説明

トリム用インサ―ト及びトリム

【課題】 成形が容易で、かつ高い強度を確保可能なトリム用インサート及びトリムを提供する。
【解決手段】 インサート15の複数の骨片21を、その骨片21の長手方向の一端側において第1連結部23により、他端側において分離用孔26を有する仮止め部24及び第2連結部25により相互に連結する。仮止め部24と第2連結部25とは、骨片21を介して交互に配列する。押出成形後の分離工程で、前記仮止め部24の分離用孔26に対応する部分を脆弱化させて切り離すことにより、インサート15における各骨片21の前記他端側を、ゴム内で2骨片毎に分離する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車等のシール材または装飾材として用いられるトリム、及びそのトリムの形状保持のためにゴム、樹脂等の高分子材料内に埋設されるインサートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】この種のトリムとしては、ゴム、樹脂等の高分子材料からなるトリム本体内に、そのトリム本体の形状を保持するための板金製のインサートが埋設されたものが知られている。このトリム本体は断面略U字状に折曲形成され、そのトリム本体の内面には自動車の開口部におけるフランジ部等を挟持するためのリップが突設されている。
【0003】図6に示すように、このトリムに埋設されるインサート51としては、例えば複数の骨片52が2列のボンド部をなす連結部53と仮止め部54とにより所定の間隔をおいて相互に連結された梯子状ものが知られている。このインサート51は、板金を打ち抜き加工することにより、その各骨片52、その各骨片間のスリット55及び各骨片52を相互に連結する連結部53及び仮止め部54が同時に形成されるものとなっている。そして、一方の列のボンド部なす仮止め部54には、例えばノッチ加工を施して溝部56が形成されている。
【0004】そして、このトリムを製造する際には、前記インサート51を芯材として前記高分子材料の押出機に供給され、トリム本体が押出成形される。次いで、そのトリム本体が繰り返し屈曲されて、前記仮止め部54の溝部56が切り離された後、前記トリム本体が断面略U字状に折曲形成される。
【0005】このように、インサート51は、その各骨片52が仮止め部54及び連結部53で相互に連結された状態で押出機に供給されることで、押出成形中における不用意な変形が抑制されている。また、製品トリムにおいては、各骨片52が連結部53により相互連結されているため、そのトリムを自動車等のフランジ部に組み付ける際に不用意に伸ばされたりすることがなく、トリムにおける良好な組付性が確保されるようになっている。また、仮止め部54が屈曲の繰り返しにより溝部56において切り離されていることにより、トリムの前記フランジ部に追従させて、容易に横方向等に湾曲させることができるようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところが、前記従来構成においては、インサート51は、板金を梯子状に打ち抜き加工したのち、仮止め部54にノッチ加工により溝部56を別途形成する必要があって、その加工に手間のかかるものであったという問題があった。
【0007】また、前記従来構成では、一方の列の仮止め部54の全てに前記溝部56が形成されているため、その溝部56を切り離すための屈曲の繰り返しにより、トリム本体が各骨片52毎に折り曲げられやすいものとなる。このため、本来、各骨片52を相互に連結しておくための連結部53にも金属疲労を生じて、製品トリムにおけるトリム本体の強度が不足するおそれがあるという問題があった。これにより、製品トリムにおける良好な組付性が低下を来すおそれが生じる。
【0008】本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的としては、成形が容易で、かつ高い強度を確保可能なトリム用インサート及びトリムを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために、本願請求項1に記載の発明は、トリムの高分子材料内に埋設され、複数の骨片と、それらの骨片を所定の間隔をおいて相互に連結する2列のボンド部とを備えた板金製のインサートにおいて、前記ボンド部のうち一方の列におけるボンド部の1つおきに孔を形成したことを特徴とするものである。
