説明

トランス

【課題】コア割れ等に対する信頼性向上を図るとともにコロナ放電の抑制を図るもの。
【解決手段】貫通孔9および複数の分割巻線溝12を有するボビン8と、貫通孔9に挿入される棒状コア10と、分割巻線溝12に巻回された一次巻線13、14および二次巻線15、16と、ボビン8を格納するケース18とを備え、ケース18内においてはボビン8および棒状コア10の周囲は充填樹脂19によって密封され、一次巻線は第1一次巻線13と第2一次巻線14とを直列接続することで形成されるとともに、二次巻線は第1二次巻線15と第2二次巻線16とダイオード17とを直列接続することでトランスを形成したもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種電子機器に使用されるトランスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、従来のトランスについて図面を用いて説明する。図8は従来のトランスを示す断面図であり、貫通孔1を有したボビン2へ、低圧側である一次巻線3と高圧側である二次巻線4とを巻回して設け、また、貫通孔1へ磁心5を挿入させた状態とし、一次巻線3に信号を加えることによって低電圧から高電圧を生成するものであった。また、ボビン2および磁心5を固定するために、外装固定用樹脂6を外装ケース7と磁心5の外周との間に設けるとともにボビン2の周囲に充填させているものであった。
【0003】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては例えば特許文献1、2が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−173917号公報
【特許文献2】特開2004−14832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のトランスでは二次巻線4に高電圧を発生させるにあたり、二次巻線4と磁心5との間に生じる可能性があるコロナ放電を防止するために、特にその原因となり易い二次巻線4を巻回したボビン2と磁心5との間のエアギャップの生成を抑制するよう、貫通孔1に当たる部分においても外装固定用樹脂6をボビン2と磁心5との間に十分に満たすことが求められるものであった。
【0006】
ここで、この構造においてトランス全体の小型化を図ろうとした場合、磁心5を図8のようにほぼ閉磁路となる日の字型とすることや或いは図示していないがロの字型とすることによって磁心5の実効透磁率を向上させることが必要となる。しかしながら、これらの形状では実効透磁率を向上させることはできるものの、磁心5を外装固定用樹脂6によって固定することで生じる応力、たとえば外装固定用樹脂6の充填時と硬化時などで、磁心5と外装固定用樹脂6との熱膨張係数の差異による応力によって、磁心5の一部に機械的負荷が集中し易い構造となる。そしてその結果として、磁心5の破損が生じる可能性があり、トランスとしての信頼性を低下させる恐れがあるものであった。
【0007】
そこで本発明は、コロナ放電を抑制するとともに、磁心の破損を抑制することでトランスの信頼性を向上させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、貫通孔および複数の分割巻線溝を有するボビンと、前記貫通孔に挿入される棒状コアと、前記分割巻線溝に巻回される一次巻線および二次巻線と、前記ボビンを格納するケースとを備え、前記ケース内においては前記ボビンおよび前記棒状コアの周囲は充填樹脂によって密封され、前記一次巻線は第1一次巻線と第2一次巻線とを直列接続することで形成されるとともに、前記二次巻線は第1二次巻線と第2二次巻線とダイオードとを直列接続することを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、磁心を棒状とすることで樹脂により密閉された状態であっても磁心の破損が生じにくくさせることができ、同時にダイオードの接続によりコロナ放電を抑制することができるため、磁気的特性および絶縁特性の双方においてトランスの信頼性を向上させることを可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例におけるトランスの断面図
【図2】本発明の実施例におけるトランスを使用した電源の第1の回路図
【図3】(a)本発明の実施例におけるトランスを使用した電源回路の大分布容量での一次側の波形図、(b)本発明の実施例におけるトランスを使用した電源回路の小分布容量での一次側の波形図
【図4】本発明の実施例におけるトランスを使用した電源の第2の回路図
