説明

トロリーユニット

【構成】 ロードバーと、その両端を吊持するトロリーアーム3,3と、転動吊下部とを、備えている。ロードバー2は、パイプ部22と、連結具24, 24とから成る。連結具24は、トロリーアーム部の下端円柱部25を抱込む平面視半円形の枢支ボス部26と、パイプ部22の端部23を抱込む側面視半円形のパイプ保持部27とを、有する半体H,Hを有する。この半体H,Hを折曲自在なヒンジ部28にて連結する。
【効果】 衣類を汚さない。また、組立が簡単であり、部品点数も減少する。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、縫製工場等のアパレル業界における衣服搬送システムに用いられるトロリーユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のトロリーユニットはアルミニウム製であったために、衣服がアルミニウムに接触して黒い汚れが衣服に付着してしまうという問題があった。
【0003】
また、図8と図9に示すように、従来のトロリーユニットに於て、ロードバー2と、その両端を吊持するトロリーアーム3,3との連結構造は次のようになっていた。即ち、トロリーアーム3は、吊下孔12付の本体3aと、その吊下孔12に挿通された頭41付のピン42と、すべりワッシャ43と、抜け止めリング44と、この抜け止めリング44を止める止めピン45と、から成っていた。かつ、ロードバー2は、素材の円筒状パイプの両端をカシメてタテ偏平部46を形成すると共にその端部に円筒ボス部47を溶接したものである。そして、この円筒ボス部47に、ピン42を挿入して、ワッシャ43とリング44と止めピン45にて、抜け止めして、矢印Aのように回転可能に、ロードバー2と、トロリーアーム3の下部とを、連結していた。(なお、トロリーアーム3は転動吊下部5に揺動軸15にて枢支されると共に、吊下部5は、本体6と、転動ローラ4とローラ軸14とから成り、ローラ4はレール7上を走行する。)
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
従来のこのような構造では、■ 衣服が金属製のトロリーユニットの一部に接触して黒い汚れが付着することがある、■ 上述の連結部の部品点数が多く組立が面倒である、■ ロードバー2の端部の加工(カシメ及び溶接)が面倒である、■ 強度的に不安であって、特に止めピン45の破断の心配がある、等の多大の欠点があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本考案は、そこで、ロードバーと、その両端を吊持するトロリーアームと、該トロリーアームを枢支すると共に転動ローラを有する転動吊下部とを、備えたトロリーユニットに於て、上記ロードバーは、パイプ部と、該パイプ部の両端部に固着される一対の連結具とから成ると共に、該連結具は、上記トロリーアームの下端円柱部を抱込む平面視半円形の枢支ボス部と、上記パイプ部の端部を抱込む側面視半円形のパイプ保持部とを、有する2個の半体を、鉛直方向の折曲線廻りに折曲自在なヒンジ部にて連結し、かつ、2個の上記半体と該ヒンジ部とを、プラスチックにて一体に成型した。
【0006】
また、トロリーアームの下端円柱部は円環状突部を有し、かつ、連結具の2個の半体を閉じて、該下端円柱部を抱込むと該突部に係止して下方への抜けが防止される摺接当り部を、上記半体の枢支ボス部の内面に形成した。さらに、パイプ部の両端部に係止孔を設けると共に、側面視半円形のパイプ保持部の内面に突出子をプラスチックにて一体に成型し、該突出子が上記係止孔に挿入状に係止して、連結具を抱込状にパイプ部の端部に取付けた状態で抜止めとした。
【0007】
また、連結具の2個の半体を抱込状として閉じた状態に於て、該半体が相互に閉じた状態を保持する雄雌係止部を備えたものである。そして、トロリーアーム及び連結具が共にプラスチックであって、一群のトロリーユニット毎に、上記連結具の色彩を異ならしめている。
【0008】
【作用】
パイプ部は両端を単純な切断作業で製作できる。かつ、連結具はプラスチックの一体成型にて簡単に製造できると共に、トロリーアームの下端と、パイプ部の両端部とを強固かつ簡単に連結できる。
【0009】
即ち、連結部のヒンジ部を折曲線廻りに折曲げて、2個の半体を閉じると、パイプの端部及びトロリーアームの下端円柱部を、抱込んで連結できる。
【0010】
そして、(請求項2によれば、)トロリーアームの下端円柱部の円環状突部に、摺動回転可能として連結具の摺動当り部が、係止し、大きな下方向の外力(荷重)にも耐え得る。
【0011】
