説明

ドアクローザ

【課題】スライダーとレールの当接による異音が発生することがないドアクローザを提供する。
【解決手段】ドアクローザ本体2と、ドアクローザ本体2に枢結されたアーム3と、アーム3の先端に枢結されたスライダー10と、スライダー10をスライドガイドするレール4と、を有するドアクローザにおいて、レール4の内面に対向するスライダー10の面10c,10dにクリアランス解消手段が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンシールド型ドアクローザに関し、さらに詳しくはクローザ本体と関連づけられたアーム端部が案内されるレールを有する構成のドアクローザに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にこの種のドアクローザは、特許文献1により公知であり、扉の上縁に埋め込まれ、かつ閉扉速度調整手段を有するドアクローザ本体と、このドアクローザ本体の前記閉扉速度調整手段における回転要素に結合されたアームと、戸口の上縁に固定され、前記アームの先端部をガイドするレールを主構成体としている。
【0003】
前記レールにスライド自在に設けられたスライダーに前記アームの先端部を枢結し、前記スライダーには前記レールの軸方向に突出した係合片を設けている。
【0004】
上記構成において、前記扉を開けばこれに応じて前記アームが回動し、その先端の前記スライダーが前記レール上をスライドし、前記係合片がストッパーの係止片で係止され、前記扉を所要の開放角に保つ作用をする。また、前記扉を閉じれば、前記係合片と前記係止片の係止が解かれ、前記ドアクローザ本体の閉扉速度調整手段によりゆっくりと閉じられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平8−26725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この種のドアクローザでは、前記スライダーを前記レールに組み込みやすくするために、前記スライダーと前記レールの側壁との間にクリアランスが設けられている。このため、前記スライダーが前記レールの中を移動する時、クリアランスにより、前記レールと常に平行状態を保って移動せず、前記スライダーの角が前記側壁の内面に当接し、異音が発生することがあった。特に、前記扉が大きく開かれた状態から閉扉方向へ閉扉する途中、前記閉扉速度調整手段によって減速が大きくかかり閉扉速度が変化した所で発生しやすかった。
【0007】
本発明は、上述した課題の存在に鑑みて成されたものであって、その目的はスライダーとレールの当接による異音が発生することのないドアクローザを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るドアクローザは、ドアクローザ本体と、該ドアクローザ本体に枢結されたアームと、該アームの先端に枢結されたスライダーと、該スライダーをスライドガイドするレールと、を有するドアクローザにおいて、該レールの側壁に対向する該スライダーの少なくとも一方の側面にクリアランス解消手段を設けたことを特徴とする。
【0009】
ここで、該クリアランス解消手段は、該一方の側面の端部に突出形成される凸部と、該凸部が該スライダーの幅方向に弾性変形することを許容するスリットとを備えることが好ましい。
【0010】
また、該クリアランス解消手段は、該一方の側面から突出するスペーサと、該スペーサを付勢する弾性部材を備え、該スペーサは該弾性部材に抗して該スライダーの幅方向に移動可能なことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、レールの側壁に対向するスライダーの少なくと一方の側面にクリアランス解消手段を設けたので、扉が閉じているときに異音が発生することのないドアクローザを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】アームに結合された本発明に係るスライダーの一部断面側面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るスライダーの平面図である。
【図3】図2におけるA矢視図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係るスライダーの平面図である。
【図5】図4におけるB矢視図である。
【図6】図5におけるC−C矢視断面の要部を示す図である。
【図7】ドアクローザの概観斜視図である。
【図8】ドアクローザの要部の一部切欠概観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。
【0014】
[実施の形態1]
