説明

ドアクローザー

【課題】ドアを閉じる方向に付勢するためのドアクローザーに於いて、ドアを開いた時に、ドアの作動をロックすると共に、所定時間経過後にロックを解除してドアを自動的に閉じることができるドアクローザーを提供する。
【解決手段】ドアを閉じる方向に付勢するためのドアクローザーに於いて、ドアが所定の第1角度開いた時に、ドアの閉じる方向への作動をロックするロック手段と、ロック手段のロックを第1所定時間経過後に解除するロック解除手段とを備えたディレイ機構9を設ける。ディレイ機構9は、ドアのロック手段であり、且つ、ロック板18に嵌入自在のロックピン15と、ドアの回転数を増大して伝達する遊星ギアユニット11と、遊星ギアユニット11の回転により巻き上げられるゼンマイ12と、ゼンマイ12の巻き戻しにより回転し、ロックピン15のロックを第1所定時間経過後に解除するロック解除手段であるタイマープレート14とを備えて成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアを閉じる方向に付勢するためのドアクローザーに関し、特に、ドアを開いた時に、ドアの作動をロックすると共に、所定時間経過後にロックを解除してドアを自動的に閉じることができるドアクローザーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ドアを自動的に閉じることができると共に、ドアを全開した時は、ドア全開状態でロックするドアクローザーが広く普及している。
【0003】
このドアクローザーは、ドアを全開した時、ドア全開状態でロックするので、ドア通過後、手動でドアを閉じなければならなかった。
【0004】
特に、荷物等の搬入時等、両手がふさがっている場合は、ドア通過後、手動でドアを閉じる作業は、煩雑であり、この煩雑な作業を回避することが望まれている。又、ドアを閉じることを失念する虞もあり、ドアを全開状態で放置することは、セキュリティ上問題である。
【0005】
尚、ドアクローザーの先行技術として、例えば、特許文献1が挙げられる。特許文献1は、感知器による直流モーターに設けた偏芯カムと別のリンク機構の作動により、ドアクローザーの腕杆枢着軸の下端に設けた閉止カムとロックする球体を嵌脱自在に動かして、開放停止中の扉を閉鎖するようにしたものである。
【特許文献1】特開平8−126714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように、ドアを全開した時、ドア全開状態でロックするドアクローザーに於いて、ドア通過後、手動でドアを閉じる作業を回避することが望まれている。
前述の望みを達成するために、例えば、ドア通過後、一定時間後に、自動でドアを閉じる機構をドアクローザーに設けることが考えられる。
【0007】
又、現代社会に於いてセキュリティは極めて重要な課題であり、そのため、セキュリティ設備(電子キー、バイオメトリクス認証など)を備えたドアが増加しているが、そのようなドアには殆どドアクローザーが使用され、ドアクローザーを用いたドアは増加しており、前述した要望が次第に強くなってきている。
【0008】
尚、前記特許文献1は、開放停止中の扉を閉鎖するものであるが、ドア通過後、一定時間後に、自動でドアを閉じる機構ではない。
【0009】
以上の現状に鑑み、本発明は、ドアを閉じる方向に付勢するためのドアクローザーに於いて、ドアを開いた時に、ドアの作動をロックすると共に、所定時間経過後にロックを解除してドアを自動的に閉じることができるドアクローザーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決すべく、本発明は以下の構成を提供する。
請求項1に係る発明は、ドアを閉じる方向に付勢するためのドアクローザーに於いて、ドアが所定の第1角度開いた時に、ドアの閉じる方向への作動をロックするロック手段と、該ロック手段のロックを第1所定時間経過後に解除するロック解除手段とを備えたディレイ機構を設けたことを特徴とするドアクローザーを提供するものである。
【0011】
