説明

トランス

【課題】耐熱性の高い硬質樹脂を使用する場合であっても放熱性が良好なトランスを提供すること。
【解決手段】一次コイルと、夫々がインサート成形による絶縁被覆によってボビンの機能が付加された、打ち抜き加工品であるバスバーを有する二次コイルであって、一次コイルを挟んで組み付けられた一対の二次コイルと、一次コイルと一対の二次コイルとを電磁結合するコアと、からトランスを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスに関し、例えば、絶縁降圧型DC/DCコンバータで使用される低電圧・大電流出力用の高周波スイッチングトランスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な電子機器においてトランスが使用されている。この種のトランスの具体的構成は、例えば特許文献1に記載されている。特許文献1に記載のトランスは、互いに電磁結合された第1と第2のコイルユニットを備えている。第1のコイルユニットは、ロール状に巻回された薄銅板を絶縁性樹脂に埋め込んで一体成形したものであり、第2のコイルユニットは、コイル状に巻回されたコイル素線を絶縁性樹脂に埋め込んで一体成形したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−35807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、トランスは、車載用途等の絶縁降圧型DC/DCコンバータにも使用されている。絶縁降圧型DC/DCコンバータでは、100〜600Vのバッテリ入力電圧を15V前後の出力電圧へ降圧変換するため、スイッチングトランスの出力側巻線に大電流が流れる。また、絶縁降圧型DC/DCコンバータの駆動周波数は、電子機器の小型化に伴い、高周波化している。そのため、スイッチングトランスの巻線では、表皮効果や近接効果の影響を受けて電流分布に偏りが生じる。そのため、出力側巻線では、大きなジュール損が発生する。従って、コイルユニットに使用する絶縁性樹脂には、耐熱性の高い材料を選択することが望ましい。
【0005】
耐熱性の高い絶縁性樹脂には硬質樹脂が多く、軟質樹脂の中では選択の余地が限られる。ここで、特許文献1において硬質樹脂を使用すると、樹脂が薄銅板間やコイル素線間の微小な隙間に流れない虞がある。また、硬質樹脂が微小な隙間に流れたとしても薄肉厚になりやすいため、温度変化による熱膨張を繰り返すことでクラックし、クラックした樹脂が薄銅板やコイル素線から剥離する虞がある。この場合、薄銅板又はコイル素線と樹脂との隙間(空気層)が熱抵抗となり、放熱性が悪化するという弊害が生じる。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、耐熱性の高い硬質樹脂を使用する場合であっても放熱性が良好なトランスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決する本発明の一形態に係るトランスは、一次コイルと、夫々がインサート成形による絶縁被覆によってボビンの機能が付加された、打ち抜き加工品であるバスバーを有する二次コイルであって、一次コイルを挟んで組み付けられた一対の二次コイルと、一次コイルと一対の二次コイルとを電磁結合するコアとを有することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、打ち抜き加工によって形成されたバスバーをインサート成形するため、従来発生し得た導体間の微小な隙間に硬質樹脂が流れないという問題、及び微小な隙間に流れた硬質樹脂が薄肉厚となり強度の低下によって破断等する問題が有効に避けられる。例えば、耐熱性の高い硬質樹脂を使用して二次コイルを構成した場合であっても、バスバーと樹脂との密着性が担保され、放熱性が良好なトランスが提供される。
【0009】
一対の二次コイルは、金型費削減によるイニシャルコスト削減のため、例えば共通部品からなる。二次コイルを共通部品としたことにより、組立作業の効率が向上し、組立コストが削減される。
【0010】
バスバーは、例えば、二本の出力端子を略リング形状を介して連結させた形状を有しており、該略リング形状の外周側に、押さえ面が付加的に形成されている。押さえ面は、インサート成形による樹脂被覆の際に、バスバーが動くのを防止するための押さえピンが当て付けられる面であるとともに、断面積増加による電流密度の低下により、バスバーの発熱を効果的に抑える役割を有する。
