説明

トランス

【課題】温度上昇を抑制できるトランスを提供する。
【解決手段】トランス1は、磁性体からなるコア2と、一次コイル11と、二次コイル12とを備える。コア2は、柱状に形成された柱状部20を有する。一次コイル11および二次コイル12は、柱状部20を中心に被覆導線3(3a,3b)を巻回してなる。一次コイル11は、被覆導線3aを螺旋状に巻回した螺旋状コイル6であり、二次コイル12は、被覆導線3bを渦巻状に巻回した渦巻状コイル5である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆導線を巻回して形成した一次コイルおよび二次コイルを有するトランスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、図13に示すごとく、磁性体からなるコア94と、該コア94を中心に巻回した一次コイル91および二次コイル92とを有し、これら一次コイル91と二次コイル92との間で交流電圧の変圧を行うトランス90が知られている(下記特許文献1、2参照)。
【0003】
トランス90は、コア94を中心に配置したボビン93を備える。このボビン93に被覆導線を螺旋状に巻回することにより、一次コイル91を形成している。また、一次コイル91の外周に別の被覆導線を螺旋状に巻回することにより、二次コイル92を形成している。
【0004】
一次コイル91に交流電圧を印加すると、その交流電圧に、一次コイル91の巻数n1と二次コイル92の巻数n2との比n2/n1を乗じた電圧が、二次コイル92から出力される。この際、コイル91,92に交流電流が流れる。コイル91,92を構成する被覆導線には電気抵抗があるので、交流電流が流れた際に、コイル91,92は発熱する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−159963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが上記トランス90は、一次コイル91の外周に二次コイル92を巻回しているため、一次コイル91の内周部91aからコイル表面99までの距離Lが長くなるという問題があった。この距離Lが長くなると、内周部91aにおいて発生した抵抗熱がコイル内にこもりやすくなり、放熱しにくくなる。そのため、内周部91aの温度が上昇しやすくなるという問題が生じる。
【0007】
また、上記トランス90は、一次コイル91の外周に二次コイル92を巻回しているため、一次コイル91と二次コイル92との接触面積が大きいという問題があった。一次コイル91と二次コイル92とが近接すると、近接した部分に集中して交流電流が流れやすくなる、いわゆる近接効果が発生する。コイル91,92の接触面積が大きいと、近接効果が顕著になり、交流抵抗が大きくなる。そのため、電流を流した際の発熱量が増大するという問題が生じる。
【0008】
このように、螺旋状に巻回した一次コイル91の外周に、二次コイル92を螺旋状に巻回すると、内周部91aの放熱性が低下すると共に、一次コイル91と二次コイル92との間の近接効果によって発熱量が増大するという問題が生じる。
また、図14に示すごとく、一次コイル91と二次コイル92とを両方とも渦巻状に巻回し、一次コイル91と二次コイル92とを軸線方向(X方向)に隣接配置した場合も、同様の問題が生じる。そのため、温度上昇を抑制できるトランスが望まれていた。
【0009】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、温度上昇を抑制できるトランスを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、柱状に形成された柱状部を有し、磁性体からなるコアと、
上記柱状部を中心に被覆導線を巻回してなる一次コイルおよび二次コイルとを備え、
