説明

トレーラーハウス

【課題】トレーラーハウスにおける浴室ユニットの底面を、シャーシの上面高さ位置よりも下方位置となるように配設し、浴室ユニット内における床面高さ位置と、他の居住空間内における床面の高さ位置との段差をなくす。
【解決手段】シャーシ100の上面に居住空間(家屋部)70が構築されたトレーラーハウス200において、シャーシ100には下方にへこむ凹状部40が形成されていて、浴室ユニット80の底部が凹状部40に嵌め込まれるようにして配設されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトレーラーハウスに関し、より詳細には、お年寄りや体の不自由な人であっても快適に入浴することが可能であって、かつ、トレーラーハウスの家屋部内に有効スペースを創出することが可能な浴室ユニットを有するトレーラーハウスに関する。
【背景技術】
【0002】
牽引車により牽引されて、任意の場所に運搬して用いられる家屋代用車両としては、いわゆるトレーラーハウスと呼ばれるものがある。このようなトレーラーハウスは、牽引車により牽引可能な車両のシャーシ上に居住空間(家屋部分)が形成されていて、電気や上下水道を接続すれば、長期・短期に関わらず居住することが可能なものである。トレーラーハウスは、従来からの用途である趣味としての用途の他、近年においては災害時における仮設住宅や福祉車両(巡回入浴サービス提供用車両)としても用いられるようになっている。
【0003】
このようなトレーラーハウスは、米国発祥であるため、日本人の生活習慣にはそぐわない一面を有しており、日本国内での普及が進まない原因のひとつになっている。特に、日本人にとっては、浴室設備の相違点がきわめて重要であり、トレーラーハウスにおける浴室設備の改善が望まれていた。
近年においては、深底のバスタブと、洗い場が一体となった和風タイプの浴室設備を備えるトレーラーハウスが提供されている(特許文献1)。
【特許文献1】特許第3778885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1においては、通常のトレーラーハウスのシャーシの上に浴室ユニットを配設しているため、いわゆる脱衣所から浴室に入る際には、図4に示すように、上がり框等による段差を越えなければならず、お年寄りや体の不自由な人にとっては快適な入浴が困難になってしまうという課題が明らかになった。このような課題は、趣味としてトレーラーハウスを用いる場合はもちろんのこと、災害時における仮設住宅としてや、福祉車両としての使用時においてきわめて重要な課題になる。また、一般的にトレーラーハウスは極めて限られた空間であるため、有効スペースの創出が困難であるという課題も有している。
【0005】
そこで本願発明は、浴室ユニットの底面を、シャーシの上面高さ位置よりも下方位置となるように配設し、浴室ユニット内における床面高さ位置と、他の居住空間内における床面の高さ位置との段差をなくし、快適な入浴が可能であると共に、有効スペースを創出することが可能なトレーラーハウスの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の目的を達成するため本願発明は以下の構成を有する。
すなわち、シャーシの上面に居住空間が構築されたトレーラーハウスにおいて、前記シャーシには下方にへこむ凹状部が形成されていて、浴室ユニットの底部が前記凹状部に嵌め込まれるようにして配設されていることを特徴とするトレーラーハウスである。
【0007】
また、前記凹状部は、前記浴室ユニット内の床面高さ位置から前記浴室ユニットの底部位置までの深さ寸法以上となる深さ寸法に形成されていることが好ましい。これにより、浴室ユニットの底面と凹状部との間にスペーサ等を配設することができるため、浴室ユニット内の床面高さと他の居住空間における床面の高さ位置とを精密に位置合わせすることができる。
【0008】
また、前記凹状部の形成部分において前記シャーシを構成する骨組材の端面部分には保持材が取り付けられていることを特徴とする。これにより、シャーシに凹状部を形成しても、シャーシの強度低下を防ぐことができる。
【0009】
また、前記凹状部と前記浴室ユニットとの間には、緩衝材が配設されていることを特徴とし、この緩衝材としては床材を用いることがさらに好適である。これにより、トレーラーハウスの移動中において、浴室ユニットへ伝わる振動を軽減させることができるため、水回り設備等の劣化や浴室ユニットの組み立て状態の緩みを防止することができる。
【0010】