【0011】
一次コイルは、例えばボビンレス空芯コイルであり、二次コイルの絶縁被覆部に、ボビンレス空芯コイルの空芯部に挿通されるボビン形状が形成されていてもよい。この場合、ボビン専用部品が一次側に不要であるため、コスト面・製造面等で有利である。
【0012】
ボビンレス空芯コイルには、例えば、平角線をエッジワイズ巻きすることによって形成された空芯コイル、丸線を一層巻きした空芯コイル等が挙げられる。
【0013】
二次コイルは、トランスを他の構造体に取り付けるための取付部を有した構成としてもよい。他の構造体と対向する取付部の面の少なくとも一部は、他の構造体と面接触する形状に形成されていてもよい。この場合、トランスの発熱を他の構造体に効率的に逃がすことができる。
【0014】
コアは、例えば、複数のコア磁性体が互いに突き合わされることによって閉磁路を形成するコアユニットであり、閉磁路の一部が一次コイル及び一対の二次コイルの中心部に挿通される。
【0015】
上記コアユニットは、例えば、一対の二次コイルを挟持する一対のコア磁性体である。この場合において、コア磁性体と対向する二次コイルの面の少なくとも一部は、コア磁性体に挟持されたとき、コア磁性体と面接触するように形成されていてもよい。バスバーから樹脂被覆に伝達した熱は、コア磁性体に効率的に伝達し、コア磁性体の表面から大気中に効率的に放熱される。
【0016】
コアユニットは、一対のE字型コアであり、互いの中脚部及び互いの両側の外脚部の各々が突き合わされることによって略日の字型の閉磁路を形成し、互いの中脚部からなる磁路が、一次コイル及び一対の二次コイルの中心部に挿通される構成としてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、耐熱性の高い硬質樹脂を使用する場合であっても放熱性が良好なトランスが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係るスイッチングトランスの分解斜視図である。
【図2】本発明の実施形態及び別の実施形態に係るスイッチングトランスの外観斜視図(組立完成図)である。
【図3】本発明の実施形態及び参考例に係るバスバー単体の外観図である。
【図4】別の実施形態に係るスイッチングトランスの分解斜視図である。
【図5】別の実施形態に係る一次側巻線の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るスイッチングトランスについて説明する。
【0020】
図1、図2はそれぞれ、本発明の実施形態に係るスイッチングトランス1の分解斜視図、外観斜視図(組立完成図)である。スイッチングトランス1は、例えばフルブリッジ方式の絶縁降圧型DC/DCコンバータで使用される低電圧・大電流出力(例えば出力電流が50A以上)用の高周波スイッチングトランスである。図1に示されるように、スイッチングトランス1は、一次側コイルユニット10、一対の二次側コイルユニット20A、20B、及びコアユニット30を備えている。
【0021】
一次側コイルユニット10は、一次側絶縁ボビン11と一次側巻線12を備えている。一次側絶縁ボビン11は、絶縁性を持つ合成樹脂からなる樹脂成形品である。一次側絶縁ボビン11は、一次側貫通孔11hが中央に空けられた略円環形状を有しており、方位角方向の断面が略コの字状に形成されている。一次側巻線12は、丸線マグネットワイヤを、一次側絶縁ボビン11の外周面に形成された凹部分(コの字の窪み部分)の面上に巻回したものである。一次側巻線12には出力側と異なり、比較的小さな電流が流れる。
【0022】
二次側コイルユニット20A、20Bはともに、二次側絶縁ボビン21にバスバー22をインサート成形したインサート成形品である。二次側絶縁ボビン21は、PET(Polyethylene terephthalate)、PPS(Polyphenylene sulfide)、PBT(Polybutylene terephthalate)等の絶縁性及び高耐熱性を持つ硬質合成樹脂で成形されている。コスト面を鑑みると、一次側絶縁ボビン11と二次側絶縁ボビン21は、同一材料で成形することが望ましい。また、二次側コイルユニット20Aと20Bは、共通部品からなる。部品を共通化することにより、ボビン用成形型及びバスバー用プレス型がそれぞれ一種類で足りる。これにより、金型費を削減することができるため、イニシャルコストが大幅に抑えられる。なお、本実施形態では、一次側巻線12とバスバー22との結合係数を高めるため、一次側巻線12を一対のバスバー22によって上下で挟み込む構成が採用されている。