(請求項3によれば、)パイプ部の端部の係止孔に、突出子が挿入されて係止されるため、確実にパイプの端部と連結具との抜け止めが行われる。かつ、突出子もプラスチック一体成型であるので強度上不安が無く、製作も容易である。しかも、連結具の半体を閉じて、抱込状とすると自然に突出子がパイプの係止孔に係止できる。
【0012】
(請求項4によれば、)雄雌係止部の相互の係止によって、半体相互が確実かつ簡単に閉じた状態を保持して、トロリーアームとパイプの連結が(不意に)外れない。
【0013】
(請求項5によれば、)一目瞭然で仕分けの判断が可能となり、仕分けを容易・迅速に行いえる。
【0014】
【実施例】
以下、図示の実施例に基づき本考案を詳説する。
【0015】
図1は本考案に係るトロリーユニットの一実施例を示す。このトロリーユニットは、ハンガー9に掛かった複数の衣服8を吊下げ、レール7上を転動して、衣服8…をハンガー9…ごと搬送するものである。トロリーユニットは、衣服8…を吊下げるロードバー2と、その両端を吊持し、レール7上を転動するトロリーヘッド1と、から成る。該トロリーヘッド1は、ロードバー2の両端を吊持する正面視略矩形棒状のトロリーアーム3と、該トロリーアーム3を枢支すると共に転動ローラ4,4を有する逆浅皿形の転動吊下部5と、から構成される。
【0016】
図2に、本考案のトロリーユニットの使用される設備の例として縫製工場を示す。縦横無尽に張り巡らされたレール7…網上をトロリーユニットで衣服8…が搬送される。この搬送システムによって、衣服8…の入荷、検品、保管、加工、出荷等がスムーズにしかも迅速に行われるのである。
【0017】
図3〜図7に於て、各部の詳細を例示する。ロードバー2は、ステンレス鋼やメッキ鋼管やプラスチック等のパイプ部22と、このパイプ部22の寸切り───軸心と直角に切断───された両端部23, 23に固着される一対の連結具24, 24とから、成っている。
【0018】
この連結具24は、トロリーアーム3の下端に形成された下端円柱部25を、図5の矢印Bの如く抱込む、平面視半円形の枢支ボス部26と、パイプ部22の端部23を抱込む側面視半円形(図4参照)のパイプ保持部27とを、有する2個の半体H,Hを、鉛直方向の折曲線廻りに折曲自在なヒンジ部28にて連結した構成である。
【0019】
かつ、この連結具24は、半体H,Hとヒンジ部28とを、全てプラスチックにて一体に成型して成る。
【0020】
また、トロリーアーム3の下端円柱部25には、(その最下端に)円環状突部29が形成されていて、連結具24の2個の半体H,Hをヒンジ部28廻りに約 180度揺動して閉じると、下端円柱部25を抱込むと同時に、上記突部29に係止して下方への連結具24の抜けが防止される。即ち、連結具24の枢支ボス部26の内面には、複数本の略円環状の突条30…が突設され、その最下位置の突条30の下面が摺接当り部31として、上記突部29の上面に、摺動自在に当接し、連結具24が下方へ抜けるのを防止する。
【0021】
なお、図示省略したが、円環状突部29を上下複数段に形成すると共に、下端円柱部25にも上下複数段に形成して、複数箇所にて、摺接して回転可能に取付けるも自由である。あるいは、突部29を円柱部25の上方又は中間位置としても良い。
【0022】
次に、パイプ部22の両端部23, 23には、水平横側面に係止孔32, 32を貫設すると共に、側面視半円形のパイプ保持部27の内面には突出子33を突設しておいて、突出子33, 33が係止孔32, 32に挿入状に係止して、連結具24を抱込状にパイプ部22の端部23に取付けた状態で抜止めとする。
【0023】
しかも、この突出子33, 33もプラスチックにて一体に成型する。即ち、連結具24は、ポリプロピレンやポリエチレン等にて一体成型され、図5の矢印B方向に約 180度折曲げると、枢支ボス部26は円柱部25を、パイプ保持部27はパイプ部端部23を、夫々抱込むと共に、突出子33はパイプ部端部23の係止孔32に挿入状に係止する。このように簡単に組立が可能である。
【0024】
さらに、このように連結具24の2個の半体H,Hを抱込状として閉じた状態に於て、半体H,Hが相互に閉じた状態を保持(維持)する雄雌係止部34, 35を、連結具24が備えている。図例では、パイプ保持部27に於て一方の半体Hの外面に爪状の雄係止部34, 34を突設し、他方の半体には、小凹状の雌係止部35, 35を凹設して、相互に、図4と図6の如く、係止する。
【0025】
また、トロリーアーム3,3及び連結具24, 24を共にプラスチックとし、かつ、一群のトロリーユニット毎に、トロリーアーム3又は連結具24の色彩を異ならしめると、以下のような作用効果が得られる。つまり、アルミより更に軽量化が可能である。射出成形により生産性を向上させる事ができる。生産コスト削減が可能である。又、アルミ特有の黒い汚れが衣服8…に付着する心配がない。プラスチックは角張った部分に丸味を出しやすいので、衣服8…を傷付ける心配がない。
