説明

トリテルペノイド合成酵素をコードする核酸分子

本発明は、トリテルペノイド炭化水素を産生することができるポリペプチドをコードする単離された核酸分子に関する。また本発明は、コードされたポリペプチド、当該核酸分子を含むベクター、当該核酸分子を含む組換え非ヒト生物、及び当該核酸分子、ポリペプチド又は組換え生物を使用してトリテルペノイド炭化水素又はバイオ燃料の中間体を製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本発明は、トリテルペノイド炭化水素を産生することができるポリペプチドをコードする核酸分子に関する。また、本発明は、このような核酸分子にコードされるポリペプチド、並びにトリテルペノイド炭化水素製造におけるこのような核酸分子又はそれらにコードされたポリペプチドの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
化石燃料は、供給の枯渇及び大気中の二酸化炭素へのこれらの燃料の正味の寄与のため、持続不可能な石油源として広く認識されている。環境及び経済の持続可能性のためには、再生可能で、カーボンニュートラルな燃料が必要である。油料作物由来のバイオ燃料は、可能性のある再生可能且つカーボンニュートラルな、石油燃料の代替物である。現在、バイオ燃料は、主に大豆、菜種油、動物性脂肪、パーム油、コーン油及び廃棄食用油から製造されている。
【0003】
上記供給源由来のバイオ燃料は、現在の燃料に対する需要のごく一部でさえも、現実的には満たすことができない。研究者らがバイオ燃料用の代替原料を捜しているうちに、3つの主な理由から、藻類がバイオ燃料製造用の最も有望な供給源の一つとして浮上してきた:(1)藻類からの油の収率は、従来の油料種子についての収率よりも数桁高い;(2)藻類は、農地及び森林から離れた場所において育つことができるため、生態系及び食物連鎖システムに引き起こされる被害を最小化できる;そして(3)藻類は、下水道内で下水を利用して、及び発電所の煙突に隣接して(そこで藻類は汚染物質を消化し、油を産生する)、育てることができる。
【0004】
藻類は、光栄養細胞工場であり、太陽光からエネルギーを、そして二酸化炭素から炭素を得ることができる。藻類は、二酸化炭素を可能性のあるバイオ燃料、食料、飼料及び高価値の生物活性物質(bioactives)に変換する。藻類は、いくつかの異なる種類の再生可能なバイオ燃料、及び抗生物質などの価値ある副産物を提供することができる。
【0005】
その低い油含量又は遅い増殖に起因して、全ての藻類がバイオ燃料を製造するために申し分ないわけではない。Botryococcus属のいくつかの種は、高レベルの炭化水素を産生する能力により特徴付けられる。例えば、Botryococcus brauniiは、乾燥重量で76%までの著しく高いレベルの炭化水素を合成し蓄積する、独特の群体性緑藻類である。この藻類は、有用な脂質、炭化水素、多糖類、及び他の特殊化学品の、潜在的に優れた再生可能な供給源である。
【0006】
Botryococcusにより産生される炭化水素としては、(1)n−アルカジエン及びトリエン(品種(Race)A)、(2)トリテルペノイドボトリオコッセン(botryococcenes)及びメチル化スクアレン(品種B)、又は(3)テトラテルペノイド、リコパジエン(lycopadiene)(品種L)が挙げられる。トリテルペノイド炭化水素は、例えばオクタン(ガソリン、ぺトロール)、灯油、及びディーゼルを製造するための石油精製における水素化分解のための原料として使用され得る。ボトリオコッセンは、より高いオクタン価を有するバイオ燃料へと変換される可能性があることから、ボトリオコッセンは、水素化分化のためにアルカジエン及びアルカトリエンより好ましい。藻類の脂質又は炭化水素の使用は、石炭及び石油の使用に関連する環境影響を大きく減らし得るということになる。
【0007】
しかしながら、B. brauniiからの光合成的な燃料油の製造は、石油由来燃料との競争力がない。その一つの主要な理由は、B. brauniiの比較的遅い増殖速度である。更に、藻類にボトリオコッセンを産生させる遺伝子(複数可)は、当該分野において同定も単離もされていない。
【0008】
しかしながら、それぞれ品種B B. braunii Berkeley(Showa)株由来である、スクアレン合成酵素(配列番号10)及びボトリオコッセン合成酵素とされるもの(配列番号42)が先行技術において開示されている。ボトリオコッセン合成酵素とされるものは、ボトリオコッセンの分子同定によりボトリオコッセンを産生することが示されなかった。更に、補強データは、ボトリオコッセン合成酵素とされるものが、いわれているようなボトリオコッセン合成酵素活性ではなく、スクアレン合成酵素活性を有することと一致する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、トリテルペノイド炭化水素、特にボトリオコッセンの製造を促進するための、合成又は組換え手段の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
概要
第一の態様は、トリテルペノイド炭化水素を産生することができるポリペプチドをコードする単離された核酸分子を提供し、ここで当該ポリペプチドは以下を含む:配列番号1〜5若しくは20〜29のいずれか1つの少なくとも15連続するアミノ酸残基;配列番号1〜5若しくは20〜29のいずれか1つと少なくとも70%の配列同一性;又は配列番号29の機能的断片。
【0011】
当該核酸分子は、トリテルペノイド炭化水素製造のための手段を提供する。
【0012】
第一の態様の一実施形態において、当該核酸分子は、配列番号6〜9又は30のいずれか1つを含む。当該核酸分子は、組換え体又は合成品であり得る。
【0013】
第二の態様は、トリテルペノイド炭化水素を産生することができる単離されたポリペプチドを提供し、ここで当該ポリペプチドは以下を含む:配列番号1〜5若しくは20〜29のいずれか1つの少なくとも15連続するアミノ酸残基;配列番号1〜5若しくは20〜29のいずれか1つと少なくとも70%の配列同一性;又は配列番号29の機能的断片。
【0014】
トリテルペノイド炭化水素分子の特定の例は、ボトリオコッセン及びスクアレンであり、それらは互いの異性体であり、B. braunii中でプレスクアレンピロリン酸(PSPP)中間体を介してファルネシルピロリン酸(FPP)基質から産生される。ボトリオコッセンは、B. brauniiの品種B株中に高濃度で存在するが、B. brauniiの品種A及びL中には存在しない。スクアレンは、品種B株ではボトリオコッセンよりもはるかに低いレベルで存在し、B. brauniiの品種A及びL中にも低レベルで存在する。
【0015】
第二の態様のポリペプチドは、無細胞系でトリテルペノイド炭化水素を合成するために使用され得る。或いは、第二の態様のポリペプチドは、それぞれトリテルペノイド炭化水素又はボトリオコッセンの製造のために組換え生物中で発現され得る。
【0016】
第二の態様の一実施形態において、当該ポリペプチドは、配列番号1〜5又は20〜29のいずれか1つを含む。当該ポリペプチドは、組換え体又は合成品であり得る。
【0017】
核酸分子は、FPP及び/又はPSPPをボトリオコッセンに変換することができるボトリオコッセン合成酵素をコードし、或いはポリペプチドは、FPP及び/又はPSPPをボトリオコッセンに変換することができるボトリオコッセン合成酵素である。或いは、核酸分子は、FPP及び/又はPSPPをスクアレンに変換することができるスクアレン合成酵素をコードし得、或いはポリペプチドは、FPP及び/又はPSPPをスクアレンに変換することができるスクアレン合成酵素であり得る。
【0018】
第三の態様は、第一の態様の核酸分子を含むベクターを提供する。
【0019】
第四の態様は、トリテルペノイド炭化水素を産生することができる組換え非ヒト生物を提供し、当該生物は、第一の態様の核酸分子又は第三の態様のベクターを含む。
【0020】
第四の態様の別の実施形態において、当該生物は、微生物である。当該微生物は、藻類又は細菌であり得る。別の実施形態において、当該微生物は、以下からなる群から選択される:Escherichia coli;Chlamydomonas reinhardtii;Saccharomyces cerevisiae;及びPichia sp.。
【0021】
第五の態様は、トリテルペノイド炭化水素を製造するための、第一の態様の核酸分子、第二の態様のポリペプチド、第三の態様のベクター、又は第四の態様の組換え生物の使用を提供する。
【0022】
第六の態様は、トリテルペノイド炭化水素の製造方法であって、第四の態様の組換え生物を当該生物がトリテルペノイド炭化水素を産生するために十分な条件下で増殖させる工程を含む、方法を提供する。
【0023】
第七の態様は、第六の態様の方法により製造されるトリテルペノイド炭化水素を提供する。種々の実施形態において、トリテルペノイド炭化水素は、スクアレン、ボトリオコッセン、デヒドロスクアレン又はデヒドロボトリオコッセンである。
【0024】
第八の態様は、バイオ燃料、バイオプラスチック、医薬品、食品添加物又は工業化学品製造の中間体の製造における、第一の態様の核酸分子、第二の態様のポリペプチド、第三の態様のベクター、第四の態様の組換え生物、第六の態様の方法により製造されるトリテルペノイド炭化水素、又は第七の態様のトリテルペノイド炭化水素の使用を提供する。
【0025】
第九の態様は、バイオ燃料、バイオプラスチック、医薬品、食品添加物又は工業化学品製造の中間体の製造方法であって、第四の態様の組換え生物を当該生物がトリテルペノイド炭化水素を産生するために十分な条件下で増殖させる工程、当該生物からトリテルペノイド炭化水素を回収する工程、及びトリテルペノイド炭化水素から中間体を製造する工程を含む、方法を提供する。
【0026】
第十の態様は、第九の態様の方法により製造される、バイオ燃料、バイオプラスチック、医薬品、食品添加物又は工業化学品製造の中間体を提供する。
【0027】
第一〜第九の態様のいずれか1つの実施形態において、トリテルペノイド炭化水素は、FPP及び/又はPSPPから製造される。
【0028】
第一〜第九の態様のいずれか1つの別の実施形態において、トリテルペノイド炭化水素は、ボトリオコッセン又はスクアレンである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
B. brauniiなどのいくつかの生物の遅い増殖速度を克服するために、トリテルペノイド炭化水素核酸分子(例えば、ボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素をコードする核酸分子)は、より速く増殖する他の生物(C. reinhardtii、Escherichia coli、S. cerevisiae、Pichia sp.、又は形質転換に適しており且つB. brauniiよりも増殖が速い任意の他の生物など)に形質転換され得る。このような合成手段又は組換え手段及び組換え生物は、バイオ燃料又はバイオプラスチック製造などのための、トリテルペノイド炭化水素製造の商業化を促進しよう。このような組換え生物は、封じ込められた大量増殖又は培養系内で商業的に使用され得、例えば、バイオ燃料又はバイオプラスチック製造における中間体又はバイオ燃料又はバイオプラスチック製造のための原料を提供し、或いは化学合成又は化粧品製造などの他のプロセスにおける使用のためにスクアレン又はボトリオコッセンなどのトリテルペノイド炭化水素の供給源を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1〜5及び20〜28は、B. braunii、品種BのAyame 1株のスクアレン合成酵素/ボトリオコッセン合成酵素ホモログのエキソンにコードされるアミノ酸配列を示す。図1〜5及び20〜28のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1〜5及び20〜28に対応し、図6〜9及び30に記載される核酸配列から推定される。アスタリスクは終止コドンを表す。
【図2】図1〜5及び20〜28は、B. braunii、品種BのAyame 1株のスクアレン合成酵素/ボトリオコッセン合成酵素ホモログのエキソンにコードされるアミノ酸配列を示す。図1〜5及び20〜28のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1〜5及び20〜28に対応し、図6〜9及び30に記載される核酸配列から推定される。アスタリスクは終止コドンを表す。
【図3】図1〜5及び20〜28は、B. braunii、品種BのAyame 1株のスクアレン合成酵素/ボトリオコッセン合成酵素ホモログのエキソンにコードされるアミノ酸配列を示す。図1〜5及び20〜28のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1〜5及び20〜28に対応し、図6〜9及び30に記載される核酸配列から推定される。アスタリスクは終止コドンを表す。
【図4】図1〜5及び20〜28は、B. braunii、品種BのAyame 1株のスクアレン合成酵素/ボトリオコッセン合成酵素ホモログのエキソンにコードされるアミノ酸配列を示す。図1〜5及び20〜28のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1〜5及び20〜28に対応し、図6〜9及び30に記載される核酸配列から推定される。アスタリスクは終止コドンを表す。
【図5】図1〜5及び20〜28は、B. braunii、品種BのAyame 1株のスクアレン合成酵素/ボトリオコッセン合成酵素ホモログのエキソンにコードされるアミノ酸配列を示す。図1〜5及び20〜28のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1〜5及び20〜28に対応し、図6〜9及び30に記載される核酸配列から推定される。アスタリスクは終止コドンを表す。
【図6】図6〜9は、B. braunii、品種BのAyame 1株のスクアレン合成酵素/ボトリオコッセン合成酵素ホモログのエキソンの核酸配列を示す。いくつかの図は、隣接するエキソンの間に介在するイントロンの核酸配列を含む。図6〜9及び30の核酸配列は、それぞれ配列番号6〜9及び30に対応する。
【図7】図6〜9は、B. braunii、品種BのAyame 1株のスクアレン合成酵素/ボトリオコッセン合成酵素ホモログのエキソンの核酸配列を示す。いくつかの図は、隣接するエキソンの間に介在するイントロンの核酸配列を含む。図6〜9及び30の核酸配列は、それぞれ配列番号6〜9及び30に対応する。
【図8】図6〜9は、B. braunii、品種BのAyame 1株のスクアレン合成酵素/ボトリオコッセン合成酵素ホモログのエキソンの核酸配列を示す。いくつかの図は、隣接するエキソンの間に介在するイントロンの核酸配列を含む。図6〜9及び30の核酸配列は、それぞれ配列番号6〜9及び30に対応する。
【図9】図6〜9は、B. braunii、品種BのAyame 1株のスクアレン合成酵素/ボトリオコッセン合成酵素ホモログのエキソンの核酸配列を示す。いくつかの図は、隣接するエキソンの間に介在するイントロンの核酸配列を含む。図6〜9及び30の核酸配列は、それぞれ配列番号6〜9及び30に対応する。
【図10】図10は、B. braunii Berkeley株、品種Bのスクアレン合成酵素のアミノ酸配列(アクセッションID(identifications):gi|6636500;gb|AAF20201.1;AF205791_1)を示し、配列番号10に対応する。
【図11】図11は、図10のアミノ酸配列をコードする核酸配列(mRNA、完全cds;アクセッションID:gi|6636499;gb|AF205791.1;AF205791)を示し、配列番号11に対応する。
【図12】図12は、B. braunii Berkeley株、品種Bのスクアレン合成酵素の部分アミノ酸配列(アクセッションID:gi|7532841;gb|AAF63255.1)を示し、配列番号12に対応する。
【図13】図13は、図12のアミノ酸配列をコードする核酸配列(部分cds;アクセッションID:gi|7532838;gb|AH009227.1;SEG_AF205789S)を示し、配列番号13に対応する。
【図14】図14は、図10のアミノ酸配列(それに対して図1〜5のコンセンサス推定アミノ酸配列の位置を合わせた)を示す。アスタリスクは終止コドンを表す。コンセンサス配列は配列番号14に対応する。
【図15−1】図15は、実施例11においてC. reinhardtiiに形質転換されたスクアレン合成酵素pSP124Sコンストラクトの核酸配列(配列番号15)を示す。
【図15−2】図15は、実施例11においてC. reinhardtiiに形質転換されたスクアレン合成酵素pSP124Sコンストラクトの核酸配列(配列番号15)を示す。
【図16】図16及び17は、実施例11において形質転換されたC. reinhardtii中のスクアレン合成酵素pSP124Sコンストラクトの存在を検出するために使用したプライマーペア1(PP1)の核酸配列(それぞれ配列番号16及び配列番号17に対応する)を示す。
【図17】図16及び17は、実施例11において形質転換されたC. reinhardtii中のスクアレン合成酵素pSP124Sコンストラクトの存在を検出するために使用したプライマーペア1(PP1)の核酸配列(それぞれ配列番号16及び配列番号17に対応する)を示す。
【図18】図18及び19は、実施例11において形質転換されたC. reinhardtii中のスクアレン合成酵素pSP124Sコンストラクトの存在を検出するために使用したプライマーペア2(PP2)の核酸配列(それぞれ配列番号18及び配列番号19に対応する)を示す。
【図19】図18及び19は、実施例11において形質転換されたC. reinhardtii中のスクアレン合成酵素pSP124Sコンストラクトの存在を検出するために使用したプライマーペア2(PP2)の核酸配列(それぞれ配列番号18及び配列番号19に対応する)を示す。
【図20】図1〜5及び20〜28は、B. braunii、品種BのAyame 1株のスクアレン合成酵素/ボトリオコッセン合成酵素ホモログのエキソンにコードされるアミノ酸配列を示す。図1〜5及び20〜28のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1〜5及び20〜28に対応し、図6〜9及び30に記載される核酸配列から推定される。アスタリスクは終止コドンを表す。
【図21】図1〜5及び20〜28は、B. braunii、品種BのAyame 1株のスクアレン合成酵素/ボトリオコッセン合成酵素ホモログのエキソンにコードされるアミノ酸配列を示す。図1〜5及び20〜28のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1〜5及び20〜28に対応し、図6〜9及び30に記載される核酸配列から推定される。アスタリスクは終止コドンを表す。
【図22】図1〜5及び20〜28は、B. braunii、品種BのAyame 1株のスクアレン合成酵素/ボトリオコッセン合成酵素ホモログのエキソンにコードされるアミノ酸配列を示す。図1〜5及び20〜28のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1〜5及び20〜28に対応し、図6〜9及び30に記載される核酸配列から推定される。アスタリスクは終止コドンを表す。
【図23】図1〜5及び20〜28は、B. braunii、品種BのAyame 1株のスクアレン合成酵素/ボトリオコッセン合成酵素ホモログのエキソンにコードされるアミノ酸配列を示す。図1〜5及び20〜28のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1〜5及び20〜28に対応し、図6〜9及び30に記載される核酸配列から推定される。アスタリスクは終止コドンを表す。
【図24】図1〜5及び20〜28は、B. braunii、品種BのAyame 1株のスクアレン合成酵素/ボトリオコッセン合成酵素ホモログのエキソンにコードされるアミノ酸配列を示す。図1〜5及び20〜28のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1〜5及び20〜28に対応し、図6〜9及び30に記載される核酸配列から推定される。アスタリスクは終止コドンを表す。
【図25】図1〜5及び20〜28は、B. braunii、品種BのAyame 1株のスクアレン合成酵素/ボトリオコッセン合成酵素ホモログのエキソンにコードされるアミノ酸配列を示す。図1〜5及び20〜28のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1〜5及び20〜28に対応し、図6〜9及び30に記載される核酸配列から推定される。アスタリスクは終止コドンを表す。
【図26】図1〜5及び20〜28は、B. braunii、品種BのAyame 1株のスクアレン合成酵素/ボトリオコッセン合成酵素ホモログのエキソンにコードされるアミノ酸配列を示す。図1〜5及び20〜28のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1〜5及び20〜28に対応し、図6〜9及び30に記載される核酸配列から推定される。アスタリスクは終止コドンを表す。
【図27】図1〜5及び20〜28は、B. braunii、品種BのAyame 1株のスクアレン合成酵素/ボトリオコッセン合成酵素ホモログのエキソンにコードされるアミノ酸配列を示す。図1〜5及び20〜28のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1〜5及び20〜28に対応し、図6〜9及び30に記載される核酸配列から推定される。アスタリスクは終止コドンを表す。
【図28】図1〜5及び20〜28は、B. braunii、品種BのAyame 1株のスクアレン合成酵素/ボトリオコッセン合成酵素ホモログのエキソンにコードされるアミノ酸配列を示す。図1〜5及び20〜28のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1〜5及び20〜28に対応し、図6〜9及び30に記載される核酸配列から推定される。アスタリスクは終止コドンを表す。
【図29】図29は、ATB1(B. braunii品種B、Ayame 1株のトリテルペノイド炭化水素合成ポリペプチド)のアミノ酸配列を示し、配列番号29に対応する。アスタリスクは終止コドンを表す。当該ポリペプチドは、配列番号1〜5及び20〜28に対応するエキソンを含む。ATB1は、エキソン8を含まない。
【図30】図30は、図29のアミノ酸配列をコードする推定cDNA核酸配列を示し、配列番号30に対応する。この遺伝子は、8つのエキソン(1〜7及び9と表示)を含み、そのうちエキソン2、4、6及び9に下線が引かれている。当該cDNAは、配列番号6〜9に対応するエキソンを含む。
【図31−1】図31は、図29のアミノ酸配列をコードするゲノム核酸配列を示し、配列番号31に対応する。
【図31−2】図31は、図29のアミノ酸配列をコードするゲノム核酸配列を示し、配列番号31に対応する。
【図32】図32は、ATB1トリテルペノイド炭化水素合成核酸配列のクローニングのために使用した核酸配列を示す。全長配列は、配列番号32に対応する。当該配列は、開始コドン及び終止コドンに直接隣接していること以外は、図30の配列、即ち配列番号30に対応する。当該配列は、pUC57/ATB1、pET11a/ATB1、pET302/NT-His-ATB1、及びCT-His-ATB1/pET302(本明細書中、それぞれコンストラクト1、2、3、及び4という)を作り出すために使用した。
【図33】図33は、図16〜19のPCRプライマーを使用した、実施例11の形質転換されたC. reinhardtii中のスクアレン合成酵素pSP124Sコンストラクトの分子検出についてのアガロースゲルの写真である。PCRは、ゼオシンTM耐性陽性の個別のコロニーから抽出したゲノムDNAについて実施した。レーン:1 形質転換されていないC. reinhardtii細胞、PP1陰性対照;2&24 細胞なし、スクアレン合成酵素pSP124Sコンストラクト、PP1陽性対照;3 プラスミドpSP124S、PP1陰性対照;4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、それぞれ形質転換されたコロニー12、13、18、24、28、76、82、87、88、及び89、PP1;14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、それぞれ形質転換されたコロニー12、13、18、24、28、76、82、87、88、及び89、PP2。