【0023】
図3は、バスバー22単体の外観図である。図3(a)、(b)はそれぞれ、本実施形態のバスバー22の外観斜視図、外観上面図である。図3に示されるように、バスバー22は、銅板やアルミ板を打ち抜き加工及び曲げ加工してなる順送プレス品であり、フルブリッジ回路用の二本の出力端子22aが略リング状のリング部22bを介して連結された形状を有している。なお、リング部22bの中央の孔径は、二次側絶縁ボビン21の中央に形成された二次側貫通孔21hの径よりも大きい。バスバー22は、インサート成形により、二本の出力端子22a以外の全てが樹脂被覆される。
【0024】
ここで、バスバー22を二次側絶縁ボビン21にインサートする際、バスバー22が溶融樹脂の射出圧によって動く虞がある。そこで、リング部22bの外周側には、押さえ面22cが形成されている。インサート成形中、成形機に設けられた押さえピンが押さえ面22cを押さえることにより、二次側絶縁ボビン21に対するバスバー22の動きが押さえられる。
【0025】
本実施形態では、一枚の銅板やアルミ板を打ち抜き加工してなるバスバー22が二次側絶縁ボビン21にインサートされているため、従来発生し得た導体間の微小な隙間に硬質樹脂が流れ難いという問題が発生しない。また、微小な隙間に流れて薄肉化した硬質樹脂が、温度変化による熱膨張を繰り返すことでクラックし、薄銅板やコイル素線から剥離するという問題も発生しない。そのため、二次側絶縁ボビン21の材料選択の余地が広がる。本実施形態では、耐熱性の優れた種々の硬質合成樹脂(又は軟質合成樹脂)の中から、製品仕様に合う材料を適宜選択し、二次側絶縁ボビン21の成形に使用することができる。
【0026】
図3(c)に、比較のための参考例の二次側コイルユニットを構成するバスバーの外観上面図を示す。ここでの参考例は、バスバーを二次側絶縁ボビンにインサートするタイプでなく、バスバーを二次側絶縁ボビン内に組み付けて固定し、一次側及びコアに対して絶縁保持するタイプをいう。本実施形態のバスバー22(図3(b)参照)と参考例のバスバー22’(図3(c)参照)とを比較すると、バスバー22は、押さえ面22cが形成されている箇所の断面積(図3(b)のA−A断面)が参考例の断面積(図3(c)のA’−A’断面)よりも広い。すなわち、本実施形態のバスバー22は、参考例のバスバー22’と比べて、電流密度が部分的に低い。そのため、バスバー22ではジュール損が減少し、発熱が抑えられる。
【0027】
また、参考例では、バスバー22’と二次側絶縁ボビンとの隙間(空気層、又は当該隙間を埋める接着層)が熱抵抗となる。そのため、バスバー22’を流れる大電流によって発生した熱が外部に逃げにくいという欠点を存する。一方、本実施形態では、バスバー22は、二本の出力端子22a以外の全てが二次側絶縁ボビン21によって絶縁被覆されており、二次側絶縁ボビン21と密着している。そのため、バスバー22で発生した熱は、二次側絶縁ボビン21に効率的に伝達し、大気に触れる面積が大きい二次側絶縁ボビン21の表面から大気中に効率的に放熱される。また、二次側絶縁ボビン21に、熱伝導率の高い樹脂を適用することにより、放熱性を更に向上させることができる。この場合、スイッチングトランス1を小型化しても十分な放熱性を担保することができる。
【0028】
また、本実施形態では、二次側絶縁ボビン21とバスバー22とを密着させる構成が採用されているため、参考例と異なり、二次側絶縁ボビン21とバスバー22との寸法公差を考慮したクリアランスを設定する必要がない。そのため、二次側コイルユニット20A及び20Bの外形寸法を抑えることができ、スイッチングトランス1全体の小型化設計に有利である。
【0029】
