説明

トロイダルコアとこれを用いた高周波トロイダルコイル及び高周波トロイダルトランス

【課題】優れた高周波大電流・大電力性能を有するトロイダルコアと高周波トロイダルコイル及び高周波トロイダルトランスを提供し、それらの製作を改善し、安価に提供できるようにする。
【解決手段】多数の微小磁気ギャップをリングコア全般に小スパンで一様に分散させて配したソフトフェライト製トロイダルコアに係るものであり、その具現手段として、ソフトフェライト製の多数のI形ソフトフェライトコア1を互いに隣接させて単層乃至複層のリング状に配列することにより一のリングコア2に形成して成るものであり、それらのI形ソフトフェライトコア1相互間に微小磁気ギャップ5を保有させたものである。そして、そのソフトフェライト製トロイダルコアを鉄芯として用いることで特定の高周波トロイダルコイル及び高周波トロイダルトランスを構成したものであり、もって、上記課題を解決したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トロイダルコアとこれを鉄芯として用いた高周波用のチョーク、フィルタ、リアクトル、インダクタンス素子等の高周波トロイダルコイル及び大電流高周波誘導加熱用トランス等の高周波トロイダルトランスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のリング状のトロイダルコアは、フェライト(ソフトフェライトセラミック)や珪素鋼板等の磁性鋼板(合金系軟磁性材料)で形成されている(非特許文献1、特許文献1参照)。
【0003】
1930年代の初期のフェライトセラミックから現在に至るまでの実用ソフトフェライトセラミックの大部分は、化学式 MFe2 O4(Mは主として2価の金属イオン)で表わされるスピネル型フェライトセラミックであり、これによって作られたフェライトコアは、電気抵抗が大きいので、渦電流損が小さく、高周波帯域で優れた性能を発揮するとともに、型に入れて成形することができるので、さまざまな形状にすることができるが、合金系軟磁性材料に比べて飽和磁束密度が小さいため(非特許文献1の第216頁乃至第218頁参照)、近年、この点が改良されて、高周波帯域で透磁率が高いこと、飽和磁束密度が大きいこと、固有電気抵抗が大きく渦電流損が少ないことなどの特長を備えているMOFe2 O3(M:2価の金属)で表されるソフトフェライトが開発され、高周波磁性材料として多量に使用されるようになってきている。
【0004】
しかしながら、このMOFe2 O3ソフトフェライトでトロイダルコアを形成した場合、飽和磁束密度が増大して磁束の飽和点が高くなったにせよ、磁化曲線が急峻となり、磁気飽和性が顕著となるから、このトロイダルコアを鉄芯とした高周波大電流・大電力用のトロイダルコイルやトロイダルトランスでは、コアの磁束がコイルに流れる電流によってたちどころに飽和点を超えてしまうため、磁気飽和を利用する特殊な場合を除き適正に使用することができない。一方、磁路に磁気ギャップを設けて磁気抵抗を増大させれば、コアの磁束が減少して磁化曲線の傾きが緩和されるので、高周波大電流・大電力用も可能にはなるが、その磁気ギャップの距離が長くなると、この間における漏洩磁束が増大して効率が悪くなり、かつ、コイルのインダクタンスが小さくなってコイルに過大な電流が流れ、コイルが極端に温度上昇して焼損の危険すら生じることとなる。また、トロイダルコアの製造に当たっては、例えば、原料を混合し、仮焼した後、これを粉砕し、造粒し、成形し、焼成する等の複雑で高度な製造工程を要し(非特許文献1の第218頁参照)、かつ、出来上がったコアには形態の自在性が無くて、形状が変わる都度改めて当初から作り変えるか、然も無ければ、出来上がっているコアに切断・切削・研磨等の精密機械加工、特に高品質を確保するためには高度な加工を施さねばならず、いずれにせよかなりの時間と経費がかかり、相応の設備を要すること等々からしてもコスト高を免れない。
【0005】
次に、合金系軟磁性材料すなわち珪素鋼板等の磁性鋼板によるコアは、通常、径の異なる適数の磁性鋼板の短筒をラジアル方向に積層するか、磁性鋼板を適数巻き重ねることによりラジアル方向に積層してリングに形成し、また、当初から若しくはリング形成後に複数に分割するか、又は、スリットを入れることで、磁路に磁気ギャップを形成している(特許文献1参照)。したがって、このコアの場合もその磁気ギャップにより磁化曲線の傾きが緩和されて、高周波大電流・大電力用が可能になり、電気的には渦電流の阻止が可能になる。