該一次コイルと該二次コイルとのうち一方のコイルは、上記被覆導線を渦巻状に巻回した渦巻状コイルであり、他方のコイルは、上記被覆導線を螺旋状に巻回した螺旋状コイルであることを特徴とするトランスにある(請求項1)。
【発明の効果】
【0011】
上記トランスにおいては、一次コイルと二次コイルとのうち、一方のコイルを上記渦巻状コイルとし、他方のコイルを上記螺旋状コイルとした。ここで「渦巻状コイル」とは、被覆導線の一方の端部を柱状部付近に設け、該一方の端部から他方の端部に向かうほど、柱状部から次第に遠くなるように被覆導線を巻回したコイルを意味する。また、「螺旋状コイル」とは、被覆導線の一方の端部から他方の端部に向かうほど、軸線方向に次第に進むように被覆導線を巻回したコイルを意味する。このように、渦巻状コイルと螺旋状コイルは被覆導線の巻き方が異なるため、互いの形状を大きく変えることができる。例えば、渦巻状コイルは円板状にすることができ、螺旋状コイルは円筒状にすることができる。そのため、渦巻状コイルと螺旋状コイルとは、隣接配置した場合でも、互いの接触面積を最小限にすることができる。これにより、渦巻状コイルと螺旋状コイルとの、空気への接触面積をそれぞれ増やすことができ、放熱性を向上させることが可能となる。
【0012】
また、螺旋状コイルと渦巻状コイルとは、互いの接触面積を最小限にすることができるため、これらのコイルの間に生じる近接効果を抑制できる。そのため、交流抵抗の増加を抑制でき、電流を流した際の発熱量を最小限にすることが可能となる。
【0013】
以上のごとく、本発明によれば、温度上昇を抑制できるトランスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1における、トランスの断面図。
【図2】実施例1における、保持部材の斜視図。
【図3】実施例1における、トランスの分解斜視図。
【図4】実施例1における、トランスの斜視図。
【図5】実施例2における、トランスの断面図。
【図6】実施例3における、トランスの断面図。
【図7】実施例4における、トランスの断面図。
【図8】実施例5における、トランスの断面図。
【図9】実施例6における、トランスの断面図。
【図10】実施例6における、トランスの斜視図。
【図11】実施例7における、トランスの断面図。
【図12】実施例7における、トランスの斜視図。
【図13】従来例における、トランスの断面図。
【図14】図13とは別の従来例における、トランスの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上述した本発明における好ましい実施の形態につき説明する。
上記トランスは、例えば、電気自動車やハイブリッド車に搭載されたバッテリーを、商用電源(交流電源)を使って充電するための充電器に用いられる。
【0016】
上記渦巻状コイルは、被覆導線の中心を通る面が、必ずしも柱状部に対して垂直になっている必要はなく、例えば円錐面となっていてもよい。また、上記螺旋状コイルは、被覆導線の中心を通る面が、必ずしも円筒面になっている必要はなく、渦巻状コイルの表面と重なり合わないことを条件として、例えば円錐面となっていてもよい。
【0017】
上記トランスにおいて、上記一次コイルと上記二次コイルとのうち、上記被覆導線の単位長さ当たりの発熱量が多いコイルが上記螺旋状コイルであり、上記被覆導線の単位長さ当たりの発熱量が少ないコイルが上記渦巻状コイルであることが好ましい(請求項2)。
この場合には、螺旋状コイルと渦巻状コイルを合わせた全体の発熱量を低減することができる。すなわち、巻数が同じ場合には、螺旋状コイルの方が、渦巻状コイルよりも被覆導線の長さを短くしやすい。そのため、単位長さ当たりの発熱量が多いコイルを螺旋状コイルにし、単位長さ当たりの発熱量が少ないコイルを渦巻状コイルにすれば、単位長さ当たりの発熱量が多いコイルを短い被覆導線で形成することができ、コイル全体の発熱量を低減することが可能となる。そのため、トランスの温度上昇をより効果的に抑制できる。
【0018】