また、本実施形態では、バスバー22が二次側絶縁ボビン21によって絶縁被覆されているため、参考例と異なり、一次側巻線12及びコアとバスバー22との絶縁距離を実質的に考慮する必要がない。一次側絶縁ボビン11と二次側絶縁ボビン21との配置間隔を狭くすることができるため、特に、スイッチングトランス1全体の高さ寸法を抑えるのに有利である。
【0030】
また、本実施形態では、二次側絶縁ボビン21とバスバー22とを一体化したため、組立工程上、部品点数が参考例に対して削減される。そのため、組立性が向上する。
【0031】
図1に示されるように、二次側絶縁ボビン21は、一次側コイルユニット10が収容される収容部21aを有している。二次側絶縁ボビン21は、収容部21aを構成する円弧状の側壁部を有している。側壁部の半分は、外周側に段差面を持つ外周側段差壁部21bとなっており、側壁部の残り半分は、内周側に段差面を持つ内周側段差壁部21cとなっている。
【0032】
対向配置された一対の二次側コイルユニット20Aと20Bを、一次側コイルユニット10を上下方向(図1の一点鎖線方向)から挟み込むようにして組み付けると、二次側コイルユニット20Aの二次側絶縁ボビン21の内周側段差壁部21cの段差と、二次側コイルユニット20Bの二次側絶縁ボビン21の外周側段差壁部21bの段差とが嵌り合うとともに、二次側コイルユニット20Aの二次側絶縁ボビン21の外周側段差壁部21bの段差と、二次側コイルユニット20Bの二次側絶縁ボビン21の内周側段差壁部21cの段差とが嵌り合う。このように互いの段差を嵌合させると、二次側コイルユニット20Aと20Bは、バスバー22の出力端子22aが同じ方向に向いた状態で、一次側コイルユニット10と同心に配置される。これに伴い、一次側絶縁ボビン11の一次側貫通孔11hと、二次側コイルユニット20A及び20Bの各二次側絶縁ボビン21の二次側貫通孔21hも同心となる。バスバー22と一次側巻線12(及びコアユニット30)との絶縁は、二次側絶縁ボビン21によって保障される。なお、外周側段差壁部21bと内周側段差壁部21cとの切り替わり部分は、二次側コイルユニット20Aと20Bとの周方向への相対的な動きを規制し、ストッパとして機能する。
【0033】
二次側コイルユニット20Aと20Bとを各段差を嵌合させて組み付けたときの、二つの収容部21aによって規定される略閉空間を「収容空間」と記す。収容空間を規定する収容部21aの側壁部内周面は、一次側絶縁ボビン11のフランジ外周面(コの字の突出部分の面)と径が略等しい。また、収容空間の高さは、一次側コイルユニット10(一次側絶縁ボビン11)の高さと略等しい。そのため、二次側コイルユニット20Aと20Bとを、一次側コイルユニット10を上下方向から挟み込むようにして組み付けると、一次側コイルユニット10は、収容空間内で各方向への動きが規制され、固定状態となる。
【0034】
コアユニット30は、一次側巻線12とバスバー22とを電磁結合する磁気回路であり、一対のE型コア31A、31Bを備えている。E型コア31Aと31Bは共通部品からなるため、金型が共通である。この場合、金型費が抑えられるため、イニシャルコスト面で有利である。また、E型コア31A及び31Bには、例えばフェライトコアが使用されている。フェライトコアは、電磁鋼板や圧粉磁心等の別の軟磁性材に代えてもよい。
【0035】
E型コア31A、31Bの中央には、略円柱状の中脚32が形成されている。また、E型コア31A、31Bは、中脚32の中心軸を挟んで軸対称に形成された一対の外脚33x、33yを有している。E型コア31Aと31Bは、互いの中脚32の中脚端面32a同士、互いの外脚33xの外脚端面33a同士、互いの外脚33yの外脚端面33a同士が突き合わされたうえで固定され、略日の字型の閉磁路を構成する。
【0036】
E型コア31Aと31Bとを突き合わせて固定することにより、スイッチングトランス1が完成する(図2(a)参照)。
【0037】
中脚32の外径は、同心状に配置された、一次側絶縁ボビン11の一次側貫通孔11h、及び二つの二次側絶縁ボビン21の二次側貫通孔21hと略等しい。そのため、E型コア31A及び31Bの中脚32は、一次側貫通孔11h及び二つの二次側貫通孔21hに挿通されるとともに、一次側コイルユニット10、二次側コイルユニット20A、及び20Bに対して固定状態となる。
【0038】