【0006】
しかしながら、数少ない磁気ギャップが偏在している状態では、該磁気ギャップによるコア全体としての渦電流の阻止は必ずしも十分ではなく、未だコア内にはこの渦電流によるかなりの発熱(抵抗熱)を生じ、渦電流損、殊に高周波帯域での渦電流損を十分に小さくすることができない。更に、磁束が偏って局所的に過大化し、これが発熱の原因になることもある。加えて、その磁気ギャップで大きな漏洩磁束を生じて効率が悪くなり、総じて磁気特性特に高周波帯域の磁気特性が悪くなる。そして、この場合も勿論前述のような機械加工等を要してコスト高になる。
【0007】
ところで、リング状トロイダルコアに備えられるコイルは、一般的にはコアが出来上がったところで該コアに巻回されるが、この巻回が容易でないこともあって、例えば、その1、予めそのリング状トロイダルコアを要所でラジアル方向に切って複数に分割しておき、これらの分割コアを空芯態勢で巻回した筒状コイルの空芯部に該筒状コイルをリング状に撓ませながらそれぞれを挿入して分割面相互を接合するもの(特許文献2参照)、その2、外周にコイルを巻回した筒状のボビンを両端部で突き合わせてリング状に屈曲させることにより空芯状態のトロイダルコイルを形成し、該コイルの両端部でそのボビンを一旦開口させて該開口部からそのボビン内に磁性鋼板のリボンを繰り込み、ボビン内で渦巻き状に巻きつけるもの(特許文献3参照)が開発されている。
【0008】
しかし、その1の手段では、上記分割コアを得るために一旦出来上がったリング状トロイダルコアを要所でラジアル方向に切る切断・切削・研磨等の精密機械加工を施すか、或いは、当初からの特殊な形状のコアを作製しなければならないので、前述した従来のフェライトコアや合金系軟磁性材料によるコアの問題点はそのまま踏襲せざるを得ない。その上に、複数の分割コアを挿入したコイルの中でそれらの分割コアの分割面相互を接合することは容易なことではなく、したがって、製品に一定の電気的・磁気的特性を維持確保することは極めて難しく、高品質の製品を安定的に供給することも困難である。しかも、具体的には、磁性体にFe、Zr、Nb、Bなどを材料とする非晶質ナノ結晶合金の厚み20μm以下の薄帯を巻回又は所定形状に打ち抜き後積層して形成されたリングコアを用いることで、飽和磁束密度が高く磁気飽和し難いトロイダルコイルが形成できるというものであり、その非晶質ナノ結晶合金の薄帯は、余り薄くなると製造し難いが少なくとも20μm以下でないと渦電流損が無視できなくなり、高周波特性が低下する(特許文献2の段落番号0017参照)。そして、対象とするリングコアが厚い場合は薄帯を巻回して形成し、薄い場合は薄板を打ち抜いて積層して形成するほうが好ましいというものであるから(同段落番号0017参照)、上述の域をでるものではない。
【0009】
次に、その2の手段では、磁性鋼板のリボンを、一旦開口させたリング状ボビンの開口部から当該ボビン内へと繰り込み、ボビンの中で渦巻き状に巻き込んでリングコアに形成するものであるから、この手段をソフトフェライトセラミックから成る硬いコアにそのまま採用することはできない。また、磁性鋼板のリボンには曲げの弾性が存在するため、ボビン内への繰り込みやボビン内での渦巻き状巻き込みが容易かつスムーズには行えず、巻き込みの適正性・的確性を欠如することになる虞がある。更に、この場合のリングコアには、渦電流の発生、特に高周波帯域における渦電流損及び発熱の問題も生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−303001号公報
【特許文献2】特開2001−68364号公報
【特許文献3】特表2007−527607号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】特許庁編 技術分野別特許マップ「フェライトセラミック」社団法人発明協会製作 第4章4.2「ソフトフェライトセラミック」の項
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上述の従来の問題点を全て解決することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明のトロイダルコアは、多数の微小磁気ギャップをリングコア全般に小スパンで一様に分散させて配したことを特徴とするものであり、その具現手段として、多数の小さなI形コアを互いに隣接させて単層乃至複層のリング状に配列することにより一のリングコアに形成したものである。