図7及び図8に示すように、本発明に係るドアクローザは、扉1の上縁に埋め込まれ、かつ不図示の閉扉速度調整手段を有するドアクローザ本体2と、このドアクローザ本体2の前記閉扉速度調整手段における回転要素に結合されたアーム3と、戸口の上縁(図示せず)に固定され、アーム3の先端部をガイドするレール4を主構成体としている。そして、レール4にスライド自在に設けられたスライダー10にアーム3の先端部を枢結し、スライダー10にはレール4の軸方向に突出した係合片10bを設けている。上記構成において、扉1を開けばこれに応じてアーム3が回動し、その先端のスライダー10がレール4上をスライドし、係合片10bが不図示のストッパーの係止片で係止され、扉1を所要の開放角に保つ作用をする。また、扉1を閉じれば、係合片10bと前記係止片の係止が解かれ、扉1はドアクローザ本体2の前記閉扉速度調整手段によりゆっくりと閉じられる。図1はアーム3の一方の端に回動自在に取り付けられ、レール4にスライドガイドされるスライダー10の断面(図2のE−E矢視断面)を表しており、6はアーム用ピンであり、軸方向の略中央には鍔6aを備え、アーム用ピン6は一方においてアーム3に回転不能に固定され、他方において軸受7によってスライダー10に回動自在に取り付けられている。アーム3とアーム用ピン6の固定は、アーム3に雌ネジ、アーム用ピン6に雄ネジが加工され、アーム用ピン6の六角穴(図8参照)に六角棒スパナを差し込み、締付けて行う。ドアクローザの使用中に緩まないように上記雄ネジに緩み止めのために樹脂を溶着することが望ましい。8はカシメによって取り付けられているワッシャであり、アーム用ピン6が軸受7から抜けないようにするためのものである。
【0015】
図2および図3において、スライダー10は略正方形のスライダー本体10aと、スライダー本体10aに圧入により固定された軸受7と、スライダー本体10aの一辺からほぼ直角に突出した係合片10bとを備えている。スライダー本体10aと係合片10bは樹脂で一体に成形されている。スライダー本体10aのレール4の側壁4aの内面と対向する一方の側面10cの前後の端部にはスライダー10の走行方向Hと直角な方向(幅方向)へ突出する凸部10e,10fが形成され、レール4の側壁4aの内面と対向する他方の側面10dの前後の端部にもスライダー10の走行方向Hと直角な方向(幅方向)へ突出する凸部10g,10hが形成されている。
【0016】
図3の側面図で分かるように、凸部10e,10f,10g,10hはスライダー本体10aの厚さ方向(Z方向)の中央が膨出した形状であり、それらが側壁4a,4aの内面と摺接する。図2に示すとおり、凸部10e,10f,10hの内側にはU字状のスリット10x,10y,10zが形成されている。スライダー本体10aの端部に設けられた凸部とスリットとが本発明のクリアランス解消手段に相当する。なお、凸部10gの内側には、係合片10bがあるので、スリットは設けられず、貫通孔10wが形成されている。
【0017】
スリット10x,10y,10zは、スライダー本体10aの側面10c,10dと平行に、レール4の長さ方向(走行方向H)に延びている。スリット10x,10y,10z内には、所定の隙間を隔てて対向する2つの突部10A,10Bが設けられている。図3に示すように、2つの突部10A,10Bはスライダー本体10aの厚さ方向の略中央位置に立設されており、スリット10x,10y,10zの底部と2つの突部10A,10Bによってスライダー本体10aの厚さ方向に延びる孔10x1, 10y1,10z1(図2参照)が画成されている。スライダー本体10aは樹脂により成形されているので、凸部10e,10f,10hは、その内側に形成されたスリット10x,10y,10zによってH方向と直角な方向(幅方向)への変形が許容されるよう弾性を有するが、その変形量は2つの突部10A,10Bが当接することで規制されるようになっている。
【0018】
図2の寸法Lは一方の側面の凸部10e,10fの先端と、他方の側面の凸部10g,10hの先端の距離を表しているが、この寸法はレール4の側壁4a,4a間の内側の幅の寸法(レール4の長さ方向と直角な方向)と同一寸法に設計されている。しかし、本実施形態のスライダー10は、凸部10e,10f,10hを変形させてレール4の側壁4a,4a間に容易に設置することができ、設置後にはスライダー10とレール4の側壁4a,4aとの間にクリアランスが存在しないようにすることができる。
【0019】
上記のように構成されたスライダー10を有するドアクローザの動作について説明する。大きく開扉している扉1を閉じるために閉扉方向へ扉1を引く(または押す)と、ドアクローザ本体2の閉扉速度調整手段により制動を受けながら扉1は閉まっていく。最初の間はドアクローザ本体2の制動力は弱く設定されているので、扉1は比較的速く閉扉してゆく。扉1が閉まる少し前で扉1はドアクローザ本体2の閉扉速度調整手段により制動力が大きくなり、閉扉速度が変化する。この時、従来のドアクローザであればスライダーとレールの側壁間の内面にはクリアランスがあるため、異音が発生するおそれがあったが、本実施形態のスライダー10を採用したドアクローザにおいてはクリアランス解消手段により上記クリアランスが存在しないので異音の発生はない。また、クリアランスが設けられていなくても、凸部10e,10f,10hは弾性を有しているので、スライダー10はレール4の中でスムースに走行することができる。
【0020】
[実施の形態2]
本発明の実施の形態2について図4乃至図6を用いて説明する。実施の形態2は、実施の形態1におけるクリアランス解消手段に変更を加えたものであるから、その変更部分について詳述し、実施の形態1と同一部分には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0021】
20はレール4にスライドガイドされるスライダーであり、略正方形のスライダー本体20aと、スライダー本体20aに圧入により固定された軸受7と、スライダー本体20aの一辺からほぼ直角に突出した係合片20bとを備えている。スライダー本体20aと係合片20bは樹脂で一体に成形されている。スライダー本体20aのレール4の側壁4aの内面と対向する側面20cには、側面20cに垂直な方向へ板ばね26によって付勢されて側面20cから突出するスペーサ25が保持されている。スペーサ25と板バネ26(弾性部材)が本発明のクリアランス解消手段に相当する。