また、上記渦巻状コイルは、上記柱状部を中心に上記被覆導線を渦巻状に巻回した第1渦巻状部分および第2渦巻状部分を備え、該第1渦巻状部分と該第2渦巻状部分とは、上記柱状部の軸線方向に所定間隔をおいて対向配置されていることが好ましい(請求項3)。
この場合には、渦巻状コイルは第1渦巻状部分と第2渦巻状部分とを備えるため、渦巻状コイルの巻数を増やすことができる。また、第1渦巻状部分と第2渦巻状部分とが軸線方向に所定間隔をおいて対向配置されているため、これら第1渦巻状部分と第2渦巻状部分との、空気への接触面積を増やすことができる。そのため、渦巻状コイルの放熱性を向上することが可能になる。また、第1渦巻状部分と第2渦巻状部分とを、所定間隔をおいて対向配置すると、これらの間の近接効果を低減できるため、渦巻状コイル全体の交流抵抗を低減でき、電流を流した際の発熱量を減少させることができる。
【0019】
また、上記螺旋状コイルは、互いに半径が異なる第1螺旋状部分および第2螺旋状部分を備え、該第1螺旋状部分と該第2螺旋状部分とは、上記螺旋状コイルの径方向に所定間隔をおいて同芯状に配置されていることが好ましい(請求項4)。
この場合には、螺旋状コイルは第1螺旋状部分と第2螺旋状部分とを備えるため、螺旋状コイルの巻数を増やすことができる。また、第1螺旋状部分と第2螺旋状部分とが径方向に所定間隔をおいて同芯状に配置されているため、これら第1螺旋状部分と第2螺旋状部分との、空気への接触面積を増やすことができる。そのため、螺旋状コイルの放熱性を向上することが可能になる。また、第1螺旋状部分と第2螺旋状部分とを、所定間隔をおいて同芯状に配置すると、これらの間の近接効果を低減できるため、螺旋状コイル全体の交流抵抗を低減でき、電流を流した際の発熱量を減少させることができる。
【0020】
また、上記螺旋状コイルに対して該螺旋状コイルの径方向に隣接する位置であって、上記渦巻状コイルに対して上記柱状部の軸線方向に隣接する位置に、上記一次コイルまたは上記二次コイルから発生した熱を放熱するための放熱部材が配置されていることが好ましい(請求項5)。
この場合には、放熱部材によって、一次コイルまたは二次コイルから発生した熱を放熱できるため、トランスの温度上昇をさらに効果的に抑制することができる。
【0021】
また、上記柱状部は鉛直方向を向いており、上記渦巻状コイルの少なくとも一部は、上記螺旋状コイルの鉛直方向上側に形成され、かつ上記螺旋状コイルの径方向外側へ向かうほど上記被覆導線が鉛直方向上側に位置するように巻回されていることが好ましい(請求項6)。
この場合には、螺旋状コイルの発熱によって暖められた空気が、対流によって鉛直方向上側に上昇し、渦巻状コイルの下面に沿って、径方向外側に移動しやすくなる。そのため、暖められた空気がコイルの中心付近に留まることを防止でき、トランスの温度上昇を効果的に防止できる。
【実施例】
【0022】
(実施例1)
本発明の実施例にかかるトランスにつき、図1〜図4を用いて説明する。
本例のトランス1は、磁性体からなるコア2と、一次コイル11と、二次コイル12とを備える。コア2は、柱状に形成された柱状部20を有する。一次コイル11および二次コイル12は、柱状部20を中心に被覆導線3(3a,3b)を巻回してなる。
一次コイル11は、被覆導線3aを螺旋状に巻回した螺旋状コイル6であり、二次コイル12は、被覆導線3bを渦巻状に巻回した渦巻状コイル5である。
【0023】
図3に示すごとく、コア2は、X方向の一方側に配置される第1部分2aと、X方向の他方側に配置される第2部分2bとからなる。第1部分2a及び第2部分2bは、X方向における平面視が略矩形状にされた板状の本体部23と、該本体部23の両端からX方向に突出した一対の側壁部21,22とを備える。本体部23の内側主面230から柱状部20が、側壁部21,22の突出方向と同一方向に突出している。柱状部20は円柱状に形成されている。側壁部21,22の内側面210,220は、一次コイル11および二次コイル12を収容できるよう円弧状に形成されている。