E型コア31A、31Bは、中脚32と外脚33x及び33yとを連結する連結面34を有している。E型コア31Aと31Bとを突き合わせて固定したときの、二つの連結面34間の距離は、一次側コイルユニット10を挟み込んで組み付けられた二次側コイルユニット20Aと20Bとの高さの合計(二つの二次側絶縁ボビン21の外底面21d間の距離)と略等しい。そのため、E型コア31Aと31Bとを突き合わせて固定すると、二次側コイルユニット20A及び20Bがその間に挟持されることとなる。説明を加えると、E型コア31Aの連結面34と、二次側コイルユニット20Aの二次側絶縁ボビン21の外底面21dとが面接触するとともに、E型コア31Bの連結面34と、二次側コイルユニット20Bの二次側絶縁ボビン21の外底面21dとが面接触する。二次側コイルユニットとE型コアとを面接触させることにより、その間の空気層(熱抵抗)が少なくなる。そのため、バスバー22から二次側絶縁ボビン21へ伝達した熱は、外底面21dから連結面34に効率的に伝達し、E型コア31A又は31Bの表面から大気中に効率的に放熱される。なお、二次側コイルユニット20Aに対するE型コア31Aの取付位置、及び二次側コイルユニット20Bに対するE型コア31Bの取付位置は、外底面21dに設けられたガイドリブ21eによって簡易に決まる。
【0039】
また、外脚33x、33yの各外脚側面33bは、中脚32の軸を中心とする曲率半径を持つ曲面である。外脚側面33bの曲率半径は、二次側コイルユニット20Aと20Bとを各段差を嵌合させて組み付けたときの側壁部外周面の半径と略等しい。そのため、側壁部外周面は、各外脚側面33bと面接触する。これにより、バスバー22から二次側絶縁ボビン21へ伝達した熱は、側壁部外周面から外脚側面33bに効率的に伝達し、E型コア31A又は31Bの表面から大気中に効率的に放熱される。
【0040】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、特許請求の範囲の記載により表現された技術的思想の範囲内で任意に変更することができる。
【0041】
図2(b)は、別の実施形態に係るスイッチングトランス1zの外観斜視図(組立完成図)である。スイッチングトランス1zは、下方の二次側絶縁ボビン21に取付リブ21fが設けられている点を除き、図2(a)に示されるスイッチングトランス1と同じ構成を有している。そのため、図2(b)中、図2(a)に示されるスイッチングトランス1と同じ構成の符号は省略する。
【0042】
冷却板など、スイッチングトランス1zとは別の部品・装置等(以下、「構造体」と記す。)に取付リブ21fをねじ止めすると、スイッチングトランス1zがその構造体に固定される。取付リブ21fの裏面(図2(b)中不可視)は、構造体と面接触するように形成されている。これにより、バスバー22から二次側絶縁ボビン21へ伝達した熱が、取付リブ21fの裏面から構造体に効率的に伝達するため、スイッチングトランス1zの放熱性が更に向上する。なお、金型費を抑えるため、上下の二次側絶縁ボビン21を共通部品としてもよい。この場合、上方の二次側絶縁ボビン21にも取付リブ21fが設けられることとなる。
【0043】
図4は、更に別の実施形態に係るスイッチングトランス1yの分解斜視図である。図4においても、図2(b)と同様に、図2(a)に示されるスイッチングトランス1と同じ構成の符号は省略する。
【0044】
図4に示されるように、スイッチングトランス1yは、一次側コイルユニット10に代えて、幅広の平角線マグネットワイヤをエッジワイズ工法によって数ターンを巻線した、ボビンレス空芯コイルの一種である一次側巻線12yを備えている。また、二次側コイルユニット20Ayと20Byが備える一対の二次側絶縁ボビン21yに、中空円筒部21gが設けられている。中空円筒部21gの中空部分は、二次側貫通孔21hに相当する。中空円筒部21gの外径は、一次側巻線12yの空芯部の径と略等しい。そのため、二次側コイルユニット20Ayと20Byとを、一次側巻線12yを上下方向から挟み込むようにして組み付けると、上下一対の中空円筒部21gが一次側巻線12yの空芯部に挿通されるとともに、一次側巻線12yに対して固定状態となる。すなわち、上下一対の中空円筒部21gは、一次側巻線12yを保持するボビンとして機能する。
【0045】
