説明

トリクロロシラン製造装置

【課題】 高い熱効率で供給ガスを加熱するとともに、熱効率を損なうことなく装置の大型化を図ることができ、大量生産を可能にする。
【解決手段】 反応容器1の内部を加熱する加熱機構2と、ガス供給部3と、ガス排出部4とを備え、加熱機構2は、反応容器1の内底部に設けられ外部の電源に接続された電極部31と、電極部31に保持され反応容器2内に上下方向に沿って立設されたヒータ部32とからなり、反応容器1内には、反応容器1の内部空間をヒータ部32が配置される反応室23と、その下方で電極部31が配置されるガス導入室21とに区画するとともに反応室23とガス導入室21とを複数の貫通孔19により連通状態としたガス分散板17が設けられ、ガス供給部3は、ガス導入室21を経由して反応室23に原料ガスを供給するように接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラクロロシランをトリクロロシランに転換するトリクロロシラン製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン(Si:珪素)を製造するための原料として使用されるトリクロロシラン(SiHCl)は、テトラクロロシラン(SiCl:四塩化珪素)を水素と反応させて転換することで製造することができる。
すなわち、シリコンは、以下の反応式(1)(2)によるトリクロロシランの還元反応と熱分解反応で生成され、トリクロロシランは、以下の反応式(3)による転換反応で生成される。
SiHCl+H → Si+3HCl ・・・(1)
4SiHCl → Si+3SiCl+2H ・・・(2)
SiCl+H → SiHCl+HCl ・・・(3)
【0003】
このトリクロロシランを製造する装置として、例えば特許文献1には、反応室が、同心配置の2つの管によって形成された外室と内室とをもった二重室設計とされ、この反応室の外側の周りに発熱体を配置した反応容器が提案されている。この反応容器では、炭素等で形成されたヒータ部である発熱体が通電により発熱し、反応室内を外側から加熱することで、反応室内のガスを反応させている。
一方、特許文献2には、反応容器を複数の同心状の円筒壁と、これら円筒壁の間の小空間の上下を閉塞する円板とにより構成するとともに、各小空間を連続的に連通させて反応室とし、最も内周位置の円筒壁の内側に発熱体を設けたトリクロロシラン製造装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3781439号公報
【特許文献2】特開2008−133170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1記載の構造であると、反応室の外部に配した発熱体により反応室内を加熱するが、この場合、発熱体からは半径方向内方だけでなく半径方向外方にも輻射熱が放射されるため、熱効率が低いという不都合がある。
【0006】
一方、特許文献2記載の構造の場合、反応容器の中央位置に発熱体を設けたことにより、半径方向外方に放射される輻射熱の全体を反応室内のガスに加えることができ、特許文献1記載のものより高い熱効率で加熱することができる。ただし、発熱体の外側を囲むように反応室が設けられるため、生産量の増大のために装置を大型化して反応室の外径を大きくしようとすると、その外周部は発熱体から遠くなるため、大型化への対応には限界がある。
【0007】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、さらに高い熱効率で供給ガスを加熱するとともに、熱効率を損なうことなく装置の大型化を図ることができ、大量生産を可能にするトリクロロシラン製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のトリクロロシラン製造装置は、テトラクロロシランと水素とを含む原料ガスが内部に供給されてトリクロロシランと塩化水素とを含む反応生成ガスが生成される反応容器と、前記反応容器の内部を加熱する加熱機構と、前記反応容器内に前記原料ガスを供給するガス供給部と、前記反応容器から前記反応生成ガスを外部に排出するガス排出部とを備えたトリクロロシラン製造装置であって、前記加熱機構は、前記反応容器の内底部に設けられ外部の電源に接続された電極部と、該電極部に保持され反応容器内に上下方向に沿って立設されたヒータ部とからなり、前記反応容器内には、該反応容器の内部空間を前記ヒータ部が配置される反応室と、その下方で前記電極部が配置されるガス導入室とに区画するとともに前記反応室とガス導入室とを複数の貫通孔により連通状態としたガス分散板が設けられ、前記ガス供給部は、前記ガス導入室を経由して前記反応室に原料ガスを供給するように接続されていることを特徴とする。