【図5】(a)本発明の実施例におけるトランスを使用した電源回路の第1の二次側の波形図、(b)本発明の実施例におけるトランスを使用した電源回路の第2の二次側の波形図、(c)本発明の実施例におけるトランスを使用した電源回路の第3の二次側の波形図、(d)本発明の実施例におけるトランスを使用した電源回路の第4の二次側の波形図
【図6】(a)本発明の実施例におけるトランスを使用した電源回路の仮想接地における第1の波形図、(b)本発明の実施例におけるトランスを使用した電源回路の仮想接地における第2の波形図
【図7】本発明の実施例におけるトランスの第2の断面図
【図8】従来のトランスの断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施例を用いて、本発明について説明する。
【実施例】
【0012】
図1は本発明の実施例におけるトランスを示した断面図であり、ボビン8は貫通孔9を有し、この貫通孔9へは棒状コア10が挿入されており、また、ボビン8の外周側には貫通孔9の軸方向に対して垂直方向に複数の分割壁11を設けることにより、複数の分割巻線溝12を形成している。そして、分割巻線溝12には貫通孔9の軸方向で棒状コア10を二分する位置を中央として、第1一次巻線13と第2一次巻線14とが左右に対称な位置に巻回配置されている。また、第1一次巻線13に対して棒状コア10の一方の端部側に第1二次巻線15が、第2一次巻線14に対して棒状コア10の他方の端部側に第2二次巻線16がそれぞれ巻回配置されている。ここでは、第1二次巻線15と第2二次巻線16ともまた、貫通孔9の軸方向で棒状コア10を二分する位置を中央として左右に対称な位置に巻回配置されている。そして、第1二次巻線15と第2二次巻線16とはダイオード17を介して直列に接続された状態としている。また、棒状コア10を挿入しているボビン8はケース18に格納されたうえで、充填樹脂19によってボビン8の周囲を全面にわたり、外部との接続手段となる部位を除いて密閉された状態としている。特に、ボビン8の貫通孔9の内部においては、ボビン8と棒状コア10とが面において直接に接触することはなく貫通孔9の内周に設けたリブ(図示せず)によって点接触あるいは線接触することで棒状コア10を貫通孔9のほぼ中心となるように位置決めを行い、貫通孔9の内部での大部分においてはボビン8と棒状コア10との間には必ず充填樹脂19が介在することとしている。さらに、ボビン8と棒状コア10との間における充填樹脂19には空気塊のような大きな気泡が存在せず、充填樹脂19のみによって満たされた状態としている。
【0013】
以上の構成により、大きな電位差が生じる第1二次巻線15および第2二次巻線16からなる二次側と棒状コア10との間には必ずボビン8と充填樹脂19とが介在することとなる。これはつまり、二次側と棒状コア10との間に気泡などの大気が存在しない領域となるため、コロナ放電に対して耐圧を高い水準で維持することが可能となるものである。また、この耐圧を維持するために棒状コア10は充填樹脂19により完全に覆われた状態となっているものの、棒状の単純な形状としているためロの字形(図示せず)や日の字形(図示せず)とは異なり、充填樹脂19によって封入されて充填樹脂19が硬化する際に生じる応力が磁路に及ぼす影響を非常に小さく抑制することができる。すなわち、棒状コア10とすることで、磁路の破損をはじめとする特性の劣化を抑制することとなり、結果として棒状コア10を含めてトランス全体としての信頼性を高い水準で維持することができるものである。ここでは磁心を棒状コア10として一例を示しているが、板状であっても構わないものであり、特定の一部に応力が集中してしまうこととなる屈曲部を有さない直線状の単純な形状であればよいものである。
【0014】
また、磁路を棒状コア10として開磁路に近い状態としているために、一次側である第1一次巻線13および第2一次巻線14と、二次側である第1二次巻線15および第2二次巻線16との磁気結合を向上させるには、一次側と二次側の双方の巻回数を多くする必要があるものの、巻回数を多くした場合には特に二次側で線輪間に生じる分布容量が大きな値となる。このため、図2の回路図に示すように二次側は第1二次巻線15と第2二次巻線16とに分割するとともに、第1二次巻線15と第2二次巻線16との間にはダイオード17を接続し、分布容量20、21をダイオード17によって個別のインピーダンス素子として切り離したうえで、それぞれを直列に接続した状態としている。これにより、巻回数の増加に伴う分布容量20、21の増加を抑制することとなる。ここでは回路図上でダイオード17を接続した状態としているが、このダイオードはトランスに組み込む形態であっても、あるいはトランスとは別に基板上(図示せず)などに設けても構わないものであり、ダイオード17を接続することにより分布容量を抑制する機能を有するよう接続すればよいものである。