図4に示されるスイッチングトランス1yにおいては、二次側絶縁ボビン21yに一次用のボビン機能を付加したことにより、一次側を、平角線を使用した巻線単独の構成とすることができた。そのため、一次側の高さ寸法が抑えられる。すなわち、図4に示されるスイッチングトランス1yにおいては、装置全体の高さ寸法を抑えるのに有利である。
【0046】
一次側巻線12yは、図5に示される一次側巻線12xに置き換えてもよい。一次側巻線12xは、太線の丸線マグネットワイヤを一層巻きしたものである。安価な丸線を使用することにより、製品単価を抑えることができる。
【符号の説明】
【0047】
1、1y、1z スイッチングトランス
10 一次側コイルユニット
11 一次側絶縁ボビン
11h 一次側貫通孔
12、12x、12y 一次側巻線
20A、20Ay、20B、20By 二次側コイルユニット
21、21y 二次側絶縁ボビン
21a 収容部
21b 外周側段差壁部
21c 内周側段差壁部
21d 外底面
21e ガイドリブ
21f 取付リブ
21g 中空円筒部
21h 二次側貫通孔
22、22’ バスバー
22a 出力端子
22b リング部
22c 押さえ面
30 コアユニット
31A、31B E型コア
32 中脚
32a 中脚端面
33x、33y 外脚
33a 外脚端面
33b 外脚側面
34 連結面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次コイルと、
夫々が、インサート成形による絶縁被覆によってボビンの機能が付加された、打ち抜き加工品であるバスバーを有する、前記一次コイルを挟んで組み付けられた一対の二次コイルと、
前記一次コイルと前記一対の二次コイルとを電磁結合するコアと、
を有することを特徴とする、トランス。
【請求項2】
前記一対の二次コイルは、共通部品からなることを特徴とする、請求項1に記載のトランス。
【請求項3】
前記バスバーは、二本の出力端子を略リング形状を介して連結させた形状を有し、該略リング形状の外周側に、インサート成形による樹脂被覆の際に、該バスバーが動くのを防止するための押さえピンを当て付ける押さえ面が付加されていることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のトランス。
【請求項4】
前記一次コイルは、ボビンレス空芯コイルであり、
前記二次コイルの絶縁被覆部に、前記ボビンレス空芯コイルの空芯部に挿通されるボビン形状が形成されていることを特徴とする、請求項1から請求項3の何れか一項に記載のトランス。
【請求項5】
前記ボビンレス空芯コイルは、平角線をエッジワイズ巻きすることによって形成された空芯コイル、又は丸線を一層巻きした空芯コイルであることを特徴とする、請求項4に記載のトランス。
【請求項6】
前記二次コイルは、前記トランスを他の構造体に取り付けるための取付部を有し、
前記他の構造体と対向する前記取付部の面の少なくとも一部は、該他の構造体と面接触する形状に形成されていることを特徴とする、請求項1から請求項5の何れか一項に記載のトランス。
【請求項7】
前記コアは、複数のコア磁性体が互いに突き合わされることによって閉磁路を形成するコアユニットであり、該閉磁路の一部が前記一次コイル及び前記一対の二次コイルの中心部に挿通されることを特徴とする、請求項1から請求項6の何れか一項に記載のトランス。
【請求項8】
前記コアユニットは、前記一対の二次コイルを挟持する一対のコア磁性体であり、
前記コア磁性体と対向する前記二次コイルの面の少なくとも一部は、該コア磁性体に挟持されたとき、該コア磁性体と面接触するように形成されていることを特徴とする、請求項7に記載のトランス。
【請求項9】
前記コアユニットは、一対のE字型コアであり、互いの中脚部及び互いの両側の外脚部の各々が突き合わされることによって略日の字型の閉磁路を形成し、
前記互いの中脚部からなる磁路が、前記一次コイル及び前記一対の二次コイルの中心部に挿通されることを特徴とする、請求項7又は請求項8に記載のトランス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−89787(P2013−89787A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229406(P2011−229406)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)