【図34】図34は、pET11a/ATB1、pET302/NT-His-ATB1、及びCT-His-ATB1/pET302(それぞれコンストラクト2、3及び4)の制限酵素消化物を分離し、期待された断片サイズが存在することを確認する、アガロースゲル電気泳動の写真である。図34Aは、コンストラクト2がNdeI及びBstXIで切断されたことを示す。図34Bは、コンストラクト3及び4がNdeI及びXhoIでそれぞれ切断されたことを示す。図34A及びB 100bpラダー断片サイズ:1500;1000;900;800;700;600;500;400;300;200;100bp。図34A 1kbラダー断片サイズ:10;8;6;5;4;3;2.5;2;1.5;1;0.75;0.5;0.25kb。図34B 1kbラダー断片サイズ:10;8;6;5;4;3;2;1.5;1.0;0.5。
【図35】図35は、コンストラクト2で形質転換されていない(U)E. coli全体及び形質転換された(T)E. coli全体(レーン1〜6)、並びにコンストラクト2で形質転換された(T)E. coliの細胞ライセートの上清(レーン8及び9)のタンパク質のSDS−PAGEミニゲルの写真である。E. coliを、IPTG(1mM)で0時間(レーン1及び2)、2時間(レーン3及び4)又は4時間(レーン5、6、8及び9)誘導した。タンパク質を、クマシーブルー色素で可視化した。レーン7の矢印:分子量マーカー、上の矢印46kDa、下の矢印30kDa。レーン9の矢印:可溶性ATB1タンパク質。
【図36】図36は、NADPHを補因子とする酵素スクアレン合成酵素による2つのファルネシルピロリン酸C15単位のスクアレンC30単位への化学変換(A及びB)、並びにNADPHを補因子とする酵素ボトリオコッセン合成酵素による2つのファルネシルピロリン酸C15単位のボトリオコッセンC30単位への化学変換(B)を示す。
【図37】図37は、真正のスクアレンのガスクロマトグラフィー−質量分析(GC−MS)である。
【図38】図38は、真正のC30ボトリオコッセンのGC−MS分析である。
【図39】図39は、実施例15から得られた形質転換されていないE. coliのヘプタン抽出物のGC−MS分析である。
【図40】図40は、pET11a/ATB1(コンストラクト2)で形質転換し、IPTGで16時間誘導した、E. coliのヘプタン抽出物のGC−MS分析であり、生じたデヒドロスクアレンの質量スペクトルを示す。
【図41】図41は、pET11a/ATB1(コンストラクト2)で形質転換し、IPTGで16時間誘導した、E. coliのヘプタン抽出物のGC−MS分析であり、生じたスクアレンの質量スペクトルを示す。
【図42】図42は、CT-His-ATB1/pET302(コンストラクト4)で形質転換し、IPTGで2時間誘導し、次いで溶解させた、E. coli由来のライセートのヘプタン抽出物のGC−MS分析であり、ライセートは過剰量のFPP及びNADPHの両方と共に30分間インキュベートした。
【図43】図43は、図30に提供されたヌクレオチド配列の本来の開始コドンの直上流に挿入されたヌクレオチドの核酸配列(配列番号33)を示す。
【図44】図44は、NsiI制限部位の核酸配列(配列番号34)を示す。
【図45】図45は、NdeI制限部位の核酸配列(配列番号35)を示す。
【図46】図46は、pET11a/ATB1(コンストラクト2)にコードされるATB1-MHポリペプチド(即ち、ATB1のC末端において1つのメチオニン残基及び1つのヒスチジン残基が連続的に増やされた、図29(配列番号29)のATB1ポリペプチド)のアミノ酸配列(配列番号36)を示す。アスタリスクは終止コドンを表す。
【図47】図47は、図30に提供されたヌクレオチド配列の本来の終止コドンの直下流に挿入された、XhoI及びSmaI制限部位を含むヌクレオチドの核酸配列(配列番号37)を示す。
【図48】図48は、pET302/NT-His-ATB1(コンストラクト3)にコードされるMHHHHHHHHMH-ATB1-MHポリペプチド(即ちATB1のN末端において1つのメチオニン残基、8つのヒスチジン残基、1つのメチオニン残基、及び1つのヒスチジン残基が連続的に増やされ、ATB1(図29、配列番号29)のC末端において1つのメチオニン残基及び1つのヒスチジン残基が連続的に増やされた図29(配列番号29)のATB1ポリペプチド)のアミノ酸配列(配列番号38)を示す。アスタリスクは終止コドンを表す。
【図49】図49は、CT-His-ATB1/pET302(コンストラクト4)にコードされるMH-ATB1-MH-HHHHHVNSLEIDDIRAポリペプチド(即ちそのN末端において1つのヒスチジン残基及び1つのメチオニン残基が連続的に増やされ、ATB1(図29、配列番号29)のC末端においてそのN末端において5つのヒスチジン残基及びVNSLEIDDIRA残基が連続的に増やされた図29(配列番号29)のATB1ポリペプチド)のアミノ酸配列(配列番号39)を示す。アスタリスクは終止コドンを表す。
【図50】図50は、BstXI制限部位の核酸配列(配列番号40)を示す。
【図51】図51は、XhoI制限部位の核酸配列(配列番号41)を示す。
【図52】図52は、US20100041120の配列番号2として記載されたアミノ酸配列(配列番号42)を示す。
【図53】図53は、本明細書中に開示された配列番号29、並びに以前に開示された配列番号10及び42のポリペプチド配列アラインメントを示す。囲み領域は、多様なスクアレン合成酵素の間で高度に保存されていることが以前に認められていた、ドメインI、II、III、IV及びVを示す。ドメインIII及びIVはFPPのPSPPへの変換と関連付けられているのに対し、ドメインIII及びIVはPSPPのスクアレンへの変換と関連付けられている。配列番号10は、配列番号29にも42にも存在しない疎水性C末端を含む。配列番号29は、配列番号42と87%同一であり、配列番号10と38%同一である。配列番号42は、配列番号10と39%同一である。
【図54−1】図54は、実施例19のChlamydomonas発現用プラスミド3-ATB1(pCE3-ATB1)の核酸配列を示す。
【図54−2】図54は、実施例19のChlamydomonas発現用プラスミド3-ATB1(pCE3-ATB1)の核酸配列を示す。
【図55】図55〜62は、実施例19で使用したオリゴヌクレオチドプライマーの核酸配列を示す。
【図56】図55〜62は、実施例19で使用したオリゴヌクレオチドプライマーの核酸配列を示す。
【図57】図55〜62は、実施例19で使用したオリゴヌクレオチドプライマーの核酸配列を示す。
【図58】図55〜62は、実施例19で使用したオリゴヌクレオチドプライマーの核酸配列を示す。
【図59】図55〜62は、実施例19で使用したオリゴヌクレオチドプライマーの核酸配列を示す。
【図60】図55〜62は、実施例19で使用したオリゴヌクレオチドプライマーの核酸配列を示す。
【図61】図55〜62は、実施例19で使用したオリゴヌクレオチドプライマーの核酸配列を示す。
【図62】図55〜62は、実施例19で使用したオリゴヌクレオチドプライマーの核酸配列を示す。
【0031】
詳細な説明
組換えDNA技術は、1980年代からバイオテクノロジーにおける進歩の主な推進力を提供してきた。現在、ほとんど全ての主要な工業的バイオテクノロジープロセスは、遺伝子改変生物の使用に基づく。
【0032】
トリテルペノイド炭化水素製造に有用な合成手段及び組換え手段が本明細書中に開示される。このような手段としては、核酸分子、ポリペプチド、ベクター、組換え生物、使用及び方法が挙げられる。トリテルペノイド炭化水素は、例えばバイオ燃料、バイオプラスチック、医薬品、食品添加物、工業化学品又は特殊化学品の製造のために使用され得る。
【0033】
バイオ燃料、バイオプラスチック、医薬品(例えば、ワクチンアジュバント)、食品添加物(例えば、癌予防用)、工業化学品(例えば、潤滑剤)、特殊化学品又は化粧品(例えば、光防護)等の中間体及び製品の製造のためのトリテルペノイド炭化水素の使用の例は、Ab Gapor et al. Palm Oil Developments 32:36-40;Newmark, Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention, 1997, 6, 1101-1103;Huang et al., Molecules 2009, 14, 540-554;Auffray, International Journal of Cosmetic Science, 2007, 29, 23-29;Cox and Coulter, Vaccine, 1997, 15, 248-256;Fox, Molecules 2009, 14, 3286-3312;Schroepfer, Ann. Rev. Biochem., 1981, 50, 585-621;Tran et al., Fuel, 2010, 89, 265-274;Catchpole et al. Ind. Eng. Chem. Res. 1997, 36, 4318-4324;He et al., J. Agric. Food Chem. 2002, 50, 368-372に開示されている。
【0034】
典型的なトリテルペノイド炭化水素合成核酸分子は、ボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素をコードする。
【0035】
いかなる特定の仮説にも制約されることを望まないが、スクアレン合成酵素は生合成のフィードバック阻害を受けるのに対して、ボトリオコッセン合成酵素は生合成のフィードバック阻害を受けないことが提唱されていることから、ボトリオコッセン合成酵素は、スクアレン合成酵素と比較した場合、有利であり得る。或いは、ボトリオコッセン合成酵素は、スクアレン合成酵素にかかる生合成のフィードバック阻害と比較して最少限の又は低減された生合成のフィードバック阻害を受けることが提唱されている。この仮説は、B. brauniiによって著しく高いレベルのトリテルペノイド炭化水素が合成され蓄積されることを説明し得る。スクアレン合成酵素はトリテルペノイド炭化水素を製造するための有用な合成手段又は組換え手段であり得るが、ボトリオコッセン合成酵素はトリテルペノイド炭化水素を製造するためのより優れた合成手段または組換え手段であり得るということになる。
【0036】
第一の態様の一実施形態において、ボトリオコッセン合成酵素ポリペプチドをコードする核酸分子は、品種B B. braunii、具体的には株Ayame 1(Ivory Coast)から単離され得る。或いは、品種B B. brauniiは、Kossou(Ivory Coast)、Overuyo 3(Bolivia)、Paquemar(Martinique)、La Manzo(Martinique)、CCAC 0121、株CH 28、株CH 86、又は株1284からなる群から選択され得る。
【0037】
いかなる特定の仮説にも制約されることを望まないが、株Ayame 1及びPaquemarは、炭化水素高産生株であると考えられた(Ayame 1に関して、油層(oil deposits)のかなりの蓄積を示す写真により確認されたように思われる考え)。定性的には、Ayame 1は、他の株よりも多量の炭化水素を含有することがガスクロマトグラフィーにより確認されている。従って、Ayame 1が、トリテルペノイド炭化水素核酸分子の単離のために選択された。
【0038】
第一の態様の別の実施形態において、スクアレン合成酵素ポリペプチドをコードする核酸分子は、品種A、品種B又は品種LのB. brauniiから単離され得る。品種A B. brauniiは、Lingoult株(France)、Overjuyo 7株(Bolivia)、又はJillamatong株(Australia)から選択され得る。品種B株は、株Ayame 1(Ivory Coast)、Kossou(Ivory Coast)、Overuyo 3(Bolivia)、Paquemar(Martinique)、La Manzo(Martinique)、株CCAC 0121、株CH 28、株CH 86、又は株1284の群から選択され得る。品種L B. brauniiは、Madras 3株(India)又はYamoussoukro 4株(Ivory Coast)から選択され得る。
【0039】
或いは、トリテルペノイド炭化水素合成ポリペプチドをコードする核酸分子は合成であってもよい。
【0040】
用語「核酸分子」及び「ポリヌクレオチド」は、同義的に使用され、5’末端から3’末端に読まれるデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド塩基の一本鎖又は二本鎖のポリマーをいう。本開示の核酸は、一般にホスホジエステル結合を含有するが、場合によっては、例えば、ホスホロアミデート、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、又はO−メチルホスホロアミダイト結合(linkages)、並びにペプチド核酸主鎖及び結合を含む代替の主鎖を有してもよい核酸アナログが使用され得る。他のアナログ核酸としては、正電荷主鎖;非イオン性主鎖、及び非リボース主鎖を有するものが挙げられる。従って、核酸分子又はポリヌクレオチドは、ポリメラーゼによる正確なリードスルー(read-through)を許容する修飾ヌクレオチドも含み得る。
【0041】
「核酸配列」又は「ポリヌクレオチド配列」は、個別の一本鎖又は二本鎖中の一本鎖のいずれかとしての、核酸分子のセンス鎖及びアンチセンス鎖の両方を含む。当業者によって理解されるように、一本鎖の描写は、相補鎖の配列も規定する;従って本明細書中に記載される配列は、当該配列の相補鎖も提供する。特に明記しない限り、特定の核酸配列は、明示的に示された配列のみならず、その変異体及び相補配列も黙示的に包含する。核酸分子は、DNA(ゲノムDNA及びcDNAの両方)、RNA又はハイブリッドであり得る。
【0042】
用語「をコードする核酸分子」とは、rRNA、tRNAなどの構造RNA、或いは特定のタンパク質又はポリペプチドの一次アミノ酸配列、或いはトランス作用性調節剤の結合部位についての配列情報を含む核酸分子をいう。この用語は、具体的には、本来の配列又は特定の宿主細胞におけるコドン選好性に適合するように導入され得る配列の縮重コドン(即ち、単一のアミノ酸をコードする異なるコドン)を包含する。
【0043】
A、T、C、及びG以外の文字は、本明細書中に開示された核酸配列中に存在する場合、多義性を表す。即ち、試料採取された全ての分子について、その位置に1種類を超えるヌクレオチドがある。記号(文字)は以下のように定義される:A=アデニン;C=シトシン;G=グアニン;T=チミン;R=G A(プリン);Y=T C(ピリミジン);K=G T(ケト);M=A C(アミノ);S=G C(強い結合);W=A T(弱い結合);B=G T C(Aを除く全て);D=G A T(Cを除く全て);H=A C T(Gを除く全て);V=G C A(Tを除く全て)。
【0044】
用語「遺伝子」は、用語「核酸分子」又は「核酸配列」と相互交換的に使用され得る。
【0045】
例えば、ボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素をコードする、本明細書中に開示された核酸分子は、生物(例えば、藻類、ラン藻、光合成細菌又は非光合成細菌、真菌(酵母を含む)、或いは植物細胞)中で組換え発現され得る。当業者によって理解されるように、発現コンストラクトは、核酸分子が発現される生物のコドン使用頻度のような特性を考慮して設計され得る。コドン使用頻度は、公知の方法を使用して作表され得る。コドン使用頻度表(藻類及びラン藻のものを含む)は、当該分野において入手可能でもある。
【0046】
用語「相補的な」は、本明細書中、配列が基準ポリヌクレオチド配列の全部又は一部に相補的であるという意味で使用される。
【0047】
「ポリペプチド」とは、アミド結合によるアミノ酸の、明確な順序での連結から形成されるポリマーをいう。通常、ポリペプチドは、生物中である特定の機能を果たす。本明細書中で使用される場合、用語「ポリペプチド」は、ペプチドを含む。
【0048】
本明細書中で使用される場合、「酵素」とは、分子基質の分子生成物への特定の変換を触媒するポリペプチドをいう。用語「酵素」は、本明細書中、用語「ポリペプチド」と相互交換的に使用される。
【0049】
用語「単離された」は、核酸分子又はポリペプチドに適用される場合、その核酸又はポリペプチドが、それが天然状態において会合している他の細胞成分を本質的に含まないことを示す。それは好ましくは均質な状態であり、乾燥又は水性溶液中のいずれであってもよい。純度及び均質性は、典型的には、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又は高圧液体クロマトグラフィーなどの分析化学的技術を使用して決定される。調製物中に存在する優勢な化学種であるポリペプチドは、実質的に精製されている。特に、単離された核酸分子は、その核酸分子が由来する遺伝子に隣接するオープンリーディングフレーム(目的のポリペプチド以外のポリペプチドをコードする)から分離される。
【0050】
本明細書中で使用される場合、「単離された」核酸分子又はポリペプチドは、重量%で少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、12.5%、15%、17.5%、20%、25%、30%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、82.5%、85%、87.5%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はより高い純度に精製され得る。
【0051】
本明細書中で使用される場合、「変異体」とは、縮重コドン置換又はデオキシリボヌクレオチド及びリボヌクレオチドの組合せ、並びに塩基(ウラシル、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、イノシン、キサンチン ヒポキサンチン、イソシトシン、イソグアニンなどを含む)の組合せを含む核酸分子をいう。「変異体」核酸分子は、ヌクレオチドの欠失又は挿入も含み得る。本明細書中で使用される場合、「変異体」は、核酸分子のホモログを含む。「変異体」は、配列番号1〜41、86、87、89〜97、115〜117若しくは124〜179のいずれか1つとして提供されるポリペプチド又はその機能的断片をコードする核酸分子に、或いは配列番号42〜75、88、98、118〜120若しくは180〜229のいずれか1つとして提供される核酸分子、又はその機能的断片と、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子を更に含む。「変異体」とは、上記のような任意の核酸配列の相補鎖もいう。核酸分子の全ての変異体は、トリテルペノイド炭化水素合成活性を有するポリペプチドをコードする。
【0052】
「変異体」ポリペプチドは、アミノ酸の欠失、挿入又は置換を含むポリペプチドを含む。本明細書中で使用される場合、「変異体」は、ポリペプチドのホモログを含む。ポリペプチドの全ての変異体は、トリテルペノイド炭化水素合成活性を有する。
【0053】
本明細書中で使用される場合、「ホモログ」、「相同性」及び「相同的」とは、それぞれ核酸分子間及びポリペプチド間の、ヌクレオチド配列類似性及びアミノ酸配列類似性をいう。「相同性」とは、機能的類似性もいい得る。相同性は、祖先又は進化の指標である。
【0054】
「オルソログ」及び「パラログ」は、2種類の相同的配列であり、用語「ホモログ」に包含される。「オルソロジー」は、共通の祖先に由来する異なる種におけるヌクレオチド配列又はポリペプチドを説明する。「オルソロガスな」核酸分子又はポリペプチドは、同じ機能を有していてもいなくてもよい。「パラロジー(Paralogy)」は、遺伝子重複により分岐した単一の種内の相同的ヌクレオチド配列又はポリペプチドを説明する。
【0055】
本明細書中で使用される場合、第一の核酸分子又は配列(例えば、配列番号6〜9又は30のいずれか1つ)、或いは第一のポリペプチド(例えば、配列番号1〜5又は20〜29のいずれか1つ)の「ホモログ」は、その配列に関して第一の核酸配列又は第一のポリペプチドに実質的に類似の、同じ生物種又は異なる生物種における、第二の核酸分子又は配列、或いは第二のポリペプチドである。さもなくば、「ホモログ」は、機能に関して第一の核酸分子又は第一のポリペプチドに実質的に類似する。
【0056】
従って、トリテルペノイド炭化水素合成核酸分子又はトリテルペノイド炭化水素合成ポリペプチドは、本明細書中に開示された核酸分子又はポリペプチドのホモログ、オルソログ又はパラログを含む。ホモログ、オルソログ又はパラログは、本明細書中に開示された核酸分子又はポリペプチドに対応する。ホモログ、オルソログ又はパラログは、配列番号29又は配列番号30のホモログ、オルソログ又はパラログであり得るが、配列番号10〜13又は42のホモログ、オルソログ又はパラログではない。
【0057】
本明細書中で使用される場合、「断片」とは、コードされたポリペプチドがトリテルペノイド炭化水素合成活性を有する限り、本明細書中に開示された核酸分子の一部を含む核酸分子をいう。例えば、断片は、コードされたポリペプチドがトリテルペノイド炭化水素合成活性を有する限り、当該核酸分子の5’末端、3’末端、5’末端及び3’末端の両方からの、又は5’末端と3’末端との間からの、ヌクレオチドの欠失を含み得る。
【0058】
同様に、ポリペプチドの「断片」は、当該ポリペプチド断片がトリテルペノイド炭化水素合成活性を有する限り、当該ポリペプチドのN末端、C末端、N末端及びC末端の両方からの、又はN末端とC末端との間からの、アミノ酸の欠失を含み得る。
【0059】
本明細書中で使用される場合、「トリテルペノイド炭化水素」は、6つの5炭素イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)単位、又は3つの10炭素テルペン単位の存在によって特徴付けられ得る化合物である。「トリテルペノイド炭化水素」としては、トリテルペノイド、メチル化トリテルペノイド及び部分環式トリテルペノイドが挙げられる。トリテルペノイド炭化水素の特定の例としては、B. brauniiによって合成されるものが挙げられる。トリテルペノイド炭化水素としては、ボトリオコッセン及びスクアレンが挙げられる。
【0060】
本明細書中で使用される場合、「ボトリオコッセン」とは、生存生物によって産生される炭化水素化合物をいい、水に難容性であるが、有機溶媒には易溶性である。より具体的には、「ボトリオコッセン」とは、イソプレン単位を含む炭化水素をいう。より具体的には、「ボトリオコッセン」とは、式C2n−10(式中、n=30〜37(C30〜C37))を含むトリテルペノイド炭化水素をいう。いかなる特定の仮説にも制約されることを望まないが、トリテルペノイド合成(従ってボトリオコッセン合成)は、イソペンテニルピロリン酸(IPP)及びジメチルアリルピロリン酸(DMAPP)前駆体に依存する。IPP及びDMAPPが結合してゲラニルピロリン酸(GPP)を生成し、次いでそれがIPPと結合してFPPを生成する。ボトリオコッセン合成酵素の活性部位内で、2分子のFPPが結合して中間体分子PSPPを形成し、次いでそれがボトリオコッセンを形成する。ボトリオコッセン、特にC30ボトリオコッセン(全てのより大きいボトリオコッセン(C31〜C37)の前駆体である)は、2つのFPP分子のヘッドトゥーヘッドの1’−3結合から生じるトリテルペンである(図36)。究極的には、ボトリオコッセンとは、環式及び非環式のボトリオコッセン及びデヒドロボトリオコッセンを含む、ボトリオコッセン合成酵素の初期活性によって産生されるC30〜C37炭化水素のいずれか1つをいう。
【0061】
本明細書中で使用される場合、「スクアレン」とは、生存生物により産生される炭化水素化合物をいい、水に難容性であるが、有機溶媒には易溶性である。より具体的には、「スクアレン」とは、イソプレン単位を含む炭化水素をいう。より具体的には、スクアレンとは、30炭素原子(C30)を含むトリテルペノイド炭化水素をいう。トリテルペノイド合成(従ってスクアレン合成)は、IPP及びDMAPP前駆体に依存する。IPP及びDMAPPが結合してGPPを生成し、次いでそれがIPPと結合してFPPを生成する。スクアレン合成酵素の活性部位内で、2分子のFPPが結合して中間体分子PSPPを形成し、次いでそれがスクアレンを形成する。スクアレンは、2つのFPP分子のヘッドトゥーヘッドの1’−1結合から生じるトリテルペンである(図36)。究極的には、スクアレンとは、スクアレン合成酵素によって産生されるC30炭化水素をいう。
【0062】
本明細書中で使用される場合、「基質」は、トリテルペノイド炭化水素合成ポリペプチドによって作用されトリテルペノイド炭化水素を生成し得る任意の化合物である。基質は、それ自体テルペノイド炭化水素であり得る。より具体的には、基質は、FPP及び/又はPSPP或いはFPPの前駆体であり得る。基質、FPP及び/又はPSPP或いはFPPの前駆体は、合成品、組換え体であり得、或いは1以上の酵素によって生物により産生され得る。基質、FPP及び/又はPSPP或いはFPPの前駆体は、第一の態様の核酸分子、第二の態様のポリペプチド、又は第三の態様のベクターを保持する第四の態様の組換え生物によって産生され得る。基質、FPP及び/又はPSPP或いはFPPの前駆体は、外因性の供給源から第二の態様のポリペプチド又は第四の態様の組換え生物に提供され得る。
【0063】