【0009】
ヒータ部を反応容器の中に設置したことにより、ヒータ部の熱がその周囲に流通する原料ガスに直接伝わることになり、原料ガスを高い熱効率で加熱することができる。また、反応容器内にヒータ部が設置されるので、反応室を大型化しても、その必要個所にヒータ部を設置することができ、熱効率を損なうことがない。
この場合、電極部も反応容器内に設置されることから、この電極部とヒータ部との接続面の周辺が原料ガスに晒されることになる。このため、その接続面の導電部と高温の原料ガスとが反応すると不純物が発生するおそれがあるが、ガス分散板によってガス導入室と反応室とを区画し、そのガス導入室に電極部を配置したことから、ガス供給部から供給される比較的低温の原料ガスが電極部に接触するとともに、電極部が高温の反応室から遮蔽されることになり、不純物の発生を防止することができる。
【0010】
本発明のトリクロロシラン製造装置において、反応容器を構成する部材、電極部及びヒータ部が、カーボンにより形成され、該カーボンの表面が、炭化珪素によりコーティングされているとよい。
すなわち、トリクロロシラン製造装置では、炭化珪素(SiC)でコーティングされたカーボンで反応容器、電極部及びヒータ部が構成されているので、カーボンと原料ガス及び反応生成ガス中の水素、クロロシラン及び塩化水素(HCl)とが反応してメタン、メチルクロロシラン、炭化珪素等が生成されて不純物となることを防ぎ、純度の高いトリクロロシランを得ることができる。
この場合、電極部とヒータ部との接合面は導電部であるため、低抵抗であることが必要となり、高抵抗材料である炭化珪素をコーティングすることができないが、前述したように、その接合面付近には比較的低温の原料ガスが供給されるので、不純物の発生を有効に防止することができる。多数のヒータ部を設置する場合に、電極部との接合面も多数配置されることになるため、特に有効である。
【0011】
この場合、前記ガス導入室のガス供給口は、前記電極部と前記ヒータ部との接合面よりも上方位置に配置されているとよい。
ガス導入室内においては、原料ガスが電極部とヒータ部との接合面よりも上方位置から導入され、その大部分が接合面を避けるようにガス分散板の貫通孔に向けて流れることになり、不純物の混入防止効果をより高めることができる。
【0012】
本発明の多結晶シリコン製造装置において、前記ヒータ部は、前記ガス分散板の貫通孔内に、その内周縁と間隔を開けて挿入されている構成とするとよい。
ガス導入室に供給された原料ガスが反応室内に導入される際に、ヒータ部を挿入状態としているガス分散板の貫通孔を通ることにより、上下方向に沿って立設されたヒータ部に対して上方に向けて流通する原料ガスがいわゆるショートパス状態とならずに、確実にヒータ部に接触するので、加熱効率がよい。
【0013】
本発明のトリクロロシラン製造装置において、前記反応容器の外側に、該反応容器を囲む収納容器が設けられるとともに、該収納容器と前記反応容器との間に、前記ガス供給部から供給される原料ガスを前記ガス導入室に案内しつつ前記反応容器の外面からの熱により予熱するガス予熱室が形成されているとよい。