【0010】また、本願請求項2に記載の発明は、インサートが埋設されるとともに断面略U字状に折曲形成された高分子材料からなるトリム本体を備えたトリムにおいて、複数の骨片と、それらの骨片を所定の間隔をおいて相互に連結する2列のボンド部とを備え、前記ボンド部のうち一方の列におけるボンド部の1つおきに孔を形成したインサートが埋設されるとともに、前記トリム本体の側壁部にそれぞれ配置された前記2列のボンド部のうち一方の列におけるボンド部は、そのボンド部上に形成された孔に対応する位置で切り離されることにより1つおきに分離されていることを特徴とするものである。
【0011】この本願請求項1及び請求項2に記載の発明では、インサートを埋設した状態での屈曲の繰り返しによって、一方の列のボンド部において、そのボンド部上に形成された孔に対応する位置が選択的に切り離される。この孔は1つおきのボンド部に形成されているため、前記屈曲の繰り返しによって、トリム本体が各骨片毎に繰り返し屈曲されることがなく、インサート及びトリム本体の強度低下が抑制される。
【0012】また、前記孔は、打ち抜き加工によりインサートを形成する際に同時に設けることができて、インサート製造時における工程数を削減することができる。さらに、打ち抜き型における孔形成用のピンの径を変更することで、前記ボンド部の孔に対応する部分の強度を容易に調節することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を自動車等の開口部のフランジ部に装着されるトリムを備えたウェザストリップに具体化した一実施形態について図1〜図5に基づいて説明する。
【0014】図1及び図2に示すように、ウェザストリップ11は、例えばEPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)ソリッドゴムからなる断面略U字形のトリム本体12とその内側に突設されたフランジ保持リップ13とからなるトリム14を備えている。このフランジ保持リップ13は、車体パネル等の開口部のフランジ部(図示略)を挟持して、ウェザストリップ11を車体パネル上に保持するためのものである。トリム本体12の内部には、板金製のインサート15が埋設されている。トリム本体12の車外側側壁16aの車外側には、ドアパネル(図示略)の外周部に弾性的に当接して、そのドアパネルと車体パネルとの間をシールする中空シール部17がEPDMスポンジゴムで突出形成されている。
【0015】ウェザストリップ11の車体組付時には、例えばドア開口縁のコーナ部においてそのコーナ部の湾曲に沿わせてトリム14を湾曲させる必要がある。このため、前記インサート15には、断面略U字形の折曲形態で長手方向に対し三次元的に湾曲できる機能が必要とされる。
【0016】インサート15は、例えば厚さ約0.5mmの板金からなり、その長手方向に交互に並ぶ多数の骨片21及びスリット22と、骨片21の相互間を2列に連結する多数のボンド部をなす第1連結部23、仮止め部24及び第2連結部25とを備えている。骨片21及び各スリット22の寸法は共に、例えば[0.5〜4.0mm]×[20〜40mm]であり、各連結部23,25及び仮止め部24の幅寸法は、例えば1.0〜4.0mmである。ここで、ウェザストリップ11の折曲形態では、この第1連結部23はトリム本体12の車内側側壁16bに配置され、仮止め部24及び第2連結部25はトリム本体12の車外側側壁16aに配置されるようになっている。
【0017】前記中空シール部17と対応する仮止め部24と第2連結部25との列は、孔としての分離用孔26が形成された仮止め部24と、分離用孔26の形成されていない第2連結部25とが各骨片21を介して交互に併設されている。すなわち、仮止め部24と第2連結部25とが一方の列におけるボンド部を構成している。各分離用孔26は、仮止め部24のほぼ中央にその仮止め部24の面積の40〜70%程度を占めるように形成されている。
【0018】次に、前記インサート15を製造するための装置について、説明する。図3は、前記インサート15を製造するための打ち抜き装置を示す概略図である。図において、左側から順に挿入ローラ31、プレス32及び引取ローラ33がそれぞれ配置されている。プレス32の下面には、帯状の板金34に前記インサート15の骨片21、スリット22、両連結部23,25、仮止め部24及び分離用孔26を打ち抜き形成するための打ち抜き型35が装着されている。図4に示すように、この打ち抜き型35には、インサート15のスリット22の形状に対応するように複数の刃部36が形成されている。そして、その刃部36のインサート15の仮止め部24との対応部37の内部には、分離用孔26を形成するためのピン38が突設されている。