上記のように、トリテルペノイド炭化水素合成ポリペプチドは、長鎖C30トリテルペノイド炭化水素(例えば、スクアレン又はボトリオコッセン)への、2つのFPPのC15分子の縮合を触媒する酵素活性を有する。また、トリテルペノイド炭化水素合成ポリペプチドは、長鎖C40リコパジエン炭化水素への、2つのC20ゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)分子の縮合を触媒し得る。
【0064】
「トリテルペノイド炭化水素合成核酸分子」は、基質をトリテルペノイド炭化水素に変換することができるポリペプチドをコードする核酸分子である。一実施形態において、「トリテルペノイド炭化水素合成核酸分子」は、配列番号1〜5又は20〜29のいずれか1つを含む又はそれに由来するポリペプチド或いはその機能的断片又は変異体をコードする核酸分子を含む。別の実施形態において、トリテルペノイド炭化水素合成核酸分子は、配列番号6〜9若しくは30のいずれか1つ、又はその機能的断片若しくは変異体を含む又はそれに由来する。別の実施形態において、トリテルペノイド炭化水素合成核酸分子は、配列番号10、12又は42のいずれか1つに実質的に類似のポリペプチド或いはその断片又は変異体をコードする。更に別の実施形態において、トリテルペノイド炭化水素合成核酸分子は、配列番号11又は配列番号13に実質的に類似する。しかしながら、トリテルペノイド炭化水素合成核酸分子は、配列番号10、12又は42と同一のスクアレン合成酵素はコードせず、配列番号11又は配列番号13と同一ではない。
【0065】
「トリテルペノイド炭化水素合成核酸分子」は以下であり得る:
1)配列番号1〜5又は20〜29のいずれか1つを含むポリペプチド或いはその機能的断片又は変異体をコードする、約100、150、200、300、400、500、1000、1500、2000、又は5000以上のヌクレオチドの領域を含む;
2)配列番号6〜9若しくは30のいずれか1つ、又はその機能的断片若しくは変異体を含む、約100、150、200、300、400、500、1000、1500、2000、又は5000以上のヌクレオチドの領域を含む;
3)配列番号1〜5若しくは20〜29のいずれか1つを含むポリペプチド又はその機能的断片をコードする核酸分子或いはその相補体とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする;
4)配列番号6〜9若しくは30のいずれか1つを含む核酸分子又はその機能的断片或いはその相補体とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする;
5)配列番号1〜5又は20〜29のいずれか1つを含むポリペプチド或いはその機能的断片又は変異体の、少なくとも15連続するアミノ酸、又は少なくとも16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、若しくは550以上連続する残基を含むポリペプチドをコードする;
6)少なくとも20、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、又は550アミノ酸残基の比較領域にわたり、配列番号1〜5若しくは20〜29のいずれか1つを含むポリペプチド又はその機能的断片に、少なくとも55%、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上のアミノ酸同一性を有するポリペプチドをコードする;
7)少なくとも約20、50、100、200、300、400、500、1000以上のヌクレオチドの比較領域にわたり、配列番号1〜5若しくは20〜29のいずれか1つを含むポリペプチド又はその機能的断片をコードする核酸分子に、約55%よりも高い、60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上のヌクレオチド配列同一性を有する核酸配列を有する;
8)少なくとも約20、50、100、200、300、400、500、1000以上のヌクレオチドの比較領域にわたり、配列番号6〜9若しくは30のいずれか1つを含む核酸分子又はその機能的断片に、約55%よりも高い、60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上のヌクレオチド配列同一性を有する核酸配列を有する;
9)配列番号1〜5又は20〜29のいずれか1つを含むポリペプチドをコードする核酸分子に対するプライマーによって増幅される;
7)配列番号6〜9又は30のいずれか1つを含む核酸分子に対するプライマーによって増幅される。
【0066】
エキソン2.1(配列番号6、図6)、3.11及び4.1(配列番号7、図7)、5.3及び6.1(配列番号8、図8)並びに9.2(配列番号9、図9)は、配列番号30(図30)に対応し、配列番号29(図29)に対応するアミノ酸をコードする。
【0067】
エキソン2.1、4.1、5.3、6.1及び9.2は、配列番号29(図29)に対応するアミノ酸(配列番号1〜5、図1〜5)をコードする。
【0068】
本明細書中で使用される場合、「エキソン」とは、前駆体RNAの一部(イントロン)がスプライシングにより除去された後の成熟型のRNA分子で表される核酸配列(DNA又はRNAのいずれか)をいう。成熟RNA分子は、メッセンジャーRNA、又はrRNA若しくはtRNAなどの機能的形態の非コードRNAであり得る。
【0069】
当業者は、スプライスジャンクションから生じる不完全なコドンの存在により、エキソンをコードするヌクレオチド配列のアミノ酸翻訳が、全てのアミノ酸残基をもたらさないかもしれないことを理解するだろう。
【0070】
全ての場合において、「トリテルペノイド炭化水素合成核酸分子」は、トリテルペノイド炭化水素を産生することができるポリペプチドをコードする。
【0071】
用語「トリテルペノイド炭化水素合成核酸分子」とは、二本鎖又は一本鎖核酸分子をいう。トリテルペノイド炭化水素合成核酸分子は、基質の炭化水素への変換を触媒する、活性があるか又は機能的なトリテルペノイド炭化水素合成ポリペプチドをコードする。
【0072】
「トリテルペノイド炭化水素合成ポリペプチド」は、基質をトリテルペノイド炭化水素に変換できる、活性があるか又は機能的なポリペプチドである。当該用語は、基質をトリテルペノイド炭化水素に変換するのに十分な機能を保持するポリペプチド断片又は変異体を含む。
【0073】
一実施形態において、「トリテルペノイド炭化水素合成ポリペプチド」は、配列番号1〜5若しくは20〜29のいずれか1つのアミノ酸配列、又は配列番号29の断片若しくは変異体、或いは配列番号10、12若しくは42のいずれか1つに実質的に類似の配列、又はその断片若しくは変異体を含む。
【0074】
従って、トリテルペノイド炭化水素合成ポリペプチドは、以下であり得る:
1)少なくとも15、20、25、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、又は550以上のアミノ酸の比較領域にわたり、配列番号1〜5若しくは20〜29のいずれか1つ、又は配列番号97の断片に、少なくとも55%の同一性、又は少なくとも(least)60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上のアミノ酸同一性を有する;
2)配列番号1〜5若しくは20〜29のいずれか1つ、又は配列番号29の断片若しくは変異体の、少なくとも15連続するアミノ酸、又は少なくとも16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550以上連続するアミノ酸を含む;又は
3)配列番号1〜5若しくは20〜29のいずれか1つ、又は配列番号29の断片、及び保存的に修飾されたその変異体の部分又は全長アミノ酸配列を含む免疫原に対して産生させた抗体に結合する。
【0075】
全ての場合において、「トリテルペノイド炭化水素合成ポリペプチド」は、トリテルペノイド炭化水素を産生することができるポリペプチドである。
【0076】
トリテルペノイド炭化水素合成ポリペプチドは、宿主生物においてトリテルペノイド炭化水素を産生するために使用され得る。或いは、トリテルペノイド炭化水素合成ポリペプチドは、トリテルペノイド炭化水素を合成するために、即ち宿主細胞の非存在下で使用され得る。
【0077】
本明細書中の「ボトリオコッセン合成酵素」又は「ボトリオコッセン合成酵素ポリペプチド」へのいかなる言及も、デヒドロボトリオコッセンを含むボトリオコッセンを合成するのに十分な活性を有するポリペプチド又はアミノ酸配列への言及である。特定の実施形態において、ボトリオコッセン合成酵素は、FPP及び/又はPSPPをボトリオコッセンに変換できる。別の実施形態において、ボトリオコッセン合成酵素は、反応系からNADPH又はNADHなどの還元当量を制限するか、減らすか、最小限にするか又は除くことにより、FPP及び/又はPSPPをデヒドロボトリオコッセンに変換できる。「ボトリオコッセン合成酵素」は、FPP及び/又はPSPPをボトリオコッセンに変換するのに十分な機能を保持するポリペプチド断片又は変異体を含む。
【0078】
「ボトリオコッセン合成酵素」とは、プレニルトランスフェラーゼのファミリーに属するタンパク質をいう。従って、プレニルトランスフェラーゼに特徴的な特定のモチーフも、ボトリオコッセン合成酵素内に存在する(例えば、アスパラギン酸に富む領域及び/又は基質−Mg2+結合部位など)。
【0079】
トリテルペノイド合成ポリペプチドポリペプチドの生化学的活性に必要なアミノ酸残基を特定する方法は、Pandit et al., J. Biol. Chem., 2000, 275, 30610-30617に記載されている。構造機能解析のためにトリテルペノイド合成ポリペプチドポリペプチドのアミノ酸残基を変更する方法は、Gu et al., J. Biol. Chem., 1998, 273, 12515-12525に記載されている。トリテルペノイド合成ポリペプチド核酸分子又はポリペプチドの構造機能解析を行うための非常に多くの方法が、US 2010/0041120で言及されている。これらの方法は、部位指定(オリゴヌクレオチド指定)突然変異を含み、そのためのキットは市販されている。更に、トリテルペノイド合成ポリペプチド核酸分子又はポリペプチドの構造機能解析のための方法は、当業者に公知であろう。
【0080】
第二の態様のポリペプチドがボトリオコッセン合成酵素であり、且つ当該ポリペプチドがスクアレン及びボトリオコッセンを生成することができる場合、スクアレンよりも多くのボトリオコッセンが生成されよう。例えば、スクアレンに対するボトリオコッセンの比率は、少なくとも約1よりも大きいか、又は少なくとも約2、5、10、20、50、100、200、500、1000、2000、5000、10000、20000、50000、100000、200000、500000、1000000、2000000、5000000、10000000以上よりも大きい。
【0081】
本明細書中で使用される場合、「ボトリオコッセン合成酵素遺伝子」とは、ボトリオコッセン合成酵素ポリペプチド、又はその断片若しくは変異体をコードする核酸分子をいう。従って、このような遺伝子は、多くの場合、ボトリオコッセン合成酵素をコードするcDNA配列である。他の実施形態において、ボトリオコッセン合成酵素遺伝子は、cDNA中に存在しない、イントロンなどの配列を含み得る。
【0082】
用語「ボトリオコッセン合成酵素コード領域」とは、成熟ポリペプチドをコードする核酸分子の領域をいう。
【0083】
「ボトリオコッセン合成酵素核酸分子」は、FPP及び/又はPSPPをボトリオコッセンに変換できるポリペプチドをコードする核酸分子である。
【0084】
用語「ボトリオコッセン合成酵素核酸分子」とは、二本鎖又は一本鎖核酸分子をいう。
【0085】
生物由来のボトリオコッセン合成酵素遺伝子を特定するための適切なプライマーは、本明細書中に記載された配列の比較から作り出し得る。
【0086】
用語「プライマー」とは、10〜100ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドをいい、それらは当業者に知られているようなポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により遺伝子を増幅するために使用される。
【0087】
本明細書中の「スクアレン合成酵素」又は「スクアレン合成酵素ポリペプチド」へのいかなる言及も、デヒドロスクアレンを含むスクアレンを合成するのに十分な活性を有する、活性があるか又は機能的なポリペプチドへの言及である。特定の実施形態において、スクアレン合成酵素は、FPP及び/又はPSPPをスクアレンに変換できる。別の実施形態において、スクアレン合成酵素は、FPP及び/又はPSPPをデヒドロスクアレンに変換できる。当該用語は、FPP及び/又はPSPPをスクアレンに変換するのに十分な機能を保持するポリペプチド断片又は変異体を含む。
【0088】
本開示のスクアレン合成酵素は、配列番号10、12又は42のいずれの1つも包含しない。
【0089】
スクアレン合成酵素ポリペプチドがスクアレン及びボトリオコッセンを生成することができる場合、ボトリオコッセンよりも多くのスクアレンが生成されよう。例えば、ボトリオコッセンに対するスクアレンの比率は、少なくとも約1よりも大きいか、又は少なくとも約2、5、10、20、50、100、200、500、1000、2000、5000、10000、20000、50000、100000、200000、500000、1000000、2000000、5000000、10000000以上よりも大きい。
【0090】
本明細書中で使用される場合、「スクアレン合成酵素遺伝子」とは、スクアレン合成酵素ポリペプチド、又はその断片若しくは変異体をコードする核酸分子をいう。従って、このような遺伝子は、多くの場合、スクアレン合成酵素をコードするcDNA配列である。他の実施形態において、スクアレン合成酵素遺伝子は、cDNA中に存在しない、イントロンなどの配列を含み得る。
【0091】
用語「スクアレン合成酵素コード領域」とは、当該ポリペプチドをコードする核酸分子の領域をいう。
【0092】
「スクアレン合成酵素核酸分子」は、FPP及び/又はPSPPをスクアレンに変換できるポリペプチドをコードする核酸分子である。
【0093】
用語「スクアレン合成酵素核酸分子」とは、二本鎖又は一本鎖核酸分子をいう。
【0094】
生物由来のスクアレン合成酵素遺伝子を特定し且つ特徴付けるための適切なプライマーは、本明細書中に記載された配列から作り出し得る。
【0095】
ボトリオコッセン合成酵素及びスクアレン合成酵素は典型的なトリテルペノイド炭化水素合成ポリペプチドであることから、ボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素核酸分子は、トリテルペノイド炭化水素合成核酸分子の特徴のいずれかを有し得る。同様に、ボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素ポリペプチドは、トリテルペノイド炭化水素合成ポリペプチドの特徴のいずれかを有し得る。
【0096】
当業者は、比較のための配列の最適なアラインメントが、局所相同性アルゴリズムによって、相同性アラインメントアルゴリズムによって、相同性探索法(search for similarity method)によって、これらのアルゴリズム(GAP、BESTFIT、BLAST、FASTA、TFASTA、及びDASH)のコンピューター化された実施によって、又は検査によって、行なわれ得ることを理解するだろう。
【0097】
2つの核酸分子又はポリペプチドは、当該2つの配列中のそれぞれヌクレオチド又はアミノ酸残基の配列が、下記のように最大限の一致のために整列されたときに同じである場合、「同一」であると言われる。随意に、基準配列とクエリー配列との間の配列同一性のパーセンテージは、クエリー配列の長さにわたってのみ考慮される。
【0098】
「配列同一性のパーセンテージ」は、比較領域にわたって2つの最適に整列された配列を比較することにより決定され、ここで比較領域内の核酸又はアミノ酸配列の一部は、2つの配列の最適なアラインメントのために、基準配列(付加も欠失も含まない)と比較して、付加又は欠失(即ち、ギャップ)を含み得る。パーセンテージは、両方の配列において同一の核酸塩基又はアミノ酸残基が存在する位置の数を決定してマッチした位置の数を得、比較領域中の位置の総数でマッチした位置の数を割り、そしてその結果に100を掛けて配列同一性のパーセンテージを得ることによって、算出される。
【0099】
「比較領域」は、本明細書中で使用される場合、2つの配列が最適に整列された後、配列が同じ連続する位置の数の基準配列と比較され得る、連続する位置の数(例えば、15又は20〜600、通常約50〜約200、更に通常約100〜約150)のいずれか1つの区域への言及を含む。
【0100】
合成又は組換え核酸分子の表現の場合、当業者は、挿入された核酸分子が、それが由来した核酸分子の配列と同一である必要はなく、「実質的に同一」であってよいことを認識するだろう。説明されたように、これらの変異体は、具体的にはこの用語に包含される。
【0101】
核酸又はアミノ酸配列に関して用語「実質的な同一性」とは、核酸分子又はポリペプチドが、基準配列に対して少なくとも55%の配列同一性を有する配列を含むことを意味する。或いは、パーセント同一性は、55%から100%までの任意の整数であり得る。典型的な実施形態としては、少なくとも以下が挙げられる:本明細書中に記載されるプログラム(好ましくは、下記のような標準的パラメーターを使用するBLAST)を使用して基準配列と比較して、55%、60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%以上の同一性。
【0102】
従って、トリテルペノイド炭化水素合成核酸分子(例えば、ボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素核酸分子)は、配列番号1〜5若しくは20〜29のいずれか1つを含むポリペプチド又はその機能的断片をコードする核酸分子に対して実質的な同一性を有する核酸分子、或いは配列番号6〜9若しくは30のいずれか1つ又はその機能的断片に対して実質的な同一性を有する核酸分子を含む。上述のように、トリテルペノイド炭化水素合成ポリペプチド、例えば、ボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素は、配列番号1〜5若しくは20〜29のいずれか1つに対して実質的な同一性を有するポリペプチド、又はその機能的断片を含む。
【0103】
「実質的に類似」であるポリペプチドは、同一ではない残基の位置が保存的アミノ酸変化によって異なり得ることを除き、上述のように配列を共有する。保存的アミノ酸置換とは、類似の側鎖を有する残基の互換性をいう。例えば、脂肪族側鎖を有する一群のアミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシンである;脂肪族−ヒドロキシル側鎖を有する一群のアミノ酸は、セリン及びスレオニンである;アミド含有側鎖を有する一群のアミノ酸は、アスパラギン及びグルタミンである;芳香族側鎖を有する一群のアミノ酸は、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンである;塩基性側鎖を有する一群のアミノ酸は、リジン、アルギニン、及びヒスチジンである;そして硫黄含有側鎖を有する一群のアミノ酸は、システイン及びメチオニンである。典型的な保存的アミノ酸置換の群は以下である:バリン−ロイシン−イソロイシン;フェニルアラニン−チロシン;リジン−アルギニン;アラニン−バリン;アスパラギン酸−グルタミン酸;及びアスパラギン−グルタミン。
【0104】
ヌクレオチド配列が実質的に同一であることの別の指標は、2つの分子が、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で互いと、又は第三の核酸とハイブリダイズするか否かである。
【0105】
本明細書中に開示されたトリテルペノイド炭化水素合成核酸分子又はポリペプチド、例えば、ボトリオコッセン合成酵素若しくはスクアレン合成酵素核酸分子又はポリペプチドは、配列番号6〜9若しくは30のいずれか1つ又はその機能的断片を含む典型的な核酸配列、及び配列番号1〜5若しくは20〜29のいずれか1つ又はその機能的断片を含む典型的なポリペプチド配列を使用して、ハイブリダイゼーション及び/又は配列解析などの技術によって特定され特徴付けられる核酸分子及びポリペプチドを含む。
【0106】
用語「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、プローブが、典型的には核酸分子の複雑な混合物中でその標的部分配列とハイブリダイズするが、他の配列とはしない条件をいう。ストリンジェントな条件は、配列依存的であり、状況により異なる。より長い配列は、より高い温度において特異的にハイブリダイズする。一般的には、ストリンジェントな条件は、規定のイオン強度pHにおける特定の配列についての融点(thermal melting point)(Tm)よりも約5〜10℃低くなるように選択される。Tmは、(規定のイオン強度、pH、及び核酸分子濃度下で)標的に相補的なプローブの50%が、平衡状態で標的配列にハイブリダイズする温度である(標的配列は過剰に存在するので、Tmにおいては、プローブの50%が平衡状態において占有される)。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、塩濃度が、pH7.0から8.3において、約1.0M未満のナトリウムイオン、典型的には約0.01Mから1.0Mのナトリウムイオン濃度(又は他の塩)であり、温度が、短いプローブ(例えば、10から50ヌクレオチド)については少なくとも約30℃、長いプローブ(例えば、50ヌクレオチドより長い)については少なくとも約60℃である条件である。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、ホルムアミドなどの不安定化剤の添加によっても達成され得る。選択的又は特異的ハイブリダイゼーションのために、陽性シグナルは少なくともバックグラウンドハイブリダイゼーションの2倍、随意にバックグラウンドハイブリダイゼーションの10倍である。典型的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、以下のようであり得る:50%ホルムアミド、5×SSC及び1% SDS、42℃でインキュベーションするか、又は5×SSC、1% SDS、65℃でインキュベートし、0.2×SSC及び0.1% SDS中55℃、60℃、又は65℃で洗浄する。このような洗浄は、5、15、30、60、120分間以上実施され得る。
【0107】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で互いにハイブリダイズしない核酸はそれでも、それらがコードするポリペプチドが実質的に同一であれば、実質的に同一である。これは、例えば、核酸分子のコピーが、遺伝子コードにより許容される最大のコドン縮重を使用して作り出される場合に起こる。このような場合、核酸分子は、典型的には中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする。例えば、ボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素核酸分子は、配列番号6〜9若しくは30のいずれか1つ、又はその機能的断片の配列を有する核酸プローブと、中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件(例えば、Tm約40℃)下でハイブリダイズするその能力によっても特定され得る。このようなボトリオコッセン合成酵素核酸配列は、選択された核酸プローブに対して、例えば、約25〜30%以下の塩基対ミスマッチを有し得る。配列番号6〜9若しくは30のいずれか1つ、又はその機能的断片若しくは変異体は、典型的なボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素核酸配列を含む。典型的な「中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、40%ホルムアミド、1M NaCl、1% SDSのバッファー中37℃でのハイブリダイゼーション、及び1×SSC中45℃での洗浄を含む。このような洗浄は、5、15、30、60、120分間以上実施され得る。陽性ハイブリダイゼーションは、少なくともバックグラウンドの2倍である。
【0108】
当業者は、類似のストリンジェンシーの条件を提供するために別のハイブリダイゼーション及び洗浄条件が利用され得ることを容易に認識するであろう。
【0109】
ある生物由来のトリテルペノイド炭化水素合成遺伝子(ボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素遺伝子など)を特定するための適切なプローブは、本明細書中に記載された配列の比較から作り出され得る。
【0110】
結果的に、「配列同一性のパーセンテージ」及び/又はハイブリダイゼーションは、本明細書中に開示されたトリテルペノイド炭化水素合成遺伝子又はポリペプチドのホモログ、オルソログ又はパラログの特定を支援し得る。
