トランス
【課題】被覆導線を渦巻状に巻回して一次コイルおよび二次コイルを形成した場合でも、渦電流による損失を抑制できるトランスを提供する。
【解決手段】一次コイル11および二次コイル12は、コア2の柱状部20を中心に被覆導線3を渦巻状に巻回してなり、互いに巻数が異なる。一次コイル11と二次コイル12とのうち、巻数が少ないコイル(二次コイル12)は、巻数が多いコイル(一次コイル11)よりも、被覆導線3の線径が大きい。一次コイル11と二次コイル12とは、中心側端部から外周側端部にわたって、径方向(Y方向)における被覆導線3の少なくとも一部が、軸線方向(X方向)に互いに重なるよう対向配置されている。
【解決手段】一次コイル11および二次コイル12は、コア2の柱状部20を中心に被覆導線3を渦巻状に巻回してなり、互いに巻数が異なる。一次コイル11と二次コイル12とのうち、巻数が少ないコイル(二次コイル12)は、巻数が多いコイル(一次コイル11)よりも、被覆導線3の線径が大きい。一次コイル11と二次コイル12とは、中心側端部から外周側端部にわたって、径方向(Y方向)における被覆導線3の少なくとも一部が、軸線方向(X方向)に互いに重なるよう対向配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆導線を渦巻状に巻回して形成した一次コイル及び二次コイルを有するトランスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、図11に示すごとく、磁性体からなるコア94と、該コア94を中心に巻回した一次コイル91および二次コイル92とを有し、これら一次コイル91と二次コイル92との間で交流電圧の変圧を行うトランス90が知られている(下記特許文献1、2参照)。
【0003】
トランス90は、コア94を中心に配置したボビン93を備える。このボビン93に被覆導線を螺旋状に巻回することにより、一次コイル91および二次コイル92を形成している。一次コイル91と二次コイル92の巻数は互いに異なる。一次コイル91に交流電圧を印加すると、その交流電圧に、一次コイル91の巻数n1と二次コイル92の巻数n2の比n2/n1を乗じた電圧が二次コイル92から出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−267152号公報
【特許文献2】特開2008−159963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記トランス90は、被覆導線を螺旋状に巻回して一次コイル91と二次コイル92とを形成しているため、軸線方向(X方向)の長さLが大きくなりやすく、トランス90が大型化しやすいという問題があった。
【0006】
この問題を解決するには、図12に示すごとく、被覆導線を渦巻状に巻回する方法が考えられる。しかしながら、一次コイル91と二次コイル92とは巻数が異なるため、被覆導線を渦巻状に巻回すると、一次コイル91の直径D1と二次コイル92の直径D2とが大きく異なりやすい。例えば図12の例では、一次コイル91の巻数が二次コイル92の巻数よりも多いため、一次コイル91の直径D1が二次コイル92の直径D2よりも大きくなってしまう。そのため、一次コイル91の外周に、二次コイル92と軸線方向(X方向)に隣接しない非隣接部91aができてしまう。
【0007】
非隣接部91aができると、渦電流による損失が大きくなることが知られている。つまり、図13に示すごとく、被覆導線に交流電流I(t)を流すと、被覆導線の周りに磁界H(t)が発生し、この磁界H(t)の時間的変化を打ち消す方向に渦電流i(t)が流れる。図14に示すごとく、一次コイル91のうち、二次コイル92と隣接している部分91bでは、一次コイル91の渦電流i1(t)と二次コイル92の渦電流i2(t)とが反対方向に流れるため、これらの渦電流によって生じた磁界が打ち消しあい、渦電流が小さくなりやすい。しかしながら、一次コイル91のうち、二次コイル92と隣接しない非隣接部91aでは、二次コイル92の渦電流i2(t)が近くを流れないため、渦電流i1(t)を低減しにくくなる。そのため、非隣接部91aでは、渦電流i1(t)による損失が大きくなりやすい。
【0008】
このように、被覆導線を渦巻状に巻回して一次コイル91及び二次コイル92を形成すると、非隣接部91aが形成され、渦電流による損失が大きくなりやすいという問題がある。
【0009】
なお、図12の例では、一次コイル91の直径D1が二次コイル92の直径D2よりも大きくなっているが、二次コイル92の直径D2が一次コイル91の直径D1よりも大きく、二次コイル92の外周に一次コイル91と隣接しない非隣接部が形成された場合も同様の問題が生じる。
【0010】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、被覆導線を渦巻状に巻回して一次コイルおよび二次コイルを形成した場合でも、渦電流による損失を抑制できるトランスを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明は、柱状に形成された柱状部を有し、磁性体からなるコアと、
上記柱状部を中心に、導体部と絶縁被膜とからなる被覆導線を渦巻状に巻回してなり、互いに巻数が異なる一次コイルおよび二次コイルとを備え、
上記一次コイルおよび上記二次コイルは上記柱状部の軸線方向に互いに隣接しており、
上記一次コイルと上記二次コイルとのうち巻数が少ないコイルは、巻数が多いコイルよりも、上記被覆導線の線径が大きく、
上記一次コイルと上記二次コイルとは、中心側端部から外周側端部にわたって、上記コイルの径方向における上記被覆導線の少なくとも一部が、上記軸線方向に互いに重なるよう対向配置されていることを特徴とするトランスにある(請求項1)。
【0012】
第2の発明は、柱状に形成された柱状部を有し、磁性体からなるコアと、
上記柱状部を中心に、導体部と絶縁被膜とからなる被覆導線を渦巻状に巻回してなり、互いに巻数が異なる一次コイルおよび二次コイルと、
該一次コイルと該二次コイルとのうち少なくとも一方を保持する保持部材とを備え、
上記一次コイルおよび上記二次コイルは上記柱状部の軸線方向に互いに隣接しており、
上記保持部材は、上記軸線方向に直交する板状部と、該板状部から上記軸線方向に突出すると共に該軸線方向から見た場合に渦巻状に形成された突部とを備え、
上記一次コイルと上記二次コイルとのうち、巻数が少ない方のコイルは、上記保持部材の上記突部に沿って巻回されており、
上記一次コイルと上記二次コイルとは、中心側端部から外周側端部にわたって、上記コイルの径方向における上記被覆導線の少なくとも一部が、上記軸線方向に互いに重なるよう対向配置されていることを特徴とするトランスにある(請求項6)。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明においては、一次コイルと二次コイルとのうち、巻数が少ないコイルを、巻数が多いコイルよりも、線径が大きい被覆導線を使って形成した。このようにすると、巻数が異なっていても、一次コイルの直径と二次コイルの直径とを近づけることが可能となる。そのため、一次コイルと二次コイルとを、内側から外側にわたって軸線方向に対向させやすくなる。そして、このように構成した一次コイルと二次コイルとを、中心側端部から外周側端部にわたって、コイルの径方向における被覆導線の少なくとも一部が、軸線方向に互いに重なるよう対向配置している。これにより、上記非隣接部が形成されることを防止できる。そのため、非隣接部において渦電流による損失が大きくなるという不具合を防止できる。
【0014】
なお、一次コイル及び二次コイルは、断面円形の被覆導線を使って形成できる他、断面多角形の被覆導線を使って形成することができる。また、「被覆導線の線径」とは、コイルの径方向における、絶縁被膜を含めた幅を意味する。すなわち、例えば、断面円形の被覆導線を使用する場合は、「被覆導線の線径」とは、絶縁被膜を含めた直径を意味し、断面正方形状の被覆導線を、その断面の一辺がコイルの径方向に平行となるように配置する場合は、断面における、絶縁被膜を含めた一辺の長さを意味する。
【0015】