請求項2に係る発明は、上記ディレイ機構は、ドアのロック手段であり、且つ、ロック板に嵌入自在のロックピンと、ドアの回転数を増大して伝達する遊星ギアユニットと、該遊星ギアユニットの回転により巻き上げられるゼンマイと、該ゼンマイの巻き戻しにより回転し、前記ロックピンのロックを第1所定時間経過後に解除するロック解除手段であるタイマープレートとを備えて成ることを特徴とする請求項1記載のドアクローザーを提供するものである。
【0012】
請求項3に係る発明は、上記ドアクローザーは、ドアクローザー本体と、ドアクローザー本体に回転自在に枢着されるレバーと、該レバー先端部に回転自在に枢着されるアームと、該アームを回転自在に枢着する壁固定用ステーと、上記ディレイ機構とを備え、該ディレイ機構は、前記壁固定用ステーと前記アームとの枢着部に設けられることを特徴とする請求項1又は2記載のドアクローザーを提供するものである。
【0013】
請求項4に係る発明は、上記ドアクローザーは、ドアクローザー本体と、ドアクローザー本体に回転自在に枢着されるレバーと、該レバー先端部に回転自在に枢着されるアームと、該アームを回転自在に枢着する壁固定用ステーと、上記ディレイ機構とを備え、該ディレイ機構は、前記レバー先端部と前記アームとの枢着部に設けられることを特徴とする請求項1又は2記載のドアクローザーを提供するものである。
【0014】
請求項5に係る発明は、上記ドアクローザーは、ドアクローザー本体と、ドアクローザー本体に回転自在に枢着されるレバーと、該レバー先端部に回転自在に枢着されるアームと、該アームを回転自在に枢着する壁固定用ステーと、上記ディレイ機構とを備え、該ディレイ機構は、前記ドアクローザー本体と前記レバーとの枢着部に設けられることを特徴とする請求項1又は2記載のドアクローザーを提供するものである。
【0015】
請求項6に係る発明は、上記ドアが上記第1角度に開いたことを検知する第1角度センサーと、タイマーと、ブザーと、該第1角度センサーが、ドアが第1角度に開いたことを検知した時、前記タイマーを作動させ、該タイマーによる上記第1所定時間よりも大なる第2所定時間計測後に、ドアが第1角度に開いていることを該第1角度センサーが検知した時、前記ブザーを作動させるように構成された制御回路とを備えたことを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一に記載のドアクローザーを提供するものである。
【0016】
請求項7に係る発明は、上記ロック板に、ドアが第1角度に開いた時に、上記ロックピンを嵌入させるためのロック孔を開穿すると共に、ドアが第1角度よりも大なる第2角度に開いた時に、該ロックピンを嵌入させるためのロック穴を形成したことを特徴とする請求項2乃至6のうちいずれか一に記載のドアクローザーを提供するものである。
【0017】
請求項8に係る発明は、上記ドアが上記第1角度に開いたことを検知する第1角度センサーと、上記ドアが上記第2角度に開いたことを検知する第2角度センサーと、タイマーと、ブザーと、該第1角度センサーが、ドアが第1角度に開いたことを検知した時、前記タイマーを作動させ、該タイマーによる上記第1所定時間よりも大なる第2所定時間計測後に、ドアが第1角度に開いていることを該第1角度センサーが検知した時、前記ブザーを作動させるように構成され、且つ、前記第2角度センサーが、ドアが第2角度に開いたことを検知した時、前記タイマーを作動させ、該タイマーによる第3所定時間計測後に、ドアが第2角度に開いていることを該第2角度センサーが検知した時、前記ブザーを作動させるように構成された制御回路とを備えたことを特徴とする請求項7記載のドアクローザーを提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1記載の発明によれば、ドアを閉じる方向に付勢するためのドアクローザーに於いて、ドアが所定の第1角度開いた時に、ドアの閉じる方向への作動をロックするロック手段と、該ロック手段のロックを第1所定時間経過後に解除するロック解除手段とを備えたディレイ機構を設けたドアクローザーを提供するので、所定の第1角度開いたドアをロックし、第1所定時間経過後にロック状態を解除して、自動的にドアを閉じることができるドアクローザーを提供することができる。
