説明

トンネル用照明器具

【課題】少ない電力量と維持経費で長期間の使用ができるトンネル用照明器具を提供する。
【解決手段】前面に少なくとも2箇所の開口部を形成した箱型器具本体と、該器具本体内に着脱可能に取り付けられ、複数のLED素子を配置した基板と、該基板の周囲から前記開口部方向に拡径して設けられた反射板と、前記LED素子を発光させる電源装置とからなり、基板は、複数のLED素子を金属ベース基板の表面に実装したLED基板であり、前記開口部方向に対して所定の角度を持って取付けられ、また反射板は、前記LED基板の周囲から前記開口部方向に所定の角度を付けて拡径して立設するアルミ鏡面板からなリ、該反射板の少なくとも一面は段部を形成して拡径する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明器具であって、少ない消費電力で照明が可能であり、且つ長寿命なLED素子を使用し、トンネル内を効率よく照明することができるトンネル用照明器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル内の道路や舗道等の路面及び壁面を照明する灯具には、高輝度ランプや蛍光ランプが光源として用いられてきた。また、この光源の光を路面に均一に照射させるために反射鏡が使用されている。
【0003】
しかし、これらの光源はそのほとんどが、口金を持った直管状のランプであり、ランプを駆動させるためには100Wを越える消費電力を必要とし、しかもランプの寿命が短いため多大の経費が掛かると同時に、環境負荷が大きいという問題があった。
【0004】
そこで、自動車走行方向に対して片側の壁面にのみ照明器具を設置してトンネル内を照明する照明技術が提案されている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−84604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に提案されている技術は、トンネル内に設置する照明器具の数を削減可能とするものであり、使用する電力量を低減できるものであるが、使用される光源は従来の放電型ランプであり長期間の使用ができないため、取替え作業などに多大の経費を必要とした。しかも、このランプは口金を持った直管状の形状であるため反射板の取り付け位置や形状に制限があった。
【0007】
上記の問題点に鑑み本発明者らは、消費電力の少ないLED素子を複数実装した金属ベース基板を光源として採用し、この基板の周囲に反射板を最適な角度と取付け位置で配置して、少ない取り付け数量で充分な光量を確保できると共に、照明器具に掛かる維持経費を低減できるトンネル用照明器具を提供するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため本発明のトンネル用照明器具は、前面に少なくとも2箇所の開口部を形成した器具本体と、該器具本体内に着脱可能に取り付けられ、複数のLED素子を配置した基板と、該基板の周囲から前記開口部に拡径して設けられた反射板と、前記LED素子を発光させる電源装置とからなることを第一の特徴とする。
【0009】
また、前記基板は、複数のLED素子を金属ベース基板の表面に実装したLED基板であり、前記開口部方向に対して所定の角度を持って取付けられることを第二の特徴とする。
【0010】
そして、前記反射板は、前記LED基板の周囲から前記開口部方向に所定の角度を付けて拡径して立設するアルミ鏡面板からなリ、該反射板の少なくとも一面は段部を形成して拡径することを第三の特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るトンネル用照明器具によれば、複数のLED素子を配置した基板からの直接光と、基板の周囲から前記開口部に拡径して設けられた反射板からの反射光によって照射する構成であるため、トンネル内の照明に必要とされる平均路面輝度及び輝度均斉度を確保できるという効果を有する。
【0012】
そして、複数のLED素子を金属ベース基板の表面に実装したLED基板を使用したため、消費電力が少なく、しかも放熱性に優れる。
【0013】
さらに、LED基板を開口部方向に対して所定の角度を持って取付け、また反射板をLED基板の周囲から前記開口部方向に所定の角度を付けているため、設置するトンネルの大きさや取付けピッチに応じて最適な調節が可能であるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るトンネル用照明器具の一実施例を示す斜視図である。
【図2】図1の説明図である。
【図3】図2の内部構造説明図である。
【図4】反射板の展開説明図である。
【図5】本発明のトンネル用照明器具を使用して地面を照射した際の照度分布図である。
【図6】他の実施例によるトンネル用照明器具を使用して地面を照射した際の照度分布図である。
【図7】地面を千鳥状に配置した照明器具で照射した際の照度分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施例を示す図面を参照しながら説明するが、本発明が本実施例に限定されないことは言うまでもない。図1は本発明のトンネル用照明器具の一実施例を示す斜視図、図2は図1の説明図、図3は図2の内部構造説明図、図4は反射板の展開説明図、図5は本発明のトンネル用照明器具を使用して地面を照射した際の照度分布図、図6は他の実施例によるトンネル用照明器具を使用して地面を照射した際の照度分布図である。尚、図2(a)は図1の平面図、図2(b)は側面図であり、図3(a)は図2(a)の内部構造を示す平面図、図3(b)は図3(a)のA−A線断面説明図である。
【実施例】
【0016】
図1乃至図3に示すように、本発明のトンネル用照明器具1は、一端側に二箇所の開口部2を形成した、ステンレスなどの金属製箱体3と、この箱体3内に着脱可能に取付けられる矩形のLED基板4と、このLED基板4の周囲から開口部2方向に拡径して取り付けられた反射板5と、LED基板4と接続しLED素子6発光させる電源装置7と、照明器具カバー8とから構成され、箱体3に設けられた取付金具9を介してトンネル壁面に取付けられる。