【0111】
相同的トリテルペノイド炭化水素合成核酸分子(ボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素核酸分子など)の単離又は作製は、多数の技術によって達成され得る。クローニング及び発現のこのような技術が、ボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素核酸分子に関して取り上げられよう。例として、本明細書に開示された配列に基づくオリゴヌクレオチドプローブは、所望の種由来のcDNA又はゲノムDNAライブラリー中の所望の核酸分子を特定するために使用され得る。次いで、このようなcDNA又はゲノムライブラリーは、クローン化されたボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素遺伝子の配列(例えば、配列番号6〜9若しくは30のいずれか1つ、又はその機能的断片若しくは変異体)に基づくプローブを使用してスクリーニングされ得る。プローブは、同じか又は異なる種における相同的遺伝子を単離するために、ゲノムDNA又はcDNA配列とハイブリダイズするために使用され得る。
【0112】
或いは、目的の核酸分子は、増幅技術を使用して核酸試料から増幅され得る。例として、PCRは、mRNAから、cDNAから、ゲノムライブラリー又はcDNAライブラリーから直接、遺伝子の配列を増幅させるために使用され得る。PCR及び他のin vitro増幅方法も、例えば、発現させるポリペプチドをコードする核酸分子をクローン化するために、試料中の所望のmRNAの存在を検出するための、核酸配列決定のための、又は他の目的のためのプローブとして使用するための核酸分子を作製するために、有用であり得る。
【0113】
本明細書中で使用される場合、トリテルペノイド炭化水素合成核酸分子(ボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素核酸分子など)の「発現」とは、トリテルペノイド炭化水素合成核酸分子(例えば、ボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素核酸分子)を、それが通常は発現されない細胞(例えば、藻類(緑藻類など)、ラン藻、光合成細菌若しくは非光合成細菌、真菌(酵母を含む)又は植物)内に導入することをいう。従って、トリテルペノイド炭化水素合成活性又は発現における「増加」は、一般に、トリテルペノイド炭化水素合成活性を有さないか低いトリテルペノイド炭化水素合成活性を有する野生型細胞(例えば、藻類、ラン藻、光合成細菌若しくは非光合成細菌、真菌(酵母を含む)、又は植物)と比較して決定される。
【0114】
トリテルペノイド炭化水素合成核酸分子又はポリペプチド(例えば、ボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素核酸分子又はポリペプチド)の「増加した」又は「増強された」活性又は発現とは、トリテルペノイド炭化水素合成活性又は発現(例えば、ボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素活性又は発現)における変化をいう。このような増加した活性又は発現の例としては、以下が挙げられる:ボトリオコッセン合成酵素核酸分子若しくはポリペプチド又はスクアレン合成酵素核酸分子若しくはポリペプチドのボトリオコッセン合成酵素発現若しくは活性又はスクアレン合成酵素発現若しくは活性が、野生型の非トランスジェニック対照生物におけるそれのレベルを超えて増加する(即ち、ボトリオコッセン合成酵素若しくはスクアレン合成酵素活性の量、又はボトリオコッセン合成酵素若しくはスクアレン合成酵素核酸分子の発現が増加する);ボトリオコッセン合成酵素若しくはスクアレン合成酵素活性、又はボトリオコッセン合成酵素若しくはスクアレン合成酵素核酸分子の発現が、野生型の非トランスジェニック細胞ではそれが容易には検出されない細胞中にある(即ち、ボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素タンパク質の発現が、その活性のように、増加する);ボトリオコッセン合成酵素若しくはスクアレン合成酵素活性、又はボトリオコッセン合成酵素若しくはスクアレン合成酵素核酸分子の発現が、ある細胞において、野生型の非組換え対照中よりも長い期間存在する場合にも、ボトリオコッセン合成酵素若しくはスクアレン合成酵素活性、又はボトリオコッセン合成酵素若しくはスクアレン合成酵素核酸分子発現は増加する(即ち、ボトリオコッセン合成酵素若しくはスクアレン合成酵素活性、又はボトリオコッセン合成酵素若しくはスクアレン合成酵素タンパク質の発現の持続期間が増加する)。
【0115】
トリテルペノイド炭化水素合成核酸分子若しくはポリペプチドの活性若しくは発現、又はトリテルペノイド炭化水素の生成は、その活性、発現又は生成が、トリテルペノイド炭化水素合成遺伝子若しくはポリペプチドを欠く生物と比較して、又は野生型若しくは内因性トリテルペノイド炭化水素合成遺伝子若しくはポリペプチドを含む生物と比較して、或いは無細胞系において別の推定若しくは相同的トリテルペノイド炭化水素合成ポリペプチドと比較して、少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、12.5%、15%、17.5%、20%、25%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、82.5%、85%、87.5%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%以上、例えば少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50、100倍以上である場合、「増加した」又は「増強された」とみなされる。
【0116】
本明細書中で使用される場合、「ベクター」とは、細胞内に遺伝物質を導入するため、特に外因性遺伝物質を導入するために使用される任意のビヒクルをいう。
【0117】
「発現ベクター」とは、宿主細胞内に導入された場合、RNA又はポリペプチドのそれぞれ転写及び/又は翻訳をもたらす、核酸コンストラクトをいう。
【0118】
ポリヌクレオチド配列の導入は、例えば、ベクターの使用により一時的であるか、又は例えば、宿主藻類の核ゲノム、色素体ゲノム若しくはミトコンドリアゲノムのいずれかへのベクター全体若しくはその断片のいずれかの組込みにより恒久的であるかのいずれかであり得る。
【0119】
藻類細胞において所望のポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチド配列の発現を増加させるための適切なベクターは、当該分野において公知である(米国特許第7,232,679号に記載された発現ベクターなど)。ポリヌクレオチド配列の発現を増加させるためのこのようなベクターは、参照により本明細書中に組み込まれる。例えば、適切なベクターとしては、pBBR-K-mev-opl6-l、pBBR-K-mev-opl6-2、pDS-mvaA、pDS-idi、pDS-hcs、pDS- mvk、pDS-pmk、pDS-mvd、pDS-His-mvaA、pDS-His-idi、pDS-His-hcs、pDS-His-mvk、pDS- His-pmk、pDS-His-mvd、pBBR-K-Zea4、pBBR-K-Zea4-up、pBBR-K-Zea4-down、pBBR-K- PcrtE-crtE-3、pBBR-tK-PcrtE-mvaA、pBBR-tK-PcrtE-idi、pBBR-tK-PcrtE-hcs、pBBR-tK- PcrtE-mvk、pBBR-tK-PcrtE-pmk、pBBR-tK-PcrtE-mvd、pBBR-K-PcrtE-mvaA-crtE-3、pDS- His-phaA、pBBR-K-PcrtE-crtW、pBBR-K-PcrtE-crtWZ、pBBR-K-PcrtE-crtZW、及びそれらの組合せが挙げられる。
【0120】
トリテルペノイド炭化水素合成核酸分子(例えば、ボトリオコッセン合成酵素核酸分子又はスクアレン合成酵素核酸分子)を含むベクターは、藻類、植物又は細菌細胞に選択可能な表現型を与えるマーカー遺伝子を含み得る。例えば、マーカーは、抗生物質耐性(カナマイシン、G418、フレオマイシン(ゼオシンTM)、ブレオマイシン、ハイグロマイシンなどに対する耐性など)をコードし得る。一実施形態において、Chlamydomonasにおける使用のための選択マーカーは、スペクチノマイシン耐性、カナマイシン及びアミカシン耐性、ゼオマイシン(zeomycin)、ブレオマイシン又はフレオマイシン(ゼオシンTM)耐性、パラモマイシン(paramomycin)、又はネオマイシン耐性をもたらすマーカーであり得る。
【0121】
宿主生物のための選択マーカーは、当該分野において周知である。
【0122】
「調節エレメント」は、プロモーターを含み、これは構成的又は誘導性のいずれかであり得る。一実施形態において、プロモーターは、変化する環境条件の影響下で、ボトリオコッセン合成酵素核酸分子の発現を指示するために使用され得る。誘導性プロモーターを介して転写をもたらし得る環境条件の例としては、嫌気的条件、高温、又は光の存在が挙げられる。化学試薬への曝露で誘導されるプロモーターも、トリテルペノイド炭化水素合成核酸分子(例えば、ボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素核酸分子)を発現させるために使用され得る。
【0123】
他の有用な誘導性調節エレメントとしては、銅誘導性調節エレメント、テトラサイクリン及びクロルテトラサイクリン誘導性調節エレメント、エクダイソン誘導性調節エレメント、熱ショック誘導性調節エレメント、並びにlacオペロンエレメント(例えば、IPTG誘導性発現を与えるために、構成的に発現するlacリプレッサーと組合せて使用される)が挙げられる。誘導性調節エレメントは、例えば、硝酸塩誘導性プロモーター(例えば、ホウレンソウ亜硝酸還元酵素遺伝子に由来する)、又は光誘導性プロモーター(RuBPカルボキシラーゼの小サブユニット若しくはLHCP遺伝子ファミリー、又は光に関連するものなど)でもあり得る。
【0124】
用語「プロモーター」又は「調節エレメント」とは、転写を指示する転写開始点の上流又は下流に位置する領域又は配列決定因子をいう。本明細書中で使用される場合、プロモーターは、転写開始点の近くの必要な核酸配列(ポリメラーゼII型プロモーターの場合、TATAエレメントなど)を含む。プロモーターは、随意に、遠位のエレメント(転写開始点から数千塩基対も離れて位置し得る)も含む。
【0125】
「構成的」プロモーターは、ほとんどの環境及び発生条件下で活性があるプロモーターである。
【0126】
「誘導性」プロモーターは、環境又は発生による調節下で活性を有するプロモーターである。
【0127】
用語「作動可能に連結された」とは、核酸発現制御配列(プロモーターなど)と第二の核酸配列(ボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素遺伝子など)との間の機能的な連結をいい、ここで発現制御配列は、第二の配列に対応する核酸分子の転写を指示する。
【0128】
「藻類プロモーター」、「細菌プロモーター」、「真菌プロモーター」、「酵母プロモーター」又は「植物プロモーター」は、それぞれ藻類、細菌、真菌(酵母を含む)及び/又は植物細胞において転写を開始させることができるプロモーターである。従って、このようなプロモーターは、藻類、ラン藻、細菌又は植物細胞において活性があるが、その生物に由来する必要はない。調節エレメントの生物学的機能を破壊することなく、限られた改変がなされ得ること、及びこのような限られた改変が、野生型調節エレメントと比較して実質的に同等であるか又は増強された機能を有する調節エレメントをもたらし得ることが理解される。これらの改変は、部位指定突然変異による場合のように計画的であり得るか、又は調節エレメントを保持する宿主における突然変異による場合のように偶発的であり得る。全てのこのような改変されたヌクレオチド配列は、発現を与える能力が実質的に保持されている限り、調節エレメントの定義に含まれる。
【0129】
一例において、光に応答性であるプロモーター配列は、光に曝露されるChlamydomonas内に導入されるボトリオコッセン合成酵素核酸コンストラクトの発現を促すために使用され得る。フィトクロム/PIF3系などの、他の光誘導性プロモーター系も使用され得る。更に、熱に応答性でもあるプロモーターが使用され得、Chlamydomonasなどの藻類において発現を促すために用いられ得る。例えば、緑藻類などの藻類における発現のための追加のプロモーターとしては、RbcS2及びPsaDプロモーターが挙げられる。
【0130】
一実施形態において、プロモーターは、形質転換される種又は別の種における光合成に関連する遺伝子由来であり得る。例えば、ある種由来のこのようなプロモーターは、形質転換された藻類の細胞又は別の光合成海洋生物の細胞におけるタンパク質の発現を指示するために使用され得る。適切なプロモーターは、他の光合成生物由来の公知配列から単離され得るか又は他の光合成生物由来の公知配列に基づき合成され得る。好ましいプロモーターは、形質転換される藻類宿主の光合成遺伝子と相同的な、他の光合成を行なう種由来の遺伝子のためのものである。例えば、フコキサンチン クロロフィル結合タンパク質由来の一連の集光性プロモーターが、Phaeodactylum tricornutumにおいて特定されている。他の実施形態において、カロテノイド クロロフィル結合タンパク質プロモーター(ペリジニン クロロフィル結合タンパク質のものなど)が使用され得る。
【0131】
一実施形態において、異種トリテルペノイド炭化水素合成核酸分子(例えば、ボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素核酸分子)の発現を促すために使用されるプロモーターは、構成的プロモーターである。藻類における使用のための構成的な強力なプロモーターの例としては、例えば、atpA、atpB、及びrbcL遺伝子のプロモーターが挙げられる。ラン藻において活性がある種々のプロモーターも公知である。これらとしては、ラン藻におけるpsbA3遺伝子の(構成的)プロモーターなどのプロモーターが挙げられる。植物において作動可能な他のプロモーター(例えば、CaMV35Sプロモーターなどの植物ウイルス由来のプロモーター)も、藻類において用いられ得る。
【0132】
藻類の細胞のためのプロモーター配列は、好ましくは、藻類の種又は近縁の生物から単離される。高等植物において機能的なプロモーターは、高等植物と近縁の藻類の群を除き、あまり好ましくない。例えば、35S CaMVプロモーター(多くの植物種において活性がある)は、Chlamydomonasにおいて完全に不活性である(Day et al.(1990) Physiol. Plantarum 78:254-260)。
【0133】
適切なプロモーターの例としては、ヒドロゲナーゼプロモーター、シトクロムC6(Cyc6)プロモーター、Nia1プロモーター、CabII−1プロモーター、Ca1プロモーター、Ca2プロモーター、コプロゲンオキシダーゼプロモーター、藻類のリブロース二リン酸カルボキシラーゼ小サブユニット遺伝子(SSU)プロモーター、及び藻類のピルビン酸キナーゼプロモーターが挙げられる。追加の適切なプロモーターとしては、アリールスルファターゼプロモーター、及び多細胞性緑藻類ボルボックス由来のアミノグリコシド3’−ホスホトランスフェラーゼ遺伝子(aph VIII)プロモーター、並びにC. reinhardiiの核において遺伝子発現を促すために広く使用されてきたRbcS2プロモーターが挙げられる。
【0134】
C. reinhardtiiにおける使用のための別の適切なプロモーターは、Schroda et al. The Plant Journal, 2000, 21, 121-131及びSchroda et al., The Plant Journal, 2002, 31, 445-455に開示されたようなHsp70A−RbcS2ハイブリッドプロモーター(例えば、pBC1及び他のプラスミド中の)である。
【0135】
一実施形態において、プロモーターは、トリテルペノイド炭化水素合成遺伝子(例えば、ボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素遺伝子)に対応するゲノムクローンの5’配列を解析することにより特定される。プロモーター配列に特徴的な配列は、プロモーターを特定するために使用され得る。
【0136】
プロモーターは、例えば、トリテルペノイド炭化水素合成コンストラクト(ボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素発現コンストラクトなど)を導入することが望ましい植物細胞(例えば、緑藻類)において発現を促す当該プロモーターの能力を試験することにより評価され得る。
【0137】
適切な調節エレメント(例えば、エンハンサーエレメント)の例としては、以下が挙げられる:Kucho et al.(Plant Physiol 2003, 133(2):783-93)に記載されたEE−1及びEE−2;Wu et al.(Mol Genet Genomics 2001, 265(5):763-70)に記載されたGCCボックスエンハンサーエレメント;並びにPsaDの隣接領域に関してFischer, et al.(Mol Genet Genomics 2001, 265(5):888-94)に記載されたもの。
【0138】
C. reinhardtiiにおける導入遺伝子発現に適したエンハンサーエレメントは、Lumbreras et al., The Plant Journal, 1998, 14, 441-447及びColombo et al., Funct. Plant Biol., 2002, 29, 231-241にも記載されている。
【0139】
「Botryococcus braunii」又は「B. braunii」とは、クロロコックム目(order Chlorococcales)(緑藻綱(class Chlorophyceae))の群体性緑藻類をいう。B. brauniiの特定の株は、典型的にはそれらの乾燥重量のおよそ30〜40パーセント、又はそれ以上である、著しく高いレベルの脂質又はトリテルペノイド炭化水素を合成し蓄積する。
【0140】
本明細書中で使用される場合、「株」とは、同じ種に属するが、同じ種の第二の生物と比較して少なくとも1つの異なる特徴を示す生物をいう。異なる特徴は、比較される株のゲノムにおける差異によって引き起こされ得る。従って、組換え生物も、宿主生物の「株」である。特定の種類の株は、本明細書中「品種」と呼ばれる。「品種A」とは、その主要な脂質炭化水素が、式C2n−10(式中nは、23〜31の奇数である)を有する「アルカジエン(alkadiene)」及び「アルカトリエン(alkatriene)」(脂肪酸の誘導体)である、B. brauniiの株をいう。「品種B」とは、主要な脂質炭化水素が「ボトリオコッセン」であるB. brauniiの株をいう。「品種L」とは、主要な脂質炭化水素が「リコパジエン(lycopadiene)」であるB. brauniiの株をいう。
【0141】
本明細書中で使用される場合、「生物」とは、個々の生きた系をいう。
【0142】
「宿主生物」とは、第一の生物以外の第二の生物に由来する外因性のDNA若しくはRNA、又はポリペプチドを含む、第一の生物をいう。
【0143】
宿主生物は、脊椎動物である生物を除く、「非ヒト」生物である。
【0144】
宿主生物は、単細胞生物、糸状生物、高等植物又は大型藻類(海藻(例えばパシフィックジャイアントケルプ(Pacific giant kelp))など)であり得る。パシフィックジャイアントケルプは、北米及び中米の太平洋沿岸で発見された海洋性藻類の一種である。それは微細な胞子として生まれるが、60mまで生長し得、上部の葉状体は表面において密集した林冠を形成する。ケルプの葉状体は1日当たり300mm〜600mm生長し得、このことはケルプを大量のトリテルペノイド炭化水素を短期間で製造するために理想的なものにする。例えば、Copping, et al., 2008, Techno-Economic Feasibility Analysis of Offshore Seeweed Farming for Bioenergy and Biobased products, Independent Research and Development Report, Battelle Pacific Northwest Divisionを参照のこと(参照により本明細書中に組み込まれる)。
【0145】
特定の実施形態において、宿主生物は微生物である。
【0146】
本明細書中で使用される場合、「微生物」とは、微細藻類、細菌、真菌(酵母を含む)、ラン藻、珪藻、光合成細菌若しくは非光合成細菌、又はユーグレナ藻(Euglenids)をいう。
【0147】
一実施形態において、藻類が使用される。「藻類(Alga)」、「藻類(algae)」、「微細藻類(microalga)」、「微細藻類(microalgae)」などとは、葉状植物門(phylum Thallophyta)の藻類亜門(subphylum Algae)に属する植物をいう。藻類は、単細胞の、光合成を行い、酸素を産生する藻類であり、根も茎も葉も持たない非寄生性の植物である;それらはクロロフィルを含有し、微細なものから大型の海藻まで、多種多様の大きさがある。緑藻類(真核生物−緑色植物亜界−緑藻植物門−緑藻類に属し、クロロフィルa及びクロロフィルbを有する、酸素発生型光合成の単細胞真核生物である)が使用され得る。しかしながら、藻類は、当該藻類が、トリテルペノイド炭化水素(ボトリオコッセン又はスクアレンなど)を産生するための第一の態様の核酸分子又は第三の態様のベクターの宿主となることができる限り、藍藻類、紅藻類又は褐藻類でもよい。
【0148】
一実施形態において、緑藻類、ラン藻(藍藻類)、又は珪藻が使用される。緑藻類の例としては、以下が挙げられる:そこからボトリオコッセン合成酵素を単離したもの以外のBotryococcus sp.(B. braunii品種A若しくは品種L、又はBotryococcus sudeticusなど);Chlamydomonas sp.(例えば、C. reinhardtii(ボルボックス目−クラミドモナス科に分類される));Chlorella sp.(例えば、Chlorella vulgaris又はNC64A);Scenedesmus obliquus;Dunaliella salina;又はHaematococcus pluvialis。他の例としては、Choricystis sp.(例えば、Ch. minor及びCh. chodatii)が挙げられる。ラン藻の例としては、以下が挙げられる:Microcystis sp.;Synechocystis sp.;又はSpirulina platensis。Navicula tennerimaは、使用され得る珪藻種の一例である。
【0149】
或いは、藻類は、Volvox carteri、Ostreococcus tauri、Ostreococcus lucimarinus、Thalassiosira pseudonana、Pheodactylum tricornutum、又はAureococcus anophagefferensであり得る。
【0150】
別の実施形態において、ユーグレナ藻(euglanid)が使用され得る(例えば、Euglena sp.)。
【0151】
更に別の実施形態において、細菌が使用され得る。細菌は、光合成を行なうもの(例えば、Rhodospirillum rubrum)又は光合成を行なわないもの(例えば、E. coli)であり得る。
【0152】
別の実施形態において、別の光合成生物が使用され得る(例えば、植物細胞)。適切であり得る植物細胞としては、Nicotiana tobaccum又はArabidopsis thalianaの細胞が挙げられる。
【0153】
一実施形態において、真菌が使用され得る。例えば、酵母が使用され得る(例えば、S. cerevisiae又はPichia sp.)。
【0154】
本明細書中で使用される場合、「組換え生物」又は「トランスジェニック生物」とは、第一の又はドナー供給源由来の遺伝物質を保持する第二の生物、即ち「宿主生物」をいう。「組換え生物」とは、その中で外因性核酸分子が発現する任意の生物(藻類、細菌、真菌(酵母を含む)又は植物など)をいう。より具体的には、当該用語は、ドナー及び宿主生物の両方の所望の特徴を示す任意の形質転換された藻、細菌、真菌(酵母を含む)、又は植物をいう。ドナー生物の所望の特徴は、トリテルペノイド炭化水素合成核酸分子(例えば、ボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素核酸分子)であるか、又は所望の特徴は、トリテルペノイド炭化水素合成ポリペプチド(例えば、ボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素ポリペプチド)であり、それらのいずれもが、宿主生物において、ドナー生物と類似の高いトリテルペノイド炭化水素含量に寄与する。宿主生物の所望の特徴としては、安定性及び/又は速い増殖が挙げられる。従って、「組換え生物」は、宿主生物を超えるレベルのトリテルペノイド炭化水素であって、ドナー株のレベルとより類似のレベルのトリテルペノイド炭化水素を合成する。所望の「組換え生物」はまた、ドナー生物よりも安定であり且つ/又は早く増殖する。