また、第2の発明においては、上記一次コイルと上記二次コイルとのうち巻数が少ないコイルを、上記保持部材の上記突部に沿って巻回した。そのため、例えば、線径が互いに等しい被覆導線を使って、巻数が異なる一次コイルと二次コイルとを形成する場合であっても、巻数が少ないコイルを所定の間隔を空けて巻回することができ、一次コイルの直径と二次コイルの直径とを近づけることができる。これにより、一次コイルと二次コイルとを、内側から外側にわたって軸線方向に対向させることができ、一次コイル又は二次コイルに上記非隣接部が形成されることを防止できる。そのため、非隣接部において渦電流による損失が大きくなるという不具合を防止できる。
【0016】
以上のごとく、本発明によれば、被覆導線を渦巻状に巻回して一次コイルおよび二次コイルを形成した場合でも、渦電流による損失を抑制できるトランスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1における、トランスの断面図。
【図2】図1の要部拡大図。
【図3】実施例1における、保持部材の斜視図。
【図4】実施例1における、トランスの分解斜視図。
【図5】実施例1における、トランスの断面図。
【図6】図5の要部拡大図。
【図7】実施例2における、トランスの拡大断面図。
【図8】実施例3における、トランスの拡大断面図。
【図9】実施例4における、トランスの断面図。
【図10】実施例4における、保持部材の断面図。
【図11】従来例における、トランスの断面図。
【図12】従来例における、被覆導線を渦巻状に巻いたトランスの断面図。
【図13】従来例における、表皮効果の説明図。
【図14】従来例における、非隣接部において渦電流による損失が大きくなる理由を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上述した本発明における好ましい実施の形態につき説明する。
上記トランスは、例えば、電気自動車やハイブリッド車に搭載されたバッテリーを、商用電源を使って充電するための充電器に用いられる。
【0019】
第1の発明において、上記一次コイルおよび上記二次コイルを構成する上記被覆導線は、それぞれ径方向に隣接する部分を互いに接触させた状態で渦巻状に巻回されており、上記一次コイルを構成する上記被覆導線の上記線径d1と、該一次コイルの巻数n1と、上記二次コイルを構成する上記被覆導線の上記線径d2と、該二次コイルの巻数n2とが、
0.9≦n1/n2×d1/d2≦1.1
を満たしていることが好ましい(請求項2)。
この場合には、一次コイル及び二次コイルが正確に巻回されたとき、径方向における、二次コイルの中心側端部と外周側端部との間の幅(n2×d2)と、一次コイルの中心側端部と外周側端部との間の幅(n1×d1)とが近似する。そのため、特に巻き方を調整しなくても、一次コイルまたは二次コイルにおける、上記非隣接部の形成を充分に抑制できる。そのため、渦電流による損失を低減しやすい。
【0020】
また、n1×d1=n2×d2
を満たしていることが好ましい(請求項3)。
この場合には、一次コイル及び二次コイルが正確に巻回されたとき、径方向における、二次コイルの中心側端部と外周側端部との間の幅(n2×d2)と、一次コイルの中心側端部と外周側端部との間の幅(n1×d1)とを一致させることができる。そのため、特に巻き方を調整しなくても、一次コイルまたは二次コイルにおける、上記非隣接部の形成を効果的に抑制できる。そのため、渦電流による損失を効果的に抑制できる。
【0021】
また、上記一次コイルを構成する上記被覆導線と、上記二次コイルを構成する上記被覆導線とは、上記導体部の線径が互いに異なり、上記絶縁被膜の厚さが互いに等しいことが好ましい(請求項4)。
この場合には、巻数が少ないコイルの発熱を抑制することができる。すなわち、上記構成にすると、巻数が少ないコイルにおける上記導体部の線径を大きくでき、巻数が多いコイルにおける導体部の線径を小さくすることができる。つまり、巻数が少ないコイルにおける導体部の断面積を大きくでき、該導体部の電気抵抗を小さくすることができる。トランスは、巻数が少ないコイルに大きな電流が流れるが、この大きな電流が流れる被覆導線の電気抵抗を低減できるため、電気抵抗による発熱を抑制できる。
【0022】
また、上記一次コイルを構成する上記被覆導線と、上記二次コイルを構成する上記被覆導線とは、上記導体部の線径が互いに等しく、上記絶縁被膜の厚さが互いに異なるよう構成されていてもよい(請求項5)。
この場合には、導体部の線径が互いに等しくても、一次コイルを構成する被覆導線の線径と、二次コイルを構成する被覆導線の線径とを互いに異ならせることができる。そのため、導体部を構成する金属の使用量を少なくすることができ、トランスの製造コストを低減することができる。
【0023】
また、第2の発明において、上記一次コイルを構成する上記被覆導線と、上記二次コイルを構成する上記被覆導線とは、線径が互いに等しいことが好ましい(請求項7)。
この場合には、線径が互いに等しい被覆導線を使って一次コイルと二次コイルとを形成することができる。そのため、複数種類の被覆導線を用いる必要がなくなり、トランスの製造コストを低減することができる。
【0024】
また、仮に、被覆導線の線径を互いに異ならせるために、一方の被覆導線の絶縁被膜の厚さを厚くしようとすると、規格外の被覆導線を製造することとなるため、製造コストが上昇したり、製造時間が長くなる等の問題が生じる場合があるが、線径が互いに等しい被覆導線を使って一次コイルと二次コイルとを形成する場合は、規格内の被覆導線を使用できるため、このような問題が生じることを抑制できる。
【実施例】
【0025】
(実施例1)
本発明の実施例にかかるトランスにつき、図1〜図6を用いて説明する。本例のトランス1は、磁性体からなるコア2と、一次コイル11と、二次コイル12とを備える。コア2は、柱状に形成された柱状部20を有する。一次コイル11および二次コイル12は、柱状部20を中心に被覆導線3を渦巻状に巻回してなり、互いに巻数が異なる。被覆導線3は、導体部30と、該導体部30の表面を被覆する絶縁被膜31とからなる。また、一次コイル11および二次コイル12は、柱状部20の軸線方向(X方向)に互いに隣接している。
【0026】
一次コイル11と二次コイル12とのうち、巻数が少ないコイル(図では二次コイル12)は、巻数が多いコイル(図では一次コイル11)よりも、被覆導線3の線径が大きい。
一次コイル11と二次コイル12とは、中心側端部から外周側端部にわたって、径方向(Y方向)における被覆導線3の少なくとも一部が、軸線方向(X方向)に互いに重なるよう対向配置されている。
【0027】
図4に示すごとく、コア2は、X方向の一方側に配置される第1部分2aと、X方向の他方側に配置される第2部分2bとからなる。第1部分2a及び第2部分2bは、X方向における平面視が略矩形状の板状本体部23と、該板状本体部23の両端からX方向に突出した第1側壁部21及び第2側壁部22とを備える。板状本体部23の内側主面230から柱状部20が、第1側壁部21および第2側壁部22の突出方向と同一方向に突出している。柱状部20は円柱状に形成されている。第1側壁部21の内側面210と、第2側壁部22の内側面220とは、一次コイル11および二次コイル12を収容できるよう円弧状に形成されている。
【0028】
図1に示すごとく、コア2は、第1側壁部21a,21bが端面215において当接し、第2側壁部22a,22bが端面225において当接し、柱状部20a,20bが先端面201において当接した状態で、第1部分2aと第2部分2bとを組み合わせてなる。これら第1部分2aと第2部分2bとを組み合わせた状態では、第1部分2aの内側主面230aから、第2部分2bの内側主面230bまでのX方向における長さは、後述する保持部材4のX方向における長さより若干長い。
【0029】
図1、図4に示すごとく、コア2の第1部分2aと第2部分2bとを組み合わせると、板状本体部23a,23bと、第1側壁部21a,21bと、第2側壁部22a,22bとによって、保持部材4に保持された一次コイル11及び二次コイル12を収容する収容空間Sが形成される。
【0030】