【0015】
この分布容量20、21の増加を抑制することで、FET22の制御端子22aへ流す電流のデューティー比を小さくすることができ、結果として電力損失を小さくすることができるものである。
【0016】
これは、FET22の動作と第1一次巻線13および第2一次巻線14に生じる電圧とを図3(a)に示す大分布容量における波形図、あるいは図3(b)に示す小分布容量における波形図のように、一次側の電力を供給するために動作することとなる制御信号23のON、OFF切り替えに応じて一次側電圧24a、24bが生じることとなる反応の動作により説明ができる。例えば、分布容量(図示せず)が大きな値となると一次側電圧24aに示すように波高値Vaが、比較のうえで分布容量(図示せず)が小さな値である一次側電圧24bでの波高値Vbの場合に比較して低下し、同時に分布容量(図示せず)が大きな値であるときの波の継続時間Taが、分布容量(図示せず)が小さな値であるときの波の継続時間Tbに比較して長くなる方向となる。
【0017】
ここで、ピーク電圧として高い値の二次側電圧が必要な場合、分布容量(図示せず)が大きな値であると当然ながら波高値Vaの低下分を補うために一次側エネルギーを多く必要とされる。その際は、制御信号23における制御信号ON時間23aを長くするONデューティーの比率を大きくすることが必要となり、一次側へ供給する電力も必然的に大きくすることが必要となる。この一方で、分布容量(図示せず)が小さな値であると一次側電圧24bの波高値Vbが高くなり、二次側のピーク電圧として高い値が必要な場合であっても一次側エネルギーとして蓄える必要量は少なくても構わない状態となる。つまり、ONデューティーの比率が小さなもので済むこととなり、一次側へ供給する電力も必然的に小さなもので済むこととなる。
【0018】
従って、同一の値の一次側電圧24a、24bを得るに当たっても分布容量(図示せず)を小さくすることにより、ONデューティーの比率を小さくすることができる。よって、図2に示すダイオード17を第1二次巻線15と第2二次巻線16との間に設けることで、例えば、二次側に高電圧を必要とする高電圧電源回路においては、高電圧を発生させるにあたっての電力効率を向上させ、損失を抑制できるものとなる。
【0019】
また同時に、ダイオード17を用いて二次側を第1二次巻線15と第2二次巻線16とに分割することで分布容量20、21を低減することで図3に示すように、制御信号23がOFFとなる状態の期間である際に生じる振動波形25の振幅を小さくすることとなる。これは分布容量(図示せず)が小さくなることで共振時のエネルギーもまた小さくなることにより振幅が小さくなるものであり、これにより、あるON状態から一旦OFF状態となり、次にON状態となった制御信号23が発信された際の電力損失を小さくできる可能性を高めることができる。この共振時のエネルギーに伴う突入電流は振動波形25において、制御信号23が発信されたタイミングでの突入電圧値25a、25bによって決定されるもので、振動波形25の振幅が大きければ、突入電圧値25a、25bが必ずしも高くなるものではないものの、通常の電源電位である破線VBに比較して突入電圧が非常に高い値となる機会が存在することとなり、結果として図2に示すFET22での電力損失が大きくなることともなる。
【0020】
またさらに、図2に示すように第1二次巻線15をダイオード17のカソード側に、ダイオード17のアノード側を第2二次巻線16の一端側に、第2二次巻線16の他端側を接地側にそれぞれを接続し、かつ、第1二次巻線15と第2二次巻線16とをほぼ同一の巻回数とした場合、第1二次巻線15および第2二次巻線16と図1に示す棒状コア10との間に発生するコロナ放電を抑制する効果を得ることができる。
【0021】
ここで図4に示すような、ダイオード17を第1二次巻線15と第2二次巻線16との間に、カソード側を第1二次巻線15に、アノード側を第2二次巻線16にそれぞれ接続した際に、二次側におけるA点、B点、C点、D点それぞれに現れる電圧波形を図5(a)〜図5(d)に示す。ここでは先にも述べたように、図4に示す第1二次巻線15と第2二次巻線16とをほぼ同一の巻回数としていることから、二次側全体での出力電圧をVとした場合には、第1二次巻線15および第2二次巻線16からはそれぞれV/2の電圧が出力されることとなる。
【0022】