また、前記凹状部には断熱材が配設されていることを特徴とする。これにより、シャーシの下方空間を通過する風等によりシャーシが冷却されても、浴室内への熱伝導を抑えることができるため、湯船のお湯や浴室の床面を冷えにくくすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかるトレーラーハウスによれば、浴室の床面と他の居住空間における床面の高さを揃えることができるため、いわゆるバリアフリー浴室を提供することが可能になり、お年寄りや体の不自由な人であっても、快適に入浴することができる。また、浴室ユニットの高さ寸法は従来より用いられているものと同じ高さ寸法であるから、トレーラーハウス内において浴室ユニットの上方空間の高さ寸法を増やすことができ、トレーラーハウス内に新たな居住スペースや収納スペースを創出することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明にかかるトレーラーハウスの実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態におけるトレーラーハウスのシャーシの正面図である。図2は、図1の平面図である。図3は、図1に示すシャーシの上面に家屋部を構築した状態における一部透視正面図である。
トレーラーハウス200のシャーシ100は、鉄骨等の骨組材10を溶接やボルト等により縦方向(車両進行方向)および横方向(幅方向)にそれぞれ連結することにより組み立てられている。シャーシ100には車輪20および連結部30が装着されている。車輪20は、シャーシ100およびシャーシ100上に構築される居住空間の重量に応じて適宜数が装着される。連結部30は、シャーシ100の車両進行方向において少なくとも一端縁に取り付けられていて、図示しない牽引車に連結可能に構成されている。
【0013】
本実施形態におけるシャーシ100は、車両進行方向(図2中の左右方向)が約9m、車両進行方向と直交方向が約2.8mに形成されている。また地表面からシャーシ100上に構築される居住空間としての家屋部70における屋根76の頂部までの高さ寸法は約4mに形成されている。このような寸法に形成されていることにより、従来のトレーラーハウスに比べ移動時における制約を大幅に軽減することができ、好都合である。
【0014】
図1および図2に示すように、シャーシ100の車両進行方向におけるほぼ中央部分には凹状部40が形成されている。この凹状部40を形成するには、まず、シャーシ100の幅方向の骨組材10の一部を切断して矩形状の空間を形成する。そして、この矩形状の空間に、矩形状の筒体(枠体でもよい)に形成された保持材14を嵌め込み、保持材14を骨組材10に溶接して固定する。保持材14は幅方向の骨組材10の切断面(端面)を覆うようにして骨組材10に固定されている。次に、保持材14の開放底面部に、先に切断した骨組材12や別途の底部補強材16を縦横に固定して格子状の底部を構成する。この底部上に緩衝材としての合板60(通称コンパネ)を敷設して凹状部40を形成することができる。
【0015】
合板60は、保持材14の内壁面にも装着してもよい。また、凹状部40(保持材14)の内壁面には断熱パネル材50を貼設する。断熱パネル材50は住宅用ウレタンパネル等が好適に用いられる。断熱パネル50は凹状部40(保持材14)の外壁面に貼設してもよい。凹状部40の深さ寸法は、通常の浴室ユニットにおける上がり框(図4参照)の高さ寸法以上の深さ寸法となるように形成されている。浴室ユニットに上がり框がない場合には、浴室ユニット内の床面高さ位置から浴室ユニットの底部位置までの深さ寸法以上となる深さ寸法に形成すればよい。
なお、凹状部40としては、上記骨組材10の一部を切断して形成した空間部に、上縁に外方に突出するフランジ部を備えた浅皿状の凹状部材(図示せず)を空間部上側から嵌め込んで、簡易に構成するようにしてもよい。
このようにシャーシ100の一部を切断して生じた空間部に強度のある凹状部40を取り付けることで、シャーシ100としての十分な強度が維持されている。
【0016】
以上のようにして構成されたシャーシ100の上面には、図3に示すようにシャーシ100の外周縁に沿って外壁72が構築される。また外壁72の内部空間には仕切り壁74が構築され、リビング、キッチン、寝室、トイレ、浴室等部屋毎に分割される。各部屋のレイアウトは、浴室のみが凹状部40位置に配置される以外は自由な部屋のレイアウトが可能である。部屋割りを行った後に屋根76が構築される。このようにしてシャーシ100の上面に居住空間である家屋部70が構築され、トレーラーハウス200になる。家屋部70の構築方法としてはいわゆるツーバイフォー工法が好適に用いられるが、この工法に限定されるものではなく、軸組工法等の他の工法を採用することもできる。
また、トレーラーハウス200には、地表面からシャーシ100の高さ位置まで登り上がるための別体または移動時に格納可能なスロープ(図示せず)が取り付けられる。
【0017】
家屋部70の浴室は、いわゆる住宅用の浴室ユニット80を凹状部40にセットすることにより構成されている。浴室ユニット80には深底の湯船と、洗い場、温水供給設備、配水管等を備えており、上下水道や給電設備に接続すれば直ちに浴室として使用可能である。凹状部40の内底面は、合板60からなる床面により水平面に形成されているから、浴室ユニット80の設置は容易である。浴室ユニット80の設置方法は通常の家屋における設置方法と同様にして行うことができる。本実施形態における床面は緩衝材として作用する合板60および断熱パネル50により形成されているので、トレーラーハウス200の移動中に生じる振動が吸収され、浴室ユニット80内における各種シール部の劣化や、浴室ユニット80の組み立て部分の緩み等が好適に防止される。また先述のとおり、浴室ユニット80は凹状部40に配設されるから、浴室ユニット80内の床面(洗い場の床面)の高さ位置が下方側にシフトし、家屋部70の他の部屋における床面の高さ位置と面一にする(平坦にする)ことができ、いわゆるバリアフリーな浴室を提供することができる点で好都合である。
