説明

トルク管理機能付きネジ部材及びボルト用のトルク管理部材

【課題】ボルト部材に作用するトルクを一定のトルクで管理することができ、且つ、ボルト部材の防食機能を有するトルク管理機能付きネジ部材、及びボルト用のトルク管理部材を提供する。
【解決手段】本発明に係るトルク管理機能付きネジ部材1は、金属材料で構成されたボルト部材10と、該ボルト部材10に連結され、工具からトルクが伝達されるトルク伝達部材20と、を備える。ボルト部材10は、ネジ部11と、該ネジ部11に連続する第一の頭12部とを含む。トルク伝達部材20は、第一の頭部12にトルク伝達可能に連結される連結部21と、該連結部21に連続し、所定トルク以上で破断可能な破断可能部22と、該破断可能部22に連続する第二の頭部23とを含む。トルク伝達部材20の少なくとも連結部21は、ボルト部材10よりもイオン化傾向の大きい低電位の金属を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つ以上の部材を連結したり、部材を作動させたりするために対象物に螺合されるトルク管理機能付きネジ部材、及び対象物に螺合されるボルト用のトルク管理部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、2つ以上の部材を連結したり部材を作動させたりする際にネジ部材が用いられている。ネジ部材は、対象物に螺合される軸状のネジ部と、ネジ部に連設された頭部とを有する。かかるネジ部材は、ネジ部を対象物に螺合させた状態で頭部にトルクを作用させることで軸力を作用させる。すなわち、ネジ部材は、2つ以上の部材を連結する時や部材を作動させる時の負荷が作用した状態で、頭部に回転トルクが伝達されることで、トルクに応じた軸力をネジ部に作用させる。
【0003】
ところで、この種のネジ部材は、頭部に伝達されるトルク(軸力)が大きくなりすぎると、ネジ部が破断したり対象物等を破損させたりすることがある。
【0004】
そのため、ネジ部材で2つ以上の部材を連結したり部材を作動させたりするに当り、該ネジ部材に対するトルクを管理する必要があるとして、一般的に、ネジ部材の頭部に対して予め設定した値のトルクを伝達するトルクレンチ等の工具が用いられる。
【0005】
しかしながら、トルクレンチは、重量物であるため操作性が悪いといった問題がある。また、トルクレンチは、複雑な構造を有するため大型化している。そのため、トルクレンチを使用できる場所に制限があるといった問題があった。
【0006】
このような状況に鑑み、モンキーレンチ、スパナ等の一般的な工具を用いても、トルク管理することのできるトルク管理機能付きネジ部材が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
かかるトルク管理機能付きネジ部材は、対象物に螺合される軸状のネジ部と、ネジ部に連続する第一の頭部と、該第一の頭部に連続する破断可能部と、該破断可能部に連続する第二の頭部と備える。
【0008】
このトルク管理機能付きネジ部材において、第一の頭部及び第二の頭部のそれぞれは、モンキーレンチ、スパナ等の一般的な工具から回転トルクを伝達可能に形成される。そして、破断可能部は、所定トルク以上のトルクが生じた時に破断するように構成されている。
【0009】
上記構成のトルク管理機能付きネジ部材は、対象物に対してネジ部を螺合させる際に第二の頭部に回転トルクが伝達され、その回転トルクが所定トルク以上になると破断可能部が破断するようになっている。
【0010】
これにより、上記構成のトルク管理機能付きネジ部材は、破断可能部の破断時に生じたトルク以上のトルクがネジ部に伝達されなくなる。したがって、第一頭部に作用させるトルクが大きくなりすぎることがなく、ネジ部や対象物等が破損されることが防止される。そして、上記構成のトルク管理機能付きネジ部材は、上述の如く、破断可能部の破断に伴って第二の頭部が切除される。そのため、トルク管理機能付きネジ部材は、対象物との螺合が解除されるに当り、ネジ部に連続する第一の頭部に対して工具からのトルクが伝達される。これにより、上記構成のトルク管理機能付きネジ部材は、対象物から取り外すことも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実開昭53−26769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、上述のトルク管理機能付きネジ部材では、全体が金属材料で形成されている。そのため、該トルク管理機能付きネジ部材は、ネジ部が対象物に螺合された状態(対象物に取り付けられた状態)で該ネジ部が腐食する(錆が発生する)ことがある。
【0013】
これに伴い、トルク管理機能付きネジ部材は、ネジ部の腐食に伴って対象物から取り外すことができなくなったり、強度が不足したりすることがあり、長期間に亘って使用できないといった問題があった。
【0014】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、ボルト部材に作用するトルクを一定のトルクで管理することができ、且つ、ボルト部材の防食機能を有するトルク管理機能付きネジ部材、及びボルト用のトルク管理部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るトルク管理機能付きネジ部材は、金属材料で構成されたボルト部材と、該ボルト部材に連結され、工具からトルクが伝達されるトルク伝達部材と、を備え、前記ボルト部材は、軸状のネジ部と、該ネジ部に連続する第一の頭部とを含み、前記トルク伝達部材は、前記第一の頭部にトルク伝達可能に連結される連結部と、該連結部に連続し、所定トルク以上で破断可能な破断可能部と、該破断可能部に連続する第二の頭部とを含み、前記トルク伝達部材の少なくとも前記連結部は、前記ボルト部材よりもイオン化傾向の大きい低電位の金属を含む。
