説明

トランスポンダを備えた車両

本発明は、衝突関連データが格納される少なくとも1つのトランスポンダを備える車両に関する。本発明によれば、トランスポンダは車両のライセンスプレートに配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に記載の、トランスポンダを備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
未公開の独国特許出願である出願番号第102004020573.6号には、第1の自動車用の安全措置手段を開始するための方法が記載されている。この方法では、第1の自動車の第1のトランシーバユニットが、第1の自動車の所定の近辺領域に電磁界を放射する。第1の自動車の所定の近辺領域内に第2の自動車の第2のトランシーバユニットが存在する場合、第2のトランシーバユニットは、第1の自動車の第1のトランシーバユニットによって受信される応答信号を送信する。この応答信号が受信されると、事故が発生する前に安全措置手段が第1の自動車のために開始される。応答信号は、第2の自動車に関する安全関連の情報、特に、車両クラス、車種、質量、車両重量、車両総重量、高さ、幅、及び/又は走行速度に関する情報を含んでいる。事故発生前に適切な安全措置手段を開始するために、運転時の安全性に関係する更なるデータ、特に、運転状態変数、周辺領域のデータ、及び/又は運転者の動作を評価したものが考慮に入れられる。トランシーバユニットはトランスポンダの形態をとるものであって、電磁界で電流を誘導可能な受信コイルと、電流が供給され応答信号を送信するチップとを有する。
【0003】
特許文献1は、第1の自動車に配置されたレーダー装置が周辺領域を走査するために提供される場合に、2台の自動車間の衝突を回避又は衝突の影響を緩和するための構成について開示している。レーダー装置によって記録された第2の自動車に関する情報に基づいて、コンピュータは2台の自動車間で衝突が起こり得る確率を求める。衝突の確率が十分に高い場合、コンピュータは、レーダー装置によって、指向された問い合せ信号を第2の自動車の方向に送信する。第2の自動車は、問い合せ信号の受信と、第2の自動車の動的及び/又は静的特徴を含む応答信号の送信とを行うためのトランスポンダを有する。第1の自動車のコンピュータは、衝突を回避又は衝突の影響を緩和するために、応答信号を利用して第1の自動車のために対応する安全措置手段を開始する。
【0004】
更に、特許文献2には、車両の現在位置を確認する内蔵型の測位ユニット(GPS)を備えたライセンスプレートが開示されている。車両の現在位置に関する位置情報の項目(車両識別子が付けられている)は、作動させられ得る発信器によってグローバル通信システムに送信することができる。発信器は、車両固有の作動信号でしか作動させることができない。ライセンスプレートは、イネーブル信号を受信した後でのみ読取り又は問い合せすることができる電気的に読取り可能な識別タグも有する。イネーブル信号を送信することができるのは、車両の所有者だけである。このために、車両の所有者は対応するコードを有し、グローバル通信システム又は近距離送信器によってこのコードを車両に送信することができる。
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第102 33 163 A1号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第195 26 815 A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、衝突関連データが格納され、ほとんど費用をかけずに技術的に実現できる少なくとも1つのトランスポンダを備える車両を提供することにある。本発明の更なる目的は、この種の車両のためのライセンスプレートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
最初に説明した目的は、請求項1に記載の特徴を有する、衝突関連データが格納される少なくとも1つのトランスポンダを備えた車両によって達成される。
【0008】
本発明によれば、トランスポンダは車両のライセンスプレートに配置される。トランスポンダには衝突関連データが格納される。ここでは、無線周波数帯域の電磁波を用いた走査により、衝突関連データの読出しができれば有利である。電磁波(特に無線周波数帯域)を使用する、RFID(radio frequency identification(無線周波認識))とも呼ばれる技術は、対象物を非接触で識別する技術である。RFIDシステムは、トランシーバユニットとトランスポンダ(RFIDトランスポンダとも呼ばれる)とを有する。道路交通でこのシステムを使用した場合、第1の車両のトランシーバユニットが第2の車両のトランスポンダに格納されたデータを読み出すことができることを意味する。セキュリティ上の理由で広範囲に適用し、様々な車両間での最適な交通関連データの交換をするために、各車両はトランシーバユニットとトランスポンダを備えるべきである。トランスポンダは、マイクロチップとアンテナを有する。受動トランスポンダは、トランシーバユニットの電界から電気エネルギーを得る。これに対して、能動トランスポンダは、独自の電源を有する。結果として、そのレンジを大幅に広げることができる。RFIDトランスポンダは、RFIDタグとも呼ばれており、この「タグ」という単語は識別標又は標識を意味する。ライセンスプレート及びトランスポンダのコンパクトな構成により、大規模使用に向けた簡単で実用的な実施が可能である。この場合、デザインは車種に依存しない。該トランスポンダは極めて費用効果の高い構成要素であることがわかる。トランスポンダは受動トランスポンダとすることが好ましく、これにより車両への組込みが更に簡略化される。