そこでまず、図5(a)は図4におけるA点の第2二次巻線16での半波整流後の波形を示しているものであり、変動する波形であることから、このV/2相当の電圧が第2二次巻線16と棒状コア10との間に生じる可能性があるコロナ放電の要因となり得ることとなる。
【0023】
次に図5(b)は図4におけるB点の波形を示しているものである。ここでは、ダイオード17のカソード側には接地間に分布容量26が存在するため、B点ではこの分布容量26による平滑動作が行われることとなる。よって図5(b)では半波整流後の波形を平滑したものとなっている。
【0024】
その次に、図5(c)は図4におけるC点の波形を示しているものである。ここでは、B点における波形に第1二次巻線15で生じることとなるV/2相当の電圧が重畳された状態のものとなり、この変動する波形である重畳分のV/2相当の電圧が第1二次巻線15と棒状コア10との間に生じる可能性があるコロナ放電の主たる要因となり得る。ここでは第1二次巻線15に生じる電圧をV/2相当として簡略化して示しているが、実際には第1二次巻線15は接地された状態ではないため第1二次巻線15の概ね半分の巻数の位置に仮想接地27が存在し、その両側にV/4相当の互いに逆相の一対の電圧が発生していることとなる。
【0025】
さらに、図5(d)は図4におけるD点の波形を示しているものである。ここでは、C点での波形が整流ダイオード28で整流されるとともに、平滑キャパシタ29による平滑動作が行われることとなり、図5(d)の波形は変動が小さなものとなる。
【0026】
先にも述べているように、一般にコロナ放電は脈流や交流波形の振幅の大きさに応じて生じることとなるが、図5(a)〜図5(d)の各部位においての波形で示したように、図4に示す接続を行った場合は振幅がV/2の脈流が第1二次巻線15および第2二次巻線16のそれぞれに生じることとなる。このため、二次側を分割することにより、二次側を非分割にした場合の電圧の変動幅でかつ振幅であるVと比較して個々の巻線における電圧の変動幅を小さくすることで、コロナ放電の発生する確率を抑制することとなる。つまり、第1二次巻線15と第2二次巻線16との間にダイオード17を接続することにより、コロナ放電を抑制する効果を有することとなる。
【0027】
ここまでの実施例では、第1二次巻線15と第2二次巻線16とを、ほぼ同一の巻回数として2つに分割した場合について説明したが、コロナ放電の一層の抑制という点において、第1二次巻線15よりも第2二次巻線16の巻回数を多くし、この巻回数比を概ね2対1とすることが望ましい。これは、先に述べた第1二次巻線15における仮想接地27に関係するものである。
【0028】
ここで例えば、第1二次巻線15と第2二次巻線16との巻回数比を2対1とすると、A点における波形の電圧値は図5(a)に示すV/2からV/3へと低下し、図4のC点において重畳される電圧値は図5(c)に示すV/2から2V/3へと上昇することとなる。よって、見かけの上では図4に示す第1二次巻線15においての電圧の変動幅がV/2から2V/3へと大きくなるために、第1二次巻線15と棒状コアとの間でのコロナ放電は起こり易くなることとなる。しかしながら、第1二次巻線15は非接地状態の回路上での接続であることから、その両端に現れる電圧は実際には仮想接地27を境界として、図6(a)、(b)に示すように正側にV/3と負側にV/3とからなる電圧が合成された状態となっている。
【0029】
つまり、図4に示す第1二次巻線15と第2二次巻線16との巻回数比を2対1とすることで、この比率が1対1としていた際には第2二次巻線16でのV/2と、第1二次巻線15での仮想接地27の両側においてV/4であった二次側と棒状コア10との間の電位差をV/3へとすることとなり、二次側全体での電位差を概ね均一として一層のコロナ放電の抑制を行うことができる。
【0030】
以上のように本発明では、図1に示すように開磁路に近い棒状コア10を適用することに伴い分布容量が増大することに起因する電力損失を、ダイオード17を用いることによって抑制し、このダイオード17によって電気回路の側面からコロナ放電を抑制すると同時に、棒状コア10を適用することで可能となった全面封止を実施することでの絶縁の側面からコロナ放電を抑制するものであり、電力損失の抑制と、絶縁と電位均等化との2段階でのコロナ放電の抑制との効果が得られるものである。
【0031】