【0016】
かかるトルク管理機能付きネジ部材によれば、所定トルク以上のトルクがトルク伝達部材に伝達されると、破断可能部が連結部から破断する。従って、破断可能部の破断時に生じたトルク以上のトルクがボルト部材(ネジ部、第一の頭部)に伝達されなくなり、ボルト部材が一定の軸力を生じさせた状態になる。これにより、トルク管理機能付きネジ部材は、ボルト部材に作用させるトルクを一定又は略一定で管理することができる。なお、第一の頭部に対する連結部の連結態様としては、連結部が第一の頭部にトルク伝達可能に挿入されるか、又は、連結部が第一の頭部にトルク伝達可能に外側から嵌め合わされるようにすることが好ましい。
【0017】
また、トルク管理機能付きネジ部材によれば、破断可能部の破断によって、ボルト部材の第一の頭部に残存する連結部が、犠牲陽極(流電陽極)として作用する。これにより、連結部は、ボルト部材の金属表面の局部電池による腐食電流を打ち消す防食電流をボルト部材に供給する。従って、連結部とボルト部材との間の電位差による安定した発生電流によって、ボルト部材の防食機能が発揮される。これにより、第一の頭部にトルクを伝達することで、対象物からボルト部材を円滑に取り外すことができる。また、ボルト部材の強度も担保される。
【0018】
また、本発明に係るトルク管理機能付きネジ部材では、前記第一の頭部に連結部を嵌め合わせるための凹部が形成され、前記連結部が前記凹部にトルク伝達可能に嵌め合わされた状態で、前記トルク伝達部材と前記ボルト部材とが連結されていることが好ましい。
【0019】
かかるトルク管理機能付きネジ部材によれば、トルク伝達部材とボルト部材とが、別体的に形成されているため、例えば、破断トルクの異なる破断可能部を有するトルク伝達部材を複数用意しておき、必要な許容伝達トルクの破断可能部を有するトルク伝達部材とボルト部材とを連結すれば、許容伝達トルクの異なるトルク管理機能付きネジ部材を作成することができる。
【0020】
また、本発明に係るトルク管理機能付きネジ部材では、前記第一の頭部及び前記第二の頭部のそれぞれは、前記工具からトルク伝達可能な多角柱状に形成され、前記第一の頭部の外周上の平面と前記第二の頭部の外周上の平面とが軸方向から見て交差するように、前記トルク伝達部材の連結部がボルト部材の凹部に対して嵌め合わされていることが好ましい。
【0021】
かかるトルク管理機能付きネジ部材によれば、トルクを伝達する際、誤って第一の頭部と第二の頭部とをスパナ等の工具で一緒に挟むことがない。これにより、第二の頭部にのみトルクを伝達することができ、所定トルクが生じた時に破断可能部を適切に破断させることができる。
【0022】
また、本発明に係るトルク管理機能付きネジ部材では、前記トルク伝達部材のうちの少なくとも前記連結部が亜鉛又は亜鉛合金で形成されていることが好ましい。このような構成によれば、連結部が犠牲陽極(流電陽極)としての有効な防食電流を供給し、ボルト部材の防食機能がさらに良好に発揮される。
【0023】
本発明に係るボルト用のトルク管理部材は、軸状のネジ部と、該ネジ部に連続する頭部とを有する金属製のボルト部材に取り付けられるボルト用のトルク管理部材であって、前記頭部にトルク伝達可能な状態で連結可能な連結部と、該連結部に連続し、所定トルク以上のトルクが生じた時に破断可能な破断可能部と、該破断可能部に連続するトルク伝達部と、を備え、少なくとも前記連結部は、前記ボルト部材よりもイオン化傾向の大きい低電位の金属を含む。
【0024】
かかるボルト用のトルク管理部材によれば、ボルトに取り付けた(連結部をボルト部材に連結した)状態で、所定トルク以上のトルクがトルク伝達部材に伝達されると、破断可能部が連結部から破断する。従って、破断可能部の破断時に生じたトルク以上のトルクがボルト部材に伝達されなくなり、ボルト部材が一定の軸力を生じさせた状態になる。これにより、ボルト用のトルク管理部材は、ボルト部材に作用させるトルクを一定に管理することができる。なお、頭部に対する連結部の連結態様としては、連結部が頭部にトルク伝達可能に挿入されるか、又は、連結部が頭部にトルク伝達可能に外側から嵌め合わされるようにすることが好ましい。
【0025】
また、本発明に係るボルト用のトルク管理部材では、少なくとも前記連結部が亜鉛又は亜鉛合金で形成されていることが好ましい。このような構成によれば、連結部が犠牲陽極(流電陽極)としての有効な防食電流を供給し、ボルト部材の防食機能がさらに良好に発揮される。
【発明の効果】
【0026】
以上の如く、本発明に係るトルク管理機能付きネジ部材によれば、ボルト部材に作用するトルクを一定のトルクで管理することができ、且つ、ボルト部材の防食機能を有することができる。
【0027】
また、本発明に係るボルト用のトルク管理部材によれば、ボルト部材に作用するトルクを一定のトルクで管理することができ、且つ、ボルト部材の防食機能を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係るトルク管理機能付きネジ部材を備えた管継手の部分分解斜視図を示す。
【図2】本発明の一実施形態に係るトルク管理機能付きネジ部材を備えた管継手の断面側面図であって、(a)は、本発明に係るトルク管理機能付きネジ部材を備えた管継手によって2本の管が締結される前の状態の断面側面図、(b)は、本発明に係るトルク管理機能付きネジ部材を備えた管継手によって2本の管が締結された後の状態の断面側面図を示す。