【0009】
衝突関連データが車両クラス、車種、質量、車両重量、車両総重量、高さ、幅、構造の剛性、標準的な変形経路、及び/又は変形構造体の配置に関する情報を含んでいれば有利である。更に、車両の所有者に関係するデータについても、事故が発生した場合に適切な読取り装置によって読み出されるように、格納することができる。乗員保護を強化するために、自動車は、一層差別化された方法で作動するより多くのデバイスを備える。このことは、エアバッグシステムの展開形態、ベルトプリテンショナのフレキシブルな動作、及び切換え可能又は調整されたアブソーバ要素の使用に実質的に該当する。この種のフレキシブルな構成要素により、衝突に対する車両乗員及び予想される衝突相手を保護するために、衝突に対する予想される衝突相手に関する特定の安全関連情報について把握しておくことは非常に有用である。衝突に対する予想される衝突相手が、例えば、大きな質量を持つ場合、安全装置又は保護装置はできるだけ硬く設定されるべきである。衝突に対する予想される衝突相手の質量が比較的小さい場合、衝突に対する自動車の乗員及び予想される衝突相手が変形経路を最適に利用できるように、安全装置又は保護装置はゆるやかに反応すべきである。そのためには、衝突に対する予想される衝突相手の質量及び/又はその他の安全関連変数に関する知識が非常に重要である。第1の車両のトランシーバユニットと第2の車両のトランシーバユニットは、一連の製造段階で組み込むことも、安全装置の構成要素として自動車に別々に又は一緒に、それぞれ、後付けすることもできる。
【0010】
2番目に説明した目的は、請求項6に記載の特徴を有する、この種の車両用のライセンスプレートを製造するための方法によって達成される。
【0011】
本発明によれば、車両に関係する衝突関連データの検出、割当て、及びトランスポンダへの格納は中央管理局によって行われる。所有者関連データへの車両関連データの割当て及び格納も同様に中央管理局によって行われる。この場合は、ライセンスプレートへのトランスポンダの取付けが中央管理局によって行われると有利である。大規模使用の場合は、道路上の全ての車両がトランスポンダを装備することが望ましく、該当する作業は好ましくは全て中央的に実施され、中央管理局が責任を負うべきである。特に、認可事務所は、この役目に適している。これにより、車両が初めて使用されるときにはすでに、車両にトランスポンダが必ず装備されていることになる。
【0012】
本発明の更なる有利な改良形態は、従属請求項に記載されている。
【0013】
本発明については、2台の車両が巻き込まれた事故のシナリオを示す概略的な平面図の例示的な実施形態を参照して、より詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図は、事故が発生した場合に正面衝突を招く交通シナリオにおける第1の車両1と第2の車両2を示す。2台の車両1、2の走行方向は、矢印3、4により示されている。
【0015】
この例示的な実施形態では、2台の車両1、2はそれぞれトランスポンダ5、6を備えている。該トランスポンダは、無線周波数帯域の電磁波を用いた走査によって読み出すことができる。該トランスポンダには、各車両1、2に関する衝突関連データが格納されている。この改良形態では、トランスポンダ5、6はRFIDトランスポンダとも呼ばれる。トランスポンダ5、6は、車両1、2のライセンスプレート7、8に配置されている。無線周波数帯域には、レーダー周波数帯域も含まれる。車両のライセンスプレート7、8は汚れることが多いので、光走査は特別有利ではなくあまり適していない。
【0016】
第1の自動車1の前部領域に配置された第1のトランシーバユニット9は、第2の車両2に関する衝突関連データを取得するために、第2の自動車2のトランスポンダ6を走査する。これに対して、第2の自動車2の前部領域に配置された第2のトランシーバユニット10は、第1の車両1に関する衝突関連データを取得するために、第1の自動車1のトランスポンダ5を走査する。衝突関連データは、符号化されたコード又は符号化されていない情報として無線で送信することもできる。簡略化された例示的な実施形態(詳細は図示せず)では、2台の車両1、2の一方だけがトランスポンダ5、6を備えている。
【0017】
トランスポンダの最小探知距離及び走査速度は、220km/hまでの相対速度において情報を確実に提供することを保証できるようにするべきである。衝突開始前の適時に適切なアクチュエータシステムを調整できるようにするために、衝突開始の約100ms前には情報の提供が終了すべきである。
【0018】
各自動車1、2のための制御ユニット13、14は、検出された衝突関連データに応じた機能として、実際に事故が発生する前に適切な安全措置手段11、12を開始させることができる。安全措置手段11、12としては、衝突に対する乗員及び/又は衝突相手の保護を改善するために、例えば、対応するアクチュエータシステムを拘束システム及び/又は車両構造に対応するアクチュエータの調整手段を設けることができる。
【0019】
