一本のレールに過度の負荷をかけることがなく、レールの磨耗や損傷を未然に防ぐことができる。また、複雑な軌間変換機構を用いていないので、在来線貨車2を安全かつ確実に移動させることができる。
【0055】
また、以上説明した実施の形態における異軌間軌道列車移動システムにおいては、新幹線貨物列車10の新幹線貨車11の車体12内部に、在来線貨車2の車輪2aをガイドするレール12aを備えているので、在来線貨車2を連結状態のまま容易に搭載することができる(図3参照)。
【0056】
また、以上説明した実施の形態における異軌間軌道列車移動システムにおいては、トラバーサ20の狭軌部分21と、新幹線貨車11の車体12内に設けられたレール12aと、を接続し、在来線機関車3を在来線貨車2に連結し、在来線機関車3の駆動力で在来線貨車2を走行させることにより、在来線貨車2をトラバーサ20の狭軌部分21を経由させて新幹線貨車11の内部に搬入することができる(図5参照)。従って、ジャッキ等を用いることなく在来線貨車2を新幹線貨車11の内部に容易かつ迅速に搭載することができるので、狭軌LNから標準軌LSへと移行する異軌間軌道において、在来線貨車2の移動時間を大幅に短縮することができる。
【0057】
また、以上説明した実施の形態における異軌間軌道列車移動システムにおいては、新幹線機関車10aの駆動力(牽引力)で新幹線貨車11を走行させ、新幹線機関車10aをトラバーサ20の標準軌部分22に乗り入れさせることができる。そして、新幹線機関車10aを新幹線貨車11から切り離し、トラバーサ20を移動させてトラバーサの狭軌部分21と新幹線貨車11の車体12内に設けられたレール12aとを接続し、在来線機関車3を新幹線貨車11の内部の在来線貨車2に連結し、在来線機関車3の駆動力で在来線貨車2を走行させることにより、在来線貨車2をトラバーサ20の狭軌部分21を経由させて搬出することができる(図6及び図7参照)。従って、ジャッキ等を用いることなく在来線貨車2を新幹線貨車11から容易かつ迅速に搬出することができるので、標準軌LSから狭軌LNへと移行する異軌間軌道において、在来線貨車2の移動時間を大幅に短縮することができる。
【0058】
[第2の実施の形態]
次に、図8〜図10を用いて、本発明の第2の実施の形態における異軌間軌道列車移動システムについて説明する。本実施の形態に係る異軌間軌道列車移動システムは、第1の実施の形態で使用されるトラバーサの構成を変更したものであり、その他の構成については第1の実施の形態と実質的に同一である。従って、第1の実施の形態と同一の構成については、第1の実施の形態と同一の符号を付して説明することとする。
【0059】
本実施の形態に係る異軌間軌道列車移動システムで使用されるトラバーサ30には、図8〜図10に示すように、在来線貨物列車1の在来線貨車2や在来線機関車3を走行させる狭軌部分31と、新幹線貨物列車10の新幹線貨車11や新幹線機関車10aを走行させる標準軌部分32と、が並列に設けられている。狭軌部分31は本発明における第1軌道部分であり、標準軌部分32は、本発明における第2軌道部分である。
【0060】
トラバーサ30の標準軌部分32が設けられた面(以下、「標準軌面」という)32aは地上に固定されている。また、トラバーサ30の狭軌部分31が設けられた面(以下、「狭軌面」という)31aは、図8〜図10に示すように、矢印A方向及び矢印B方向に移動するように構成されている。そして、狭軌面31aは標準軌面32aよりも高い位置に配置されており、狭軌面31aが矢印B方向に移動すると、図8(c)、(d)に示すように、標準軌面32aが狭軌面31aの下方に位置するようになっている。
【0061】
トラバーサ30の狭軌部分31の地上からの高さは、トラバーサ30の標準軌部分32(又は標準軌LS)に載置された新幹線貨車11のレール12aの地上からの高さと同一となるように設定されている。このため、トラバーサ30の狭軌部分31と新幹線貨車11のレール12aとを位置合わせすることにより、連続的な一の狭軌を構成することができる。
【0062】
また、トラバーサ30の狭軌部分31は、図8〜図10に示すように、一方の端部側が標準軌部分32から離隔するように曲げられた状態で設けられている。このため、図8(d)に示すようにトラバーサ30の狭軌面31aを標準軌面32aの上方に位置させた場合に、トラバーサ30の狭軌部分31を標準軌部分32の延在方向から分岐させることができる。このため、トラバーサ30が、標準軌LSと狭軌LNとの分岐器として機能することとなる。