【0019】
請求項2記載の発明によれば、上記ディレイ機構は、ドアのロック手段であり、且つ、ロック板に嵌入自在のロックピンと、ドアの回転数を増大して伝達する遊星ギアユニットと、該遊星ギアユニットの回転により巻き上げられるゼンマイと、該ゼンマイの巻き戻しにより回転し、前記ロックピンのロックを第1所定時間経過後に解除するロック解除手段であるタイマープレートとを備えて成るので、請求項1記載の発明の効果と同様の効果が期待できる。
【0020】
請求項3記載の発明によれば、上記ドアクローザーは、ドアクローザー本体と、ドアクローザー本体に回転自在に枢着されるレバーと、該レバー先端部に回転自在に枢着されるアームと、該アームを回転自在に枢着する壁固定用ステーと、上記ディレイ機構とを備え、該ディレイ機構は、前記壁固定用ステーと前記アームとの枢着部に設けられるので、請求項1又は2記載の発明の効果に加え、請求項1記載の発明の効果と同様の効果が期待できる。
【0021】
請求項4記載の発明によれば、上記ドアクローザーは、ドアクローザー本体と、ドアクローザー本体に回転自在に枢着されるレバーと、該レバー先端部に回転自在に枢着されるアームと、該アームを回転自在に枢着する壁固定用ステーと、上記ディレイ機構とを備え、該ディレイ機構は、前記レバー先端部と前記アームとの枢着部に設けられるので、請求項1又は2記載の発明の効果に加え、請求項1記載の発明の効果と同様の効果が期待できる。
【0022】
請求項5記載の発明によれば、上記ドアクローザーは、ドアクローザー本体と、ドアクローザー本体に回転自在に枢着されるレバーと、該レバー先端部に回転自在に枢着されるアームと、該アームを回転自在に枢着する壁固定用ステーと、上記ディレイ機構とを備え、該ディレイ機構は、前記ドアクローザー本体と前記レバーとの枢着部に設けられるので、請求項1又は2記載の発明の効果に加え、請求項1記載の発明の効果と同様の効果が期待できる。
【0023】
請求項6記載の発明によれば、上記ドアが上記第1角度に開いたことを検知する第1角度センサーと、タイマーと、ブザーと、該第1角度センサーが、ドアが第1角度に開いたことを検知した時、前記タイマーを作動させ、該タイマーによる上記第1所定時間よりも大なる第2所定時間計測後に、ドアが第1角度に開いていることを該第1角度センサーが検知した時、前記ブザーを作動させるように構成された制御回路とを備えたので、請求項1乃至5のうちいずれか一に記載の発明の効果に加え、上記ディレイ機構が正常に作動しない時、ブザーによる警報を鳴動させることができる。
【0024】
請求項7記載の発明によれば、上記ロック板に、ドアが第1角度に開いた時に、上記ロックピンを嵌入させるためのロック孔を開穿すると共に、ドアが第1角度よりも大なる第2角度に開いた時に、該ロックピンを嵌入させるためのロック穴を形成したので、請求項2乃至6のうちいずれか一に記載の発明の効果に加え、前記ロック穴によって、ドアが第2角度に開いた時にロック状態を維持させ、前記ディレイ機構を作動させないようにすることができる。
【0025】
請求項8記載の発明によれば、上記ドアが上記第1角度に開いたことを検知する第1角度センサーと、上記ドアが上記第2角度に開いたことを検知する第2角度センサーと、タイマーと、ブザーと、該第1角度センサーが、ドアが第1角度に開いたことを検知した時、前記タイマーを作動させ、該タイマーによる上記第1所定時間よりも大なる第2所定時間計測後に、ドアが第1角度に開いていることを該第1角度センサーが検知した時、前記ブザーを作動させるように構成され、且つ、前記第2角度センサーが、ドアが第2角度に開いたことを検知した時、前記タイマーを作動させ、該タイマーによる第3所定時間計測後に、ドアが第2角度に開いていることを該第2角度センサーが検知した時、前記ブザーを作動させるように構成された制御回路とを備えたので、請求項7記載の発明の効果に加え、上記ディレイ機構が正常に作動しない時、ブザーによる警報を鳴動させることができると共に、ドアが第2角度に開いた状態が長時間(第3所定時間)続く場合に、ブザーによる警報を鳴動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、実施例を示した図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。尚、説明の都合上、後に説明する実施例に於いて、先に説明した実施例と同一構成部分については同一符号を付してその説明を省略する。