【図3】同実施形態に係るトルク管理機能付きネジ部材の構成を示す概要図であって、(a)は、トルク伝達部と、ボルト部材とが、分離された状態を示す断面図、(b)は、トルク伝達部と、ボルト部材とが、一体的に形成された状態を示す断面図、(c)は、トルク伝達部と、ボルト部材とが、一体的に形成された状態を示す平面図を示す。
【図4】同実施形態に係るトルク管理機能付きネジ部材のボルト部材の構成を示す概要図であって、(a)は、ボルト部材の平面図、(b)は、ボルト部材の断面図を示す。
【図5】本発明の一実施形態に係るトルク管理機能付きネジ部材のトルク伝達部の構成を示す概要図であって、(a)は、トルク伝達部の断面図、(b)は、トルク伝達部の下面図を示す。
【図6】本発明の他実施形態に係るボルト用のトルク管理部材を備えた管継手の断面側面図であって、(a)は、本発明に係るボルト用のトルク管理部材を備えた管継手によって2本の管が締結される前の状態の断面側面図、(b)は、本発明に係るボルト用のトルク管理部材を備えた管継手によって2本の管が締結された後の状態の断面側面図を示す。
【図7】本発明の他実施形態に係るボルト用のトルク管理部材の構成を示す概要図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の第一の実施形態に係るトルク管理機能付きネジ部材について、図面を参酌しつつ説明する。
【0030】
(第一の実施形態)
本実施形態に係るトルク管理機能付きネジ部材は、図1及び図2に示す如く、例えば、水道管、ガス管といった2つ以上の管部材(本実施形態においては、後述する2つの管部材)110,120同士を連結するための管継手に備えられている。本実施形態に係るトルク管理機能付きネジ部材1は、図3(a)乃至図3(c)に示すように、ボルト部材10と、該ボルト部材10に連結されたトルク伝達部材20と、を備える。
【0031】
本実施形態に係るボルト部材10は、金属材料、例えば、鉄材や、圧延鋼材(SS)等の鋼材、又は球状黒鉛鋳鉄品(FCD)等の鋳鉄品で構成されている。本実施形態では、ボルト部材10は、球状黒鉛鋳鉄品(FCD)で構成されている。ボルト部材10は、対象物に螺合されるネジ部11と、該ネジ部11に連続する第一の頭部12と、を含む。
【0032】
図3及び図4に示す如く、ネジ部11は、軸状に形成されるとともに外周にネジ溝を有するネジ部本体11aと、該ネジ部本体11aの先端から円錐状に突出するテーパ部11bと、を含む。
【0033】
第一の頭部12は、ネジ部11(ネジ部本体11a)の軸心回りのトルクを伝達可能となっている。本実施形態においては、第一の頭部12は、工具からトルク伝達可能な多角柱として形成されている。より具体的には、第一の頭部12は、平行二面を有し、トルク伝達可能な六角柱として形成されている(図4(a)参照)。そして、第一の頭部12の上面には、凹部12aが形成されている。凹部12aは、平面視において、真円以外の形状(曲率中心から外周までの距離が全周に亘って普遍的でない(異なる)形状、例えば、非円筒状、多角柱状)に形成される。本実施形態において、凹部12aは、内周面上に平行状態で対向する二面を有する。より具体的には、凹部12aは、平面視六角形状に形成されている。
【0034】
本実施形態に係るトルク伝達部材20は、図3及び図5に示すように、第一の頭部12にトルク伝達可能に連結される連結部21と、該連結部21に連続され、所定トルク以上で破断可能な破断可能部22と、該破断可能部22に連続する第二の頭部23とを含む。
【0035】
連結部21は、第一の頭部12にトルク伝達可能に挿入されるか、又は、第一の頭部12にトルク伝達可能に外側から嵌め合わされるようになっている。本実施形態において、連結部21は、第一の頭部12にトルク伝達可能に挿入されるようになっている(図3(a),(b)及び(c)参照)。
【0036】
具体的に説明すると、連結部21は、第一の頭部12の上面に形成された凹部12aに対応した形状に形成される。すなわち、連結部21は、平面視において真円以外の形状(曲率中心から外周までの距離が全周に亘って普遍的でない(異なる)形状、例えば、非円筒状、多角柱状)に形成される。本実施形態において、凹部12aが平面視六角形状に形成されているため、連結部21についても平面視六角形状に形成されている。
【0037】
そして、本実施形態において、連結部21の外周面上には、軸線方向に延びて径方向外側に突出する複数の圧入突起21a,21a・・・が設けられている。複数の圧入突起21a,21は、連結部21の周方向に間隔をあけて配置されている。
【0038】
本実施形態においては、トルク伝達部材20の少なくとも連結部21は、ボルト部材10よりイオン化傾向の大きい低電位の金属を含む。本実施形態においては、少なくとも連結部21が亜鉛又は亜鉛合金で形成されている。
【0039】
破断可能部22は、連結部21及び第二の頭部23に対してトルク伝達可能に連結されている。そして、破断可能部22は、連結部21及び第二の頭部23よりも捻り剛性が低くなっている。破断可能部22は、トルクを集中的に作用させるために、連結部21及び第二の頭部23よりも小径になっている。破断可能部22は、設定トルクで破断するように外径及び材質の少なくても何れか一方が決定される。すなわち、破断可能部22は、外径の設定のみで破断するトルクを設定できる場合には、第二の頭部23と同一の材質とされるが、外径の設定のみで破断するトルクを設定できない場合には、第二の頭部23と異なる材質で構成される。
【0040】
第二の頭部23は、第一の頭部12と同様に、軸心回りでトルク伝達可能となっている。第二の頭部23は、工具からトルク伝達可能な多角柱として形成されている。より具体的には、第二の頭部23は、平行二面を有し、トルク伝達可能な六角柱として形成されている(図3(c)参照)。連結部21、破断可能部22、及び第二の頭部23は、同心で配置されている。
