説明

トリガコイル

【課題】小型化、高性能化を図ることができるトリガコイルを提供することにある。
【解決手段】コイル16が巻装される軸部12、該軸部12の両端部に設けられた鍔部13,14とからなるコアをフェライトによって一体に形成したフェライトコア11と、フェライトコア11の軸部12に巻装された1次巻線及び2次巻線とからなるコイル16と、フェライトコア11の鍔部13,14に設けられたコイル引き出し溝13a,14aと、フェライトコア11の鍔部13,14に設けられ1次巻線及び2次巻線のコイル16がコイル引き出し溝13a,14aを通して接続される電極15a〜15cと、フェライトコア11の軸部12に巻装されたコイル12の外周囲に形成した樹脂層19とを具備したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、デジタルカメラ、携帯電話等の携帯機器のストロボフラッシュ回路に使用されるトリガコイルに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ、携帯電話等の携帯機器のストロボフラッシュ回路に使用されているトリガコイルは、例えば、特許文献1で知られている。このトリガコイルは、横方向に長い棒状のコアの両端部に一対のボビンが設けられている。これらボビンには基板実装端子部、巻線処理端子部を有する端子がインサートされている。そして、コアに巻装された1次巻線及び2次巻線とからなるコイルの巻き始め端末及び巻き終り端末が、巻線処理端子部に接続された構成である。なお、特許文献1のトリガコイルの1次巻線は6〜12Tで、2次巻線は900〜1200Tである。さらに、コイルの外周囲には外装テープが貼り付けられており、その外周面は丸みを帯びている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−332157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のトリガコイルは、横方向に長い棒状のコアの両端部に一対のボビンが設けられている。また、放電を避けるため、両端子間隔をある程度保つ必要があり、横寸法が大きく、トリガコイル全体が大型化している。その上、必要な高電圧を得るために、巻線ターン数を多くする必要があり、工数が掛かり、製造コストは増大するという問題があった。
【0005】
本発明は、前記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、トリガコイル全体の小型化を図るとともに、高性能化、コストダウンを図るできるトリガコイルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記目的を解決するために、請求項1は、コイルが巻装される軸部、該軸部の両端部に設けられた鍔部とからなるコアをフェライトによって一体に形成したフェライトコアと、前記フェライトコアの軸部に巻装された1次巻線及び2次巻線とからなるコイルと、前記フェライトコアの鍔部に設けられたコイル引き出し溝と、前記フェライトコアの鍔部に設けられ前記1次巻線及び2次巻線のコイルが前記コイル引き出し溝を通して接続される電極と、前記フェライトコアの軸部に巻装されたコイルの外周囲に形成した樹脂層とを具備したことを特徴とするトリガコイルにある。
【0007】
請求項2は、請求項1の前記樹脂層は、前記鍔部に設けられたコイル引き出し溝にも充填され、鍔部を樹脂層で補強していることを特徴とする。
【0008】
請求項3は、請求項1の前記電極は、前記鍔部の外側面に少なくとも合計3個設けられ、前記1次巻線及び2次巻線から引き出されたコイルが前記コイル引き出し溝を通して鍔部の外側面に導かれて前記電極に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、トリガコイルの小型化、高性能化を図ることができ、デジタルカメラ、携帯電話等の小型・軽量化が望まれる携帯機器の好適である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1のトリガコイル用フェライトコアを示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は下面図、(d)は側面図、(e)はA−A線に沿う断面図。
【図2】同実施例1のトリガコイル用フェライトコアの斜視図。
【図3】同実施例1のトリガコイルを示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は下面図、(d)は左側面図、(e)は右側面図、(f)はB−B線に沿う断面図、(g)はコイルの結線図。
【図4】同実施例1のトリガコイルの発光性能評価回路図。
【図5】同実施例1のトリガコイルの最低発光電圧特性図。
【図6】本発明の実施例2のトリガコイルを示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は下面図、(d)は左側面図、(e)は右側面図。