【0027】
図1に於いて、1は、本発明の第1実施例のドアクローザーであり、ドアクローザー1は、ドア2に固着されると共に、油圧機構(図示せず)等によりドア2を緩慢に閉じる方向に作動させるためのドアクローザー本体3と、ドアクローザー本体3に回転自在に枢着されるレバー4と、レバー4先端部に回転自在に枢着されるアーム5と、壁6に固定され、アーム5を回転自在に枢着する壁固定用ステー7と、壁固定用ステー7とアーム5との枢着部8に設けられるディレイ機構9とを備えている。
【0028】
そして、前記ディレイ機構9は、図2に示す如く、ドア2の回転数を増大して伝達する遊星ギアユニット11と、遊星ギアユニット11の回転により巻き上げられるゼンマイ12と、ゼンマイ12の巻き戻し回転を減速する減速遊星ギアユニット13と、減速遊星ギアユニット13により回転するロック解除手段である円盤状のタイマープレート14と、ドアのロック手段であり、ドア2が所定の第1角度、例えば、90度に開いた時、ドア2の作動をロックするロックピン15とを備え、それらが、有底円筒状の上下ケース16,17内に収納されており、上下ケース16,17は、前記壁固定用ステー7を上下に挟持する状態に配置されている。そして、上下ケース16,17に挟持された壁固定用ステー7部分に、ロックピン15と係合して、ロックピン15をロックするための円板状のロック板18が形成されている。
【0029】
更に、詳細に説明すると、上ケース16内には前記ロックピン15が収納され、下ケース17内には、前記壁固定用ステー7に形成されるロック板18に固定される有底円筒状の上内ケース19と上内ケース19の下端に上端が固定される有底円筒状の下内ケース20が収納され、上内ケース19内には、前記ゼンマイ12と、バネ21と、減速遊星ギアユニット13と、タイマープレート14とが、下方から上方に向かって順次内装され、バネ21によってゼンマイ12は下方に付勢され、減速遊星ギアユニット13と、タイマープレート14とは上方に付勢され、タイマープレート14は、前記ロック板18に圧接されており、下内ケース20内に遊星ギアユニット11が内装されている。又、下内ケース20の下端部には、下方に突設する爪22が設けられている。
【0030】
更に又、前記遊星ギアユニット11は、上段遊星ギアユニット31と、下段遊星ギアユニット32の二段で構成され、上下段遊星ギアユニット31,32は、夫々太陽歯車33と、遊星歯車34と、内歯歯車35とを備えて、ギア比が4:1となるように形成されている。そして、遊星ギアユニット31は、前記上内ケース19の底部に形成された開口部19aを介して、前記ゼンマイ12の回転軸12aに接合自在に形成されている。
【0031】
又、前記減速遊星ギアユニット13も、前記上下段遊星ギアユニット31,32と同様に、図2(b)に示す如く、夫々太陽歯車33と、遊星歯車34と、内歯歯車35とを備えているが、前記上下段遊星ギアユニット31,32と逆方向に設けられ、ギア比が1:4となるように形成され、ゼンマイ12の巻き戻し回転に対し、タイマープレート14の回転数を減少させるように構成されている。
【0032】
更に、前記遊星ギアユニット11の下方には、上下段クラッチプレート36,38が、中間に介装されたバネ38によって互いに離反する方向に付勢されて配設され、上段クラッチプレート36には、上方に突設する爪39が設けられ、下段クラッチプレート37下端部外周部には下方に突設する鋸歯状の爪40が配設され、一方、下ケース17の内底部上面には爪40に歯合し、下段クラッチプレート37の一方向の回転を許容し、反対方向の回転を規制する爪41が形成されている。
【0033】
