説明

トースト用油脂食品

【課題】オーブントースター等で焼くだけで、べっこう飴状のパリパリした食感と光沢のある外観を有したトースト用油脂食品を提供する。
【解決手段】パンに塗って焼くためのトースト用油脂食品であって、ラクトース、スクロース及びグルコースを含有し、前記ラクトース、スクロース及びグルコースの合計含有量100部に対してグルコースを2〜20部含有していることを特徴とするトースト用油脂食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンに塗って焼くためのトースト用油脂食品に関し、オーブントースター等で焼くだけで、べっこう飴状のパリパリした食感と光沢のある外観を有したトーストが得られるトースト用油脂食品に関する。
【背景技術】
【0002】
朝食にはトーストがよく食されていて、それには、パンの風味は食感が好まれているだけでなく、簡単で手間もかからないことも理由のひとつである。こうした中で、パンに塗ってオーブントースター等で焼くだけで、調理が手軽に美味しく風味付けされたトーストを楽しむことができるトースト用油脂食品が広く親しまれるようになってきた。嗜好が多様化する中、トースト用油脂食品としては、味だけではなく外観や食感の点から新規なおいしさが得られるものが要望されている。例えば、べっこう飴のような外観や食感のいずれも特徴的なものが考えられる。
【0003】
従来のトースト用油脂食品としては特許文献1(特開2004−215566号公報)がある。特許文献1には、パンに塗ってオーブントースター等で焼くことによりチーズ風の味付けと同時に新しい食感が得られたトースト用油脂食品の記載がある。これは、特定の油脂と乳糖及び/又はデキストリンを配合することにより、チーズやトマト等の風味を十分に付与できるとともに、バリッとした食感を有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−215566号公報
【0005】
しかしながら、前記トースト用油脂食品は、乳糖及び/又はデキストリンを配合することで、チーズやトマト等の風味とバリッとした食感を付与するが、べっこう飴状のパリパリとした食感というには不十分なもので、さらに光沢のある外観にはならなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、オーブントースター等で焼くだけで、べっこう飴状のパリパリした食感と光沢のある外観を有したトーストが得られるトースト用油脂食品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意研究を重ねたところ、トースト用油脂食品にラクトース、グルコース、スクロースを特定比率配合するならば、当該トースト用油脂食品をパンに塗ってオーブントースター等で焼くことにより、意外にもべっこう飴状のパリパリした食感と光沢のある外観を有したトーストが得られることを見出し、ついに本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)パンに塗って焼くためのトースト用油脂食品であって、ラクトース、スクロース及びグルコースを含有し、前記ラクトース、スクロース及びグルコースの合計含有量100部に対してグルコースを2〜20部含有していることを特徴とするトースト用油脂食品、
(2)ラクトースとスクロースの含有割合が1:3〜7:2である(1)のトースト用油脂食品、
(3)前記ラクトース、スクロース及びグルコースの合計含有量100部に対して、ラクトースを20〜70部、スクロースを20〜65部含有している(1)または(2)のトースト用油脂食品、
である。
【発明の効果】
【0009】
以上のように本発明によれば、本発明のトースト用油脂食品をパンに塗ってオーブントースター等で焼くだけで、べっこう飴状のパリパリした食感と光沢のある外観を有したトーストが得られる。したがって、トースト用油脂食品の更なる需要拡大が期待出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」をそれぞれ意味する。
【0011】
本発明においてトースト用油脂食品とは、パンに塗ってオーブントースター等で焼いて食べる油脂食品である。
【0012】