【0063】
続いて、図8〜図10を用いて、新幹線貨車11に在来線貨車2を搬入する方法(列車搬入方法)、及び、新幹線貨車11から在来線貨車2を搬出する方法(列車搬出方法)について説明する。
【0064】
<列車搬入方法>
最初に、図8を用いて、新幹線貨物列車10の新幹線貨車11に在来線貨物列車1の在来線貨車2を搬入する方法について説明する。なお、以下の説明では、北海道側の軌道変換部P1に設置されたトラバーサ30を用いて、北海道から本州に向けて走行してきた在来線貨物列車1の在来線貨車2を、新幹線貨物列車10の新幹線貨車11に搬入する方法を例示することとする。
【0065】
まず、図8(a)に示すように、北海道側の軌道変換部P1に設置されたトラバーサ30の狭軌面31aを矢印A方向に移動させて、トラバーサ30の標準軌面32aを露出させる。このようにトラバーサ30の標準軌面32aを露出させると、青函トンネル内の標準軌LSと、トラバーサ30の標準軌部分32と、北海道側に部分的に設けられた標準軌LSと、によって連続的な一の標準軌が構成される。
【0066】
次いで、前記したように構成された連続的な一の標準軌に、図8(a)に示すように北海道側から新幹線貨物列車10を進入させる。そして、新幹線貨物列車10の新幹線貨車11をトラバーサ30の本州側(図8の紙面左側)端部に近接させた後、新幹線貨車11から新幹線機関車10aを切り離し、図8(b)に示すように新幹線機関車10aの進行方向を逆転させて北海道側に戻す。
【0067】
次いで、図8(b)、(c)に示すように、トラバーサ30の狭軌面31aを矢印B方向に移動させて、北海道側の狭軌LNと、トラバーサ30の狭軌部分31と、新幹線貨車11の(図示されていない)レール12aと、を位置合わせすることにより、連続的な一の狭軌(曲線軌道)を構成する。
【0068】
次いで、前記したように構成された連続的な一の狭軌に、北海道側の狭軌LNから在来線貨物列車1を進入させる。この際、在来線貨物列車1の進行方向を逆転させることにより在来線機関車3を北海道側に位置させ、在来線機関車3で在来線貨車2を本州側に押して走行させるようにする。そして、図8(c)、(d)に示すように、トラバーサ30の狭軌部分31及び新幹線貨車11のレール12aに在来線貨車2を順次乗り入れさせて、在来線貨車2を新幹線貨車11の車体12内に搬入する。
【0069】
新幹線貨車11の車体12内に在来線貨車2を完全に搬入した後、図8(e)に示すように在来線貨車2から在来線機関車3を切り離し、在来線機関車3の進行方向を逆転させることにより、トラバーサ30の狭軌部分31を経由して在来線機関車3を北海道側の狭軌LN上に戻す。そして、図8(e)に示すように、トラバーサ30の狭軌面31aを矢印A方向に移動させることにより、トラバーサ30の標準軌面32aを露出させる。この後、北海道側の標準軌LS上に載置されていた新幹線機関車10aをトラバーサ30に進入させ、新幹線貨車11の北海道側端部に新幹線機関車10aを連結し、図8(f)に示すように、新幹線貨車11に在来線貨車2を搭載した状態の新幹線貨物列車10を本州に向けて走行させる。
【0070】
なお、本州側の軌道変換部P2で、本州から北海道に向けて走行してきた在来線貨物列車1の在来線貨車2を、新幹線貨物列車10の新幹線貨車11に搬入する際においても、以上の方法と同様の方法を採用することができる。
【0071】
<列車搬出方法>
次に、図9を用いて、新幹線貨物列車10の新幹線貨車11から在来線貨物列車1の在来線貨車2を搬出する方法について説明する。なお、以下の説明では、北海道側の軌道変換部P1に設置されたトラバーサ30を用いて、青函トンネルを経由して本州から北海道に向けて走行してきた新幹線貨物列車10の新幹線貨車11から、在来線貨物列車1の在来線貨車2を搬出する方法を例示することとする。
【0072】
まず、図9(a)に示すように、北海道側の軌道変換部P1に設置されたトラバーサ30の狭軌面31aを矢印A方向に移動させて、トラバーサ30の標準軌面32aを露出させる。このようにトラバーサ30の標準軌面32aを露出させると、青函トンネル内の標準軌LSと、トラバーサ30の標準軌部分32と、北海道側に部分的に設けられた標準軌LSと、によって連続的な一の標準軌が構成される。