更に又、前記ロックピン15は、図3に示す如く、ロックピン15と、ロック板18と、タイマープレート14とで、ロック及びロック解除機構42を構成している。
【0034】
そして、前記ロック板18には、ドア2が所定の第1角度、例えば、90度開いた時、ロックピン15を嵌入させるロック孔43が開穿されている。
一方、タイマープレート14の上面にもロック孔43に嵌入自在の凸部44が上方に向かって突設されている。
【0035】
而して、図1乃至図4を参照して、前記ドアクローザー1の作用について説明すると、図1、図2及び図4に示す如く、ドア2が所定の第1角度、例えば、90度開かれると、ドアクローザー本体3がドア2と共に移動し、ドアクローザー本体3に対しレバー4が回転し、レバー4に対しアーム5が回転すると共に、アーム5はロック板18に対して回転する。
【0036】
この時、図2及び図3に示す如く、ロック板18に対してアーム5が1/4回転し、ロックピン15がロック板18のロック孔43内に嵌まり、アーム5の回転がロックされ、ドア2の回転がロックされる。
【0037】
一方、前記アーム5の回転によって、アーム5に固着された上下ケース16,17が前記上下内ケース19,20に対して1/4回転し、下ケース17に設けた爪41と下段クラッチプレート37に設けた爪40とが歯合することにより、上下段クラッチプレート36,37を介して遊星ギアユニット11が回転し、即ち、上下段ギアユニット31,32が回転し、これによって、ゼンマイ12が4回転巻き上げられる。
【0038】
又、遊星ギアユニット11の回転により減速遊星ギアユニット13が回転し、減速遊星ギアユニット13の回転によってタイマープレート14が1回転し、タイマープレート14の凸部44がロック板18のロック孔43に嵌まる。
【0039】
更に、下内ケース20の爪22に上段クラッチプレート36の爪39が係合して上段クラッチプレート36が押し下げられ、即ち、上段クラッチプレート36が下がり、それによって、遊星ギアユニット11の中心軸45と上段クラッチプレート36との係合が外れる。
【0040】
遊星ギアユニット11が、上段クラッチプレート36から外れることによって、巻き上げられたゼンマイ12が4回転巻き戻しされると、タイマープレート14が逆方向に1回転する。この時、タイマープレート14がロック板18に押され、タイマープレート14から突設する凸部44がロック板18に圧接されているため、タイマープレート14は緩慢に回転し、この回転時間がタイマー時間(第1所定時間)として利用される。そして、再び、タイマープレート14の凸部44がロック孔43に嵌まり、ロックピン15が持ち上がる。
【0041】
ロックピン15が持ち上がると、ドア2の自重によって、ロックピン15がロック孔43から抜け、ドア2が閉まり始める。この時、上段クラッチプレート36の爪39は図2(e)の如く、係合して押し下げられたままで、下段クラッチプレート37の爪40が下ケース17に設けた爪41を乗り越えながら上下しアーム5が戻る。尚、ドア2が閉じている時は、上段クラッチプレート36の爪39は係合して押し下げられたままである。
【0042】
斯くして、前記ドアクローザー1は、所定の第1角度、例えば、90度開かれるドア2のロック状態を第1所定時間経過後に解除して、自動的にドア2を閉じることができるドアクローザーを提供することができる。又、ディレイ機構9の取付けも容易である。
又、前記ドアクローザー1は、高額な自動ドア等に比較して安価に提供できるので、コストダウンが図れる。
【0043】
図5に於いて、51は、本発明の第2実施例のドアクローザーであり、ドアクローザー51は、本発明の第1実施例のドアクローザー(図4に於いて1)に於いて、ディレイ機構9の取付け位置を変更したものであり、ディレイ機構9は、レバー4先端部とアーム5との枢着部52に設けられる。
【0044】
従って、本発明の第1実施例のドアクローザー(図4に於いて1)に於いては、上下ケース16,17はアーム5に固定され、上下内ケース19,20は壁固定用ステー7に固定されたが、本発明の第2実施例のドアクローザー51に於いては、上下ケース16,17はレバー4に固定され、上下内ケース19,20はアーム5に固定される。又、レバー4の一部であり、且つ、上下ケース16,17に挟持された部分に前記ロック板18が形成される。