【0024】
図1に示すごとく、コア2は、一方の側壁部21a,21bが端面215において当接し、他方の側壁部22a,22bが端面225において当接し、柱状部20a,20bが先端面201において当接した状態で、第1部分2aと第2部分2bとを組み合わせてなる。これら第1部分2aと第2部分2bとを組み合わせた状態では、第1部分2aの内側主面230aから、第2部分2bの内側主面230bまでのX方向における長さは、後述する保持部材4のX方向における長さより若干長い。
【0025】
図1、図4に示すごとく、コア2の第1部分2aと第2部分2bとを組み合わせると、本体部23a,23bと、一対の側壁部21,22とによって、保持部材4に保持された一次コイル11及び二次コイル12を収容する収容空間Sが形成される。
【0026】
また、図3に示すごとく、コア2には、側壁部21,22の間に一対の開口部25が形成されている。図4に示すごとく、コア2の第1部分2aと第2部分2bとを組み合わせた状態において、開口部25a,25bは矩形状をなしている。保持部材4に保持された一次コイル11および二次コイル12を、第1部分2aと第2部分2bとで挟持し、収容空間Sに収容すると、二次コイル12と保持部材4の一部が開口部25から突出する。収納空間Sは、開口部25において外部空間と連通している。そのため、一次コイル11及び二次コイル12に電流が流れ、電気抵抗による発熱によって収納空間S内の空気が暖められた場合に、その暖められた空気が開口部25を通って外部空間へ出ることができるようになっている。
【0027】
保持部材4は、図2に示すごとく、円筒部48と、該円筒部48から径方向(Y方向)へ突出した2枚のフランジ部40(40a,40b)とを備える。円筒部48の内部49には、コア2の柱状部20(図1参照)が嵌合する。また、フランジ部40は、それぞれ円板状に形成されている。第1フランジ部40aは、円筒部48のX方向における一方の端部に形成されている。また、第2フランジ部40bは、円筒部48のX方向における他方の端部に形成されている。保持部材4は、樹脂材料からなる成形品である。
【0028】
図1に示すごとく、第1フランジ部40aの板厚と、第2フランジ部40bの板厚と、円筒部48のY方向の厚さとは、略同一である。また、第1フランジ部40aおよび第2フランジ部40bの板厚は、コア2の本体部23の板厚よりも薄い。
【0029】
本例では、断面円形の被覆導線3を使って、一次コイル11及び二次コイル12を形成している。一次コイル11を構成する被覆導線3aの直径と、二次コイル12を構成する被覆導線3bの直径とは、略同一である。
なお、被覆導線3は、必ずしも断面円形にする必要はなく、断面正方形状や、断面長方形状等、任意の形状にすることができる。
【0030】
上述したように、一次コイル11は螺旋状コイル6であり、二次コイル12は渦巻状コイル5である。図1に示すごとく、一次コイル11は、円筒部48の外周面に沿って、被覆導線3aを螺旋状に巻回してなる。また、二次コイル12は、第1フランジ部40aにおける、コア2の本体部23a側とは反対側の主面400aに接触するように、被覆導線3bを渦巻状に巻回してなる。
【0031】
なお、上記「渦巻状コイル5」とは、被覆導線3bの一方の端部を柱状部20付近に設け、該一方の端部から他方の端部に向かうほど、柱状部20から次第に遠くなるように被覆導線3bを巻回したコイルを意味する。本例では、X方向に直交する平面P1内において被覆導線3bを巻回することにより、渦巻状コイル5を円板状に形成している。
【0032】
また、上記「螺旋状コイル6」とは、被覆導線3aの一方の端部から他方の端部に向かうほど、軸線方向(X方向)に次第に進むように被覆導線3aを巻回したコイルを意味する。本例では、螺旋状コイル6を、柱状部20を中心とした円筒状に形成している。
【0033】