本発明のトースト用油脂食品は、ラクトース、スクロース及びグルコースを含有し、前記ラクトース、スクロース及びグルコースの合計含有量100部に対してグルコースを2〜20部、好ましくは3〜15部含有していることを特徴とする。このような本発明のトースト用油脂食品は、オーブントースター等で焼くだけで、べっこう飴状のパリパリした食感と光沢のある外観を有したトーストが得られる。グルコースの含有量が前記範囲よりも多いと、ねちねちとした食感となり、前記範囲よりも少ないと、べっこう飴状の光沢のある外観とならないため好ましくない。また、グルコースを配合していてもラクトース又はスクロースを配合しない場合は、べっこう飴状のパリパリした食感が得られない。
【0013】
ここで、ラクトースとは、二糖類のひとつでD−グルコースの4位にD−ガラクトースがβ−グリコシド結合したものであり、ホエーを濃縮して晶出させ、水溶液から再結晶させて精製する方法、グルコースとガラクトースを、無水酢酸又は塩化亜鉛の存在下に高温で作用させる方法及びアセトクロルガラクトースとグルコースを酸化ナトリウムの存在下で作用させる方法等によって製されるものである。
【0014】
一方グルコースとは、炭素原子6個からなりアルデヒド基をもつ典型的なアルドヘキソースで、自然界で最も多量に存在する有機化合物である。
【0015】
また、スクロースとは、グルコースとフルクトースが結合した糖であり、非還元二糖類の一種である。本発明では、粉糖を使用するとより本発明の効果が得られやすいため、好ましい。
【0016】
本発明のラクトースの配合量は、前記ラクトース、スクロース及びグルコースの合計含有量100部に対して、20〜70部が好ましく、25〜60部がより好ましい。前記範囲よりも多いと、パンを焼き上げた際に、スプレッドが脆くホロホロとパンからはがれ易くなり、前記範囲よりも少ないと、ねちねちした食感となり、べっこう飴状のパリパリとした食感になり難いため好ましくない。
【0017】
本発明のスクロースの配合量は、前記ラクトース、スクロース及びグルコースの合計含有量100部に対して、20〜65部が好ましく、25〜60部がより好ましい。前記範囲を外れるとべっこう飴状のパリパリとした食感になり難いため好ましくない。
【0018】
本発明では、ラクトースとスクロースの含有割合が1:3〜7:2であることがより好ましい。前記範囲外であると、本発明のべっこう飴状のパリパリした食感が十分に発揮され難い傾向にある。
【0019】
また、本発明において、トースト用油脂食品全体に対する前記ラクトース、スクロース及びグルコースの合計含有量は、好ましくは5〜80%、より好ましくは10〜70%である。これら糖類の合計含有量が、前記範囲よりも少ないと、べっこう飴状のパリパリした食感と光沢のある外観を有したトーストが得られ難く、前記範囲よりも多いと、スプレッドとしてパンに塗り難くなる傾向にある。グルコースの含有量としては、上述した本発明の効果が得られ易いことから、トースト用油脂食品全体に対し好ましくは0.1〜16%、より好ましくは0.2〜14%、さらに好ましくは1〜14%である。
【0020】
さらに、本発明のトースト用油脂食品は、油脂を配合する。本発明に使用される油脂としては、一般に食することができるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば菜種油、コーン油、サフラワー油、綿実油、大豆油、ヒマワリ油等の植物油脂、これらを精製したサラダ油、これら植物油脂を微水添したもの、パーム油脂、上記植物油脂、牛脂等の動物油脂を水添して得られる硬化油脂等をあげることができる。本発明の効果であるべっこう飴状のパリパリした食感と光沢のある外観が、より得られやすい点から、低融点油脂と高融点油脂を含有することが好ましい。
【0021】
ここで低融点油脂とは、上昇融点が20℃以下の油脂であり、特に、上昇融点0〜15℃の油脂が好ましい。このような油脂としては、例えば、菜種油、コーン油、サフラワー油、綿実油、大豆油、ヒマワリ油等の植物油脂、これらを精製したサラダ油、これら植物油脂を微水添したもの、これらの油脂から高融点部分を除いた、あるいは低融点部分を集めた分画油脂等をあげることができる。また、高融点油脂とは、上昇融点が40℃以上の油脂であり、特に、上昇融点50℃以上の油脂が好ましい。このような油脂としては、例えば高融点部分を集めたパーム油脂等の分画油脂、パーム油脂や上記植物油脂、牛脂等の動物油脂を水添して得られる硬化油脂等をあげることができる。
【0022】
また、本発明のトースト用油脂食品における低融点油脂と高融点油脂との配合割合としては、低融点油脂含量を油脂の30〜99%とし、高融点油脂含量を油脂の1〜35%とすることが好ましく、低融点油脂含量を油脂の35〜85%とし、高融点油脂含量を油脂の5〜20%とすることがより好ましい。これにより、5〜35℃程度で保存する冷蔵用や常温流通用の製品とした場合にスプレッド性が良く、パンに塗り易い物性となるとともに、液油の分離や乳糖、小麦粉及び添加材等の沈澱や凝集を特に抑制することができ、長期間にわたって安定した品質で保存することができる。