ここで、棒状コア10を全面封止することでの絶縁を強化することの観点からコロナ放電を一層抑制するために、図7の断面図に示すように棒状コア10と充填樹脂19とケース18とが棒状コア10の歪や応力吸収が容易な関係とすることが望ましい。これは、ケース18における棒状コア10の長手方向に、充填樹脂19を介してあるいは直接に対向させる内周壁30と、この内周壁30の外側に開口した密閉状態ではない空気層31を介して形成した外周壁32とを設けてケース18における棒状コア10の延伸方向については二重構造とする、あるいはこれに加えて、内周壁30の厚さ寸法を外周壁32の厚さ寸法よりも小さく、0.5〜0.8倍程度とするものである。また内周壁30の厚さ寸法については、棒状コア10の延伸方向で対向する部位を非対向部位に比較して局部的に薄くすることで、棒状コア10の寸法の変化やそれに伴う応力を吸収させてもよい。さらに、内周壁30の形状変化のみならず、内周壁30を突き破って棒状コア10を内周壁30と外周壁32との間において露出させることによって応力吸収が容易な状態としてもよい。あるいは、棒状コア10の長手方向端部に寸法の変化を吸収する軟らかい材質の応力吸収対を棒状コア10の表面もしくは棒状コア10と内周壁30との間に配置しても構わない。
【0032】
これにより、屈曲部を有さずにその一部に応力の集中が生じることのない棒状コア10であるが故に、その形状から長手方向に温度変化などによる寸法変化が生じ易くなるものの、ケース18の構造から応力を開放し易い形態となることで貫通孔9内への大量の充填樹脂19を注入および配置させることが可能となるため、絶縁構造の観点からのコロナ放電の一層の抑制が可能となる。そして、仮に内周壁30が破れて棒状コア10が内周壁30からはみ出した状態となっても、棒状コア10は破損させずに磁気特性を劣化させることなく、外周壁32によってトランスの外部と棒状コア10との絶縁は維持できるものでもある。また、内周壁30が破れて棒状コア10が内周壁30からはみ出した状態としても、ボビン8を充填樹脂19によって密閉した状態を維持していればコロナ放電に対する絶縁性の劣化を起こすこともない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明のトランスは、コアの破損を抑制するとともにコロナ放電を抑制する効果を有し、トランスを各種電子機器に適用するにあたって有用である。
【符号の説明】
【0034】
8 ボビン
9 貫通孔
10 棒状コア
11 分割壁
12 分割巻線溝
13 第1一次巻線
14 第2一次巻線
15 第1二次巻線
16 第2二次巻線
17 ダイオード
18 ケース
19 充填樹脂
20、21、26 分布容量
22 FET
22a 制御端子
23 制御信号
23a 制御信号ON時間
24a、24b 一次側電圧
25 振動波形
25a、25b 突入電圧値
27 仮想接地
28 整流ダイオード
29 平滑キャパシタ
30 内周壁
31 空気層
32 外周壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔および複数の分割巻線溝を有するボビンと、
前記貫通孔に挿入される棒状コアと、
前記分割巻線溝に巻回された一次巻線および二次巻線と、
前記ボビンを格納するケースとを備え、
前記ケース内においては前記ボビンおよび前記棒状コアの周囲は充填樹脂によって密封され、
前記一次巻線は第1一次巻線と第2一次巻線とを直列接続することで形成されるとともに、
前記二次巻線は第1二次巻線と第2二次巻線とダイオードとを直列接続することで形成されたトランス。
【請求項2】
第1一次巻線と第2一次巻線とは、
棒状コアの長手方向中央において左右対称に配置するとともに、
第1二次巻線は前記第1一次巻線に対して前記棒状コアの一方の端部側に配置し、
第2二次巻線は前記第2一次巻線に対して前記棒状コアの他方の端部側に配置し、
前記第1二次巻線と第2二次巻線とは前記棒状コアの長手方向において左右対称に配置した
請求項1に記載のトランス。
【請求項3】
第2二次巻線は一端を接地して他端をダイオードのアノード側に接続し、
前記ダイオードのカソード側を第1二次巻線の一端に接続した
請求項2に記載のトランス。
【請求項4】
第1二次巻線と第2二次巻線との巻回数比を2対1とした
請求項3に記載のトランス。
【請求項5】
ケースは、棒状コアの長手方向において内周壁と外周壁とからなる二重構造とした
請求項1に記載のトランス。
【請求項6】
内周壁における棒状コアの長手方向との対向部は、前記内周壁の他の部分に比較して厚みを薄くした請求項5に記載のトランス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−102018(P2013−102018A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244233(P2011−244233)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】