【0041】
トルク伝達部材20及びボルト部材10は、連結部21が凹部12aに嵌め合わされることで一体的になっている。本実施形態において、上述のように、連結部21の外周上に複数の圧入突起21a,21aが形成されている。そのため、連結部21が凹部12aに嵌め合わされた状態で、複数の圧入突起21a,21aが凹部12aの内周面に圧接する。これにより、トルク伝達部材20の連結部21がボルト部材10の第一の頭部12に対して強固に連結されている。そして、本実施形態において、上述のように、トルク伝達部材20をボルト部材10に連結した状態で、図3(c)に示す如く、第一の頭部12及び第二の頭部2のそれぞれの外周の平面が軸方向からみて周方向に交差した状態になるように構成されている。
【0042】
本実施形態に係るトルク管理機能付きネジ部材1の構成についての説明は以上の通りであり、次に、本実施形態に係るトルク管理機能付きネジ部材1を備える管継手30について、図1及び図2を参酌しつつ説明する。
【0043】
本実施形態に係る管継手30は、図2(a)及び図2(b)に示すように、一方の管(以下、第一の管という)110の受口111内に他方の管(以下、第二の管という)120の挿口を挿入し、第一の管110の受口111の内周面と第二の管120の挿口121の外周面との間に嵌め込まれたシールリング102を、第一の受口111の奥に向かって加圧することで、第一の管110と第二の管120とをシールした状態に締結するものである。第一の管110には、受口111の開口縁部に外向きのフランジ部112が設けられている。
【0044】
より具体的に説明すると、管継手30は、図1に示すように、第二の管120の挿口121に外装される押輪40と、第二の管120の外周面に食い込む爪部51を有する係止体50と、該係止体50を押輪40の内周面から突出させるためのトルク管理機能付きネジ部材1と、係止体50を弾性的に保持する弾性部材60と、を備えている。本実施形態においては、弾性部材60として、例えば、伸縮するO‐リング等の弾性環状部材が使用されている。
【0045】
押輪40は、シールリング102(図2参照)の対向面を押し当てる環状の押圧部41(図2参照)を背面側(第一の管110の受口111と対向する側)に設け、第一の管110の締結部(図示せず)と対向する締結部42を複数(本実施形態では、6個)設け、該締結部42に隣接して複数の(本実施形態では、3個の)作用部43を設けたものとされている。本実施形態では、第一の管110が複数対の締結部を設けたものであると、押輪40の締結部42も複数対設けられる。締結部42は貫通穴とされ、該貫通穴に締結ボルト(図示せず)が挿通される。
【0046】
作用部43は、一対の締結部42の間に設けられる。作用部43は、第二の管120に沿う方向に形成された軸状部43bと、押圧部41に連続する支持部13cと、軸状部43bと押圧部41との間を連通するように設けられた空間部43dとを備える。
【0047】
軸状部43bは、押圧部41と対向しない正面側に設けられている。また、空間部43d、第二の管120の外周面に垂直に向けられた軸状部43b側の垂直面43e(図2参照)と、支持部43cとを傾斜させた内面の傾斜面43fとによって傾斜されている。空間部43dは、開口側(第二の管120の外周面と対向する部分)が広く、奥側が狭くなるように形成されている。
【0048】
支持部43cの中心には、開口部(図示せず)が設けられ、該開口部内に係止部(図示せず)が突設されている。係止部の背面側(第一の管110のフランジ部112と対向する側)には、全幅に亘って溝(図示せず)が形成されている。開口部が設けられることにより、O‐リング等の弾性部材60を係止部に係止することができ、弾性部材60が、係止部の溝に嵌められることで、弾性部材60が係止部から外れないようになっている。
【0049】
係止体50は、空間部43d内に収容される小片状のもので、第二の管120の外周面に食い込む爪部51の反対側に本実施形態に係るトルク管理機能付きネジ部材1のボルト部材10のテーパ部11bに当接する頭部52を有している。頭部52は、本実施形態に係るトルク管理機能付きネジ部材1のボルト部材10のテーパ部11bが面当たりするようにすべく、円弧状の窪み部52aが設けられている。
【0050】
係止体50は、弾性部材60によって、空間部43dの傾斜面43fに沿うように支持部13cに保持され、トルク管理機能付きネジ部材1のボルト部材10のテーパ部11bが頭部52を押すことで、爪部51が空間部43dから突出するになっている。また、係止体50の両側面には、O‐リング等の弾性部材60を係止するための切欠部53が形成されている。さらに、係止体50の正面(軸状部43bと対向する面)には、O‐リング等の弾性部材60を嵌め込む溝54が形成されている。弾性部材60が溝54に嵌め込まれることによって、係止体50の正面に弾性部材60が突出しないようにすることができる。
【0051】
次に、本実施形態に係るトルク管理機能付きネジ部材1を備える管継手30による管部材(第一の管110及び第二の管120)同士の締結方法及び使用態様について、図2を参酌しつつ説明する。
【0052】
本実施形態に係るトルク管理機能付きネジ部材1を備える管継手30による管部材(第一の管110及び第二の管120)同士の締結方法及び使用態様は、まず、第一の管110の受口111内に第二の管120の挿口121が挿入され、第一の管110の受口111の内周面と第二の管120の挿口の外周面との間にシールリング102を嵌め込んだ状態で、トルク管理機能付きネジ部材1を軸状部43bに挿入する。係止体50は、弾性部材60によって空間部43dの傾斜面43fに沿うように、傾斜姿勢となっている。