【0017】
LED基板4は、アルミ又は鉄製の基板本体に絶縁体を介して回路が形成され、さらにLED素子6が表面に実装されている。本発明に使用されるLED基板4の消費電力は25W未満であり、2個のLED基板4が消費する電力合計は50W未満となり、従来のランプと比較し極めて省電力となる。また、LED基板4の基板本体は熱伝導性に優れた金属を採用しており、後述する反射板に取付けられ放熱効果を高める。
【0018】
反射板5はアルミ製で、その表面に高純度のチタン及びシリコンをコーティングし反射率が90%以上とされた鏡面板であり、LED基板4から照射される光を効率よく反射して開口部2から照射する。
【0019】
図4は、本発明のトンネル用照明器具の反射板5の展開図を示しており、図4(a)は図3の左側反射板51を示し、図4(b)は図3の右側反射板52を示している。以下右側反射板52を例に説明する。図に示すように、反射板5はLED基板4を取付孔10を介して取付けるベース部5aと、左側反射部5b、右側反射部5c、5d、5e、下側反射部5f、上側反射部5g、5hとから構成されており、ベース部5aを中心として折り曲げ線12を介して折り曲げられて形成される。この際折り曲げ角度は、ベース部5aと下側反射部5fは90度、ベース部5aと左側反射部5b、右側反射部5c、上側反射部5gは夫々120度であり、右側反射部5c、5d、5eは夫々170度、150.38度、上側反射部5g、5hは150度とされている。
【0020】
上記の構成の右側反射板51は、図4に示すようにベース部5aと開口部2が140度の角度を付けて箱体3内に取付られる。尚、左側反射板51は右側反射板52と対称に表れるので、説明は省略する。
【0021】
以上の構成からなるトンネル用照明器具を、トンネル内に設置して発光させると、トンネル横断方向及びトンネル走行方向に対して、平均路面輝度と輝度均斉度を確保することができる。
【0022】
(実験例1)
図5は、本発明のトンネル用照明器具を地上から5mの高さに設置した状態で点灯させて地面を照射した際の照度分布図を示しており、図6は他の実施例のトンネル用照明器具による照度分布図を示している。尚、図中の数字は照度を表し、単位はlx(ルクス)である。また、縦、横の長さは夫々20m、40mであり、図の四角の一辺は5mである。また、使用したLED照明器具の消費電力は50Wである。尚、図6で使用した照明器具は、本名発明の照明器具と同様に2箇所の開口部を形成し、LED基板をこの開口部に対して平行に配置する構造とした。
【0023】
測定の結果、本発明のトンネル用照明器具では、最大照度は51.29lx、最小照度は0.02lxであった。また、左右15mの位置で1.0lx以上であった。また、他の実施例の照明器具は最大照度は112.31lx、最小照度は0.0lxであった。そして平均照度はそれぞれ5.22lx、5.63lxであった。
【0024】
(実験例2)
図7は、上記実験例1で使用した照明器具をそれぞれ3台用意して、幅5.5m、長さ36mの地面に対して長さ方向のピッチを18m、幅方向端部で千鳥状となるように配置し、路面に対して高さ5mの位置で45度の角度で照射した照度分布を示している。図7(a)は本発明のトンネル用照明器具の照度分布であり、図7(b)は他の実施例の照明器具の照度分布を示している。尚、図において、長手方向の一辺は4.5mであり、単位はlx(ルクス)である。
【0025】
測定の結果、本発明のトンネル用照明器具では、最大照度は28.6lx、最小照度は6.6lxであった。また、他の実施例の照明器具は最大照度は52.9lx、最小照度は1.7lxであった。そして平均照度はそれぞれ14.6lx、20.3lxであり、平均照度に対する最小照度はそれぞれ0.453、0.082であった。
【0026】
上記の結果から明らかなように、本発明のトンネル用照明器具は、指向性が強いとされるLED素子を使用しながら、LED基板の取付角度と、反射板の最適な配置によって、照射中心での最大照度を抑えて、路面均斉度を向上させることができる。
【0027】
以上の構成からなる本発明のトンネル用照明器具は、消費電力の少ないLED照明器具を複数使用して最適な取付け位置で一体に構成し、少ない電力量で街灯に必要な照度を確保することが可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 トンネル用照明器具
2 開口部
3 箱体
4 LED基板
5 反射板
6 LED素子
7 電源装置
8 照明器具カバー
9 取付金具
10 取付孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル用照明器具であって、前面に少なくとも2箇所の開口部を形成した器具本体と、該器具本体内に着脱可能に取り付けられ、複数のLED素子を配置した基板と、該基板の周囲から前記開口部方向に拡径して設けられた反射板と、前記LED素子を発光させる電源装置とからなることを特徴とするトンネル用照明器具。
【請求項2】
前記基板は、複数のLED素子を金属ベース基板の表面に実装したLED基板であり、前記開口部方向に対して所定の角度を持って取付けられることを特徴とする請求項1記載のトンネル用照明器具。
【請求項3】
前記反射板は、前記LED基板の周囲から前記開口部方向に所定の角度を付けて拡径して立設するアルミ鏡面板からなリ、該反射板の少なくとも一面は段部を形成して拡径することを特徴とする請求項1に記載のトンネル用照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−138640(P2011−138640A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296575(P2009−296575)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(509311252)株式会社共立電商 (4)
【Fターム(参考)】