また、図4に示すごとく、コア2には、第1側壁部21と第2側壁部22との間に開口部25が形成されている。第1部分2aと第2部分2bとを組み合わせ、保持部材4に保持された一次コイル11および二次コイル12を収納空間S内に収容すると、一次コイル11、二次コイル12、保持部材4の一部が開口部25から突出する。
【0031】
保持部材4は、図3に示すごとく、円筒部48と、該円筒部48から径方向(Y方向)へ突出した4枚の板状部40(40a〜40d)とを備える。円筒部48の内部49には、コア2の柱状部20(図1参照)が嵌合する。また、板状部40は、それぞれ円板状に形成されている。板状部40の板厚方向はX方向と一致する。第1板状部40aと第2板状部40bとは、円筒部48のX方向における一方の端部に、所定間隔をおいて形成されている。また、第3板状部40cと第4板状部40dとは、円筒部48のX方向における他方の端部に、所定間隔をおいて形成されている。保持部材4は、樹脂材料からなる成形品である。
【0032】
図2に示すごとく、第1板状部40aと第2板状部40bの間隔W3は、一次コイル11を構成する被覆導線3aの線径(直径)d1と略同一である。また、第2板状部40bの板厚W2は第1板状部40aの板厚W1よりも薄い。第2板状部40bの板厚W2は被覆導線3aの線径d1よりも小さい。また、図1に示すごとく、第2板状部40bと第3板状部40cとは、それぞれ板厚が同一である。また、第1板状部40aと第4板状部40dとは、それぞれ板厚が同一である。第1板状部40aと第2板状部40bとの間隔W3と、第3板状部40cと第4板状部40dとの間隔W4とは同一である。
【0033】
図1、図4に示すごとく、第1板状部40aと第2板状部40bの間および、第3板状部40cと第4板状部40dの間に、一次コイル11が巻回されている。一次コイル11は、一本の被覆導線3aからなる。また、第2板状部40bの、第1板状部40aとは反対側の主面400bと、第3板状部40cの、第4板状部40dとは反対側の主面400cとには、これらの主面400b、400cに接触するよう二次コイル12が巻回されている。二次コイル12は、一本の被覆導線3bからなる。
【0034】
図2に示すごとく、本例では、断面円形の被覆導線3a,3bを使って、一次コイル11及び二次コイル12を形成している。一次コイル11の方が、二次コイル12よりも巻数が多い。二次コイル12を構成する被覆導線3bの線径(直径)d2は、一次コイル11を構成する被覆導線3aの線径d1よりも大きい。二次コイル12の導体部30bの線径(直径)d20は、一次コイル11の導体部30aの線径(直径)d10よりも大きい。また、二次コイル12の絶縁被膜31bの厚さは、一次コイル11の絶縁被膜31aの厚さと同一である。
【0035】
上述したように、一次コイル11と二次コイル12とは、中心側端部から外周側端部にわたって、径方向(Y方向)における被覆導線3の少なくとも一部が、軸線方向(X方向)に互いに重なるよう対向配置されている。すなわち、本例では、一次コイル11を構成する被覆導線3aのうち、最外周部115の内側部分116は、X方向において二次コイル12と重なっており、最外周部115の外側部分117は、X方向において二次コイル12と重ならないように構成されている。また、一次コイル11を構成する被覆導線3aのうち、最外周部115以外の部分118は、全てがX方向において二次コイル12と重なっている。
なお、上記中心側端部とは、一次コイル11または二次コイル12を構成する被覆導線3の端部のうち、柱状部20に近い方の端部を意味し、上記外周側端部とは、一次コイル11または二次コイル12を構成する被覆導線3の端部のうち、柱状部20から遠い方の端部を意味する。
【0036】
また、一次コイル11を構成する被覆導線3aと、二次コイル12を構成する被覆導線3bとは、それぞれY方向に隣接する部分を互いに接触させた状態で渦巻状に巻回されている。一次コイル11の巻数n1と、一次コイル11を構成する被覆導線3aの線径d1と、二次コイル12の巻数n2と、二次コイル12を構成する被覆導線3bの線径d2との間には、
0.9≦n1/n2×d1/d2≦1.1
が成立している。
【0037】
なお、図5、図6に示すごとく、
n1×d1=n2×d2
を満たすようにすることがより好ましい。例えば、n1=20、n2=12、d1=0.18mm、d2=0.3mmとすることができる。
【0038】
本例の作用効果について説明する。本例では、一次コイル11と二次コイル12とのうち、巻数が少ないコイル(二次コイル12)を、巻数が多いコイル(一次コイル11)よりも、線径が大きい被覆導線3bを使って形成した。このようにすると、巻数が異なっていても、図1に示すごとく、一次コイル11の直径D1と二次コイル12の直径D2とを近づけることが可能となる。そのため、一次コイル11と二次コイル12とを、内側から外側にわたってX方向に対向させやすくなる。そして、このように構成した一次コイル11と二次コイル12とを、中心側端部から外周側端部にわたって、Y方向における被覆導線3の少なくとも一部が、X方向に互いに重なるよう対向配置している。これにより、一次コイル11と二次コイル12とのうち一方のコイルに、他方のコイルと隣接しない非隣接部が形成されることを防止できる。そのため、非隣接部において渦電流による損失が大きくなるという不具合を防止できる。
【0039】
また、本例では、一次コイル11を構成する被覆導線3aの線径d1と、一次コイル11の巻数n1と、二次コイル12を構成する被覆導線3bの線径d2と、二次コイル12の巻数n2とが、
0.9≦n1/n2×d1/d2≦1.1
を満たしている。このようにすると、一次コイル及び二次コイルが正確に巻回されたとき、径方向(Y方向)における、二次コイル12の中心側端部と外周側端部との間の幅(n2×d2)と、一次コイル11の中心側端部と外周側端部との間の幅(n1×d1)とが近似する。そのため、特に巻き方を調整しなくても、一次コイル11または二次コイル12における、非隣接部の形成を充分に抑制できる。そのため、渦電流による損失を低減しやすい。
【0040】
また、図5、図6に示すごとく、n1×d1=n2×d2
を満たすようにした場合には、一次コイル11及び二次コイル12が正確に巻回されたとき、径方向(Y方向)における、二次コイル12の中心側端部と外周側端部との間の幅(n2×d2)と、一次コイル11の中心側端部と外周側端部との間の幅(n1×d1)とを一致させることができる。そのため、一次コイル11または二次コイル12における、非隣接部の形成を効果的に抑制できる。そのため、渦電流による損失を効果的に抑制できる。
【0041】
また、本例では、図2に示すごとく、一次コイル11を構成する被覆導線3aと、二次コイル12を構成する被覆導線3bとは、導体部30の線径d10,d20が互いに異なり、絶縁被膜31の厚さが互いに等しい。このようにすると、巻数が少ないコイルの発熱を抑制することができる。すなわち、上記構成にすると、巻数が少ないコイル(二次コイル12)における導体部30bの線径d20を大きくでき、巻数が多いコイル(一次コイル11)における導体部30aの線径d10を小さくすることができる。つまり、巻数が少ないコイル(二次コイル12)における導体部30bの断面積を大きくでき、導体部30bの電気抵抗を小さくすることができる。トランスは、巻数が少ないコイル(二次コイル12)に大きな電流が流れるが、この大きな電流が流れる被覆導線3bの電気抵抗を低減できるため、電気抵抗による発熱を抑制できる。
【0042】
以上のごとく、本例によれば、被覆導線を渦巻状に巻回して一次コイルおよび二次コイルを形成した場合でも、渦電流による損失を抑制できるトランスを提供することができる。
【0043】
(実施例2)
本例は、一次コイル11及び二次コイル12の断面形状を変更した例である。図7に示すごとく、本例では、断面正方形状の被覆導線3a,3bを使って、一次コイル11及び二次コイル12を形成した。被覆導線3a,3bは、断面正方形状の導体部30a,30bと、絶縁被膜31bとからなる。一次コイル11と二次コイル12とは、被覆導線3a,3bを、それぞれの側面が密着するように渦巻状に巻回して形成されている。一次コイル11の巻数は、二次コイル12の巻数よりも多い。二次コイル12の線径d2は、一次コイル11の線径d1よりも大きい。また、二次コイル12の導体部30bの線径d20は、一次コイル11の導体部30aの線径d10よりも大きい。二次コイル12の絶縁被膜31bの厚さと、一次コイル11の絶縁被膜31aの厚さとは略同一である。