衝突関連データには、各車両1、2の車両クラス、車種、質量、車両重量、車両総重量、高さ、幅、構造の剛性、標準的な変形経路、及び/又は変形構造体の配置に関する情報が含まれることができる。安全関連情報を含む、各トランスポンダ5、6の応答信号は、次に挙げる更なる機能を有することも可能である。第1に、該応答信号は、一方の車両1、2から他方の車両1、2へ安全関連情報を送信する。第2に、独国特許出願である出願番号第102004020573.6号に記載されているように、適切な安全措置手段11、12を開始するためのトリガとして、応答信号を直接使用することができる。これにより、事故の激しさ及び/又は事故の重大性を軽減することができる。本発明の簡略化された更なる改良形態(詳細は図示せず)では、応答信号による安全関連情報の送信を省略することができる。この改良形態では、応答信号は、各車両1、2用の適切な安全措置手段11、12を開始するためのトリガとしての役割を果たすだけである。
【0020】
実際に事故が発生する前に適切な安全措置手段11、12を開始するため、車両1、2の運転中の安全性に関する更なるデータ(特に、運転状態変数、周辺領域のデータ、及び/又は接近している車両1、2の運転者の動作の評価)を追加として考慮に入れることができる。
【0021】
トランスポンダ5、6は、特に、受動トランスポンダ5、6とすることができる。この改良形態では、トランスポンダ5、6は、接近している車両1、2のトランシーバユニット9、10の電磁界で電流を誘導することができる受信コイル(詳細は図示せず)と、電流が供給され安全性に関連する情報を含む応答信号を送信するチップとを有する。車載電子システムとの電気的な接続を確立する必要がないので、トランスポンダ5、6の改良形態は、ほとんど費用をかけずに実現することができる。
【0022】
ライセンスプレート7、8は、自動車1、2の後部及び/又は前部領域に配置することができる。
【0023】
車両1、2用のライセンスプレート7、8の製造方法では、車両1、2に関する衝突関連データの検出、割当て、及びトランスポンダ5、6への格納が中央管理局によって行われる。所有者関連データへの車両関連データの割当て及び車両関連データの格納も同様に中央管理局によって行われる。ライセンスプレート7、8へのトランスポンダ5、6の取付けは、中央管理局、特に認可事務所によって実施され得る。トランスポンダ5、6の広範囲にわたる適用のためには、このように集中化された製造方法が必要である。中央管理局は、適切な衝突関連データを明瞭な割当てによって各トランスポンダ5、6に格納するために、多種多様な車種の車両固有のデータを確実に保有する必要がある。
【0024】
セキュリティ上の理由で(不正操作に対する保護)、トランスポンダ5、6は壊さないと取り外しできないようにすると有利である。
【0025】
本発明に係る車両1、2及び本発明に係る、車両1、2用のライセンスプレート7、8の製造方法は、衝突関連データの提供及び割当てを確実に行うとともに、ハードウェアのコストの面で最適化された大規模使用に適したライセンスプレート7、8の製造を確実に処理する。車両乗員の安全性を更に高めるために、種々の距離制御評価技術(例えば、レーダー、ビデオ、及び/又はライダー)と組み合せて使用することが特に適している。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】2台の車両が巻き込まれた事故のシナリオを示す概略的な平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衝突関連データが格納される少なくとも1つのトランスポンダ(5、6)を備えた車両(1、2)であって、
前記トランスポンダ(5、6)が前記車両(1、2)のライセンスプレート(7、8)に配置されることを特徴とする車両。
【請求項2】
前記衝突関連データが、無線周波数帯域の電磁波を用いた走査により、読み出され得ることを特徴とする請求項1に記載の車両(1、2)。
【請求項3】
前記トランスポンダ(5、6)が、受動トランスポンダ(5、6)であることを特徴とする請求項1に記載の車両(1、2)。
【請求項4】
前記衝突関連データが、車両クラス、車種、質量、車両重量、車両総重量、高さ、幅、構造の剛性、標準的な変形経路、及び/又は変形構造体の配置に関する情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の車両(1、2)。
【請求項5】
前記ライセンスプレート(7、8)が、自動車(1、2)の後部及び/又は前部領域に配置されることを特徴とする請求項1に記載の車両(1、2)。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両(1、2)用のライセンスプレート(7、8)を製造するための方法であって、所有者関連データへの車両関連データの割当て及び該車両関連データの格納が中央管理局によって行われる方法において、
前記中央管理局が、同様に、前記車両(1、2)に関する衝突関連データの検出、割当て、及び前記トランスポンダ(5、6)への格納を行うことを特徴とする方法。
【請求項7】
前記トランスポンダ(5、6)が、前記中央管理局によって前記ライセンスプレート(7、8)に取り付けられることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記トランスポンダ(5、6)が、前記ライセンスプレート(7、8)から壊さないと取り外しできないことを特徴とする請求項1に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−501655(P2009−501655A)
【公表日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520750(P2008−520750)
【出願日】平成18年7月4日(2006.7.4)
【国際出願番号】PCT/EP2006/006477
【国際公開番号】WO2007/009583
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】