反応容器が高温となるので、その外面から放出される熱を有効利用するのである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るトリクロロシラン製造装置によれば、ヒータ部を反応容器の中に設置したことにより、ヒータ部の熱が原料ガスに直接伝わり、原料ガスを高い熱効率で加熱して、トリクロロシランへの転換率をより向上させることができる。しかも、反応室を大型化しても、必要個所にヒータ部を設置することができ、熱効率を損なうことなく装置の大型化を図ることができ、大量生産を可能にする。また、ガス分散板によってガス導入室と反応室とを区画し、そのガス導入室に電極部を配置したことから、ガス供給部から供給される比較的低温の原料ガスが電極部に接触することになるとともに、電極部が高温の反応室から遮蔽されるので、電極部とヒータ部との接合面からの不純物の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るトリクロロシラン製造装置の一実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1のA−A線に沿う矢視断面図である。
【図3】図1の加熱機構の一部を拡大して示す(a)が正面図、(b)が縦断面図である。
【図4】本発明に係るトリクロロシラン製造装置の他の実施形態を示す縦断面図である。
【図5】図4のB−B線に沿う矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るトリクロロシラン製造装置の一実施形態を図面を参照しながら説明する。
本実施形態のトリクロロシラン製造装置は、図1に示すように、テトラクロロシランと水素とを含む原料ガスが内部に供給されて転換反応によりトリクロロシランと塩化水素とを含む反応生成ガスが生成される反応容器1と、反応容器1の内部を加熱する加熱機構2と、反応容器1内に原料ガスを供給するガス供給部3と、反応容器1から反応生成ガスを外部に排出するガス排出部4と、反応容器1の外側を覆う収納容器5とを備えている。
【0017】
反応容器1は、円板状の底板部11と、この底板部11の上に立設された円筒状の外側筒壁12と、この外側筒壁12の上端を閉塞する天板部13とにより構成されており、中央部に、外側筒壁12より高さの低い内側筒壁14が同心状に設けられている。また、外側筒壁12の下端部にガス導入口15が周方向に間隔をおいて複数形成されている。一方、内側筒壁14の上端部は天板部13との間に隙間が開けられ、その隙間から内側筒壁14の内部空間が連通状態とされており、その内側筒壁14の下端に、底板部11を貫通するガス導出口16が形成されている。そして、外側筒壁12のガス導入口15から導入された原料ガスが外側筒壁12と内側筒壁14との間を流通し、内側筒壁14と天板部13との間から内側筒壁14の内部空間を通ってガス導出口16から導出されるようになっている。
【0018】
また、外側筒壁12と内側筒壁14との間には、その下端部と上端部とに、それぞれ底板部11及び天板部13との間に間隔を開けてガス分散板17,18が水平に設けられている。これらガス分散板17,18は、外側筒壁12と内側筒壁14との間のリング状空間を上下に仕切るリング板状に形成されるとともに、板厚方向に多数の貫通孔19,20が形成されており、その貫通孔19,20を介して両筒壁12,14の間のリング状空間を上下に連通した状態としている。この場合、下側のガス分散板17は、外側筒壁12のガス導入口15よりも上方に配置され、また、上側のガス分散板18は、内側筒壁14の上端に天板部13との間に隙間を開けて配置されている。そして、下側のガス分散板17より下方の空間が環状のガス導入室21とされ、上側のガス分散板18より上方から内側筒壁14の内部空間に至るまでの部分がガス導出案内室22とされ、両ガス分散板17,18の間が反応室23とされている。
【0019】
加熱機構2は、電極部31とヒータ部32とから構成されている。電極部31は、底板部11を貫通してガス導入室21内に突出した状態に設けられており、ガス導入室21の周方向に沿って複数列、図示例では4列をなすように相互に間隔をおいて複数配置されている(図2には最外周位置の電極部の位置のみ破線で示している)。そして、各列毎に、ヒータ部32が設けられている。このヒータ部32は、図3に示すように、正面視逆U字の板状をなすカーボン製の発熱体33を電極部31を介して反応室23の周方向に複数個直列に連結状態としたリング状のものである。
【0020】