一次コイル11の巻数n1と、一次コイル11の線径d1と、二次コイル12の巻数n2と、二次コイル12の線径d2とは、
0.9≦n1/n2×d1/d2≦1.1
を満たしている。また、
n1×d1=n2×d2
を満たすようにすることがより好ましい。
その他、実施例1と同様の構成を備える。
【0044】
本例の作用効果について説明する。本例では、断面正方形状の被覆導線3a,3bを用いて一次コイル11及び二次コイル12を形成したため、断面円形の被覆導線を用いる場合と比較して、導体部30a,30bの密度を高めることができる。そのため、大きな電流を流すことが可能になる。
【0045】
なお、図示しないが、断面長方形状の被覆導線3a,3bを使って、一次コイル11及び二次コイル12を形成してもよい。この場合、例えば、断面における長辺が径方向(Y方向)に平行となるように被覆導線3を巻回した場合、絶縁被膜31を含む長辺が「被覆導線3の線径」となる。また、例えば、断面における短辺が径方向(Y方向)に平行となるように被覆導線3を巻回した場合、絶縁被膜31を含む短辺が「被覆導線3の線径」となる。
その他、実施例1と同様の作用効果を備える。
【0046】
(実施例3)
本例は、一次コイル11と二次コイル12とで、絶縁被膜31の厚さを変えた例である。図8に示すごとく、本例では一次コイル11の導体部30aの線径d10と、二次コイル12の導体部30bの線径d20とは同一である。また、二次コイル12の絶縁被膜31bの厚さW20は、一次コイル11の絶縁被膜31aの厚さW10よりも厚い。このようにすることで、二次コイル12を構成する被覆導線31bの線径d2を、一次コイル11を構成する被覆導線31aの線径d1よりも大きくしている。一次コイル11の巻数は二次コイル12の巻数よりも多い。
その他、実施例1と同様の構成を備える。
【0047】
本例の作用効果について説明する。上記構成にすると、導体部30a,30bの線径d10,d20が互いに等しくても、一次コイル11を構成する被覆導線3aの線径d1と、二次コイル12を構成する被覆導線3bの線径d2とを互いに異ならせることができる。そのため、導体部30bを構成する金属の使用量を少なくすることができ、トランス1の製造コストを低減することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を備える。
【0048】
(実施例4)
本例は、保持部材4の形状を変更した例である。図9に示すごとく、本例の保持部材4は、実施例1と同様に、4枚の板状部40a〜40dを備える。第2板状部40bの、第1板状部40aとは反対側の主面400bには、第3板状部40cへ向かってX方向に突出した突部41aが形成されている。また、第3板状部40cの、第4板状部40dとは反対側の主面400cには、第2板状部40bへ向かってX方向に突出した突部41bが形成されている。突部41は、図10に示すごとく、X方向から見た場合に渦巻状に形成されている。
【0049】
図9に示すごとく、一次コイル11は、第1板状部40aと第2板状部40bの隙間と、第3板状部40cと第4板状部40dの隙間とに巻回されている。また、二次コイル12は、突部41に沿って巻回されている。これにより、二次コイル12を、Y方向に所定の間隔をおいて巻回させている。
【0050】
Y方向における、突部41の間隔W30は、二次コイル12を構成する被覆導線3bの線径d2と略同一である。また、一次コイル11を構成する被覆導線3aの線径d1と、二次コイル12を構成する被覆導線3bの線径d2とは同一である。
二次コイル12の直径D2と一次コイル11の直径D1とは略同一である。
一次コイル11と二次コイル12とは、中心側端部から外周側端部にわたって、Y方向における被覆導線3a,3bの少なくとも一部が、X方向に互いに重なるよう対向配置されている。
その他、実施例1と同様の構成を備える。
【0051】
本例の作用効果について説明する。本例では、巻数が少ないコイル(二次コイル12)を、保持部材4の突部41に沿って巻回した。そのため、線径d1,d2が等しい被覆導線3a,3bを使って、互いに巻数が異なる一次コイル11と二次コイル12とを形成した場合でも、巻数が少ないコイル(二次コイル12)を所定の間隔を空けて巻回することができ、それぞれのコイルの直径D1,D2を近づけることができる。これにより、一次コイル11と二次コイル12とを、内側から外側にわたってX方向に対向させることができ、一次コイル11又は二次コイル12に非隣接部が形成されることを防止できる。そのため、非隣接部において渦電流による損失が大きくなるという不具合を防止できる。
【0052】
また、本例では、線径が互いに等しい被覆導線3a,3bを使って一次コイル11と二次コイル12とを形成しているため、複数種類の被覆導線3を用いる必要がなくなり、トランス1の製造コストを低減することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を備える。
【符号の説明】
【0053】
1 トランス
11 一次コイル
12 二次コイル
2 コア
20 柱状部材
3 被覆導線
30 導体部
31 絶縁被膜
4 保持部材
40 突部
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆導線を渦巻状に巻回して形成した一次コイル及び二次コイルを有するトランスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、図11に示すごとく、磁性体からなるコア94と、該コア94を中心に巻回した一次コイル91および二次コイル92とを有し、これら一次コイル91と二次コイル92との間で交流電圧の変圧を行うトランス90が知られている(下記特許文献1、2参照)。
【0003】
トランス90は、コア94を中心に配置したボビン93を備える。このボビン93に被覆導線を螺旋状に巻回することにより、一次コイル91および二次コイル92を形成している。一次コイル91と二次コイル92の巻数は互いに異なる。一次コイル91に交流電圧を印加すると、その交流電圧に、一次コイル91の巻数n1と二次コイル92の巻数n2の比n2/n1を乗じた電圧が二次コイル92から出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−267152号公報
【特許文献2】特開2008−159963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記トランス90は、被覆導線を螺旋状に巻回して一次コイル91と二次コイル92とを形成しているため、軸線方向(X方向)の長さLが大きくなりやすく、トランス90が大型化しやすいという問題があった。
【0006】
この問題を解決するには、図12に示すごとく、被覆導線を渦巻状に巻回する方法が考えられる。しかしながら、一次コイル91と二次コイル92とは巻数が異なるため、被覆導線を渦巻状に巻回すると、一次コイル91の直径D1と二次コイル92の直径D2とが大きく異なりやすい。例えば図12の例では、一次コイル91の巻数が二次コイル92の巻数よりも多いため、一次コイル91の直径D1が二次コイル92の直径D2よりも大きくなってしまう。そのため、一次コイル91の外周に、二次コイル92と軸線方向(X方向)に隣接しない非隣接部91aができてしまう。
【0007】
非隣接部91aができると、渦電流による損失が大きくなることが知られている。つまり、図13に示すごとく、被覆導線に交流電流I(t)を流すと、被覆導線の周りに磁界H(t)が発生し、この磁界H(t)の時間的変化を打ち消す方向に渦電流i(t)が流れる。図14に示すごとく、一次コイル91のうち、二次コイル92と隣接している部分91bでは、一次コイル91の渦電流i1(t)と二次コイル92の渦電流i2(t)とが反対方向に流れるため、これらの渦電流によって生じた磁界が打ち消しあい、渦電流が小さくなりやすい。しかしながら、一次コイル91のうち、二次コイル92と隣接しない非隣接部91aでは、二次コイル92の渦電流i2(t)が近くを流れないため、渦電流i1(t)を低減しにくくなる。そのため、非隣接部91aでは、渦電流i1(t)による損失が大きくなりやすい。