【0155】
本明細書中で使用される場合、「組換え(recombinant)」は、第一の又はドナー供給源由来の遺伝物質を保持する第二の種又は遺伝物質の宿主種を説明する。従って、宿主は、外因性遺伝物質(例えば、DNA又はRNA)を保持する。「組換え」は、「遺伝子操作された」又は「トランスジェニック」と互換的に使用される。
【0156】
本明細書中で使用される場合、「遺伝子操作」又は「分子バイオテクノロジー」とは、DNA又はRNAについて行なわれる、ヒトによってもたらされる人工的な任意のプロセスをいい、破壊、単離、複製、改変及び異なる生物への導入が挙げられるが、これらに限定されない。遺伝子操作を受けた生物は、本明細書中、「組換え体(recombinant)」とも呼ばれる。
【0157】
本明細書中で使用される場合、「外因性」とは、生物に対して外部に由来する分子(例えば、DNA、RNA又は化合物)をいう。DNA又はRNAに関して、当該用語は、「異種」と互換的に使用され得る。
【0158】
逆に、本明細書中で使用される場合、「内因性」とは、生物内に由来する分子(例えば、DNA、RNA又は化合物)をいう。
【0159】
用語「異種」とは、宿主中に形質転換される遺伝子を通常は有さない宿主(例えば、株、種又は属)をいうか、又は遺伝子を人工的に与えられた宿主(例えば、株、種又は属)中に通常は存在しない当該遺伝子をいう。用語「異種」は、外因性遺伝子の場合、用語「外因性」と相互交換的に使用される。
【0160】
核酸分子は、それが外来種由来であれば、又は、それが同じ種由来である場合にはヒトの行為によってその本来の形から改変されれば、第二の核酸分子「に対して異種」である。例えば、異種コード配列に作動可能に連結されたプロモーターとは、当該プロモーターが由来したものとは異なる種由来のコード配列、又は、同じ種由来である場合には、任意の天然に存在する対立遺伝子変異体とは異なるコード配列をいう。
【0161】
本開示は、トリテルペノイド炭化水素合成ポリペプチドに加えて、ボトリオコッセンなどのトリテルペノイド炭化水素の合成において有用なポリペプチドをコードする核酸分子若しくはベクターで更に形質転換された組換え生物又は宿主生物を考慮する。例えば、組換え生物は、FPP合成酵素又はメチルトランスフェラーゼ(ボトリオコッセンメチルトランスフェラーゼ又はスクアレンメチルトランスフェラーゼなど)も含み得る。
【0162】
本明細書中で使用される場合、「形質転換(transform)」(及びそのバリエーション)とは、ドナー生物由来の外因性DNA又はRNAを宿主生物に導入するプロセスをいう。当該用語は、限定的な意味では使用されず、それによって外来DNAが宿主生物に導入され得る任意のメカニズムを含む。従って、「形質転換」としては、例えばエレクトロポレーション、トランスフェクション、遺伝子銃、ウイルス法(viral methods)、及びガラスビーズ法が挙げられるが、これらに限定されない。用語「形質転換された」は、遺伝子とその遺伝子を以前は含有していなかった生物とを本質的に結合させ、そして生物の性接合以外のプロセスを使用する、ヒトによる生物の遺伝子改変による生物と遺伝子との人工的な結合をいう。形質転換の後、遺伝子の機能は、新たな生物において生じても生じなくてもよい。
【0163】
藻類において、核ゲノム、ミトコンドリアゲノム及び葉緑体ゲノムは、種々の公知の方法(微粒子銃(microparticle bombardment)(例えば、DNA被覆金粒子)による方法、又はガラスビーズ法を使用することを含む)により形質転換される。
【0164】
一実施形態において、トリテルペノイド炭化水素合成核酸分子(例えば、ボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素核酸分子)は、藻類の葉緑体に導入され、且つ/又は藻類の葉緑体を標的とする。別の実施形態において、トリテルペノイド炭化水素合成核酸分子(例えば、ボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素核酸分子)は、核に導入され、且つ/又は核を標的とする。
【0165】
上記の技術において単離された配列を使用するために、緑藻類、他の真核藻類、ラン藻、光合成細菌若しくは非光合成細菌、真菌(酵母を含む)又は植物細胞の形質転換に適した合成又は組換えDNAベクターが調製される。
【0166】
形質転換のための技術は、当該分野において周知であり、科学技術文献に記載されている。例えば、トリテルペノイド炭化水素合成核酸分子(例えば、ボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素核酸分子)をコードするDNA配列は、形質転換された藻類、ラン藻、細菌、真菌(酵母を含む)又は植物の目的とする細胞において当該核酸分子の転写を指示する転写調節配列及び他の調節配列と組合せられ得る。一実施形態において、ボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素核酸分子を含む発現ベクターは、ボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素核酸分子に作動可能に連結されたプロモーターを更に含む。他の実施形態において、ボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素核酸分子の転写を指示するプロモーター及び/又は他の調節エレメントは、生物にとって内因性であり、異種ボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素核酸分子が内因性プロモーターに作動可能に連結され、発現が内因性プロモーターによって促されるように、例えば、相同組換えにより、ボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素核酸分子を含むベクターが導入される。
【0167】
本開示は、種々の通常の合成又は組換え核酸技術を用いる。一般に、記載された合成又は組換えDNA技術における命名法及び実験手順(laboratory procedures)は、周知のものであり、当該分野において一般的に用いられている。
【0168】
本明細書中で使用される場合、「バイオ燃料」とは、補充され得、大気中の二酸化炭素レベルへの正味の寄与を減らすか、最小限にするか又は寄与しない、炭素源由来の燃料をいう。より具体的には、バイオ燃料とは、トリテルペノイド炭化水素合成遺伝子を発現する生物由来の炭素源をいい、脂質又は炭化水素が、燃料として、又は燃料を製造するために使用され得る。バイオ燃料を製造するためには、トリテルペノイド炭化水素の加水分解クラッキング(hydrolytic cracking)又は水素化分解が必要であり得る。バイオ燃料は、伝統的な「化石」燃料とは異なる。
【0169】
本開示に従って製造されるトリテルペノイド炭化水素は、燃料として直接燃焼され得る。しかしながら、内燃機関における性能のために、トリテルペノイド炭化水素は、熱分解及び触媒クラッキングなどのプロセスにより改変されるべきである。粗製トリテルペノイド炭化水素は、Kitazato et al., Sekiyu Gakkaishi 32:28によって教示されたように触媒クラッキングによりぺトロール(ガソリン)、ライトサイクルオイル(light cycle oil)、ヘビーサイクルオイル(heavy cycle oil)、及びコークスに変換され得る。藻類の炭化水素の触媒クラッキングにより得られるぺトロール(ガソリン)の収率は、石油から得られる収率と同等である。また、製造されるガソリンは、運搬用車両における直接的な使用のために十分に高いオクタン価を有する。航空燃料も、当該分野において公知のプロセスを使用して得られ得る。
【0170】
同様に、「バイオプラスチック」とは、補充され得、大気中の二酸化炭素レベルへの正味の寄与を最小限にするか又は寄与しない炭素源由来のプラスチックをいう。より具体的には、バイオプラスチックとは、トリテルペノイド炭化水素合成遺伝子を発現する生物由来の炭素源をいい、トリテルペノイド炭化水素は、プラスチックを製造するために使用され得る。
【0171】
本開示は、トリテルペノイド炭化水素が適している化石燃料の石油化学供給源に伝統的に由来する任意の製品への適用を考慮する。例えば、バイオ燃料及びバイオプラスチックに加えて、本開示は、医薬品、食品添加物、工業化学品、特殊化学品、界面活性剤、肥料、薬、塗料、プラスチック、合成繊維又は合成ゴムの製造に有用であるがこれらに限定されないことが想定される。
【0172】
第六の態様の方法の実施形態において、トリテルペノイド炭化水素は、スクアレン又はボトリオコッセンであり、条件は、組換え生物にNADPH又はNADHを補充することを含む。別の実施形態において、トリテルペノイド炭化水素は、デヒドロスクアレン又はデヒドロボトリオコッセンであり、条件は、組換え生物にNADPHもNADHも補充しないこと、又はNADPH若しくはNADHの濃度を最小限にすることを含む。反応系中のNADPH又はNADHなどの還元当量を限定すること、減らすこと、最小限にすること又は除くことにより、本方法は、デヒドロスクアレン又はデヒドロボトリオコッセン(それぞれスクアレン又はボトリオコッセンと比較した場合、少なくとも2つの水素原子をそれぞれ欠く)の製造を提供する。デヒドロスクアレン及び/又はデヒドロボトリオコッセンは、GC−MSを使用して特定され得る。
【0173】
トリテルペノイド炭化水素合成核酸分子(例えば、ボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素核酸分子)は、トリテルペノイド炭化水素(例えば、ボトリオコッセン又はスクアレン)を産生することが望ましい任意の数の藻類(例えば、緑藻類)、他の真核藻類、ラン藻、又は光合成細菌若しくは非光合成細菌、真菌(酵母を含む)、又は植物細胞において発現し得る。異種トリテルペノイド炭化水素合成核酸分子(例えば、ボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素核酸分子)を発現する形質転換された藻類、ラン藻、細菌(光合成細菌又は非光合成細菌)、又は真菌(酵母を含む)は、トリテルペノイド炭化水素(例えば、ボトリオコッセン又はスクアレン)の製造のための大量培養条件下で培養され得る。形質転換された又は組換え生物は、トリテルペノイド炭化水素(例えば、ボトリオコッセン又はスクアレン)を含むための閉鎖環境を提供するバイオリアクター又は発酵槽中で培養される。大量培養のための特定の実施形態において、藻類、ラン藻、細菌、又は真菌(酵母を含む)は、少なくとも約100リットル、200リットル、500リットル、少なくとも約1000リットル、2000リットル、5000リットル、10,000リットル、20,000リットル、50,000リットル、100,000リットル、200,000リットル、500,000リットル又はそれ以上の量で、そして一実施形態において、約1,000,000リットル以上、更には1,500,000リットル、又はそれ以上の量で、閉鎖型リアクタ中で培養される。
【0174】
本明細書中で使用される場合、「大量培養」とは、トリテルペノイド炭化水素合成核酸分子(例えば、ボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素)を発現するよう改変された大量の藻類、ラン藻、光合成細菌若しくは非光合成細菌、又は真菌(酵母を含む)を培養することをいう。「大量」とは、一般に、約10リットル以上、20リットル、50リットル、又は約100リットル〜約1,500,000リットルの範囲、例えば、200リットル、500リットル、1000リットル、2000リットル、5000リットル、10,000リットル、20,000リットル、50,000リットル、100,000リットル、200,000リットル、500,000リットル、1,000,000リットル、更には1,500,000リットル、又はそれ以上である。一実施形態において、生物は、それぞれ約1,000〜約1,000,000リットル、例えば、200リットル、500リットル、1000リットル、2000リットル、5000リットル、10,000リットル、20,000リットル、50,000リットル、100,000リットル、200,000リットル、又は500,000リットルの容量を有するモジュール式の(modular)バイオリアクター中で大量に培養され得る。一実施形態において、組換え植物は大量培養に適し得る。
【0175】
「バイオリアクター」とは、微細藻類、ラン藻又は光合成細菌若しくは非光合成細菌、又は真菌(酵母を含む)が培養される任意の閉鎖型大容量容器をいう。「大容量容器」は、約10リットル、又は約500リットル〜約1,000,000リットル、又はそれ以上、例えば、20リットル、50リットル、100リットル、200リットル、500リットル、1000リットル、2000リットル、5000リットル、10,000リットル、20,000リットル、50,000リットル、100,000リットル、200,000リットル、若しくは500,000リットル、又はそれ以上を保持し得る。
【0176】
藻類を大量培養する方法は公知である。例えば、藻類は、高密度光バイオリアクター、バイオリアクター(下水及び廃水処理のためのもの、汚染水からの重金属の除去のための大量培養(mass-cultured)のためのもの、β−カロテン、水素、及び医薬化合物、並びにヒト及び動物の両方のための栄養補給剤の製造のための大量培養のためのもの、並びに栄養的価値のある他の化合物の製造のためのものなど)中で培養され得る。
【0177】
トリテルペノイド炭化水素を発現する藻類、ラン藻、光合成細菌若しくは非光合成細菌、又は真菌(酵母を含む)(例えば、ボトリオコッセン合成酵素を発現するか又はスクアレン合成酵素を発現する藻類又は細菌)を培養するための条件は、当該分野において公知である。例えば、Botryococcusを培養するための方法は、WO 2006/121950に開示されている。
【0178】
或いは、トリテルペノイド炭化水素は、無細胞系中で製造され得る。無細胞系の例は、本明細書中実施例10及び実施例16、並びにUS 2010/0041120、Okada et al. Arch Biochem Biophys 2000, 373(2):307-317及びOkada et al. Arch Biochem Biophys 2004, 422:110-118に開示されており、それらは参照により本明細書中に組み込まれる。
【0179】
本明細書中に開示された遺伝子改変生物により産生されるトリテルペノイド炭化水素(例えば、ボトリオコッセン又はスクアレン)は、当該分野において現在公知ではないが、公知技術を使用して回収され得る。本明細書中で使用される場合、トリテルペノイド炭化水素(例えば、ボトリオコッセン又はスクアレン)を「回収する」とは、閉鎖環境又は封じ込められた環境中で、トリテルペノイド炭化水素(例えば、ボトリオコッセン又はスクアレン)を捕捉し隔離することをいう。
【0180】
回収は、生物が中に存在する培地のpHを調節することにより、微生物(例えば、藻類)を凝集させることを含み得る。ボトリオコッセン及びスクアレンは、水に混和性ではなく、生物によって放出された場合、それらは増殖培地の表面に浮かび上がり、そこに浮き得る。その場合、それらは、表面から吸い上げられ、適切な容器中に隔離され得る。
【0181】
或いは、組換え生物(藻類(海藻を含む)又は細菌など)からのトリテルペノイド炭化水素(例えば、ボトリオコッセン又はスクアレン)の破壊的回収が必要であり得る(例えば加圧、溶媒抽出又は超臨界流体抽出)。適切な条件下、70%の炭化水素が、30分間のヘキサンとの接触により放出され得る。炭化水素は、当該分野において公知の適切な撹拌及び回収方法で連続的に抽出され得る。二酸化炭素(CO)などの超臨界流体は、炭化水素の急速な抽出を可能にし、無毒性であり、安価であり、抽出された炭化水素から容易に分離され、そして再利用可能である。
【0182】
バイオ燃料、医薬品、食品添加物、工業化学品、特殊化学品、界面活性剤、肥料、薬、塗料、プラスチック、合成繊維又は合成ゴムを製造するのに適合させた第一の態様に従う核酸分子を含む遺伝子改変生物を培養している当事者に炭素クレジットを提供することを含むビジネス方法も本明細書中に開示される。従って、本明細書中に記載される方法及び組成物は、炭素クレジットの交換におけるビジネス方法において使用され得る。
【0183】
炭素クレジットは、ある関連する主権実体(市(法人及び非法人(incorporated and unincorporated)自治体の両方を含む、全ての規模及び種類の自治体を含む)、国、州若しくは省(province)、又は国家、並びにこのような地方の、多国間の、又は他の国際機関(国際連合、欧州連合、又はアラブ首長国連邦など)の関連する政府事業体などであるが、これらに限定されない)により、許可、認可、又は承認されるか又はされた、許容量、許可、信用などであり得る。
【0184】
炭素クレジットは、実質的に、規制当局又は行政実体から直接受け取られ得る。他の例において、それらは間接的に受け取られ得、例えば、本明細書中の方法及び組成物を使用している実体は、炭素クレジットを規制当局から直接受け取り得、次いで炭素クレジットを別の実体に移し得る。炭素クレジットの移転は、遺伝子改変生物を使用する所定のプロセス又は製品に伴い得る。
【0185】
例えば、最終使用者の可動プラットフォーム(mobile platform)における消費のために分配される消費財を提供する第一の実体が特定され得、ここで消費財の消費及び/又は製造は、対応する結果として生じる排出を含む。例えば、ディーゼル燃料の燃焼は、多くの場合、対応する窒素酸化物の環境への放出をもたらし、ガソリンの燃焼は、多くの場合、対応する硫黄酸化物の環境への放出をもたらす。
【0186】
第一の当事者は、遺伝子改変生物を使用するその製品の製造方法を採用し得、又はそれらの組成物中の遺伝子改変生物により作り出された製品を使用し得、その結果、例えば、ディーゼル燃料を作り出す従来の方法よりも環境への悪影響がより少なくなり、従って最終製品の環境への影響を相殺する。次いで、第一の当事者は、総排出の削減の結果として、炭素(又は排出)クレジットを受け取り得る。炭素クレジットは、規制又は行政当局から受け取られ得、又は第二の当事者から第一の当事者に移され得、ここで第二の当事者は、第一の当事者に遺伝子改変生物又は遺伝子改変生物の製品を販売していてもよい。
【0187】
炭素クレジットは、実質的に流動性のある通貨代替物と交換され得る。例えば、炭素クレジットは、現金等価物(現金、小切手など)と交換され得る。炭素クレジットは、知的財産権(例えば、譲渡又はライセンスであるがこれらに限定されない)に関する法的許諾(legal grant)とも交換され得る。炭素クレジットは、政府の租税補助金又は所定の市場の購買者に接触する権利とも交換され得る。炭素クレジットは、別の炭素排出プロセス(生物を培養することを含まないプロセスなど)の使用とも交換され得る。例えば、ある当事者は、ある期間(例えば、1ヶ月間又は1年間)放出してもよい限られた数値の排出を有し得、限度の超過は、罰金及びペナルティを科され得る。しかしながら、炭素クレジットを有していれば、限度を超過している当事者は、炭素クレジットを交換して罰金又はペナルティを相殺し得、或いはその当事者により生み出される排出量を決定する場合に考慮され得る。
【0188】
本ビジネス方法は、バイオ燃料以外の製品(例えば医薬品、食品添加物、工業化学品、特殊化学品、界面活性剤、肥料、薬、塗料、プラスチック、合成繊維又は合成ゴム)の製造も含み得る。バイオ燃料に関連するビジネス方法(炭素クレジットの使用を含むものを含む)は、他の種類の有用な製品及び材料の製造にも関連する。
【0189】
本発明の分野に精通した者には、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく多くの改変がなされ得ることが理解されよう。
【0190】
添付の特許請求の範囲及び本発明の前記説明において、明示の文言又は必要な含意により文脈上そうでないことが要求される場合を除き、用語「含む(comprise)」、又は「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」などの変形は、包括的な意味で、即ち、記載された特徴の存在を明記するが、本発明の種々の実施態様における更なる特徴の存在又は追加を排除しないために、使用される。
【0191】
いかなる先行技術の刊行物が本明細書中で言及された場合も、そのような言及は、当該刊行物がオーストラリア又は任意の他の国における当該分野における共通の一般知識の一部を形成するとの自認を構成しないことが理解される。
【0192】
ブダペスト条約に従い、プラスミドpUC57/ATB1(コンストラクト1、実施例12)、pET11/ATB1(コンストラクト2、実施例12)、pSP124S(実施例11)、及びpBC1を、国際寄託機関としての国立計測研究所(National Measurement Institute)(NMI)(オーストラリア)に、2010年9月14日に寄託した。寄託されたプラスミドpUC57/ATB1には、アクセッション番号V10/022706が割り当てられた。寄託されたプラスミドpET11/ATB1には、アクセッション番号V10/022707が割り当てられた。寄託されたプラスミドpSP124Sには、アクセッション番号V10/022708が割り当てられた。寄託されたプラスミドには、アクセッション番号V10/022709が割り当てられた。
【実施例】
【0193】
実施例1−培養条件
B. braunii株 Ayame 1(品種B)を、連続照明及びおよそ25℃の温度で、エアリフトシステムを使用して、1%CO、2%CO若しくは10%までのCO又はそれ以上のCOにより濃縮された空気の雰囲気下で培養した。増殖培地は、pH7.5の改変CHU 13(KNO200 mg/L、MgSO・7HO 100 mg/L、KHPO39 mg/L、CaCl・2HO 54 mg/L、FeNaEDTA 15 mg/L、HBO2.68 mg/L、MnSO・HO 1.54 mg/L、ZnSO・7HO 0.22 mg/L、CuSO・5HO 0.08 mg/L、NaMoO・2HO 0.06 mg/L、CoSO・7HO 0.09 mg/L)培地であった。照明用の管は、Mazda製(SF 36w AZU/965;長さ:約120cm)であった。照度は、約40マイクロアインシュタインから開始し、約120〜160マイクロアインシュタイン(定常期において)、又はより大きな容器(10リットル以上)中で培養する場合にはそれ以上まで、次第に増加させた。
【0194】
実施例2−ゲノムDNA調製
以下のように、実施例1のAyame 1株からDNAを抽出した。まず、50%エタノール(終濃度)中で細胞を凝集させることにより、およそ2 x 200 ミリグラムの細胞ペレットを得た。各細胞ペレットを、2mLの高塩濃度DNA抽出バッファー(200mM Tris.HCl pH7.5、100mM EDTA pH8.0、0.5M NaCl)に再懸濁し、液体窒素及び45℃のウォーターバスを使用した10回の凍結解凍に供した。次いで、プロテイナーゼKを2mg/mLの終濃度まで添加し、混合物を1時間55℃でインキュベートし、次いで60℃で一晩インキュベートした。結果として得られたライセート全体を、製造者の使用説明書に従ってQiagen DNeasy Plant Maxi Kit(cat. no. 68163)に使用して、DNAを抽出した。
【0195】
実施例3−DNA配列決定
B. brauniiのゲノムは配列決定されておらず、従って知られていない。従って、B. brauniiのゲノムを決定する必要があった。
【0196】
B. braunii Ayame 1株由来の20マイクログラムのゲノムDNA(実施例2)を、Illumina GenomeAnalyser装置(Geneworks、South Australia)での、合計3ギガ塩基のデータ(それぞれ約35塩基長の読み取りを含む)までのゲノム配列決定に使用した。別の20□gのこのDNAを、Roche FLX装置(Australian Genome Research Facility(AGRF)、クイーンズランド)での、合計3ギガ塩基のデータ(それぞれ約250塩基長の読み取りを含む)までのゲノム配列決定に使用した。
【0197】
B. braunii Ayame 1株由来の別の20マイクログラムのゲノムDNA(実施例1)を、Illumina GenomeAnalyser装置(Illumina、Hayward California USA)での、合計5ギガ塩基のデータ(それぞれ約75塩基長の読み取りを含む)までのゲノム配列決定に使用した。
【0198】
実施例4−ゲノムアセンブリ及び遺伝子特定
重複する配列生データ(実施例3)の統合によるDNAコンティグの予備的アセンブリをAGRFにて実施した。続いて、Illuminaプラットフォームからのデータを、種々のアルゴリズム(EULER、VELVET、CLC Genomics Workbench、DASHなど)を使用して、フリンダーズ大学にて統合し、コンティグを延ばし、追加のコンティグを確立した。