この場合、各発熱体33の二股状に分かれた下端部にはそれぞれ脚部34が水平に形成され、一方、電極部31の上端部には水平な支持台部35が形成されており、隣接する二つの発熱体33の脚部34が一つずつ電極部31の支持台部35の上面に接合状態に固定されている。そして、各発熱体33が二つの電極部31にこれらの間をまたぐようにして固定されていることにより、この電極部31を介して全体としてリング状に連結されてヒータ部32を構成している。電極部31は、外部の電源(図示略)に接続されており、底板部11に絶縁材(図示略)を介して固定され、底板部11から突出する上端部は少なくともカーボン製とされている。
【0021】
また、これら電極部31及びヒータ部32には、その表面を覆う炭化珪素(SiC)のコーティングが施されている。この場合、電極部31とヒータ部32との接合面(脚部34と支持台部35との接合面)Cは、電気的接続状態を確保するため、コーティングされずにカーボンどうしが直接接合されている。この接合面Cは水平状態に配置されており、外側筒壁12におけるガス導入口15よりも下方となる高さ位置に配置されている(図3にその高さの差をhで示す)。
【0022】
また、ヒータ部32は、ガス導入室21からガス分散板17を貫通して反応室23内に上下方向に沿って立設されており、各発熱体33がガス拡散板17の貫通孔19内に挿入状態とされている。この貫通孔19は、発熱体33の横断面積よりも大きい面積に形成され、発熱体33の周囲に隙間を開けた状態としており、図3(b)等の矢印で示すように、その隙間の部分を通って原料ガスが流通するようになっている。そして、反応室23内では、各ヒータ部32の発熱体33が半径方向に間隔をおいて同心のリング状に配置され、その上端部が上側のガス分散板18より若干下方の高さとなる位置まで延びている。
なお、上側のガス分散板18に設けられている貫通孔20は、適宜の大きさ、間隔で分散して設けられるが、なるべく下側のガス分散板17の貫通孔19と上下方向に一致させずに水平方向にずれた配置とする、あるいは下側のガス分散板17の貫通孔19よりも小さい貫通孔として均等に分散配置するとよい。
【0023】
一方、収納容器5は、底板部11の上に反応容器2の外側筒壁12の回りを間隔を開けて囲んだ状態に筒状外壁41が設けられるとともに、その上端を覆う天板部42が反応容器2の天板部13との間に間隔を開けて設けられた構成とされ、その天板部42の中心部に上方からガス供給部3が接続されている。このガス供給部3は、図示略の供給源からテトラクロロシランと水素とを含む原料ガスを搬送して、これらを混合した状態で供給するものである。
【0024】
また、反応容器2と収納容器5との両天板部13,42の間には、二つの径の異なるリング状のスペーサ部材43,44が設けられ、両スペーサ部材43,44に貫通孔又は切欠により半径方向に沿う連通部45が設けられていることにより、ガス供給部3から両スペーサ部材43,44の間のリング板状の空間を経由して外側筒壁12と筒状外壁41との間の筒状の空間までが連通状態とされている。したがって、ガス供給部3から供給された原料ガスは、反応容器2の上方のリング板状の空間を通って反応容器2の外方の筒状の空間内に導かれ、外側筒壁12の下端部のガス導入口15から反応容器2内に導入される。そして、この両天板部13,42の間のリング板状の空間及び外側筒壁12と筒状外壁41との間の筒状の空間が反応容器2の天板部13及び外側筒壁12からの熱を受けて原料ガスが予熱される予熱室46とされている。
【0025】
また、ガス排出部4は、図示例の場合は底板部11の中心位置に接続された管により、反応容器2の内側筒壁14の内部空間(ガス導出案内室22)から反応生成ガスを外部に排出するものである。
なお、反応容器2を構成する部材(外側筒壁12、内側筒壁14、両ガス分散板17,18、天板部13等)はカーボンによって形成されるとともに、収納容器5において予熱室46に接する内面にはカーボンのライニングが施されており、これらカーボンの表面には炭化珪素がコーティングされている。
【0026】
このように構成したトリクロロシラン製造装置において、電極部31から通電して反応容器2内のヒータ部32を例えば1100℃程度の発熱状態としておき、ガス供給部3から原料ガスを供給すると、その原料ガスは、反応容器2の天板部13の上方からまず予熱室46に導かれ、反応容器2の外面からの熱を受けて例えば700〜750℃程度に予熱される。そして、外側筒壁12の下端部のガス導入口15から反応容器2内のガス導入室21に導入され、このガス導入室21の上方のガス分散板17の各貫通孔19から反応室23内に流通される。