【0008】
このように、被覆導線を渦巻状に巻回して一次コイル91及び二次コイル92を形成すると、非隣接部91aが形成され、渦電流による損失が大きくなりやすいという問題がある。
【0009】
なお、図12の例では、一次コイル91の直径D1が二次コイル92の直径D2よりも大きくなっているが、二次コイル92の直径D2が一次コイル91の直径D1よりも大きく、二次コイル92の外周に一次コイル91と隣接しない非隣接部が形成された場合も同様の問題が生じる。
【0010】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、被覆導線を渦巻状に巻回して一次コイルおよび二次コイルを形成した場合でも、渦電流による損失を抑制できるトランスを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明は、柱状に形成された柱状部を有し、磁性体からなるコアと、
上記柱状部を中心に、導体部と絶縁被膜とからなる被覆導線を渦巻状に巻回してなり、互いに巻数が異なる一次コイルおよび二次コイルとを備え、
上記一次コイルおよび上記二次コイルは上記柱状部の軸線方向に互いに隣接しており、
上記一次コイルと上記二次コイルとのうち巻数が少ないコイルは、巻数が多いコイルよりも、上記被覆導線の線径が大きく、
上記一次コイルと上記二次コイルとは、中心側端部から外周側端部にわたって、上記コイルの径方向における上記被覆導線の少なくとも一部が、上記軸線方向に互いに重なるよう対向配置されていることを特徴とするトランスにある(請求項1)。
【0012】
第2の発明は、柱状に形成された柱状部を有し、磁性体からなるコアと、
上記柱状部を中心に、導体部と絶縁被膜とからなる被覆導線を渦巻状に巻回してなり、互いに巻数が異なる一次コイルおよび二次コイルと、
該一次コイルと該二次コイルとのうち少なくとも一方を保持する保持部材とを備え、
上記一次コイルおよび上記二次コイルは上記柱状部の軸線方向に互いに隣接しており、
上記保持部材は、上記軸線方向に直交する板状部と、該板状部から上記軸線方向に突出すると共に該軸線方向から見た場合に渦巻状に形成された突部とを備え、
上記一次コイルと上記二次コイルとのうち、巻数が少ない方のコイルは、上記保持部材の上記突部に沿って巻回されており、
上記一次コイルと上記二次コイルとは、中心側端部から外周側端部にわたって、上記コイルの径方向における上記被覆導線の少なくとも一部が、上記軸線方向に互いに重なるよう対向配置されていることを特徴とするトランスにある(請求項6)。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明においては、一次コイルと二次コイルとのうち、巻数が少ないコイルを、巻数が多いコイルよりも、線径が大きい被覆導線を使って形成した。このようにすると、巻数が異なっていても、一次コイルの直径と二次コイルの直径とを近づけることが可能となる。そのため、一次コイルと二次コイルとを、内側から外側にわたって軸線方向に対向させやすくなる。そして、このように構成した一次コイルと二次コイルとを、中心側端部から外周側端部にわたって、コイルの径方向における被覆導線の少なくとも一部が、軸線方向に互いに重なるよう対向配置している。これにより、上記非隣接部が形成されることを防止できる。そのため、非隣接部において渦電流による損失が大きくなるという不具合を防止できる。
【0014】
なお、一次コイル及び二次コイルは、断面円形の被覆導線を使って形成できる他、断面多角形の被覆導線を使って形成することができる。また、「被覆導線の線径」とは、コイルの径方向における、絶縁被膜を含めた幅を意味する。すなわち、例えば、断面円形の被覆導線を使用する場合は、「被覆導線の線径」とは、絶縁被膜を含めた直径を意味し、断面正方形状の被覆導線を、その断面の一辺がコイルの径方向に平行となるように配置する場合は、断面における、絶縁被膜を含めた一辺の長さを意味する。
【0015】
また、第2の発明においては、上記一次コイルと上記二次コイルとのうち巻数が少ないコイルを、上記保持部材の上記突部に沿って巻回した。そのため、例えば、線径が互いに等しい被覆導線を使って、巻数が異なる一次コイルと二次コイルとを形成する場合であっても、巻数が少ないコイルを所定の間隔を空けて巻回することができ、一次コイルの直径と二次コイルの直径とを近づけることができる。これにより、一次コイルと二次コイルとを、内側から外側にわたって軸線方向に対向させることができ、一次コイル又は二次コイルに上記非隣接部が形成されることを防止できる。そのため、非隣接部において渦電流による損失が大きくなるという不具合を防止できる。
【0016】
以上のごとく、本発明によれば、被覆導線を渦巻状に巻回して一次コイルおよび二次コイルを形成した場合でも、渦電流による損失を抑制できるトランスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1における、トランスの断面図。
【図2】図1の要部拡大図。
【図3】実施例1における、保持部材の斜視図。
【図4】実施例1における、トランスの分解斜視図。
【図5】実施例1における、トランスの断面図。
【図6】図5の要部拡大図。
【図7】実施例2における、トランスの拡大断面図。
【図8】実施例3における、トランスの拡大断面図。
【図9】実施例4における、トランスの断面図。
【図10】実施例4における、保持部材の断面図。
【図11】従来例における、トランスの断面図。
【図12】従来例における、被覆導線を渦巻状に巻いたトランスの断面図。
【図13】従来例における、表皮効果の説明図。
【図14】従来例における、非隣接部において渦電流による損失が大きくなる理由を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上述した本発明における好ましい実施の形態につき説明する。
上記トランスは、例えば、電気自動車やハイブリッド車に搭載されたバッテリーを、商用電源を使って充電するための充電器に用いられる。
【0019】
第1の発明において、上記一次コイルおよび上記二次コイルを構成する上記被覆導線は、それぞれ径方向に隣接する部分を互いに接触させた状態で渦巻状に巻回されており、上記一次コイルを構成する上記被覆導線の上記線径d1と、該一次コイルの巻数n1と、上記二次コイルを構成する上記被覆導線の上記線径d2と、該二次コイルの巻数n2とが、
0.9≦n1/n2×d1/d2≦1.1
を満たしていることが好ましい(請求項2)。
この場合には、一次コイル及び二次コイルが正確に巻回されたとき、径方向における、二次コイルの中心側端部と外周側端部との間の幅(n2×d2)と、一次コイルの中心側端部と外周側端部との間の幅(n1×d1)とが近似する。そのため、特に巻き方を調整しなくても、一次コイルまたは二次コイルにおける、上記非隣接部の形成を充分に抑制できる。そのため、渦電流による損失を低減しやすい。
【0020】
また、n1×d1=n2×d2
を満たしていることが好ましい(請求項3)。
この場合には、一次コイル及び二次コイルが正確に巻回されたとき、径方向における、二次コイルの中心側端部と外周側端部との間の幅(n2×d2)と、一次コイルの中心側端部と外周側端部との間の幅(n1×d1)とを一致させることができる。そのため、特に巻き方を調整しなくても、一次コイルまたは二次コイルにおける、上記非隣接部の形成を効果的に抑制できる。そのため、渦電流による損失を効果的に抑制できる。
【0021】
また、上記一次コイルを構成する上記被覆導線と、上記二次コイルを構成する上記被覆導線とは、上記導体部の線径が互いに異なり、上記絶縁被膜の厚さが互いに等しいことが好ましい(請求項4)。
この場合には、巻数が少ないコイルの発熱を抑制することができる。すなわち、上記構成にすると、巻数が少ないコイルにおける上記導体部の線径を大きくでき、巻数が多いコイルにおける導体部の線径を小さくすることができる。つまり、巻数が少ないコイルにおける導体部の断面積を大きくでき、該導体部の電気抵抗を小さくすることができる。トランスは、巻数が少ないコイルに大きな電流が流れるが、この大きな電流が流れる被覆導線の電気抵抗を低減できるため、電気抵抗による発熱を抑制できる。