【0014】
而して、本発明に係る高周波トロイダルコイルは、上記トロイダルコアを鉄芯として用いて成るものである。
【0015】
また、本発明に係る高周波トロイダルトランスは、上記トロイダルコアを鉄芯として用いて成るものである。
【0016】
このように、本発明のトロイダルコアは、多数の微小磁気ギャップをコア全般に小スパンで一様に分散させて配しているから、それらの微小磁気ギャップの総和により磁路の磁気抵抗を必要に足る大きさにできて磁化曲線の傾きを緩和させることができ、高周波大電流・大電力用にも適合させることができる。そして、それらの微小磁気ギャップは、いずれもが微小距離で、それらの微小ギャップからの磁束の漏洩は極めて少なく、全ギャップを総和してもさほど大きな漏洩磁束にはならないから、良好な効率を確保できるとともに、コイルに必要なインダクタンスを維持できて、コイルに流れる過大電流を適正に阻止でき、コイルの温度上昇を低く抑えることができる。加えて、コア全般に小スパンで一様に分散させて配した多数の微小磁気ギャップによりコアの電気抵抗を全般的にほぼ均一に増大させることができてコアの渦電流損及び渦電流による発熱を改善できると同時に、コアにおける磁束の偏りを防止できて磁束が局所的に過大化することによるコアの発熱も防止できる。なお、本発明のトロイダルコアは、円形に限るものではなく、渦巻きをも含めた略円形、楕円形、長円形、方形、多角形等々にも形成できる。
【0017】
また、多数の微小磁気ギャップをリングコア全般に小スパンで一様に分散させるにも、多数の小さなI形コアを互いに隣接させて単層乃至複層のリング状に配列して一のリングコアを形成することにより自ずと具現化でき、しかも、多数の小さなI形コアは、多量生産されて安価に市販されている小さなI形ソフトフェライトコア等で足り、したがって、トロイダルコアを簡潔適確に実現できるとともに、任意な大きさのものに自由自在に形成できて、設計変更等に対しても形態の自在性・適応性を確保でき、形状が変わってもその都度改めて当初から作り変えなければならない不都合もなければ、精密機械による切断・切削・研磨等の加工を施す必要もなく、高品質のトロイダルコアを簡単・容易・迅速・安価に製作でき、勿論、高価な特殊設備も必要なく、コストダウンを図ることができる。もって、当該トロイダルコアを用いた高周波トロイダルコイルも高周波トロイダルトランスも相応に優れたものにすることができる。
【0018】
更に、当初、多数のI形コアを耐熱性・電気絶縁性・可曲性の粘着テープの上に並べて貼着してI形コア列に形成しておけば、該I形コア列を予め形成したリング状空芯コイルの空芯部に容易に挿入でき、コイル内で適正・的確にリングコアに形成できる。
【発明の効果】
【0019】
したがって、本発明のトロイダルコアによれば、従来のトロイダルコア、トロイダルコイル、トロイダルトランスに比し格段に優れた高周波性能を有する大電流・大電力用のトロイダルコア、高周波トロイダルコイル及び高周波トロイダルトランスを提供でき、それらの製作を改善でき、安価に提供できて、所期の目的を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のトロイダルコアに係る実施例1を示す平面図
【図2】同実施例1の側面図
【図3】本発明のトロイダルコアに係る実施例2を示す平面図
【図4】同実施例2の側面図
【図5】上記実施例1における工程説明図
【図6】本発明の高周波トロイダルトランスに係る実施例4を示す截断平面図
【図7】同実施例4の截断正面図
【図8】同実施例4の引出線を示す斜視図
【図9】同実施例4におけるリングコアの後組み例を示す説明図
【図10】本発明の高周波トロイダルトランスに係る実施例5を示す平面図
【図11】同実施例5の正面図
【図12】同実施例5の截断正面図
【図13】同実施例5の使用例を示す正面図
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0021】
図1、図2は、本発明のトロイダルコアに係る第1の実施例を示しており、図において、1は、MOFe(M:二価の金属)で表される、高周波帯域で透磁率が高い、飽和磁束密度が大きい、固有電気抵抗が大きく渦電流損が少ないソフトフェライトを材料とした小さなI形コア(以下、I形ソフトフェライトコアという。)であり、該I形ソフトフェライトコアは、多量生産されて安価に市販されている長さ12.4〜70.0mm、幅4.85〜31.6mm、厚さ1.5〜4.6mm程度のものの中から選出した適宜サイズのものであり、同一サイズのものを多数使用する。