また、本例では、一次コイル11と二次コイル12を比較すると、一次コイル11の方が、被覆導線3の単位長さ当たりの発熱量が多い。この、単位長さ当たりの発熱量が多い一次コイル11を螺旋状コイル6とし、被覆導線3の単位長さ当たりの発熱量が少ない二次コイル12を渦巻状コイル5としている。
【0034】
なお、二次コイル12の方が、被覆導線3の単位長さ当たりの発熱量が多い場合は、二次コイル12を螺旋状コイル6とし、単位長さ当たりの発熱量が少ない一次コイル11を渦巻状コイル5とすることが好ましい。
【0035】
本例の作用効果について説明する。本例のトランス1においては、一次コイル11と二次コイル12とのうち、一方のコイルを渦巻状コイル5とし、他方のコイルを螺旋状コイル6とした。渦巻状コイル5と螺旋状コイル6は被覆導線3の巻き方が異なるため、互いの形状を大きく変えることができる。例えば、図1〜図4に示すごとく、渦巻状コイル5は円板状にすることができ、螺旋状コイル6は円筒状にすることができる。そのため、渦巻状コイル5と螺旋状コイル6とは、隣接配置した場合でも、互いの接触面積を最小限にすることができる。これにより、渦巻状コイル5と螺旋状コイル6との、空気への接触面積をそれぞれ増やすことができ、放熱性を向上させることが可能となる。
【0036】
また、螺旋状コイル6と渦巻状コイル5とは、互いの接触面積を最小限にすることができるため、これらのコイル5,6の間に生じる近接効果を抑制できる。そのため、交流抵抗の増加を抑制でき、電流を流した際の発熱量を最小限にすることが可能となる。
【0037】
また、本例では、一次コイル11と二次コイル12とのうち、被覆導線3の単位長さ当たりの発熱量が多いコイル(一次コイル11)を螺旋状コイル6とし、被覆導線3の単位長さ当たりの発熱量が少ないコイル(二次コイル12)を渦巻状コイル5としている。このようにすると、螺旋状コイル6と渦巻状コイル5を合わせた全体の発熱量を低減することができる。すなわち、巻数が同じ場合には、螺旋状コイル6の方が、渦巻状コイル5よりも被覆導線3の長さを短くしやすい。そのため、単位長さ当たりの発熱量が多いコイル(一次コイル11)を螺旋状コイル6にし、単位長さ当たりの発熱量が少ないコイル(二次コイル12)を渦巻状コイル5にすれば、単位長さ当たりの発熱量が多いコイル(一次コイル11)を短い被覆導線3で形成することができ、コイル全体の発熱量を低減することが可能となる。そのため、トランス1の温度上昇をより効果的に抑制できる。
【0038】
以上のごとく、本例によれば、温度上昇を抑制できるトランス1を提供することができる。
【0039】
(実施例2)
本例は、螺旋状コイル6及び渦巻状コイル5の形状を変更した例である。図5に示すごとく、本例では、柱状部20に垂直な平面P1に対して、渦巻状コイル5が傾斜している。すなわち、渦巻状コイル5を構成する被覆導線3bの中心を通る面P2が円錐面P2となっている。上記平面P1と円錐面P2とのなす角度θ1は、0°<θ1<45°であることがより好ましく、さらに好ましくは0°<θ1<22.5°である。
【0040】
また、本例では図5に示すごとく、柱状部20を中心とした円筒面P3に対して、螺旋状コイル6が傾斜している。すなわち、螺旋状コイル6を構成する被覆導線3aの中心を通る面が円錐面P4となっている。上記円筒面P3と円錐面P4とのなす角度θ2は、0°<θ2<45°であることがより好ましく、さらに好ましくは0°<θ2<22.5°である。
また、本例では、円錐面P2と円錐面P4とのなす角度θ3は、90°以上である。
その他、実施例1と同様の構成を備える。
【0041】
本例の作用効果について説明する。本例では、被覆導線3a,3bの中心を通る面P2,P4がそれぞれ円錐面となっているため、渦巻状コイル5および螺旋状コイル6の設計自由度を高めることができる。また、本例では、円錐面P2と円錐面P4とのなす角度θ3は90°以上であるため、渦巻状コイル5と螺旋状コイル6の放熱性を向上させることが可能となる。
その他、実施例1と同様の作用効果を備える。