【0053】
この状態で、係止体50の爪部51は、空間部43d内に退入した状態となっている。押輪40の押圧部41は、シールリング102の対向面に当接された状態になっている(図2(a)参照)。
【0054】
そして、管継手によって第一の管110と第二の管120とを締結するため、工具によってトルク管理機能付きネジ部材1のトルク伝達部20に回転トルクを作用させてボルト部材10を螺合させる。すなわち、工具によって第二の頭部23に回転トルクを作用させる。これにより、ボルト部材10に一定の軸力が生じ、トルク管理機能付きネジ部材1のテーパ部11bが係止体50の頭部52に当たり、係止体50が第二の管120の外周面の方に押圧される。本実施形態においては、ボルト部材10に対する軸力(締め付け力)の分力が、係止体50に作用することになる。すると、係止体50の爪部51が第二の管120の外周面に食い込むようになる。
【0055】
そして、所定トルク以上のトルクがトルク伝達部材20からボルト部材10に伝達されると、破断可能部22が連結部21から破断して(連結部21のみが凹部12aに残存して)、ボルト部材10がそれ以上螺合しなくなる(図2(b)参照)。そうすると、破断時に生じたトルク以上のトルクがボルト部材20に伝達されなくなり、ボルト部材10が一定の軸力を生じた状態で維持することになる。したがって、ボルト部材10に作用するトルクが一定のトルクで管理される。このようにして、管継手30による第一の管110と第二の管120との締結が完了する。このときも、係止体50は、空間部43dの傾斜面43fに沿った傾斜姿勢となっている。
【0056】
そして、上述の如く、連結部21が凹部12aに残存することで、連結部21が犠牲陽極(流電陽極)として作用する。これにより、連結部21は、ボルト部材10の金属表面の局部電池による腐食電流を打ち消す防食電流をボルト部材10に供給する。従って、連結部21とボルト部材10との間の電位差による安定した発生電流によって、ボルト部材10の防食機能が発揮される。
【0057】
そして、地震等によって第一の管110と第二の管120とが離間する方向の外力が加えられると、係止体50の爪部51が第二の管120の外周面に食い込んでいることから、弾性部材60が伸びた状態となり、係止体50が空間部43dの垂直面43eに沿う直立姿勢となる。この時、係止体50の正面に形成された溝54内に弾性部材60が嵌め込まれているため、弾性部材60が邪魔となることなく、係止体50が垂直面43eに密着する状態となる。ただし、外力の大きさ等によって、係止体50は、垂直面43eに密着することなく、略起立した傾斜状態となっていてもよい。
【0058】
また、管継手30による第一の管110と第二の管120との連結を解除する時は、第一の管110と第二の管120との連結時に使用した工具と同じ寸法の工具を用いて解除を行う。すなわち、該工具によって、第一の管110と第二の管120との連結時とは逆向きの軸力をボルト部材10の第一の頭部12に作用させ、トルク管理機能付きネジ部材1の締め付けを緩めるようにする。
【0059】
すると、係止体50は、頭部52がトルク管理機能付きネジ部材1のテーパ部11bから押圧されなくなり、係止体50が弾性部材60によって引っ張られて、爪部51が第二の管120の外周面から抜けるようになる。そのようにして、管継手30は、第二の管120から容易に外されることができ、第一の管110と第二の管120との連結が解除されることができる。
【0060】
以上のように、本実施形態に係るトルク管理機能付きネジ部材1によれば、所定トルク以上のトルクがトルク伝達部材20に伝達されると、破断可能部22が連結部21から破断する。従って、破断可能部22の破断時に生じたトルク以上のトルクがボルト部材10に伝達されなくなり、ボルト部材10が一定の軸力を生じさせた状態になる。これにより、トルク管理機能付きネジ部材1は、ボルト部材10に作用させるトルクを一定に管理することができる。
【0061】
また、本実施形態に係るトルク管理機能付きネジ部材1によれば、破断可能部22の破断によって、ボルト部材10の第一の頭部12に残存する連結部21が、犠牲陽極(流電陽極)として作用する。これにより、連結部21は、ボルト部材10の金属表面の局部電池による腐食電流を打ち消す防食電流をボルト部材10に供給する。従って、連結部21とボルト部材10との間の電位差による安定した発生電流によって、ボルト部材10の防食機能が発揮される。これにより、第一の頭部12にトルクを伝達することで、対象物からボルト部材10を円滑に取り外すことができる。また、ボルト部材10の強度も担保される。
【0062】
また、本実施形態に係るトルク管理機能付きネジ部材1によれば、トルク伝達部材20とボルト部材10とが、別体的に形成されているため、例えば、破断トルクの異なる破断可能部22を有するトルク伝達部20材を複数用意しておき、必要な許容伝達トルクの破断可能部22を有するトルク伝達部材20とボルト部材10とを連結すれば、許容伝達トルクの異なるトルク管理機能付きネジ部材1を作成することができる。
【0063】
また、本実施形態に係るトルク管理機能付きネジ部材1によれば、トルクを伝達する際、誤って第一の頭部12と第二の頭部23とを一緒に、スパナ等の工具で挟むことがない。これにより、第二の頭部23にのみトルクを伝達することができ、所定トルクが生じた時に破断可能部22を適切に破断させることができる。
【0064】
また、本発明に係るトルク管理機能付きネジ部材1では、少なくとも連結部21が亜鉛又は亜鉛合金で形成されているため、連結部21が犠牲陽極(流電陽極)としての有効な防食電流を供給し、ボルト部材10の防食機能がさらに良好に発揮される。