【0022】
多数の小さなI形ソフトフェライトコア1は、例えば、図5に示す工程に従い一つのリングコア2に形成する。すなわち、先ず、薄い耐熱性・電気絶縁性・可曲性の粘着テープ3の上に、上記の多数のI形ソフトフェライトコア1を共通の長尺面で互いに隣接させて次々に貼着することにより、一列に配列したI形ソフトフェライトコア列4を形成する(工程A)。この工程A中の(1)はI形ソフトフェライトコア列4に係る平面を、(2)は同I形ソフトフェライトコア列4に係る側面を示している。次いで、このI形ソフトフェライトコア列4を、粘着テープ3を内側にして単層乃至複層の渦巻き状に巻き、特に複層の場合には、層間において微小磁気ギャップ5同士ができるだけ重ならないように当初から配慮して巻き(工程B〜D)、一つのリングコア2に形成する(工程E)。この工程E中の(1)はリングコア2の平面を、(2)は同リングコア2の側面を示している。なお、I形ソフトフェライトコア列4を渦巻き状に巻く際には適宜な治具を用いてもよい。リングコア2には周囲に結束バンドをかけて締結してもよいし、シリコン樹脂、エポキシ樹脂等によるモールドを施してもよい。出来上がったリングコア2は、複数を筒方向に連繋させてもよい。
【0023】
このようにして形成されたリングコア2には、各I形ソフトフェライトコア間にそれぞれ微小磁気ギャップ5が形成されて、これらの微小磁気ギャップ5がリングコア2全般に小スパンで一様に分散して配されることになる。これらの微小磁気ギャップ5における漏洩磁束は極小で、リングコア2全体で総合してもあまり大きくはならず、リングコア2に流れる磁束が偏磁状態になることも少ない。また、リングコア2の周りにはコイルが巻回されるので、該コイルによりリングコア2から外部へ向かう小漏洩磁束は殆どが阻止されることとなる。
【0024】
図5以外の手段としては、例えば、一旦I形ソフトフェライトコア列を作ることをせずに、直接治具上にて上記の多数のI形ソフトフェライトコア1を共通長尺面で互いに隣接させて配列し、これらを電気絶縁性のシリコン樹脂、エポキシ樹脂等の接着材で接合することにより、単層乃至複層の渦巻き状をなすリングコア2に形成することが挙げられる。
【実施例2】
【0025】
図3、図4は、本発明のトロイダルコアに係る第2の実施例を示している。この場合は、上記実施例1における多数のI形ソフトフェライトコア1の配列を単層乃至複層にて円形にして成る。この円形にすること以外については上記実施例1と同じにするものであり、作用・効果についても同じである。
【実施例3】
【0026】
この実施例3は、図示してないが、出来上がった前述のリングコア2から成るソフトフェライト製トロイダルコアを鉄芯として用いた高周波トロイダルコイルに係るものであり、該ソフトフェライト製トロイダルコアに所要の巻線を施すことにより高周波トロイダルコイルを構成する。この場合、そのソフトフェライト製トロイダルコアの利点が活かされて、高周波特性が格段に優れたものとなり、容易にかつ安価に得られる。なお、この実施例3には、下記実施例4の如き構成も可能である。
【実施例4】
【0027】
この実施例4は、出来上がった前述のソフトフェライト製トロイダルコアを鉄芯として用いた高周波トロイダルトランスに係るものであり、図6乃至図8に示すように、該ソフトフェライト製トロイダルコアに一次コイル6及び二次コイル7を巻回することにより高周波トロイダルトランスを構成している。
【0028】
この場合の一次コイル6及び二次コイル7は、絶縁被覆平角銅線によるエッジワイズコイルとするとともに、両者をバイファイラ巻きしてリング状に形成し、両コイル6,7の端部はそれぞれ外方へ突出させて、一次コイル引出線8a,8b、二次コイル引出線9a,9bとしている。
【0029】
このように形成された一次・二次のバイファイラ巻きエッジワイズコイル6,7は、外側の間隔が開いて空間が広くなるので、この外周部に冷却空気が自然対流する好適な空冷流路10が形成されるとともに、エッジワイズコイル6,7自体が冷却フインとしての役割を果たして、通電で温度上昇する当該コイル6,7が良好に空冷されることとなる。この空冷がまたそのリングコア2すなわち上述のソフトフェライトによるトロイダルコアの優れた機能と相俟って当該高周波トロイダルトランスに性能の向上をもたらし、製作の簡素化・容易化・低廉化を増進させることになる。これらのことは油冷にする場合でも同様である。