【0023】
これら低融点油脂と高融点油脂の合計配合量は、他の原料の配合量及びスプレッド性を考慮し、トースト用油脂食品全体に対して好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上となるようすることが好ましい。
【0024】
本発明のトースト用油脂食品は、5〜35℃における粘度を、好ましくは4Pa・s〜1,000Pa・s、より好ましくは50〜500Pa・sとすると、パンに塗り易い性状となるとともに、可撓性容器に充填した際には、可撓性容器から絞り出し易くなるので好ましい。なお、上述の粘度は、東京計器社製のB型粘度計において、常法にしたがってNo.2〜No.7のローターを2〜10rpmで回転させて測定した場合の数値である。
【0025】
本発明のトースト用油脂食品には、本発明の効果を損なわない範囲で、他に果汁、ドライフルーツ、ジャム等の果物加工品、チョコレート、ココア、ナッツ類、チーズ等を細片状又は粉末状にしたもの、牛乳、生クリーム、卵等やこれらを乾燥したもの、糖類、食塩等の調味料、シナモン、バジル等の香辛料、フルーツフレーバー、バニラフレーバー等の香料、ベーキングパウダー等の膨化剤、クチナシ色素等の着色料、その他ガム類、澱粉類等の種々の食材や添加材を配合することができる。
【0026】
なお、油脂食品には、副原料として酸化防止剤、乳化剤、蛋白質類、塩類、調味料、そしてカルシウム、卵殻粉、鉄分等のミネラル類、その他、野菜、魚介類、畜肉等の乾燥具材等を適宜添加することができる。
【0027】
本発明のトースト用油脂食品は可撓性容器に充填すると、必要な時に必要な量をスプーン等の器具を使用することなく、手軽に使用できるので望ましい。
トースト用油脂食品を充填する可撓性容器としては、その口部からトースト用油脂食品を押し出すことができる限り特に制限はない。例えば、可撓性容器の形成素材としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の単層材料、より好ましくは、酸素透過性の低いエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、塩化ビニリデン(PVDC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アルミニウム、その他のガスバリア材料とポリエチレン(PE)又はポリプロピレン(PP)とからなる多層材料等をあげることができる。口部の形状や大きさについても、トースト用油脂食品を、押し出すことができる限り特に制限はない。また、口部形状は、丸型、矩形、星型等とすることができる。
【0028】
また、本発明のラクトース、スクロース及びグルコースは、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)または薄層クロマトグラフィー(TLC)を用いて測定(定量、分析など)される。
【0029】
次に本発明のトースト用油脂食品の代表的製造方法について説明する。まず、適宜選択したラクトース、グルコース、スクロース等の糖類を準備し、例えば、攪拌機付き二重釜に、低融点油脂、高融点油脂等の油脂、その他必要に応じて澱粉類、増粘多頭類、塩類、調味料、それから、カルシウム、卵殻粉、鉄分等のミネラル類等の副原料を投入し、攪拌混合しながら、75℃以上に昇温し、続いて、このまま蓋付チューブ容器や、小袋等の可撓性容器に充填密封し、常温で静置する。なお、必要に応じ、容器に充填密封後、常法に従い100℃以上で加圧加熱殺菌を施してもよい。あるいは、包装体に充填する前に100℃以上で殺菌した後、これを包装体に無菌的に充填・密封することもできる。また、保存性を持たせるために、菌数を減らす目的に応じて常法に従い加熱温度、時間を適宜選択し、加熱後は常法に従い、冷却すればよい。
【0030】
次に、本発明のトースト用油脂食品を、実施例及び試験例に基づき詳細に説明する。なお、本発明は、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0031】
[実施例1]
キャラメル風味のトースト用油脂食品を製造した。つまり、撹拌機付き二重釜に下記配合割合の原料を投入し加熱混合し、80℃に達温後さらに10分間撹拌する。次いで、冷却水で40℃以下に冷却した後、開口面積40mm、PE/PETの多層材料からなる蓋付可撓性チューブに充填し、シール後常温で1日保管し製造した。また、糖類100部に対して、ラクトースは48部、グルコースは4部、スクロースは48部であった。