【図7】本発明の実施例3のトリガコイルを示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は下面図、(d)は左側面図、(e)は右側面図。
【図8】同実施例3の樹脂成形型を示し、(a)は反転した樹脂成形型にトリガコイル半製品を収納する過程を示す縦断正面図、(b)は樹脂成形型にトリガコイル半製品を収納した状態を示す縦断正面図、(c)は同じく下面図。
【図9】同実施例3の樹脂成形型を示し、(a)は樹脂成形型にトリガコイル半製品を収納した状態の縦断正面図、(b)は樹脂成形型にトリガコイル半製品を収納した状態の上面図、(c)は同じく下面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0012】
図1〜図3に示すように、本発明のトリガコイル用のフェライトコア11は、コイルが巻装される軸部12と、この軸部12の両端部に設けられた鍔部13,14とからなり、フェライトによって一体に形成されている。軸部12は四角柱(例えば1.2mm×1.2mm)の四角部を斜めに面取りした多角形状である。鍔部13は矩形状(例えば3.0mm×3.0mm)であり、両側部には対称的にコイル引き出し溝13aが設けられている。コイル引き出し溝13aは軸部12の側面まで達する深さであり、外側に向かって拡幅するテーパ形状をなしている。
【0013】
鍔部14は矩形状(例えば3.0mm×4.5mm)であり、両側部にはコイル引き出し溝13aと上下に対向するように対称的にコイル引き出し溝14aが設けられている。コイル引き出し溝14aも軸部12の側面まで達する深さであり、外側に向かって拡幅するテーパ形状をなしている。したがって、コイル引き出し溝13aと14aは同一寸法で、同一形状で、上下方向に対向している。
【0014】
鍔部14の外側面における長手方向の一端部の両側には第1の電極15a、第3の電極15cが設けられている。鍔部14の外側面における長手方向の他端部の中央には第2の電極15bが設けられている。第1〜第3の電極15a〜15cの肉厚は、例えば0.015mmの薄膜である。そして、第1〜第3の電極15a〜15cを含めたフェライトコア11の高さ寸法は例えば2.0mmである。
【0015】
軸部12には1次巻線L1(4〜10Tの範囲)及び2次巻線L2(500〜800Tの範囲)とからなるコイル16が巻装されている。1次巻線L1から引き出されたコイル16の一方の引き出し線17aはコイル引き出し溝14aを通して鍔部14の外側に導き、第1の電極15aに圧接または半田付けされている。1次巻線L1から引き出されたコイル16の他方の引き出し線17bはコイル引き出し溝14aを通して鍔部14の外側に導き、第2の電極15bに圧接または半田付けされている。
【0016】
2次巻線L2から引き出されたコイル16の一方の引き出し線18aはコイル引き出し溝14aを通して鍔部14の外側に導き、第2の電極15bに圧接または半田付けされている。2次巻線L2から引き出されたコイル16の他方の引き出し線18bはコイル引き出し溝14aを通して鍔部14の外側に導き、第3の電極15cに圧接または半田付けされている。
【0017】
さらに、軸部12に巻装されたコイル16の外周囲にはエポキシ樹脂にて真空中(100Pa以下)で含浸させた後、熱硬化させることにより樹脂層19が形成されている。樹脂層19の外側面19aは、鍔部13の外周面と略同一面であり、実施例1のトリガコイル20の全体として4.5×3.0×2.0mm(体積27mm)であり、背景技術で述べた従来のトリガコイルの体積比43%の小型化が達成できた。
【0018】
トリガコイル20の性能は、発光回路における入力電圧によって決定される。図4は発光性能評価回路を示し、同一回路で、従来と本発明の実施例1におけるトリガコイル20を実装して評価した結果を図5に示す。図4に示すように、トリガコイル20の1次巻線L1の一端にはトリガーコンデンサ(0.047μF/セラミックコンデンサ)21が、他端にはスイッチング素子22が接続されている。トリガコイル20の2次巻線L2の両端には負荷としてのキセノン管(ガラス長16.5mm、管径1.8mmφ)23が接続されている。なお、24aは高圧端子、24bはゲート端子である。
【0019】
トリガコイル20の性能は、入力電圧を徐々に上げたときのキセノン管23の発光しやすさを評価するものであり、50回の発光動作に対して、50回の発光が確認できる最低発光電圧を称し、その最低発光電圧は低ければ低いほど、トリガコイル20が高性能であると言える。図5から明らかのように、本発明の実施例1におけるトリガコイル20は実線で示すように、190Vであるのに対し、従来のトリガコイルは、破線で示すように、200Vになっている。これは、本発明のトリガコイル20は、全体をフェライトコア11とすることにより、磁気抵抗が少なくなり、トリガコイル20の性能が向上したと考えられる。