【0073】
次いで、前記のように設定した北海道側の軌道変換部P1に、青函トンネル内の標準軌LS上を走行してきた新幹線貨物列車10を進入させる。そして、トラバーサ30の標準軌部分32に新幹線機関車10aを乗り入れさせた後、図9(b)に示すように新幹線機関車10aから新幹線貨車11を切り離し、新幹線機関車10aを北海道側に部分的に設けられた標準軌LSまで走行させる。
【0074】
次いで、図9(b)、(c)に示すように、トラバーサ30の狭軌面31aを矢印B方向に移動させて、北海道側の狭軌LNと、トラバーサ30の狭軌部分31と、新幹線貨車11の(図示されていない)レール12aと、を位置合わせすることにより、連続的な一の狭軌(曲線軌道)を構成する。そして、北海道側の狭軌LN上に載置されていた在来線機関車3を、トラバーサ30の狭軌部分31に進入させる。
【0075】
次いで、図9(c)に示すように、新幹線貨車11の内部に搭載された在来線貨車2の北海道側端部に、在来線機関車3を連結する。そして、図9(d)、(e)に示すように、在来線機関車3の駆動力で在来線貨車2を北海道側に牽引することにより、在来線貨車2を新幹線貨車11から搬出する。この後、在来線貨物列車1を北海道に向けて走行させる。
【0076】
なお、図10(a)に示すように、トラバーサ30の狭軌部分31に予め在来線機関車3を載置しておくこともできる。このようにトラバーサ30の狭軌部分31に予め在来線機関車3を載置しておくと、図9(c)に示したような工程(トラバーサ30の狭軌部分21と、北海道側の狭軌LNと、を位置合わせした後、北海道側の狭軌LN上に載置されていた在来線機関車3をトラバーサ30の狭軌部分31に進入させる工程)を省くことができる。
【0077】
また、本州側の軌道変換部P2で、青函トンネルを経由して北海道から本州に向けて走行してきた新幹線貨物列車10の新幹線貨車11から、在来線貨物列車1の在来線貨車2を搬出する際においても、以上説明した方法と同様の方法を採用することができる。
【0078】
以上説明した実施の形態における異軌間軌道列車移動システムにおいては、トラバーサ30の狭軌部分31を標準軌部分32から分岐させるように設けるので、トラバーサ30が分岐器としての機能を果たすこととなり、新幹線貨車11の車体12内に搭載された在来線貨車2を搬出した後、標準軌LSから分岐する方向へと在来線貨物列車1を走行させることができる。
【0079】
[参考例]
次に、図11及び図12を用いて、参考例における異軌間軌道列車移動システムについて説明する。この異軌間軌道列車移動システムは、第1の実施の形態で採用されていたトラバーサに代えて列車搬入搬出用車両40を採用したものであり、その他の構成については第1の実施の形態と実質的に同一である。従って、第1の実施の形態と同一の構成については、第1の実施の形態と同一の符号を付して説明することとする。
【0080】
この異軌間軌道列車移動システムにおいては、図11及び図12に示すように、新幹線貨物列車10の新幹線貨車11と新幹線機関車10aとの間に、列車搬入搬出用車両40を配置している。列車搬入搬出用車両40は、新幹線貨車11の内部に在来線貨車2を搬入させるとともに、新幹線貨車11から在来線貨車2を搬出するための搬入搬出軌道41及び搬入搬出口42を有するものである。
【0081】
列車搬入搬出用車両40の搬入搬出軌道41は、在来線貨車2を走行させることができるように、狭軌LNの軌間寸法(1067mm)に対応する間隔で配置されている。また、搬入搬出軌道41の一方の端部は、新幹線貨車11の車体12内に設けられたレール12aに接続され、搬入搬出軌道41の他方の端部は、列車搬入搬出用車両40の側面に設けられた搬入搬出口42に連接されるようになっている。
【0082】
続いて、図11及び図12を用いて、新幹線貨車11に在来線貨車2を搬入する方法(列車搬入方法)、及び、新幹線貨車11から在来線貨車2を搬出する方法(列車搬出方法)について説明する。
【0083】
<列車搬入方法>
最初に、図11を用いて、新幹線貨物列車10の新幹線貨車11に在来線貨物列車1の在来線貨車2を搬入する方法について説明する。なお、以下の説明では、北海道側の軌道変換部P1において、北海道から本州に向けて走行してきた在来線貨物列車1の在来線貨車2を、新幹線貨物列車10の新幹線貨車11に搬入する方法を例示することとする。