【0042】
(実施例3)
本例は、渦巻状コイル5及び螺旋状コイル6を複数層に積層した例である。図6に示すごとく、本例の渦巻状コイル5は、X方向に2段に積層されている。また、本例の螺旋状コイル6は、Y方向に2段に積層されている。
このように、渦巻状コイル5または螺旋状コイル6を複数段に積層すると、それぞれのコイル5,6の巻数を増やすことが可能になる。コイル5,6の積層数は、2段に限らず、3段以上にすることもできるが、積層数を増やしすぎると、コイル5,6の放熱性が低下するので、3段以下にすることが好ましい。
その他、実施例1と同様の構成及び作用効果を備える。
【0043】
(実施例4)
本例は、渦巻状コイル5の形状を変更した例である。図7に示すごとく、本例の渦巻状コイル5は、柱状部20を中心に被覆導線3bを渦巻状に巻回した第1渦巻状部分51および第2渦巻状部分52を備える。第1渦巻状部分51と第2渦巻状部分52とは、X線方向に所定間隔をおいて対向配置されている。第1渦巻状部分51および第二渦巻状部分52は1本の被覆導線3bからなる。第1渦巻状部分51は、第1フランジ部40aにおける、コア2の本体部23a側とは反対側の主面400aに接触するように巻回されている。また、第2渦巻状部分52は、第2フランジ部40bにおける、コア2の本体部23b側とは反対側の主面400bに接触するように巻回されている。
その他、実施例1と同様の構成を備える。
【0044】
本例の作用効果について説明する。本例では、渦巻状コイル5は第1渦巻状部分51と第2渦巻状部分52とを備えるため、渦巻状コイル5の巻数を増やすことができる。また、第1渦巻状部分51と第2渦巻状部分52とがX方向に所定間隔をおいて対向配置されているため、これら第1渦巻状部分51と第2渦巻状部分52との、空気への接触面積を増やすことができる。そのため、渦巻状コイル5の放熱性を向上することが可能になる。また、第1渦巻状部分51と第2渦巻状部分52とを、所定間隔をおいて配置すると、これらの間の近接効果を低減できるため、渦巻状コイル5全体の交流抵抗を低減でき、電流を流した際の発熱量を減少することが可能となる。
その他、実施例1と同様の作用効果を備える。
【0045】
(実施例5)
本例は、螺旋状コイル6の形状を変更した例である。図8に示すごとく、本例の螺旋状コイル6は、互いに半径が異なる第1螺旋状部分61および第2螺旋状部分62を備える。第1螺旋状部分61と第2螺旋状部分62とは、螺旋状コイル6のY方向に所定間隔をおいて同芯状に配置されている。第1螺旋状部分61および第2螺旋状部分62は1本の被覆導線3aからなる。第1螺旋状部分61は、保持部材4の円筒部48の外周面に接触するように巻回されている。また、保持部材4の第1フランジ部40aおよび第2フランジ部40bに、円筒状部材45が嵌合している。この円筒状部材45の外周面に、第2螺旋状部分62が螺旋状に巻回されている。
【0046】
本例の作用効果について説明する。本例では、螺旋状コイル6は第1螺旋状部分61と第2螺旋状部分62とを備えるため、螺旋状コイル6の巻数を増やすことができる。また、第1螺旋状部分61と第2螺旋状部分62とがY方向に所定間隔をおいて同芯状に配置されているため、これら第1螺旋状部分61と第2螺旋状部分62との、空気への接触面積を増やすことができる。そのため、螺旋状コイル6の放熱性を向上することが可能になる。また、第1螺旋状部分61と第2螺旋状部分62とを所定間隔をおいて配置すると、これらの間の近接効果を低減できるため、螺旋状コイル6全体の交流抵抗を低減でき、電流を流した際の発熱量を減少することが可能となる。
その他、実施例1と同様の作用効果を備える。
【0047】
(実施例6)