【実施例2】
【0020】
図6は実施例2を示し、実施例1と同一構成部分は同一番号を付して説明を省略する。本実施例は、コイル16の外周囲に上部の鍔部13の外周縁から下部の鍔部14の外周縁に向かって漸次肉厚となるテーパ面40aを有する樹脂層40を形成したものである。このように形成することによって鍔部13,14を補強し、強度アップを図ることができる。
【実施例3】
【0021】
図7〜図9は実施例3を示し、実施例1と同一構成部分は同一番号を付して説明を省略する。本実施例は、フェライトコア11の軸部12に対してコイル16を巻装し、各コイル引出し線17a,17b,18a,18bを第1〜第3の電極15a〜15cに接続した後、そのトリガコイル半製品39のコイル16の外周囲に樹脂層19を成形する成形方法及びその装置を示す。
【0022】
図8及び図9に示す、成形型41は割り型であって、下型42と、この下型42上に設けられたシリコン等のゴム系材料からなる樹脂成形型43とから構成されている。樹脂成形型43はトリガコイル半製品39を収納可能な矩形状の空洞部44が上下貫通して設けられている。すなわち、空洞部44は平面視の開口寸法が、フェライトコア11の鍔部14の外周が密に嵌合するサイズであり、その長手方向の両端部における内側面の中央部には円弧状の突条部45が対称的に設けられている。樹脂成形型43の下部には突条部45を切欠(取除いた)した切欠部46が設けられ、この切欠部46にはフェライトコア11の鍔部14が嵌合するようになっている。したがって、樹脂成形型43を反転させ、その空洞部44にトリガコイル半製品39を収納すると、フェライトコア11の鍔部14が切欠部46に嵌合し、突条部45でトリガコイル半製品39が水平に支持される。
【0023】
樹脂成形型43を正立させると、フェライトコア11の鍔部14は下型42で支持される。また、コイル19の両側部に突条部45が離間対向し、両者間には隙間47が形成される。また、鍔部14に設けられた第1〜第3の電極15a〜15cは樹脂成形型43の下側(下型42側)に露出した状態となる。
【0024】
次に、樹脂成形型43の上部から隙間47にエポキシ樹脂を注入し、真空中(100Pa以下)で含浸させた後、熱硬化させることにより樹脂層48が形成される。このとき、トリガコイル半製品39の上部に隙間47が設けられるために、真空含浸時のエア抜きが容易となる。また、樹脂層48によって鍔部13,14を補強し、強度アップを図ることができ、さらに、突条部45の存在によって樹脂層48の外側面に円弧状溝49が形成される。
【0025】
樹脂成形型43を正立させると、フェライトコア11の鍔部14は下型42で支持されるため、第1〜第3の電極15a〜15cは下型42でマスキングされる。したがって、第1〜第3の電極15a〜15cが隙間47に注入したエポキシ樹脂が付着することはない。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のトリガコイルは、デジタルカメラ、携帯電話等の携帯機器のストロボフラッシュ回路に使用できる。
【符号の説明】
【0027】
11…フェライトコア、12…軸部、13,14…鍔部、13a,14a…コイル引き出し溝、15a〜15c…電極、16…コイル、19…樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルが巻装される軸部、該軸部の両端部に設けられた鍔部とからなるコアをフェライトによって一体に形成したフェライトコアと、
前記フェライトコアの軸部に巻装された1次巻線及び2次巻線とからなるコイルと、
前記フェライトコアの鍔部に設けられたコイル引き出し溝と、
前記フェライトコアの鍔部に設けられ前記1次巻線及び2次巻線のコイルが前記コイル引き出し溝を通して接続される電極と、
前記フェライトコアの軸部に巻装されたコイルの外周囲に形成した樹脂層と、
を具備したことを特徴とするトリガコイル。
【請求項2】
前記樹脂層は、前記鍔部に設けられたコイル引き出し溝にも充填され、鍔部を樹脂層で補強していることを特徴とする請求項1に記載のトリガコイル。
【請求項3】
前記電極は、前記鍔部の外側面に少なくとも合計3個設けられ、前記1次巻線及び2次巻線から引き出されたコイルが前記コイル引き出し溝を通して鍔部の外側面に導かれて前記電極に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のトリガコイル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−251564(P2010−251564A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100165(P2009−100165)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(592074441)東京コイルエンジニアリング株式会社 (62)