【0199】
BLAST又はDASHアルゴリズムを使用して、推定遺伝子を特定し、ゲノムが組み立てられる。
【0200】
配列番号1〜5又は20〜28として提供されるアミノ酸配列によってコードされるエキソンは、本実施例に従って特定した。配列番号29として提供される全長ポリペプチド配列(ATB1)は、本実施例に従って特定した。
【0201】
実施例5−RNA調製
B. braunii Ayame 1株の細胞を、CHU 13培地(実施例1)中で定常期まで培養し、次いで同体積の新鮮なCHU 13培地中に継代培養し、更に3日間培養した。第3日目に、3日前に接種したのと同じ時刻に、0.45□m孔径フィルターを使用し、手術用メスの刃を使用してフィルターから細胞をこすり取り、1〜10mgの細胞を回収した。Qiagen RNeasy Plant Mini Kit(cat. no. 74903)を使用して、これらの細胞からRNAを抽出した。抽出は、細胞をこのキットの「バッファーRLT」に再懸濁し、懸濁液をそれぞれ液体窒素及び45℃ウォーターバスを使用する少なくとも5サイクルの凍結解凍に供することにより、開始した。続いて、植物細胞RNA抽出のための製造者の使用説明書に従って、RNAを単離した。
【0202】
実施例6−宿主細胞種(遺伝子レシピエント)
A.藻類
本開示は藻類に限定されないが、一実施形態において、宿主細胞は藻類である。宿主藻類についての望ましい基準としては、生長の容易さ及び迅速性、並びに鞭毛状の形態(鞭毛状の藻類は正の走光性を有し、回収の容易さを促進するため)が挙げられる。これらの基準を考えれば、以下に記載される種の非限定的例が、遺伝子レシピエントであり得る。或いは、藻類は、海藻、例えばパシフィックジャイアントケルプであり得る。
1.藻類
i. そこからボトリオコッセン合成酵素が単離された(品種B、Ayame 1)、且つ上記基準の少なくとも1つを満足するもの以外のBotryococcus sp.が、本開示に従って使用され得る。いくつかの例としては、B. braunii 品種A若しくは品種L、又はBotryococcus sudeticusが挙げられる。
ii. Chlamydomonas sp.は、緑藻類の一属である。これらは、単細胞の鞭毛藻類であり、分子生物学、特に鞭毛運動性並びに葉緑体の動態、生合成、及び遺伝学の研究のためのモデル生物として使用される。一例は、C. reinhardtiiである。
iii. Chlorella sp.は、単細胞の緑藻類の一属である。これは球形であり、直径約2〜10μmであり、鞭毛がない。光合成により、これは、繁殖するために二酸化炭素、水、日光、及び少量の無機物のみを要求しながら、急速に増殖する。一例は、Chlorella vulgarisである。
iv. 本開示に従って使用され得る他の緑藻類の種としては、Scenedesmus obliquus、Dunaliella salina又はHaematococcus pluvialisが挙げられる。
v. Navicula tennerimaは、従属栄養培養の可能性を有する珪藻種である。
vi. 渦鞭藻綱、ハプト藻綱、ストラメノパイル(stramenopiles)、アルベオラータ(alveolates)、褐色鞭藻綱、ユーグレナ藻綱又は紅藻綱の任意の藻類が、宿主として使用され得る。
vii. Choricystis sp.は、以下を含む典型的な特性を有する淡水性微細藻類の一属である:小さい大きさの細胞;粘液の欠如;ピレノイドの欠如及び2つの自生胞子の優勢な形成を伴う自生胞子形成(autosporulation)。2つの例は、Ch. minor及びCh. chodatiiである。
2.ラン藻
i. Microcystis sp.は、淡水中で見出される藍藻類(ラン藻としても知られる)の一種である。ラン藻は、原核生物(それらが核を持たないことを意味する)であり、淡水、海水、又は汽水中で見出され得る。Microcystisは、栄養豊富な水中でよく増殖する。
ii. 本開示に従って使用され得る他のラン藻としては、Spirulina platensis又はSynechocystis sp.が挙げられる。
【0203】
B.ユーグレナ藻
Euglena sp.は、ユーグレナ藻の典型であり、栄養豊富な淡水中に一般に見出される。細胞の長さは、およそ20μmから300μmまで様々であり、典型的には円柱状、卵円形又は紡錘形であり、移動のために使用される1本の表面に出た鞭毛を有する。日光が利用できない場合、これは、腐敗した有機物から栄養を吸収できる。Euglenaは、下水設備中にも見出され得る。Euglenaは、二分裂(1つの細胞が2つに分かれるプロセス)により繁殖する。Euglenaは、細胞を破裂から防ぐ収縮胞を有する。
【0204】
C.細菌
1.光合成細菌
Rhodospirillum rubrumは、本開示に従う宿主細胞であり得る光合成細菌である。
2.非光合成細菌
E. coliは、温血動物のより下部の腸内に一般に見出される非光合成細菌であり、本開示に従う宿主細胞であり得る。いくつかの株は、
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を有し、運動性であるのに対し、他の株は鞭毛を欠く。
【0205】
D.他の光合成生物
Nicotiana tobaccum(タバコ植物の一例)は、本開示に従って使用され得る光合成生物の一例である。別の例は、Arabidopsis thalianaであり得る。
【0206】
E.酵母
真菌も適切な宿主細胞であり得る(例えば、S. cerevisiae又はPichia sp.などの酵母)。
【0207】
実施例7−発現ベクター
E. coliにおいてボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素を発現させるための発現ベクターにおける使用に適した核酸コンストラクトが設計され得る。これは、pETベクター又は類似物に基づいてもよく、E. coliにおける当該コンストラクトの発現により産生されるタンパク質は、当該タンパク質の精製のためのN末端又はC末端6−ヒスチジンタグを備えていてもよい。発現コンストラクトは合成され得る。
【0208】
Chlamydomonasにおいてボトリオコッセン合成酵素を発現させるための発現ベクターにおける使用に適した第二の核酸コンストラクトが設計され得る。発現コンストラクトは合成され得る。B. brauniiボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素コンストラクト又はベクターは、抗生物質耐性遺伝子(例えば、フレオマイシン(ゼオシンTM、Invitrogen)に対する耐性を与えるブレオマイシン耐性遺伝子)を含む選択マーカーを含み得る。当該コンストラクト又はベクターは、Chlamydomonasにおける発現に適したプロモーターも含み得る。1つの適切なChlamydomonasプロモーターは、RuBisCO遺伝子由来であり得る。当該コンストラクト又はベクターは、Chlamydomonasにおける強いRNA発現に寄与する少なくとも1つのエンハンサー配列も含み得る。エンハンサー配列は、少なくとも1つのイントロン中に配置され得、当該イントロンは、ボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素コード領域の転写開始点の近くに意図的に配置され得る。エンハンサーエレメント、又は当該エンハンサーエレメントを含むイントロンは、ボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素遺伝子中に存在する本来のイントロンを置換し得る。イントロンはRNAプロセシングの間にスプライシングで切り出されるため、本来のイントロンは、ゲノムのボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素配列をその対応するRNA(cDNA)コード配列と比較することにより最初に特定され得る。更に、組換えイントロンもまた、RNAプロセシングの間にスプライシングで切り出され得る。当該コンストラクト又はベクターは、Chlamydomonasに適した転写ターミネーター(ポリアデニル化領域)も含み得る。
【0209】
当該発現コンストラクトは、ベクター(例えばプラスミド)中に連結され得る。
【0210】
核酸配列は、コンピューターソフトウェア(Sequencher(GeneCodes USA)又はBioeditなど)を使用して操作され得る。
【0211】
実施例8−形質転換
藻類の種の形質転換のために、エレクトロポレーション及びガラスビーズ法が使用され得る。形質転換された細胞は、25℃にて24時間照明で2週間インキュベートされ得る。形質転換された細胞は、抗生物質選択(フレオマイシン(ゼオシンTM)耐性)に供され得る。耐性Chlamydomonasのコロニーは、10日後、両方の形質転換法からのプレート上で目に見えるようになり得る。これらのChlamydomonas形質転換体は、スクアレン合成酵素又はボトリオコッセン合成酵素遺伝子の信頼できる検出のために十分な物質を産生するために、7日の更なる増殖を必要とし得る。
【0212】
実施例9−in vivoでのボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素の機能試験
ボトリオコッセン合成酵素遺伝子又はスクアレン合成酵素遺伝子は、E. coli、S. cerevisiae、C. reinhardtii、又は他の生存生物において機能的に試験され得る。遺伝子は、その本来のオープンリーディングフレームとして、又は、宿主生物の高発現遺伝子のコドン使用頻度に従って最適化されたコドン最適化バージョンとして、発現し得る。ボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素遺伝子は、精製のためのN末端又はC末端タグ(例えば、ヘキサ−ヒスチジン、又は任意の他のペプチドベースの精製タグ)と共に発現し得る。ボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素は、緑色蛍光タンパク質(GFP)又は他の蛍光ポリペプチドに融合されて発現し得る。ボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素は、B. brauniiポリペプチド及び宿主(例えば、C. reinhardtii)ポリペプチドのキメラとして発現し得る。
【0213】
トランスジェニック生物におけるボトリオコッセン又はスクアレン産生の特定及び定量は、トランスジェニック宿主細胞を溶解し、次いでボトリオコッセン又はスクアレンを直接検出することにより行なわれ得る。
【0214】
ボトリオコッセンは、E. coli、S. cerevisiae又はC. reinhardtii中には全く存在しないので、検出されるいかなるボトリオコッセンも導入遺伝子の存在に起因するはずである。
【0215】
スクアレンは、E. coli、S. cerevisiae又はC. reinhardtii中に存在するので、検出されるいかなるスクアレンも、その産生が導入遺伝子の存在に起因したと結論するためには、形質転換されていない対照株の細胞におけるスクアレンのバックグラウンドレベルを超えなければならない。
【0216】
或いは、トランスジェニック宿主におけるトランスジェニックボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素の活性は、トランスジェニック宿主細胞を溶解し、次いで、FPPのボトリオコッセン又はスクアレンへの変換についての生化学的アッセイ(例えば、トリチウム標識FPPからトリチウム標識ボトリオコッセン又はトリチウム標識スクアレンへのトリチウムの取り込み)を使用して、ボトリオコッセン又はスクアレンを検出することにより、アッセイされ得る。
【0217】
ボトリオコッセン又はスクアレンは、クロマトグラフィー(例えばガスクロマトグラフィー(GC)、液体クロマトグラフィー(LC)、又は薄層クロマトグラフィー(TLC)によって検出され得る。TLC法は、写真フィルム又は他の検出器を使用してトリチウム標識ボトリオコッセン又はトリチウム標識スクアレンを検出するために有用である。
【0218】
典型的な実験において、宿主生物(C. reinhardtii又はE. coliなど)は、B. braunii品種B株 Ayame 1由来のボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素をコードする核酸分子(例えば、配列番号6〜9若しくは30のいずれか1つ、又はその機能的断片若しくは変異体を含む核酸分子)で形質転換され得、ボトリオコッセン又はスクアレン産生がアッセイされ得る。
【0219】
実施例10−in vitroでのボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素の機能試験
E. coli、S. cerevisiae、C. reinhardtii又は他の生存生物において発現し、且つ、精製のためのN末端又はC末端タグを有するか又は有さず、GFP又は他の蛍光ポリペプチド融合物を有するか又は有さず、且つ相同的又は異種C. reinhardtiiポリペプチドの融合ポリペプチドを有するか又は有さない、ボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素が、in vitroでの酵素比活性についてアッセイされ得る。
【0220】
ボトリオコッセン又はスクアレン産生は、その宿主の他の酵素を実質的に含まない高純度の状態で存在するまで、in vivo宿主からトランスジェニックボトリオコッセン合成酵素又はスクアレン合成酵素を精製することによって、達成され得る。ボトリオコッセン又はスクアレンの特定及び定量は、FPPのボトリオコッセン又はスクアレンへの変換についての生化学的アッセイを使用して行なわれ得る。このように製造されたボトリオコッセン又はスクアレンは、クロマトグラフィー(例えば、GC、LC又はTLC)によって検出され得る。TLC法は、トリチウム標識FPPのトリチウム標識ボトリオコッセン又はトリチウム標識スクアレンへの取り込みに依存し得、トリチウム標識ボトリオコッセン又はスクアレンを検出するための写真フィルム又は他の検出器を使用して検出され得る。
【0221】
実施例11−B. braunii Berkeley株由来のスクアレン合成酵素遺伝子でのC. reinhardtiiの形質転換
C. reinhardtii(CC400)の宿主株は、弱い細胞壁を透過するように外因性DNA及び藻類をガラスビーズと共に振盪することにより、DNAが細胞に形質転換されることを可能にする、細胞壁の弱さを有する。ガラスビーズ技術は、確立されたプロトコールである。細胞壁欠損Chlamydomonas株はまた、エレクトロポレーションを使用して形質転換され得る。
【0222】
スクアレン合成酵素コンストラクト
B. brauniiスクアレン合成酵素遺伝子をC. reinhardtii CC400に挿入するために、Chlamydomonas中で発現する能力を有するコンストラクトを作製した。人工遺伝子コンストラクトは、pSP124Sに基づき、合成した。形質転換マーカーとして抗生物質耐性を使用した(ブレオマイシン耐性遺伝子、ゼオシンTM抗生物質(ブレオマイシン抗生物質の非常に活性の高い形))。B. brauniiスクアレン合成酵素遺伝子配列に、Chlamydomonas RuBisCO遺伝子由来のChlamydomonasプロモーター、2つのエンハンサー/イントロン配列(これらもまた強いRNA発現を促進する)、及びChlamydomonas転写ターミネーターを付加した。
【0223】
Chlamydomonasゲノムへの挿入
スクアレン合成酵素コンストラクトを、制限酵素SacI(Promega、WI、USA)で切断して線状化し、次いでガラスビーズ法により、そして平行してエレクトロポレーションにより、Chlamydomonas細胞中に形質転換した。
【0224】
バイオインフォマティクスの方法
ブレオマイシン耐性プラスミドはDr Britta Forster(Australian National University)及びDr Saul Purton(University College London)から得た。B. brauniiスクアレン合成酵素についてのゲノムDNA配列及びRNA配列をGenbankからダウンロードし、その完全性をチェックし、プログラムSequencher(GeneCodes USA)によってイントロンを位置付け、次いでフリーウェアプログラムBioeditを使用してブレオマイシン耐性遺伝子から切り貼りしたChlamydomonasエレメントを付加することにより、遺伝子コンストラクトを設計した。イントロンをスクアレン合成酵素遺伝子の開始点の近くに配置した(ここで、それらの中のエンハンサーエレメントは転写の促進を助けるために最も容易に利用できる)。スクアレン合成酵素についてのオープンリーディングフレームは改変しなかった。
【0225】
トランスジェニックChlamydomonas の検出
プライマーペア1(5’-CCTTGATGGGGTATTTGAGCAC-3’、配列番号16及び5’-GGAATTCGGTTAGGCGCTGAGTGTGGGTCTAGG-3’、配列番号17)並びにプライマーペア2(5’-TGAGCACTTGCAACCCTTATCCG-3’、配列番号18及び5’-GGAATTCGGTTAGGCGCTGAGTGTGGGTCTAGG-3’、配列番号19)を使用して、ゼオシンTM耐性について陽性の個々のC. reinhardtiiコロニーから抽出したゲノムDNAからB. brauniiスクアレン合成酵素遺伝子を増幅した。
【0226】
結果
形質転換体
スクアレン合成酵素pSP124Sコンストラクトを使用してエレクトロポレーション及びガラスビーズプロトコールを行い、形質転換された細胞を、ゼオシンTMを含むトリス酢酸リン酸(Tris Acetate Phosphate)(TAP)寒天上で、24時間照明で25℃にて2週間インキュベートした後、ゼオシンTM耐性Chlamydomonasのコロニーが、両方の種類の形質転換法(エレクトロポレーション及びガラスビーズ)からのプレート上で目に見えるようになった。これらのChlamydomonas形質転換体の個別のコロニーをつつき取り、液体TAP培地中で増殖させ、B. brauniiスクアレン合成酵素遺伝子の信頼できる検出のために十分な物質を産生させた。C. reinhardtiiのためのTAP培地は、Gorman and Levine, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1965, 54, 1665-1669に記載されている。
【0227】
組換えChlamydomonasの検出
それぞれの形質転換された細胞は、プレート上でコロニーにまで増殖した。それぞれのコロニーは、ブレオマイシン耐性遺伝子を保持する形質転換された細胞を表す。従って、C. reinhardtii CC400の形質転換された細胞中のB. brauniiスクアレン合成酵素を検出した。プライマーペア1及びプライマーペア2は、形質転換されたCC400コロニーのいくつかのコロニーから人工遺伝子を増幅させた(図33)。
【0228】
ブレオマイシン耐性であったが人工遺伝子についてPCR陽性ではなかった他のCC400コロニーは、細胞に形質転換されたスクアレン合成酵素pSP124Sコンストラクトの抗生物質耐性部分のみを保持していたが、また全長スクアレン合成酵素カセットを保持していなかった。このようなコロニーにおいて、DNAの他の部分(即ち、スクアレン合成酵素遺伝子のいくつかの部分、又はその全体)は、形質転換及び組換えの間に生物によって除外された。
【0229】
機能の試験
ブレオマイシン耐性且つスクアレン合成酵素pSP124Sコンストラクトについて陽性(即ちプライマーペアー1及び2を使用して)であったコロニーを、スクアレン含量についてアッセイした。形質転換された細胞は、形質転換されていない対照細胞よりも有意に多いスクアレンを含有していなかった。
【0230】
実施例12−ATB1トリテルペノイド炭化水素合成核酸配列のクローニング
遺伝子ATB1がBotryococcus braunii Ayameゲノムから構築された。これは1212ヌクレオチド長である(図30、配列番号30)。ATB1遺伝子のクローニングを促進するために、図32に示すように、NsiI制限部位(ATGCAT;図44、配列番号34)を含むヌクレオチドCACCACATGCAT(図43、配列番号33)を、図30に提供されたヌクレオチド配列(配列番号30)の本来の開始コドンの直上流に挿入した。これら33個の追加のヌクレオチドを開始コドンに連結することにより、NdeI制限部位(CATATG;図45、配列番号35)も開始コドンに作り出した。33個のヌクレオチドの付加は、いくつかのコンストラクトにおいて、図29に記載したポリペプチド配列(配列番号29)の本来の開始コドンの上流に1つのメチオニン残基及び1つのヒスチジン残基の付加をもたらしたが、コンストラクトpET11a/ATB1(合成ATB1遺伝子(配列番号32)のNdeI部位に連結するために、公的に入手可能なpET-11aベクターのNdeI部位を利用する)においてはもたらさなかった。
【0231】
同様に、NsiI制限部位を含むヌクレオチドATGCAT(配列番号34)を、図30に記載したATB1遺伝子のヌクレオチド配列(配列番号30)の本来の終止コドンの直上流に挿入した。全てのコンストラクトにおいて、これは、本来の終止コドンの上流で、図29に記載したポリペプチド配列(配列番号29)への、1つのメチオニン残基及び1つのヒスチジン残基の付加をもたらした(ATB1-MHを与えた:図46、配列番号36)。更に、クローニングを促進するために、XhoI及びSmaI制限部位を含むヌクレオチドTCACTCGAGCCCGGG(図47、配列番号37)を、本来の終止コドンの直下流に挿入した。
【0232】
結果として得られたこれらの33個の追加のヌクレオチドを有するATB1配列を合成した(Genscript、NJ USAによる)。
【0233】
最初に、配列決定による検証のために、標準ベクターpUC57にATB1をクローニングした(コンストラクト1)。
【0234】
続いて、そのベクター中の誘導性T7-lacプロモーターを介した、ATB1のC末端において1つのメチオニン残基及び1つのヒスチジン残基を含むATB1タンパク質(ATB1-MH;配列番号36)の過剰発現のために、ベクターpET-11aにATB1をサブクローニングした。
【0235】
合成ATB1遺伝子を制限酵素NdeI及びBclIで切断し、pET-11aのNdeI及びBamHI部位にクローニングして、コンストラクトpET11a/ATB1(コンストラクト2)を作り出した。
【0236】
誘導性T7-lacプロモーター及び、ATB1タンパク質のアフィニティー精製のために使用され得るN末端又はC末端いずれかのポリヒスチジンタグを供給するベクターにも、ATB1をサブクローニングした。合成ATB1遺伝子(配列番号32)を、制限酵素XhoIで切断し、pET-302のPmlI及びXhoI部位にクローニングして、そのN末端において1つのメチオニン残基、8つのヒスチジン残基、1つのメチオニン残基及び1つのヒスチジン残基が連続的に増やされたタンパク質ATB1-MHをコードするpET302/NT-His-ATB1(コンストラクト3)を作り出した(MHHHHHHHHMH-ATB1-MHを製造するため;図48、配列番号38)。或いは、合成ATB1遺伝子を、制限酵素NsiIで切断し、(T7-lacプロモーターが上流になるように)pET-302のNsiI部位に方向を決めて(directionally)クローニングして、そのN末端において1つのヒスチジン残基及び1つのメチオニン残基が連続的に増やされ、そのN末端において5つのヒスチジン残基及び残基VNSLEIDDIRAが連続的に増やされたタンパク質ATB1-MHをコードするCT-His-ATB1/pET302(コンストラクト4)を作り出した(MH-ATB1-MH-HHHHHVNSLEIDDIRAを製造するため;図49、配列番号39)。
【0237】
実施例13−ATB1トリテルペノイド炭化水素合成核酸配列でのE. coliの形質転換
形質転換
ATB1コンストラクト2、3及び4中の誘導性プロモーターは、ウイルスのT7プロモーターである。コンストラクト2、3及び4を、E. coli 株 BL21 StarTM(DE3)(それ自体が、T7プロモーターからの転写を可能にするウイルスの(T7)RNAポリメラーゼを含有するトランスジェニックE. coliである)中に形質転換した。
【0238】