本例は、図9に示すごとく、コア2内に放熱部材7を設けた例である。本例では、螺旋状コイル6に対してY方向に隣接する位置であって、渦巻状コイル5(第1渦巻状部分51、第2渦巻状部分52)に対してX方向に隣接する位置に、放熱部材7を配置してある。この放熱部材7によって、一次コイル11または二次コイル12から発生した熱を放熱するよう構成されている。渦巻状コイル5は、実施例4と同様に、第1渦巻状部分51と第2渦巻状部分52とを備える。また、螺旋状コイル6は、第2螺旋状部分62(図8参照)を備えていない。
【0048】
放熱部材7は、シリコンゲル等の、熱伝導率が高い物質からなるシート状の部材を、螺旋状コイル6の外面に巻回したものである。放熱部材7は、螺旋状コイル6と、第1渦巻状部分51と、第2渦巻状部分52とに接触している。また、図10に示すごとく、放熱部材7の一部は、コア2の開口部25a,25bからコア2外へ突出している。開口部25a,25bからは、二次コイル12の一部と、保持部材4の一部もコア2外へ突出している。一次コイル11および二次コイル12に電流を流すと、これらのコイル11,12から熱が発生する。この熱は放熱部材7に伝わり、さらに放熱部材7の表面70からコア2外の空気に伝わる。これにより、コイル11,12の熱を放熱するよう構成されている。
その他、実施例1と同様の構成を備える。
【0049】
本例の作用効果について説明する。本例では、放熱部材7によって、一次コイル11または二次コイル12から発生した熱を放熱できるため、トランス1の温度上昇をさらに効果的に抑制することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を備える。
【0050】
(実施例7)
本例は、渦巻状コイル5の形状を変更した例である。図11、図12に示すごとく、本例の柱状部20は鉛直方向(V方向)を向いている。渦巻状コイル5は、実施例4と同様に第1渦巻状部分51と第2渦巻状部分52とからなる。第1渦巻状部分51は、螺旋状コイル6の鉛直方向(V方向)上側に形成されている。第1渦巻状部分51は、径方向(Y方向)外側へ向かうほど被覆導線3が鉛直方向(V方向)上側に位置するように巻回されている。
【0051】
コア2は、実施例1と同様に、第1部分2aと第2部分2bとからなる。第1部分2aの本体部23aは、鉛直方向(V方向)下側に向かって凸となる円錐形状に形成されている。この円錐形状の本体部23aの両端から一対の側壁部21a,22aが、鉛直方向(V方向)下側へ向かって突出している。また、本体部23aの中心から、側壁部21a,22aと同一方向に、柱部20aが突出している。
第2部分2bは、実施例1と同様に、板状の本体部23bを備える。この本体部23bの両端から一対の側壁部21b,22bが鉛直方向上側へ向かって突出している。また、本体部23bの中央から、側壁部21b,22bと同一方向に、柱部20bが突出している。
【0052】
保持部材4の第1フランジ部40aは、鉛直方向(V方向)下側に向かって凸となる円錐形状に形成されている。また、第2フランジ部40bは、実施例1と同様に平板状に形成されている。第1渦巻状部分51は、円錐形状に形成された第1フランジ部40aにおける、コア2の本体部23a側とは反対側の主面400aに接触するように、被覆導線3bを巻回して形成されている。被覆導線3bの中心を通る円錐面P2と、水平面P1とのなす角度θ4は、好ましくは0°<θ4<45°であり、さらに好ましくは0°<θ4<22.5°である。
【0053】
図11に示すごとく、一対の側壁部21,22が端面215,225において当接し、柱状部20a,20bが先端面201において当接した状態で、第1部分2aと第2部分2bとが組みつけられている。そして、一対の側壁部21,22と、本体部23a,23bとによって、保持部材4に保持された一次コイル11及び二次コイル12を収納する収納空間Sが形成されている。収納空間Sは、コア2に形成された一対の開口部25a,25b(図12参照)において、外部空間と連通している。
【0054】