【0022】
また、上記一次コイルを構成する上記被覆導線と、上記二次コイルを構成する上記被覆導線とは、上記導体部の線径が互いに等しく、上記絶縁被膜の厚さが互いに異なるよう構成されていてもよい(請求項5)。
この場合には、導体部の線径が互いに等しくても、一次コイルを構成する被覆導線の線径と、二次コイルを構成する被覆導線の線径とを互いに異ならせることができる。そのため、導体部を構成する金属の使用量を少なくすることができ、トランスの製造コストを低減することができる。
【0023】
また、第2の発明において、上記一次コイルを構成する上記被覆導線と、上記二次コイルを構成する上記被覆導線とは、線径が互いに等しいことが好ましい(請求項7)。
この場合には、線径が互いに等しい被覆導線を使って一次コイルと二次コイルとを形成することができる。そのため、複数種類の被覆導線を用いる必要がなくなり、トランスの製造コストを低減することができる。
【0024】
また、仮に、被覆導線の線径を互いに異ならせるために、一方の被覆導線の絶縁被膜の厚さを厚くしようとすると、規格外の被覆導線を製造することとなるため、製造コストが上昇したり、製造時間が長くなる等の問題が生じる場合があるが、線径が互いに等しい被覆導線を使って一次コイルと二次コイルとを形成する場合は、規格内の被覆導線を使用できるため、このような問題が生じることを抑制できる。
【実施例】
【0025】
(実施例1)
本発明の実施例にかかるトランスにつき、図1〜図6を用いて説明する。本例のトランス1は、磁性体からなるコア2と、一次コイル11と、二次コイル12とを備える。コア2は、柱状に形成された柱状部20を有する。一次コイル11および二次コイル12は、柱状部20を中心に被覆導線3を渦巻状に巻回してなり、互いに巻数が異なる。被覆導線3は、導体部30と、該導体部30の表面を被覆する絶縁被膜31とからなる。また、一次コイル11および二次コイル12は、柱状部20の軸線方向(X方向)に互いに隣接している。
【0026】
一次コイル11と二次コイル12とのうち、巻数が少ないコイル(図では二次コイル12)は、巻数が多いコイル(図では一次コイル11)よりも、被覆導線3の線径が大きい。
一次コイル11と二次コイル12とは、中心側端部から外周側端部にわたって、径方向(Y方向)における被覆導線3の少なくとも一部が、軸線方向(X方向)に互いに重なるよう対向配置されている。
【0027】
図4に示すごとく、コア2は、X方向の一方側に配置される第1部分2aと、X方向の他方側に配置される第2部分2bとからなる。第1部分2a及び第2部分2bは、X方向における平面視が略矩形状の板状本体部23と、該板状本体部23の両端からX方向に突出した第1側壁部21及び第2側壁部22とを備える。板状本体部23の内側主面230から柱状部20が、第1側壁部21および第2側壁部22の突出方向と同一方向に突出している。柱状部20は円柱状に形成されている。第1側壁部21の内側面210と、第2側壁部22の内側面220とは、一次コイル11および二次コイル12を収容できるよう円弧状に形成されている。
【0028】
図1に示すごとく、コア2は、第1側壁部21a,21bが端面215において当接し、第2側壁部22a,22bが端面225において当接し、柱状部20a,20bが先端面201において当接した状態で、第1部分2aと第2部分2bとを組み合わせてなる。これら第1部分2aと第2部分2bとを組み合わせた状態では、第1部分2aの内側主面230aから、第2部分2bの内側主面230bまでのX方向における長さは、後述する保持部材4のX方向における長さより若干長い。
【0029】
図1、図4に示すごとく、コア2の第1部分2aと第2部分2bとを組み合わせると、板状本体部23a,23bと、第1側壁部21a,21bと、第2側壁部22a,22bとによって、保持部材4に保持された一次コイル11及び二次コイル12を収容する収容空間Sが形成される。
【0030】
また、図4に示すごとく、コア2には、第1側壁部21と第2側壁部22との間に開口部25が形成されている。第1部分2aと第2部分2bとを組み合わせ、保持部材4に保持された一次コイル11および二次コイル12を収納空間S内に収容すると、一次コイル11、二次コイル12、保持部材4の一部が開口部25から突出する。
【0031】
保持部材4は、図3に示すごとく、円筒部48と、該円筒部48から径方向(Y方向)へ突出した4枚の板状部40(40a〜40d)とを備える。円筒部48の内部49には、コア2の柱状部20(図1参照)が嵌合する。また、板状部40は、それぞれ円板状に形成されている。板状部40の板厚方向はX方向と一致する。第1板状部40aと第2板状部40bとは、円筒部48のX方向における一方の端部に、所定間隔をおいて形成されている。また、第3板状部40cと第4板状部40dとは、円筒部48のX方向における他方の端部に、所定間隔をおいて形成されている。保持部材4は、樹脂材料からなる成形品である。
【0032】
図2に示すごとく、第1板状部40aと第2板状部40bの間隔W3は、一次コイル11を構成する被覆導線3aの線径(直径)d1と略同一である。また、第2板状部40bの板厚W2は第1板状部40aの板厚W1よりも薄い。第2板状部40bの板厚W2は被覆導線3aの線径d1よりも小さい。また、図1に示すごとく、第2板状部40bと第3板状部40cとは、それぞれ板厚が同一である。また、第1板状部40aと第4板状部40dとは、それぞれ板厚が同一である。第1板状部40aと第2板状部40bとの間隔W3と、第3板状部40cと第4板状部40dとの間隔W4とは同一である。
【0033】
図1、図4に示すごとく、第1板状部40aと第2板状部40bの間および、第3板状部40cと第4板状部40dの間に、一次コイル11が巻回されている。一次コイル11は、一本の被覆導線3aからなる。また、第2板状部40bの、第1板状部40aとは反対側の主面400bと、第3板状部40cの、第4板状部40dとは反対側の主面400cとには、これらの主面400b、400cに接触するよう二次コイル12が巻回されている。二次コイル12は、一本の被覆導線3bからなる。
【0034】
図2に示すごとく、本例では、断面円形の被覆導線3a,3bを使って、一次コイル11及び二次コイル12を形成している。一次コイル11の方が、二次コイル12よりも巻数が多い。二次コイル12を構成する被覆導線3bの線径(直径)d2は、一次コイル11を構成する被覆導線3aの線径d1よりも大きい。二次コイル12の導体部30bの線径(直径)d20は、一次コイル11の導体部30aの線径(直径)d10よりも大きい。また、二次コイル12の絶縁被膜31bの厚さは、一次コイル11の絶縁被膜31aの厚さと同一である。
【0035】
上述したように、一次コイル11と二次コイル12とは、中心側端部から外周側端部にわたって、径方向(Y方向)における被覆導線3の少なくとも一部が、軸線方向(X方向)に互いに重なるよう対向配置されている。すなわち、本例では、一次コイル11を構成する被覆導線3aのうち、最外周部115の内側部分116は、X方向において二次コイル12と重なっており、最外周部115の外側部分117は、X方向において二次コイル12と重ならないように構成されている。また、一次コイル11を構成する被覆導線3aのうち、最外周部115以外の部分118は、全てがX方向において二次コイル12と重なっている。
なお、上記中心側端部とは、一次コイル11または二次コイル12を構成する被覆導線3の端部のうち、柱状部20に近い方の端部を意味し、上記外周側端部とは、一次コイル11または二次コイル12を構成する被覆導線3の端部のうち、柱状部20から遠い方の端部を意味する。
【0036】
また、一次コイル11を構成する被覆導線3aと、二次コイル12を構成する被覆導線3bとは、それぞれY方向に隣接する部分を互いに接触させた状態で渦巻状に巻回されている。一次コイル11の巻数n1と、一次コイル11を構成する被覆導線3aの線径d1と、二次コイル12の巻数n2と、二次コイル12を構成する被覆導線3bの線径d2との間には、
0.9≦n1/n2×d1/d2≦1.1
が成立している。