【0018】
また、浴室ユニット80の底面高さ位置がシャーシ100の高さ位置よりも下方位置にシフトしているため、浴室ユニット80の上方空間における高さ寸法が増え、浴室の上方空間に新たな居住スペースまたは収納スペースとなる、いわゆるロフト空間LFTを設けることができる点においても好都合である。ロフト空間LFTへは浴室ユニット80の近傍に設けた階段DSTによりアクセスすることができる。本実施形態のような小型のトレーラーハウス200において、このようなロフト空間LFTを確保することができる点はきわめて重要な利点である。
【0019】
以上に説明したように本願発明にかかるトレーラーハウスによれば、バリアフリー化が実現されているので、老後の趣味としての用途、災害時における仮設住宅としての用途、巡回入浴サービス等の福祉車両としての用途のいずれの用途においても大幅に魅力を高めることができ、トレーラーハウスの需要喚起を促進することが可能である。
【0020】
以上に本願発明を実施形態に基づいて詳細に説明したが、本願発明の技術的範囲は以上に示した実施形態に限定されるものではない。例えば、以上に説明した実施形態においては、トレーラーハウス200(シャーシ100)の各種寸法について具体的数値が記載されているが、これらは飽くまで一例であり、実施形態において示した数値に限定されるものではないのはもちろんである。
また、浴室ユニット80の配設位置となる凹状部40はシャーシ100のいずれの位置に配設してもかまわない。
さらには、地表面からシャーシ100の高さ位置まで登り上がるための手段として別体のスロープを取り付けた形態について説明しているが、電動リフト等を装着してもよい。
【0021】
また、凹状部40の底面にはシャーシ100から切断した骨組材12を用いているが、シャーシ100の骨組材10以上の強度を有する新たな骨組材(図示せず)を用いることもできる。
また、保持材14は筒体(枠体)を例示しているが、上述のようなシャーシ100の骨組材10以上の強度を有する新たな骨組材を用いてもよい。要は、凹状部40の開口部で切断した骨組材12等を保持することができればよい。
また、以上の実施形態においては凹状部40の内側面に断熱パネル50を敷設した形態について説明しているが、浴室ユニット80が十分な断熱性能を具備している場合は、凹状部40への断熱パネル50の配設を省略してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態におけるトレーラーハウスのシャーシの正面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1に示すシャーシの上面に家屋部を構築した状態における一部透視正面図である。
【図4】従来技術における浴室への入り口部分を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
10 骨組材
12 切断された骨組材
14 保持材
16 底部補強材
20 車輪
30 連結部
40 凹状部
50 断熱パネル
60 合板
70 家屋部
72 外壁
74 仕切り壁
76 屋根
80 浴室ユニット
100 シャーシ
200 トレーラーハウス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャーシの上面に居住空間が構築されたトレーラーハウスにおいて、
前記シャーシには下方にへこむ凹状部が形成されていて、浴室ユニットの底部が前記凹状部に嵌め込まれるようにして配設されていることを特徴とするトレーラーハウス。
【請求項2】
前記凹状部は、前記浴室ユニット内の床面高さ位置から前記浴室ユニットの底部位置までの深さ寸法以上となる深さ寸法に形成されていることを特徴とする請求項1記載のトレーラーハウス。
【請求項3】
前記凹状部の形成部分において前記シャーシを構成する骨組材の端面部分に保持材が取り付けられていることを特徴とする請求項1または2記載のトレーラーハウス。
【請求項4】
前記凹状部と前記浴室ユニットとの間に緩衝材が配設されていることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のトレーラーハウス。
【請求項5】
前記緩衝材は、床材であることを特徴とする請求項4記載のトレーラーハウス。
【請求項6】
前記凹状部には断熱材が配設されていることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載のトレーラーハウス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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