一次コイル11、二次コイル12に電流を流すと熱が発生し、周囲の空気8が暖められる。暖められた空気8は、対流によって鉛直方向上側に上昇し、渦巻状コイル5の下面に沿って、径方向(Y方向)外側に移動する。そして、開口部25a,25bを通って外部空間へ出て行く。この代わりに、冷えた空気が開口部25a,25bから収納空間S内に流入する。これにより、コイル11,12を冷却できるようになっている。
その他、実施例1と同様の構成を備える。
【0055】
本例の作用効果について説明する。
上記構成にすると、コイル11,12の発熱によって暖められた空気8が、対流によって鉛直方向(V方向)上側に上昇し、渦巻状コイル5の下面に沿って、径方向(Y方向)外側に移動しやすくなる。また、コア2の収納空間Sは、開口部25a,25bにおいて外部空間と連通しているため、暖められた空気8をコア2の外部に効果的に排出できる。そのため、暖められた空気8がコイル11,12の中心付近に留まることを防止でき、トランス1の温度上昇を防止できる。
その他、実施例1と同様の作用効果を備える。
【符号の説明】
【0056】
1 トランス
11 一次コイル
12 二次コイル
2 コア
3 被覆導線
4 保持部材
5 渦巻状コイル
6 螺旋状コイル
7 放熱部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状に形成された柱状部を有し、磁性体からなるコアと、
上記柱状部を中心に被覆導線を巻回してなる一次コイルおよび二次コイルとを備え、
該一次コイルと該二次コイルとのうち一方のコイルは、上記被覆導線を渦巻状に巻回した渦巻状コイルであり、他方のコイルは、上記被覆導線を螺旋状に巻回した螺旋状コイルであることを特徴とするトランス。
【請求項2】
請求項1に記載のトランスにおいて、上記一次コイルと上記二次コイルとのうち、上記被覆導線の単位長さ当たりの発熱量が多いコイルが上記螺旋状コイルであり、上記被覆導線の単位長さ当たりの発熱量が少ないコイルが上記渦巻状コイルであることを特徴とするトランス。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のトランスにおいて、上記渦巻状コイルは、上記柱状部を中心に上記被覆導線を渦巻状に巻回した第1渦巻状部分および第2渦巻状部分を備え、該第1渦巻状部分と該第2渦巻状部分とは、上記柱状部の軸線方向に所定間隔をおいて対向配置されていることを特徴とするトランス。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のトランスにおいて、上記螺旋状コイルは、互いに半径が異なる第1螺旋状部分および第2螺旋状部分を備え、該第1螺旋状部分と該第2螺旋状部分とは、上記螺旋状コイルの径方向に所定間隔をおいて同芯状に配置されていることを特徴とするトランス。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のトランスにおいて、上記螺旋状コイルに対して該螺旋状コイルの径方向に隣接する位置であって、上記渦巻状コイルに対して上記柱状部の軸線方向に隣接する位置に、上記一次コイルまたは上記二次コイルから発生した熱を放熱するための放熱部材が配置されていることを特徴とするトランス。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のトランスにおいて、上記柱状部は鉛直方向を向いており、上記渦巻状コイルの少なくとも一部は、上記螺旋状コイルの鉛直方向上側に形成され、かつ上記螺旋状コイルの径方向外側へ向かうほど上記被覆導線が鉛直方向上側に位置するように巻回されていることを特徴とするトランス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−169331(P2012−169331A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26952(P2011−26952)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】