【0037】
なお、図5、図6に示すごとく、
n1×d1=n2×d2
を満たすようにすることがより好ましい。例えば、n1=20、n2=12、d1=0.18mm、d2=0.3mmとすることができる。
【0038】
本例の作用効果について説明する。本例では、一次コイル11と二次コイル12とのうち、巻数が少ないコイル(二次コイル12)を、巻数が多いコイル(一次コイル11)よりも、線径が大きい被覆導線3bを使って形成した。このようにすると、巻数が異なっていても、図1に示すごとく、一次コイル11の直径D1と二次コイル12の直径D2とを近づけることが可能となる。そのため、一次コイル11と二次コイル12とを、内側から外側にわたってX方向に対向させやすくなる。そして、このように構成した一次コイル11と二次コイル12とを、中心側端部から外周側端部にわたって、Y方向における被覆導線3の少なくとも一部が、X方向に互いに重なるよう対向配置している。これにより、一次コイル11と二次コイル12とのうち一方のコイルに、他方のコイルと隣接しない非隣接部が形成されることを防止できる。そのため、非隣接部において渦電流による損失が大きくなるという不具合を防止できる。
【0039】
また、本例では、一次コイル11を構成する被覆導線3aの線径d1と、一次コイル11の巻数n1と、二次コイル12を構成する被覆導線3bの線径d2と、二次コイル12の巻数n2とが、
0.9≦n1/n2×d1/d2≦1.1
を満たしている。このようにすると、一次コイル及び二次コイルが正確に巻回されたとき、径方向(Y方向)における、二次コイル12の中心側端部と外周側端部との間の幅(n2×d2)と、一次コイル11の中心側端部と外周側端部との間の幅(n1×d1)とが近似する。そのため、特に巻き方を調整しなくても、一次コイル11または二次コイル12における、非隣接部の形成を充分に抑制できる。そのため、渦電流による損失を低減しやすい。
【0040】
また、図5、図6に示すごとく、n1×d1=n2×d2
を満たすようにした場合には、一次コイル11及び二次コイル12が正確に巻回されたとき、径方向(Y方向)における、二次コイル12の中心側端部と外周側端部との間の幅(n2×d2)と、一次コイル11の中心側端部と外周側端部との間の幅(n1×d1)とを一致させることができる。そのため、一次コイル11または二次コイル12における、非隣接部の形成を効果的に抑制できる。そのため、渦電流による損失を効果的に抑制できる。
【0041】
また、本例では、図2に示すごとく、一次コイル11を構成する被覆導線3aと、二次コイル12を構成する被覆導線3bとは、導体部30の線径d10,d20が互いに異なり、絶縁被膜31の厚さが互いに等しい。このようにすると、巻数が少ないコイルの発熱を抑制することができる。すなわち、上記構成にすると、巻数が少ないコイル(二次コイル12)における導体部30bの線径d20を大きくでき、巻数が多いコイル(一次コイル11)における導体部30aの線径d10を小さくすることができる。つまり、巻数が少ないコイル(二次コイル12)における導体部30bの断面積を大きくでき、導体部30bの電気抵抗を小さくすることができる。トランスは、巻数が少ないコイル(二次コイル12)に大きな電流が流れるが、この大きな電流が流れる被覆導線3bの電気抵抗を低減できるため、電気抵抗による発熱を抑制できる。
【0042】
以上のごとく、本例によれば、被覆導線を渦巻状に巻回して一次コイルおよび二次コイルを形成した場合でも、渦電流による損失を抑制できるトランスを提供することができる。
【0043】
(実施例2)
本例は、一次コイル11及び二次コイル12の断面形状を変更した例である。図7に示すごとく、本例では、断面正方形状の被覆導線3a,3bを使って、一次コイル11及び二次コイル12を形成した。被覆導線3a,3bは、断面正方形状の導体部30a,30bと、絶縁被膜31bとからなる。一次コイル11と二次コイル12とは、被覆導線3a,3bを、それぞれの側面が密着するように渦巻状に巻回して形成されている。一次コイル11の巻数は、二次コイル12の巻数よりも多い。二次コイル12の線径d2は、一次コイル11の線径d1よりも大きい。また、二次コイル12の導体部30bの線径d20は、一次コイル11の導体部30aの線径d10よりも大きい。二次コイル12の絶縁被膜31bの厚さと、一次コイル11の絶縁被膜31aの厚さとは略同一である。
一次コイル11の巻数n1と、一次コイル11の線径d1と、二次コイル12の巻数n2と、二次コイル12の線径d2とは、
0.9≦n1/n2×d1/d2≦1.1
を満たしている。また、
n1×d1=n2×d2
を満たすようにすることがより好ましい。
その他、実施例1と同様の構成を備える。
【0044】
本例の作用効果について説明する。本例では、断面正方形状の被覆導線3a,3bを用いて一次コイル11及び二次コイル12を形成したため、断面円形の被覆導線を用いる場合と比較して、導体部30a,30bの密度を高めることができる。そのため、大きな電流を流すことが可能になる。
【0045】
なお、図示しないが、断面長方形状の被覆導線3a,3bを使って、一次コイル11及び二次コイル12を形成してもよい。この場合、例えば、断面における長辺が径方向(Y方向)に平行となるように被覆導線3を巻回した場合、絶縁被膜31を含む長辺が「被覆導線3の線径」となる。また、例えば、断面における短辺が径方向(Y方向)に平行となるように被覆導線3を巻回した場合、絶縁被膜31を含む短辺が「被覆導線3の線径」となる。
その他、実施例1と同様の作用効果を備える。
【0046】
(実施例3)
本例は、一次コイル11と二次コイル12とで、絶縁被膜31の厚さを変えた例である。図8に示すごとく、本例では一次コイル11の導体部30aの線径d10と、二次コイル12の導体部30bの線径d20とは同一である。また、二次コイル12の絶縁被膜31bの厚さW20は、一次コイル11の絶縁被膜31aの厚さW10よりも厚い。このようにすることで、二次コイル12を構成する被覆導線31bの線径d2を、一次コイル11を構成する被覆導線31aの線径d1よりも大きくしている。一次コイル11の巻数は二次コイル12の巻数よりも多い。
その他、実施例1と同様の構成を備える。
【0047】
本例の作用効果について説明する。上記構成にすると、導体部30a,30bの線径d10,d20が互いに等しくても、一次コイル11を構成する被覆導線3aの線径d1と、二次コイル12を構成する被覆導線3bの線径d2とを互いに異ならせることができる。そのため、導体部30bを構成する金属の使用量を少なくすることができ、トランス1の製造コストを低減することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を備える。
【0048】
(実施例4)
本例は、保持部材4の形状を変更した例である。図9に示すごとく、本例の保持部材4は、実施例1と同様に、4枚の板状部40a〜40dを備える。第2板状部40bの、第1板状部40aとは反対側の主面400bには、第3板状部40cへ向かってX方向に突出した突部41aが形成されている。また、第3板状部40cの、第4板状部40dとは反対側の主面400cには、第2板状部40bへ向かってX方向に突出した突部41bが形成されている。突部41は、図10に示すごとく、X方向から見た場合に渦巻状に形成されている。
【0049】
図9に示すごとく、一次コイル11は、第1板状部40aと第2板状部40bの隙間と、第3板状部40cと第4板状部40dの隙間とに巻回されている。また、二次コイル12は、突部41に沿って巻回されている。これにより、二次コイル12を、Y方向に所定の間隔をおいて巻回させている。
【0050】
Y方向における、突部41の間隔W30は、二次コイル12を構成する被覆導線3bの線径d2と略同一である。また、一次コイル11を構成する被覆導線3aの線径d1と、二次コイル12を構成する被覆導線3bの線径d2とは同一である。
二次コイル12の直径D2と一次コイル11の直径D1とは略同一である。
一次コイル11と二次コイル12とは、中心側端部から外周側端部にわたって、Y方向における被覆導線3a,3bの少なくとも一部が、X方向に互いに重なるよう対向配置されている。
その他、実施例1と同様の構成を備える。