【0032】
低融点油脂(*1) 40.8部
高融点油脂(*2) 5.0部
ラクトース 24.0部
グルコース 2.0部
スクロース(粉糖) 24.0部
キャラメルパウダー 4.0部
色素 0.2部
合計 100.0部
(*1)菜種微水添油(上昇融点5℃)
(*2)菜種極度硬化油(上昇融点55℃)
【0033】
食パンの表面(表面積約140cm)に、上記で得られたキャラメル風味のトースト用油脂食品を、15g塗布し1300W(サンヨー社製)のトースターで4分間焼成した。得られたトーストは、トーストの表面にべっこう飴状の光沢のある外観を有していた。また、これを食したところ、べっこう飴状のパリパリした食感が得られ、大変好ましかった。
【0034】
[試験例1]
グルコースの配合割合が本発明の効果に与える影響を調べるため、下記試験を行った。つまり、ラクトース、スクロース及びグルコースの合計含有量100部に対するグルコースの配合量を、表1に記載された量にそれぞれ変えた他は、実施例1と同様にしてキャラメル風味のトースト用油脂食品を製造した。グルコース配合量の増加分又は減少分は、ラクトース及びスクロース配合量を増減させて調整したが、この際、ラクトース及びスクロースの比率は、1:1に保ったまま等量ずつ調整した。
【0035】
べっこう飴状のパリパリ感
◎:べっこう飴状にパリパリしている
○:一部パリパリしている
×:パリパリせず、ねちねちしている
べっこう飴状の光沢
◎:べっこう飴状の光沢がある
○:一部光沢がある
×:光沢がない
【0036】
【表1】

【0037】
表1より、ラクトース、スクロース及びグルコースの合計含有量100部に対するグルコースの配合量が2〜20部の時に、べっこう飴状のパリパリとした食感と光沢のある外観を有することが理解できる。
特に、グルコースの配合量が3〜15部の時はトースト用油脂食品は、前記本発明の効果が得られ易く、特に好ましかった。
【0038】
[比較例1]
実施例1において、ラクトースを全量スクロースに置き換えた他は同様にして、トースト用油脂食品を製造した。得られたトースト用油脂食品を実施例1と同様に食パンの表面に塗布し、トースターで焼成した。これを食したところ、べっこう飴状のパリパリした食感にならず、ねちねちとした食感のため好ましいものではなかった。
【0039】
[比較例2]
実施例1において、スクロースを全量ラクトースに置き換えた他は同様にして、トースト用油脂食品を製造した。得られたトースト用油脂食品を実施例1と同様に食パンの表面に塗布し、トースターで焼成した。これを食したところ、べっこう飴状のパリパリした食感にならず、ねちねちとした食感のため好ましいものではなかった。
【0040】
[試験例2]
実施例1において、ラクトース、スクロース及びグルコースの配合量を表2に記載されている配合量に変えた他は、実施例1と同様にしてキャラメル風味のトースト用油脂食品を5種類製造した(実施例2〜6)。得られたトースト用油脂食品は、実施例1と同様に、パンに塗って焼成し、得られたトーストを試験例1と同じ評価基準で評価した。結果を表2に示す。
【0041】
【表2】

【0042】
表2より、ラクトースとスクロースの含有割合は、パンに塗ってオーブントースター等で焼いた際、べっこう飴状のパリパリとした食感を有する点から、好ましくは1:3〜7:2であることが理解できる。なお、実施例2乃至5の外観については、いずれもべっこう飴状の光沢のある外観であった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンに塗って焼くためのトースト用油脂食品であって、ラクトース、スクロース及びグルコースを含有し、前記ラクトース、スクロース及びグルコースの合計含有量100部に対してグルコースを2〜20部含有していることを特徴とするトースト用油脂食品。
【請求項2】
前記ラクトース及びスクロースの含有割合が1:3〜7:2である請求項1記載のトースト用油脂食品。
【請求項3】
前記ラクトース、スクロース及びグルコースの合計含有量100部に対して、ラクトースを20〜70部、スクロースを20〜65部含有している請求項1または2記載のトースト用油脂食品。


【公開番号】特開2012−143195(P2012−143195A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4457(P2011−4457)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【Fターム(参考)】