【0045】
本発明の第2実施例のドアクローザー51の作用効果については、本発明の第1実施例のドアクローザー1と略同様であるので、その説明を省略する。
【0046】
図6に於いて、61は、本発明の第3実施例のドアクローザーであり、ドアクローザー61は、本発明の第1実施例のドアクローザー(図4に於いて1)に於いて、ディレイ機構9の取付け位置を変更したものであり、ディレイ機構9は、ドアクローザー本体3とレバー4との枢着部62に設けられる。
【0047】
従って、本発明の第1実施例のドアクローザー(図4に於いて1)に於いては、上下ケース16,17はアーム5に固定され、上下内ケースは壁固定用ステー7に固定されたが、本発明の第3実施例のドアクローザー61に於いては、上下ケース16,17はドアクローザー本体3に固定され、上下内ケース19,20はレバー4に固定される。又、レバー4の一部であり、且つ、上下ケース16,17に挟持された部分に前記ロック板18が形成される。
【0048】
本発明の第3実施例のドアクローザー61の作用効果については、本発明の第1実施例のドアクローザー1と略同様であるので、その説明を省略する。
【0049】
図7に於いて、71は、本発明の第4実施例のドアクローザーであり、ドアクローザー71は、本発明の第1実施例のドアクローザー(図4に於いて1)に於いて、ディレイ機構(図4に於いて9)を改良したディレイ機構72を設けたものであり、ディレイ機構72は、図8に示す如く、本発明の第1実施例のドアクローザー(図4に於いて1)のロック板18の所定位置に、ロック穴73を形成したものであり、ロック穴73は、ドア2が第3所定角度、例えば110度開いた時、前記ロックピン(図2に於いて15)と別に設けた第2ロックピン74を嵌入させて、第2ロックピン74をロックするための穴をロック板18上面に形成したものである。従って、ドア2が第3所定角度、例えば110度開いた時、ロックピン74が位置する箇所にロック穴73は形成される。
【0050】
前記ドアクローザー71によると、ドア2を110度開いた時は、ドア2は、開いた状態でロックされ、その状態が維持される。ドア2を閉じる時は、ドア2を人手によって閉じる方向に作動させると、その作動力によって、ロックピン15がロック穴73から抜け出し、ドア2がドアクローザー本体3の作動によって閉じ始める。
【0051】
又、第1実施例のドアクローザー1の如く、タイマーを利かせたい場合は、ドア2を一旦閉じ、改めて第1実施例のドアクローザー1の如く、例えば、90度開けると、第1実施例のドアクローザー1の作動と同様に、ドア2は開いてから第1所定時間経過後に閉じ始める。
【0052】
斯くして、本発明の第4実施例のドアクローザー71は、ドア2を開く角度によって、ドア2を開状態に維持することができ、又は、ドア2を開いてから一定時間経過後に閉じることもできるので、極めて利便性が高いものである。
尚、前記ディレイ機構72は、他のドアクローザー51及び61にも適用可能である。
【0053】
図9に於いて、81は、本発明の第5実施例の電気回路であり、電気回路81は、前記ドアクローザー71に追加して設置するものであり、ドア2が前記第1角度に開いたことを検知する第1角度センサー82と、ドア2が前記第2角度に開いたことを検知する第2角度センサー83と、タイマー84と、ブザー85とが、制御回路86に接続されて成る。
【0054】
而して、制御回路86は、第1角度センサー82が、ドア2が前記第1角度に開いたことを検知した時、タイマー84を作動させ、タイマー84による前記第1所定時間よりも大なる第2所定時間(第1所定時間に一定時間を加えた時間)計測後に、ドア2が第1角度に開いていることを第1角度センサー82が検知した時、即ち、前記ディレイ機構9の作動異常を検知して、前記ブザー85を作動させ、警報を鳴動させる。
【0055】