【0051】
本例の作用効果について説明する。本例では、巻数が少ないコイル(二次コイル12)を、保持部材4の突部41に沿って巻回した。そのため、線径d1,d2が等しい被覆導線3a,3bを使って、互いに巻数が異なる一次コイル11と二次コイル12とを形成した場合でも、巻数が少ないコイル(二次コイル12)を所定の間隔を空けて巻回することができ、それぞれのコイルの直径D1,D2を近づけることができる。これにより、一次コイル11と二次コイル12とを、内側から外側にわたってX方向に対向させることができ、一次コイル11又は二次コイル12に非隣接部が形成されることを防止できる。そのため、非隣接部において渦電流による損失が大きくなるという不具合を防止できる。
【0052】
また、本例では、線径が互いに等しい被覆導線3a,3bを使って一次コイル11と二次コイル12とを形成しているため、複数種類の被覆導線3を用いる必要がなくなり、トランス1の製造コストを低減することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を備える。
【符号の説明】
【0053】
1 トランス
11 一次コイル
12 二次コイル
2 コア
20 柱状部材
3 被覆導線
30 導体部
31 絶縁被膜
4 保持部材
40 突部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状に形成された柱状部を有し、磁性体からなるコアと、
上記柱状部を中心に、導体部と絶縁被膜とからなる被覆導線を渦巻状に巻回してなり、互いに巻数が異なる一次コイルおよび二次コイルとを備え、
上記一次コイルおよび上記二次コイルは上記柱状部の軸線方向に互いに隣接しており、
上記一次コイルと上記二次コイルとのうち巻数が少ないコイルは、巻数が多いコイルよりも、上記被覆導線の線径が大きく、
上記一次コイルと上記二次コイルとは、中心側端部から外周側端部にわたって、上記コイルの径方向における上記被覆導線の少なくとも一部が、上記軸線方向に互いに重なるよう対向配置されていることを特徴とするトランス。
【請求項2】
請求項1に記載のトランスにおいて、上記一次コイルおよび上記二次コイルを構成する上記被覆導線は、それぞれ径方向に隣接する部分を互いに接触させた状態で渦巻状に巻回されており、上記一次コイルを構成する上記被覆導線の上記線径d1と、該一次コイルの巻数n1と、上記二次コイルを構成する上記被覆導線の上記線径d2と、該二次コイルの巻数n2とが、
0.9≦n1/n2×d1/d2≦1.1
を満たしていることを特徴とするトランス。
【請求項3】
請求項2に記載のトランスにおいて、n1×d1=n2×d2
を満たしていることを特徴とするトランス。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のトランスにおいて、上記一次コイルを構成する上記被覆導線と、上記二次コイルを構成する上記被覆導線とは、上記導体部の線径が互いに異なり、上記絶縁被膜の厚さが互いに等しいことを特徴とするトランス。
【請求項5】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のトランスにおいて、上記一次コイルを構成する上記被覆導線と、上記二次コイルを構成する上記被覆導線とは、上記導体部の線径が互いに等しく、上記絶縁被膜の厚さが互いに異なることを特徴とするトランス。
【請求項6】
柱状に形成された柱状部を有し、磁性体からなるコアと、
上記柱状部を中心に、導体部と絶縁被膜とからなる被覆導線を渦巻状に巻回してなり、互いに巻数が異なる一次コイルおよび二次コイルと、
該一次コイルと該二次コイルとのうち少なくとも一方を保持する保持部材とを備え、
上記一次コイルおよび上記二次コイルは上記柱状部の軸線方向に互いに隣接しており、
上記保持部材は、上記軸線方向に直交する板状部と、該板状部から上記軸線方向に突出すると共に該軸線方向から見た場合に渦巻状に形成された突部とを備え、
上記一次コイルと上記二次コイルとのうち、巻数が少ない方のコイルは、上記保持部材の上記突部に沿って巻回されており、
上記一次コイルと上記二次コイルとは、中心側端部から外周側端部にわたって、上記コイルの径方向における上記被覆導線の少なくとも一部が、上記軸線方向に互いに重なるよう対向配置されていることを特徴とするトランス。
【請求項7】
請求項5に記載のトランスにおいて、上記一次コイルを構成する上記被覆導線と、上記二次コイルを構成する上記被覆導線とは、線径が互いに等しいことを特徴とするトランス。
【請求項1】
柱状に形成された柱状部を有し、磁性体からなるコアと、
上記柱状部を中心に、導体部と絶縁被膜とからなる被覆導線を渦巻状に巻回してなり、互いに巻数が異なる一次コイルおよび二次コイルとを備え、
上記一次コイルおよび上記二次コイルは上記柱状部の軸線方向に互いに隣接しており、
上記一次コイルと上記二次コイルとのうち巻数が少ないコイルは、巻数が多いコイルよりも、上記被覆導線の線径が大きく、
上記一次コイルと上記二次コイルとは、中心側端部から外周側端部にわたって、上記コイルの径方向における上記被覆導線の少なくとも一部が、上記軸線方向に互いに重なるよう対向配置されていることを特徴とするトランス。
【請求項2】
請求項1に記載のトランスにおいて、上記一次コイルおよび上記二次コイルを構成する上記被覆導線は、それぞれ径方向に隣接する部分を互いに接触させた状態で渦巻状に巻回されており、上記一次コイルを構成する上記被覆導線の上記線径d1と、該一次コイルの巻数n1と、上記二次コイルを構成する上記被覆導線の上記線径d2と、該二次コイルの巻数n2とが、
0.9≦n1/n2×d1/d2≦1.1
を満たしていることを特徴とするトランス。
【請求項3】
請求項2に記載のトランスにおいて、n1×d1=n2×d2
を満たしていることを特徴とするトランス。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のトランスにおいて、上記一次コイルを構成する上記被覆導線と、上記二次コイルを構成する上記被覆導線とは、上記導体部の線径が互いに異なり、上記絶縁被膜の厚さが互いに等しいことを特徴とするトランス。
【請求項5】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のトランスにおいて、上記一次コイルを構成する上記被覆導線と、上記二次コイルを構成する上記被覆導線とは、上記導体部の線径が互いに等しく、上記絶縁被膜の厚さが互いに異なることを特徴とするトランス。
【請求項6】
柱状に形成された柱状部を有し、磁性体からなるコアと、
上記柱状部を中心に、導体部と絶縁被膜とからなる被覆導線を渦巻状に巻回してなり、互いに巻数が異なる一次コイルおよび二次コイルと、
該一次コイルと該二次コイルとのうち少なくとも一方を保持する保持部材とを備え、
上記一次コイルおよび上記二次コイルは上記柱状部の軸線方向に互いに隣接しており、
上記保持部材は、上記軸線方向に直交する板状部と、該板状部から上記軸線方向に突出すると共に該軸線方向から見た場合に渦巻状に形成された突部とを備え、
上記一次コイルと上記二次コイルとのうち、巻数が少ない方のコイルは、上記保持部材の上記突部に沿って巻回されており、
上記一次コイルと上記二次コイルとは、中心側端部から外周側端部にわたって、上記コイルの径方向における上記被覆導線の少なくとも一部が、上記軸線方向に互いに重なるよう対向配置されていることを特徴とするトランス。
【請求項7】
請求項5に記載のトランスにおいて、上記一次コイルを構成する上記被覆導線と、上記二次コイルを構成する上記被覆導線とは、線径が互いに等しいことを特徴とするトランス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−164928(P2012−164928A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26097(P2011−26097)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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