【0019】そして、プレス32がその板金34の打ち抜きを行う毎に、前記挿入ローラ31と引取ローラ33とが断続的に回転され、板金34が歩進的に所定量ずつ移動されて、長尺状のインサート15が形成されるようになっている。このように、形成されたインサート15は、一旦リールに巻きとられ、次の押出成形工程に供給される。
【0020】次に、このように形成されたインサート15を用いて、ウェザストリップ11を製造するための押出成形以降の製造工程について説明する。図5に示すように、リールから供給された前記インサート15をトリム14及び中空シール部17を押出成形するための押出機41に供給する。この押出機41において、インサート15を芯材としてトリム本体12及びフランジ保持リップ13をEPDMソリッドゴムで押出形成するのと同時に、中空シール部17をEPDMスポンジゴムで押出形成する。このとき、トリム14は、図1に二点鎖線で示すように、平らな形態のインサート15のまわりにEPDMゴムを被覆することにより略平板状に押し出されたものとなっている。押し出されたウェザストリップ11を、加硫槽42に通してEPDMゴムを加硫させた後、引取機43で引き取る。
【0021】加硫したウェザストリップ11を、分離機44で長手方向に対し複数のローラ45により張力を加えながら繰り返し屈曲させ、最も強度的に弱い各仮止め部24の分離用孔26と対応する位置で脆弱化させて切り離す。これにより、インサート15の各骨片21は、その第1連結部23による相互の連結が保たれたまま、第2連結部25により2骨片ずつ連結された状態となる。
【0022】最後に、ウェザストリップ11を曲げ加工機46に案内し、この曲げ加工機46内において、凹面と凸面とを有する複数のローラ47によりトリム14を断面略U字状に塑性変形させる。その結果、図2に示す断面形状のウェザストリップ11が完成する。
【0023】従って、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(イ) 本実施形態のウェザストリップ11では、インサート15の各骨片21が、その骨片21の長手方向の一端側において第1連結部23により相互に連結されている。また、各骨片21は、その骨片21の長手方向の他端側において、分離用孔26を有する仮止め部24と、分離用孔26を有しない第2連結部25とにより交互に連結されている。
【0024】このため、このウェザストリップ11では、トリム14内にインサート15を埋設した状態での屈曲の繰り返しによって、各骨片21が第1連結部23による相互の連結及び第2連結部25による2骨片毎の連結を保持したまま、一方の列のボンド部が仮止め部24の分離用孔26に対応する位置で選択的に切り離される。このように、前記屈曲の繰り返しによって、インサート11が各骨片21毎に繰り返し屈曲されることがない。
【0025】従って、インサート11の各骨片21がそれぞれ分離されるようなことがなく、インサート11及びトリム本体12の強度低下を抑制することができて、ウェザストリップ11における良好な組付性を確保することができる。
【0026】(ロ) 本実施形態のウェザストリップ11のインサート15では、トリム14のEPDMゴムの加硫後において、各骨片21を2骨片毎に分離させるために、仮止め部24に分離用孔26が形成されている。
【0027】この分離用孔26は、打ち抜き加工によりインサート15を所定形状に形成する際に同時に設けることができる。このため、従来構成のように、打ち抜き加工を行った後に溝部56をつけるために、ノッチ加工を行ったりする必要がない。従って、インサート15の製造時における工程数を削減することができるて、インサート15の製造が容易なものとなる。
【0028】また、打ち抜き型35における分離用孔26の形成用のピン38の径を変更することで、仮止め部24の強度を容易に調節することができる。
(ハ) 本実施形態のウェザストリップ11のインサート15では、その各骨片21が、第1連結部23、仮止め部24及び第2連結部25により梯子状に相互に連結された状態で押出機41に供給されるようになっている。