【0022】
図5に示すように、スライダー本体20aの側面20cには、スライダー20の厚さ方向Zの中央にスペーサ25と板バネ26を収納する凹部20eが形成されている。図4に示すように、スペーサ25は、スライダー20の走行方向Hにおいて、スライダー本体20aの側面20cとほぼ等しい長さを有している。図5に示すように、スペーサ25は断面略凸状であり、凸部の頭の部分は板バネ26によりレール4の側壁4aの内面に押し付けられて摺動する部分であり、反対側には両端に鍔25a,25aが設けられている。また、図6に示すように、鍔25a,25aの間には板バネ26を収納する凹部25bが設けられている。図5に示すように、凹部20eの開口部には鍔25a,25aと係合する鍵状部が内側に突出するように設けられており、板バネ26によってスライダー20の幅方向へ付勢されたスペーサ25は凹部20eの底面との間に隙間を有して凹部20eから外れないように保持されている。なお、図5の20fはスライダー本体20aの端部に設けられた凸部であり、スライダー本体20aの両端部に設けられた凸部20f,20fによってスペーサ25は走行方向Hにおいても動きが規制されている。このように、スペーサ25は、凹部20eから外れることなく、凹部20eの底面に当接するまで板バネ26に抗して凹部20e内でH方向と直角な方向(幅方向)に移動することができるように構成されている。
【0023】
スライダー本体20aのレール4の側壁4aの内面と対向する他方の側面20dは厚さ方向(Z方向)の中央が膨出した形状であり、この膨出した形状の先端がレール4の内面と摺接する。
【0024】
本実施形態のスライダー20は、スペーサ25が板バネ26に抗して凹部20e内でH方向と直角な方向(幅方向)に移動することができるので、スライダー20をレール4の側壁4a,4a間に容易に設置することができる。そして、設置後にはスライダー20とレール4の側壁4a,4aとの間にクリアランスが存在しないようにすることができる。
【0025】
上記のように構成されたスライダー20を有するドアクローザの動作について説明する。大きく開扉している扉1を閉じるために閉扉方向へ扉1を引く(または押す)と、ドアクローザ本体2の閉扉速度調整手段により制動を受けながら扉1は閉まっていく。最初の間はドアクローザ本体2の制動力は弱く設定されているので、扉1は比較的速く閉扉してゆく。扉が閉まる少し前で扉1はドアクローザ本体2の閉扉速度調整手段により制動力が大きくなり、閉扉速度が変化する。この時、従来のドアクローザであればスライダーとレールの側壁間の内面にはクリアランスがあるため、異音が発生するおそれがあったが、本実施形態のスライダー20を採用したドアクローザにおいてはクリアランス解消手段により上記クリアランスがないので異音の発生はない。また、クリアランスが設けられていなくても、スペーサ25は板バネ26によって弾性を有しているので、スライダー20はレール4の中でスムースに走行することができる。
【0026】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。例えば、実施の形態1において、係合片10bを幅方向中央寄りに設け、凸部10gの内側にもスリットを設けるようにしてもよい。また、凸部10hの内側にスリット10zを設けず、クリアランス解消手段が一方の側面だけに設けられるようにしてもよい。また。実施の形態2において、他方の側面20dにもスペーサ25と板バネ26を保持させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 扉
2 ドアクローザ本体
3 アーム
4 レール
6 アーム用ピン
10,20 スライダー
10a,20a スライダー本体
10e,10f,10g,10h 凸部
10x,10y,10z スリット
25 スペーサ
26 板バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアクローザ本体と、該ドアクローザ本体に枢結されたアームと、該アームの先端に枢結されたスライダーと、該スライダーをスライドガイドするレールと、を有するドアクローザにおいて、該レールの側壁に対向する該スライダーの少なくとも一方の側面にクリアランス解消手段を設けたことを特徴とするドアクローザ。
【請求項2】
該クリアランス解消手段は、該一方の側面の端部に突出形成される凸部と、該凸部が該スライダーの幅方向に弾性変形することを許容するスリットとを備えることを特徴とする請求項1に記載のドアクローザ。
【請求項3】
該クリアランス解消手段は、該一方の側面から突出するスペーサと、該スペーサを付勢する弾性部材とを備え、該スペーサは該弾性部材に抗して該スライダーの幅方向に移動可能なことを特徴とする請求項1に記載のドアクローザ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−72569(P2012−72569A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216517(P2010−216517)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000006943)リョービ株式会社 (471)