【0030】
ところで、この実施例4において、図6乃至図8に具体的に示しているリングコア2は、実施例1における図1、図2、図5中でI形ソフトフェライトコア列4を渦巻き状に巻いた場合のものであるが、このリングコア2は、出来上がった一次コイル6及び二次コイル7に対して後組みしてもよい。すなわち、図9に示すように、治具などを使ってリング状の一次・二次コイル6,7を先行させて形成しておき、該コイルの一部を押し広げて開口させ、この開口部14に図5に示すI形ソフトフェライトコア列4をその一次・二次コイル6,7内に挿入し(行程A)、更に繰り込んで渦巻き状に巻き込むことにより(行程B)、コイル内でリングコア2に形成させる(行程C)。
【0031】
この際、I形ソフトフェライトコア列4は、粘着テープ3に貼り付けた多数のI形ソフトフェライト1がその粘着テープに対して骨材としても作用するので、その挿入・繰り込みの際にあまり捩れ等を伴わず、コイル内で殆ど支障なく円滑に渦巻き状巻き込みができ、コイル内ではあっても適正・的確にリングコア2に形成できる。また、その粘着テープ3の幅を各所でコイル内の状況に適合させておくことにより、該粘着テープ3には挿入・繰り込みの際のガイドとしての役割と、コイル内での適正位置確保のためのスペーサとしての役割を果たさせることができる。なお、その後は、結束バンドで締め付けるとよい。エポキシ樹脂等でモールドしてもよい。
【実施例5】
【0032】
この実施例5は、図10乃至図13に示すように、上記実施例4の高周波トロイダルトランスにおいて、上記実施例2で述べた図3、図4の円形のリングコア2を用い、かつ、二次コイル7を複数の分割二次コイル11に形成するとともに、二次コイル引出線9a,9bも双方共通する複数の分割二次コイル引出線12a,12bに分けて、各々上方と下方に突出させている。この場合、分割二次コイル11は単数乃至複数を任意に選択して使用すればよいが、分割二次コイル引出線12a,12bを通じて直列接続も並列接続も可能である。
【0033】
この実施例5によれば、図13の様な使用も可能である。つまり、図13の場合は、図10乃至図12において上方へ突出させた一方の分割二次コイル引出線12a相互と下方へ突出させた他方の分割二次コイル引出線12b相互を各々圧着端子13a,13bで電気的に接続している。これにより全ての分割二次コイル11が電気的に並列接続されることとなり、両圧着端子13a,13b間に低電圧大電流が可能となる。したがって、大電流高周波誘導加熱用トランス等に適している。
【0034】
以上の各実施例では、トロイダルコアにつき、多数の小さなI形ソフトフェライトコア1を用いてソフトフェライト製トロイダルコアとしているので、ソフトフェライト特有の作用効果を発揮させることができる。なお、それらのI形ソフトフェライトコアを磁性鋼板等の合金系軟磁性材料によるI形コアとすれば、相応の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0035】
1 I形ソフトフェライトコア
2 リングコア
3 粘着テープ
4 I形ソフトフェライトコア列
5 微小磁気ギャップ
6 一次コイル
7 二次コイル
8a,8b 一次コイル引出線
9a,9b 二次コイル引出線
10 空冷流路
11 分割二次コイル
12a,12b 分割二次コイル引出線
13a,13b 圧着端子
14 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の微小磁気ギャップをリングコア全般に小スパンで一様に分散させて配したことを特徴とするトロイダルコア。
【請求項2】
請求項1記載のトロイダルコアを鉄芯として用いた高周波トロイダルコイル。
【請求項3】
請求項1記載のトロイダルコアを鉄芯として用いた高周波トロイダルトランス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−222727(P2011−222727A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89908(P2010−89908)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(391032819)株式会社アイキューフォー (7)