【0027】
前述したように、原料ガスとの反応によって不純物が生じないように、反応容器2の構成部材、電極部31、ヒータ部32等はカーボン製で炭化珪素のコーティングがなされているが、電極部31とヒータ部32の各発熱体33との接合面Cにおいては、導電性を確保するため、コーティングされずにカーボンどうしがそのまま接合されている。
そして、ガス導入室21においては、原料ガスが電極部31とヒータ部32との接合面C付近にも流れることになるが、このときの原料ガスは予熱されてはいるが、700〜750℃程度であり、カーボンと原料ガス中の水素との反応温度(約850℃)よりは低いので、メチルクロロシラン等の不純物の発生を防止することができる。しかも、電極部31とヒータ部32との接合面Cはガス導入口15よりも下方に配置されていることから、ガス導入口15から導入された原料ガスの大部分は、電極部31とヒータ部32との接合面Cに向かうことなく、図3(b)の矢印で示すように上方のガス分散板17の各貫通孔19へと流れるので、不純物が発生しにくい配置となっている。
【0028】
そして、ガス分散板17の各貫通孔19は、ヒータ部32の各発熱体33を挿入状態としているため、原料ガスは、各貫通孔19を通ることにより、図1の矢印で示すようにヒータ部32の発熱体33の表面に沿って流れることになり、発熱体33からの熱が原料ガスに直接伝わって原料ガスが高い熱効率で加熱され、トリクロロシランへの転換率を向上させることができる。反応生成ガスは上側のガス分散板18の貫通孔20を経由してガス導出案内室22に導かれ、ガス導出口16からガス排出部4に排出される。
この場合、炭化珪素でコーティングされたカーボンで反応容器1の構成部材(外側筒壁12、内側筒壁14、両ガス分散板17,18等)やヒータ部32が構成されているので、カーボンと供給ガス及び反応生成ガス中の水素、クロロシラン及び塩化水素(HCl)とが反応してメタン、メチルクロロシラン、炭化珪素等が生成されて不純物となることを防ぎ、純度の高いトリクロロシランを得ることができる。
また、反応室23を大型化する場合、ヒータ部32の列を増やすことにより、大型の反応室にも均等にヒータ部を配置することができ、大型化への対応も容易で、大量生産にも適している。
【0029】
図4及び図5は、本発明の他の実施形態を示している。このトリクロロシラン製造装置は、図1のトリクロロシラン製造装置では、収納容器の上方から原料ガスを供給して反応生成ガスを下方に排出する構成であったのに対して、原料ガスの供給と反応生成ガスの排出とのいずれをも収納容器の下方で行うようにしたものであり、その他の構成はほぼ図1等の一実施形態のものと同様である。したがって、図1等の一実施形態と共通部分には同一符号を付して説明を簡略化する。
【0030】
この実施形態においては、反応容器51と収納容器52との天板部53が共通とされており、収納容器52と反応容器51との間の予熱室54は筒状の空間部のみから構成されている。そして、この予熱室54に下方から原料ガスを供給するガス供給部となる複数の原料ガス供給管55が底板部11に周方向に間隔をおいて設けられている。また、予熱室54の内部は、その筒状の空間部の中間位置に同心状に設けられた筒状壁56により、径の異なる二つの筒状空間57,58に仕切られており、筒状壁56の上端部に形成した貫通孔又は切欠等の連通部59により相互に連通状態とされている。この場合、原料ガス供給管55は、外側の筒状空間58に接続されており、この外側の筒状空間58に供給された原料ガスは、筒状壁56の上端部の連通部59を通って内側の筒状空間57に折り返すように案内された後、反応容器51の外側筒壁12のガス導入口15からガス導入室21内に導入される。
【0031】
ガス導入室21に導入されてからは、原料ガスは、一実施形態の場合と同様、ガス分散板17の貫通孔19から反応室23に導かれ、ヒータ部32の加熱により生じた反応生成ガスが上側のガス分散板18の貫通孔20からガス導出案内室22を経由してガス排出部4に排出される。