E. coli BL21 StarTM(DE3)の3つのバイアルを氷上で解凍し、3つのコンストラクトの形質転換のために使用した。これらの細胞のアリコートに100ngのDNAを添加し、ピペットチップで撹拌することにより混合し、氷上で30分間インキュベートした。細胞に42℃にて30秒間熱ショックを与え、直ちに氷上に戻した。形質転換された細胞に、250μlのSOC培地(水1リットル当たり、20g Bactoトリプトン、5g Bacto酵母エキス、2mLの5M NaCl、及び2.5mLの1M KCl、使用前にオートクレーブし、その後20mLの滅菌した1Mグルコースを添加した)を添加し、細胞+SOC混合物を含有するチューブを37℃にて1時間振盪し、細胞を形質転換から回復させ、細胞に全てのコンストラクト上に存在するbla遺伝子座からアンピシリン耐性タンパク質を発現させた。細胞をLB寒天(水1リットル当たり、10g Bactoトリプトン、5g酵母エキス、10g NaCl、15g細菌用(bacteriological)寒天、使用前にオートクレーブした)上に広げた。
【0239】
アンピシリンを含有するLB寒天から形質転換体をかき取り、グリセロール+LB混合物中に数白金耳量のこれらの細胞を移し、ピペットチップで細胞を再懸濁し、細胞がグリセロールを吸収するために1時間待ち、液体窒素中で凍結し、次いで−80℃フリーザー内に置いて保管することにより、E. coli形質転換体のグリセロールストックを調製した(20%グリセロール+80%富栄養LB増殖培地(水1リットル当たり、10g Bactoトリプトン、5g酵母エキス、10g NaCl、使用前にオートクレーブした))。
【0240】
制限酵素消化
形質転換体由来のプラスミドDNAを、抽出及び制限酵素消化により確認した。DNA抽出の準備をするために、各形質転換体の少量のアリコートを、富栄養LB増殖培地中で37℃にて一晩増殖させた。市販のミニプレップキット(Wizard(登録商標)Promega、WI、USA)を使用して、形質転換されたE. coliからDNAを抽出した。
【0241】
全てのコンストラクトを制限酵素NdeI(合成ATB1遺伝子の開始点における特定のDNA配列CATATGにおいて切断する)で切断した。各コンストラクトを、以下のように、第二の制限酵素でも切断した:コンストラクト2−BstXI(配列CCANNNNNNTGGにおいて切断する;図50、配列番号40);コンストラクト3及び4−XhoI(配列CTCGAGにおいて切断する;図51、配列番号41)。これは、2μlの10x「Promega restriction buffer 4」、0.5μlの ウシ血清アルブミン(ストック10mg/mL、終濃度250ng/μl)及び480ngのDNA(約6〜12μl)と共に、0.5μlのNdeI及び0.5μlの適切な第二の制限酵素を併用し、(ヌクレアーゼフリー水を添加することにより)1反応当たり20μlの総反応液量にし、次いで37℃にて1時間インキュベートすることにより、達成した。120ボルトにて30分間、TAEバッファー(40mMトリス酢酸、1mM EDTA)中、1%アガロースゲル上で試料を電気泳動し、UVイルミネーター上でSYBR-Safe蛍光色素でDNAバンドを可視化し、カメラの絞りを全開にして8秒間の露光を使用してディスクにデジタルで取り込んだ。
【0242】
コンストラクト2をNdeI及びBstXIで切断した場合に観察されたパターンは、予想されたように1070塩基対のバンドを含み(図34A)、ATB1の存在が確認された。コンストラクト3及び4をNdeI及びXhoIで切断した場合に観察されたパターンは、予想されたように1230塩基対のバンドを含み(図34B)、ATB1の存在が確認された。
【0243】
実施例14−形質転換されたE. coliによるATB1の発現及びフォールディング
形質転換されていないE. coli及びpET11a/ATB1(コンストラクト2)で形質転換されたE. coliを、1%グルコースを含有する5mL LB培地中で37℃にて一晩それぞれ増殖させた。形質転換されたE. coliの培養物は100μg/ml(終濃度)のアンピシリンを含有したのに対し、形質転換されていないE. coliの培養物はアンピシリンを含有しなかった。次の日、培養物を遠心分離し、ペレットを1mLのLB培地中に再懸濁し、それを49mLの新鮮なLB培地に添加した。ここでも、形質転換されたE. coliの培養物は100μg/ml(終濃度)のアンピシリンを含有したのに対し、形質転換されていないE. coliの培養物はアンピシリンを含有しなかった。37℃にて振盪しながら50mLの培養物をインキュベートし、分光光度計により波長600nmで観測した。無菌操作を終始維持した。OD600は、1.5時間で0.65に達し、従って細胞は誘導される準備ができていた。
【0244】
誘導剤イソプロピルチオガラクトシド(IPTG)を、各培養物に1mMの終濃度で添加した。IPTG誘導後0、2及び4時間において、1mLの培養物を取り出して遠心分離した。結果として得られたペレットを、200μlのタンパク質アッセイバッファー(50mM Tris−HCl pH6.8、10mMジチオスレイトール、1%ドデシル硫酸ナトリウム)中で10分間煮沸し、次いで280nmの波長に設定したNanodrop分光光度計上でタンパク質濃度を測定した。60μgのタンパク質を含有する試料を、3x濃度のLaemmliバッファー(6%SDS、30%グリセロール、15%□−メルカプトエタノール、0.006%ブロモフェノールブルー、0.1875M Tris−HCl)に添加し、2分間煮沸した。
【0245】
またIPTG誘導後4時間において、pET11a/ATB1で形質転換したE. coliの培養物5mLを取り出して遠心分離した。結果として得られたペレットを、500μlの溶解バッファーB(50mM Tris−HCl pH7.5、1mMジチオスレイトール、2mM PMSF、0.5% Triton X−100、100μg DNase)中に再懸濁し、次いで繰り返し凍結解凍した(10回)。ライセートを、4℃にて微量遠心管中13,000rpmで15分間遠心分離した。上清を取り出し、そのタンパク質含量をNanodrop分光光度計で測定し、上清試料を3x Laemmliバッファーを使用して希釈した。図35のレーン8及び9は、それぞれ15μl及び20μlのこの上清を含有する。
【0246】
濃縮用ゲル(4%アクリルアミド)及び分離用ゲル(10%アクリルアミド)を含むSDS−PAGEミニゲル上に試料をロードした。170ボルトでミニゲルを流した。ミニゲルの全てのレーンは、終濃度1x Laemmliバッファーを含有した。ミニゲル上のタンパク質を、クマシー色素を使用して可視化した(図35)。
【0247】
ATB1タンパク質は、形質転換されていないE. coli細胞中にはいずれの時間においても存在せず(図35、レーン1、3、5)、pET11a/ATB1(コンストラクト2)で形質転換し、IPTG誘導後0hにおいてサンプリングしたE. coli細胞中にも存在しなかった(図35、レーン2)。しかしながら、ATB1タンパク質(46kDaと30kDaの間、即ちレーン7(分子量マーカー、上の矢印46kDa、下の矢印30kDa)と比較して矢印の間に流れる)は、形質転換されたE. coli(コンストラクト2で形質転換された)によって、IPTG誘導後2h及び4hにおいて発現された(図35、レーン4、6、8及び9)。ATB1タンパク質(図35、レーン9において矢印で示す:可溶性ATB1タンパク質)は、溶解及び13000rpmでの微量遠心管中15分間の遠心分離の後の、コンストラクト2で形質転換されたE. coliの細胞ライセートの可溶性上清中に存在した(図35、レーン8及び9)。誤ってフォールディングされたATB1は不溶性ペレット中にあることから、このことは、ATB1が正しくフォールディングされたことを示す。
【0248】
実施例15−形質転換されたE. coliによるトリテルペノイド炭化水素の生成
それぞれ数マイクロリットルの形質転換されていないE. coli、及びpET11a/ATB1(コンストラクト2)又はpET302/NT-His-ATB1(コンストラクト3)のいずれかで形質転換されたE. coliをグリセロールストックから取り、200mLのLB培地に添加した。形質転換されたE. coliを増殖させたLB培地はアンピシリン(100□g/ml)を含有したのに対し、形質転換されていないE. coliを増殖させたLBブロスはアンピシリンを含有しなかった。各培養物は、ATB1の時期尚早の発現を防ぐために、無菌のグルコース(終濃度1%グルコースw/v)も含有した。培養物を37℃にて一晩振盪し、接種物として使用する定常期の十分な数の細胞を得た。
【0249】
それぞれ200mLの培養物を遠心分離し、ペレットを10mLのLB培地中に再懸濁し、次いで、誘導物質IPTG(終濃度1mM)を含有する990mLの新鮮なLB培地に添加し、37℃にて1時間増殖させ、細胞を誘導期から回復させ分裂を開始させた。次いで、1リットルの培養物を、振盪しながら28℃〜33℃にて一晩インキュベートした。温度28℃〜33℃は、37℃における収率と比較して、正しくフォールディングされたATB1タンパク質の収率を増加させ得る。
【0250】
一晩のインキュベーションの後、培養物を遠心分離し、ペレットを、10mLの溶解バッファーA(50mM MOPS(4−モルホリンプロパンスルホン酸(4-Morpholinepropanesulfonic acid)バッファー pH7.3;25mM □−メルカプトエタノール;20mM MgCl;0.5mM PMSF(フッ化フェニルメチルスルホニル(Phenylmethylsulfonyl fluoride)))中に再懸濁した。まず、形質転換されていないE. coliの試料を4℃にて細胞破砕機内に置き、次いで、pET11a/ATB1(コンストラクト2)で形質転換されたE. coliの試料を4℃にて細胞破砕機内に置いた。試料間で、細胞破砕機を、75%エタノール 25%水、次いで新鮮な蒸留水で徹底的に洗浄した。破砕後、これら2つの試料を、激しく撹拌しながら2分間60℃にて10mLヘプタンで抽出した。pET302/NT-His-ATB1(コンストラクト3)で形質転換されたE. coliの第三の試料を、細胞を破砕することなく、ブンゼンバーナー上で沸騰するまで加熱することにより10mLヘプタンで直接抽出した。
【0251】
PTFE/Teflon(登録商標)チューブ中で遠心分離することにより、ヘプタンを水性物質及び細胞残屑から分離した。ヘプタン画分を、1回使い切りのヘプタンですすいだガラスピペットを使用して取り出した。試料を、形質転換されていないE. coli、pET11a/ATB1で形質転換されたE. coli、次いでpET302/NT-His-ATB1(コンストラクト3)で形質転換されたE. coliの順に蒸発させた。試料間で、ロータリーエバポレーターを、1回のすすぎ当たり10mLのきれいなヘプタンを使用して、2回すすいだ。各試料を2mLに濃縮した。
【0252】
ヘプタン溶解性の極性化合物(大部分は脂肪酸、それらのエステル及び脂質からなる)を、以下により取り出した:1)十分なヘプタンを試料に添加し、その体積を10mLに増加させること;2)10mLのヘプタン全部を、2gの無水硫酸ナトリウム及び2gの合成マグネシア−シリカゲル(Florisil(登録商標))からなるカラム(LCTech(ドイツ)、Elufixカラム、Part number 9370)に通し、溶離液を回収すること;3)窒素気流下で、回収したヘプタン溶離液の体積をおよそ0.8mLに減らすこと。
【0253】
実施例16−形質転換されたE. coliのライセートによるトリテルペノイド炭化水素の生成
それぞれ数マイクロリットルの、pET11a/ATB1(コンストラクト2)又はpET302/NT-His-ATB1(コンストラクト3)のいずれかで形質転換されたE. coliをグリセロールストックから取り、20mLのLB培地(栄養ブロス(nutrient broth)NBとしても知られる)に添加した。形質転換されたE. coliを増殖させたLB培地はアンピシリン(100□g/ml)を含有したのに対し、形質転換されていないE. coliを増殖させたLBブロスはアンピシリンを含有しなかった。各培養物は、無菌のグルコース(1%終濃度)も含有した。培養物を振盪しながら37℃にて一晩インキュベートし、接種物として使用する定常期の十分な数の細胞を得た。形質転換されていないE. coli BL21 StarTM(DE3)のグリセロールストックを、接種物として直接使用した。一晩培養した後、細胞を遠心分離してグルコースを除去し、ペレットそれぞれをグルコースを含まないLB培地中に再懸濁して導入遺伝子を発現させた。
【0254】
形質転換されていないE. coliを37℃のみにてインキュベートしたのに対して、2つの形質転換されたE. coli株のそれぞれを18℃及び37℃の両方でインキュベートした(即ち合計5つの試料になる)。
【0255】
37℃にて誘導する試料のそれぞれを、75mLのLB(グルコースを含まない)中に再懸濁し、37℃にて2時間増殖させてほぼ対数期に到達させ、次いで0.5mM IPTGで誘導した。次いで、これらを37℃にて2時間更にインキュベートして導入遺伝子発現を誘導した。
【0256】
18℃にて誘導する試料のそれぞれを、一晩培養物からグルコースを除去した後に得られたペレットから直接継代した。ペレットを、4mLの一晩培養物に再懸濁し、次いで0.5mM IPTG(終濃度)を含有する500mLのLBに移し、18℃にて一晩インキュベートした。
【0257】
誘導の後、培養物を遠心分離した。ペレットを、5mLの溶解バッファーA中に再懸濁した。ガラスビーカー中の氷(氷−水スラリー)上での1分間の超音波処理により、溶解を達成した。微量遠心管中にアリコートにし、4℃にて15分間、13000rpmで遠心分離し、次いで同一試料のアリコートを合わせて合計3.6mLの各試料を作ることにより、試料を清澄化した。それぞれの清澄化したライセートに、35μlのFPPストック(エタノール中10mMのストック)及び15mgのNADPH粉末を添加し、混合物を、30分間37℃にて穏やかに振盪しながらインキュベートした(図36)。
【0258】
FPP及びNADPHとのインキュベーションの後、10mLのヘプタンを各ライセートに添加し、それぞれを約20秒間手で激しく振盪した。次いで、ライセートを、一晩室温にて穏やかに振盪しながら、疎水性画分と親水性画分に分離させた。次の日、試料をPTFE/ Teflon(登録商標)チューブ中で遠心分離し、次いで実施例14に記載したように蒸発させた。
【0259】
実施例17−ガスクロマトグラフィー−質量分析(GC−MS)によるトリテルペノイド炭化水素の検出
実施例15及び16から得られた試料をGC−MSにより分析した。
【0260】
Agilent technologies 7890Aガスクロマトグラフ及び7683Bオートサンプラーを備えたAgilent Technologies 5975C質量分析計上で、GC−MSを実施した。
【0261】
キャピラリーカラムは、Alltech EC-5(15m x 0.25mm内径)であった。60秒のスプリットタイムで、スプリットレス注入を使用した。注入ポート温度は300℃であった。キャリアガスは、1.8mL/分の一定流量モードでのヘリウムであった。注入量は1μLであった。
【0262】
GC温度プログラムは以下であった:40℃の初期温度で4分間、20℃/分の傾斜率、350℃の最終温度で4分間。GC/MSインターフェイス温度は280℃に設定した。FID温度は325℃であった。
【0263】
フルスキャン質量スペクトルのために、質量分析計をm/z 35からm/z 550までスキャンした。電子エネルギーを70eVに設定して、電子イオン化(EI)を使用した。ソース温度は230℃であった。MS四重極(quadruple)を150℃に設定した。
【0264】
GC−MSにより、真正のスクアレン及び真正のC30ボトリオコッセンを分析した(それぞれ図37及び38)。
【0265】
スクアレン(溶出時間16.5分、質量410)及びボトリオコッセン(溶出時間15.8分、質量410)は、GC−MSによって分析した場合、形質転換されていないE. coliにおいては検出不能であった(図39)。対照的に、コンストラクト2で形質転換し、IPTGで誘導したE. coliにおいては、真正のスクアレンと類似の溶出時間を有する化合物X(溶出時間15.7分、質量408)及び化合物Y(溶出時間16.5分)が検出された(図40及び41)。
【0266】
FPP及びNADPHを補充した場合、コンストラクト2で形質転換し、IPTGで誘導したE. coliの細胞ライセートは、GC−MSによって決定したように化合物Y(溶出時間16.5分)を産生したのに対し、化合物X(溶出時間15.7分)は検出不能であった(図42)。
【0267】
電子クラッキング(electron cracking)後の化合物Xの質量スペクトル(図39)は、大多数のピークがスクアレン及びボトリオコッセンのピークよりも2質量単位小さいこと(表1)を除き、スクアレン(図37)及びボトリオコッセン(図38)の両方の質量スペクトルに類似する。2つの水素がないこと(全体の分子量及び電子クラッキングされた(electron cracked)質量スペクトルの両方により実証される)は、トリテルペノイド化合物Xが「デヒドロ」トリテルペノイドであることを示す。実際、質量スペクトルは、デヒドロトリテルペノイド(12,13−デヒドロスクアレン(4,4’−ジアポフィトエンとしても知られる)など)と一致する。
【0268】
GC−MSに基づき、化合物X及び化合物Yをトリテルペノイド炭化水素として特定した。具体的には、化合物Xはデヒドロスクアレンであり、化合物Yスクアレンである。
【0269】
【表1】

【0270】
実施例18−藻類の培養
藻類(例えばChlamydomonas reinhardtii)を、150mg/Lの微量元素を含むAquasol(登録商標)可溶性肥料中で培養する。Aquasol(登録商標)は、リン酸一アンモニウムとしての窒素を1.8%、硝酸カリウムとしての窒素を2.6%、尿素としての窒素を18.6%(総窒素23%)、リン酸一アンモニウムとしてのリン酸塩を4%(総リン酸塩4%)、硝酸カリウムとしてのカリウムを7.8%、塩化カリウムとしてのカリウムを10.2%(総カリウム18%)、硫酸塩としての亜鉛を0.05%、硫酸塩としての銅を0.06%、モリブデン酸ナトリウム(sodium molybdite)としてのモリブデンを0.0013、硫酸塩としてのマンガンを0.15%、EDTA鉄(III)ナトリウムとしての鉄を0.06%、ホウ酸ナトリウムとしてのホウ素を0.011%含む。
【0271】
或いは、藻類を、TAP培地(Gorman and Levine, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1965, 54, 1665-1669に記載されている)中で培養する。
【0272】
藻類を、幅1.52m、長さ2.44m及び深さ0.61mの寸法で、2000Lの容量を有する、不透明なプラスチック製のレースウェイポンド(raceway ponds)中で培養する。レースウェイポンドは、水かき車(paddle wheel)を動力とし、深さ20〜30cmで作動する。水かき車の回転を、21±3cm s−1の流速を作り出すように調節する。藻類を、直径0.45m及び高さ1.52mの寸法で、100Lの作業容量を有する、透明なアクリルシート製の、垂直タンクリアクタ(VTR)中でも培養する。低密度ポリエチレン(外周50.8cmのLDPE-Uline-6-Mil耐久型(heavy duty)ポリチューブ(polytubing))材料のロールを使用して、深さ95cm、直径15cmの寸法で、20Lの作業容量を有する、吊り下げ型のポリ袋(hanging polybags)を作る。全てのリアクタに、導出管(delivery tubings)及び5〜6%COと空気の混合物の通気のためのエアーストーンを取り付ける。
【0273】
Concoa BlendMaster Model 1000ミキサーを使用して空気と混合し、空気中5〜6%CO濃度でWhatman HEPA-Ventフィルターを通した、追加のCOを、液体CO貯蔵タンクから得る。Cole Parmerロタメーターを使用して、レースウェイ、VTR及びポリ袋の間の空気流量を調節する。Dayton Model 4Z129Bモーター(90V、1.27Amps)を動力とする水かき車でレースウェイを連続的に撹拌する。VTRについては、矩形のエアーストーン(15×4×4cm)を通してCO及び空気の混合物を通気することにより混合を達成するのに対し、ポリ袋については、混合物を、ポリ袋の底に置かれたポートディスク(0.72cm開口)へと単純に通気する。追加のCOの供給を終了した後、VTR及びポリ袋を撹拌し続けるために、毎晩、日中の追加のCOガス混合物の流速と同じ流速で、環境空気をこれらの培養物へとポンプで送り込む。レースウェイ、VTR及びポリ袋についての培養温度及びpHを、毎日測定する。
【0274】
MasterFlex Model 77250-62ぺリスタポンプを使用して、3〜4L 分−1の流速でポリ袋を満たす。内径1.3cmのガーデンホース(レースウェイへと直接送られるか又は、目的とする培養系へのその後の送達のために、予めオートクレーブしたガラスカーボイ/Erlenmeyerフラスコへと送られる)を備えたゲートバルブを通じて、VTRの底から接種物を排出させる。
【0275】
藻類を、温室内でバッチ式に培養する。レースウェイ、VTR及びポリ袋を、東西方向に平行に一列に配置する。
【0276】
バイオマスを、2250gで作動させたLavinプロセス遠心分離機(Model:12-413 V)で回収し、内部ドラムからスプーンを用いて手作業で取り出し、72時間熱風炉内で40℃にて乾燥させる。それを4〜5℃にて保管する。
【0277】
レースウェイポンドを800Lの増殖培地で満たす。これらに各50Lの指数関数的に増殖している藻類の培養物を接種する。接種の後、レースウェイを深さ30cmで作動させる。
【0278】
或いは、496Lの増殖培地を含むレースウェイに、18Lの藻類の培養物を接種し、深さ20cm、総量550Lで作動させる。VTRは88Lの増殖培地を有し、4Lの藻類の培養物を接種物として添加する。VTRを100Lの作業容量で作動させ、水柱の深さを61cmに維持する。
【0279】
或いは、藻類をレースウェイ(作業容量:500L;深さ:18cm)、VTR(作業容量:100L;直径:45cm;深さ:61cm)又はポリ袋(作業容量:20L;直径:16cm;深さ:95cm)中で培養する。レースウェイ、VTR及びポリ袋のそれぞれに、450、90及び18Lの増殖培地を満たし、それぞれ25、5及び1Lの接種物を添加する。最終的な量は、レースウェイでは500L(深さ18cm)、VTRでは100L(深さ61cm)、そしてポリ袋では20L(深さ95cm)である。
【0280】
実施例19−Chlamydomonas制御エレメントを含有するATB1コンストラクトの作製
発現ベクターpCE2(plasmid for Chlamydomonas Expression 2)を作製する方法を開示する。ATB1遺伝子を、このベクターpCE2中に存在するエレメントの制御下に置き、従ってコンストラクトpCE3-ATB1(図54、配列番号43)を作り出す方法も開示する。使用する制御エレメントは、C. reinhardtii Rubisco小サブユニット(RbcS2)プロモーター及びC. reinhardtii RbcS2ターミネーターである。
【0281】
中間ベクターpCE1をまず構築する。C. reinhardtii RbcS2ターミネーターを、PCRを使用してpSP124Sから増幅し、ポリリンカーにおいてpSP124Sへと連結して戻し、中間ベクターpCE1を作り出す。C. reinhardtii RbcS2ターミネーターを、PCRを使用してpSP124Sから増幅し、ターミネーターの上流のポリリンカーにおいてpCE1へと連結し、発現ベクターpCE2を作り出す。
【0282】
段階的には、まずRbcS2ターミネーターを、フォワードプライマーRbcS2-termforw(5’-GAGTACGCGGCCGCCCCGCTCCGTGTAAAT-3’;図55、配列番号44)(NotI制限部位を含有する)、及びリバースプライマーRbcS2-termrev(5’-GCACTCGAATTCGCTTCAAATACGCCCAGC-3’;図56、配列番号45)(EcoRI制限部位を含有する)を使用して、pSP124Sから増幅する。使用するポリメラーゼは、Promega(Madison、Wisconsin、USA)GoTaqである。GoTaq酵素活性の使用した全ての条件は、製造者の使用説明書の範囲内であり(dNTPs濃度0.1mM、MgCl濃度1mM、プライマー濃度0.4pmol/μl、テンプレート濃度1pg/μl、1x製造者のバッファー)、使用したPCRサイクル条件は、94℃3分間、次いで以下を40サイクル:94℃30秒間、55℃30秒間、72℃1分間、そして72℃7分間の最後の伸長である。生じた増幅産物は、260bp長であり、Promega Wizard PCR精製カラムで精製し、次いで37℃にて1時間NotI及びEcoRIで切断し、続いて65℃にて10分間加熱処理して酵素を変性させ、その後Wizard PCR精製カラムを通して再び精製する。
【0283】