【0029】このため、押出成形時において、インサート15の移動方向が不用意に斜めになって成形に支障を来したりする等の不具合の発生を未然に抑制することができる。
【0030】(変更例)なお、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・ 前記実施形態では、トリム14及び中空シール部17をEPDMにより構成したが、EPDM以外のゴム、ポリ塩化ビニル等の軟質の樹脂材料等により構成してもよい。
【0031】・ また、前記実施形態では、本発明をトリム14の車外側側壁16aに中空シール部17を備えたウェザストリップ11に具体化したが、前記中空シール部17を有しないトリムに具体化してもよい。
【0032】・ また、前記実施形態では、分離されるボンド部、つまり仮止め部24を車外側側壁16aに配置したものを示したが、これを車内側側壁16bに配置するようにしてもよい。
【0033】これらのようにしても、前記実施形態とほぼ同様の効果が得られる。なお、前記実施形態では、インサート15を板金34からなるものとしたが、ここでいう板金34としては、例えば鉄板、アルミニウム板、銅板、ステンレス等の各種合金板等が挙げられる。
【0034】
【発明の効果】以上詳述したように、本願請求項1及び請求項2に記載の発明によれば、成形が容易で、かつ高い強度を確保できて、製品トリムにおける良好な組付性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のトリム用インサートの一実施形態と、それを埋設したウェザストリップの押出時の形態を示す断面図及び平面図。
【図2】 図1のウェザストリップの折曲形態を示す断面図。
【図3】 インサート製造装置を示す概略図。
【図4】 図3の打ち抜き型の一部を示す部分底面図。
【図5】 ウェザストリップ製造工程の押出成形工程以降を示す概略図。
【図6】 従来のトリム用インサートを示す斜視図。
【符号の説明】
12…トリム本体、14…トリム、15…インサート、16a…側壁部としての車外側側壁、16b…側壁部としての車内側側壁、21…骨片、23…ボンド部を構成する第1連結部、24…一方の列におけるボンド部の一部を構成する仮止め部、25…一方の列におけるボンド部の一部を構成する第2連結部、26…孔としての分離用孔、34…板金。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 トリムの高分子材料内に埋設され、複数の骨片と、それらの骨片を所定の間隔をおいて相互に連結する2列のボンド部とを備えた板金製のインサートにおいて、前記ボンド部のうち一方の列におけるボンド部の1つおきに孔を形成したことを特徴とするトリム用インサート。
【請求項2】 インサートが埋設されるとともに断面略U字状に折曲形成された高分子材料からなるトリム本体を備えたトリムにおいて、複数の骨片と、それらの骨片を所定の間隔をおいて相互に連結する2列のボンド部とを備え、前記ボンド部のうち一方の列におけるボンド部の1つおきに孔を形成したインサートが埋設されるとともに、前記トリム本体の側壁部にそれぞれ配置された前記2列のボンド部のうち一方の列におけるボンド部は、そのボンド部上に形成された孔に対応する位置で切り離されることにより1つおきに分離されていることを特徴とするトリム。

【図3】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【特許番号】特許第3015025号(P3015025)
【登録日】平成11年12月17日(1999.12.17)
【発行日】平成12年2月28日(2000.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−108679
【出願日】平成11年4月16日(1999.4.16)
【審査請求日】平成11年4月16日(1999.4.16)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【出願人】(593227981)日本プライ株式会社 (8)
【参考文献】
【文献】特開 平11−48304(JP,A)
【文献】実開 昭61−177946(JP,U)
【文献】特公 平3−76256(JP,B2)
【文献】特公 昭31−10432(JP,B1)
【文献】米国特許3256577(US,A)
【文献】米国特許3165793(US,A)