【0084】
まず、図11(a)に示すように、北海道側の軌道変換部P1に北海道側から新幹線貨物列車10を進入させる。そして、図11(b)に示すように、新幹線貨物列車10の新幹線貨車11と新幹線機関車10aとの間に配置された列車搬入搬出用車両40の搬入搬出口42と、北海道側の狭軌LNと、を位置合わせすることにより、連続的な一の狭軌(曲線軌道)を構成する。
【0085】
次いで、列車搬入搬出用車両40の搬入搬出口42に向けて、北海道側の狭軌LNから在来線貨物列車1を走行させる。この際、在来線貨物列車1の進行方向を逆転させることにより在来線機関車3を北海道側に位置させ、在来線機関車3で在来線貨車2を本州側に押して走行させるようにする。そして、図11(c)に示すように、列車搬入搬出用車両40の搬入搬出軌道41及び新幹線貨車11のレール12aに在来線貨車2を順次乗り入れさせて、在来線貨車2を新幹線貨車11の車体12内に搬入する。
【0086】
次いで、新幹線貨車11の車体12内に在来線貨車2を完全に搬入した後、図11(d)に示すように在来線貨車2から在来線機関車3を切り離し、在来線機関車3の進行方向を逆転させることにより、列車搬入搬出用車両40の搬入搬出軌道41を経由して在来線機関車3を北海道側の狭軌LN上に戻す。その後、図11(e)に示すように、新幹線貨車11に在来線貨車2を搭載した状態の新幹線貨物列車10を本州に向けて走行させる。
【0087】
なお、本州側の軌道変換部P2で、本州から北海道に向けて走行してきた在来線貨物列車1の在来線貨車2を、新幹線貨物列車10の新幹線貨車11に搬入する際においても、以上の方法と同様の方法を採用することができる。
【0088】
<列車搬出方法>
次に、図12を用いて、新幹線貨物列車10の新幹線貨車11から在来線貨物列車1の在来線貨車2を搬出する方法について説明する。なお、以下の説明では、北海道側の軌道変換部P1において、青函トンネルを経由して本州から北海道に向けて走行してきた新幹線貨物列車10の新幹線貨車11から、在来線貨物列車1の在来線貨車2を搬出する方法を例示することとする。
【0089】
まず、図12(a)に示すように、北海道側の軌道変換部P1に、青函トンネル内の標準軌LS上を走行してきた新幹線貨物列車10を進入させる。そして、図12(b)に示すように、新幹線貨物列車10の新幹線貨車11と新幹線機関車10aとの間に配置された列車搬入搬出用車両40の搬入搬出口42と、北海道側の狭軌LNと、を位置合わせすることにより、連続的な一の狭軌(曲線軌道)を構成する。
【0090】
次いで、図12(c)に示すように、北海道側の狭軌LN上に載置されていた在来線機関車3を、列車搬入搬出用車両40の搬入搬出口42から列車搬入搬出用車両40内に進入させ、新幹線貨車11の内部に搭載された在来線貨車2の北海道側端部に、在来線機関車3を連結する。そして、図12(d)、(e)に示すように、在来線機関車3の駆動力で在来線貨車2を北海道側に牽引することにより、在来線貨車2を新幹線貨車11から搬出する。その後、在来線貨物列車1を北海道に向けて走行させる。
【0091】
なお、本州側の軌道変換部P2で、青函トンネルを経由して北海道から本州に向けて走行してきた新幹線貨物列車10の新幹線貨車11から、在来線貨物列車1の在来線貨車2を搬出する際においても、以上の方法と同様の方法を採用することができる。
【0092】
以上説明した異軌間軌道列車移動システムにおいては、新幹線貨物列車10を走行させて、列車搬入搬出用車両40の搬入搬出口42と、狭軌LNと、を位置合わせすることにより、連続する一の狭軌を構成することができる。そして、列車搬入搬出用車両40の搬入搬出口42及び搬入搬出軌道41を経由させて、在来線貨車2を新幹線貨車11の内部に搬入することができる(図11参照)。従って、ジャッキ等を用いることなく在来線貨車2を新幹線貨車11に容易かつ迅速に搭載することができるので、狭軌LNから標準軌LSへと移行する異軌間軌道において、在来線貨車2の移動時間を大幅に短縮することができる。
【0093】