次いで、増幅し制限酵素処理したターミネーターを、以下のように調製したベクターpSP124Sへと連結する:ベクターを、37℃にて1時間NotI及びEcoRIとインキュベートすることによりこれらの酵素で切断し、次いで当該ベクターを、Wizard PCR精製カラムを通して精製する;切断し精製したベクターを、セルフライゲーションを防ぐために、製造者の使用説明書に従ってPromega子牛腸アルカリホスファターゼ(Calf Intestinal Alkaline Phosphatase)で処理する;ホスファターゼ処理したベクターを、Wizard PCR精製カラムを通して精製する。制限酵素切断したターミネーター増幅産物とホスファターゼ処理したpSP124Sとのライゲーションを、製造者の使用説明書に従ってPromega T4リガーゼを用いて達成する。ライゲーション混合物を、2mmのギャップ幅を有するMolecular Bioproducts(San Diego、California、USA)エレクトロポレーションキュベットと共に2.5kVに設定したBiorad(Hercules、California USA)Gene Pulser II electroporatorを使用して、DH10αエレクトロコンピテント(electrocompetent)E. coli細胞中に形質転換する。
【0284】
100μg/ml(寒天中の終濃度)の滅菌ろ過したアンピシリンを含有するOxoid(Basingstoke、Hampsire、UK)栄養寒天(1g/L Lab-Lemco粉末、2g/L 酵母エキス、5g/Lペプトン、5g/L NaCl、15g/L寒天)プレート上に形質転換混合物を蒔くことにより、形質転換体をスクリーニングする。コロニーをつつき取り、LB培地(栄養ブロス)中で一晩培養し、翌日それらのプラスミドDNAを抽出する。これらのプラスミドを、フォワードプライマーpSP124S-preSacI(5’-CACTAAAGGGAACAAAAGCTG-3’;図57、配列番号46)及びリバースプライマーRbcS2-termrev(5’-GCACTCGAATTCGCTTCAAATACGCCCAGC-3’;図56、配列番号45)を使用して、PCRによりスクリーニングし、291bpのPCR増幅産物をもたらすプラスミドを陽性とみなす。陽性プラスミドを、T3プライマー(5’-GCAATTAACCCTCACTAAAGGGA-3’;図58、配列番号47)及びダイターミネーター化学を使用して、Australian Genomic Research Facility(AGRF)により配列決定して、RbcS2ターミネーター配列を確認する。ポリリンカー内にC. reinhardtii RbcS2ターミネーターを含有するこの中間ベクターを、pCE1と命名する。
【0285】
同様に、pCE2の作製において、まずRbcS2プロモーターを、フォワードプライマーRbcS2-promforw(5’-GAGTGCGAGCTCTAAATGCCAGAAGGAGCG-3’;図59、配列番号48)(SacI制限部位を含有する)及びリバースプライマーRbcS2-promrev(5’-GTCACTGCGGCCGCTTTAAGATGTTGA-3’;図60、配列番号49)(NotI制限部位を含有する)を使用して、pSP124Sから増幅する。使用するポリメラーゼは、Promega GoTaqである。GoTaq酵素活性の使用した全ての条件は、製造者の使用説明書の範囲内であり(dNTPs濃度0.1mM、MgCl濃度1mM、プライマー濃度0.4pmol/μl、テンプレート濃度1pg/μl、1x製造者のバッファー)、使用したPCRサイクル条件は、94℃3分間、次いで以下を40サイクル:94℃30秒間、52℃30秒間、72℃1分間、そして72℃7分間の最後の伸長である。生じた増幅産物は、239bp長であり、Wizard PCR精製カラムで精製し、次いで37℃にて1時間SacI及びNotIで切断し、続いて65℃にて10分間加熱処理して酵素を変性させ、その後Wizard PCR精製カラムを通して再び精製する。次いで、増幅し制限酵素処理したプロモーターを、以下のように調製したベクターpCE1へと連結する:ベクターを、37℃にて1時間SacI及びNotIとインキュベートすることによりこれらの酵素で切断し、次いで当該ベクターを、Wizard PCR精製カラムを通して精製する。切断し精製したベクターを、セルフライゲーションを防ぐために、製造者の使用説明書に従ってPromega子牛腸アルカリホスファターゼで処理する。ホスファターゼ処理したベクターを、Wizard PCR精製カラムを通して精製する。
【0286】
制限酵素切断したプロモーター増幅産物とホスファターゼ処理したpCE1とのライゲーションを、製造者の使用説明書に従ってPromega T4リガーゼを用いて達成する。ライゲーション混合物を、2mmのギャップ幅を有するMolecular Bioproductsエレクトロポレーションキュベットと共にBiorad Gene Pulser II electroporatorを使用して、DH10αエレクトロコンピテントE. coli細胞に形質転換する。100μg/ml(寒天中の終濃度)の滅菌ろ過したアンピシリンを含有するOxoid栄養寒天プレート上に形質転換混合物を蒔くことにより、形質転換体をスクリーニングする。コロニーをつつき取り、LB培地(栄養ブロス)中で一晩培養し、翌日それらのプラスミドDNAを抽出する。これらのプラスミドを、フォワードプライマーpSP124S-preSacI(5’-CACTAAAGGGAACAAAAGCTG-3’;図57、配列番号46)及びリバースプライマーRbcS2-termrev(5’-GCACTCGAATTCGCTTCAAATACGCCCAGC-3’;図56、配列番号45)を使用して、PCRによりスクリーニングし、494bpのPCR増幅産物をもたらすプラスミドを陽性とみなす。陽性プラスミドを、T3プライマー(5’-GCAATTAACCCTCACTAAAGGGA-3’;図58、配列番号47)及びダイターミネーター化学を使用して、AGRFにより配列決定して、RbcS2プロモーター配列を確認する。
【0287】
C. reinhardtii RbcS2ターミネーター及びC. reinhardtii RbcS2プロモーター(両方ともポリリンカー内に存在する)を含有するこの新規発現ベクターを、pCE2と命名する。これは、RbcS2プロモーターとRbcS2ターミネーターとの間に、NotI部位を含有する。より高い発現のために、RbcS2プロモーターの代わりに、ハイブリッドC. reinhardtii Hsp70A/RbcS2プロモーターを使用してもよい(Schroda et al. The Plant Journal, 2000, 21, 121-131及びSchroda et al., The Plant Journal, 2002, 31, 445-455)。
【0288】
更なる例として、ATB1遺伝子を、RbcS2プロモーターとターミネーターの間のNotI部位においてベクターpCE2へと連結し、発現コンストラクトpCE3-ATB1を作り出す。具体的には、発現コンストラクトpCE3-ATB1の作製において、ATB1遺伝子を、Genscript(Piscataway、New Jersey、USA)にて製造されたコンストラクトpUC57/ATB1から増幅する。コンストラクトpUC57/ATB1は、Botryococcus braunii Ayame ATB1遺伝子(サブクローニングしたバージョンpET11/ATB1の形でE.coliにおいて機能することが示された(実施例15))の推定cDNAを含有する。コンストラクトpUC57/ATB1からのATB1遺伝子の増幅は、フォワードプライマーATB1forw(5’-GTCACTGCGGCCGCGTCACTTTGTAGGGCT- 3’;図61、配列番号50)(NotI制限部位を含有する)、及びリバースプライマーATB1rev(5’-GAGTACGCGGCCGCAAAATGAGTATGCACC-3’;図62、配列番号51)(これもNotI制限部位を含有する)を使用して達成する。使用するポリメラーゼは、Phusion(Finnzymes、Espoo、Finland)である。Phusion酵素活性のために使用した全ての条件は、製造者の使用説明書の範囲内であり(dNTPs濃度0.7mM、プライマー濃度0.4pmol/μl、テンプレート濃度1pg/μl、1x製造者のバッファー)、使用したPCRサイクル条件は、94℃2分間、次いで以下を40サイクル:94℃10秒間、53℃30秒間、72℃1分間、そして72℃7分間の最後の伸長である。生じた増幅産物は、1244bp長であり、Wizard PCR精製カラムで精製し、次いで37℃にて1時間NotIで切断し、続いて65℃にて10分間加熱処理してNotI酵素を変性させ、その後Wizard PCR精製カラムを通して再び精製する。
【0289】
次いで、増幅し制限酵素処理したATB1遺伝子を、以下のように調製したベクターpCE2へと連結する:ベクターを、37℃にて1時間これらの酵素とインキュベートすることによりNotIで切断し、次いで当該ベクターを、Wizard PCR精製カラムを通して精製する;切断し精製したベクターを、セルフライゲーションを防ぐために、製造者の使用説明書に従ってPromega子牛腸アルカリホスファターゼで処理する;ホスファターゼ処理したベクターを、Wizard PCR精製カラムを通して精製する。制限酵素切断したATB1遺伝子とホスファターゼ処理したpCE2とのライゲーションを、製造者の使用説明書に従ってPromega T4リガーゼを用いて達成する。ライゲーション混合物を、2mmのギャップ幅を有するMolecular Bioproductsエレクトロポレーションキュベットを使用して、2.5kVに設定したBiorad Gene Pulser IIを使用して、DH10αエレクトロコンピテントE. coli細胞に形質転換する。100μg/ml(寒天中の終濃度)の滅菌ろ過したアンピシリンを含有するOxoid栄養寒天プレート上に形質転換混合物を蒔くことにより、形質転換体をスクリーニングする。コロニーをつつき取り、LB培地(栄養ブロス)中で一晩培養し、翌日それらのプラスミドDNAを抽出する。これらのプラスミドを、フォワードプライマーpSP124S-preSacI(5’-CACTAAAGGGAACAAAAGCTG-3’;図57、配列番号46)及びリバースプライマーRbcS2-termrev(5’-GCACTCGAATTCGCTTCAAATACGCCCAGC-3’;図56、配列番号45)を使用して、PCRによりスクリーニングし、1718bpのPCR増幅産物をもたらすプラスミドを陽性とみなす。陽性プラスミドを、T3プライマー(5’-GCAATTAACCCTCACTAAAGGGA-3’;図58、配列番号47)及びダイターミネーター化学を使用して、AGRFにより配列決定して、ATB1遺伝子配列、並びにRbcS2プロモーター配列及びRbcsS2ターミネーター配列を確認する。C. reinhardtii RbcS2プロモーター及びC. reinhardtii RbcS2ターミネーターの制御下のB. braunii ATB1遺伝子を含有するこの新規コンストラクトを、pCE3-ATB1と命名する。
【0290】
実施例20−トランスジェニック生物を作製するためのC. reinhardtii CC503へのpCE3-ATB1の形質転換
コンストラクトpCE3-ATB1を、ガラスビーズの存在下でDNA及び細胞を一緒にボルテックスする方法により、C. reinhardtii細胞(細胞壁欠損株CC503)に形質転換する。C. reinhardtii細胞を調製するために、CC503培養物を、トリス酢酸リン酸(TAP)培地(Gorman and Levine 1965)中で、対数期まで増殖させ、次いで50mLを遠心分離し、ペレットを、0.5mLのTAP培地中に無菌的に再懸濁する。300mgのオートクレーブしたBiospec(Bartlesville、Oklahoma、USA)ガラスビーズ(直径0.5mm)を含有する無菌ガラスチューブに、500μlのこの濃い細胞懸濁液を、37℃にて1時間SacI部位で切断することにより線状化した2μgのDNAと共に添加する。細胞及びビーズに添加する前に、DNAを、10分間65℃にて加熱処理し、冷却し、Wizard PCR精製カラムで精製し、45μlの水に再懸濁する。細胞、DNA及びビーズ混合物を、30秒間最高速度でRatek Instruments(Boronia、Victoria、Australia)vortexer上でボルテックスし、このようにC. reinhardtii細胞をpCE3-ATB1コンストラクトで形質転換する。ボルテックスした後、形質転換された細胞を、3μg/mL(寒天中の終濃度)のInvitrogenゼオシン(Carlsbad、California、USA)を含有するTAP寒天プレート上に播く。連続照明、又は16時間明期、8時間暗期の明暗周期で25℃にて2週間増殖させた後、形質転換された細胞を含有するTAP寒天プレートは、ゼオシン耐性に基づき陽性に選択された、形質転換されたC. reinhardtiiのコロニーを示す。ゼオシンは、ブレオマイシンの一形態である。ブレオマイシン耐性遺伝子は、pSP124S及びpCE3-ATB1中に存在する。ブレオマイシン遺伝子もゼオシンへの耐性を与えるために機能する。
【0291】
C. reinhardtiiのゼオシン耐性コロニーを、それらを移すために無菌ワイヤーループを使用して、個別につつき取り、個別の1mLアリコートの新鮮なTAP液体培地へ入れる。次いで、単離物を、1週間まで、連続照明、又は16時間明期、8時間暗期の明暗周期で、25℃にてそれぞれ培養し、次いでDNAを、実施例2のの手順によりそれぞれから抽出する。単離物を、PCRによりスクリーニングして、ATB1遺伝子の有無を確認する。トランスジェニックC. reinhardtiiを特定するためのPCRスクリーニングのために使用したプライマーは、フォワードプライマーRbcS2-promforw(5’-GAGTGCGAGCTCTAAATGCCAGAAGGAGCG-3’;図59、配列番号48)及びリバースプライマーRbcS2-termrev(5’-GCACTCGAATTCGCTTCAAATACGCCCAGC-3’;図60、配列番号56、配列番号45)である。1703bpの増幅産物が得られるゼオマイシン(Zeomycin)耐性単離物を、陽性、即ちATB1遺伝子を含有するとみなす。これらの単離物のうちの5つからの1703bp増幅産物を、Wizard PCR及びゲル精製キットを使用してアガロース電気泳動ゲルから精製し、増幅産物を作製するために使用したPCRプライマーのいずれか1つを使用してAGRFにて直接配列決定する。1703bp増幅産物の配列を、ATB1配列並びにその隣接するRbcS2プロモーター及びRbcS2ターミネーターと比較する。ATB1遺伝子供給源DNA及びRbcS2制御エレメント供給源DNAと同一の配列を有する単離物を、トランスジェニック生物CC503-ATB1の具体的なケースとして、以下のように命名する:CC503-ATB1A、CC503-ATB1B、CC503-ATB1C、CC503-ATB1D、CC503-ATB1E。
【0292】
実施例21−トランスジェニック藻類CC503におけるトリテルペノイドのアッセイ
C. reinhardtii細胞を、GC−MSを使用して、トリテルペノイドのレベル、及びトリテルペノイドの正体についてアッセイする。標準的な培地、温度及び照明体制を使用して培養したトランスジェニックC. reinhardtiiを、1,000〜20,000rpmで遠心分離して細胞を沈殿させ、上清を静かにデカントして捨て、細胞を、溶解バッファー(50mM 3−モルホリノプロパン−1−スルホン酸 pH7.3、25mM β-メルカプトエタノール、20mM MgCl、1mMフッ化フェニルメチルスルホニル)中に再懸濁し、次いで複数回フレンチプレス又は類似物に供して細胞を破裂させる。次いで、ライセートを、例えば実施例15に記載したように、ヘプタン又はヘキサンで抽出し、実施例17に記載したように、GC−MSによって分析する。形質転換されていないCC503及び形質転換されたCC503の両方を、同一の方法によって炭化水素含量についてアッセイし、GC−MSデータを比較して、形質転換された細胞には存在するが形質転換されていない細胞には存在しないいかなる炭化水素も検出する。質量分析によってトリテルペノイドであることが示された、いかなるかかる新規の炭化水素ピークも、導入遺伝子の作用に由来したと結論する。組込み事象の染色体上の位置における差異を考慮するために、5つの異なる形質転換体をトリテルペノイド含量についてアッセイする。ユークロマチンにおける組込みは、ヘテロクロマチンにおける組込みよりも、ATB1遺伝子のより高い発現を促進することが期待されるが、いずれの種類のクロマチンに当該遺伝子が組み込まれたかを知る必要はなく、むしろ単に複数の単離物をスクリーニングすることが必要である。非トランスジェニック対照と比較して最も高いレベルのトリテルペノイド(スクアレン、デヒドロスクアレン、ボトリオコッセン、デヒドロボトリオコッセン又は他のトリテルペノイドなど)を産生する単離物を、アッセイした他の単離物に優先して選択する。
【0293】
実施例22−構造機能解析
トリテルペノイド合成ポリペプチド中の機能単位(モチーフ)が特定されている。Prositeアクセッション番号PDOC00802は、2つのスクアレン及びフィトエン合成酵素シグネチャ(signatures)(PS01044シグネチャ1及びPS01045シグネチャ2)を開示する。PS01044シグネチャ1は、以下のコンセンサスパターンを提供する:
Y-[CSAM]-x(2)-[VSG]-A-[GSA]-[LIVAT]-[IV]-G-x(2)-[LMSC]-x(2)-[LIV]。
【0294】
PS01045シグネチャ2は、以下のコンセンサスパターンを提供する:
[LIVM]-G-x(3)-Q-x(2,3)-[ND]-[IFL]-x-[RE]-D-[LIVMFY]-x(2)-[DE]-x(4,7)-R-x-[FY]-x-P。
【0295】
これらのコンセンサスシグネチャを、トリテルペノイド炭化水素合成ポリペプチド中の相同的シグネチャを見出すために使用し、それにより、変異させる1以上のアミノ酸及び対応するコドン(複数可)を特定する。或いは、図53のコンセンサス配列を、変異させる1以上のアミノ酸及び対応するコドン(複数可)を特定するために使用する。
【0296】
部位指定突然変異のためのオリゴヌクレオチドプライマーを設計して、ATB1をコードするプラスミド中の突然変異のために選択した1以上のコドンを変異させる。次いで、変異させたトリテルペノイド炭化水素合成ポリペプチドを発現させ、そのトリテルペノイド炭化水素合成活性について、実施例15〜17又は実施例20及び21に従って、その機能をアッセイする。次いで、変異させたポリペプチドの機能を、変異させたポリペプチドの構造と相互に関連付けて、トリテルペノイド炭化水素合成活性に寄与するアミノ酸残基を確認する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリテルペノイド炭化水素を産生することができるポリペプチドをコードする単離された核酸分子であって、該ポリペプチドは以下を含む:配列番号1〜5若しくは20〜29のいずれか1つの少なくとも15連続するアミノ酸残基;配列番号1〜5若しくは20〜29のいずれか1つと少なくとも70%の配列同一性;又は配列番号29の機能的断片。
【請求項2】
配列番号6〜9若しくは30のいずれか1つ、又はその機能的断片を含む、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
トリテルペノイド炭化水素を産生することができる単離されたポリペプチドであって、該ポリペプチドは以下を含む:配列番号1〜5若しくは20〜29のいずれか1つの少なくとも15連続するアミノ酸残基;配列番号1〜5若しくは20〜29のいずれか1つと少なくとも70%の配列同一性;又は配列番号29の機能的断片。
【請求項4】
配列番号1〜5又は20〜29のいずれか1つを含む、請求項3に記載のポリペプチド。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項6】
トリテルペノイド炭化水素を産生することができる組換え非ヒト生物であって、請求項1若しくは請求項2に記載の核酸分子、又は請求項5に記載のベクターを含む、生物。
【請求項7】
微生物である、請求項6に記載の組換え生物。
【請求項8】
微生物が藻類又は細菌である、請求項7に記載の組換え生物。
【請求項9】
微生物が以下からなる群から選択される、請求項7に記載の組換え生物:Escherichia coli;Chlamydomonas reinhardtii;Saccharomyces cerevisiae;及びPichia sp.。
【請求項10】
トリテルペノイド炭化水素を製造するための、請求項1若しくは請求項2に記載の核酸分子、請求項3若しくは請求項4に記載のポリペプチド、請求項5に記載のベクター、又は請求項6〜9のいずれか一項に記載の組換え生物の、使用。
【請求項11】
当該生物がトリテルペノイド炭化水素を産生するために十分な条件下で、請求項6〜9のいずれか一項に記載の組換え生物を培養する工程を含む、トリテルペノイド炭化水素の製造方法。
【請求項12】
トリテルペノイド炭化水素が、スクアレン又はボトリオコッセンであり、条件が、組換え生物にNADPH又はNADHを補充することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
トリテルペノイド炭化水素が、デヒドロスクアレン又はデヒドロボトリオコッセンであり、条件が、組換え生物にNADPH若しくはNADHを補充しないこと、又はNADPH若しくはNADHの濃度を最小限にすることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法によって製造される、トリテルペノイド炭化水素。
【請求項15】
バイオ燃料、バイオプラスチック、医薬品、食品添加物、工業化学品又は特殊化学品製造の中間体の製造における、請求項1若しくは請求項2に記載の核酸分子、請求項3若しくは請求項4に記載のポリペプチド、請求項5に記載のベクター、又は請求項6〜9のいずれか一項に記載の組換え生物、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法によって製造されるトリテルペノイド炭化水素、又は請求項14に記載のトリテルペノイド炭化水素の、使用。
【請求項16】
当該生物がトリテルペノイド炭化水素を産生するために十分な条件下で請求項6〜9のいずれか一項に記載の組換え生物を培養する工程、当該生物からトリテルペノイド炭化水素を回収する工程、及び当該トリテルペノイド炭化水素から中間体を製造する工程、を含む、バイオ燃料、バイオプラスチック、医薬品、食品添加物、工業化学品又は特殊化学品製造の中間体の製造方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法によって製造される中間体。
【請求項18】
トリテルペノイド炭化水素がFPP及び/又はPSPPから製造される、請求項1若しくは請求項2の核酸分子、請求項3若しくは請求項4に記載のポリペプチド、請求項6〜9のいずれか一項に記載の組換え生物、請求項10若しくは請求項15に記載の使用、請求項11〜13若しくは16のいずれか一項に記載の方法、又は請求項14に記載のトリテルペノイド炭化水素。
【請求項19】
トリテルペノイド炭化水素がボトリオコッセン又はスクアレンである、請求項1若しくは請求項2の核酸分子、請求項3若しくは請求項4に記載のポリペプチド、請求項6〜9のいずれか一項に記載の組換え生物、請求項10若しくは請求項15に記載の使用、請求項11〜13若しくは16のいずれか一項に記載の方法、又は請求項14に記載のトリテルペノイド炭化水素。
【請求項20】
V10/022706又はV10/022707として寄託されたベクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15−1】
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【図15−2】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31−1】
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【図31−2】
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【図32】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54−1】
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【図54−2】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公表番号】特表2013−504332(P2013−504332A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529064(P2012−529064)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【国際出願番号】PCT/AU2010/001203
【国際公開番号】WO2011/032213
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(512067023)ダヴリュダヴリュシーシー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】