又、制御回路86は、前記第2角度センサー83が、ドア2が第2角度に開いたことを検知した時、タイマー84を作動させ、タイマー84による第3所定時間(やや、長時間に設定された時間)計測後に、ドア2が第2角度に開いていることを第2角度センサー83が検知した時、即ち、ドア2が長時間開放状態になっている時、ブザー85を作動させ、警報を鳴動させる。
【0056】
斯くして、前記電気回路81は、前記ディレイ機構72の作動異常を検知できる共に、ドア2を長時間開放状態にした場合にブザー85で知らせることができ、ドア2の安全性を高めることができる。
【0057】
尚、前記ブザー85に、通知用の音声も鳴動させることができるように構成し、ドア2が第2角度に開いてロックされた時、前記第2角度センサー83の信号に基づき、制御回路86から、ブザー85に通知用の音声を鳴動させる信号を送出するように構成しても良い。
【0058】
又、前記電気回路81の内、第2角度センサー83をなくし、第2角度センサー83に基づく制御回路86の制御をなくした電気回路を、前述したドアクローザー1、51又は61に設けてもよい。然る時も、前記ディレイ機構9の作動異常を報知できる。
更に、前記電気回路81には、ブザー85を設けたが、ブザー85に代えてライトや、電子メール、電話などで通知する装置を設けても良い。
更に又、前記電気回路81には、ドア2が前記第1角度に開いたことを検知する第1角度センサー82と、ドア2が前記第2角度に開いたことを検知する第2角度センサー83とを設けたが、更に、ドア2が僅かな角度に開いていることを検知する角度センサーをドア2又はドア枠に追加して設け、ドア2のミスクローズ時においてもブザー85を鳴動させるように構成しても良い。
【0059】
尚、本発明のディレイ機構9,72は、上述の構成に限定されるものではなく、例えば、前記遊星ギアユニット11に代えて、他の変速ギアを用いることも可能であり、然る時も、同様の効果が期待できる。
又、本発明のディレイ機構9,72と同様の作用効果を、ドアクローザー本体3内の油圧回路、又は、ドアクローザー本体3外に別途設置する油圧回路によって実現することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1実施例のドアクローザーを概略的に示す斜視図である。
【図2】(a)本発明の第1実施例のディレイ機構を概略的に示す縦断面図である。(b)前図(a)の減速遊星ギアユニットの歯車の組合せを概略的に示す平面図である。(c)本発明の第1実施例のゼンマイ部分を概略的に示す平面図である。(d)前図(a)の下内ケースに設けた爪と、上段クラッチプレートに設けた爪とが係合していない状態を示す説明図である。(e)前図(a)の下内ケースに設けた爪と、上段クラッチプレートに設けた爪とが係合している状態を示す説明図である。(f)前図(a)の上段クラッチプレートの平面断面図である。
【図3】(a)〜(d) 本発明の第1実施例のディレイ機構の作動説明図である。
【図4】(a)〜(c) 本発明の第1実施例のドアクローザーの作動説明図である。
【図5】(a)〜(c) 本発明の第2実施例のドアクローザーの作動説明図である。
【図6】(a)〜(c) 本発明の第3実施例のドアクローザーの作動説明図である。
【図7】(a)〜(c) 本発明の第4実施例のドアクローザーの作動説明図である。
【図8】(a)〜(c) 本発明の第4実施例のディレイ機構の作動説明図である。
【図9】本発明の第4実施例に追加して設ける電気回路図である。
【符号の説明】
【0061】
1,51,61,71 ドアクローザー
2 ドア
3 ドアクローザー本体
4 レバー
5 アーム
7 壁固定用ステー
8,52,62 枢着部
9 ディレイ機構
11 遊星ギアユニット
12 ゼンマイ
14 タイマープレート
15 ロックピン
18 ロック板
43 ロック孔
72 ディレイ機構
73 ロック穴
82 第1角度センサー
83 第2角度センサー
84 タイマー
85 ブザー
86 制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアを閉じる方向に付勢するためのドアクローザーに於いて、ドアが所定の第1角度開いた時に、ドアの閉じる方向への作動をロックするロック手段と、該ロック手段のロックを第1所定時間経過後に解除するロック解除手段とを備えたディレイ機構を設けたことを特徴とするドアクローザー。