また、以上説明した異軌間軌道列車移動システムにおいては、新幹線貨物列車10を走行させて、列車搬入搬出用車両40の搬入搬出口42と、狭軌LNと、を位置合わせすることにより、連続する一の狭軌を構成することができる。そして、列車搬入搬出用車両40の搬入搬出口42及び搬入搬出軌道41を経由させて、在来線貨車2を新幹線貨車11から搬出することができる(図12参照)。従って、ジャッキ等を用いることなく在来線貨車2を新幹線貨車11から容易かつ迅速に搬出することができるので、標準軌LSから狭軌LNへと移行する異軌間軌道において、在来線貨車2の移動時間を大幅に短縮することができる。
【符号の説明】
【0094】
1 在来線貨物列車
2 在来線貨車(鉄道車両)
2a 車輪
3 在来線機関車(鉄道列車用機関車)
10 新幹線貨物列車
10a 新幹線機関車(貨物列車用機関車)
11 新幹線貨車(貨物列車)
12 車体(列車搭載部)
12a レール
20 トラバーサ
21 狭軌部分(第1軌道部分)
22 標準軌部分(第2軌道部分)
30 トラバーサ
31 狭軌部分(第1軌道部分)
32 標準軌部分(第2軌道部分)
40 列車搬入搬出用車両
41 搬入搬出軌道
42 搬入搬出口
N 狭軌(所定軌道)
S 標準軌(特定軌道)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鉄道車両から構成され所定軌道を走行する鉄道列車と、前記鉄道車両が連結された状態のまま搭載する列車搭載部を備えるとともに、前記所定軌道とは異なる寸法の軌間を有する特定軌道を走行する貨物列車と、前記貨物列車に連結され前記貨物列車を駆動する貨物列車用機関車と、所定軌道を走行する鉄道列車に連結され前記鉄道列車を駆動する鉄道列車用機関車と、を用いて、前記貨物列車の前記列車搭載部への前記鉄道列車の搬入と、前記列車搭載部に搭載された前記鉄道列車の搬出との双方を行うトラバーサであって、
前記所定軌道と同一の軌間寸法を有する第1軌道部分と、前記貨物列車が走行する特定軌道と同一の軌間寸法を有する第2軌道部分とを備え、
前記第1軌道部分と第2軌道部分とが並列に設けられたことを特徴とするトラバーサ。
【請求項2】
前記第1軌道部分を前記第2軌道部分から分岐させるように設けることを特徴とする請求項1記載のトラバーサ。
【請求項3】
前記第1軌道部分を前記第2軌道部分よりも高い位置に配置したことを特徴とする請求項1又は2記載のトラバーサ。
【請求項4】
前記第1軌道部分を前記第2軌道部分よりも高い位置に配置すると共に、前記第1軌道部分が前記第2軌道部分の上方に移動可能であることを特徴とする請求項2記載のトラバーサ。
【請求項5】
複数の鉄道車両から構成され所定軌道を走行する鉄道列車と、
前記鉄道車両が連結された状態のまま搭載する列車搭載部を備えるとともに、前記所定軌道とは異なる寸法の軌間を有する特定軌道を走行する貨物列車と、
前記貨物列車に連結され前記貨物列車を駆動する貨物列車用機関車と、
所定軌道を走行する鉄道列車に連結され前記鉄道列車を駆動する鉄道列車用機関車と、
前記所定軌道と同一の軌間寸法を有する第1軌道部分と、前記貨物列車が走行する特定軌道と同一の軌間寸法を有する第2軌道部分と、が並列に設けられたトラバーサと、
を用いて、前記貨物列車の前記列車搭載部への前記鉄道列車の搬入と、前記列車搭載部に搭載された前記鉄道列車の搬出と、の双方を実現させることを特徴とする鉄道列車搬入搬出方法。
【請求項6】
前記トラバーサの前記第1軌道部分を前記第2軌道部分から分岐させるように設けることを特徴とする請求項5に記載の鉄道列車搬入搬出方法。
【請求項7】
前記貨物列車の列車搭載部には、前記鉄道列車の車輪をガイドするレールが個々に周囲の平面全体に対して凹状となる部分に設けられていることを特徴とする請求項5又は6記載の鉄道列車搬入搬出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−102010(P2009−102010A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25806(P2009−25806)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【分割の表示】特願2004−74693(P2004−74693)の分割
【原出願日】平成16年3月16日(2004.3.16)
【出願人】(590003825)北海道旅客鉄道株式会社 (94)