【0065】
なお、本発明に係るトルク管理機能付きネジ部材は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0066】
上記第一の実施形態においては、ボルト部材10(ネジ部11)がテーパ部11bを有するように形成されているが、これに限定されず、例えば、ネジ部11が全長に亘って略同幅に形成されるようにしてもよい。要は、ボルト部材10は、2つ以上の部材の連結や、部材の作動(前進や後退等)をするために部材や対象物に螺合され、回転トルクによって軸力を生じるものであればよい。
【0067】
上記第一の実施形態では、連結部21は、第一の頭部12にトルク伝達可能に挿入されるようになっているが、これに限定されず、例えば、連結部21は、第一の頭部12にトルク伝達可能に外側から嵌め合わされるようになっていてもよい。要は、破断可能部22が連結部21から破断された後も、連結部21が第一の頭部12に残存し、残存した連結部21が犠牲陽極(流電陽極)としての防食電流を供給し、ボルト部材10の防食機能が良好に発揮されるような構成であればよい。
【0068】
上記第一の実施形態においては、少なくとも連結部21が亜鉛又は亜鉛合金で形成されているが、これに限定されず、例えば、少なくとも連結部21は、アルミニウム、マグネシウム等の他の金属又はそれらの合金が使用されてもよい。この場合でも、アルミニウム、マグネシウム等の金属又はそれらの合金が犠牲陽極(流電陽極)としての防食電流を供給し、ボルト部材10の防食機能がさらに良好に発揮される。なお、連結部21の有効な防食電流の供給による防食機能、及び、ボルト部材10の長期間の使用の観点から、連結部21が亜鉛又は亜鉛合金で形成されていることがより好ましい。
【0069】
上記第一の実施形態においては、ボルト部材10が押輪40の軸心方向に対して挿入されるように構成されているが、これに限定されず、例えば、ボルト部材10が押輪40の軸心方向に対して、交差する方向に挿入されるように構成されていてもよい。
【0070】
この場合でも、上記第一の実施形態と同様に、トルク伝達部材20からボルト部材10に作用するトルクが一定のトルクで管理されることができ、トルク伝達部材20からボルト部材10に伝達されるトルクにより該ボルト部材10に作用する軸力を生じさせ、該軸力又は軸力の係止体50方向の分力を係止体50に作用させ、例えば、第一の管110及び第二の管120を締結することができる。要は、トルク伝達部材20からボルト部材10に伝達されるトルクにより該ボルト部材10に作用する軸力が生じることができれば、任意の形状を有する押輪に使用することができる。
【0071】
上記第一の実施形態においては、トルク管理機能付きネジ部材1は、管継手30に備えられた押輪40に使用されるようにしたが、これに限定されない。例えば、トルク管理機能付きネジ部材1は、2つ以上の部材を連結したり、部材を作動させたりするために対象物に螺合される際に使用可能である。
【0072】
以下、本発明の第二の実施形態に係るボルト用のトルク管理部材について、図面を参酌しつつ説明する。
【0073】
(第二の実施形態)
本実施形態に係るボルト用のトルク管理部材は、第一の実施形態に係るトルク管理機能付きネジ部材1と同様、例えば、図6に示す如く、水道管、ガス管といった2つ以上の管部材(本実施形態においては、後述する2つの管部材)同士を連結するための管継手30に備えられている。
【0074】
そして、図6及び図7に示す如く、本実施形態に係るボルト用のトルク管理部材(以下、単にトルク管理部材という)70は、一般的なボルト部材71に取り付けられる。すなわち、トルク管理部材70は、軸状のネジ部71aと、該ネジ部71aに連続する頭部71bとを有する金属製のボルト部材71に取り付けられる。
【0075】
本実施形態に係るトルク管理部材70は、頭部71bにトルク伝達可能な状態で連結可能な連結部72と、該連結部72に連続され、所定トルク以上のトルクが生じた時に破断可能な破断可能部73と、該破断可能部73に連続されるトルク伝達部74と、を備える。
【0076】
連結部72は、ボルト部材71の頭部71bにトルク伝達可能に挿入されるか、又は、の頭部71bにトルク伝達可能に外側から嵌め合わされる。本実施形態においては、連結部72は、ボルト部材71の頭部71bにトルク伝達可能に外側から嵌め合わされるようになっている。これに伴い、連結部72は、工具を用いてトルク伝達可能に形状設定されている。具体的には、連結部72は、軸心回りのトルクを伝達可能となっている。本実施形態においては、連結部72は、工具からトルク伝達可能な多角柱として形成されている。より具体的には、連結部72は、平行二面を有し、トルク伝達可能な六角柱として形成されている。
【0077】
また、本実施形態においては、トルク管理部材70の少なくとも連結部72は、ボルト部材71よりもイオン化傾向の大きい低電位の金属を含む。本実施形態においては、少なくとも連結部72が亜鉛又は亜鉛合金で形成されている。
【0078】
破断可能部73は、連結部72及びトルク伝達部74に対してトルク伝達可能に連結されている。そして、破断可能部73は、連結部72及びトルク伝達部74よりも捻り剛性が低くなっている。破断可能部73は、トルクを集中的に作用させるために、連結部72及びトルク伝達部74よりも小径になっている。破断可能部73は、設定トルクで破断するように外径及び材質の少なくても何れか一方が決定される。すなわち、破断可能部73は、外径の設定のみで破断するトルクを設定できる場合には、トルク伝達部74と同一の材質とされるが、外径の設定のみで破断するトルクを設定できない場合には、トルク伝達部74と異なる材質で構成される。