【0026】
ここで、仕分けには、一階、二階、三階と各階のフロアー毎の仕分けや搬送先別(出荷先別)仕分けや得意先別仕分けや各種製品別仕分け等の多種類の仕分けがあり、上記色彩によって大まかな仕分けが簡単にできる。
【0027】
【考案の効果】
本考案は上述のように構成され次のような著大な効果を奏する。
【0028】
■ パイプ部22は、軸心と直交する面での単純な切断や、係止孔32のドリル加工等にて、簡単に製作できる。即ち、金属塑性加工や溶接等を要しない。さらに、(プラスチックであるので)衣類を汚さない。
【0029】
■ 連結具24は単に半体H,Hを閉じることによって、強固に、ロードバー3及びパイプ部22に、連結できる。このように、トロリーユニットの組立を容易・迅速化でき、かつ、強度も十分に高め得る。
【0030】
■ (請求項2によれば、)トロリーアーム3に大きな荷重が掛かっても、十分に耐え得る。
【0031】
■ (請求項3によれば、)連結具24とパイプ部22とを、簡単にかつ確実・強固に連結できる。
【0032】
■ (請求項4によれば、)半体H,Hが確実に抱込保持状態を維持する。
【0033】
■ (請求項5によれば、)異なった色彩は、一目瞭然で、仕分けの判断が可能となり、大まかな仕分けが容易、かつ、迅速にできる。従って、上述したような多種類の仕分け作業の能率も向上し、作業自体が簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の一実施例を示す正面図である。
【図2】使用状態の説明図である。
【図3】一部破断で示す要部拡大正面図である。
【図4】断面側面図である。
【図5】断面平面図である。
【図6】底面図である。
【図7】一部破断で示す側面図である。
【図8】従来例を示す一部破断正面図である。
【図9】従来例の側面図である。
【符号の説明】
2 ロードバー
3 トロリーアーム
4 転動ローラ
5 転動吊下部
22 パイプ部
23 端部
24 連結具
25 下端円柱部
26 枢支ボス部
27 パイプ保持部
28 ヒンジ部
29 円環状突部
31 摺接当り部
32 係止孔
33 突出子
34 雄係止部
35 雌係止部
H 半体

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 ロードバー2と、その両端を吊持するトロリーアーム3,3と、該トロリーアーム3を枢支すると共に転動ローラ4,4を有する転動吊下部5とを、備えたトロリーユニットに於て、上記ロードバー2は、パイプ部22と、該パイプ部22の両端部23, 23に固着される一対の連結具24, 24とから成ると共に、該連結具24は、上記トロリーアーム3の下端円柱部25を抱込む平面視半円形の枢支ボス部26と、上記パイプ部22の端部23を抱込む側面視半円形のパイプ保持部27とを、有する2個の半体H,Hを、鉛直方向の折曲線廻りに折曲自在なヒンジ部28にて連結し、かつ、2個の上記半体H,Hと該ヒンジ部28とを、プラスチックにて一体に成型したことを特徴とするトロリーユニット。
【請求項2】 トロリーアーム3の下端円柱部25は円環状突部29を有し、かつ、連結具24の2個の半体H,Hを閉じて、該下端円柱部25を抱込むと該突部29に係止して下方への抜けが防止される摺接当り部31を、上記半体Hの枢支ボス部26の内面に形成した請求項1記載のトロリーユニット。
【請求項3】 パイプ部22の両端部23, 23に係止孔32, 32を設けると共に、側面視半円形のパイプ保持部27の内面に突出子33をプラスチックにて一体に成型し、該突出子33が上記係止孔32に挿入状に係止して、連結具24を抱込状にパイプ部22の端部23に取付けた状態で抜止めとした請求項1又は2記載のトロリーユニット。
【請求項4】 連結具24の2個の半体H,Hを抱込状として閉じた状態に於て、該半体H,Hが相互に閉じた状態を保持する雄雌係止部34, 35を備えた請求項1,2又は3記載のトロリーユニット。
【請求項5】 トロリーアーム3,3及び連結具24, 24が共にプラスチックであって、一群のトロリーユニット毎に、上記連結具の色彩を異ならしめた請求項1,2,3又は4記載のトロリーユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【登録番号】第3007487号
【登録日】平成6年(1994)11月24日
【発行日】平成7年(1995)2月14日
【考案の名称】トロリーユニット
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平6−10746
【出願日】平成6年(1994)8月4日
【出願人】(592258683)株式会社イチコー (2)