【請求項2】
上記ディレイ機構は、ドアのロック手段であり、且つ、ロック板に嵌入自在のロックピンと、ドアの回転数を増大して伝達する遊星ギアユニットと、該遊星ギアユニットの回転により巻き上げられるゼンマイと、該ゼンマイの巻き戻しにより回転し、前記ロックピンのロックを第1所定時間経過後に解除するロック解除手段であるタイマープレートとを備えて成ることを特徴とする請求項1記載のドアクローザー。
【請求項3】
上記ドアクローザーは、ドアクローザー本体と、ドアクローザー本体に回転自在に枢着されるレバーと、該レバー先端部に回転自在に枢着されるアームと、該アームを回転自在に枢着する壁固定用ステーと、上記ディレイ機構とを備え、該ディレイ機構は、前記壁固定用ステーと前記アームとの枢着部に設けられることを特徴とする請求項1又は2記載のドアクローザー。
【請求項4】
上記ドアクローザーは、ドアクローザー本体と、ドアクローザー本体に回転自在に枢着されるレバーと、該レバー先端部に回転自在に枢着されるアームと、該アームを回転自在に枢着する壁固定用ステーと、上記ディレイ機構とを備え、該ディレイ機構は、前記レバー先端部と前記アームとの枢着部に設けられることを特徴とする請求項1又は2記載のドアクローザー。
【請求項5】
上記ドアクローザーは、ドアクローザー本体と、ドアクローザー本体に回転自在に枢着されるレバーと、該レバー先端部に回転自在に枢着されるアームと、該アームを回転自在に枢着する壁固定用ステーと、上記ディレイ機構とを備え、該ディレイ機構は、前記ドアクローザー本体と前記レバーとの枢着部に設けられることを特徴とする請求項1又は2記載のドアクローザー。
【請求項6】
上記ドアが上記第1角度に開いたことを検知する第1角度センサーと、タイマーと、ブザーと、該第1角度センサーが、ドアが第1角度に開いたことを検知した時、前記タイマーを作動させ、該タイマーによる上記第1所定時間よりも大なる第2所定時間計測後に、ドアが第1角度に開いていることを該第1角度センサーが検知した時、前記ブザーを作動させるように構成された制御回路とを備えたことを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一に記載のドアクローザー。
【請求項7】
上記ロック板に、ドアが第1角度に開いた時に、上記ロックピンを嵌入させるためのロック孔を開穿すると共に、ドアが第1角度よりも大なる第2角度に開いた時に、該ロックピンを嵌入させるためのロック穴を形成したことを特徴とする請求項2乃至6のうちいずれか一に記載のドアクローザー。
【請求項8】
上記ドアが上記第1角度に開いたことを検知する第1角度センサーと、上記ドアが上記第2角度に開いたことを検知する第2角度センサーと、タイマーと、ブザーと、該第1角度センサーが、ドアが第1角度に開いたことを検知した時、前記タイマーを作動させ、該タイマーによる上記第1所定時間よりも大なる第2所定時間計測後に、ドアが第1角度に開いていることを該第1角度センサーが検知した時、前記ブザーを作動させるように構成され、且つ、前記第2角度センサーが、ドアが第2角度に開いたことを検知した時、前記タイマーを作動させ、該タイマーによる第3所定時間計測後に、ドアが第2角度に開いていることを該第2角度センサーが検知した時、前記ブザーを作動させるように構成された制御回路とを備えたことを特徴とする請求項7記載のドアクローザー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−113351(P2007−113351A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−308456(P2005−308456)
【出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【出願人】(505376503)DTエンジニアリング株式会社 (8)