【0079】
トルク伝達部74は、ボルト部材71の頭部71bと同様に、軸心回りでトルク伝達可能となっている。トルク伝達部74は、工具からトルク伝達可能な多角柱として形成されている。より具体的には、トルク伝達部74は、平行二面を有し、トルク伝達可能な六角柱として形成されている(図7参照)。連結部72、破断可能部22、及びトルク伝達部74は、同心で配置されている。
【0080】
トルク管理部材70は、連結部72がボルト部材71の頭部71bに嵌め合わされることで一体的になるように構成されている。すなわち、トルク管理部材70の連結部72がボルト部材71の頭部71bに対して強固に連結されるようになっている。そして、本実施形態において、上述のように、トルク管理部材70をボルト部材71に連結した状態でボルト部材71の頭部71b及びトルク伝達部74のそれぞれの外周の平面が軸方向からみて周方向に交差した状態になるように構成されている。
【0081】
なお、本実施形態に係るトルク管理部材70を備える管継手30の構成については、第一の実施形態に係るトルク管理機能付きネジ部材1を備える管継手30の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0082】
次に、本実施形態に係るトルク管理部材70を備える管継手30による管部材(第一の管110及び第二の管120)同士の締結方法及び使用態様について、図6を参酌しつつ説明する。
【0083】
本実施形態に係るトルク管理部材70を備える管継手30による管部材(第一の管110及び第二の管120)同士の締結方法及び使用態様は、まず、第一の管110の受口111内に第二の管120の挿口121が挿入され、第一の管110の受口111の内周面と第二の管120の挿口の外周面との間にシールリング102を嵌め込んだ状態で、トルク管理部材70を軸状部43bに挿入する。係止体50は、弾性部材60によって空間部43dの傾斜面43fに沿うように、傾斜姿勢となっている。
【0084】
この状態で、係止体50の爪部51は、空間部43d内に退入した状態となっている。押輪40の押圧部41は、シールリング102の対向面に当接された状態になっている(図6(a)参照)。
【0085】
そして、管継手30によって第一の管110と第二の管120とを締結するため、工具によってトルク管理部材70のトルク伝達部74に回転トルクを作用させてボルト部材71を螺合させる。すなわち、工具によってトルク伝達部74に回転トルクを作用させる。これにより、ボルト部材71に一定の軸力が生じ、該ボルト部材71のネジ部71aが係止体50の頭部52に当たり、係止体50が第二の管120の外周面の方に押圧される。本実施形態においては、ボルト部材71に対する軸力(締め付け力)の分力が、係止体50に作用することになる。すると、係止体50の爪部51が第二の管120の外周面に食い込むようになる。
【0086】
そして、所定トルク以上のトルクがトルク伝達部74からボルト部材71に伝達されると、破断可能部73が連結部72から破断して(連結部72のみがボルト部材71の頭部71b上に残存して)、ボルト部材71がそれ以上螺合しなくなる(図6(b)参照)。そうすると、破断時に生じたトルク以上のトルクがボルト部材71に伝達されなくなり、ボルト部材71が一定の軸力を生じた状態で維持することになる。したがって、ボルト部材71に作用するトルクが一定のトルクで管理される。このようにして、管継手30による第一の管110と第二の管120との締結が完了する。このときも、係止体50は、空間部43dの傾斜面43fに沿った傾斜姿勢となっている。
【0087】
そして、上述の如く、連結部72がボルト部材71の頭部71bに残存することで、連結部72が犠牲陽極(流電陽極)として作用する。これにより、連結部72は、ボルト部材71の金属表面の局部電池による腐食電流を打ち消す防食電流をボルト部材71に供給する。従って、連結部72とボルト部材71との間の電位差による安定した発生電流によって、ボルト部材71の防食機能が発揮される。
【0088】
そして、地震等によって第一の管110と第二の管120とが離間する方向の外力が加えられると、係止体50の爪部51が第二の管120の外周面に食い込んでいることから、弾性部材60が伸びた状態となり、係止体50が空間部43dの垂直面43eに沿う直立姿勢となる。この時、係止体5の正面に形成された溝54内に弾性部材60が嵌め込まれているため、弾性部材60が邪魔となることなく、係止体50が垂直面43eに密着する状態となる。ただし、外力の大きさ等によって、係止体50は、垂直面43eに密着することなく、略起立した傾斜状態となっていてもよい。
【0089】
また、管継手30による第一の管110と第二の管120との連結を解除する時は、第一の管110と第二の管120との連結時に使用した工具と同じ寸法の工具を用いて解除を行う。すなわち、該工具によって、第一の管110と第二の管120との連結時とは逆向きの軸力をボルト部材71(ボルト部材71の頭部71b上に残存する連結部72)に作用させ、ボルト部材71の締め付けを緩めるようにする。
【0090】
すると、係止体50は、頭部52がボルト部材71のネジ部71aから押圧されなくなり、係止体50が弾性部材60によって引っ張られて、爪部51が第二の管120の外周面から抜けるようになる。そのようにして、管継手30は、第二の管120から容易に外されることができ、第一の管110と第二の管120との連結が解除されることができる。
【0091】