このトリクロロシラン製造装置は、ガス供給部(原料ガス供給管)55及びガス排出部4が底板部11に接続されているので、これらの配管系を底板部11の下方に集中させることができ、一実施形態の場合に比べて配管の取り回しを容易にすることができる。
【0032】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、下側のガス分散板の貫通孔をヒータ部の発熱体が挿入する貫通孔としたが、同心状に配置されているヒータ部の間に貫通孔を配置してもよい。
また、ヒータ部は、複数の発熱体を筒状に構築して、これを同心状に配置したが、各発熱体を分散して配置する構成としてもよい。
また、内側筒壁の上端と天板部との間に空間を形成して、反応室の上方にガス導出案内室を構成するようにしたが、内側筒壁を外側筒壁と同じ高さに設定して、上側のガス分散板を廃止することにより、反応室を天板部の直下まで延長し、その内側筒壁の上端部に貫通孔又は切欠を形成することにより、反応室を内側筒壁の内部空間に連通させる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 反応容器
2 加熱機構
3 ガス供給部
4 ガス排出部
5 収納容器
11 底板部
12 外側筒壁
13 天板部
14 内側筒壁
15 ガス導入口
16 ガス導出口
17,18 ガス分散板
19,20 貫通孔
21 ガス導入室
22 ガス導出案内室
23 反応室
31 電極部
32 ヒータ部
33 発熱体
34 脚部
35 支持台部
41 筒状外壁
42 天板部
43,44 スペーサ部
45 連通部
46 予熱室
51 反応容器
52 収納容器
53 天板部
54 予熱室
55 原料ガス供給管(ガス供給部)
56 筒状壁
57,58 筒状空間
59 連通部
C 接合面
h 高さの差


【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラクロロシランと水素とを含む原料ガスが内部に供給されてトリクロロシランと塩化水素とを含む反応生成ガスが生成される反応容器と、前記反応容器の内部を加熱する加熱機構と、前記反応容器内に前記原料ガスを供給するガス供給部と、前記反応容器から前記反応生成ガスを外部に排出するガス排出部とを備えたトリクロロシラン製造装置であって、
前記加熱機構は、前記反応容器の内底部に設けられ外部の電源に接続された電極部と、該電極部に保持され反応容器内に上下方向に沿って立設されたヒータ部とからなり、前記反応容器内には、該反応容器の内部空間を前記ヒータ部が配置される反応室と、その下方で前記電極部が配置されるガス導入室とに区画するとともに前記反応室とガス導入室とを複数の貫通孔により連通状態としたガス分散板が設けられ、前記ガス供給部は、前記ガス導入室を経由して前記反応室に原料ガスを供給するように接続されていることを特徴とするトリクロロシラン製造装置。
【請求項2】
反応容器を構成する部材、電極部及びヒータ部が、カーボンにより形成され、該カーボンの表面が、炭化珪素によりコーティングされている請求項1記載のトリクロロシラン製造装置。
【請求項3】
前記ガス導入室のガス供給口は、前記電極部と前記ヒータ部との接合面よりも上方位置に配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載のトリクロロシラン製造装置。
【請求項4】
前記ヒータ部は、前記ガス分散板の貫通孔内に、その内周縁と間隔を開けて挿入されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のトリクロロシラン製造装置。
【請求項5】
前記反応容器の外側に、該反応容器を囲む収納容器が設けられるとともに、該収納容器と前記反応容器との間に、前記ガス供給部から供給される原料ガスを前記ガス導入室に案内しつつ前記反応容器の外面からの熱により予熱するガス予熱室が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のトリクロロシラン製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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