以上のように、本実施形態に係るトルク管理部材70によれば、ボルト部材71に取り付けた(連結部72をボルト部材71に連結した)状態で、所定トルク以上のトルクがトルク伝達部74に伝達されると、破断可能部73が連結部72から破断する。従って、破断可能部73の破断時に生じたトルク以上のトルクがボルト部材71に伝達されなくなり、ボルト部材71が一定の軸力を生じさせた状態になる。これにより、トルク管理部材70は、ボルト部材71に作用させるトルクを一定に管理することができる。
【0092】
また、本実施形態に係るトルク管理部材70によれば、連結部72が犠牲陽極(流電陽極)としての有効な防食電流を供給し、ボルト部材71の防食機能がさらに良好に発揮される。
【0093】
なお、本発明に係るトルク管理部材は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0094】
上記第二の実施形態においては、少なくとも連結部72が亜鉛又は亜鉛合金で形成されているが、これに限定されず、例えば、少なくとも連結部72は、アルミニウム、マグネシウム等の他の金属又はそれらの合金が使用されてもよい。この場合でも、アルミニウム、マグネシウム等の金属又はそれらの合金が犠牲陽極(流電陽極)として防食電流を供給し、連結部72とボルト部材71との間の電位差による安定した発生電流によって防食機能が発揮される。なお、連結部72の有効な防食電流の供給による防食機能、及び、ボルト部材71の長期間の使用の観点から、連結部72が亜鉛又は亜鉛合金で形成されていることがより好ましい。
【0095】
上記第二の実施形態においては、ボルト部材71が押輪40の軸心方向に対して挿入されるように構成されているが、これに限定されず、例えば、ボルト部材71が押輪40の軸心方向に対して、交差する方向に挿入されるように構成されていてもよい。
【0096】
この場合でも、上記実施形態と同様に、トルク伝達部74からボルト部材71に作用するトルクが一定のトルクで管理されることができ、トルク伝達部74からボルト部材71に伝達されるトルクにより該ボルト部材71に作用する軸力を生じさせ、該軸力又は軸力の係止体50方向の分力を係止体50に作用させ、例えば、第一の管110及び第二の管120を締結することができる。要は、トルク伝達部材74からボルト部材71に伝達されるトルクにより該ボルト部材71に作用する軸力が生じることができれば、任意の形状を有する押輪に使用することができる。
【0097】
上記第二の実施形態においては、トルク管理部材70は、管継手30に備えられた押輪40に使用されるようにしたが、これに限定されない。例えば、トルク管理部材70は、2つ以上の部材を連結したり、部材を作動させたりするために対象物に螺合される際に使用可能である。
【符号の説明】
【0098】
1…トルク管理機能付きネジ部材、10…ボルト部材、11…ネジ部、11a…ネジ部本体、11b…テーパ部、12…第一の頭部、12a凹部、20…トルク伝達部材、21…連結部、22…破断可能部、23…第二の頭部、30…管継手、40…押輪、50…係止体、60…弾性部材、70…ボルト用のトルク管理部材、71…ボルト部材、71a…ネジ部、71b…頭部、72…連結部、73…破断可能部、74…トルク伝達部、110…第一の管、120…第二の管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料で構成されたボルト部材と、
該ボルト部材に連結され、工具からトルクが伝達されるトルク伝達部材と、を備え、
前記ボルト部材は、
軸状のネジ部と、
該ネジ部に連続する第一の頭部とを含み、
前記トルク伝達部材は、
前記第一の頭部にトルク伝達可能に連結される連結部と、
該連結部に連続し、所定トルク以上で破断可能な破断可能部と、
該破断可能部に連続する第二の頭部とを含み、
前記トルク伝達部材の少なくとも前記連結部は、
前記ボルト部材よりもイオン化傾向の大きい低電位の金属を含む
トルク管理機能付きネジ部材。
【請求項2】
前記第一の頭部に前記連結部を嵌め合わせるための凹部が形成され、
前記連結部が前記凹部にトルク伝達可能に嵌め合わされた状態で、前記トルク伝達部材と前記ボルト部材とが連結されている
請求項1に記載のトルク管理機能付きネジ部材。
【請求項3】
前記第一の頭部及び前記第二の頭部のそれぞれは、前記工具からトルク伝達可能な多角柱状に形成され、
前記第一の頭部の外周上の平面と前記第二の頭部の外周上の平面とが軸方向から見て交差するように、前記トルク伝達部材の連結部がボルト部材の凹部に対して嵌め合わされている
請求項1及び2の何れか一項に記載のトルク管理機能付きネジ部材。
【請求項4】
前記トルク伝達部材のうちの少なくとも前記連結部が亜鉛又は亜鉛合金で形成されている
請求項1乃至3の何れか一項に記載のトルク管理機能付きネジ部材。
【請求項5】
軸状のネジ部と、該ネジ部に連続する頭部とを有する金属製のボルト部材に取り付けられるボルト用のトルク管理部材であって、
前記頭部にトルク伝達可能な状態で連結可能な連結部と、
該連結部に連続し、所定トルク以上のトルクが生じた時に破断可能な破断可能部と、
該破断可能部に連続するトルク伝達部と、を備え、
少なくとも前記連結部は、
前記ボルト部材よりもイオン化傾向の大きい低電位の金属を含む
ボルト用のトルク管理部材。
【請求項6】
少なくとも前記連結部が亜鉛又は亜鉛合金で形成されている
請求項5に記載のボルト用のトルク管理部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−76434(P2013−76434A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215425(P2011−215425)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(399130348)株式会社水研 (19)